説明

車線認識装置および方法

【解決手段】この発明は、車両用の車線認識装置に関し、この車両の前方にある車道マークを検出するためのカメラと、このカメラによって検出したデータを評価するための評価ユニットとを有する。この発明は、周知のタイプの車道マークの形状データが評価ユニットに記憶されていることと、この評価ユニットは、検出された車道マークと前記記憶された車道マークとの比較によって、検出された車道マークのタイプを確定することと、前記評価ユニットは、前記カメラによって検出された周知の車道マークの形状データから、およびこの車道マークの検出された経時変化から、車両速度を確定することとを特徴とする。さらに、この発明は、車線認識装置を操作する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の前方にある車道マークを検出するためのカメラと、このカメラによって検出されたデータを評価するための評価ユニットとを具備する、車両用の車線認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの車線認識装置は、多種多様に知られており、しばしば、車線離脱警告装置または車線変更警告装置とも呼ばれる。このタイプの車線認識装置は、特に、車道を区画するラインを検出し、車両運転者に、車線からの思わぬ離脱を警告する。車線からの思わぬ離脱は、例えば、車両運転者の不注意の際に、あるいは車両運転者の非常な疲労または睡眠の際に生じることがある。この場合、周知の車線認識装置を、所定の速度になって初めて、作動することが意図される。さらに、車両速度を、車線認識装置の感度の調整のために用いることができる。周知の車両では、車輌速度は、他の車両装置によって確定され、車線認識装置に、例えばCANバスを介して伝送される。したがって、車両への車線認識装置の追加装備は、かなりのコストを伴う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
明細書の最初の部分に記載されたタイプの車線認識装置を、車線認識装置の追加装備が簡略化されるように改善するという課題が、この発明の基礎になっている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、明細書の最初の部分に記載された車線認識装置の場合、評価ユニットには、周知のタイプの車道マークの形状データが記憶されていることと、評価ユニットが、検出された車道マークと、記憶された車道マークとの比較によって、検出された車道マークのタイプを確定することと、評価ユニットが、検出された車道マークの周知の形状データから、および、この車道マークの、カメラによって検出された経時変化から、車両速度を確定することによって解決される。
【0005】
したがって、この発明では、車道マークが記憶されている。道路のマークに関し、および道路の設備に関しては基準がある(特に、開発道路の設備に関する勧告EAE85/95;道路マークに関する準則RMS;道路の設備に関する準則RAS)。したがって、車道マークの形状データは、管理されており、知られている。この場合、車道にしたがって、種々のタイプの車道マークを使用することができる。自動車道路、連邦道路、州道路ならびに地域通過路は、部分的に、異なった形状データを有する。特に、非連続的なセンターラインの長さ、幅および間隔が異なっていることがある。特に車道マークの長さ、幅および/または間隔に関する情報によって、評価ユニットは、カメラによって検出された経時変化により、車両速度を確定することができる。
【0006】
まとめれば、この発明は、車線認識装置が、他の車両装置とは別個に操作可能であるという利点を有する。特に、この車線認識装置は、速度の入力を必要としない。
【0007】
車道マークは、特に、例えば非連続的なセンターラインのような車道ラインである。所定のタイプの検出された車道マークからは、非連続的なセンターラインの長さおよび/または2つの隣り合うセンターラインの間の間隔が知られている。周知の長さおよび/または周知の間隔ならびにこの長さおよび/またはこの間隔に関して経過した時間から、車両速度を確定することができる。
【0008】
特に、ここでは、経時変化として、非連続的なセンターラインの初めと終りがカメラによって検出される第1の時点と、同一のまたは異なったセンターラインの終りと初めが検出される第2の時点との間の経過した時間を用いることが可能である。既述のように、センターラインの周知の長さ、2つのセンターラインおよび/または複数のセンターラインの間の間隔ならびに検出された経時変化から、車両の速度を逆推論することができる。
【0009】
