車体後部構造
【課題】所定の取付剛性を確保することを可能にするとともに、軽量化を図ることを可能にする。
【解決手段】車体前後方向に延ばされるリヤフレーム21と、このリヤフレーム21に接合され、スペアタイヤを収納するスペアタイヤパン23とを備える車体後部構造20において、リヤフレーム21は、閉断面構造のフレームであり、斜め下方へ延出された内側フランジ42を有し、スペアタイヤパン23は、側部に形成されるとともに、内側フランジ42に沿わせて形成される斜面壁部61を有し、内側フランジ42に、斜面壁部61が直線状になるように接合される。
【解決手段】車体前後方向に延ばされるリヤフレーム21と、このリヤフレーム21に接合され、スペアタイヤを収納するスペアタイヤパン23とを備える車体後部構造20において、リヤフレーム21は、閉断面構造のフレームであり、斜め下方へ延出された内側フランジ42を有し、スペアタイヤパン23は、側部に形成されるとともに、内側フランジ42に沿わせて形成される斜面壁部61を有し、内側フランジ42に、斜面壁部61が直線状になるように接合される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前後に延ばされるリヤフレームと、スペアタイヤを収納するスペアタイヤパンとを備える車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体後部構造として、左右のリヤフレームに前後のクロスメンバを渡し、これらの左右のリヤフレーム及び前後のクロスメンバで囲まれた空間にスペアタイヤパンを取付けるものが知られている。
この種の車体後部構造は、衝撃吸収能力を高めるとともに、スペアタイヤパンの取付剛性を確保し、極力軽量化を図るようにするものであった。
【0003】
このような車体後部構造に採用できる技術として、衝撃吸収能力の向上のために、八角形断面のフレームを用いるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3070399号公報
【0004】
特許文献1の技術は、閉断面に形成されて車体前後方向に延在し、車両の衝突時に軸方向に圧縮荷重を受ける八角形断面(多角形断面)を有するフレームが開示され、このフレームの衝突端側から長さの前半部は、後半部よりも高い圧潰強度を持つ断面形状に形成され、前半部と後半部の間は、前半部から後半部の閉断面形状に形状変化する断面変化部を設けられ、この断面変化部を重量物の支持部としたものである。
【0005】
しかし、このような衝撃吸収作用のある多角形断面を有するフレームを車体後部構造にそのまま採用したのでは、車体後部構造に衝撃吸収作用の向上は望めるものの、車体後部構造の軽量化を図ることはできない。
また、フレーム(リヤフレーム)に取付けられるスペアタイヤパンについても、単品での剛性の向上と単品での軽量化とを図る工夫が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、所定の取付剛性を確保することができるとともに、軽量化を図ることができる車体後部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に延ばされるリヤフレームと、このリヤフレームに接合され、スペアタイヤを収納するスペアタイヤパンとを備える車体後部構造において、リヤフレームは、閉断面構造のフレームであり、斜め下方へ延出された内側フランジを有し、スペアタイヤパンは、側部に形成されるとともに、内側フランジに沿わせて形成される斜面壁部を有し、内側フランジに、斜面壁部が直線状になるように接合されることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、内側フランジに、スペアタイヤパンの前部で水平となる水平フランジ部を有し、この水平フランジ部の下部から車体幅内方にリヤフロアクロスメンバが延ばされ、このリヤフロアクロスメンバでスペアタイヤパンの前部が支持されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、スペアタイヤパンに、前部にリヤフロアクロスメンバで支持される略垂直な前壁部を備え、斜面壁部と前壁部との間に、斜面壁部から前壁部に連続的に形成され、スペアタイヤパンの剛性の向上を図る三角形壁部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、車体後部構造に、車体前後方向に延ばされるリヤフレームと、このリヤフレームに接合され、スペアタイヤを収納するスペアタイヤパンとを備える。
リヤフレームが、閉断面構造のフレームであり、斜め下方へ延出された内側フランジを有する。スペアタイヤパンは、側部に形成されるとともに、内側フランジに沿わせて形成される斜面壁部を有する。
