説明

車窓用日射遮蔽体及び車両用窓

【課題】
可視光透過率を低下させ、色調も要求の高い濃青、灰色、ブロンズ(赤茶色)、濃緑色として、かつ、日射遮蔽性の目安となる日射透過率/可視光透過率をよりも小さくした、生産コストの安価な車窓用日射遮蔽体及び車両用窓を提供する。
【解決手段】
車両の窓に使用される熱線遮蔽機能を有する微粒子を含む車窓用日射遮蔽体であって、前記熱線遮蔽機能を有する微粒子が、6ホウ化ランタン、窒化チタン、酸化タングステンから選択される少なくとも1種以上の微粒子と、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム、一般式MWO(0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0)で示される複合タングステン酸化物から選択される少なくとも1種以上の微粒子とを混合してなり、且つ、前記日射遮蔽体の可視光透過率が5%以上40%以下の範囲にあり、前記日射遮蔽体の日射透過率と可視光透過率が下記(式1)を満たし、更に前記日射遮蔽体の透過色が下記(式2)を満たすことを特徴とする車窓用日射遮蔽体を提供する。
(式1)日射透過率/可視光透過率<1
(式2)−14<a<2、−8<b<2

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、電車、重機などのサンルーフ、パノラマルーフ、バックウィンドウ、リアサイドウィンドウ、フロントウィンドウ用として用いられる車窓用日射遮蔽体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用などの安全ガラスとして、2枚の板ガラス間に日射遮蔽膜を挟み込んで合わせガラスを構成し、当該合わせガラスにより入射する太陽エネルギーを遮断して冷房負荷や人の熱暑感の軽減を目的としたものが提案されている。
例えば、特許文献1〜3には、透明樹脂フィルムに金属、金属酸化物を蒸着してなる熱線反射フィルムを、ガラス、アクリル板、ポリカーボネート板等の透明成形体に接着した熱線遮蔽板が提案されている。
しかし、この熱線反射フィルム自体が非常に高価でかつ接着工程等の煩雑な工程を要するため高コストとなる。また透明成形体と反射フィルムの接着性が良くないので、経時変化によりフィルムの剥離が生じるといった欠点を有している。
【0003】
また、透明成形体表面に、金属若しくは金属酸化物を直接蒸着してなる熱線遮蔽板も数多く提案されているが、この熱線遮蔽板の製造に際しては高真空で精度の高い雰囲気制御を要する装置が必要となるため、量産性が悪く、汎用性に乏しいという問題を有している。
【0004】
その他にも、例えば特許文献4、5には、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性透明樹脂にフタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物に代表される有機近赤外線吸収剤を練り込んだ熱線遮蔽板およびフィルムが提案されている。
しかし、十分に熱線を遮蔽するためには多量の近赤外線吸収剤を配合しなければならず、多量に配合すると可視光線透過能が低下してしまうという課題が残る。また、有機化合物を使用しているため、直射日光に常時曝される建築物や自動車の窓材等への適用は耐侯性に難があり、必ずしも適当であるとはいえない。
【0005】
また、合わせガラスとして、特許文献6には、一対の板ガラス間に0.1μm以下の微細な粒径の酸化錫あるいは酸化インジウムから成る熱線遮蔽性金属酸化物を含有した軟質樹脂層を介在させた合わせガラスが開示されている。
【0006】
また、特許文献7には、少なくとも2枚の板ガラスの間に、Sn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Moの金属、この酸化物、窒化物、硫化物あるいはSbやFのドープ物またはこれらの複合物を分散した中間層を設けて構成した合わせガラスが開示されている。
【0007】
また、特許文献8にはTiO、ZrO、SnO、Inから成る微粒子と有機ケイ素あるいは有機ケイ素化合物から成るガラス成分とを透明板状部材の間に介在させた自動車用窓ガラスが開示されている。
【0008】
さらに、特許文献9には、少なくとも2枚の透明ガラス板状体の間に3層から成る中間層を設け、中間層のうち第2層の中間層にはSn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Moの金属、酸化物、窒化物、硫化物あるいはSbやFのドープ物またはこれらの複合物を分散し、また第1層と第3層の中間層を樹脂層とした合わせガラスが提案されている。
【0009】
また本出願人は、日射遮蔽機能を有する中間層を2枚の板ガラス間に介在させて成り、この中間層が、6ホウ化物微粒子単独若しくは6ホウ化物微粒子とITO微粒子および/またはATO微粒子とビニル系樹脂を含有する中間膜により構成された日射遮蔽用合わせガラス、あるいは、上記中間層が、少なくとも一方の板ガラスの内側に位置する面に形成された上記微粒子が含まれる日射遮蔽膜と、上記2枚の板ガラス間に介在されるビニル系樹脂を含有する中間膜とで構成された日射遮蔽用合わせガラスを特許文献10として提案している。
また、特許文献10には、6ホウ化物微粒子単独若しくは6ホウ化物微粒子とITO微粒子および/またはATO微粒子が適用された日射遮蔽用合わせガラスの光学特性は、可視光領域に透過率の極大を持つと共に近赤外領域に強い吸収を発現して透過率の極小を持つことから、特許文献4〜7に記載された従来の合わせガラスに比べて可視光透過率70%以上で日射透過率が50%台まで改善されていることが開示されている。
【0010】
これらの日射遮蔽性の窓は、なるべく明るく、かつ、日射遮蔽性を高めようとするものであるが、自動車のサンルーフ、パノラマルーフ、バックウィンドウ、リアサイドウィンドウ、フロントウィンドウ、重機のサンルーフなどでは、明るさよりもむしろ、如何に経済的に太陽光線の熱を遮るかに重点が置かれた設計が必要となっている。
このような車両用窓の部位で実用的な合わせガラスとするには、可視光透過率を低下させ、色調を濃青、灰色、ブロンズ(赤茶色)、濃緑色としたものが提案されているが、上記条件を満たそうとすると、日射遮蔽性の目安となる日射透過率/可視光透過率を1よりも小さくすることができず、日射遮蔽性に劣るものしかなく、未だ改善の余地を有していた。
【特許文献1】特開昭61−277437号公報
【特許文献2】特開平10−146919号公報
【特許文献3】特開2001−179887号公報
【特許文献4】特開平6−256541号公報
【特許文献5】特開平6−264050号公報
【特許文献6】特開平8−217500号公報
【特許文献7】特開平8−259279号公報
【特許文献8】特開平4−160041号公報
【特許文献9】特開平10−297945号公報
【特許文献10】特開2001−89202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の様な問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、可視光透過率を低下させ、色調も要求の高い濃青、灰色、ブロンズ(赤茶色)、濃緑色として、かつ、日射遮蔽性の目安となる日射透過率/可視光透過率をよりも小さくした、生産コストの安価な車窓用日射遮蔽体及び車両用窓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明の第1の発明は、車両の窓に使用される熱線遮蔽機能を有する微粒子を含む車窓用日射遮蔽体であって、前記熱線遮蔽機能を有する微粒子が、6ホウ化ランタン、窒化チタン、酸化タングステンから選択される少なくとも1種以上の微粒子と、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム、一般式MWO(0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0)で示される複合タングステン酸化物から選択される少なくとも1種以上の微粒子とを混合してなり、且つ、前記日射遮蔽体の可視光透過率が5%以上40%以下の範囲にあり、前記日射遮蔽体の日射透過率と可視光透過率が下記(式1)を満たし、更に前記日射遮蔽体の透過色が下記(式2)を満たすことを特徴とする車窓用日射遮蔽体である。
(式1)日射透過率/可視光透過率<1
(式2)−14<a<2、−8<b<2
【0013】
本発明の第2の発明は、車両の窓に使用される熱線遮蔽機能を有する微粒子を含む車窓用日射遮蔽体であって、前記熱線遮蔽機能を有する微粒子が、6ホウ化ランタン、窒化チタン、酸化タングステンから選択される少なくとも1種以上の微粒子と、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム、一般式MWO(0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0)で示される複合タングステン酸化物から選択される少なくとも1種以上の微粒子と、酸化鉄微粒子とを混合してなり、且つ、前記日射遮蔽体の可視光透過率が5%以上40%以下の範囲であり、前記日射遮蔽体の日射透過率と可視光透過率が下記(式3)を満たし、更に前記日射遮蔽体の透過色が下記(式4)を満たすことを特徴とする車窓用日射遮蔽体である。
(式3)日射透過率/可視光透過率<1
(式4)−2<a<14、2<b<12
【0014】
