説明

車体後部のタンク懸架ブラケットの取付構造

【課題】簡単な構造でタンク懸架ブラケットの接合部の剛性を高めることができ、前方からの荷重が車体に掛かった場合に、燃料タンクからの荷重をサイドメンバ全体で効率良く吸収することにある。
【解決手段】サイドメンバ3の上方に重心がサイドメンバ3よりも高い位置の燃料タンク1を車体幅方向に沿って配置し、サイドメンバ3の上面部3aに燃料タンク1を懸架するためのタンク懸架ブラケット8を車体前後方向に設置し、タンク懸架ブラケット8の前後にサイドメンバ3の上面部3aと接合する接合部のボルト孔を設け、ボルト孔が位置するサイドメンバ3の上面部3aの裏側にリンフォースメント13,14を配設し、リンフォースメント13,14は、車体前後方向で2つに分割され、ボルト孔は、燃料タンク1の懸架力点に対して車体斜め下方の車体後方側に配置され、リンフォースメント13,14は、ボルト孔から車体後方に延在して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮天然ガス等の気体燃料を用いる車両において、車体後部に搭載する燃料タンクを懸架するためのタンク懸架ブラケットの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧縮天然ガス等の気体燃料を用いて走行する車両の車体後部には、燃料タンクが搭載されている。このような燃料タンクは、収容される燃料ガスの圧力を均等に分散させるべく長尺の円筒状に形成されているとともに、大きな容量を確保するためにタンク径が大きくなり、重量も増すことから、その搭載箇所には、広い空間と十分な剛性が要求されている。
【0003】
そのため、燃料タンクを搭載する車両では、シート後方に位置する車体後部のフロアパネル上に車体幅方向へ延在する支持台を設け、該支持台上に燃料タンクを載せて固定することにより支持して配置したり(例えば、特許文献1)、あるいは、リヤシートの後方及び下方にフレームやプレートを設け、これらフレームやプレートによって剛性を高めた箇所に燃料タンクを配置したり(例えば、特許文献2)する構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−113961号公報
【特許文献2】特開2003−267067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の燃料タンクの搭載構造のうち、特許文献1の構造では、支持台を構成する支持フレームの車体への接合部が車体幅方向の中間部分に設けられ、当該支持フレームの端部などに燃料タンクを懸架するためのブラケットやリンフォースメントなどは設けられていないので、十分な取付強度及び剛性を有していなかった。また、特許文献2の搭載構造でも、フレームの締付部が車体の真下に向けて接合され、当該接合部にはリンフォースメントなどが設けられていないので、十分な取付強度及び剛性を有していなかった。
このため、従来の搭載構造においては、前方からの荷重が車体に掛かる場合に、重量のある燃料タンクが慣性力で車体前方に押し出されると、燃料タンクを支持するフレームなどの後方側接合部が車体から剥がれて変形してしまい、燃料タンクからの荷重などを十分に吸収することができないという問題があった。一方、剛性を高めた専用の車体構造を採用した場合には、車体構造が複雑になるだけでなく、コスト高及び重量増大を招くという問題があった。
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡単な構造でタンク懸架ブラケットの接合部の剛性を高めることができ、前方からの荷重が車体に掛かった場合に燃料タンクが慣性力で車体前方に押し出されても、接合部が車体から剥がれ難くなり、燃料タンクからの荷重をサイドメンバ全体で効率良く吸収することが可能な車体後部のタンク懸架ブラケットの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車体幅方向の両側に車体前後方向へ延びるサイドメンバを設け、前記サイドメンバの上方に重心が前記サイドメンバよりも高い位置にある燃料タンクを車体幅方向に沿って配置し、前記サイドメンバの上面に前記燃料タンクを懸架するためのタンク懸架ブラケットを車体前後方向に設置し、前記タンク懸架ブラケットの前後に前記サイドメンバの上面と接合する接合部を設け、前記接合部が位置する前記サイドメンバの上面の裏側にリンフォースメントを配設した車体後部のタンク懸架ブラケットの取付構造において、前記リンフォースメントは、車体前後方向で2つに分割して形成され、前記接合部は、前記燃料タンクの懸架力点に対して車体斜め下方の車体後方側に配置されているとともに、前記リンフォースメントは、前記接合部から車体後方に延在するように配置されている。