【0011】
斜め下方へ延出されたリヤフレームの内側フランジに、スペアタイヤパンの斜面壁部が直線状になるように接合されたので、例えば、送電線が弛みを持たせて鉄塔の間に敷設される原理と同様に、スペアタイヤパンにスペアタイヤを収納した状態では、斜め下方へ延出された内側フランジ及び斜面壁部に、大きな荷重が作用しにくい。従って、リヤフレームやスペアタイヤの取付剛性を低下させても所定の強度を満足できる。これにより、車体後部構造の軽量化を図ることができる。
また、スペアタイヤパンに斜面壁部が形成されたので、例えば、壁面部を略垂直に形成する場合に比べて、スペアタイヤパンの展開面積は小さくて済む。従って、スペアタイヤパン自体の軽量化を図ることができ、スペアタイヤパンのコストの低減を図ることができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、内側フランジに、スペアタイヤパンの前部で水平となる水平フランジ部を有し、この水平フランジ部の下部から車体幅内方にリヤフロアクロスメンバが延ばされ、このリヤフロアクロスメンバでスペアタイヤパンの前部が支持されるので、スペアタイヤパンの剛性の向上を図ることができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、スペアタイヤパンに、前部にリヤフロアクロスメンバで支持される略垂直な前壁部を備え、斜面壁部と前壁部との間に、斜面壁部から前壁部に連続的に形成される三角形壁部を備えたので、スペアタイヤパンの剛性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。また、Frは車体前方、Rrは車体後方、Lは車体左側、Rは車体右側を示す。
図1は本発明に係る車体後部構造の斜視図であり、図2は図1に示された車体後部構造の正面図であり、図3は図1に示された車体後部構造の平面図であり、図4は図1に示された車体後部構造の側面図であり、図5は図1の5−5線断面図であり、図6は図4の6−6線断面図である。
【0015】
車体後部構造20は、車体前後方向に延ばされる左右のリヤフレーム21,21(右のリヤフレームは不図示)と、これらのリヤフレーム21,21に接合され、スペアタイヤ(不図示)を収納するスペアタイヤパン23と、このスペアタイヤパン23の前部に設けられるリヤフロアクロスメンバ24とから構成される。
【0016】
なお、車体11には、車室12側及び荷室13側を仕切る仕切壁15と、後輪(不図示)を覆うホイールハウス16と、リヤフレーム21,21とスペアタイヤパン23とに渡されるフロアパネル17(図6参照)とが設けられる。
リヤフレーム21は、上方部分が構成されるリヤフレームアッパ31と、下方部分が構成されるリヤフレームロア32とからなる。
【0017】
リヤフレームアッパ31は、断面視で車体上方に凸状に形成されたアッパ本体34と、このアッパ本体34の両側に形成された内・外アッパフランジ部35,36とから構成される。
リヤフレームロア32は、断面視で車体下方に凸状に形成されたロア本体37と、このロア本体37の両側に形成された内・外ロアフランジ部38,39とから構成される。
【0018】
さらに、リヤフレーム21は、内アッパフランジ部35と内ロアフランジ部38とが接合されるとともに、外アッパフランジ部36と外ロアフランジ部39とが接合されて形成される。すなわち、アッパ本体34及びロア本体37の空間部分でフレーム本体41が形成され、内アッパフランジ部35及び内ロアフランジ部38で内側フランジ42が形成され、外アッパフランジ部36及び外ロアフランジ部39で外側フランジ43が形成される。
【0019】
また、リヤフレーム21は、フレーム本体41が前方では矩形に形成され、後方では略八角形に変化するフレームであり、下端にサブシャーシなどのシャーシ部材56を取付ける前・後マウントブラケット44,45が設けられる。
内側フランジ42は、後方では斜め下方に延出された斜面フランジ部46と、前方では水平に延出された水平フランジ部47とからなる。
【0020】
後マウントブラケット45は、リヤフレームロア32に取付けられるブラケット本体48と、このブラケット本体48に溶接されるスタッド49とからなる。なお、前マウントブラケット44は、後マウントブラケット45に略同一構成のブラケットである。また、シャーシ部材56は、後マウントブラケット45にボルト57で固定されるとともに、前マウントブラケット44にボルト(不図示)で固定される。
【0021】
スタッド49は、下部中間に溶接フランジ51が設けられ、下端にシャーシ部材56が取付けられるナット部52が形成され、溶接フランジ51とスタッド49の中間部53とがブラケット本体48に溶接される。
