車椅子及び車椅子用補助装置
【課題】車椅子の折りたたみ性を確保しながら簡便な装置構成で車椅子利用者の自力段差克服を可能とする車椅子を提供する。
【解決手段】複数の縦フレーム及び横フレームで構成される側部フレームと、この側部フレームの前側部分に設けられた小車輪と、側部フレームの後方部分に設けられた主車輪とを備えた車椅子において、一端を縦フレームに回転可能に支持されるとともにアーム長が伸縮する伸縮用アームと、取付用金具に取り付けられ伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させる回動機構とから構成される。
【解決手段】複数の縦フレーム及び横フレームで構成される側部フレームと、この側部フレームの前側部分に設けられた小車輪と、側部フレームの後方部分に設けられた主車輪とを備えた車椅子において、一端を縦フレームに回転可能に支持されるとともにアーム長が伸縮する伸縮用アームと、取付用金具に取り付けられ伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させる回動機構とから構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子及び車椅子用補助装置に関し、特に車椅子利用者が簡便な手段で段差を乗り越えることができるように工夫された車椅子及び車椅子用補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子利用者の中でも、主に手動車椅子を利用して日常生活を送っている下肢障碍者の方が自立行動範囲を広げるためには、階段などの段差を乗り越えねばならない場面が多々存在する。
【0003】
このため、介助者がいないときでも、あるいは介助者の僅かな助力により車椅子利用者が自力で段差を乗り越えることができるように種々の工夫が施された車椅子が提案され、一部実用化がされている。この点について、特許文献1では、車椅子を4箇所で垂直に持ち上げて段差を乗り越える改善を提案している。
【0004】
特許文献2では、主車輪の後ろに第三の車輪を設け、段差で第三の車輪を機械的に押し下げることで乗り越える技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-126010号公報
【特許文献2】特開2000-288032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に開示された種々の技術によれば、介助者を必要とせずに、あるいは介助者の僅かな助力により段差を自力で乗り越えることができるという部分での改善は行われているが、それぞれに問題点が残る。例えば、特許文献1では4方から垂直に持ち上げるために、このための装置が大掛かりとなり、また前方に進むために一部動作で介助者の助力を必要とする。特許文献2では、第三の車輪が後方に張り出しているために介助者の足元が不自由となり、介助しにくく、また装置が大型となり小回りが利かない。
【0007】
そのうえ、いずれの特許文献にも当てはまる問題点は、車椅子と一体となった構造であるために、かかる段差昇降用の機構部分が備わった車椅子とならざるを得ない点である。
【0008】
この点、特許文献1はアタッチメント方式になっており、市販の車椅子に後から取り付けることは可能であるが、そのためには装置を車椅子の大きさに合わせる必要があるために装置がオーダーメードとなり、コスト高となることを避けられない。
【0009】
つまり、端的に言えばいずれの場合にも特注品の車椅子にならざるを得ないということであり、これでは、誰もがすぐに利用できるということにはならない。
【0010】
以上のことから本発明においては、車椅子と一体となった特注品であっても、あるいは段差昇降用の機構部分のみをあとから車椅子に取り付ける形であっても効果を享受することのできる簡便な装置構成で、車椅子利用者の自力段差克服を可能とする車椅子及び車椅子用補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車椅子用補助装置は、車椅子取付用金具と、一端を該車椅子取付用金具に回転可能に支持されるとともにアーム長が伸縮する伸縮用アームと、取付用金具に取り付けられ伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させる回動機構とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の車椅子用補助装置においては、回動機構は、伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させるための駆動源としてのモータを含むものとしてもよい。
【0013】
さらには、伸縮用アームは筒材で形成され、筒材の内部には、アームの長手方向に回転軸を有するモータと、モータの回転を直線運動に変換する変換機構とが内装され、変換機構の直線運動により伸縮用アームのアーム長を伸縮させるものとしてもよい。
【0014】
一方、本発明の車椅子は、複数の縦フレーム及び横フレームで構成される側部フレームと、この側部フレームの前側部分に設けられた小車輪と、側部フレームの後方部分に設けられた主車輪とを備え、一端を縦フレームに回転可能に支持されるとともにアーム長が伸縮する伸縮用アームと、取付用金具に取り付けられ伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させる回動機構とを備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の車椅子においては、回動機構は、一端を前記縦フレームに回転可能に支持され、他端を伸縮用アームの中間部位に回転可能に支持された回転用アームであって、アーム長の伸縮により伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、多くの車椅子利用者の方が、簡便な装置構成で自力段差克服を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車椅子補助装置を取り付けた車椅子の全体構成を示す斜視図
【図2】車椅子の横側面図
【図3】車椅子の背面図
【図4】別体に製作された補助装置の全体構成を示す図
【図5】別体に製作された補助装置の取付部分を拡大した図
【図6】アームの伸縮機構を示す図
【図7】車椅子補助装置収容状態を示す図
【図8】車椅子補助装置展開状態を示す図
【図9】補助装置を用いて段差を上るときの手順を示す図
【図10】補助装置を用いて段差を降りるときの手順を示す図
【図11】補助装置を用いて段差を上るときの各アームの操作位置を示す図
【図12】補助装置を用いて段差を降りるときの各アームの操作位置を示す図
【図13】本発明の第1の代案の補助装置を示す図
【図14】本発明の第2の代案の補助装置を示す図
【図15】本発明の第3の代案の補助装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の車椅子及び車椅子用補助装置並びにその操作方法について、順次説明する。
【実施例1】
【0019】
まず、本発明にかかる補助装置を取り付けた車椅子について図1、図2、図3を用いて説明する。図1は、補助装置を取り付けた車椅子の全体を示す斜視図、図2はその横側面図、図3は背面図である。
【0020】
本発明で用いられる車椅子100は、JIS規格に準拠する通常の車椅子であり、全体は軽量なフレームで構成される。図1と図2に示すように、車椅子100は、座面114の両側に位置する側部フレームを主体とする。この側部フレームは、横フレーム101,102,103と縦フレーム104,105,106、107で構成される。