本発明の第3の発明は、酸化タングステンがWO、或いは、W1849であることを特徴とする第1、2の発明記載の車窓用日射遮蔽体である。
【0015】
本発明の第4の発明は、酸化タングステンがWO、或いは、W1849であることを特徴とする第1、2の発明記載の車窓用日射遮蔽体である。
【0016】
本発明の第5の発明は、前記熱線遮蔽機能を有する微粒子の直径が、300nm以下であることを特徴とする第1〜4の発明記載の車窓用日射遮蔽体である。
【0017】
本発明の第6の発明は、前記熱線遮蔽機能を有する微粒子が、シラン化合物、チタン化合物、ジルコニア化合物から選択される少なくとも1種によって表面処理されていることを特徴とする第1〜5の発明記載の車窓用日射遮蔽体である。
【0018】
本発明の第7の発明は、更に、酸化亜鉛微粒子、酸化セリウム微粒子、酸化チタン微粒子から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする第1〜6の発明記載の車窓用日射遮蔽体である。
【0019】
本発明の第8の発明は、前記熱線遮蔽機能を有する微粒子が、ポリカーボネート樹脂成形体に含まれていることを特徴とする第1〜7の発明記載の車窓用日射遮蔽体である。
【0020】
本発明の第9の発明は、第8の発明記載のポリカーボネート樹脂成形体の少なくとも一表面に、耐擦傷性ハードコート層が形成されていることを特徴とする車窓用日射遮蔽体である。
【0021】
本発明の第10の発明は、第8又は9の発明記載の日射遮蔽体を他の樹脂成形体に積層することにより得られることを特徴とする車窓用日射遮蔽体である。
【0022】
本発明の第11の発明は、第1〜7の発明記載の熱線遮蔽機能を有する微粒子がポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂から選択される一種に含まれていることを特徴とする車窓用日射遮蔽体である。
【0023】
本発明の第12の発明は、第11の発明記載の日射遮蔽体を2枚の合わせ板間に中間膜として介在させてなる合わせ構造体であって、該合わせ板が無機板ガラス、ポリカーボネート樹脂成形体、ポリエチレンテレフタレート樹脂成形体から選択される少なくとも一種であることを特徴とする車窓用日射遮蔽体である。
【0024】
本発明の第13の発明は、第12の発明記載の合わせ板の少なくとも一方が、第8〜10の発明の日射遮蔽体であることを特徴とする車窓用日射遮蔽体である。
【0025】
本発明の第14の発明は、前記車窓用日射遮蔽体の形状が、厚さ2.5mm〜30mm、かつ最大投影面積が400〜60000cmであることを特徴とする第1〜13の発明記載の車窓用日射遮蔽体である。
【0026】
本発明の第15の発明は、第1〜14の発明記載の車窓用日射遮蔽体が使用されていることを特徴とする車両用窓である。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る車窓用日射遮蔽体及び車両用窓によれば、従来得られていなかった、可視光透過率を低下させ、色調も要求の高い濃青、灰色、ブロンズ(赤茶色)、濃緑色として、かつ、日射遮蔽性の目安となる日射透過率/可視光透過率を1より小さくした、生産コストの安価な車窓用日射遮蔽体及び車両用窓を提供することが可能となり、自動車のサンルーフ、パノラマルーフ、バックウィンドウ、リアサイドウィンドウ、フロントウィンドウ、重機のサンルーフなどに適用でき、その用途は広く、工業的に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.熱線遮蔽機能を有する微粒子
1)6ホウ化ランタン、窒化チタン、酸化タングステンから選択される少なくとも1種以上の微粒子
6ホウ化ランタン、窒化チタン、酸化タングステンからなる群は、可視光から近赤外線に吸収を持ち、特に780nmから1200nmの近赤外線を選択的に吸収する光学特性を有する。また、単位面積あたりの添加量に対する可視光線、近赤外線の吸収力が非常に強く、少量添加で効果的に基材に熱線遮蔽機能を付与することが出来る。ただし、1200nm以上赤外線吸収能力が乏しく、太陽光に含まれる長波長領域のエネルギーを遮蔽することが出来ない欠点があった。
【0029】
a)6ホウ化ランタン
本発明に使用される6ホウ化ランタンとしては、その表面が酸化していないことが好ましいが、通常は僅かに酸化していることが多く、また微粒子の分散工程で表面の酸化が起こることはある程度避けられない。しかし、その場合でも熱線遮蔽効果を発現する有効性に変わりはない。
また、6ホウ化ランタン微粒子は、結晶としての完全性が高いほど大きい熱線遮蔽効果が得られるが、結晶性が低くX線回折でブロードな回折ピークを生じるようなものであっても、微粒子内部の基本的な結合が各金属とホウ素の結合から成り立っているものであるならば熱線遮蔽効果を発現する。
6ホウ化ランタンは灰黒色、茶黒色、緑黒色などに着色した粉末であるが、粒径を可視光波長に比べて十分小さくして熱線遮蔽透明樹脂基材に分散した状態においては、熱線遮蔽透明樹脂基材に可視光透過性が生じる。しかし赤外光遮蔽能は十分強く保持できる。この理由は詳細には理解されていないが、これら微粒子中の自由電子の量が多く、微粒子内部及び表面の自由電子によるバンド間間接遷移の吸収エネルギーが丁度可視〜近赤外の付近にあるために、この波長領域の熱線が選択的に反射・吸収されると考えられる。
6ホウランタンの単位重量あたりの熱線遮蔽能力は非常に高く、ITOやATOと比較して、40分の1以下の使用量でその効果を発揮する。よって、全微粒子の使用量を大幅に削減できるので、熱線遮蔽透明樹脂基材に熱線遮蔽粒子を多量に配合すると、基材である透明樹脂の物性、殊に耐衝撃強度や靭性が低下するという強度面からの問題が起こらない。
6ホウランタンは使用量を増すと可視光領域に吸収があるために、その添加量を制御することで可視光領域の吸収を自由に制御でき、明るさ調製や、プライバシー保護等への応用もできる。
また、6ホウ化ランタンの代わりに他の6ホウ化物を使用することも可能であり、6ホウ化セリウム(CeB)、6ホウ化プラセオジム(PrB)、6ホウ化ネオジム(NdB)、6ホウ化ガドリニウム(GdB)、6ホウ化テルビウム(TbB)、6ホウ化ディスプロシウム(DyB)、6ホウ化ホルミウム(HoB)、6ホウ化イットリウム(YB)、6ホウ化サマリウム(SmB)、6ホウ化ユーロピウム(EuB)、6ホウ化エルビウム(ErB)、6ホウ化ツリウム(TmB)、6ホウ化イッテルビウム(YbB)、6ホウ化ルテチウム(LuB)、6ホウ化ランタンセリウム((La,Ce)B)、6ホウ化ストロンチウム(SrB)、6ホウ化カルシウム(CaB)などが、その代表的なものとして挙げられる。
【0030】
b)窒化チタン
本発明に使用されるTiNとしては、その表面が酸化していないことが好ましいが、通常は僅かに酸化していることが多く、また微粒子の分散工程で表面の酸化が起こることはある程度避けられない。しかしその場合でも熱線遮蔽効果を発現する有効性に変わりはない。またこれらの窒化物微粒子は、結晶としての完全性が高いほど大きい熱線遮蔽効果が得られるが、結晶性が低くX線回折でブロードな回折ピークを生じるようなものであっても、微粒子内部の基本的な結合がチタンと窒素の結合から成り立っているものであるならば熱線遮蔽効果を発現する。
TiNは茶黒色、青黒色などに着色した粉末であるが、粒径が可視光波長に比べて十分小さくポリカーボネート樹脂中に分散した状態においては、膜に可視光透過性が生じる。しかし赤外光遮蔽能は十分強く保持できる。この理由は詳細には理解されていないが、これら微粒子中の自由電子の量が多く、微粒子内部及び表面の自由電子によるバンド間間接遷移の吸収エネルギーが丁度可視〜近赤外の付近にあるために、この波長領域の熱線が選択的に反射・吸収されると考えられる。
また、TiNの代わりに他の窒化物を使用することも可能であり、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化バナジウム(VN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タンタル(TaN)などの微粒子を、その代表的なものとして挙げられる。
【0031】
c)酸化タングステン
本発明に使用される酸化タングステンは、一般式WO、或いはW1849の一般式で示されるものであることが好ましい。特に1000nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調はブルー系の色調となるものが多い。
【0032】
2)アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム、一般式MWO(0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0)で示される複合タングステン酸化物から選択される少なくとも1種以上の微粒子
1000nm以上の中赤外線に選択的に吸収する光学特性を有する。ただし、単位面積あたりの添加量に対する赤外線の吸収力が弱く、基材に熱線遮蔽特性を付与するためには多量の添加が必要となり、基材自体の機械特性の低下や材料コストが高くなるなどの問題があった。
【0033】
a)アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム
本発明に使用されるアンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウムは、金属酸化物特有の光触媒活性を抑制するために、アルコキシル基と有機官能基を持つシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤から選択される少なくとも一種の表面処理剤で表面処理を施されることが好ましい。これらの表面処理剤としては、アンチモンドープ酸化錫の表面と親和性をもち、結合を形成するアルコキシル基と透明熱可塑性樹脂と親和性をもつ有機官能基を有するものが使用される。前記アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシル基などを挙げることが出来るが、加水分解を受け、アンチモンドープ酸化錫の表面と結合を形成しうるものであれば特に限定されない。前記有機官能基としては、アルキル基、ビニル基、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−アニリノプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、γ−メタクリロキシ基などを挙げることが出来るが、透明熱可塑性樹脂と親和性を有するものであれば特に限定されない。
【0034】
b)複合タングステン酸化物
本発明に使用される複合タングステン酸化物は、一般式MWO(0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0)で示され、且つ六方晶の結晶構造を持つ。近赤外線領域、特に1000nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調はブル−系の色調となるものが多い。
上記一般式MWO(0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0)で示され、且つ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子としては、例えばM元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuのうちの1種類以上を含むような複合タングステン酸化物微粒子が挙げられる。
添加元素Mの添加量は、0.1以上0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.33付近が好ましい。これは六方晶の結晶構造から理論的に算出される値が0.33であり、この前後の添加量で好ましい光学特性が得られるからである。また、Zの範囲については、2.2≦z≦3.0が好ましい。これは、zの値が2.45以上であれば、当該赤外線遮蔽材料中に目的外であるWOの結晶相が現れるのを完全に回避することが出来ると共に、材料の化学的安定性を得ることが出来る。一方、Xの値が2.999以下であれば、十分な量の自由電子が生成され効率よい赤外線遮蔽材料となるが、2.95以下であれば赤外線遮蔽材料として更に好ましい。また、z≦3.0においても、上述した元素Mの添加による自由電子の供給があるためである。尤も、光学特性の観点から、より好ましくは、2.2≦z≦2.99、さらに好ましくは、2.45≦z≦2.99である。
ここで、当該複合タングステン酸化物材料の典型的な例としては、Cs0.33WO、Rb0.33WO、K0.33WO、Ba0.33WOなどを挙げることができるが、Y、Zが上記の範囲に収まるものであれば、有用な熱線遮蔽特性を得ることができる。
【0035】
3)酸化鉄微粒子
をプラス側に持っていける。ブロンズカラーにできるという特徴を有している。
そこで、本発明者は、上記1)と2)の2つの群の微粒子を混合することにより、2つの群に属する材料が持つ欠点をお互いに補い合うことで、得られる日射遮蔽体の可視光透過率が5%以上40%以下の範囲にあり、かつ下記式1を満たし、さらに、該日射遮蔽体の透過色が式2を満たすことができるようになる。
(式1)日射透過率/可視光透過率<1
(式2)−14<a<2、−8<b<2
また、上記1)と2)と3)の3つの群の微粒子を混合することにより、3つの群に属する材料が持つ欠点をお互いに補い合うことで、特に、酸化鉄微粒子を加えることで、aをプラス側に持っていき、ブロンズカラー側に色調を調整できるという特徴を有している。
これにより、比較的低透過率の自動車用パノラマルーフ、バックウィンドウ、リアサイドウィンドウに使用できるのである。
【0036】
前記日射遮蔽体の可視光透過率が5%以上40%以下であることを要するのは、5%未満では、窓としての透過率が低すぎて外界の視認性が著しく落ちるため好ましくなく、また、40%を超えると、可視光を含めた日射熱の室内側への流入が大きくなって、特に真夏の日射を遮るには不十分となり、また室内温度を下げるための冷房負荷が大きくなるため好ましくないからである。
【0037】
前記第1の発明において、前記日射遮蔽体の透過色が、上記可視光透過率の範囲で、−14<a<2、−8<b<2の範囲に属することが好ましいのは、a≦−14では緑成分が強すぎ、2≦aでは赤成分が強すぎ、更に、b≦−8では青味が強すぎ、また2≦bでは黄色味が強すぎるために、これらの範囲以外では、一般使用者に好まれるニュートラルからダークブルー・ダークグリーンといった色合いから逸脱するため、好ましくないからである。
【0038】
前記第2の発明において、前記日射遮蔽体の透過色が、−2<a<14、2<b<12の範囲に属することが好ましいのは、a≦−2では緑成分が強すぎ、また、14≦aでは赤成分が強すぎ更に、b≦2では青成分が強すぎ、また、12≦bでは黄色成分が強すぎて、これらの範囲外では、一般使用者に好まれるブロンズ色の色合いから逸脱するため好ましくないからである。
【0039】
前記熱線遮蔽機能を有する微粒子の直径は、300nm以下であることが望ましい。300nmを超えると、可視光領域の光の散乱が発生し、日射遮蔽体が曇ってしまい、好ましくない。
【0040】
また、前記熱線遮蔽機能を有する微粒子は、シラン化合物、チタン化合物、ジルコニア化合物、アルミニウム化合物から選択される少なくとも1種によって表面処理されていることが望ましい。上記材料で微粒子表面を被覆することにより耐候性が向上する。また、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウムは、金属酸化物特有の光触媒活性をもち、それを抑制し、ポリカーボネート樹脂の劣化を防止する観点からも好ましい。
【0041】
本発明の熱線遮蔽微粒子の1mあたりの添加量は、下記式5を満たしていることが望ましい。式5において、各熱線遮蔽微粒子に掛けられている係数は、各熱線遮蔽微粒子の単位重量あたりの可視光線吸収能力により決定されている。たとえば、熱線遮蔽機能を有するポリカーボネートシートの可視光透過率を同じ値にする場合、酸化チタンの1mあたりの必要添加量は、鈴ドープ酸化インジウムの1/160であることが実験的に分かっている。
窒化チタンの添加量(g/m)×160+6ホウ化ランタンの添加量(g/m)×40+酸化タングステン(g/m)×40+複合タングステン酸化物(g/m)×4+アンチモンドープ酸化錫(g/m)+錫ドープ酸化インジウム(g/m
の値が5以下である場合、可視光線吸収能力が不十分となり、プライバシー保護を目的とした自動車用パノラマルーフ、バックウィンドウ、リアサイドウィンドウとして不適切である。また、十分な熱線遮蔽能も得られない。逆に50以上である場合、十分な熱線遮蔽能は得られるが、可視光線の吸収が強くなりすぎて車外からの光をほとんど取り入れることが出来なくなってしまう。
(式5)
5(g/m)<窒化チタンの添加量(g/m)×160+6ホウ化ランタンの添加量(g/m)×40+酸化タングステン(g/m)×40+複合タングステン酸化物(g/m)×4+アンチモンドープ酸化錫(g/m)+錫ドープ酸化インジウム(g/m)<50(g/m
また、前記微粒子の1mあたりの全添加量が20g/m以下であることが望ましい。1mあたりの全添加量が20g/mより多くなると、ポリカーボネートシートの厚さにも依存するが、ポリカーボネート樹脂自体の機械特性(耐衝撃性、表面硬度、曲げ強度)を損なう恐れがある。また、材料コストも高くなってしまう。
【0042】
本発明の熱線遮蔽機能を有する微粒子を含む車窓用日射遮蔽体の光学特性は、日射透過率/可視光透過率<1である。つまり、可視光透過率よりも日射透過率の値が小さいことが望ましい。日射透過率/可視光透過率>1である場合、外部から車内に入ってくる太陽エネルギー十分に軽減するためには、車内が暗くなりすぎてしまう。ポリカーボネートシートに着色顔料や着色染料を多量に添加し、可視光透過率を極端に低くすれば日射透過率も低くなるが、日射透過率/可視光透過率<1を満たすことは従来困難であった。
【0043】
また、本発明に使用される熱線遮蔽微粒子は、粒径が小さければ小さいほど好ましく、赤外線吸収能力、使用する樹脂の透明性を考慮すると、その平均粒径は300nm以下、より好ましくは100nm以下である。ここで、平均粒径は、透過電子顕微鏡で熱線遮蔽微粒子の粉体を観察し、この粉体の粒径の平均値である。
【0044】
本発明の熱線遮蔽機能を有する微粒子とともに、更に、紫外線吸収剤として、酸化亜鉛微粒子、酸化セリウム微粒子、酸化チタン微粒子から選択される少なくとも1種を含有することも可能である。使用する樹脂の透明性を考慮すると、その平均粒径は300nm以下、より好ましくは100nm以下であることが好ましい。ここで、平均粒径は、透過電子顕微鏡で熱線遮蔽微粒子の粉体を観察し、この粉体の粒径の平均値である。
また、紫外線吸収剤の光触媒活性を抑制し、透明熱可塑性樹脂中への分散性を向上するために、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤から選択される少なくとも一種の表面処理剤で表面処理を施されていることが好ましい。これらの表面処理剤としては、紫外線吸収剤の表面と親和性をもち、結合を形成するアルコキシル基と透明熱可塑性樹脂と親和性をもつ有機官能基を有するものが使用される。前記アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシル基などを挙げることが出来るが、加水分解を受け、無機紫外線吸収剤の表面と結合を形成しうるものであれば特に限定されない。前記有機官能基としては、アルキル基、ビニル基、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−アニリノプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、γ−メタクリロキシ基などを挙げることが出来るが、透明熱可塑性樹脂と親和性を有するものであれば特に必ずしもこれらに限定されない。
また、無機紫外線吸収剤の熱可塑性樹脂中への分散性を向上させる目的で、有機高分子分散剤を上記カップリング剤と併用して使用することも可能である。
【0045】
2.車窓用日射遮蔽体の構造
本発明の車窓用日射遮蔽体の構造の1形態として、第1、2の発明の、熱線遮蔽機能を有する微粒子が、ポリカーボネート樹脂成形体に含まれている車窓用日射遮蔽体がある。
【0046】
上記熱線遮蔽機能を有する微粒子を含むポリカーボネートシートの少なくとも一つのシート表面に、耐擦傷性ハードコート層を形成しても良い。例えば、上記シートに、シリケート系、アクリル系などの耐擦傷性ハードコート層を形成することができる。このハードコート層の形成により、成形体の耐擦傷性を向上させることが可能であり、当該熱線遮蔽機能を有する微粒子を含むポリカーボネートシートを自動車用パノラマルーフ、バックウィンドウ、リアサイドウィンドウに使用することが出来る。
【0047】
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネートが好ましい。芳香族ポリカーボネートとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンに代表される二価のフェノール系化合物の一種以上と、ホスゲンまたはジフェニルカーボネート等で代表されるカーボネート前駆体とから、界面重合、溶融重合または固相重合等の公知の方法によって得られる重合体が挙げられる。
【0048】
次に、熱線遮蔽微粒子のポリカーボネート樹脂への分散方法は、微粒子が均一に樹脂に分散する方法であれば任意に選択できる。例としては、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法を用い、上記微粒子を任意の溶剤に分散した熱線遮蔽微粒子分散液を調製し、その分散液とポリカーボネート樹脂の粉粒体またはペレット、および必要に応じて他の添加剤をリボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機、およびバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、一軸押出機、二軸押出機等の混練機を使用して溶剤を除去しながら均一に溶融混合する方法を用いて、ポリカーボネート樹脂に微粒子を均一に分散した混合物を調製することができる。更に、熱線遮蔽微粒子分散液の溶剤を公知の方法で除去し、得られた粉末とポリカーボネート樹脂の粉粒体またはペレット、および必要に応じて他の添加剤を均一に溶融混合する方法を用いてポリカーボネート樹脂に微粒子を均一に分散した混合物を調整することもできる。そのほか、分散処理をしていない熱線遮蔽微粒子の粉末と耐熱性分散剤をポリカーボネート樹脂に直接添加し、均一に溶融混合する方法を用いることもでき、ポリカーボネート樹脂に熱線遮蔽微粒子が均一に分散されていればよく、これ等の方法に限定されない。
【0049】
当該熱線遮蔽機能を有する微粒子を含むポリカーボネートシートの成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形または回転成形等の任意の方法を挙げることができる。特に、射出成形により成形品を得る方法が好適に採用される。射出成形品は、自動車のパノラマルーフ、バックウィンドウ、リアサイドウィンドウに好適に使用される。
【0050】
上記熱線遮蔽機能を有する微粒子を含むポリカーボネートシートは、それ自体のみを、自動車のパノラマルーフ、バックウィンドウ、リアサイドウィンドウに使用することができるほか、無機ガラス、樹脂ガラス、樹脂フィルムなどの他の透明成形体に任意の方法で積層し、一体化した熱線遮蔽透明積層体として、構造材に使用することもできる。例えば、予めシート状に成形した熱線遮蔽機能を有する微粒子を含むポリカーボネートシートを無機ガラスに熱ラミネート法により積層一体化することで、熱線遮蔽機能、飛散防止機能を有する熱線遮蔽能を有する透明積層体を得ることができる。
【0051】
また、熱ラミネート法、共押出法、プレス成形法、射出成形法等により、熱線遮蔽機能を有する微粒子を含むポリカーボネートシートの成形と同時に他の透明成形体に積層一体化することで、熱線遮蔽能を有する透明積層体を得ることも可能である。上記熱線遮蔽能を有する透明積層体は、相互の成形体の持つ利点を有効に発揮させつつ、相互の欠点を補完することで、より有用な自動車窓材として使用することができる。
【0052】
更に、本発明に係る熱線遮蔽機能を有する微粒子を含むポリカーボネートシートは、一般的な添加剤を配合することも可能である。例えば、必要に応じて任意の色調を与えるため、アゾ系染料、シアニン系染料、キノリン系、ペリレン系染料、カーボンブラック等、一般的に熱可塑性樹脂の着色に利用されている染料、顔料の他、ヒンダードフェノール系、リン系等の安定剤、離型剤、ヒドロキシベンゾフェノン系、サリチル酸系、HALS系、トリアゾール系、トリアジン系等の紫外線吸収剤、カップリング剤、界面活性剤、帯電防止剤等を、これ等の有効発現量配合したものを添加剤として使用することができる。
【0053】
また、本発明の車窓用日射遮蔽体の構造の1形態として、第1、2の発明の、熱線遮蔽機能を有する微粒子が、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂から選択される一種に含まれて、中間膜として用いられることも好ましい。
日射遮蔽体を2枚の合わせ板間に上記車窓用日射遮蔽体を中間膜として介在させてなる合わせ構造体であって、該合わせ板が無機板ガラス、ポリカーボネート樹脂成形体、ポリエチレンテレフタレート樹脂成形体から選択される少なくとも一種である車窓用日射遮蔽体が得られる。
上記合わせ板の少なくとも一方が、前記の熱線遮蔽機能を有する微粒子が、ポリカーボネート樹脂成形体に含まれている車窓用日射遮蔽体である車窓用日射遮蔽体とすることもできる。
【0054】
上記した前記車窓用日射遮蔽体の形状は、厚さ2.5mm〜30mm、かつ最大投影面積が400〜60000cmであることが好ましい。
現状の射出成形技術で製造可能な最大の大きさが60000cmであり、それより大きくなると製造が困難になる。しかし、今後の製造装置、射出成形方法の革新により、より大きな日射遮蔽体の製造が可能になる場合がある。また、400cm以下になると、車窓用としては小さすぎて不適当である。厚さについても現状の射出成形技術で製造可能な最大の厚みが30mmであり、それより厚くなると製造が困難になる。また、2.5mmより薄くなると、車両に搭載したときに車両自体の剛性が十分に得られない可能性がある。
【0055】
上記した多くの形態を有する本発明の車窓用日射遮蔽体は、車両用窓、特に、明るさよりもむしろ、如何に経済的に太陽光線の熱を遮るかに重点が置かれた設計が必要となっている自動車のサンルーフ、パノラマルーフ、バックウィンドウ、リアサイドウィンドウ、フロントウィンドウ、重機のサンルーフなどに適用できる。
【実施例】
【0056】
以下に、本発明の実施例を比較例とともに具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、各実施例において、各種微粒子の分散粒径は、動的光散乱法を原理とした大塚電子(株)社製ELS−8000によって測定した。
車窓用日射遮蔽体の可視光透過率並びに日射透過率は、日立製作所(株)製の分光光度計U−4000を用いて測定した。
【実施例1】
【0057】
TiN微粒子10重量%、分散剤10重量%、トルエン80重量%を秤量し、0.3mmφZrOビ−ズを入れたペイントシェ−カ−で6時間粉砕・分散処理することによってTiN微粒子分散液(A液)調製した。ここで、TiN微粒子分散液(A液)内におけるTiN酸化物微粒子の分散粒子径を測定したところ、80nmであった。
更に、上記A液に分散剤を添加し、分散剤とTiN微粒子の重量比が分散剤/TiN微粒子=3となるように調整し、スプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、TiN微粒子分散粉を得た(以下、A粉と略称する)。
【0058】
次に、得られたA粉を熱可塑性樹脂であるポリカーボ−ネート樹脂ペレットにTiN濃度が2.0重量%となるように添加し、ブレンダーで均一に混合した後、二軸押出機で熔融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、TiN微粒子含有ポリカーボネートマスターバッチを得た(以下、マスターバッチAと略称する)。
