説明

車体部品の締結構造

【課題】ボルトが螺合されたままのかしめナットを再かしめできるようにする。
【解決手段】車体に設けられた部品12にかしめられたかしめナット20と、かしめナット20に螺合されることにより、部品12に被締結部材26を締結する頭部付ボルト30と、頭部付ボルト30の頭部32に形成され、頭部付ボルト30の軸方向へ開口する雌ネジ部34と、を有する車体部品の締結構造10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体部品の締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
異種金属で形成された一方の部材と他方の部材とを締結するためのかしめナットとボルトとを備えた車体部品の締結構造は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。かしめナットは、一方の部材の貫通孔周りにかしめられたかしめ部とフランジ部とで、その貫通孔周りを挟持することにより、その一方の部材に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−112425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一方の部材が樹脂製であると、経時により貫通孔周りがクリープし、かしめナットの挟持圧が低減するおそれがある。かしめナットの挟持圧が低減されると、かしめナットからボルトを外す際に、かしめナットがボルトと共に回転してしまい、かしめナットからボルトを外せなくなる不具合が発生する。
【0005】
この場合、かしめナットを再度かしめて挟持圧を復活させる必要があるが、かしめナットを再度かしめるには、かしめナットにかしめ用治具を螺合させる必要がある。しかしながら、かしめナットにボルトが螺合されていると、そのボルトが邪魔で、かしめナットを再かしめすることができない。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、ボルトが螺合されたままのかしめナットを再かしめできる車体部品の締結構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の車体部品の締結構造は、車体に設けられた部品にかしめられたかしめナットと、前記かしめナットに螺合されることにより、前記部品に被締結部材を締結する頭部付ボルトと、前記頭部付ボルトの頭部に形成され、該頭部付ボルトの軸方向へ開口する雌ネジ部と、を有することを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、かしめナットに螺合される頭部付ボルトの頭部には、頭部付ボルトの軸方向へ開口する雌ネジ部が形成されている。したがって、その雌ネジ部にかしめ用治具の雄ネジ部を螺合して牽引することにより、かしめナットを再度かしめることができる。つまり、頭部付ボルトが螺合されたままのかしめナットを再かしめすることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の車体部品の締結構造は、請求項1に記載の車体部品の締結構造であって、前記部品が、樹脂製であることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、かしめナットがかしめられる部品が、樹脂製とされている場合に、特に有効となる。
【0011】
また、請求項3に記載の車体部品の締結構造は、請求項1又は請求項2に記載の車体部品の締結構造であって、前記被締結部材が、ワイパーブラケットであることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、被締結部材が、ワイパーブラケットとされている場合に、特に有効となる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、ボルトが螺合されたままのかしめナットを再かしめできる車体部品の締結構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る車体部品の締結構造を示す断面図である。
【図2】かしめ用治具により再かしめする状態を示す断面図である。
【図3】(A)再かしめする前の状態を示す一部拡大断面図である。(B)再かしめした後の状態を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において、矢印UPを上方向とし、それを基準に「上」「下」を付加して説明する場合があるが、「上」「下」を付加した説明によって、各部の方向が限定されるものではない。
【0016】
図1で示すように、車体部品の締結に用いられる締結構造10は、車体に設けられた樹脂製部品としての樹脂パネル12の締結部14にかしめられたかしめナット20と、かしめナット20に螺合されることにより、樹脂パネル12に被締結部材としてのワイパーブラケット26を締結する頭部付ボルト30と、を有している。
【0017】
樹脂パネル12における締結部14には、かしめナット20をかしめて取り付けるための貫通孔14Aが形成されている。そして、かしめナット20には、締結部14の貫通孔14A周りの内周縁部14Bに支持される平面視円形状のフランジ部22が形成されている。
【0018】
また、このかしめナット20には、図2で示すかしめ用治具40により、フランジ部22よりも下方側で、かつ雌ネジ部25よりも上方側の部位を圧縮して潰す(かしめる)ことにより、締結部14の内周縁部14Bをフランジ部22とで挟持するかしめ部24が形成されるようになっている。
【0019】
つまり、かしめ用治具40の下端部に設けられた雄ネジ部42が、かしめナット20に螺合され、この状態で雄ネジ部42が上方へ向かって牽引されることで、かしめナット20にかしめ部24が形成されるようになっている。そして、このかしめ部24とフランジ部22とで内周縁部14Bを挟持することにより、かしめナット20が、その内周縁部14Bに取付固定されるようになっている。
【0020】
頭部付ボルト30は、かしめナット20のフランジ部22の上面に、金属製のワイパーブラケット26を固定するために、そのワイパーブラケット26の上方から、ワイパーブラケット26に形成されたボルト挿通孔26Aに挿通されて、かしめナット20に螺合されるようになっている。
