説明

車体後部構造

【課題】剛性および強度をより一層高めることが可能な車体後部構造を得る。
【解決手段】リヤピラーインナ3Iと連結部材4との結合部分Cにさらに排水部材6を結合し、結合部分C間に当該排水部材6の横架部分6Cを架設した。これにより、略U字断面を有して剛性の高い排水部材6を利用して、車体後部構造の剛性および強度をより一層高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の後端部で横架された後端部材(閉断面骨格部)とリヤピラーとを連結部材(荷重伝達ビーム)で連結した車体後部構造が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−306192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この種の車体後部構造では、より一層の剛性および強度の向上が求められる。
【0004】
そこで、本発明は、剛性および強度をより一層高めることが可能な車体後部構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にあっては、車幅方向両側に後端部材とピラー部材とを連結する連結部材を設けるとともに、その連結部材とピラー部材との結合部分間で、車幅方向に略沿って、略U字断面を有する排水部材の横架部分を架設したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、後方から連結部材に入力された荷重を、ピラー部材に伝達することができる上、略U字断面を有して比較的剛性の高い排水部材の横架部分にも伝達することができるため、車体後部構造の剛性および強度をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態にかかる車体後部構造を後方から見た斜視図、図2は、図1からリヤフェンダパネルを取り除いた状態を示す図、図3は、図2の拡大図、図4は、図3のIV−IV断面図、図5は、図3のV−V断面図、図6は、図3のVI−VI断面図である。なお、各図中、車両前方をFR、車両上方をUP、車幅方向をWDとする。また、以下では、主として左舷側の構成について説明するが、右舷側も同様の構成(左右勝手違い)となっている。
【0008】
図2,図3に示すように、本実施形態にかかる車体後部構造1は、車両後端部で車幅方向に略沿って伸びる後端部材12を成すリヤパネル2およびランプ取付部材8と、後端部材12より前方の車幅方向両側でそれぞれ上下に伸びるリヤピラー(ピラー部材)3と、を備えている。そして、リヤピラー3の上下方向中間部と後端部材12とが、連結部材4によって結合されている。
【0009】
リヤピラー3は、リヤピラーインナ3Iとリヤピラーレインフォース3Rとを備えて構成されており、ホイルハウス5の上部から上方に向けて延伸し、長手方向中間部で屈曲して斜め上方かつ前方に向けて延伸している。
【0010】
リヤピラーインナ3Iは、ドア開口部10の後縁10aから車体側面の後縁1aにかけて比較的幅広に形成してある。そして、その後端部かつ下端部には、段差状に折り曲げて横方向に広がる棚部3aを設けてある。
【0011】
リヤピラーレインフォース3Rは、車幅方向内側に向けて開放される略U字状断面を有しており、開放側に配置されたリヤピラーインナ3I等と結合されて閉断面を形成している。
【0012】
連結部材4は、略帯板状に形成されており、その後端部から前方に向けて斜め上方に延伸し、長手方向中央部で緩やかに屈曲して、その前端部4aは略水平方向に延伸している。また、幅方向中央部にはビード4bを設けて剛性を向上してある。さらに、幅方向両端部にはフランジ部4c,4dを設けて剛性を向上するとともに他部材との結合を容易に行えるようにしている。
【0013】
そして、本実施形態では、排水部材6を剛性および強度の向上に利用している。排水部材6は、トランク開口部7の前縁部で車幅方向に略沿って延伸する横架部分6Cと当該横架部分6Cの両端部から車両後方に向けて延伸する後方延伸部6L,6Lとを有して、全体的に略U字状に形成されている。
【0014】
そして、図3,図4等に示すように、これら横架部分6Cならびに後方延伸部6Lともに、底壁部6aとその幅方向両縁から略上方に向けて立設される側壁部6b,6bとを有しており、これら底壁部6aおよび側壁部6b,6bによって、上方に向けて開放された凹溝6c(略U字状断面)が形成されている。この排水部材6は、文字通り、水を車外に向けて導いて排水する機能を有しており、横架部分6Cでは水が車幅方向両端側に向けて流れ、後方延伸部6Lでは水が後方に流れるようにしてある。
【0015】
また、連結部材4および後方延伸部6Lとリヤパネル2との間には、ランプユニット(図示せず)を取り付けるランプ取付部材8が設けられている。このランプ取付部材8には、ランプユニットを収容する凹部8a(凹凸形状)が形成されている。また、後方延伸部6Lとの接続部には切欠部8bが設けられており、凹溝6cからの水がこの切欠部8bを介して凹部8a内に導入されるようになっている。また、車幅方向内側の内縁8cと、排水部材6の内縁6dとによって、トランク開口部7の一連の開口縁7aが形成されている。また、後方延伸部6Lの車幅方向外側の縁部には略一定幅で細長く伸びるフランジ部6eが形成されている。
【0016】
そして、本実施形態にかかる車体後部構造1では、上記各部材を適切に接続することで、剛性および強度の向上が図られている。
【0017】
まず、図2,図3に示すように、本実施形態では、ピラー部材としてのリヤピラー3をなすリヤピラーインナ3Iと、連結部材4とが、相互に結合されている(結合部分C)。この結合部分Cでは、リヤピラーインナ3Iの後端かつ下端に形成された棚部3aと、連結部材4の屈曲部近傍に形成された車幅方向内側のフランジ部4eとが積重され、これらは、スポット溶接等することで相互に結合されている。
【0018】
さらに、この結合部分Cでは、排水部材6の横架部分6Cの車幅方向端部6fも結合されている。すなわち、この結合部分Cでは、図3および図5に示すように、下から上に、連結部材4のフランジ部4e、リヤピラーインナ3Iの棚部3a、および横架部分6Cの車幅方向端部6fが、この順に積層されて、これらがスポット溶接等によって一度に結合されている。なお、この結合部分Cにはさらに別の車体構成部材11も一度に結合されている。
【0019】