【0059】
ATO微粒子10重量%、分散剤10重量%、トルエン80重量%を秤量し、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェ−カ−で6時間粉砕・分散処理することによってATO微粒子分散液(B液)調製した。ここで、ATO微粒子分散液(B液)内におけるATO酸化物微粒子の分散粒子径を測定したところ、63nmであった。
更に、上記B液に分散剤を添加し、分散剤とATO微粒子の重量比が分散剤/ATO微粒子=3となるように調整し、スプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、ATO微粒子分散粉を得た(以下、B粉と略称する)。
【0060】
次に、得られたB粉を熱可塑性樹脂であるポリカーボ−ネート樹脂ペレットにATO濃度が2.0重量%となるように添加し、ブレンダーで均一に混合した後、二軸押出機で熔融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、ATO微粒子含有ポリカーボネートマスターバッチを得た(以下、マスターバッチBと略称する)。
【0061】
次に、マスターバッチAとマスターバッチBをポリカーボ−ネート樹脂ペレットで希釈し、タンブラーで均一に混合した後、Tダイを用いて厚さ2.0mmに押出成形し、TiN添加量が0.06g/m、ATO添加量が9.6g/mとなるように調整し、TiN微粒子とATO微粒子が樹脂全体に均一に分散した実施例1に係る日射遮蔽体1を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、75nmであった。
表1に示すように、可視光透過率31.7%のときの日射透過率は19.1%であった。
【実施例2】
【0062】
TiN添加量が0.09g/m、ATO添加量が14.4g/mとなるように調整した以外は、実施例1と同様の方法で実施例2に係る日射遮蔽体2を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、78nmであった。
表1に示すように、可視光透過率22.1%のときの日射透過率は15.9%であった。
【実施例3】
【0063】
TiN添加量が0.11g/m、ATO添加量が1.92g/mとなるように調整した以外は、実施例1と同様の方法で実施例3に係る日射遮蔽体3を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、73nmであった。
表1に示すように、可視光透過率31.9%のときの日射透過率は25.2%であった。
【実施例4】
【0064】
ZnO微粒子10重量%、分散剤10重量%、トルエン80重量%を秤量し、0.3mmφZrOビ−ズを入れたペイントシェ−カ−で3時間粉砕・分散処理することによってZnO微粒子分散液を調製した。更に、上記ZnO微粒子分散液に分散剤を添加し、分散剤とZnO微粒子の重量比が分散剤/WO微粒子=3となるように調整し、スプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、ZnO微粒子分散粉を得た。
【0065】
次に、得られたZnO微粒子分散粉を、熱可塑性樹脂であるポリカーボ−ネート樹脂ペレットにZnO微粒子分散粉を濃度が2.0重量%となるように添加し、ブレンダーで均一に混合した後、二軸押出機で熔融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、ZnO微粒子含有ポリカーボネートマスターバッチを得た。
【0066】
次に、上記ZnO微粒子含有ポリカーボネートマスターバッチを10wt%添加した以外は、実施例3と同様の方法で実施例4に係る日射遮蔽体4を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、70nmであった。
表1に示すように、可視光透過率30.0%のときの日射透過率は24.2%であった。
【実施例5】
【0067】
WO微粒子10重量%、分散剤10重量%、トルエン80重量%を秤量し、0.3mmφZrOビ−ズを入れたペイントシェ−カ−で6時間粉砕・分散処理することによってWO微粒子分散液(C液)調製した。ここで、WO微粒子分散液(C液)内におけるWO微粒子の分散粒子径を測定したところ、55nmであった。
【0068】
更に、上記C液に分散剤を添加し、分散剤とWO微粒子の重量比が分散剤/WO微粒子=3となるように調整し、スプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、WO微粒子分散粉を得た(以下、C粉と略称する)。
【0069】
次に、得られたC粉を、熱可塑性樹脂であるポリカーボ−ネート樹脂ペレットにWO濃度が2.0重量%となるように添加し、ブレンダーで均一に混合した後、二軸押出機で熔融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、WO微粒子含有ポリカーボネートマスターバッチを得た(以下、マスターバッチCと略称する)。
【0070】
次に、マスターバッチBとマスターバッチCをポリカーボ−ネート樹脂ペレットで希釈し、タンブラーで均一に混合した後、Tダイを用いて厚さ2.0mmに押出成形し、WO添加量が0.44g/m、ATO添加量が1.93g/mとなるように調整し、WO微粒子とATOが樹脂全体に均一に分散した実施例5に係る日射遮蔽体5を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、80nmであった。
表1に示すように、可視光透過率30.5%のときの日射透過率は28.7%であった。
【実施例6】
【0071】
ITO微粒子10重量%、分散剤10重量%、トルエン80重量%を秤量し、0.3mmφZrOビ−ズを入れたペイントシェ−カ−で6時間粉砕・分散処理することによってITO微粒子分散液(D液)調製した。ここで、ITO微粒子分散液(D液)内におけるITO微粒子の分散粒子径を測定したところ、75nmであった。
【0072】
更に、上記D液に分散剤を添加し、分散剤とITO微粒子の重量比が分散剤/ITO微粒子=3となるように調整し、スプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、ITO微粒子分散粉を得た(以下、D粉と略称する)。
【0073】
次に、得られたD粉を熱可塑性樹脂であるポリカーボ−ネート樹脂ペレットにITO濃度が2.0重量%となるように添加し、ブレンダーで均一に混合した後、二軸押出機で熔融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、ITO微粒子含有ポリカーボネートマスターバッチを得た(以下、マスターバッチDと略称する)。
【0074】
次に、マスターバッチCとマスターバッチDをポリカーボ−ネート樹脂ペレットで希釈し、タンブラーで均一に混合した後、Tダイを用いて厚さ2.0mmに押出成形し、WO添加量が0.44g/m、ITO添加量が1.95g/mとなるように調整し、WO微粒子とITOが樹脂全体に均一に分散した実施例6に係る日射遮蔽体6を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、77nmであった。
表1に示すように、可視光透過率30.9%のときの日射透過率は23.1%であった。
【実施例7】
【0075】
LaB微粒子10重量%、分散剤10重量%、トルエン80重量%を秤量し、0.3mmφZrOビ−ズを入れたペイントシェ−カ−で6時間粉砕・分散処理することによってLaB微粒子分散液(E液)調製した。ここで、LaB微粒子分散液(E液)内におけるLaB微粒子の分散粒子径を測定したところ、68nmであった。
更に、上記E液に分散剤を添加し、分散剤とTiN微粒子の重量比が分散剤/ITO微粒子=3となるように調整し、スプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、ITO微粒子分散粉を得た(以下、E粉と略称する)。
【0076】
次に、得られたE粉を熱可塑性樹脂であるポリカーボ−ネート樹脂ペレットにLaB濃度が2.0重量%となるように添加し、ブレンダーで均一に混合した後、二軸押出機で熔融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、LaB微粒子含有ポリカーボネートマスターバッチを得た(以下、マスターバッチEと略称する)。
【0077】
次に、マスターバッチAとマスターバッチBとマスターバッチEをポリカーボ−ネート樹脂ペレットで希釈し、タンブラーで均一に混合した後、Tダイを用いて厚さ2.0mmに押出成形し、LaB添加量が0.06g/m、TiN添加量が0.06g/m、ATO添加量が1.94g/m、となるように調整し、LaB微粒子とTiN微粒子とATO微粒子が樹脂全体に均一に分散した実施例7に係る日射遮蔽体7を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、85nmであった。
表1に示すように、可視光透過率37.8%のときの日射透過率は27.4%であった。
【実施例8】
【0078】