【0022】
リヤフロアクロスメンバ24は、車幅方向に延ばされた断面視略L字のフレームであり、上端及び下端にスペアタイヤパン23に溶接される上・下溶接フランジ54,55を備え、車幅方向の端部24aが後マウントブラケット45に支持される。
また、図5及び図6に示されるように、内側フランジ42の水平フランジ部47及びスペアタイヤパン23の前部平坦部63にはフロアパネル17が渡される。
【0023】
図7は図1に示された車体後部構造のスペアタイヤパンの斜視図であり、図8は図7の8−8線断面図であり、図9は図7の9−9線断面図であり、図10は図7の10−10線断面図である。
【0024】
スペアタイヤパン23は、左右対称の部材であり、左右の斜面壁部61,62と、これらの斜面壁部61,62の前部に且つ車幅方向に形成される前部平坦部63と、この前部平坦部63から下方に略垂直に延ばした前壁部69と、これらの左の斜面壁部61の前端部61a、前壁部69の左端部82及び前部平坦部63とを繋ぐ左側第1・第2三角形壁部64,65と、右の斜面壁部62の前端部62a、前壁部69の右端部83及び前部平坦部63とを繋ぐ右側第1・第2三角形壁部66,67と、左右の斜面壁部61,62の後部で斜面壁部61,62の下端61b,62b同士を車幅方向に繋げる後部平坦部68と、左右の斜面壁部61,62の下端61b,62b、前壁部69の下端84及び後部平坦部68を繋ぐ略垂直の第1の円筒壁面部71と、この第1の円筒壁面部71の下端71aから斜め内方に延ばされた第2の円筒壁面部72と、この第2の円筒壁面部72の下端72aを繋ぐ底面部73と、左右の斜面壁部61,62に設けられ、内側フランジ42,42の斜面フランジ部46,46に接続される左右の斜面壁部側溶接フランジ75,76と、前部平坦部63に設けられ、内側フランジ42の水平フランジ部47に接続される左右の前部平坦部側溶接フランジ77,78とからなる。
【0025】
図11(a),(b)は図1に示された車体後部構造の比較検討図であり、(a)は比較例の車体後部構造110が示され、(b)は実施例の車体後部構造20が示される。
(a)において、車体後部構造110では、リヤフレーム111の内側フランジ112が水平に形成される。
スペアタイヤパン114は、内側フランジ112の溶接される水平溶接フランジ115が車体内方に水平に延出され、この水平溶接フランジ115から側壁部116が略垂直に延出され、この側壁部116から底面部117が車体内方に水平に延出される。
【0026】
(b)において、スペアタイヤパン23は、斜面壁部61(斜面壁部側溶接フランジ75を含む)が斜め下方に延出され、第1・第2の円筒壁面部71,72(図7参照)で構成される側壁部86が略垂直に延出され、底面部73が車体内方に水平に延出されたものである。
【0027】
ここで、高さH1、直径D1の収納体積を有するスペアタイヤパン23,114を設計するときに、(a)に示された比較例のスペアタイヤパン114の水平溶接フランジ115の寸法をA1、側壁部116の寸法をA2(A2=H1)とし、(b)に示された実施例のスペアタイヤパン23の斜面壁部61の寸法をB1、側壁部86の寸法をB2とすれば、A1+A2>B1+B2の関係となる。すなわち、スペアタイヤパン23の展開面積は、スペアタイヤパン114の展開面積よりも小さくすることができる。従って、実施例のスペアタイヤパン23は、比較例のスペアタイヤパン114に比べて軽量にすることができる。
【0028】
(a)において、比較例の車体後部構造110では、スペアタイヤパン114にスペアタイヤ(不図示)が収納され、水平溶接フランジ115に垂直方向の荷重W1が作用した場合には、荷重W1が水平溶接フランジ115を剥離させる剥離方向の荷重としてそのまま作用する。
【0029】
(b)において、実施例の車体後部構造20では、スペアタイヤパン23にスペアタイヤ(不図示)に収納され、斜面壁部側溶接フランジ75に垂直方向の荷重W1が作用した場合には、荷重W1が斜面壁部61に平行な荷重W2と斜面壁部61に垂直な荷重W3とに分解され、斜面壁部側溶接フランジ75を剥離させる荷重は荷重W3となる。すなわち、W1>W3となる。
【0030】
すなわち、実施例のスペアタイヤパン23は、比較例のスペアタイヤパン110に比較して溶接部分の剥離強度が優れる。さらに、スペアタイヤパン23は、スペアタイヤパン110に比較してフランジ46,75(図7参照)の剛性が小さくても済む。これにより、スペアタイヤパン23は、スペアタイヤパン110よりも剛性を下げることができ、車体11の軽量化を図ることができる。
【0031】
