説明

車体後部構造

【課題】リヤホイールハウスインナに入力された上下荷重に対して、外側レインフォースからリヤホイールハウスアウタに至る支持剛性を弱めることにより、リヤピラーインナパネルの撓みを許容してリヤピラーインナパネルと内側レインフォースとの接合部に荷重が集中するのを抑制できる車体後部構造の提供を図る。
【解決手段】外側レインフォース6の下端部65の接合位置を、リヤピラーインナパネル21の下端部21aを接合したリヤホイールハウスアウタ31とリヤホイールハウスインナ32との接合部分33の近傍に設定して、外側レインフォース6の下端部をリヤホイールハウスアウタ31の上面31bから分離することにより、外側レインフォース6によるリヤホイールハウスアウタ31への支持を無くし、リヤピラーインナパネル21の内外方向の撓みを許容して、リヤホイールハウスインナ32に入力されるサスペンションからの上下荷重Fを逃がす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部側面のリヤホイールハウス上方部分を補強した車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車体後部構造としては、リヤピラーインナパネルの外側面に略ハット形断面の外側レインフォース(レインフォースメント)を接合して補強し、この外側レインフォースの下端部をリヤホイールハウスのリヤホイールハウスアウタの上面に接合してある。
【0003】
また、リヤピラーインナパネルの内側面には、前記外側レインフォースに対向させて内側レインフォース(他のレインフォースメント)を接合し、該内側レインフォースおよび前記外側レインフォースとリヤピラーインナパネルとの間にそれぞれ閉断面が形成されるようになっている。
【0004】
前記内側レインフォースは、リヤサスペンションからの突き上げ荷重に対する剛性を高めており、この内側レインフォースの下端部はリヤホイールハウスインナの上面に接合される。
【0005】
(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−190868号公報(第3−4頁、図1−図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来の車体後部構造では、リヤピラーインナパネルの外側面に接合した外側レインフォースは、リヤホイールハウスアウタの上面に接合されて、該リヤホイールハウスアウタとリヤピラーインナパネルとの間の剛性を高めている。
【0007】
一方、リヤピラーインナパネルの内側面に接合した内側レインフォースは、リヤホイールハウスインナの上面に接合されて、該リヤホイールハウスインナとリヤピラーインナパネルとの間の剛性を高めている。
【0008】
ところが、前記リヤホイールハウスインナにリヤサスペンションからの突き上げや引き下げ等の上下荷重が入力した際に、その上下荷重は内側レインフォースを介してリヤピラーインナパネルに入力され、該リヤピラーインナパネルを車体内外方向に撓まそうとするが、該リヤピラーインナパネルの外側面は前記外側レインフォースの剛性をもってリヤホイールハウスアウタの上面にしっかりと支持されている。
【0009】
このため、前記リヤホイールハウスインナに入力された上下荷重は、リヤピラーインナパネルの車体外方への撓みが抑えられるため、該リヤピラーインナパネルと内側レインフォースとの接合部の上端部分に剥離荷重として集中して繰り返し入力される可能性がある。
【0010】
そこで、本発明は、リヤホイールハウスインナに入力された上下荷重に対して、外側レインフォースからリヤホイールハウスアウタに至る支持剛性を弱めることにより、リヤピラーインナパネルの撓みを許容してリヤピラーインナパネルと内側レインフォースとの接合部に剥離荷重が集中するのを抑制できる車体後部構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車体後部構造にあっては、車体後部側面を形成するリヤピラーインナパネルのリヤホイールハウス上方部分の外側面に接合されて、該リヤピラーインナパネルとで閉断面を形成する外側レインフォースと、前記リヤピラーインナパネルの内側面に前記外側レインフォースに対向して接合され、該リヤピラーインナパネルとで閉断面を形成するとともに、下端部がリヤホイールハウスインナの上面に接合された内側レインフォースと、を備えた車体後部構造であって、前記外側レインフォースの下端部の接合位置を、リヤピラーインナパネルの下端部を接合するリヤホイールハウスアウタとリヤホイールハウスインナとの接合部分、若しくはその近傍に設定し、前記外側レインフォースの下端部をリヤホイールハウスアウタの上面から分離したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リヤピラーインナパネルとの間に閉断面を形成した外側レインフォースの下端部を、リヤピラーインナパネルの下端部を接合したリヤホイールハウスアウタとリヤホイールハウスインナとの接合部分、若しくはその近傍に接合して、前記外側レインフォースの下端部をリヤホイールハウスアウタの上面から分離したので、外側レインフォースのリヤホイールハウスアウタ上面への支持を無くして、リヤピラーインナパネルの車体内外方向の撓みが許容される。
【0013】
このため、リヤホイールハウスインナに入力されるリヤサスペンションからの突き上げや引き下げ等の上下荷重が、内側レインフォースからリヤピラーインナパネルに入力された際に、該リヤピラーインナパネルの撓みによって前記上下荷重を逃がすことができるようになり、ひいては、リヤピラーインナパネルと内側レインフォースとの接合部の上端部分に剥離荷重が集中するのを抑制して、その接合部に剥離が発生するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0015】
図1〜図3は本発明にかかる車体後部構造の一実施形態を示し、図1はボディサイドアウタパネルを取り外してリヤピラー内部を見た側面図、図2はボディサイドアウタパネルを取り外してリヤピラーインナパネルの一部とリヤウエストレインフォースの前半部分を切除してリヤピラー内部を見た側面図、図3は図1中A−A線に沿った拡大断面図である。
【0016】
本実施形態の車体後部構造は、ハッチバックタイプやワンボックスタイプ若しくはステーションワゴンタイプ等のバックドアを備えた車両に適用され、図1〜図3に示すように車体1の後部側面がリヤピラー2によって構成され、該リヤピラー2の下部にリヤホイールハウス3が設けられるとともに、上部にリヤクォータウインド開口部4が形成され、前記リヤピラー2の後端がバックドア開口部となる。
【0017】
前記リヤピラー2の車体内側はリヤピラーインナパネル21で形成され、該リヤピラーインナパネル21の車体外方には所定の空間部を設けてボディサイドアウタパネル22(図3参照)が配置される。また、前記リヤホイールハウス3は、リヤホイールハウスアウタ31とリヤホイールハウスインナ32(図3参照)とによって構成され、図3に示すようにそれぞれが対向する周縁部を折曲したフランジ部31a,32aが互いに接合(接合部33)される。
【0018】
そして、前記リヤピラーインナパネル21と前記ボディサイドアウタパネル22の中央部分は、リヤクォータウインド開口部4の周縁部分で接合(接合部23)されるとともに、リヤピラーインナパネル21の下端部21aは、前記リヤホイールハウス3のフランジ部31a,32aの接合部33に接合され、かつ、ボディサイドアウタパネル22の下端部は、リヤホイールハウスアウタ31の外側端に加締めて結合される。
【0019】
前記リヤクォータウインド開口部4には、図3に示すようにリヤクォータウインドガラス4aが嵌め込み固定されるとともに、該リヤクォータウインドガラス4aの上側縁はルーフサイドレール5に固定される。
【0020】
前記リヤピラーインナパネル21の外側面(図3中左側面)の略中央部分には、リヤホイールハウス3から上方のリヤクォータウインド開口部4の下辺部に亘って、リヤピラーインナパネル21とで閉断面を形成する外側レインフォース6が接合される。
【0021】
外側レインフォース6は、外側壁61と前後両側壁62およびフランジ部63からなるハット形断面に形成されて上下方向に延在し、そのハット形断面部分のフランジ部63が前記リヤピラーインナパネル21に接合される。
【0022】
また、前記外側レインフォース6の上端部には舌片64が延設されており、この舌片64がリヤクォータウインド開口部4の下辺部で前記リヤピラーインナパネル21と前記ボディサイドアウタパネル22との接合部23間に挟み込まれて接合されている。
【0023】
前記リヤピラーインナパネル21の内側面(図3中右側面)には、前記外側レインフォース6に対向して、リヤピラーインナパネル21とで閉断面を形成する内側レインフォース7が接合される。
【0024】