この場合、2つの時点がカメラの所定の画面で確定されることは、好都合である。所定の画面は、異なった画面であってもよい。このとき、2つ画面の間隔がともに考慮されねばならない。しかしながら、同様に、2つの時点をカメラの同一の画面で確定することも考えられる。例えば、長手方向のセンターラインの初めがカメラの検出区域に入ることを、第1の時点として確定し、同一の長手方向のセンターラインの終りがカメラの検出区域に入ることを、第2の時点として確定することができる。このとき、2つの時点の間に経過した時間および長手方向のセンターラインの周知の長さが、車両速度を確定するために用いられる。
【0010】
車道マークのタイプを、特に、センターラインの幅から、および/または複数の非連続的なセンターラインの間隔から、および/または非連続的なセンターラインの長さと、2つの非連続的なセンターラインの間の間隔との関係から、および/または車道サイドラインの幅から、確定することができる。既述のように、種々のタイプの車道マークは、いかなる種類の道路であるかにしたがって、種々の形状データを有する。
【0011】
特に、車両速度を確定するための評価ユニットが、複数の非連続的なセンターラインおよび/または複数の非連続的なセンターラインの間の複数の間隔に亘る平均化を行なうことは好都合である。このことによって、車両速度を、より高い精度で確定することができる。
【0012】
この発明では、車両速度が制限速度を上回るとき、しかも車線からの思わぬ離脱があるとき、車線認識装置が警告信号を発することは、同様に、好都合である。明細書の最初の部分で既に述べたように、車線認識装置は、通常、所定の車両速度になって初めて、作動する。今測定された車両の速度が制限速度を上回るとき、車線認識装置は、警告信号の出力のために、作動される。
【0013】
この発明に係わる車線認識装置は、外部の給電部のための接続手段のみを有し、その他には、他の車両装置と別個に作動する。このことによって、この発明に係わる車線認識装置を、比較的少ないコストで、既存の車両に追加装備することができる。車両速度を別個に確定することの故に、他の車両装置への接続部、特にCANバスを省略することができる。
【0014】
明細書の最初の部分に記載された課題は、さらに、車両の前方にある車道マークを検出し、かつ評価するために用いる車両用の車線認識装置を操作するための方法によって解決される。車両速度は、以下の方法、すなわち、
検出された車道マークと、記憶されたタイプの車道マークとを比較して、検出された車道マークのタイプを確定すること、および
検出された車道マークの周知の形状データから、およびこの車道マークの、測定された経時変化から、車両速度を確定すること
により確定される。
【0015】
この発明に係わる方法は、特に、この発明に係わる車線認識装置を操作させるために、適切である。
【0016】
他の利点および好都合な実施の形態は、以下の記述から読み取れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明を図1に示した実施の形態に基づき詳述する。図1には、車道12における車両10が平面図で示されている。車道12は、非連続的なセンターライン14と、走行方向16において車道12の右端を区画する車道サイドライン18とを有する。車両10は、合計2つの時点tおよびtで示されている。車両は、時点tでは実線で描写され、時点tでは破線で示されている。車両10は、この発明に係わる車線認識装置20を有する。この車線認識装置は、カメラおよび評価ユニットを有する。この場合、カメラは、車両の前方にある車道マークを撮る。カメラの検出範囲には、時点tでは参照符号22が付され、時点tでは参照符号22´が付されている。
【0018】
車線認識装置には、知られたタイプの車道マークの形状データが記録されている。カメラによって検出されたセンターライン14および/またはカメラによって検出されたサイドライン18に基づいて、車両が今位置している車道の車線のタイプを逆推論することができる。車道マークの知られたタイプおよびそのとき知られた形状データに基づいて、個々のセンターライン14.1の長さと、2つの隣り合うセンターラインの間隔とが知られる。
【0019】
車両速度を確定するためには、個々のセンターラインの、カメラによって検出された経時変化が確定される。図1に示すように、時点tでは、センターライン14.1は、車線認識装置20の検出区域22に入る。車両の前進に基づいて、センターライン14.1の端部が、時点tで検出される。この場合、進んだ距離Δsは、センターライン14.1の知られた長さに対応する。経過した時間Δt=t−tおよび進んだ距離Δsに基づき、車両速度vを以下のように確定することができる。すなわち、v=Δs/Δt。
【0020】
したがって、この発明に係わる車線認識装置20によって、車両速度を、他の車両装置とは別個に確定することができる。