1849微粒子10重量%、分散剤10重量%、トルエン80重量%を秤量し、0.3mmφZrOビ−ズを入れたペイントシェ−カ−で6時間粉砕・分散処理することによってW1849微粒子分散液(F液)調製した。ここで、W1849微粒子分散液(F液)内におけるW1849微粒子の分散粒子径を測定したところ、69nmであった。
【0079】
更に、上記F液に分散剤を添加し、分散剤とW1849微粒子の重量比が分散剤/W1849微粒子=3となるように調整し、スプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、W1849微粒子分散粉を得た(以下、F粉と略称する)。
【0080】
次に、得られたF粉を熱可塑性樹脂であるポリカーボ−ネート樹脂ペレットにW1849濃度が2.0重量%となるように添加し、ブレンダーで均一に混合した後、二軸押出機で熔融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、W1849微粒子含有ポリカーボネートマスターバッチを得た(以下、マスターバッチFと略称する)。
【0081】
次に、マスターバッチBとマスターバッチFをポリカーボ−ネート樹脂ペレットで希釈し、タンブラーで均一に混合した後、Tダイを用いて厚さ2.0mmに押出成形し、W1849添加量が0.43g/m、ATO添加量が2.01g/mとなるように調整し、W1849微粒子とATOが樹脂全体に均一に分散した実施例8に係る日射遮蔽体8を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、61nmであった。
表1に示すように、可視光透過率31.8%のときの日射透過率は28.1%であった。
【実施例9】
【0082】
0.33WO微粒子10重量%、分散剤10重量%、トルエン80重量%を秤量し、0.3mmφZrOビ−ズを入れたペイントシェ−カ−で6時間粉砕・分散処理する
ことによってC0.33WO微粒子分散液(G液)調製した。ここで、C0.33WO微粒子分散液(G液)内におけるC0.33WO微粒子の分散粒子径を測定したところ、77nmであった。
【0083】
更に、上記G液に分散剤を添加し、分散剤とC0.33WO微粒子の重量比が分散剤/C0.33WO微粒子=3となるように調整し、スプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、C0.33WO微粒子分散粉を得た(以下、G粉と略称する)。
【0084】
次に、得られたG粉を熱可塑性樹脂であるポリカーボ−ネート樹脂ペレットにC0.33WO濃度が2.0重量%となるように添加し、ブレンダーで均一に混合した後、二軸押出機で熔融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、C0.33WO微粒子含有ポリカーボネートマスターバッチを得た(以下、マスターバッチGと略称する)。
【0085】
次に、マスターバッチAとマスターバッチGをポリカーボ−ネート樹脂ペレットで希釈し、タンブラーで均一に混合した後、Tダイを用いて厚さ2.0mmに押出成形し、TiN添加量が0.06g/m、C0.33WO添加量が2.4g/mとなるように調整し、TiN微粒子とC0.33WOが樹脂全体に均一に分散した実施例9に係る日射遮蔽体9を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、79nmであった。
表1に示すように、可視光透過率31.7%のときの日射透過率は15.7%であった。
【実施例10】
【0086】
TiN添加量が0.15g/m、C0.33WO添加量が6.0g/mとなるように調整した以外は、実施例10と同様の方法で実施例10に係る日射遮蔽体10を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、66nmであった。
表1に示すように、可視光透過率10.1%のときの日射透過率は7.1%であった。
【実施例11】
【0087】
Fe微粒子10重量%、分散剤10重量%、トルエン80重量%を秤量し、0.3mmφZrOビ−ズを入れたペイントシェ−カ−で6時間粉砕・分散処理することによってFe微粒子分散液(H液)調製した。ここで、Fe微粒子分散液(H液)内におけるFe微粒子の分散粒子径を測定したところ、50nmであった。
更に、上記H液に分散剤を添加し、分散剤とFe微粒子の重量比が分散剤/Fe微粒子=3となるように調整し、スプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、Fe微粒子分散粉を得た(以下、H粉と略称する)。
【0088】
次に、得られたH粉を熱可塑性樹脂であるポリカーボ−ネート樹脂ペレットにFe濃度が2.0重量%となるように添加し、ブレンダーで均一に混合した後、二軸押出機で熔融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、Fe微粒子含有ポリカーボネートマスターバッチを得た(以下、マスターバッチHと略称する)。
【0089】
次に、マスターバッチAとマスターバッチGとマスターバッチHをポリカーボ−ネート樹脂ペレットで希釈し、タンブラーで均一に混合した後、Tダイを用いて厚さ2.0mmに押出成形し、TiN添加量が0.06g/m、C0.33WO添加量が2.4g/m、Fe添加量が0.6g/mとなるように調整し、TiN微粒子とC0.33WOとFe微粒子が樹脂全体に均一に分散した実施例11に係る日射遮蔽体11を得た。また、日射遮蔽体のFeの微粒子の分散粒子径は、81nmであった。
表1に示すように、可視光透過率26.6%のときの日射透過率は25.0%であった。
【実施例12】
【0090】
TiN微粒子3重量%、イソプロピルアルコール97重量%を秤量し、0.3mmφZrOビ−ズを入れたペイントシェ−カ−で6時間粉砕・分散処理した後、メチルトリメトキシシランを添加し、メカニカルスターラーで1時間攪拌し混合した後、スプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、シラン化合物にて表面処理を施したTiN微粒子を得た。
ATO微粒子3重量%、イソプロピルアルコール97重量%を秤量し、0.3mmφZrOビ−ズを入れたペイントシェ−カ−で6時間粉砕・分散処理した後、メチルトリメトキシシランを添加し、メカニカルスターラーで1時間攪拌し混合した後、スプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、シラン化合物にて表面処理を施したATO微粒子を得た。
【0091】
シラン化合物にて表面処理を施したTiN微粒子、シラン化合物にて表面処理を施したATO微粒子を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例12に係る日射遮蔽体12を得た。
また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、83nmであった。
表1に示すように、可視光透過率31.5%のときの日射透過率は19.2%であった。
【実施例13】
【0092】
東亞合成製アロニックスM−400を50重量%、チバスペシャリティ製イルガキュア651を5重量%、トルエン45重量%を混合し、耐擦傷性ハードコート液を調整した。実施例1と同様の方法で作製した日射遮蔽体1の表面に上記耐擦傷性ハードコート液をバーコーター♯20を使用して塗布し、70℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプで140mW/cmのUV光を照射し、耐擦傷性ハードコート層を形成し、日射遮蔽対13を得た。
表1に示すように、可視光透過率31.2%のときの日射透過率は18.9%であった。
鉛筆硬度を測定したところ、耐擦傷性ハードコート層を形成することで、日射遮蔽体13の鉛筆硬度が2Hに向上していることが確認された。実施例1で作製した日射遮蔽体1は、鉛筆硬度Fであった。
【0093】
日射遮蔽体の表面に耐擦傷性ハードコート層を形成することで、日射遮蔽体の耐擦傷性を向上させることが可能であり、当該日射遮蔽体を車両、自動車の窓などに使用することが出来る。
【実施例14】
【0094】
TiN微粒子分散液(A液)、可塑剤トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート50重量%を秤量し、攪拌方真空乾燥機でトルエンを除去し、TiN可塑剤分散液(A可塑剤液)を作製した。
同様にATO微粒子分散液(B液)、可塑剤トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート50重量%を秤量し、攪拌方真空乾燥機でトルエンを除去し、ATO可塑剤分散液(B可塑剤液)を作製した。
【0095】
A可塑剤液とB可塑剤液をポリビニルブチラール樹脂に添加し、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレートを加え、この混合物をロールで混練し、0.5mm厚のシート状に形成し、TiN添加量が0.06g/m、ATO添加量が9.60g/mとなるように調整し、TiN微粒子とATOが樹脂全体に均一に分散した中間膜(中間膜A)を得た。
【0096】
更にこの中間膜Aを、厚さ2mmのフロートガラス2枚の間に挟み、通常の合わせガラス製造法に従って加熱・圧着して、日射遮蔽体14を得た。日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、69nmであった。
また、表1に示すように、可視光透過率30.8%のときの日射透過率は19.0%であった。