内側レインフォース7は、図3に示すように前記外側レインフォース6と略同様に、内側壁71、前後両側壁72、フランジ部73からなるハット形断面に形成されて上下方向に延在し、そのハット形断面部分のフランジ部73が前記リヤピラーインナパネル21に接合される。
【0025】
また、内側レインフォース7は、図3に示すように縦方向の断面形状が略三角形状を成し、その頂点部となる上端部74が前記リヤピラーインナパネル21のリヤホイールハウス3とリヤクォータウインド開口部4の下縁との間の略中腹部に位置して接合されるとともに、底辺部となる下端部75がリヤホイールハウスインナ32の上面32bに接合される。
【0026】
ここで、本発明にあっては、前記外側レインフォース6の下端部65の接合位置を、リヤピラーインナパネル21の下端部21aを接合したリヤホイールハウスアウタ31とリヤホイールハウスインナ32との接合部分33の近傍に設定し、前記外側レインフォース6をリヤホイールハウスアウタ31の上面31bから分離してある。
【0027】
勿論、前記外側レインフォース6の下端部65の接合位置は、前記接合部分33の近傍に限ることなく、該接合部分33に設定することもできる。
【0028】
前記外側レインフォース6は、その縦方向の断面形状が前記内側レインフォース7とは上下逆となる略三角形状を成し、前記下端部65が頂点部となっていて、前記外側レインフォース6の外側壁61と前記内側レインフォース7の内側壁71とを略平行に配置してある。
【0029】
また、本実施形態では図1,図2に示すように前記外側レインフォース6から車両後方(図中右方)に向かって、前記リヤピラーインナパネル21との間で閉断面を形成するリヤウエストレインフォース8が付設される。
【0030】
リヤウエストレインフォース8は、リヤピラーインナパネル21のリヤクォータウインド開口部4の下辺部にほぼ沿って配置され、前後方向稜線8Rを頂点としてその上下に上部傾斜面81と下部傾斜面82とによって略山形に折曲形成され、上部傾斜面81の上縁部に設けたフランジ部81aがリヤクォータウインド開口部4の下縁に接合されるとともに、下部傾斜面82の下縁部に設けたフランジ部82aがリヤピラーインナパネル21の外側面に接合される。
【0031】
そして、前記リヤウエストレインフォース8の前端部に設けた前端フランジ部83が、前記外側レインフォース6の外側壁61に被せるようにして接合されるとともに、リヤウエストレインフォース8の後端部に設けた後端フランジ部84が、リヤピラーインナパネル21の後端縁に設けたリヤピラーレインフォース9に接合される。
【0032】
このとき、前記外側レインフォース6の外側壁61の後縁に形成された上下方向稜線6Rと、前記リヤウエストレインフォース8の前記前後方向稜線8Rと、を滑らかな曲線を描いて連続させてある。
【0033】
以上の構成により本実施形態の車体後部構造によれば、リヤピラーインナパネル21との間に閉断面を形成した外側レインフォース6の下端部65を、リヤピラーインナパネル21の下端部21aを接合したリヤホイールハウスアウタ31とリヤホイールハウスインナ32との接合部分33、若しくはその近傍に接合して、前記外側レインフォース6をリヤホイールハウスアウタ31の上面31bから分離したので、外側レインフォース6によるリヤホイールハウスアウタ31への支持を無くして、リヤピラーインナパネル21の車体内外方向の撓みが許容される。
【0034】
このため、リヤホイールハウスインナ32にリヤサスペンションから突き上げや引き下げ等の上下荷重Fが内側レインフォース7からリヤピラーインナパネル21に入力された際に、該リヤピラーインナパネル21の撓みによって前記上下荷重Fを逃がすことができるようになり、ひいては、リヤピラーインナパネル21と内側レインフォース7との接合部の上端部分に剥離荷重が集中するのを抑制して、その接合部に剥離が発生するのを防止することができる。
【0035】
また、前記外側レインフォース6はリヤホイールハウスアウタ31への結合部分が排除されるため、その分、外側レインフォース6の面積が縮小されて軽量化を達成できるとともに、外側レインフォース6とリヤホイールハウスアウタ31との結合作業が省略されることにより作業性の簡素化を図ることができる。
【0036】