すなわち、図1及び図7に示されたように、車体後部構造20は、車体前後方向に延ばされるリヤフレーム21と、このリヤフレーム21に接合され、スペアタイヤ(不図示)を収納するスペアタイヤパン23とを備える。
リヤフレーム21が、閉断面構造のフレームであり、斜め下方へ延出された内側フランジ42を有する。スペアタイヤパン23は、側部に形成されるとともに、内側フランジ42に沿わせて形成される斜面壁部61を有する。
【0032】
斜め下方へ延出されたリヤフレーム21の内側フランジ42に、スペアタイヤパン23の斜面壁部61が直線状になるように接合されたので、例えば、送電線が弛みを持たせて鉄塔の間に敷設される原理と同様に、スペアタイヤパン23にスペアタイヤを収納した状態では、斜め下方へ延出された内側フランジ42及び斜面壁部61に、大きな荷重が作用しにくい。従って、リヤフレーム21やスペアタイヤの取付剛性を低下させても所定の強度を満足できる。これにより、車体後部構造20の軽量化を図ることができる。
【0033】
また、スペアタイヤパン23に斜面壁部61が形成されたので、例えば、壁面部を略垂直に形成する場合に比べて、スペアタイヤパン23の展開面積は小さくて済む。従って、スペアタイヤパン23自体の軽量化を図ることができ、スペアタイヤパン23のコストの低減を図ることができる。
【0034】
図1及び図6に示されたように、内側フランジ42は、スペアタイヤパン23の前部で水平となる水平フランジ部を有し、この水平フランジ部の下部から車体幅内方にリヤフロアクロスメンバ24が延ばされ、このリヤフロアクロスメンバ24でスペアタイヤパン23の前部平坦部63及び前壁部69が支持されるので、スペアタイヤパン23の剛性の向上を図ることができる。
【0035】
図1及び図7に示されたように、スペアタイヤパン23は、前部にリヤフロアクロスメンバ24で支持される略垂直な前壁部69を備え、斜面壁部61と前壁部69との間に、斜面壁部61から前壁部69に連続的に形成される三角形壁部64,65を備えたので、スペアタイヤパン23の剛性の向上を図ることができる。
【0036】
尚、本発明に係る車体後部構造20は、図7に示すように、第1・第2三角形壁部64,65を設けたが、これに限るものではなく、第1・第2三角形壁部64,65は一つの三角形壁部であってもよい。ただし、第1・第2三角形壁部64,65ように、2つの三角形壁部に分割構成したほうがより高いスペアタイヤパンの剛性を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る車体後部構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る車体後部構造の斜視図である。
【図2】図1に示された車体後部構造の正面図である。
【図3】図1に示された車体後部構造の平面図である。
【図4】図1に示された車体後部構造の側面図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】図4の6−6線断面図である。
【図7】図1に示された車体後部構造のスペアタイヤパンの斜視図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】図7の9−9線断面図である。
【図10】図7の10−10線断面図である。
【図11】図1に示された車体後部構造の比較検討図である。
【符号の説明】
【0039】
20…車体後部構造、21…リヤフレーム、23…スペアタイヤパン、24…リヤフロアクロスメンバ、42…内側フランジ、61…斜面壁部、64,65…三角形壁部(第1・第2三角形壁部)、69…前壁部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前後に延ばされるリヤフレームと、スペアタイヤを収納するスペアタイヤパンとを備える車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体後部構造として、左右のリヤフレームに前後のクロスメンバを渡し、これらの左右のリヤフレーム及び前後のクロスメンバで囲まれた空間にスペアタイヤパンを取付けるものが知られている。
この種の車体後部構造は、衝撃吸収能力を高めるとともに、スペアタイヤパンの取付剛性を確保し、極力軽量化を図るようにするものであった。
【0003】
このような車体後部構造に採用できる技術として、衝撃吸収能力の向上のために、八角形断面のフレームを用いるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3070399号公報
【0004】