【実施例15】
【0097】
TiN添加量が0.09g/m、ATO添加量が14.4g/mとなるように調整した以外は、実施例13と同様の方法で実施例15に係る日射遮蔽体15を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、78nmであった。
表1に示すように、可視光透過率21.1%のときの日射透過率は15.7%であった。
【実施例16】
【0098】
TiN添加量が0.11g/m、ATO添加量が1.92g/mとなるように調整した以外は、実施例1と同様の方法で実施例16に係る日射遮蔽体16を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、73nmであった。
表1に示すように、可視光透過率30.9%のときの日射透過率は25.0%であった。
【実施例17】
【0099】
WO微粒子分散液(C液)、可塑剤トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート50重量%を秤量し、攪拌方真空乾燥機でトルエンを除去し、WO可塑剤分散液(C可塑剤液)を作製した。
A可塑剤液とC可塑剤液をポリビニルブチラール樹脂に添加し、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレートを加え、この混合物をロールで混練し、0.5mm厚のシート状に形成し、WO添加量が0.44g/m、ATO添加量が1.93g/mとなるように調整し、WO微粒子とATOが樹脂全体に均一に分散した中間膜(中間膜D)を得た。
【0100】
更にこの中間膜Dを、厚さ2mmのフロートガラス2枚の間に挟み、通常の合わせガラス製造法に従って加熱・圧着して、日射遮蔽体17を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、77nmであった。
表1に示すように、可視光透過率30.5%のときの日射透過率は28.4%であった。
【実施例18】
【0101】
ITO微粒子分散液(D液)、可塑剤トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート50重量%を秤量し、攪拌方真空乾燥機でトルエンを除去し、ITO可塑剤分散液(D可塑剤液)を作製した。
【0102】
C可塑剤液とD可塑剤液をポリビニルブチラール樹脂に添加し、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレートを加え、この混合物をロールで混練し、0.5mm厚のシート状に形成し、WO添加量が0.44g/m、ITO添加量が1.95g/mとなるように調整し、WO微粒子とITOが樹脂全体に均一に分散した中間膜(中間膜E)を得た。
【0103】
更にこの中間膜Eを、厚さ2mmのフロートガラス2枚の間に挟み、通常の合わせガラス製造法に従って加熱・圧着して、日射遮蔽体18を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、81nmであった。
表1に示すように、可視光透過率30.1%のときの日射透過率は22.4%であった。
【実施例19】
【0104】
LaB微粒子分散液(E液)、可塑剤トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート50重量%を秤量し、攪拌方真空乾燥機でトルエンを除去し、LaB可塑剤分散液(E可塑剤液)を作製した。
【0105】
A液可塑剤とB可塑剤液とE可塑剤液をポリビニルブチラール樹脂に添加し、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレートを加え、この混合物をロールで混練し、0.5mm厚のシート状に形成し、LaB添加量が0.06g/m、TiN添加量が0.06g/m、ATO添加量が1.94g/m、となるように調整し、LaB微粒子とTiN微粒子とATOが樹脂全体に均一に分散した中間膜(中間膜F)を得た。
【0106】
更にこの中間膜Fを、厚さ2mmのフロートガラス2枚の間に挟み、通常の合わせガラス製造法に従って加熱・圧着して、日射遮蔽体19を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、79nmであった。
表1に示すように、可視光透過率37.5%のときの日射透過率は27.3%であった。
【実施例20】
【0107】
1849微粒子分散液(F液)、可塑剤トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート50重量%を秤量し、攪拌方真空乾燥機でトルエンを除去し、W1849可塑剤分散液(F可塑剤液)を作製した。
B液可塑剤とF可塑剤液をポリビニルブチラール樹脂に添加し、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレートを加え、この混合物をロールで混練し、0.5mm厚のシート状に形成し、W1849添加量が0.43g/m、ATO添加量が2.01g/m、となるように調整し、W1849微粒子とATO微粒子が樹脂全体に均一に分散した中間膜(中間膜G)を得た。
更にこの中間膜Gを、厚さ2mmのフロートガラス2枚の間に挟み、通常の合わせガラス製造法に従って加熱・圧着して、日射遮蔽体20を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、79nmであった。
表1に示すように、可視光透過率31.4%のときの日射透過率は29.1%であった。
【実施例21】
【0108】
Cs0.33WO微粒子分散液(G液)、可塑剤トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート50重量%を秤量し、攪拌方真空乾燥機でトルエンを除去し、Cs0.33WO可塑剤分散液(G可塑剤液)を作製した。
【0109】
A液可塑剤とG可塑剤液をポリビニルブチラール樹脂に添加し、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレートを加え、この混合物をロールで混練し、0.5mm厚のシート状に形成し、TiN添加量が0.06g/m、Cs0.33WO添加量が2.4g/m、となるように調整し、TiN微粒子とCs0.33WO微粒子が樹脂全体に均一に分散した中間膜(中間膜H)を得た。
【0110】
更にこの中間膜Hを、厚さ2mmのフロートガラス2枚の間に挟み、通常の合わせガラス製造法に従って加熱・圧着して、日射遮蔽体21を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、75nmであった。
表1に示すように、可視光透過率31.3%のときの日射透過率は15.6%であった。
【実施例22】
【0111】
TiN添加量が0.15g/m、Cs0.33WO添加量が6.00g/mとなるように調整した以外は、実施例20と同様の方法で実施例22に係る日射遮蔽体22を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、72nmであった。
表1に示すように、可視光透過率10.1%のときの日射透過率は7.0%であった。
【実施例23】
【0112】
Fe微粒子分散液(H液)、可塑剤トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート50重量%を秤量し、攪拌方真空乾燥機でトルエンを除去し、Fe可塑剤分散液(H可塑剤液)を作製した。
【0113】
A液可塑剤とG可塑剤液とH可塑剤液をポリビニルブチラール樹脂に添加し、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレートを加え、この混合物をロールで混練し、0.5mm厚のシート状に形成し、TiN添加量が0.06g/m、Cs0.33WO添加量が2.4g/m、Fe添加量が0.6g/m、となるように調整し、TiN微粒子とCs0.33WO微粒子とFeが樹脂全体に均一に分散した中間膜(中間膜J)を得た。
【0114】
更にこの中間膜Jを、厚さ2mmのフロートガラス2枚の間に挟み、通常の合わせガラス製造法に従って加熱・圧着して、日射遮蔽体23を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、67nmであった。
表1に示すように、可視光透過率26.5%のときの日射透過率は24.8%であった。
【実施例24】
【0115】
中間膜Hを、厚さ2mmのフロートガラスと日射遮蔽体6の間に挟み、通常の合わせガラス製造法に従って加熱・圧着して、日射遮蔽体24を得た。
表1に示すように、可視光透過率17.9%のときの日射透過率は11.6%であった。
【実施例25】
【0116】
中間膜Hを、厚さ2mmのフロートガラスと厚さ0.5mmのポリエチレンテレフタレートフィルムの間に挟み、通常の合わせガラス製造法に従って加熱・圧着して、日射遮蔽体25を得た。
表1に示すように、可視光透過率31.9%のときの日射透過率は16.2%であった。
【0117】
[比較例1]
マスターバッチBと青色系着色染料(アントラキノン系青色染料(商品名:クライアント社製ポリシンスBlue RLS))をポリカーボ−ネート樹脂ペレットで希釈し、タンブラーで均一に混合した後、Tダイを用いて厚さ2.0mmに押出成形し、ATO添加量が1.96g/mとなるように調整し、ATO微粒子が樹脂全体に均一に分散し、青色系着色染料を添加した比較例1に係る日射遮蔽体26を得た。また、日射遮蔽体のATO微粒子の分散粒子径は、84nmであった。
