説明

車体結合構造

【課題】 側面衝突時の衝突荷重を効率的にダッシュメンバーへも伝達することができ、衝撃吸収効率の向上を可能としたフロントピラーとダッシュとの結合部分の車体構造を提供する。
【解決手段】 ダッシュ部1のピラー部3との結合部分に、ピラー部3側へと突出する凸部13cを有する結合部材13を配置し、そのフランジ部13dを骨部材10と外皮11とで挟み込んで固定する。ピラー部3側には、この凸部13cに対応する形状の収容凹部30aが形成されており、収容凹部30a内に凸部13cが挿入され、接着層20により接着固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体構造に関し、特に、自動車用フロントピラーとダッシュとの結合部分の車体結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用フロントピラーの構造としては、特許文献1に記載されている構造が知られている。同文献記載の構造においては、ヒンジロアブレースによる補強構造がフロントピラーからサイドシルまで連続して設けられており、ヒンジロアブレースのシル内下端部とアウトリガー、ダッシュロアが閉接合となっている。また、ピラー接合部分には突出部が設けられており、ピラーアウターに嵌入させて接合用フランジで取り付けられている。これらの構成により、接合部の剛性を確保し、側面衝突時の衝突入力をフロアへと伝達することができ、衝撃吸収効率を向上させることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−89451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の発明では、側面衝突時に衝突荷重をフロアへと伝達する構成ではあるが、ダッシュメンバー側への荷重伝達を考慮して、側面衝突時の衝突荷重によるドアのフロアへの進入の抑制効果をさらに向上させたい。
【0005】
そこで本発明は、側面衝突時の衝突荷重を効率的にダッシュメンバーへも伝達することができ、衝撃吸収効率の向上を可能としたフロントピラーとダッシュとの結合部分の車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る車体結合構造は、自動車用フロントピラーとダッシュとの結合部分の車体結合構造であって、ダッシュとピラーとの接合部分に、ピラーへの側突荷重をダッシュ側へ伝達する荷重伝達部を備えていることを特徴とする。あるいは、ピラーへの衝突荷重をダッシュ側へと伝達する結合部を備えていることを特徴とする。
【0007】
この荷重伝達部は、ダッシュ側、ピラー側の一方が他方へ嵌合する構造を有しているとよい。さらに、ダッシュとピラーとの嵌合部の周囲にフランジ部を有していると好ましい。
【0008】
あるいは、本発明に係る車体結合構造は、自動車用フロントピラーとダッシュとの結合部分の車体結合構造であって、ダッシュ、ピラー側の一方は、その接合面に相手方へと突出する突起部を有し、他方は、その接合面に上記突起部を収容する収容部を有しており、ダッシュとピラーとは接合面で接着されていることを特徴とする。
【0009】
この突起部は、形成されるダッシュまたはピラーの本体の外皮部材と骨部材の間に嵌合して固定されるフランジ部を有すると好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記構成を採用することで、接合部分を通じてピラーからダッシュへと効果的に衝突荷重を伝達することができる。このため、ピラーの変形を抑制して、ドアのフロアへの進入抑制効果が向上し、衝撃吸収効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る車体結合構造を示す断面図である。
【図2】図1の車体結合構造を有するダッシュ部の断面図である。
【図3】図1の車体結合構造の荷重伝達部の斜視図である。
【図4】図1に対応する部分の従来の車体結合構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明に係る車体結合構造を示す断面図であり、図2は、そのダッシュ部の断面図、図3は、その荷重伝達部の斜視図である。また、図4は、図1に対応する部分の従来の車体結合構造を示す断面図である。
【0014】
この結合構造は、ダッシュ部1と、ピラー部3とを結合するものであり、ダッシュ部1、ピラー部3ともその外皮は、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスティック)で作られている。
【0015】
ダッシュ部1は、図2に示されるように外皮11内に骨部材10、12が上下に平行に配置される構成を有する。骨部材10、12はいずれも断面が略四角形の筒状の構成を有する。従来の車体結合構造においては、図4に示されるように、ダッシュ部1のピラー部3との接合端面11cは、平坦な面として構成され、ピラー部3の接合端面30cに接着層20により接合されていた。このような構成の場合、側面から衝突を受けた場合、接合面(接合端面11cと30c)とが剥離し、ピラー部3が変形する結果、ピラー部3に接続されるドア等の車室へ進入し、進入速度が大きいままになってしまう結果となる。これを抑制するためにピラー部3の強度を大きくしようとすると、ピラー部3の積層厚を増やす必要が生じ、車体の重量増へとつながり、好ましくない。
