説明

車体後部構造

【課題】 ショックアブソーバ取付部及びバンプストッパー部をそれぞれ効果的に補強することができて強度・剛性の向上を図ることができると共に、バンプストッパーゴムがバンプストッパーパネルに当たった時にサイドフレームとフロアパネル7及びリヤホイールハウジング1とを結合しているスポット打点に剥離の問題が生じないようにすることができる車体後部構造を提供する。
【解決手段】 リヤホイールハウジング1の周側壁の車外側にショックアブソーバ取付部αとバンプストッパー部βとを設けた車体後部構造において、ショックアブソーバ取付部αを補強する補強部材(例えば、ショックアブソーバプレート2)を拡大すると共に、バンプストッパー部βまで延長し、この延長部2aによりバンプストッパー部βを補強する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関し、さらに詳しくは、リヤホイールハウジングの周側壁の車外側にショックアブソーバ取付部とバンプストッパー部とを設けた車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6及び図7は、従来の自動車の車体後部構造を示すものであって、リヤホイールハウジング1の周側壁の車外側にショックアブソーバ取付部α及びバンプストッパー部βが設けられている。すなわち、リヤホイールハウジング1の側壁部1aには、ショックアブソーバ取付部αを補強する補強部材としてのショックアブソーバプレート2、及び、ショックアブソーバ組付用のショックアブソーバブラケット3が取付けられると共に、ショックアブソーバブラケット3に隣接する箇所にバンプストッパーパネル4が取付けられている。そして、図7に示すように、ショックアブソーバ5の上端がショックアブソーバブラケット3に組付けられる一方、図8に示すように、バンプストッパーパネル4に形成された受け面4aが、車体側に固定配置されたバンプストッパーゴム6に対応して配置されている。
【0003】
ここで、バンプストッパー部βの構造につき図8を参照して述べると、次の通りである。まず、図8において、7はフロアパネル、8はこのフロアパネル7の側部下方に配設されたサイドフレーム、9はこのサイドフレーム8を補強するためにサイドフレーム8の内面に溶接結合されたサイドフレームリーンフォースメントであって、サイドフレーム8を挟んでフロアパネル7とリヤホイールハウジング1とが接合された3枚重ねの状態でスポット溶接W1にて溶接結合されると共に、このスポット溶接W1より上方箇所においてサイドフレーム8とリヤホイールハウジング1とが2枚重ねの状態でスポット溶接W2にて溶接結合されている。そして、フロアパネル7より下方の箇所においてサイドフレーム8とバンプストッパーパネル4とが接合された状態の下で、ボルト10と、ナット11及びサイドフレーム8に予め溶接結合されたナットプレート12とを用いて共締め固定されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8に示すような従来構造にあっては、バンプストッパーゴム6がバンプストッパーパネル4の受け面4aに当たった時に、リヤホイールハウジング1,サイドフレーム8,及びフロアパネル7の接合面(スポット溶接W1,W2によるスポット溶接箇所を含む部分における接合面X,Y)に対して、図8において矢印で示す方向の力Fが加わる。その時、前記接合面においては、サイドフレーム8と、フロアパネル7及びリヤホイールハウジング1とを結合しているスポット打点(W1,W2)に対しては、既述の力Fは剥離方向に作用する力となる。そのため、スポット溶接部の強度が不利となるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような不具合を解消するためになされたものであって、その目的は、ショックアブソーバ取付部及びバンプストッパー部をそれぞれ効果的に補強することができて強度・剛性の向上を図ることができると共に、バンプストッパーゴムがバンプストッパーパネルに当たった時にサイドフレームとフロアパネル7及びリヤホイールハウジング1とを結合しているスポット打点に剥離の問題が生じないようにすることができる車体後部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明では、リヤホイールハウジングの周側壁の車外側にショックアブソーバ取付部とバンプストッパー部とを設けた車体後部構造において、前記ショックアブソーバ取付部を補強する補強部材を拡大すると共に、前記バンプストッパー部まで延長し、この延長部により前記バンプストッパー部を補強するようにしている。
また、本発明では、前記補強部材を介して、前記ショックアブソーバ取付部と前記バンプストッパー部とを一体的に結合するようにしている。
また、本発明では、前記補強部材を、前記リヤホイールハウジングの側壁部に接合させて固定すると共に、前記バンプストッパー部の固定部のうちの少なくとも上側固定箇所に接合させて固定し、これにより前記バンプストッパー部の少なくとも上側固定箇所を補強するようにしている。
また、本発明では、前記補強部材を、前記リヤホイールハウジングの側壁部に接合させて固定すると共に、前記バンプストッパー部の固定部の全部に接合させて固定し、これにより前記バンプストッパー部の固定部の全体を補強するようにしている。
また、本発明では、前記補強部材を延長し、この延長部を前記バンプストッパーパネル及び前記サイドフレームに共締め固定するようにしている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の本発明は、ショックアブソーバ取付部を補強する補強部材を拡大すると共に、バンプストッパー部まで延長し、この延長部によりバンプストッパー部を補強するようにしたものであるから、ショックアブソーバ取付部及びバンプストッパー部の両部をそれぞれ効果的に補強することができて強度・剛性の向上を図ることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の本発明は、補強部材を介して、ショックアブソーバ取付部とバンプストッパー部とを一体的に結合するようにしたものであるから、ショックアブソーバ取付部とバンプストッパー部とを1つの補強部材で相互に効果的に補強することができると共に、バンプストッパー部の補強部材を省略できて部品点数の削減を図ることが可能となる。