表1に示すように、可視光透過率31.7%のときの日射透過率は39.6%であった。
日射透過率/可視光透過率=1.25となり、日射透過率/可視光透過率<1を満たすことが出来ない。
ATOと青色系着色染料を使用して、可視光透過率を低くすることは可能であるが、日射透過率を十分に下げることが出来ず、車窓用に使用するには、車内温度上昇を軽減する効果が少なく不適当である。
【0118】
[比較例2]
マスターバッチAとマスターバッチDをポリカーボ−ネート樹脂ペレットで希釈し、タンブラーで均一に混合した後、Tダイを用いて厚さ2.0mmに押出成形し、TiN添加量が0.016g/m、ITO添加量が2.40g/m、となるように調整し、TiN微粒子とITO微粒子が樹脂全体に均一に分散した比較例2に係る日射遮蔽体27を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、69nmであった。
表1に示すように、可視光透過率65.2%のときの日射透過率は40.5%であった。
0.016g/m(TiNの添加量)×160+2.4g/m(ITOの添加量)=4.96となり、各熱線遮蔽微粒子の添加量が本文中に示した下記(式5)を満たしていないため、可視光透過率を十分に低くすることが出来ず、プライバシー保護を目的とした車窓用に使用するには、不適当である。
(式5)
5(g/m)<窒化チタンの添加量(g/m)×160+6ホウ化ランタンの添加量(g/m)×40+酸化タングステン(g/m)×40+複合タングステン酸化物(g/m)×4+アンチモンドープ酸化錫(g/m)+錫ドープ酸化インジウム(g/m)<50(g/m
【0119】
[比較例3]
マスターバッチAとマスターバッチBをポリカーボ−ネート樹脂ペレットで希釈し、タンブラーで均一に混合した後、Tダイを用いて厚さ2.0mmに押出成形し、TiN添加量が0.19g/m、ATO添加量が19.9g/m、となるように調整し、TiN微粒子とATO微粒子が樹脂全体に均一に分散した比較例3に係る日射遮蔽体28を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、76nmであった。
表1に示すように、可視光透過率3.4%のときの日射透過率は3.3%であった。
0.19g/m(TiNの添加量)×160+2.4g/m(ATOの添加量)=50.3となり、各熱線遮蔽微粒子の添加量が本文中に示した(式5)を満たしていないため、可視光透過率が低すぎて、車窓用に使用するには不適当である。
【0120】
また、熱線遮蔽記微粒子の1mあたりの全添加量が20.1g/mとなり、本文中に示した20g/m以下より多くなっているため、日射遮蔽体耐の表面強度が著しく低下し、爪でこすると簡単に傷が付いてしまい、車窓用に使用するには不適当である。また、材料コストも高くなってしまう。
【0121】
[比較例4]
マスターバッチCをポリカーボ−ネート樹脂ペレットで希釈し、タンブラーで均一に混合した後、Tダイを用いて厚さ2.0mmに押出成形し、WO添加量が0.44g/mとなるように調整し、WO微粒子が樹脂全体に均一に分散した比較例4に係る日射遮蔽体29を得た。また、日射遮蔽体の微粒子の分散粒子径は、76nmであった。
表1に示すように、可視光透過率35.9%のときの日射透過率は45.7%であった。
日射透過率/可視光透過率=1.27となり、日射透過率/可視光透過率<1を満たすことが出来なかった。WOを単独で使用したため、1000nm以上の赤外線の吸収が不十分となり、日射透過率を十分に下げることが出来ず、車窓用に使用するには、車内温度上昇を軽減する効果が少なく不適当である。
【0122】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓に使用される熱線遮蔽機能を有する微粒子を含む車窓用日射遮蔽体であって、前記熱線遮蔽機能を有する微粒子が、6ホウ化ランタン、窒化チタン、酸化タングステンから選択される少なくとも1種以上の微粒子と、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム、一般式MWO(0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0)で示される複合タングステン酸化物から選択される少なくとも1種以上の微粒子とを混合してなり、且つ、前記日射遮蔽体の可視光透過率が5%以上40%以下の範囲にあり、前記日射遮蔽体の日射透過率と可視光透過率が下記(式1)を満たし、更に前記日射遮蔽体の透過色が下記(式2)を満たすことを特徴とする車窓用日射遮蔽体。
(式1)日射透過率/可視光透過率<1
(式2)−14<a<2、−8<b<2
【請求項2】
車両の窓に使用される熱線遮蔽機能を有する微粒子を含む車窓用日射遮蔽体であって、前記熱線遮蔽機能を有する微粒子が、6ホウ化ランタン、窒化チタン、酸化タングステンから選択される少なくとも1種以上の微粒子と、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム、一般式MWO(0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0)で示される複合タングステン酸化物から選択される少なくとも1種以上の微粒子と、酸化鉄微粒子とを混合してなり、且つ、前記日射遮蔽体の可視光透過率が5%以上40%以下の範囲であり、前記日射遮蔽体の日射透過率と可視光透過率が下記(式3)を満たし、更に前記日射遮蔽体の透過色が下記(式4)を満たすことを特徴とする車窓用日射遮蔽体。
(式3)日射透過率/可視光透過率<1
(式4)−2<a<14、2<b<12
【請求項3】
酸化タングステンがWO、或いは、W1849であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車窓用日射遮蔽体。
【請求項4】
複合タングステン酸化物微粒子に含まれるM元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちの1種類以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車窓用日射遮蔽体。
【請求項5】
前記熱線遮蔽機能を有する微粒子の直径が、300nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車窓用日射遮蔽体。
【請求項6】
前記熱線遮蔽機能を有する微粒子が、シラン化合物、チタン化合物、ジルコニア化合物から選択される少なくとも1種によって表面処理されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車窓用日射遮蔽体。
【請求項7】
更に、酸化亜鉛微粒子、酸化セリウム微粒子、酸化チタン微粒子から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車窓用日射遮蔽体。
【請求項8】
前記熱線遮蔽機能を有する微粒子が、ポリカーボネート樹脂成形体に含まれていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の車窓用日射遮蔽体。
【請求項9】
請求項8記載のポリカーボネート樹脂成形体の少なくとも一表面に、耐擦傷性ハードコート層が形成されていることを特徴とする車窓用日射遮蔽体。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の日射遮蔽体を他の樹脂成形体に積層することにより得られることを特徴とする車窓用日射遮蔽体。
【請求項11】
請求項1〜7に記載の熱線遮蔽機能を有する微粒子がポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂から選択される一種に含まれていることを特徴とする車窓用日射遮蔽体。
【請求項12】
請求項11記載の日射遮蔽体を2枚の合わせ板間に中間膜として介在させてなる合わせ構造体であって、該合わせ板が無機板ガラス、ポリカーボネート樹脂成形体、ポリエチレンテレフタレート樹脂成形体から選択される少なくとも一種であることを特徴とする車窓用日射遮蔽体。
【請求項13】
請求項12記載の合わせ板の少なくとも一方が、請求項8〜10のいずれか1項に記載の日射遮蔽体であることを特徴とする車窓用日射遮蔽体。
【請求項14】
前記車窓用日射遮蔽体の形状が、厚さ2.5mm〜30mm、かつ最大投影面積が400〜60000cmであることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の車窓用日射遮蔽体。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の車窓用日射遮蔽体が使用されていることを特徴とする車両用窓。

【公開番号】特開2008−44609(P2008−44609A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217613(P2007−217613)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【分割の表示】特願2006−236779(P2006−236779)の分割
【原出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】