特許文献1の技術は、閉断面に形成されて車体前後方向に延在し、車両の衝突時に軸方向に圧縮荷重を受ける八角形断面(多角形断面)を有するフレームが開示され、このフレームの衝突端側から長さの前半部は、後半部よりも高い圧潰強度を持つ断面形状に形成され、前半部と後半部の間は、前半部から後半部の閉断面形状に形状変化する断面変化部を設けられ、この断面変化部を重量物の支持部としたものである。
【0005】
しかし、このような衝撃吸収作用のある多角形断面を有するフレームを車体後部構造にそのまま採用したのでは、車体後部構造に衝撃吸収作用の向上は望めるものの、車体後部構造の軽量化を図ることはできない。
また、フレーム(リヤフレーム)に取付けられるスペアタイヤパンについても、単品での剛性の向上と単品での軽量化とを図る工夫が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、所定の取付剛性を確保することができるとともに、軽量化を図ることができる車体後部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に延ばされるリヤフレームと、このリヤフレームに接合され、スペアタイヤを収納するスペアタイヤパンとを備える車体後部構造において、リヤフレームは、閉断面構造のフレームであり、斜め下方へ延出された内側フランジを有し、スペアタイヤパンは、側部に形成されるとともに、内側フランジに沿わせて形成される斜面壁部を有し、内側フランジに、斜面壁部が直線状になるように接合されることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、内側フランジに、スペアタイヤパンの前部で水平となる水平フランジ部を有し、この水平フランジ部の下部から車体幅内方にリヤフロアクロスメンバが延ばされ、このリヤフロアクロスメンバでスペアタイヤパンの前部が支持されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、スペアタイヤパンに、前部にリヤフロアクロスメンバで支持される略垂直な前壁部を備え、斜面壁部と前壁部との間に、斜面壁部から前壁部に連続的に形成され、スペアタイヤパンの剛性の向上を図る三角形壁部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、車体後部構造に、車体前後方向に延ばされるリヤフレームと、このリヤフレームに接合され、スペアタイヤを収納するスペアタイヤパンとを備える。
リヤフレームが、閉断面構造のフレームであり、斜め下方へ延出された内側フランジを有する。スペアタイヤパンは、側部に形成されるとともに、内側フランジに沿わせて形成される斜面壁部を有する。
【0011】
斜め下方へ延出されたリヤフレームの内側フランジに、スペアタイヤパンの斜面壁部が直線状になるように接合されたので、例えば、送電線が弛みを持たせて鉄塔の間に敷設される原理と同様に、スペアタイヤパンにスペアタイヤを収納した状態では、斜め下方へ延出された内側フランジ及び斜面壁部に、大きな荷重が作用しにくい。従って、リヤフレームやスペアタイヤの取付剛性を低下させても所定の強度を満足できる。これにより、車体後部構造の軽量化を図ることができる。
また、スペアタイヤパンに斜面壁部が形成されたので、例えば、壁面部を略垂直に形成する場合に比べて、スペアタイヤパンの展開面積は小さくて済む。従って、スペアタイヤパン自体の軽量化を図ることができ、スペアタイヤパンのコストの低減を図ることができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、内側フランジに、スペアタイヤパンの前部で水平となる水平フランジ部を有し、この水平フランジ部の下部から車体幅内方にリヤフロアクロスメンバが延ばされ、このリヤフロアクロスメンバでスペアタイヤパンの前部が支持されるので、スペアタイヤパンの剛性の向上を図ることができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、スペアタイヤパンに、前部にリヤフロアクロスメンバで支持される略垂直な前壁部を備え、斜面壁部と前壁部との間に、斜面壁部から前壁部に連続的に形成される三角形壁部を備えたので、スペアタイヤパンの剛性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。また、Frは車体前方、Rrは車体後方、Lは車体左側、Rは車体右側を示す。
図1は本発明に係る車体後部構造の斜視図であり、図2は図1に示された車体後部構造の正面図であり、図3は図1に示された車体後部構造の平面図であり、図4は図1に示された車体後部構造の側面図であり、図5は図1の5−5線断面図であり、図6は図4の6−6線断面図である。
【0015】