【0021】
これらフレームのうちの最も前方に位置する縦フレーム106の下端には、フットレスト110が取り付けられる。また中間部の下方に位置する縦フレーム104の下部には、前輪である小車輪111が取り付けられる。さらに、縦フレームのうちの最も後方に位置する縦フレーム107には、その最上部に押手113が設けられる。そして、これらの縦フレーム104,106,107は、横フレーム101,102によって連結されている。また、縦フレーム107と横フレーム102とは、横フレーム103及び縦フレーム105によって連結される。
【0022】
また、側部フレームの後方部分には、縦フレーム107の下部の位置において後輪である主車輪112が回転可能に取り付けられている。
【0023】
図2に示すように1つの主車輪112と、1つの小車輪111と、縦横のフレームからなる側部フレームと、1つのフットレスト110とで、1組の車椅子側面部材を構成し、図1に示すように2組の車椅子側面部材の間に座面114と背面115を取り付けた形で、いわゆる車椅子100が構成されている。なお、座面114と背面115とは、布あるいは皮製であり、折りたたむことができる。
【0024】
また、車椅子100の背面には本発明の補助装置200が取り付けられる。つまり、図1に示されているように、本発明の段差昇降用の補助装置200は、各車椅子側面部材の最も後方に位置する2つの縦フレーム107のそれぞれに対し固定金具230を用いて取り付けられる。
【0025】
図示の例において、補助装置200は、車椅子100を昇降させるための伸縮用アーム210と、伸縮用アーム210を収容位置と作動位置との間で回動させるための回動機構としての回転用アーム220とを備える。伸縮用アーム210は、固定金具230を介して一端を縦フレーム107に回転可能に取り付けられ、他端にキャスタ211を備える。また、回転用アーム220は、一端を縦フレーム107に回転可能に取り付けられ、他端を伸縮用アーム210の中間部位に回転可能に取り付けられる。そして、図示の例では、縦フレーム107における伸縮用アーム210と回転用アーム220の取付位置は、伸縮用アーム側取付位置を回転用アーム側取付位置の上にしている。
【0026】
図3は補助装置200を取り付けた車椅子100の背面図であり、この図で明らかなように本発明の補助装置200(背面から見ると伸縮用アーム210のみが見える)は、縦フレーム107に沿って幅方向における主車輪112の内側に上下方向に延在するように設置されている。なお、車椅子100には図3の背面図に示すように、車椅子を広げたときに車輪間の間隔を一定に保持するための折りたたみ可能な固定具116が設けられている。
【0027】
以上での説明においては、補助装置200を車椅子100と別体に製作し、固定具230で車椅子100に取り付けて使用することを念頭においているが、これを車椅子と一体に製作することも可能である。補助装置200を製作当初から車椅子100と一体に構成して、補助装置付車椅子とすることは当業者が容易に行い得ることができることなので、ここでの図示等を用いた説明を省略するが、要するに固定具230を縦フレーム107に一体的に形成することで実現できる。
【0028】
図4は、別体に製作された補助装置200の全体構成を示している。この補助装置200は、先に述べたように、補助装置自体を車椅子100の各縦フレーム107に固定するための固定金具230と、伸縮用アーム210と、回転用アーム220とを備えている。
【0029】
伸縮用アーム210と回転用アーム220とは、いずれも頭部(210c、220c)と外筒(210a、220a)と内筒(210b、220b)から構成され、頭部210cと220cを、それぞれ支持部材231と232にピン212と222によって回転できるように取り付けている。また、回転用アーム220の内筒220bは、伸縮用アーム210の中間部位として例えば外筒210aの部分に回転できるように取り付けている。なお、この補助装置200を構成する部材は極力軽量化することが望ましい。特にアーム材はアルミニウムのような軽量かつ高強度な材料とされる。
【0030】
固定金具230は、伸縮用アーム210及び回転用アーム220が取り付けられる板状部材235と、板状部材235を縦フレーム107に対し固定するためのU字部材234とで構成されている。また、板状部材235には、伸縮用アーム210の一端を回転可能に支持するための第1の支持部材231と、回転用アーム220の一端を回転可能に支持するための第2の支持部材232とが固定されている。
【0031】
図5は、固定金具230を縦フレーム107に取り付けた状態を示す図であり、板状部材235とU字部材234とで縦フレーム107を挟んだ状態で、U字部材234の開放側の端部を板状部材235に形成された貫通穴に通してある。U字部材234の開放側にはねじを切っておき、ここをボルト締めすることで、縦フレーム107に固定金具230を固定する。そして、固定金具230の第1の支持部材231及び第2の支持部材232のそれぞれに伸縮用アーム210及び回転用アーム220が取り付けられることにより、補助装置200自体が車椅子100の縦フレーム107に取り付けられた状態となる。このように本発明の補助装置200は、車椅子に極めて簡便に取り付けることができる。このため、特注品の車椅子にする必要がないので、多くの利用者に利用してもらえることが期待できる。
再び図4に戻り、次に各アーム210、220について説明する。各アーム210、220の一端は先ほど述べたように、固定金具230の第1、第2の支持部材231、232に回転可能に支持されている。また、回転用アーム220の他端は、伸縮用アーム210の中間部位に固定された第3の支持部材233に回転可能に取り付けられる。さらに、伸縮用アーム210の他端には、キャスタ211が取り付けられている(図4では図示略)。なお、伸縮用アーム210の他端に取り付けられるキャスタについては必ずしも必要ではなく、代わりに滑り止めのゴム製のキャップを取り付ける構成としてもよい。さらには、キャスタを採用する構成であっても、回転自在なものに限らず、ワンウェイクラッチやラチェット機構などを用いた進行方向にのみ回転するキャスタとすることもできる。この部分についてのこれらの変形は、利用者の状況に応じて適宜選択すべきことである。
【0032】
この図から明らかなように、伸縮用アーム210は回転用アーム220の上側に配置され、かつ3組の支持部材231、232、233によって回転可能に支持されている。
【0033】
図4には伸縮用アーム210と回転用アーム220の外形を示したが、これらのアームは、主に角型の外筒210a、220aと、角型の内筒210b、220bと、外筒の頭部210c、220cから構成される。これらは角型筒状に形成された中空部材である。そして、内筒210b、220bは、その外面において外筒210a、220aの中空部の内面に嵌まり込むように形成され、外筒210a、220aに対し回転不能な状態で長手方向に摺動可能に設けられる。
【0034】
図6は、外筒210a、220aを取り外したときのアーム内部の構造を示した図である。各アームの内部にはモータ61と、モータ61を外筒の頭部210c、220cの内側に固定する固定具62と、アームにかかる荷重をモータ61に伝えないためのスラスト軸受け63、及び外筒の頭部210c、220cと外筒210a、220aとに固定される固定具66、モータ61の回転を送りねじ64に伝達するカップリング67、ナット部65などを備える。
【0035】