【0009】
また、請求項3に記載の本発明は、補強部材を、リヤホイールハウジングの側壁部に接合させて固定すると共に、バンプストッパー部の固定部のうちの少なくとも上側固定箇所に接合させて固定し、これによりバンプストッパー部の少なくとも上側固定箇所を補強するようにしたものであるから、リヤホイールハウジングの側壁部の強度・剛性を向上させることができると共に、リヤホイールハウジングとサイドフレームとの溶接結合部の強度・剛性を向上させることができる。
【0010】
また、請求項4に記載の本発明は、補強部材を、リヤホイールハウジングの側壁部に接合させて固定すると共に、バンプストッパー部の固定部の全部に接合させて固定し、これによりバンプストッパー部の固定部の全体を補強するようにしたものであるから、リヤホイールハウジングの側壁部の強度・剛性を向上させることができると共に、バンプストッパー部の強度・剛性を向上させることができる。
【0011】
また、請求項5に記載の本発明は、補強部材を延長し、この延長部をバンプストッパーパネル及びサイドフレームに共締め固定するようにしたものであるから、サイドフレームと、バンプストッパーゴムがバンプストッパーパネルに当たった時にフロアパネル7及びリヤホイールハウジング1とを結合しているスポット打点に剥離方向の力が作用しないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る車体後部構造について図1〜図5を参照して説明する。なお、図1〜図5において、図6〜図8と同様の部分には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0013】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る車体後部構造の要部を示すものであって、本実施形態の車体後部構造にあっては、従来と同様にリヤホイールハウジング1の周側壁の車外側にショックアブソーバ取付部αとバンプストッパー部βとが設けられている。本実施形態においては、ショックアブソーバ取付部αを補強する補強部材としてリヤホイールハウジング1の側壁部1aに取付けられるショックアブソーバプレート2が従来のものよりも拡大されており(図1と図6とを比較参照)、このショックアブソーバプレート2の側端部が延長部2aとしてバンプストッパーパネル4の取付部(バンプストッパー部)にまで車両前後方向の後方へ向けて延長されている。さらに、ショックアブソーバプレート2の延長部2aの下辺には、バンプストッパーパネル4の受け面4aが接合される垂下片2bが延設され、この垂下片2bにボルト挿通孔14が形成されている。そして、上述のショックアブソーバプレート2が、図1に示す如くリヤホイールハウジング1の側壁部1aに複数箇所のスポット溶接W3により溶接結合されている。これにより、バンプストッパーパネル4の取付部が、拡大されたショックアブソーバプレート2によって一層効果的に補強されると共に、バンプストッパーパネル4の取付部すなわちバンプストッパー部βが、ショックアブソーバプレート2の延長部2aによって補強されている。
【0014】
次に、車体の側部を構成するサイドフレーム8,車両フロアを構成するフロアパネル7,補強部材としてのショックアブソーバプレート2,バンプストッパーゴム6を受けるバンプストッパーパネル4,及びリヤホイールハウジング1の結合構造について述べると、次の通りである。まず、図3に示すように、ショックアブソーバプレート2の延長部2aの垂下片2bをサイドフレーム8とバンプストッパーパネル4との間に挟み込んだ状態の下でボルト10とナット11及びナットプレート12とを用いてフロアパネル7の下方箇所において共締め固定されている。
【0015】
また、ボルト10によるバンプストッパーパネル4の締付け固定部の上方箇所では、ショックアブソーバプレート2の延長部2aとリヤホイールハウジング1の側壁部1aとが互いに接合されてスポット溶接W4,W5にて溶接結合され、そのスポット溶接W4,W5の下方箇所においてショックアブソーバプレート2の延長部2aとリヤホイールハウジング1の側壁部1aとサイドフレーム8の側壁部8aとが接合されてスポット溶接W6にて溶接結合され、そのスポット溶接W6の下方箇所においてショックアブソーバプレート2の延長部2aとサイドフレーム8の側壁部8aとフロアパネル7の屈曲縁部7aとが接合されてスポット溶接W7にて溶接結合されている。これにより、バンプストッパー部βの上側固定箇所の補強、並びに、溶接部の強度の向上が図られている。また、上述のバンプストッパープレート2は、図2に示すように、前記ボルト10による共締め固定箇所とは別の下方箇所において、ボルト20,20及びサイドフレームリーンフォースメント9に予め溶接結合されたナット15(図5参照)にてサイドフレーム8及びサイドフレームリーンフォースメント9に共締め固定されている。
【0016】
一方、ショックアブソーバプレート2の本体部分は、図4に示すようにリヤホイールハウジング1とショックアブソーバブラケット3との間に挟み込まれた状態でこれらの3部材が複数のスポット溶接W3(図1参照)にて溶接結合されている。従って、ショックアブソーバ取付部αとバンプストッパー部βとは、補強部材であるショックアブソーバプレート2を介して互いに一体的に結合されている。
【0017】