車体後部構造20は、車体前後方向に延ばされる左右のリヤフレーム21,21(右のリヤフレームは不図示)と、これらのリヤフレーム21,21に接合され、スペアタイヤ(不図示)を収納するスペアタイヤパン23と、このスペアタイヤパン23の前部に設けられるリヤフロアクロスメンバ24とから構成される。
【0016】
なお、車体11には、車室12側及び荷室13側を仕切る仕切壁15と、後輪(不図示)を覆うホイールハウス16と、リヤフレーム21,21とスペアタイヤパン23とに渡されるフロアパネル17(図6参照)とが設けられる。
リヤフレーム21は、上方部分が構成されるリヤフレームアッパ31と、下方部分が構成されるリヤフレームロア32とからなる。
【0017】
リヤフレームアッパ31は、断面視で車体上方に凸状に形成されたアッパ本体34と、このアッパ本体34の両側に形成された内・外アッパフランジ部35,36とから構成される。
リヤフレームロア32は、断面視で車体下方に凸状に形成されたロア本体37と、このロア本体37の両側に形成された内・外ロアフランジ部38,39とから構成される。
【0018】
さらに、リヤフレーム21は、内アッパフランジ部35と内ロアフランジ部38とが接合されるとともに、外アッパフランジ部36と外ロアフランジ部39とが接合されて形成される。すなわち、アッパ本体34及びロア本体37の空間部分でフレーム本体41が形成され、内アッパフランジ部35及び内ロアフランジ部38で内側フランジ42が形成され、外アッパフランジ部36及び外ロアフランジ部39で外側フランジ43が形成される。
【0019】
また、リヤフレーム21は、フレーム本体41が前方では矩形に形成され、後方では略八角形に変化するフレームであり、下端にサブシャーシなどのシャーシ部材56を取付ける前・後マウントブラケット44,45が設けられる。
内側フランジ42は、後方では斜め下方に延出された斜面フランジ部46と、前方では水平に延出された水平フランジ部47とからなる。
【0020】
後マウントブラケット45は、リヤフレームロア32に取付けられるブラケット本体48と、このブラケット本体48に溶接されるスタッド49とからなる。なお、前マウントブラケット44は、後マウントブラケット45に略同一構成のブラケットである。また、シャーシ部材56は、後マウントブラケット45にボルト57で固定されるとともに、前マウントブラケット44にボルト(不図示)で固定される。
【0021】
スタッド49は、下部中間に溶接フランジ51が設けられ、下端にシャーシ部材56が取付けられるナット部52が形成され、溶接フランジ51とスタッド49の中間部53とがブラケット本体48に溶接される。
【0022】
リヤフロアクロスメンバ24は、車幅方向に延ばされた断面視略L字のフレームであり、上端及び下端にスペアタイヤパン23に溶接される上・下溶接フランジ54,55を備え、車幅方向の端部24aが後マウントブラケット45に支持される。
また、図5及び図6に示されるように、内側フランジ42の水平フランジ部47及びスペアタイヤパン23の前部平坦部63にはフロアパネル17が渡される。
【0023】
図7は図1に示された車体後部構造のスペアタイヤパンの斜視図であり、図8は図7の8−8線断面図であり、図9は図7の9−9線断面図であり、図10は図7の10−10線断面図である。
【0024】
スペアタイヤパン23は、左右対称の部材であり、左右の斜面壁部61,62と、これらの斜面壁部61,62の前部に且つ車幅方向に形成される前部平坦部63と、この前部平坦部63から下方に略垂直に延ばした前壁部69と、これらの左の斜面壁部61の前端部61a、前壁部69の左端部82及び前部平坦部63とを繋ぐ左側第1・第2三角形壁部64,65と、右の斜面壁部62の前端部62a、前壁部69の右端部83及び前部平坦部63とを繋ぐ右側第1・第2三角形壁部66,67と、左右の斜面壁部61,62の後部で斜面壁部61,62の下端61b,62b同士を車幅方向に繋げる後部平坦部68と、左右の斜面壁部61,62の下端61b,62b、前壁部69の下端84及び後部平坦部68を繋ぐ略垂直の第1の円筒壁面部71と、この第1の円筒壁面部71の下端71aから斜め内方に延ばされた第2の円筒壁面部72と、この第2の円筒壁面部72の下端72aを繋ぐ底面部73と、左右の斜面壁部61,62に設けられ、内側フランジ42,42の斜面フランジ部46,46に接続される左右の斜面壁部側溶接フランジ75,76と、前部平坦部63に設けられ、内側フランジ42の水平フランジ部47に接続される左右の前部平坦部側溶接フランジ77,78とからなる。
【0025】
図11(a),(b)は図1に示された車体後部構造の比較検討図であり、(a)は比較例の車体後部構造110が示され、(b)は実施例の車体後部構造20が示される。