モータ61は、平板状の固定具62で支持されており、その回転軸が固定具61を貫通して伸びている。この固定具62には、反モータ側の端面に外筒210a、220aが取り付けられるとともに、その周面に外筒の頭部210c、220cが嵌めあわされて固定される。したがって、モータ61は、外筒の頭部210c、220cを組み付けた状態で、その頭部210c、220cに収容された状態となる。
【0036】
また、送りねじ64は、固定具66によって外筒210a、220aの内面に固定されて外筒210a、220aの中空部内に設けられたスラスト軸受け63により、外筒210a、220aに対し回転可能に支持される。また、送りねじ64は、モータ61側の端部から突出して固定具66を貫通する軸部がモータ61の回転軸とカップリング67により連結される。これにより、モータ61の回転軸の回転が、カップリング67及び軸部を介して送りねじ64に伝達され、送りねじ63はモータ61によって回転駆動される。
【0037】
内筒210b、220bのモータ61側の端部には、その中空部の内面に、送りねじ64の雄ねじと螺合する雌ねじがきられたナット部65が形成されている。そして、内筒210b、220bは、このナット部において送りねじ64と螺合している。
【0038】
これらの構成によれば、モータ61が送りねじ64を回転駆動することにより、各アームの伸縮動作が行われる。すなわち、先に述べたように、内筒210b、220bは外筒210a、220aに対し回転不能に嵌まりあっているため、モータ61の回転駆動により送りねじ64と送りねじ64に螺合する内筒210b、220bのナット部65との間で相対回転が生じ、内筒210b、220bは、外筒210a、220aの内面に案内されつつ、送りねじ64の回転方向に応じてアームの長手方向に直線的に変位する。これにより、外筒210a、220aからの内筒210b、220bの突出量が変化し、この結果としてアームは伸縮する。そして、この構成の場合、送りねじ64、内筒210b、220bのナット部65、及び内筒210b、220bの回転を阻止する構成が、モータ61の回転軸の回転を直線運動に変換する変換機構を構成する。
【0039】
以上の説明で明らかなように、伸縮用アーム210と回転用アーム220は三点において支持部材231、232、233で回転可能に支持され、それぞれが伸縮する。この伸縮の前後における車椅子への取り付け状況を図7と図8で説明する。
【0040】
図7は、2つのアームが縮んだ状態を示しており、補助装置200を使用しないときはこの状態とされている。この状態では、補助装置200は縦フレーム107に添う位置、すなわち収容位置で、利用者あるいは介助者の邪魔にならないように折りたたまれている。
【0041】
図8は、回転用アーム220が伸びた状態を示しており、段差を乗り越えるときに伸縮用アーム210がこの位置、すなわち作動位置を取る。この図では、回転用アーム220が伸びているが、三点を支持部材231、232、233で回転可能に支持されているため、結果として伸縮用アーム210を回転させ、これを後方に押し広げるように作用する。なお、伸縮用アームはこの状態から内筒を伸ばしていく。このように本発明の補助装置は、段差昇降時以外には収容されているので小型であり、車椅子100の操作性を妨げることはない。
【0042】
次に本発明の補助装置を備えた車椅子を用いて、車椅子利用者がどのようにして段差を克服するのか、その一連の手順について以下説明する。図9は、車椅子と利用者と段差の位置関係を、段差Sを乗り越えるときの手順について模式的に示した図である。
【0043】
まず、車椅子利用者は、段差Sに差し掛かる(a)と、回転用アーム220を伸ばして収容位置にある伸縮用アーム210を後方にせり出す作動位置へもたらす(b)。次に利用者は体重を後方に移し、キャスタ211に体重を預ける(c)。利用者はこの体勢のまま前進し、前車輪111を段差Sの上に乗せる(d)。利用者はここで伸縮用アーム210を伸ばし始めるように手元スイッチを操作する。これにより車椅子は利用者ごと持ち上がる(e)。このとき利用者は、主車輪112を段差Sに接触させ、以後この接触状態を保つように車椅子100の位置を保持しておくと持ち上げの操作が安定して行われる。車椅子がある程度持ち上げられた状態では、利用者の僅かな主車輪112の回転操作で車椅子を前進させることができ、全体重を段差上の主車輪112に移すことができる(f)。最後に伸縮用アーム210を縮め(g)、回転用アーム220を縮めれば、段差乗り越えの一連の操作が完了する。
【0044】
同様に段差Sを降りるときは、ごく単純には後ろ向きになって以上の動作を反対に行えばよい。この手順を図10の模式図で説明する。
【0045】
まず利用者は、車椅子ごと後ろ向きに段差Sの縁に位置付けし、回転用アーム220を伸ばし(a)、ついで伸縮用アーム210を伸ばして、これを段差の下に届くまで操作する(b)。伸縮用アーム210を伸ばしきった状態で体重をキャスタ211に預け、この位置から伸縮用アーム210を順次縮めていく(c)。この状態では車椅子はゆっくり降下していくが、このときに同時に回転用アーム220を伸ばして主車輪112を後方に展開するように動かすことが安定に降下させる上で有効である。しかして主車輪112が段差下に届くと(d)、車椅子を後退させて前車輪を段差から降ろし(e)、以後は通常姿勢に戻ったら回転用アーム220を縮めて(f)、最後に伸縮用アーム210も縮めて収容状態に復帰する(g)。
【0046】
本発明装置の操作は以上のように行われるが、この段差昇降のときの2つのアームの駆動位置(伸縮位置)を図示すると、上るときは図11、降りるときは図12のように操作してやることが望ましい。このタイムチャートは図9と図10での説明に即したものであるので、更なる説明は重複となるので避ける。
【0047】
なお、実際に車椅子に装備するときには、利用者にこの2つのアームの動きに沿った手元スイッチ操作を行わせしめるわけであるが、これを利用者に委ねるのではなく、マイクロコンピュータ等を用いて2つのアームの動きを記憶させておき、自動的に行わせしめることが有用である。例えば、段差を上るときの段階を準備段階(図9、図11の(a)から(c)まで)、移動段階(図9、図11の(d)から(f)まで)、収容段階(図9、図11の(g)から(h)まで)にわけ、この間のどの段階にあるかのみを車椅子利用者がスイッチなどで選定し、選定以後の位置操作をマイクロコンピュータが記憶した図11、図12の操作パターンに沿って行うというものである。
この場合に、車椅子には補助装置200内部のモータ61に電力を供給するためのバッテリー、あるいはマイクロコンピュータといったものを装備する必要がある。この設置場所は車椅子の適宜の場所とできるが、簡便には車椅子背面に通常取り付けられている収容袋の中に入れておくことも可能である。但し手元スイッチは利用者が直接動かすものなので図1の横フレーム103に取り付けることになろう。
【0048】
なお、上記の説明では伸縮用アーム210の他端にキャスタを備える例で説明をしたが、これは単なる自由自在なキャスタとせず、進行方向にのみ回転可能な一方向キャスタや、キャスタとは別の滑り止めの部材のような後進を防止する機能を有する部材(後進防止部材)にすることも車椅子利用者にとっては有効と考えられる場合があるので利用者に応じて吟味すべきである。
【0049】
回転可能なキャスタの場合に、図9(e)の状態で車椅子利用者は、主車輪を段差に接触させこの状態を保持することが必要であったが、上腕に力がない車椅子利用者の場合にはこの状態維持が困難な場合も考えられる。
【0050】
このようなときには、むしろ後進防止部材としたほうが、伸縮用アームが斜め後方に押し出して、車椅子を持ち上げるときの分力がその部材で受け止められることによって前進力として働くので上腕に力がない車椅子利用者にとっては、この方が楽であるともいえるからである。