【0008】
また、本発明において、前記サイドメンバの側部には、車体後方側の前記接合部と車体前後方向で重複するように、フックブラケットが接合されている。
【0009】
さらに、本発明において、前記フックブラケットは、車体上下方向に延在するブラケット本体とサポート部材とから構成され、これらブラケット本体とサポート部材とは、前記サイドメンバの対向する側部にそれぞれ接合されているとともに、前記サイドメンバの下側で互いに接合されている。
【発明の効果】
【0010】
上述の如く、本発明に係る車体後部のタンク懸架ブラケットの取付構造は、車体幅方向の両側に車体前後方向へ延びるサイドメンバを設け、前記サイドメンバの上方に重心が前記サイドメンバよりも高い位置にある燃料タンクを車体幅方向に沿って配置し、前記サイドメンバの上面に前記燃料タンクを懸架するためのタンク懸架ブラケットを車体前後方向に設置し、前記タンク懸架ブラケットの前後に前記サイドメンバの上面と接合する接合部を設け、前記接合部が位置する前記サイドメンバの上面の裏側にリンフォースメントを配設したものであって、前記リンフォースメントは、車体前後方向で2つに分割して形成され、前記接合部は、前記燃料タンクの懸架力点に対して車体斜め下方の車体後方側に配置されているとともに、前記リンフォースメントは、前記接合部から車体後方に延在するように配置されているので、タンク懸架ブラケット及びリンフォースメントのサイドメンバとの接合部の構造が複雑とならずに、タンク懸架ブラケット及びリンフォースメントの接合部の剛性を高めることができる。
【0011】
また、本発明の取付構造によれば、前方からの荷重が車体に掛かった場合に燃料タンクが慣性力で車体前方に押し出されても、車体前方へ向かう斜め上方の荷重に沿った方向にタンク懸架ブラケットの後方側の接合部が設けられているため、タンク懸架ブラケットの接合部がサイドメンバから剥がれ難くなり、当該接合部の変形を抑えることができる。
さらに、本発明の取付構造によれば、リンフォースメントが車体前後方向で2つに分割しているため、サイドメンバの燃料タンクの車体前方に位置する部分の応力集中はなくなり、車体前方へ向かう斜め上方の荷重をサイドメンバ全体で効率的に吸収できる。しかも、本発明の取付構造によれば、リンフォースメントが前記接合部から車体後方に延在しているため、荷重点、接合部及び後方側のリンフォースメントが燃料タンクからの荷重とは反対側の車体後方で斜め下方向に並ぶことになり、燃料タンクからの荷重をより一層効率的に吸収することができる。
【0012】
本発明において、前記サイドメンバの側部には、車体後方側の前記接合部と車体前後方向で重複するように、フックブラケットが接合されているので、タンク懸架ブラケットの接合部周辺のサイドメンバ側部の剛性を向上させることができ、サイドメンバの上面及びリンフォースメントで受けた荷重をサイドメンバの全体によって吸収でき、サイドメンバなどの変形を効果的に抑えることができる。
【0013】
また、本発明において、前記フックブラケットは、車体上下方向に延在するブラケット本体とサポート部材とから構成され、これらブラケット本体とサポート部材とは、前記サイドメンバの対向する側部にそれぞれ接合されているとともに、前記サイドメンバの下側で互いに接合されているので、サイドメンバの対向する側部を形成する2つの側面が左右2枚のプレートを一体化したブラケット本体及びサポート部材からなるフックブラケットにより挟まれて補強されることになる。したがって、本発明の取付構造によれば、燃料タンクからの荷重によるサイドメンバの局所的な変形を軽減することができ、当該荷重をサイドメンバの全体で吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るタンク懸架ブラケットの取付構造が適用される車両の車体後部において、リヤフロア上に設置した燃料タンク及びその周辺を示す斜視図である。
【図2】図1における燃料タンク及びその周辺を別の角度から見た斜視図である。
【図3】図1における燃料タンクの端部周辺を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るタンク懸架ブラケット及びサイドメンバを拡大して示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るタンク懸架ブラケット及びリンフォースメントを拡大して示す斜視図である。