また、図2,図3に示すように、排水部材6の後方延伸部6Lは、後端部材12としてのランプ取付部材8に、スポット溶接等によって結合されている。また、連結部材4も、このランプ取付部材8に、スポット溶接等によって結合されている。
【0020】
さらに、連結部材4のフランジ部4eは、結合部分Cよりやや後方で、図6に示すように、排水部材6の後方延伸部6Lの底壁部6aにスポット溶接等によって結合されている。また、図1にも示すように、リヤフェンダの外板としてのリヤフェンダパネル(パネル部材)9が、連結部材4のフランジ部4cの車幅方向外側に当接して配置されるとともに、当該リヤフェンダパネル9とフランジ部4cとが接着によって相互に接合されている。さらに、リヤフェンダパネル9の上端部は、排水部材6の後方延伸部6Lのフランジ部6eに接着等によって結合されている。このように、連結部材4の前部では、当該連結部材4、後方延伸部6L、およびリヤフェンダパネル9によって閉断面が形成され、剛性および強度の向上が図られている。なお、リヤフェンダパネル9を連結部材4に溶接した場合には溶接痕が外に露出することになるが、接着とすることでかかる不具合を抑制できる。
【0021】
以上、説明したように、本実施形態では、リヤピラーインナ3Iと連結部材4との結合部分Cにさらに排水部材6を結合し、結合部分C間に横架部分6Cを架設する構成とした。したがって、略U字断面を有して剛性の高い排水部材6を利用して、車体後部構造の剛性および強度をより一層高めることができる。そして、剛性が向上する分、後端部材12(特にリヤパネル2)の支持剛性を高めることができて、車両走行等に伴って発生する振動を低減することができる。左右方向の振動に対しては横架部分6Cが有効となり、上下方向の振動に対してはリヤピラー3が有効となり、前後方向の振動に対しては連結部材4が有効となる。さらに、かかる構成によれば、車両後方から入力されて連結部材4を介して前方に伝達された衝撃荷重を、リヤピラー3に加えて横架部分6Cにも伝達して分散することができる分、当該衝撃荷重に対する剛性および強度を高めることができる。
【0022】
また、本実施形態では、排水部材6の後方延伸部6Lを後端部材12に結合した。かかる構成によれば、結合部分Cと後端部材12との間に、連結部材4ならびに後方延伸部6Lを並列して介在させることができるため、剛性および強度をより一層向上することができる。特に、連結部材4と後方延伸部6Lとによって、前後方向の振動低減効果を高めることができる。
【0023】
また、本実施形態では、排水部材6の後方延伸部6Lならびに連結部材4を、ランプユニットを収容する凹部8aを有するランプ取付部材8に結合し、後方延伸部6Lおよび連結部材4とリヤパネル2との間にランプ取付部材8を介在させた。このため、凹部8aを含む凹凸形状によって比較的剛性の高いランプ取付部材8を利用して、剛性および強度をより効率良く高めることができる。
【0024】
また、本実施形態では、連結部材4に対して車幅方向外側にリヤフェンダパネル9を配置し、連結部材4とリヤフェンダパネル9とを結合した。このため、リヤフェンダパネル9の面方向、すなわち、前後方向および上下方向の振動を低減する効果を高めることができる。また、連結部材4での衝撃荷重の伝達方向(連結部材4の長手方向)とリヤフェンダパネル9の面方向とが略一致して、衝撃荷重をリヤフェンダパネル9の面方向に拡散しやすくなり、より効率良く剛性および強度を高めることができる。
【0025】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、連結部材あるいは後方延伸部を、後端部材としてのリヤパネルに直接結合してもよい。また、各部材の大きさや、延伸方向、細部の形状等のスペックは、適宜に変更して構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車体後部構造を後方から見た斜視図である。
【図2】図1からリヤフェンダパネルを取り除いた状態を示す図である。
【図3】図2の拡大図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】図3のV−V断面図である。
【図6】図3のVI−VI断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 車体後部構造
2 リヤパネル(後端部材)
3 リヤピラー(ピラー部材)
4 連結部材
6 排水部材
6C 横架部分
6L 後方延伸部
7 トランク開口部
8 ランプ取付部材(後端部材)
9 リヤフェンダパネル(パネル部材)
12 後端部材
C 結合部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後端部で車幅方向に略沿って延設される後端部材と、
前記後端部材より前方の車幅方向両側でそれぞれ上下に伸びるピラー部材と、
車幅方向両側で前記後端部材と前記ピラー部材とをそれぞれ連結する連結部材と、
前記後端部材の前方に配置されたトランク開口部の前縁部で車幅方向に略沿って伸びて前記ピラー部材と前記連結部材との結合部分間で架設された横架部分を有し、上方に開放された略U字断面を有する排水部材と、
を備えることを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記排水部材は前記横架部分の両端部からそれぞれ車両後方に向けて伸びる後方延伸部を有し、
前記後方延伸部をそれぞれ前記後端部材に結合したことを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記後端部材として、車幅方向両側にそれぞれ配置された凹凸形状を有するランプ取付部材と、その後方で車幅方向に沿って延設されたリヤパネルと、を有し、
前記後方延伸部と前記ランプ取付部材とを結合したことを特徴とする請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記連結部材に対して車幅方向外側にパネル部材を配置し、
前記連結部材と前記パネル部材とを結合したことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一つに記載の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−95155(P2010−95155A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267754(P2008−267754)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】