(a)において、車体後部構造110では、リヤフレーム111の内側フランジ112が水平に形成される。
スペアタイヤパン114は、内側フランジ112の溶接される水平溶接フランジ115が車体内方に水平に延出され、この水平溶接フランジ115から側壁部116が略垂直に延出され、この側壁部116から底面部117が車体内方に水平に延出される。
【0026】
(b)において、スペアタイヤパン23は、斜面壁部61(斜面壁部側溶接フランジ75を含む)が斜め下方に延出され、第1・第2の円筒壁面部71,72(図7参照)で構成される側壁部86が略垂直に延出され、底面部73が車体内方に水平に延出されたものである。
【0027】
ここで、高さH1、直径D1の収納体積を有するスペアタイヤパン23,114を設計するときに、(a)に示された比較例のスペアタイヤパン114の水平溶接フランジ115の寸法をA1、側壁部116の寸法をA2(A2=H1)とし、(b)に示された実施例のスペアタイヤパン23の斜面壁部61の寸法をB1、側壁部86の寸法をB2とすれば、A1+A2>B1+B2の関係となる。すなわち、スペアタイヤパン23の展開面積は、スペアタイヤパン114の展開面積よりも小さくすることができる。従って、実施例のスペアタイヤパン23は、比較例のスペアタイヤパン114に比べて軽量にすることができる。
【0028】
(a)において、比較例の車体後部構造110では、スペアタイヤパン114にスペアタイヤ(不図示)が収納され、水平溶接フランジ115に垂直方向の荷重W1が作用した場合には、荷重W1が水平溶接フランジ115を剥離させる剥離方向の荷重としてそのまま作用する。
【0029】
(b)において、実施例の車体後部構造20では、スペアタイヤパン23にスペアタイヤ(不図示)に収納され、斜面壁部側溶接フランジ75に垂直方向の荷重W1が作用した場合には、荷重W1が斜面壁部61に平行な荷重W2と斜面壁部61に垂直な荷重W3とに分解され、斜面壁部側溶接フランジ75を剥離させる荷重は荷重W3となる。すなわち、W1>W3となる。
【0030】
すなわち、実施例のスペアタイヤパン23は、比較例のスペアタイヤパン110に比較して溶接部分の剥離強度が優れる。さらに、スペアタイヤパン23は、スペアタイヤパン110に比較してフランジ46,75(図7参照)の剛性が小さくても済む。これにより、スペアタイヤパン23は、スペアタイヤパン110よりも剛性を下げることができ、車体11の軽量化を図ることができる。
【0031】
すなわち、図1及び図7に示されたように、車体後部構造20は、車体前後方向に延ばされるリヤフレーム21と、このリヤフレーム21に接合され、スペアタイヤ(不図示)を収納するスペアタイヤパン23とを備える。
リヤフレーム21が、閉断面構造のフレームであり、斜め下方へ延出された内側フランジ42を有する。スペアタイヤパン23は、側部に形成されるとともに、内側フランジ42に沿わせて形成される斜面壁部61を有する。
【0032】
斜め下方へ延出されたリヤフレーム21の内側フランジ42に、スペアタイヤパン23の斜面壁部61が直線状になるように接合されたので、例えば、送電線が弛みを持たせて鉄塔の間に敷設される原理と同様に、スペアタイヤパン23にスペアタイヤを収納した状態では、斜め下方へ延出された内側フランジ42及び斜面壁部61に、大きな荷重が作用しにくい。従って、リヤフレーム21やスペアタイヤの取付剛性を低下させても所定の強度を満足できる。これにより、車体後部構造20の軽量化を図ることができる。
【0033】
また、スペアタイヤパン23に斜面壁部61が形成されたので、例えば、壁面部を略垂直に形成する場合に比べて、スペアタイヤパン23の展開面積は小さくて済む。従って、スペアタイヤパン23自体の軽量化を図ることができ、スペアタイヤパン23のコストの低減を図ることができる。
【0034】
図1及び図6に示されたように、内側フランジ42は、スペアタイヤパン23の前部で水平となる水平フランジ部を有し、この水平フランジ部の下部から車体幅内方にリヤフロアクロスメンバ24が延ばされ、このリヤフロアクロスメンバ24でスペアタイヤパン23の前部平坦部63及び前壁部69が支持されるので、スペアタイヤパン23の剛性の向上を図ることができる。
【0035】
図1及び図7に示されたように、スペアタイヤパン23は、前部にリヤフロアクロスメンバ24で支持される略垂直な前壁部69を備え、斜面壁部61と前壁部69との間に、斜面壁部61から前壁部69に連続的に形成される三角形壁部64,65を備えたので、スペアタイヤパン23の剛性の向上を図ることができる。
【0036】