【0051】
また、上記の例において、伸縮用アームに伸縮動作を行わせる機構(伸縮機構)は、モータを動力源とする送りねじ機構によるものとしたが、これに限らず、油圧や空気圧といった流体圧で作動する流体圧シリンダを伸縮機構として採用してもよい。さらに、伸縮機構がモータを動力源とするものであっても、上記の例のように、モータが伸縮用アームの内部に設けられるものに限らず、モータが外付けされたものであってもよい。
【0052】
以上、本発明の車椅子と、車椅子用補助装置と、その使用方法について述べてきたが、本発明装置について、その根本機能を考えてみると、図7、図8から明らかなように伸縮用アーム210を収容位置(図7)と、車椅子を持ち上げる作動位置(図8)との2つのポジションをとるべくこの間で移動させて、伸縮用アームを作動させるものである。但し、この作動位置については、1つの位置に限らず、図11,12に示すように、車椅子の段差に対する乗り上げ状態に応じて随時変更されるものであってもよいし、あるいは、段差の高さに応じて調整できるものであってもよい。
【0053】
そして、このための機構として、上記の例では回転用アーム220を用いている。この回転用アーム220の機能は、伸縮用アームに収容位置と作動位置とを取らせるための回動機構ということができる。
【0054】
この回動機構の動力源としてはモータを利用するものあるいは流体圧を利用するものが考えられ、本発明はそのいずれでも実現可能である。また回動機構のメカニズムとしては、種々のものが採用しえるが、以下にいくつかの代案事例を紹介する。
【実施例2】
【0055】
図13は、補助装置200として異なる回動機構の実施例を示している。この例では、収容位置と作動位置との間の伸縮用アーム210の回動を、回転用アーム220の伸縮ではなく、回転用アーム220を伸縮用アーム210と連結するための支持部材233を伸縮用アーム210の長手方向に沿って変位させることにより実現する。したがって、伸縮用アーム220は一定の長さであり、支持部材233は伸縮用アーム210の内部をスライド移動する移動部材240に固定されている。
【0056】
図13(a)は、伸縮用アーム210が収容位置にある状態を示している。移動部材240は上方位置にあり、伸縮用アーム210は車椅子の縦フレーム107に沿った収容状態とされる。移動部材240は伸縮用アーム210の内部をスライド移動するが、この移動は先に述べた例と同様の、図13(c)に示すモータの回転を直線運動に変換する機構を採用することで実現できる。
【0057】
図13(b)に示すように、移動部材240が下方位置に移るとき、回転用アーム220と伸縮用アーム210で成す角度が直角となる位置で、伸縮用アーム210はフレーム107から最も離れた位置となり、作動用の位置につく。この状態から伸縮用アーム210を伸ばし始めることで、車椅子の持ち上げ状態に入っていく。
【0058】
図13(c)は、伸縮用アーム210内における移動部材240を移動させるための具体構成を示したものである。移動部材240は伸縮用アーム210の内部において長手方向にスライド可能であって回転不能に設けられ、内周面に雌ねじが切られた貫通孔を有するナット状の部材である。また伸縮用アーム210の内部には、その長手方向に沿って送りねじ241が設けられており、この送りねじ241にナット状の移動部材240が螺合している。そして、送りねじ241がモータ242によって回転駆動されることにより、移動部材240が送りねじ241に沿って変位する。なお、この回動機構におけるモータ242は、伸縮用アーム210を伸縮させるためのモータとは別に設置される。また、構成の複雑化を避けるため、伸縮用アーム210を伸縮させるための機構と上記の回動機構とは、幅方向において位置が重複しないように設けられるのが好ましい。
【実施例3】
【0059】
図14は、補助装置200として上記とはさらに異なる回動機構の実施例を示している。この例では同図(a)に示すように縦フレーム107に取り付けられた固定金具230に3つの支持金具410、411、412が設けられており、それぞれの支持金具410、411、412には回転軸401、402、403を有する。これらの回転軸401、402、403には同図(b)に示すようにギアG1、G2、G3が互いにかみ合っている。
【0060】
また、第1の回転軸401にはモータ400が取り付けられてギアG1を回転させる。第2の回転軸402のギアG2はギアG1により駆動され、この力を最終段のギアG3に伝達する。第3の回転軸403には伸縮用アーム210が固定されており、伝達されたギアの回転位置により収容位置と作動位置を取ることができる。なお、図示の例ではギアがむき出しになっているがこれは適宜ギアボックに収容されることは言うまでもない。
【実施例4】
【0061】
図15は、図4の伸縮用アーム210と回転用アーム220の上下関係を逆(回転用アーム220を伸縮用アーム210の上側に位置づけたにしたものである。この場合には、回転用アーム220が伸びた状態(同図(a))で収容位置をとり、縮んだ状態(同図(b))で作動位置をとる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、補助装置を予め備えた車椅子とすることも、後から設置することも可能なので多くの車椅子利用者に利用していただけることが期待できる。
【符号の説明】
【0063】
100:車椅子
101,102,103:横フレーム
104,105,106,107:縦フレーム
110:フットレスト
111:小車輪
112:主車輪
113:押手
114:座面
115:背面
116:折りたたみ可能な固定具
200:補助装置
210:伸縮用アーム
211:キャスタ
220:回転用アーム
230:固定金具
231、232、233:支持部材
234:U字部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子及び車椅子用補助装置に関し、特に車椅子利用者が簡便な手段で段差を乗り越えることができるように工夫された車椅子及び車椅子用補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子利用者の中でも、主に手動車椅子を利用して日常生活を送っている下肢障碍者の方が自立行動範囲を広げるためには、階段などの段差を乗り越えねばならない場面が多々存在する。
【0003】
このため、介助者がいないときでも、あるいは介助者の僅かな助力により車椅子利用者が自力で段差を乗り越えることができるように種々の工夫が施された車椅子が提案され、一部実用化がされている。この点について、特許文献1では、車椅子を4箇所で垂直に持ち上げて段差を乗り越える改善を提案している。
【0004】
特許文献2では、主車輪の後ろに第三の車輪を設け、段差で第三の車輪を機械的に押し下げることで乗り越える技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-126010号公報
【特許文献2】特開2000-288032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に開示された種々の技術によれば、介助者を必要とせずに、あるいは介助者の僅かな助力により段差を自力で乗り越えることができるという部分での改善は行われているが、それぞれに問題点が残る。例えば、特許文献1では4方から垂直に持ち上げるために、このための装置が大掛かりとなり、また前方に進むために一部動作で介助者の助力を必要とする。特許文献2では、第三の車輪が後方に張り出しているために介助者の足元が不自由となり、介助しにくく、また装置が大型となり小回りが利かない。
【0007】
そのうえ、いずれの特許文献にも当てはまる問題点は、車椅子と一体となった構造であるために、かかる段差昇降用の機構部分が備わった車椅子とならざるを得ない点である。
【0008】
この点、特許文献1はアタッチメント方式になっており、市販の車椅子に後から取り付けることは可能であるが、そのためには装置を車椅子の大きさに合わせる必要があるために装置がオーダーメードとなり、コスト高となることを避けられない。
【0009】
つまり、端的に言えばいずれの場合にも特注品の車椅子にならざるを得ないということであり、これでは、誰もがすぐに利用できるということにはならない。
【0010】
以上のことから本発明においては、車椅子と一体となった特注品であっても、あるいは段差昇降用の機構部分のみをあとから車椅子に取り付ける形であっても効果を享受することのできる簡便な装置構成で、車椅子利用者の自力段差克服を可能とする車椅子及び車椅子用補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車椅子用補助装置は、車椅子取付用金具と、一端を該車椅子取付用金具に回転可能に支持されるとともにアーム長が伸縮する伸縮用アームと、取付用金具に取り付けられ伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させる回動機構とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の車椅子用補助装置においては、回動機構は、伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させるための駆動源としてのモータを含むものとしてもよい。
【0013】
さらには、伸縮用アームは筒材で形成され、筒材の内部には、アームの長手方向に回転軸を有するモータと、モータの回転を直線運動に変換する変換機構とが内装され、変換機構の直線運動により伸縮用アームのアーム長を伸縮させるものとしてもよい。
【0014】
一方、本発明の車椅子は、複数の縦フレーム及び横フレームで構成される側部フレームと、この側部フレームの前側部分に設けられた小車輪と、側部フレームの後方部分に設けられた主車輪とを備え、一端を縦フレームに回転可能に支持されるとともにアーム長が伸縮する伸縮用アームと、取付用金具に取り付けられ伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させる回動機構とを備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の車椅子においては、回動機構は、一端を前記縦フレームに回転可能に支持され、他端を伸縮用アームの中間部位に回転可能に支持された回転用アームであって、アーム長の伸縮により伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、多くの車椅子利用者の方が、簡便な装置構成で自力段差克服を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車椅子補助装置を取り付けた車椅子の全体構成を示す斜視図
【図2】車椅子の横側面図
【図3】車椅子の背面図
【図4】別体に製作された補助装置の全体構成を示す図
【図5】別体に製作された補助装置の取付部分を拡大した図
【図6】アームの伸縮機構を示す図
【図7】車椅子補助装置収容状態を示す図
【図8】車椅子補助装置展開状態を示す図
【図9】補助装置を用いて段差を上るときの手順を示す図
【図10】補助装置を用いて段差を降りるときの手順を示す図
【図11】補助装置を用いて段差を上るときの各アームの操作位置を示す図
【図12】補助装置を用いて段差を降りるときの各アームの操作位置を示す図
【図13】本発明の第1の代案の補助装置を示す図
【図14】本発明の第2の代案の補助装置を示す図
【図15】本発明の第3の代案の補助装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の車椅子及び車椅子用補助装置並びにその操作方法について、順次説明する。
【実施例1】
【0019】
まず、本発明にかかる補助装置を取り付けた車椅子について図1、図2、図3を用いて説明する。図1は、補助装置を取り付けた車椅子の全体を示す斜視図、図2はその横側面図、図3は背面図である。
【0020】
本発明で用いられる車椅子100は、JIS規格に準拠する通常の車椅子であり、全体は軽量なフレームで構成される。図1と図2に示すように、車椅子100は、座面114の両側に位置する側部フレームを主体とする。この側部フレームは、横フレーム101,102,103と縦フレーム104,105,106、107で構成される。
【0021】
これらフレームのうちの最も前方に位置する縦フレーム106の下端には、フットレスト110が取り付けられる。また中間部の下方に位置する縦フレーム104の下部には、前輪である小車輪111が取り付けられる。さらに、縦フレームのうちの最も後方に位置する縦フレーム107には、その最上部に押手113が設けられる。そして、これらの縦フレーム104,106,107は、横フレーム101,102によって連結されている。また、縦フレーム107と横フレーム102とは、横フレーム103及び縦フレーム105によって連結される。
【0022】
また、側部フレームの後方部分には、縦フレーム107の下部の位置において後輪である主車輪112が回転可能に取り付けられている。
【0023】
図2に示すように1つの主車輪112と、1つの小車輪111と、縦横のフレームからなる側部フレームと、1つのフットレスト110とで、1組の車椅子側面部材を構成し、図1に示すように2組の車椅子側面部材の間に座面114と背面115を取り付けた形で、いわゆる車椅子100が構成されている。なお、座面114と背面115とは、布あるいは皮製であり、折りたたむことができる。
【0024】
また、車椅子100の背面には本発明の補助装置200が取り付けられる。つまり、図1に示されているように、本発明の段差昇降用の補助装置200は、各車椅子側面部材の最も後方に位置する2つの縦フレーム107のそれぞれに対し固定金具230を用いて取り付けられる。
【0025】
図示の例において、補助装置200は、車椅子100を昇降させるための伸縮用アーム210と、伸縮用アーム210を収容位置と作動位置との間で回動させるための回動機構としての回転用アーム220とを備える。伸縮用アーム210は、固定金具230を介して一端を縦フレーム107に回転可能に取り付けられ、他端にキャスタ211を備える。また、回転用アーム220は、一端を縦フレーム107に回転可能に取り付けられ、他端を伸縮用アーム210の中間部位に回転可能に取り付けられる。そして、図示の例では、縦フレーム107における伸縮用アーム210と回転用アーム220の取付位置は、伸縮用アーム側取付位置を回転用アーム側取付位置の上にしている。
【0026】
図3は補助装置200を取り付けた車椅子100の背面図であり、この図で明らかなように本発明の補助装置200(背面から見ると伸縮用アーム210のみが見える)は、縦フレーム107に沿って幅方向における主車輪112の内側に上下方向に延在するように設置されている。なお、車椅子100には図3の背面図に示すように、車椅子を広げたときに車輪間の間隔を一定に保持するための折りたたみ可能な固定具116が設けられている。
【0027】