【0016】
本発明に係る結合構造における下部骨部材10部分の構成を図1に示す。ダッシュ部1のピラー部3への結合端面側に結合部材13を配置している。この結合部材13は、そのピラー部3側への結合端面側にピラー部3方向に突出する凸部13cを有しており、凸部13cの周囲にフランジ部13dを備える。このフランジ部13dをダッシュ部1の外皮11と骨部材10の間にこのフランジ部13dを挟み込む形で固定している。
【0017】
一方、ピラー部3は、車室側を開いた断面略コの字状の部材30とその開口部を塞ぐ板状の部材31で構成されている。部材30のダッシュ部1側の端面には、ダッシュ部1の凸部13cに対応する形の収容凹部30aが設けられている。ダッシュ部1とピラー部3とは、両者の結合面の間に接着剤を塗布し、ダッシュ部1の凸部13cがこの収容凹部30a内に収容されるよう両者を配置して接着剤を固化させて接着層20を形成することにより両者を固定する。
【0018】
この結合構造によれば、側方から衝突を受けた場合でも、ピラー部3とダッシュ部1とが凸部13cと収容凹部30aとの嵌合によりその結合状態を維持することができるので、結合部分の剥離を防止して、ピラー部3からダッシュ部1へと衝突荷重を効率よく伝達することができる。このため、ピラー部3の変形を抑制することができ、その結果、ドアのフロアへの進入の抑制効果が向上し、その進入速度も抑えることができる。なお、上部骨部材12の結合端面側についても下部骨部材10の場合と同様の構成とするとよい。
【0019】
以上述べたように、本結合構造によれば、接合部分の剥離を効果的に防止でき、衝撃吸収効率を向上させることができる。そのため、ピラー部3からの衝撃伝達が十分でない場合に比較して、その強度を大きくする必要がなく、軽量化、薄型化することができる。そのため、車体全体の軽量化やボディの薄型化も可能となる。
【0020】
以上の説明では、ダッシュ部1側に突出部13を設け、これをピラー部3の収容部30a内に収容する構成を説明してきたが、ピラー部3側に突出部を設け、ダッシュ部1側に設けた収容部内にこれを収容して固定する構成としてもよい。また、双方に突出部を設け、他方にこれを収容する突出部を設けて互いに収容して固定する構成としてもよい。
【0021】
また、突起の形状は、ここで説明した断面が矩形の突起に限られるものではなく、断面が円や楕円、その他の多角形等の各種の形状を用いることができる。さらに、単純な突起部に限らず、嵌め合い、噛み合わせ等によって互いを固定し、ピラー部への衝突力をダッシュ部に伝達する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0022】
1…ダッシュ部、3…ピラー部、7…特開平、10…下部骨部材、11…外皮、11a、b…フランジ部、11c…接合端面、12…上部骨部材、13…結合部材、13c…凸部、13d…フランジ部、20…接着層、30…部材、30a…収容凹部、30c…接合端面、31…部材。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用フロントピラーとダッシュとの結合部分の車体結合構造であって、
ダッシュとピラーとの接合部分に、ピラーへの側突荷重をダッシュ側へ伝達する荷重伝達部を備えていることを特徴とする車体結合構造。
【請求項2】
前記荷重伝達部は、ダッシュ側、ピラー側の一方が他方へ嵌合する構造を有している請求項1記載の車体結合構造。
【請求項3】
前記ダッシュとピラーとの嵌合部の周囲にフランジ部を有していることを特徴とする請求項2に記載の車体結合構造。
【請求項4】
自動車用フロントピラーとダッシュとの結合部分の車体結合構造であって、
ダッシュ、ピラー側の一方は、その接合面に相手方へと突出する突起部を有し、
他方は、その接合面に上記突起部を収容する収容部を有しており、
前記ダッシュとピラーとは接合面で接着されていることを特徴とする車体結合構造。
【請求項5】
前記突起部は、形成されるダッシュまたはピラーの本体の外皮部材と骨部材の間に嵌合して固定されるフランジ部を有することを特徴とする請求項4記載の車体構造。
【請求項6】
自動車用フロントピラーとダッシュとの結合部分の車体結合構造であって、
ピラーへの衝突荷重をダッシュ側へと伝達する結合部を備えていることを特徴とする車体結合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−98691(P2011−98691A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256059(P2009−256059)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】