更に、本実施形態では前記外側レインフォース6の外側壁61と前記内側レインフォース7の内側壁71とを略平行に配置したので、これら外側レインフォース6と内側レインフォース7との断面形状は略平行四辺形状となって、前記上下荷重Fに対する両レインフォース6,7の変形追従性が向上し、ひいては、リヤピラーインナパネル21と内側レインフォース7との接合部への荷重集中を抑制することができる。
【0037】
更にまた、前記外側レインフォース6から車両後方に向かって、前記リヤピラーインナパネル21との間でリヤクォータウインド開口部4の下辺部にほぼ沿って閉断面を形成するリヤウエストレインフォース8を付設したので、リヤピラーインナパネル21の剛性を更に高めることができる。
【0038】
また、前記外側レインフォース6の外側壁61後縁に形成される上下方向稜線6Rと、前記リヤウエストレインフォース8の前後方向稜線8Rと、を滑らかな曲線を描いて連続させたので、それぞれの稜線6R,8Rは剛性の高い部分であり、外側レインフォース6に入力される荷重をリヤウエストレインフォース8へと効率良く伝達し、そして、そのリヤウエストレインフォース8からリヤピラーインナパネル21およびリヤピラーレインフォース9へと広範囲に荷重分散できるため、外側レインフォース6の剛性維持と耐久性とを両立させることができる。
【0039】
ところで、本発明の車体後部構造は前記実施形態に例をとって説明したが、この実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態におけるボディサイドアウタパネルを取り外してリヤピラー内部を見た側面図。
【図2】本発明の一実施形態におけるボディサイドアウタパネルを取り外してリヤピラーインナパネルの一部とリヤウエストレインフォースの前半部分を切除してリヤピラー内部を見た側面図。
【図3】図1中A−A線に沿った拡大断面図。
【符号の説明】
【0041】
1 車体
2 リヤピラー
3 リヤホイールハウス
6 外側レインフォース
6R 上下稜線
7 内側レインフォース
8 リヤウエストレインフォース
8R 前後方向稜線
21 リヤピラーインナパネル
21a リヤピラーインナパネルの下端部
31 リヤホイールハウスアウタ
31b リヤホイールハウスアウタの上面
32 リヤホイールハウスインナ
33 接合部
61 外側レインフォースの外側壁
65 外側レインフォースの下端部
71 内側レインフォースの内側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部側面を形成するリヤピラーインナパネルのリヤホイールハウス上方部分の外側面に接合されて、該リヤピラーインナパネルとで閉断面を形成する外側レインフォースと、
前記リヤピラーインナパネルの内側面に前記外側レインフォースに対向して接合され、該リヤピラーインナパネルとで閉断面を形成するとともに、下端部がリヤホイールハウスインナの上面に接合された内側レインフォースと、を備えた車体後部構造であって、
前記外側レインフォースの下端部の接合位置を、リヤピラーインナパネルの下端部を接合するリヤホイールハウスアウタとリヤホイールハウスインナとの接合部分、若しくはその近傍に設定し、前記外側レインフォースの下端部をリヤホイールハウスアウタの上面から分離したことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記外側レインフォースの外側壁と前記内側レインフォースの内側壁とを略平行に配置したことを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記外側レインフォースから車両後方に向かって、前記リヤピラーインナパネルとの間でリヤクォータウインド開口部の下辺部にほぼ沿って閉断面を形成するリヤウエストレインフォースを付設したことを特徴とする請求項1または2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記外側レインフォースの外側壁後縁に形成される上下方向稜線と、前記リヤウエストレインフォースに形成される前後方向稜線と、を滑らかな曲線を描いて連続させたことを特徴とする請求項3に記載の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−24168(P2008−24168A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199459(P2006−199459)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】