以上での説明においては、補助装置200を車椅子100と別体に製作し、固定具230で車椅子100に取り付けて使用することを念頭においているが、これを車椅子と一体に製作することも可能である。補助装置200を製作当初から車椅子100と一体に構成して、補助装置付車椅子とすることは当業者が容易に行い得ることができることなので、ここでの図示等を用いた説明を省略するが、要するに固定具230を縦フレーム107に一体的に形成することで実現できる。
【0028】
図4は、別体に製作された補助装置200の全体構成を示している。この補助装置200は、先に述べたように、補助装置自体を車椅子100の各縦フレーム107に固定するための固定金具230と、伸縮用アーム210と、回転用アーム220とを備えている。
【0029】
伸縮用アーム210と回転用アーム220とは、いずれも頭部(210c、220c)と外筒(210a、220a)と内筒(210b、220b)から構成され、頭部210cと220cを、それぞれ支持部材231と232にピン212と222によって回転できるように取り付けている。また、回転用アーム220の内筒220bは、伸縮用アーム210の中間部位として例えば外筒210aの部分に回転できるように取り付けている。なお、この補助装置200を構成する部材は極力軽量化することが望ましい。特にアーム材はアルミニウムのような軽量かつ高強度な材料とされる。
【0030】
固定金具230は、伸縮用アーム210及び回転用アーム220が取り付けられる板状部材235と、板状部材235を縦フレーム107に対し固定するためのU字部材234とで構成されている。また、板状部材235には、伸縮用アーム210の一端を回転可能に支持するための第1の支持部材231と、回転用アーム220の一端を回転可能に支持するための第2の支持部材232とが固定されている。
【0031】
図5は、固定金具230を縦フレーム107に取り付けた状態を示す図であり、板状部材235とU字部材234とで縦フレーム107を挟んだ状態で、U字部材234の開放側の端部を板状部材235に形成された貫通穴に通してある。U字部材234の開放側にはねじを切っておき、ここをボルト締めすることで、縦フレーム107に固定金具230を固定する。そして、固定金具230の第1の支持部材231及び第2の支持部材232のそれぞれに伸縮用アーム210及び回転用アーム220が取り付けられることにより、補助装置200自体が車椅子100の縦フレーム107に取り付けられた状態となる。このように本発明の補助装置200は、車椅子に極めて簡便に取り付けることができる。このため、特注品の車椅子にする必要がないので、多くの利用者に利用してもらえることが期待できる。
再び図4に戻り、次に各アーム210、220について説明する。各アーム210、220の一端は先ほど述べたように、固定金具230の第1、第2の支持部材231、232に回転可能に支持されている。また、回転用アーム220の他端は、伸縮用アーム210の中間部位に固定された第3の支持部材233に回転可能に取り付けられる。さらに、伸縮用アーム210の他端には、キャスタ211が取り付けられている(図4では図示略)。なお、伸縮用アーム210の他端に取り付けられるキャスタについては必ずしも必要ではなく、代わりに滑り止めのゴム製のキャップを取り付ける構成としてもよい。さらには、キャスタを採用する構成であっても、回転自在なものに限らず、ワンウェイクラッチやラチェット機構などを用いた進行方向にのみ回転するキャスタとすることもできる。この部分についてのこれらの変形は、利用者の状況に応じて適宜選択すべきことである。
【0032】
この図から明らかなように、伸縮用アーム210は回転用アーム220の上側に配置され、かつ3組の支持部材231、232、233によって回転可能に支持されている。
【0033】
図4には伸縮用アーム210と回転用アーム220の外形を示したが、これらのアームは、主に角型の外筒210a、220aと、角型の内筒210b、220bと、外筒の頭部210c、220cから構成される。これらは角型筒状に形成された中空部材である。そして、内筒210b、220bは、その外面において外筒210a、220aの中空部の内面に嵌まり込むように形成され、外筒210a、220aに対し回転不能な状態で長手方向に摺動可能に設けられる。
【0034】
図6は、外筒210a、220aを取り外したときのアーム内部の構造を示した図である。各アームの内部にはモータ61と、モータ61を外筒の頭部210c、220cの内側に固定する固定具62と、アームにかかる荷重をモータ61に伝えないためのスラスト軸受け63、及び外筒の頭部210c、220cと外筒210a、220aとに固定される固定具66、モータ61の回転を送りねじ64に伝達するカップリング67、ナット部65などを備える。
【0035】
モータ61は、平板状の固定具62で支持されており、その回転軸が固定具61を貫通して伸びている。この固定具62には、反モータ側の端面に外筒210a、220aが取り付けられるとともに、その周面に外筒の頭部210c、220cが嵌めあわされて固定される。したがって、モータ61は、外筒の頭部210c、220cを組み付けた状態で、その頭部210c、220cに収容された状態となる。
【0036】
また、送りねじ64は、固定具66によって外筒210a、220aの内面に固定されて外筒210a、220aの中空部内に設けられたスラスト軸受け63により、外筒210a、220aに対し回転可能に支持される。また、送りねじ64は、モータ61側の端部から突出して固定具66を貫通する軸部がモータ61の回転軸とカップリング67により連結される。これにより、モータ61の回転軸の回転が、カップリング67及び軸部を介して送りねじ64に伝達され、送りねじ63はモータ61によって回転駆動される。
【0037】
内筒210b、220bのモータ61側の端部には、その中空部の内面に、送りねじ64の雄ねじと螺合する雌ねじがきられたナット部65が形成されている。そして、内筒210b、220bは、このナット部において送りねじ64と螺合している。
【0038】
これらの構成によれば、モータ61が送りねじ64を回転駆動することにより、各アームの伸縮動作が行われる。すなわち、先に述べたように、内筒210b、220bは外筒210a、220aに対し回転不能に嵌まりあっているため、モータ61の回転駆動により送りねじ64と送りねじ64に螺合する内筒210b、220bのナット部65との間で相対回転が生じ、内筒210b、220bは、外筒210a、220aの内面に案内されつつ、送りねじ64の回転方向に応じてアームの長手方向に直線的に変位する。これにより、外筒210a、220aからの内筒210b、220bの突出量が変化し、この結果としてアームは伸縮する。そして、この構成の場合、送りねじ64、内筒210b、220bのナット部65、及び内筒210b、220bの回転を阻止する構成が、モータ61の回転軸の回転を直線運動に変換する変換機構を構成する。
【0039】
以上の説明で明らかなように、伸縮用アーム210と回転用アーム220は三点において支持部材231、232、233で回転可能に支持され、それぞれが伸縮する。この伸縮の前後における車椅子への取り付け状況を図7と図8で説明する。
【0040】
図7は、2つのアームが縮んだ状態を示しており、補助装置200を使用しないときはこの状態とされている。この状態では、補助装置200は縦フレーム107に添う位置、すなわち収容位置で、利用者あるいは介助者の邪魔にならないように折りたたまれている。
【0041】
図8は、回転用アーム220が伸びた状態を示しており、段差を乗り越えるときに伸縮用アーム210がこの位置、すなわち作動位置を取る。この図では、回転用アーム220が伸びているが、三点を支持部材231、232、233で回転可能に支持されているため、結果として伸縮用アーム210を回転させ、これを後方に押し広げるように作用する。なお、伸縮用アームはこの状態から内筒を伸ばしていく。このように本発明の補助装置は、段差昇降時以外には収容されているので小型であり、車椅子100の操作性を妨げることはない。