このような車体後部構造によれば、ショックアブソーバ取付部αの補強部材としてのショックアブソーバプレート2を拡大し、かつ、この延長部2aにてバンプストッパー部βを補強するようにしているので、ショックアブソーバ取付部α及びバンプストッパー部βをそれぞれ効果的に補強することができて強度・剛性の向上を図ることができる。また、ボルト10によるバンプストッパーパネル4及びサイドフレーム8の共締め固定の構造(図3参照)を採用するようにしているので、バンプストッパーゴム6がバンプストッパーパネル4に当たった時に作用する図3の矢印方向の力Fが作用した際に、ショックアブソーバプレート2とリヤホイールハウジング1の側壁部1aとの接合面A(スポット溶接W4,W5における接合面)、ショックアブソーバプレート2とサイドフレーム8の側壁部8aとリヤホイールハウジング1の側壁部1aとの接合面B(スポット溶接W6における接合面)、ショックアブソーバプレート2とサイドフレーム8の側壁部8aとフロアパネル7の屈曲縁部7aとの接合面C(スポット溶接W7における接合面)には、剥離方向ではなく、ショックアブソーバプレート2を押し付ける方向に力が加わることになる。そのため、ショックアブソーバプレート2の延長部2aと、サイドフレーム8の側壁部8aと、フロアパネル7の屈曲縁部7a及びリヤホイールハウジング1の側壁部1aとを結合しているスポット溶接部(スポット溶接W4〜W7の箇所)の強度の向上を図ることができる。
【0018】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、既述の実施形態では、ショックアブソーバプレート2によりバンプストッパーパネル4の上部のボルト固定部(ボルト10による共締め固定部)までを補強するようにしているが、ボルト10の下側の固定部までの全体を補強するようにしてもよい。すなわち、図5に示すように、補強部材としてのショックアブソーバプレート2を、リヤホイールハウジング1の側壁部1aに接合させて固定すると共に、バンプストッパー部βの固定部の全部に接合させて固定し、これによりバンプストッパー部βの固定部の全体を補強するようにしてもよい。この場合、ショックアブソーバプレート2の下部は、ボルト10による共締め固定箇所とは別の下方箇所において、ボルト14及びサイドフレームリーンフォースメント9に予め溶接結合されたナット15にて、バンプストッパーパネル4,サイドフレーム8,及びサイドフレームリーンフォースメント9に共締め固定してよい(図5参照)。また、既述の実施形態では、ショックアブソーバブラケット3の取付部とバンプストッパーパネル4の取付部とを一体にしたショックアブソーバプレート2を用いているが、上述の取付部に対応するようにそれぞれ別個に形成して、それらを溶接等により一体にしたものを用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る車体後部構造を示す斜視図である。
【図2】図1の車体後部構造の分解斜視図である。
【図3】図2におけるA−A線拡大断面図である。
【図4】図2におけるB−B線拡大断面図である。
【図5】本発明の車体後部構造の変形例を示す断面図であって、図2にC−C線に対応する箇所で切断した拡大断面図である。
【図6】従来の車体後部構造を示す斜視図である。
【図7】図6の車体後部構造を車体下側から見た斜視図である。
【図8】図7におけるD−D線拡大断面図である。
【図9】図8において矢印Rで示す部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 リヤホイールハウジング
1a 側壁部
2 ショックアブソーバプレート(補強部材)
2a 延長部
2b 垂下片
3 ショックアブソーバブラケット
4 バンプストッパーパネル
4a 受け面
5 ショックアブソーバ
6 バンプストッパーゴム
7 フロアパネル
7a 屈曲縁部
8 サイドフレーム
8a 側壁部
A,B,C 接合面
α ショックアブソーバ取付部
β バンプストッパー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤホイールハウジングの周側壁の車外側にショックアブソーバ取付部とバンプストッパー部とを設けた車体後部構造において、前記ショックアブソーバ取付部を補強する補強部材を拡大すると共に、前記バンプストッパー部まで延長し、この延長部により前記バンプストッパー部を補強したことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記補強部材を介して、前記ショックアブソーバ取付部と前記バンプストッパー部とを一体的に結合したことを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記補強部材を、前記リヤホイールハウジングの側壁部に接合させて固定すると共に、前記バンプストッパー部の固定部のうちの少なくとも上側固定箇所に接合させて固定し、これにより前記バンプストッパー部の少なくとも上側固定箇所を補強したことを特徴とする請求項1又は2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記補強部材を、前記リヤホイールハウジングの側壁部に接合させて固定すると共に、前記バンプストッパー部の固定部の全部に接合させて固定し、これにより前記バンプストッパー部の固定部の全体を補強したことを特徴とする請求項1又は2に記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記補強部材を延長し、この延長部を前記バンプストッパーパネル及び前記サイドフレームに共締め固定したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−282089(P2006−282089A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107040(P2005−107040)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】