【0021】
つまり、これにより、頭部付ボルト30の頭部32とフランジ部22とで、ワイパーブラケット26を挟持固定するようになっている。そして、この頭部付ボルト30の頭部32には、その軸方向へ開口する雌ネジ部34が形成されている。この雌ネジ部34の直径は、かしめ用治具40の下端部に設けられた雄ネジ部42が螺合できる大きさとされている。
【0022】
また、この樹脂パネル12は、図1、図2で示すように、その外周縁部12Aが、別の樹脂パネル16に接着剤18によって接合されることにより、閉断面構造を形成するようになっている。したがって、かしめナット20のフランジ部22よりも下方側には、アクセス不能であり、かしめ部24を下方側からかしめることはできないようになっている。
【0023】
以上のような構成の車体部品の締結構造10において、次にその作用について説明する。上記したように、かしめナット20は、樹脂パネル12の締結部14における貫通孔14A周りの内周縁部14Bを、かしめ用治具40によりかしめられたかしめ部24とフランジ部22とで挟持することによって、その内周縁部14Bに取付固定されている。
【0024】
したがって、その内周縁部14Bに、経時によるクリープが発生していないときには、頭部付ボルト30をかしめナット20に螺合したり、かしめナット20から頭部付ボルト30を外したりする際に、そのかしめナット20が頭部付ボルト30と共に回転することはなく、これによって、頭部付ボルト30が、かしめナット20に螺合されたり、かしめナット20から外されたりする。
【0025】
しかしながら、その内周縁部14Bが経時によりクリープすると、そのフランジ部22とかしめ部24とによる内周縁部14Bに対する挟持圧が低減(不足)し、頭部付ボルト30をかしめナット20から外すときに、そのかしめナット20が頭部付ボルト30と共に回転して、かしめナット20から頭部付ボルト30が外せなくなる不具合が発生する。
【0026】
したがって、その場合には、かしめ用治具40により、再度かしめ部24をかしめる。すなわち、図2で示すように、かしめ用治具40の下端部に設けられた雄ネジ部42を、頭部付ボルト30の頭部32に形成されている雌ネジ部34に螺合する。
【0027】
そして、図3(A)で示すように、かしめ用治具40の雄ネジ部42の径方向外側に同軸かつ円筒状に設けられた押さえ部材44により、ワイパーブラケット26の上面を上方から押さえた状態で、雌ネジ部34に螺合されている状態の雄ネジ部42を上方へ向かって引き上げる(牽引する)。
【0028】
すると、図3(B)で示すように、頭部付ボルト30が上方へ向かって引き上げられるため、頭部付ボルト30が螺合しているかしめナット20の雌ネジ部25が上方へ向かって引き上げられる。ここで、かしめナット20の雌ネジ部25は、かしめ部24よりも下方側に形成されている。
【0029】
したがって、かしめナット20の雌ネジ部25が上方へ向かって引き上げられることにより、かしめ部24の座屈変形が進行し、かしめ部24が再度かしめられる。つまり、これにより、かしめ部24とフランジ部22との内周縁部14Bに対する挟持圧が復活し、かしめナット20が、その内周縁部14Bに再度固定されるので、かしめナット20に螺合された頭部付ボルト30を、かしめナット20から外すことができる。
【0030】
このように、かしめナット20のフランジ部22とかしめ部24とで挟持された締結部14の内周縁部14Bが経時によりクリープし、フランジ部22とかしめ部24とによる内周縁部14Bに対する挟持圧が低減して、頭部付ボルト30がかしめナット20から外せなくなる現象が起きても、その頭部付ボルト30を破壊することなく、かしめナット20から外すことができる。
【0031】
また、このかしめ用治具40は、ワイパーブラケット26を上方から押さえた状態で、頭部付ボルト30を引き上げる(牽引する)ので、ワイパーブラケット26が変形するおそれもない。なお、かしめ用治具40としては、一例として公知のポップハンドナッターMN10Aを採用することができるが、これに特に限定されるものではない。
【0032】
以上、本実施形態に係る車体部品の締結構造10について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る締結構造10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、かしめナット20がかしめられる部品は、樹脂製でなくてもよい。
【0033】
但し、本実施形態に係る締結構造10は、かしめナット20がかしめられる部品が樹脂製である場合、即ち経時によりクリープが発生するおそれがある場合に、特に有効となる。また、本実施形態に係る締結構造10は、被締結部材がワイパーブラケット26である場合、即ち図示しないワイパーによって生じる振動によって、かしめナット20の挟持圧が低減するおそれがある場合に、特に有効となる。
【符号の説明】
【0034】
10 締結構造
12 樹脂パネル(部品)
20 かしめナット
26 ワイパーブラケット(被締結部材)
30 頭部付ボルト
32 頭部
34 雌ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられた部品にかしめられたかしめナットと、
前記かしめナットに螺合されることにより、前記部品に被締結部材を締結する頭部付ボルトと、
前記頭部付ボルトの頭部に形成され、該頭部付ボルトの軸方向へ開口する雌ネジ部と、
を有することを特徴とする車体部品の締結構造。
【請求項2】
前記部品が、樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の車体部品の締結構造。
【請求項3】
前記被締結部材が、ワイパーブラケットであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体部品の締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−241761(P2012−241761A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110708(P2011−110708)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】