【0042】
次に本発明の補助装置を備えた車椅子を用いて、車椅子利用者がどのようにして段差を克服するのか、その一連の手順について以下説明する。図9は、車椅子と利用者と段差の位置関係を、段差Sを乗り越えるときの手順について模式的に示した図である。
【0043】
まず、車椅子利用者は、段差Sに差し掛かる(a)と、回転用アーム220を伸ばして収容位置にある伸縮用アーム210を後方にせり出す作動位置へもたらす(b)。次に利用者は体重を後方に移し、キャスタ211に体重を預ける(c)。利用者はこの体勢のまま前進し、前車輪111を段差Sの上に乗せる(d)。利用者はここで伸縮用アーム210を伸ばし始めるように手元スイッチを操作する。これにより車椅子は利用者ごと持ち上がる(e)。このとき利用者は、主車輪112を段差Sに接触させ、以後この接触状態を保つように車椅子100の位置を保持しておくと持ち上げの操作が安定して行われる。車椅子がある程度持ち上げられた状態では、利用者の僅かな主車輪112の回転操作で車椅子を前進させることができ、全体重を段差上の主車輪112に移すことができる(f)。最後に伸縮用アーム210を縮め(g)、回転用アーム220を縮めれば、段差乗り越えの一連の操作が完了する。
【0044】
同様に段差Sを降りるときは、ごく単純には後ろ向きになって以上の動作を反対に行えばよい。この手順を図10の模式図で説明する。
【0045】
まず利用者は、車椅子ごと後ろ向きに段差Sの縁に位置付けし、回転用アーム220を伸ばし(a)、ついで伸縮用アーム210を伸ばして、これを段差の下に届くまで操作する(b)。伸縮用アーム210を伸ばしきった状態で体重をキャスタ211に預け、この位置から伸縮用アーム210を順次縮めていく(c)。この状態では車椅子はゆっくり降下していくが、このときに同時に回転用アーム220を伸ばして主車輪112を後方に展開するように動かすことが安定に降下させる上で有効である。しかして主車輪112が段差下に届くと(d)、車椅子を後退させて前車輪を段差から降ろし(e)、以後は通常姿勢に戻ったら回転用アーム220を縮めて(f)、最後に伸縮用アーム210も縮めて収容状態に復帰する(g)。
【0046】
本発明装置の操作は以上のように行われるが、この段差昇降のときの2つのアームの駆動位置(伸縮位置)を図示すると、上るときは図11、降りるときは図12のように操作してやることが望ましい。このタイムチャートは図9と図10での説明に即したものであるので、更なる説明は重複となるので避ける。
【0047】
なお、実際に車椅子に装備するときには、利用者にこの2つのアームの動きに沿った手元スイッチ操作を行わせしめるわけであるが、これを利用者に委ねるのではなく、マイクロコンピュータ等を用いて2つのアームの動きを記憶させておき、自動的に行わせしめることが有用である。例えば、段差を上るときの段階を準備段階(図9、図11の(a)から(c)まで)、移動段階(図9、図11の(d)から(f)まで)、収容段階(図9、図11の(g)から(h)まで)にわけ、この間のどの段階にあるかのみを車椅子利用者がスイッチなどで選定し、選定以後の位置操作をマイクロコンピュータが記憶した図11、図12の操作パターンに沿って行うというものである。
この場合に、車椅子には補助装置200内部のモータ61に電力を供給するためのバッテリー、あるいはマイクロコンピュータといったものを装備する必要がある。この設置場所は車椅子の適宜の場所とできるが、簡便には車椅子背面に通常取り付けられている収容袋の中に入れておくことも可能である。但し手元スイッチは利用者が直接動かすものなので図1の横フレーム103に取り付けることになろう。
【0048】
なお、上記の説明では伸縮用アーム210の他端にキャスタを備える例で説明をしたが、これは単なる自由自在なキャスタとせず、進行方向にのみ回転可能な一方向キャスタや、キャスタとは別の滑り止めの部材のような後進を防止する機能を有する部材(後進防止部材)にすることも車椅子利用者にとっては有効と考えられる場合があるので利用者に応じて吟味すべきである。
【0049】
回転可能なキャスタの場合に、図9(e)の状態で車椅子利用者は、主車輪を段差に接触させこの状態を保持することが必要であったが、上腕に力がない車椅子利用者の場合にはこの状態維持が困難な場合も考えられる。
【0050】
このようなときには、むしろ後進防止部材としたほうが、伸縮用アームが斜め後方に押し出して、車椅子を持ち上げるときの分力がその部材で受け止められることによって前進力として働くので上腕に力がない車椅子利用者にとっては、この方が楽であるともいえるからである。
【0051】
また、上記の例において、伸縮用アームに伸縮動作を行わせる機構(伸縮機構)は、モータを動力源とする送りねじ機構によるものとしたが、これに限らず、油圧や空気圧といった流体圧で作動する流体圧シリンダを伸縮機構として採用してもよい。さらに、伸縮機構がモータを動力源とするものであっても、上記の例のように、モータが伸縮用アームの内部に設けられるものに限らず、モータが外付けされたものであってもよい。
【0052】
以上、本発明の車椅子と、車椅子用補助装置と、その使用方法について述べてきたが、本発明装置について、その根本機能を考えてみると、図7、図8から明らかなように伸縮用アーム210を収容位置(図7)と、車椅子を持ち上げる作動位置(図8)との2つのポジションをとるべくこの間で移動させて、伸縮用アームを作動させるものである。但し、この作動位置については、1つの位置に限らず、図11,12に示すように、車椅子の段差に対する乗り上げ状態に応じて随時変更されるものであってもよいし、あるいは、段差の高さに応じて調整できるものであってもよい。
【0053】
そして、このための機構として、上記の例では回転用アーム220を用いている。この回転用アーム220の機能は、伸縮用アームに収容位置と作動位置とを取らせるための回動機構ということができる。
【0054】
この回動機構の動力源としてはモータを利用するものあるいは流体圧を利用するものが考えられ、本発明はそのいずれでも実現可能である。また回動機構のメカニズムとしては、種々のものが採用しえるが、以下にいくつかの代案事例を紹介する。
【実施例2】
【0055】
図13は、補助装置200として異なる回動機構の実施例を示している。この例では、収容位置と作動位置との間の伸縮用アーム210の回動を、回転用アーム220の伸縮ではなく、回転用アーム220を伸縮用アーム210と連結するための支持部材233を伸縮用アーム210の長手方向に沿って変位させることにより実現する。したがって、伸縮用アーム220は一定の長さであり、支持部材233は伸縮用アーム210の内部をスライド移動する移動部材240に固定されている。
【0056】
図13(a)は、伸縮用アーム210が収容位置にある状態を示している。移動部材240は上方位置にあり、伸縮用アーム210は車椅子の縦フレーム107に沿った収容状態とされる。移動部材240は伸縮用アーム210の内部をスライド移動するが、この移動は先に述べた例と同様の、図13(c)に示すモータの回転を直線運動に変換する機構を採用することで実現できる。
【0057】
図13(b)に示すように、移動部材240が下方位置に移るとき、回転用アーム220と伸縮用アーム210で成す角度が直角となる位置で、伸縮用アーム210はフレーム107から最も離れた位置となり、作動用の位置につく。この状態から伸縮用アーム210を伸ばし始めることで、車椅子の持ち上げ状態に入っていく。
【0058】