【図6】図1における燃料タンク、タンク懸架ブラケット及びサイドメンバを側方から見たものであり、(a)はその初期形状での塑性歪状況の斜視図、(b)はその最終形状での塑性歪状況の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図6は本発明の実施形態に係る車体後部のタンク懸架ブラケットの取付構造を示すものである。
【0016】
本発明の実施形態に係るタンク懸架ブラケットの取付構造が適用される車両は、圧縮天然ガス等の気体燃料を用いて走行する自動車であり、車体後部には、図1及び図2に示すように、エンジンに供給される燃料(CNGなど)を蓄える燃料タンク1が搭載されている。また、本実施形態の車体後部には、一般的なガソリンエンジン搭載の自動車と同様、床面を形成するリヤフロア2、車体幅方向の両側に車体前後方向へ沿ってそれぞれ延在するサイドメンバ3、後輪を収容するリヤホイルハウス4、リヤクロスメンバ5、サイドエクステンションメンバ6等が設けられている。このうち、サイドメンバ3は、上面部3a、下面部3b、車体内側の側面部3c及び車体外側の側面部3dを有する閉断面構造に形成されている。なお、図において、矢印F方向は、車体前方を示している。
【0017】
本実施形態の燃料タンク1は、収容される燃料ガスの圧力を均等に分散させるべく長尺の円筒状に形成されており、長手方向を車体幅方向にしてリヤフロア2の上方に配置されている。しかも、燃料タンク1は、サイドメンバ3の上方であって、タンク本体の重心がサイドメンバ3よりも高い位置に配置されている。
また、燃料タンク1の車体幅方向の両側には、タンク本体を巻回して燃料タンク1を押さえるタンクバンド7が取付けられ、これらタンクバンド7の途中を着脱することによって、燃料タンク1が取外し可能に保持されるようになっている。
【0018】
本実施形態の各サイドメンバ3の上面部3aには、図2〜図5に示すように、燃料タンク1を懸架するためのタンク懸架ブラケット8が、車体前後方向にそれぞれ設置されている。これらタンク懸架ブラケット8は、所定の長さを有するパネル部材を長手方向に沿って直角に折り曲げることにより、垂直方向へ延びる幅広の支持片8aと水平方向へ延びる幅狭の取付片8bとを有する断面L字状に形成されており、長手方向が車体前後方向へ位置するように配置されている。なお、図4では、サイドメンバ3の上面部3aが省略して示されている。
【0019】
支持片8aの前後箇所には、図5に示すように、タンクホルダパイプ9の端部を差し込んで支持する差込孔10がそれぞれ穿設されており、左右両側のパイプ端部を各差込孔10に差し込んだ状態では、タンクホルダパイプ9が車体幅方向に沿って掛け渡されている。支持片8aの前後中間部分は、燃料タンク1との干渉を避けるために、車体下方へ向かって凹んだ形状に形成されている。
タンクホルダパイプ9は、前後に位置する燃料タンク1の車体幅方向中間部分を載せて保持する部材である。したがって、燃料タンク1は、前後2本のタンクホルダパイプ9を介してタンク懸架ブラケット8に懸架されるように構成されている(図2及び図3参照)。
【0020】
一方、取付片8bの前後箇所には、サイドメンバ3の上面部3aと接合する接合部としてのボルト孔11がそれぞれ穿設されており、これらボルト孔11に締付ボルト12を挿入して締付けることによって、タンク懸架ブラケット8がサイドメンバ3のサイドメンバ3の上面部3aに取付けられることになる(図2及び図3参照)。なお、サイドメンバ3の上面部3aには、締付ボルト12のネジ部を通す貫通孔(図示せず)がボルト孔11と対応して設けられている。
また、接合部としての各ボルト孔11は、図3に示すように、燃料タンク1の懸架力点Pに対して車体斜め下方の車体後方側にそれぞれ配置されており、この配置関係によって車体前方からの荷重が車体に掛かった場合に、燃料タンク1の車体前方への慣性力を効果的に吸収するように構成されている。ここで、懸架力点Pは、支持片8aの差込孔10に差し込まれて支持されている状態のタンクホルダパイプ9の端部に位置している。
【0021】
さらに、本実施形態のタンク懸架ブラケット8の接合部(取付片8bのボルト孔11)が位置するサイドメンバ3の上面部3aの裏側には、図4(サイドメンバ3の上面部3aを省略)及び図5に示すように、接合部の剛性を高めるマウントリンフォースメント13,14がそれぞれ配設されている。
すなわち、本実施形態のマウントリンフォースメントは、車体前後方向でフロントマウントリンフォースメント13及びリヤマウントリンフォースメント14の2つに分割されて形成されており、これらリンフォースメント13,14は、タンク懸架ブラケット8の接合部から車体後方に延在するように配置されている。
