説明

車体骨格部材の結合部構造

【課題】 車両室内側の空間を拡大することができると共に、車体の側方から外力が作用したときに、ピラー部材の車室内側への侵入量を低減することができる車体骨格部材の結合部構造を提供する。
【解決手段】 ルーフパネル1の左右両側部に配設され、車体上下方向に沿って延びるピラー部材2と、ピラー部材2の上端部と結合し、ルーフパネル1の左右両側部に車体前後方向に沿って延びるサイドルーフレール3と、ルーフパネル1の裏面側に車体左右方向に沿って配設されるルーフボウ4と、これらのルーフボウ4とピラー部材2の上端部と前記サイドルーフレール3とを連結する補強部材5と、で構成される車体骨格部材の結合部構造において、補強部材5は、車両室外側に突設されて、その内方側にルーフハーネス15を緩挿自在な脆弱部16を有するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両室内の空間を拡大することができると共に、車体の側方から外力が作用したときに、ピラー部材の車室内側への侵入量を低減する車体骨格部材の結合部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、車体の両側部にはピラー部材が車体上下方向に沿って延びており、該ピラー部材の上端部と結合しているサイドルーフレールが車体前後方向に沿って延びており、ルーフパネルの裏面側に車体左右方向に沿ってルーフボウが配設されている。そして、これらルーフボウ、ピラー部材の上端、及びサイドルーフレールを補強部材で連結している。
【0003】
このような構成の車体骨格部材の結合部構造において、車体の側方から外力が作用したときに、ピラー部材の車室内への侵入量を軽減する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10-100936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の従来技術では、ワイヤハーネスなどの長尺部材をルーフパネルの左右両側部の車両室内側に配索する場合、長尺部材の径寸法分だけ車両室内側の空間を狭めるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述の事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、車両室内側の空間を拡大すると共に、車体の側方から外力が作用したときに、ピラー部材の車室内側への侵入量を低減することができる車体骨格部材の結合部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明にあっては、車体の左右両側に配設され、車体上下方向に沿って延びるピラー部材と、該ピラー部材の上端部と結合し、車体前後方向に沿って延びるサイドルーフレールと、ルーフパネルの裏面側に配設され、車体左右方向に沿って延びるルーフボウと、これらのルーフボウ、前記ピラー部材の上端部、及び前記サイドルーフレールを連結する補強部材と、で構成される車体骨格部材の結合部構造において、前記補強部材は、車両室外側に突設された脆弱部を有すると共に、該脆弱部の内方側に長尺部材を緩挿して配置したことを特徴とする
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、補強部材は、車両室外側に突設された脆弱部の内方側に長尺部材を緩挿しているため、車両室内側の空間を拡大することができる。また、ピラー部材の側方から外力が作用したときに、前記脆弱部が変形することによって、サイドルーフレールが上方に向けて移動するため、ピラー部材の車室内側への侵入量を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0009】
図1〜4は本発明にかかる車体骨格部材の結合部構造の一実施形態を示し、図1は車両の斜視図、図2は図1のA-A線による補強部材周辺の断面図、図3は補強部材周辺の分解斜視図、図4は図1のA-A線による補強部材周辺の断面図であり、(a)はピラー部材の側方から外力が作用したときの初期状態を示し、(b)は脆弱部が変形したときの状態を示し、図5は図3のa-a線、b-b線及びc-c線による補強部材の断面図であり、(a)はa-a線及びc-c線による断面図を示し、(b)はb-b線による断面図を示す。
【0010】
図1〜図3を用いて本実施形態の車体骨格部材の結合部構造を説明する。
【0011】
本実施形態に係る車体骨格部材は、ルーフパネル1の左右両側部に配置され、車体の上下方向に向かって延びる第1の骨格部材を構成するピラー部材2と、ピラー部材2の上端部と結合し、ルーフパネル1の左右両側部に車体前後方向に沿って延びる第2の骨格部材を構成するサイドルーフレール3と、ルーフパネル1の裏面側に車体左右方向に沿って配設されてルーフパネル1の骨格部材を構成するルーフボウ4とから構成されており、これらルーフボウ4とピラー部材2とサイドルーフレール3とを補強部材5で連結及び結合している。
【0012】
ピラー部材2は、ピラーインナ6とピラーアウタ7とで形成されており、サイドルーフレール3は、レールインナ8とレールアウタ9とで閉断面構造に形成されている。
【0013】
レールインナ8には、レールアウタ9とで形成する閉断面の内側面に一対のナット10が溶接されているとともにナット穴12が形成されている。また、ピラーインナ6には、締結孔13が、補強部材5には締結孔14が、前記ナット穴12に対応して形成されている。そして、一対のボルト11とナット10によって、これらの補強部材5、ピラーインナ6及びレールインナ8の3つの部材が共締めされている。
【0014】
補強部材5は、一端がルーフボウ4と溶接されており、他端をピラーインナ6及びレールインナ8と共に締結されていることによって、ルーフボウ4とピラー部材2とサイドルーフレール3とを連結している。補強部材5の車両室内側には、車体前後方向に沿って延びるルーフハーネス(長尺部材)15が配置されている。補強部材5には、ルーフハーネス15に対応する部分に車両室外側に突設された脆弱部16が設けられている。脆弱部16は、ルーフハーネス15の径に対して僅かに曲率が小さく形成された略U字形状を成しており、その内方側にルーフハーネス15を緩挿自在に形成されている。そして、ルーフハーネス15は、脆弱部16の内方側に、内周面16aから僅かに車室内側に間隔をおいて配置されている。