図13(c)は、伸縮用アーム210内における移動部材240を移動させるための具体構成を示したものである。移動部材240は伸縮用アーム210の内部において長手方向にスライド可能であって回転不能に設けられ、内周面に雌ねじが切られた貫通孔を有するナット状の部材である。また伸縮用アーム210の内部には、その長手方向に沿って送りねじ241が設けられており、この送りねじ241にナット状の移動部材240が螺合している。そして、送りねじ241がモータ242によって回転駆動されることにより、移動部材240が送りねじ241に沿って変位する。なお、この回動機構におけるモータ242は、伸縮用アーム210を伸縮させるためのモータとは別に設置される。また、構成の複雑化を避けるため、伸縮用アーム210を伸縮させるための機構と上記の回動機構とは、幅方向において位置が重複しないように設けられるのが好ましい。
【実施例3】
【0059】
図14は、補助装置200として上記とはさらに異なる回動機構の実施例を示している。この例では同図(a)に示すように縦フレーム107に取り付けられた固定金具230に3つの支持金具410、411、412が設けられており、それぞれの支持金具410、411、412には回転軸401、402、403を有する。これらの回転軸401、402、403には同図(b)に示すようにギアG1、G2、G3が互いにかみ合っている。
【0060】
また、第1の回転軸401にはモータ400が取り付けられてギアG1を回転させる。第2の回転軸402のギアG2はギアG1により駆動され、この力を最終段のギアG3に伝達する。第3の回転軸403には伸縮用アーム210が固定されており、伝達されたギアの回転位置により収容位置と作動位置を取ることができる。なお、図示の例ではギアがむき出しになっているがこれは適宜ギアボックに収容されることは言うまでもない。
【実施例4】
【0061】
図15は、図4の伸縮用アーム210と回転用アーム220の上下関係を逆(回転用アーム220を伸縮用アーム210の上側に位置づけたにしたものである。この場合には、回転用アーム220が伸びた状態(同図(a))で収容位置をとり、縮んだ状態(同図(b))で作動位置をとる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、補助装置を予め備えた車椅子とすることも、後から設置することも可能なので多くの車椅子利用者に利用していただけることが期待できる。
【符号の説明】
【0063】
100:車椅子
101,102,103:横フレーム
104,105,106,107:縦フレーム
110:フットレスト
111:小車輪
112:主車輪
113:押手
114:座面
115:背面
116:折りたたみ可能な固定具
200:補助装置
210:伸縮用アーム
211:キャスタ
220:回転用アーム
230:固定金具
231、232、233:支持部材
234:U字部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子取付用金具と、一端を該車椅子取付用金具に回転可能に支持されるとともにアーム長が伸縮する伸縮用アームと、前記取付用金具に取り付けられ前記伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させる回動機構とを備えることを特徴とする車椅子用補助装置。
【請求項2】
請求項1記載の車椅子用補助装置において、回動機構は、前記伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させるための動力源としてのモータを含むことを特徴とする車椅子用補助装置。
【請求項3】
請求項1記載の車椅子用補助装置において、
前記の伸縮用アームは筒材で形成され、
筒材の内部には、アームの長手方向に回転軸を有するモータと、該モータの回転を直線運動に変換する変換機構とが内装され、変換機構の直線運動により伸縮用アームのアーム長を伸縮させることを特徴とする車椅子用補助装置。
【請求項4】
複数の縦フレーム及び横フレームで構成される側部フレームと、この側部フレームの前側部分に設けられた小車輪と、前記側部フレームの後方部分に設けられた主車輪とを備えた車椅子において、
一端を前記縦フレームに回転可能に支持されるとともにアーム長が伸縮する伸縮用アームと、前記取付用金具に取り付けられ前記伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させる回動機構とを備えたことを特徴とする車椅子。
【請求項5】
請求項4記載の車椅子において、
前記回動機構は、一端を前記縦フレームに回転可能に支持され、他端を前記伸縮用アームに回転可能に支持された回転用アームであって、アーム長の伸縮により前記伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させることを特徴とする車椅子。
【請求項1】
車椅子取付用金具と、一端を該車椅子取付用金具に回転可能に支持されるとともにアーム長が伸縮する伸縮用アームと、前記取付用金具に取り付けられ前記伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させる回動機構とを備えることを特徴とする車椅子用補助装置。
【請求項2】
請求項1記載の車椅子用補助装置において、回動機構は、前記伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させるための動力源としてのモータを含むことを特徴とする車椅子用補助装置。
【請求項3】
請求項1記載の車椅子用補助装置において、
前記の伸縮用アームは筒材で形成され、
筒材の内部には、アームの長手方向に回転軸を有するモータと、該モータの回転を直線運動に変換する変換機構とが内装され、変換機構の直線運動により伸縮用アームのアーム長を伸縮させることを特徴とする車椅子用補助装置。
【請求項4】
複数の縦フレーム及び横フレームで構成される側部フレームと、この側部フレームの前側部分に設けられた小車輪と、前記側部フレームの後方部分に設けられた主車輪とを備えた車椅子において、
一端を前記縦フレームに回転可能に支持されるとともにアーム長が伸縮する伸縮用アームと、前記取付用金具に取り付けられ前記伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させる回動機構とを備えたことを特徴とする車椅子。
【請求項5】
請求項4記載の車椅子において、
前記回動機構は、一端を前記縦フレームに回転可能に支持され、他端を前記伸縮用アームに回転可能に支持された回転用アームであって、アーム長の伸縮により前記伸縮用アームを収容位置と作動位置との2位置間で回動させることを特徴とする車椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−41670(P2011−41670A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191653(P2009−191653)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(504203572)国立大学法人茨城大学 (99)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(504203572)国立大学法人茨城大学 (99)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)
【Fターム(参考)】
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