尚、本発明に係る車体後部構造20は、図7に示すように、第1・第2三角形壁部64,65を設けたが、これに限るものではなく、第1・第2三角形壁部64,65は一つの三角形壁部であってもよい。ただし、第1・第2三角形壁部64,65ように、2つの三角形壁部に分割構成したほうがより高いスペアタイヤパンの剛性を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る車体後部構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る車体後部構造の斜視図である。
【図2】図1に示された車体後部構造の正面図である。
【図3】図1に示された車体後部構造の平面図である。
【図4】図1に示された車体後部構造の側面図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】図4の6−6線断面図である。
【図7】図1に示された車体後部構造のスペアタイヤパンの斜視図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】図7の9−9線断面図である。
【図10】図7の10−10線断面図である。
【図11】図1に示された車体後部構造の比較検討図である。
【符号の説明】
【0039】
20…車体後部構造、21…リヤフレーム、23…スペアタイヤパン、24…リヤフロアクロスメンバ、42…内側フランジ、61…斜面壁部、64,65…三角形壁部(第1・第2三角形壁部)、69…前壁部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延ばされるリヤフレームと、このリヤフレームに接合され、スペアタイヤを収納するスペアタイヤパンとを備える車体後部構造において、
前記リヤフレームは、閉断面構造のフレームであり、斜め下方へ延出された内側フランジを有し、前記スペアタイヤパンは、側部に形成されるとともに、前記内側フランジに沿わせて形成される斜面壁部を有し、
前記内側フランジに、前記斜面壁部が直線状になるように接合されることを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記内側フランジは、前記スペアタイヤパンの前部で水平となる水平フランジ部を有し、この水平フランジ部の下部から車体幅内方にリヤフロアクロスメンバが延ばされ、このリヤフロアクロスメンバで前記スペアタイヤパンの前部が支持されることを特徴とする請求項1記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記スペアタイヤパンは、前部に前記リヤフロアクロスメンバで支持される略垂直な前壁部を備え、前記斜面壁部と前記前壁部との間に、前記斜面壁部から前記前壁部に連続的に形成され、前記スペアタイヤパンの剛性の向上を図る三角形壁部を備えたことを特徴とする請求項2記載の車体後部構造。
【請求項1】
車体前後方向に延ばされるリヤフレームと、このリヤフレームに接合され、スペアタイヤを収納するスペアタイヤパンとを備える車体後部構造において、
前記リヤフレームは、閉断面構造のフレームであり、斜め下方へ延出された内側フランジを有し、前記スペアタイヤパンは、側部に形成されるとともに、前記内側フランジに沿わせて形成される斜面壁部を有し、
前記内側フランジに、前記斜面壁部が直線状になるように接合されることを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記内側フランジは、前記スペアタイヤパンの前部で水平となる水平フランジ部を有し、この水平フランジ部の下部から車体幅内方にリヤフロアクロスメンバが延ばされ、このリヤフロアクロスメンバで前記スペアタイヤパンの前部が支持されることを特徴とする請求項1記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記スペアタイヤパンは、前部に前記リヤフロアクロスメンバで支持される略垂直な前壁部を備え、前記斜面壁部と前記前壁部との間に、前記斜面壁部から前記前壁部に連続的に形成され、前記スペアタイヤパンの剛性の向上を図る三角形壁部を備えたことを特徴とする請求項2記載の車体後部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−220717(P2009−220717A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67969(P2008−67969)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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