【0022】
このため、リンフォースメント13,14は、逆向き配置の断面U字状に形成されており、平坦な上面13a,14aには、締付ボルト12を挿入する挿入孔15が取付片8bのボルト孔11及びサイドメンバ3の上面部3aの貫通孔(図示せず)と対応して穿設されている。そして、上面13a,14aの裏側には、挿入孔15を挿入した締付ボルト12と螺合させる溶接ナット(図示せず)がそれぞれ固着されている。さらに、リンフォースメント13,14の車体内外側の少なくとも一方には、両端部を車体前後方向で外側に折り曲げることにより形成した接合フランジ13b,14bが設けられている。
したがって、リンフォースメント13,14は、これをサイドメンバ3内の所定位置に配置した状態で、接合フランジ13b,14bを側面部3c,3dに重ね合わせて溶接することによって、サイドメンバ3に接合されている。
【0023】
また、本実施形態の各サイドメンバ3の側部には、図4に示すように、車体後側のタンク懸架ブラケット8の接合部(取付片8bのボルト孔11)と車体前後方向で重複するように、車体上下方向へ延在するフックブラケット16が接合されている。このフックブラケット16は、車体外側に配置されるブラケット本体17と、車体内側に配置されるサポート部材18とから構成されており、ブラケット本体17及びサポート部材18の下部側は、サイドメンバ3の下面部3bから突出する長さにそれぞれ形成されている。
ブラケット本体17の上部は、サイドメンバ3の対向する車体外側の側面部3dの外面に接合され、サポート部材18の上部は、サイドメンバ3の対向する車体外側の側面部3dの内面に接合されており、ブラケット本体17及びサポート部材18の下部は、サイドメンバ3の下面部3bより下側で、互いに接合されている。
【0024】
本発明の実施形態の取付構造によってタンク懸架ブラケット8を取付けるには、あらかじめ、2つに分割されたフロントマウントリンフォースメント13とリヤマウントリンフォースメント14をサイドメンバ3内の車体前後方向の所定位置で側面部3c,3dにそれぞれ接合しておく。そして、前後のタンクホルダパイプ9を掛け渡すべく、各パイプ端部を車体幅方向の両側に位置するタンク懸架ブラケット8の支持片8aの前後差込孔10にそれぞれ差し込んで取付け(アーク溶接)、燃料タンク1を前後のタンクホルダパイプ9の車体幅方向中間部分に載せるとともに、タンク本体の長手方向の両側を巻回するタンクバンド7を結合させて固定することにより保持する。次いで、タンク懸架ブラケット8をサイドメンバ3の上面部3aに載せ、締付ボルト12を取付片8bの前後ボルト孔11、上面部3aの貫通孔(図示せず)及びリンフォースメント13,14の挿入孔15を介して溶接ナット(図示せず)に螺合させて締付けると、タンク懸架ブラケット8は、サイドメンバ3の上面部3aに取付けられることになる。したがって、燃料タンク1は、重心がサイドメンバ3よりも高い位置にある状態で、前後のタンクホルダパイプ9を介してタンク懸架ブラケット8に懸架され、車体後部のサイドメンバ3の上方に配置されて搭載されることになる(図1〜図3参照)。
【0025】
このように、本発明の実施形態に係る車体後部のタンク懸架ブラケット8の取付構造においては、サイドメンバ3の上面部3aの裏側に接合するリンフォースメント13,14が車体前後方向で2つに分割され、タンク懸架ブラケット8の接合部となる取付片8bのボルト孔11が燃料タンク1の懸架力点Pとなる支持片8aの差込孔10に対して車体斜め下方の車体後方側にそれぞれ配置され、かつリンフォースメント13,14が取付片8bのボルト孔11から車体後方に延在して配置されているため、タンク懸架ブラケット8及びリンフォースメント13,14のサイドメンバ3における接合部の剛性向上を図ることができる。
【0026】
したがって、本発明の実施形態に係るタンク懸架ブラケット8の取付構造においては、車体前方からの荷重が車体に掛かった場合、図6(a)及び(b)に示すように、燃料タンク1が慣性力で車体前方(矢印F方向)へ押し出されるが、タンクバンド7によって押さえられ、タンクバンド懸架点を支点、タンク重心の車体前方への力を力点とした燃料タンク1の回転モーメントが起こり、矢印Mで示すように、後方側のタンクホルダパイプ9には車体前方斜め上に力が働き、前方側のタンクホルダパイプ9には車体前方斜め下に力が働くことになり、かつ前後のタンクホルダパイプ9からタンク懸架ブラケット8に同様の力が働くことになっても、車体前方斜め上へ向かう力の方向にタンク懸架ブラケット8の接合部が設けられているので、タンク懸架ブラケット8の接合部がサイドメンバ3から剥がれ難く、タンク懸架ブラケット8及びサイドメンバ3の変形が小さくなり、慣性力等を効果的に吸収することができる。