【0015】
また、ルーフボウ4、脆弱部16及びピラーインナ6の車室内側には、所定の厚みを有するスペーサ18を介してルーフトリム17が配設されている。
【0016】
また、図2において、脆弱部16を設けないときのルーフトリム17とルーフハーネス15の位置を二点鎖線で示す。この場合は、脆弱部16のうちルーフボウ4の端末とピラーインナ6の端末を結ぶ部分が断面略直線状になるため、実線で示す本実施形態の位置よりもルーフトリム17とルーフハーネス15を車室内側に配置しなければならない。
【0017】
さらに、補強部材5は、車体前後方向に沿って起伏を繰り返す凹凸形状に形成されている。具体的には、図3のa-a線とc-c線による断面図である図5(a)に示すように、車両前後方向に沿って切断した場合の断面が、車室外側に突出した凸部19と、該凸部19から車室内側に傾斜して延びる傾斜部21と、該傾斜部21の端部に続いて延びる、最も車室内側に配置された凹部20とが交互に繰り返されることにより、凹凸形状に形成されている。
【0018】
また、補強部材5の断面形状を車幅方向に沿って見ると、ルーフボウ4の端末との連結部近傍においては、前述した図5(a)に示すような凹凸断面形状であり、車幅方向外側に向かうにつれて徐々に変化し、脆弱部16付近では、b-b線による断面図である図5(b)に示すように、ほぼ平坦な断面形状となり、さらに下方に向かうと、ピラーインナ6の端末との連結部においては、c-c線による断面図である図5(a)に示す凹凸断面形状になる。
【0019】
かかる構成によって、図4(a)に示すように、車体の側方から外力が作用してピラー部材2に曲げモーメントMが発生すると、ピラー部材2の曲げに伴ってサイドルーフレール3は車室内側にねじられる。しかしながら、このねじれ変形によって、補強部材5の脆弱部16は図4(b)に示すように、曲率が大きくなる方向に変形するため、サイドルーフレール3は、矢印に示すように、車体の斜め上方に向けて移動する。このように、車体に側方から作用した外力は、脆弱部16によって斜め上方へ方向が変換されるため、ピラー部材2の車室内側への侵入量が低減する。
【0020】
以下、本実施形態の効果について説明する。
【0021】
(1) ルーフパネル1の左右両側部に配設され、ピラーインナ6とピラーアウタ7とで形成されて車体上下方向に沿って延びる第1の骨格部材を構成するピラー部材2と、ピラー部材2の上端部と結合し、レールインナ8とレールアウタ9とで閉断面構造に形成されてルーフパネル1の左右両側部に車体前後方向に沿って延びる第2の骨格部材を構成するサイドルーフレール3と、ルーフパネル1の裏面側に車体左右方向に沿って配設されてルーフパネル1の骨格部材を構成するルーフボウ4と、これらのルーフボウ4とピラー部材2の上端部と前記サイドルーフレール3とを連結する補強部材5と、で構成される車体骨格部材の結合部構造において、補強部材5は、車両室外側に突設されて、その内方側にルーフハーネス15(長尺部材)を緩挿自在な脆弱部16を有する。このため、ルーフハーネス15をより車室外側へ配置でき、車両室内側の空間を拡大することができる。また、ピラー部材2の側方から外力が作用した場合にピラー部材2の車室内側への侵入量を低減することができる。つまり、図4(a)に示すように、側方からの外力が作用して曲げモーメントMが発生した場合に、脆弱部16が変形し、サイドルーフレール3を車体上方に移動させことによって、曲げモーメントMを脆弱部16の曲げ応力で吸収させると共に、図4(b)に示すように、ルーフボウ4の圧縮応力pと曲げ応力mとに分散させることができる。これにより、ルーフボウ4に働く曲げ応力mを小さくすることができるため、ルーフボウ4の曲げ変形を抑制することができる。その結果、ピラー部材2の車室内側への侵入量を減らすことができる。
【0022】
(2) 補強部材5は、車体前後方向に沿って起伏を繰り返す凹凸形状に形成されているため、該凹凸形状に形成されていない部材よりも、車両前後方向に沿って切断した場合の断面における断面二次モーメントが大きい。これによって、補強部材の厚みを薄くして重量を軽くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態における車両の斜視図である。
【図2】図1のA-A線による補強部材周辺の断面図である。
【図3】本発明の実施形態における補強部材部品の分解斜視図である。
【図4】図1のA-A線による補強部材周辺の断面図であり、(a)はピラー部材の側方から外力が作用したときの初期状態、(b)は脆弱部が変形したときの状態を示す。
【図5】図3のa-a線、b-b線及びc-c線による補強部材の断面図であり、(a)はa-a線及びc-c線による断面図を示し、(b)はb-b線による断面図を示す。
【符号の説明】
【0024】
1 ルーフパネル
2 ピラー部材
3 サイドルーフレール
4 ルーフボウ
5 補強部材
15 ルーフハーネス(長尺部材)
16 脆弱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の左右両側に配設され、車体上下方向に沿って延びるピラー部材と、
該ピラー部材の上端部と結合し、車体前後方向に沿って延びるサイドルーフレールと、
ルーフパネルの裏面側に配設され、車体左右方向に沿って延びるルーフボウと、
これらのルーフボウ、前記ピラー部材の上端部、及び前記サイドルーフレールを連結する補強部材と、
で構成される車体骨格部材の結合部構造において、
前記補強部材は、車両室外側に突設された脆弱部を有すると共に、
該脆弱部の内方側に長尺部材を緩挿して配置したことを特徴とする車体骨格部材の結合部構造。
【請求項2】
前記補強部材には、車体左右方向に沿うビードが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車体骨格部材の結合部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−69667(P2007−69667A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256525(P2005−256525)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】