一方、従来の構造では、車体前方からの荷重が車体に掛かった場合、燃料タンクを懸架する一体型タンク懸架ブラケットの後部接合部がサイドメンバから剥がれて、タンク懸架ブラケットが車体上方へ変形してしまう。さらに、タンク懸架ブラケットの後部接合部を接合させるサイドメンバの上面の裏側にリンフォースメントが設けられている場合は、当該部分の剛性が高くなっているため、図6に示すように、タンク懸架ブラケットの車体前方に位置するサイドメンバの湾曲部Xを基点として、サイドメンバの折れ変形を促してしまうことが起こる。本実施形態の取付構造によれば、サイドメンバ3の湾曲部Xの応力集中は無いため、かかる問題が生じることはなく、燃料タンク1からの荷重をサイドメンバ3の全体で効率良く吸収することができる。
【0027】
また、本実施形態の取付構造によれば、サイドメンバ3の側面部3dには車体後方側のタンク懸架ブラケット8の接合部と車体前後方向で重複するように、ブラケット本体17及びサポート部材18からなるフックブラケット16がサイドメンバ3の側面部3dを挟んで接合されているので、タンク懸架ブラケット8の接合部周辺のサイドメンバ3の剛性を向上させることが可能となり、サイドメンバ3の上面部3a及びリンフォースメント13,14で受けた荷重や燃料タンク1からの荷重をサイドメンバ3の全体によって吸収できるとともに、サイドメンバ3の局所的な変形を抑えることができる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、既述の実施形態におけるタンク懸架ブラケット8は、前後のタンクホルダパイプ9を支持でき、これらパイプ支持部(燃料タンク1の懸架力点P)と既述の実施形態のような特定の配置関係にあるサイドメンバ3の前後2箇所で接合できる形状に形成されていれば、他の形状を選択することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 燃料タンク
2 リヤフロア
3 サイドメンバ
3a 上面部
3d 側面部
7 タンクバンド
8 タンク懸架ブラケット
8a 支持片
8b 取付片
9 タンクホルダパイプ
10 差込孔
11 ボルト孔
12 締付ボルト
13,14 マウントリンフォースメント
13a,14a 上面
13b,14b 接合フランジ
15 挿入孔
16 フックブラケット
17 ブラケット本体
18 サポート部材
P 懸架力点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体幅方向の両側に車体前後方向へ延びるサイドメンバを設け、前記サイドメンバの上方に重心が前記サイドメンバよりも高い位置にある燃料タンクを車体幅方向に沿って配置し、前記サイドメンバの上面に前記燃料タンクを懸架するためのタンク懸架ブラケットを車体前後方向に設置し、前記タンク懸架ブラケットの前後に前記サイドメンバの上面と接合する接合部を設け、前記接合部が位置する前記サイドメンバの上面の裏側にリンフォースメントを配設した車体後部のタンク懸架ブラケットの取付構造において、
前記リンフォースメントは、車体前後方向で2つに分割して形成され、前記接合部は、前記燃料タンクの懸架力点に対して車体斜め下方の車体後方側に配置されているとともに、前記リンフォースメントは、前記接合部から車体後方に延在するように配置されていることを特徴とする車体後部のタンク懸架ブラケットの取付構造。
【請求項2】
前記サイドメンバの側部には、車体後方側の前記接合部と車体前後方向で重複するように、フックブラケットが接合されていることを特徴とする請求項1に記載の車体後部のタンク懸架ブラケットの取付構造。
【請求項3】
前記フックブラケットは、車体上下方向に延在するブラケット本体とサポート部材とから構成され、これらブラケット本体とサポート部材とは、前記サイドメンバの対向する側部にそれぞれ接合されているとともに、前記サイドメンバの下側で互いに接合されていることを特徴とする請求項2に記載の車体後部のタンク懸架ブラケットの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−40993(P2012−40993A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185236(P2010−185236)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】