【0021】
図1に示した装置では、2つの時点tおよびtは、同一の画面で確定される。すなわち、センターライン14.1は、検出区域22から出て、検出区域22´に入る。この発明では、時点tおよびtを、他の画面でまたは検出区域22の種々の画面で確定することができる。
【0022】
車両速度のより高い精度を得るために、複数の非連続的なセンターラインおよび/または複数の非連続的なセンターラインの間の複数の間隔に亘る平均化がなされることは好ましい。センターライン14の初めと終りの検出の代わりに、2つの隣り合うセンターラインの間の間隔、および/または複数のセンターラインの間の間隔も用いることができる。
【0023】
さらに、車線認識装置は、車両速度が制限速度を上回るとき、車線からの思わぬ離脱があるか否かをモニタする。車線からの思わぬ離脱があるとき、警告信号が発せられる。この発明に係わる車線認識装置によって確定された速度、およびこの速度と、事前設定された制限速度との比較に基づいて、車線認識装置を作動させることができる。さらに、車線認識装置の感度は、車線認識装置の、実際に定められた速度にしたがって、変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】車道上の車両の平面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方にある車道マーク(14,18)を検出するためのカメラと、このカメラによって検出されたデータを評価するための評価ユニットとを具備する車両用の車線認識装置(20)において、
前記評価ユニットには、周知のタイプの車道マークの形状データが記憶されていることと、前記評価ユニットは、前記検出された車道マークと前記記憶された車道マークとの比較によって、前記検出された車道マークのタイプを確定することと、前記評価ユニットは、前記検出された車道マークの前記周知の形状データ(Δs)から、および、この車道マークの、前記カメラによって検出された経時変化(Δt)から、車両速度(v)を確定することとを特徴とする車線認識装置。
【請求項2】
前記車道マークは、非連続的なセンターライン(14)であり、前記検出された車道マークの所定のタイプからは、形状データ(Δs)として、非連続的なセンターライン(14.1)の長さ、および/または2つの隣り合うセンターラインの間の間隔が知られていることを特徴とする請求項1に記載の車線認識装置(20)。
【請求項3】
経時変化(Δt)として、非連続的なセンターライン(14.1)の初めと終りが前記カメラによって検出される第1の時点(t)と、同一のまたは異なったセンターライン(14.1)の終りと初めが検出される第2の時点(t)との間の経過した時間を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の車線認識装置(20)。
【請求項4】
前記2つの時点(t,t)を、前記カメラの所定の画面で確定することを特徴とする請求項3に記載の車線認識装置(20)。
【請求項5】
前記2つの時点(t,t)を、前記カメラの同一の画面で確定することを特徴とする請求項3または4に記載の車線認識装置(20)。
【請求項6】
前記車道マークのタイプを、前記センターライン(14)の幅から、および/または複数の非連続的なセンターライン(14)の間隔から、および/または前記非連続的なセンターライン(14)の長さと2つの非連続的なセンターライン(14)の間の間隔との関係から、および/または車道サイドライン(18)の幅から、確定することを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の車線認識装置(20)。
【請求項7】
前記車両速度を確定するための前記評価ユニットは、複数の非連続的なセンターライン、および/または複数の非連続的なセンターラインの間の複数の間隔に亘る平均化を行なうことを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の車線認識装置(20)。
【請求項8】
前記車線認識装置(20)は、車両速度が制限速度を上回るとき、しかも車線からの思わぬ離脱があるとき、警告信号を発することを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の車線認識装置(20)。
【請求項9】
前記車線認識装置は、外部の給電部のための接続手段のみを有し、その他には、他の車両装置と別個に操作可能であることを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の車線認識装置(20)。
【請求項10】
前記車両の前方にある車道マーク(14,18)を検出し、かつ評価するために用いる車両用の車線認識装置(20)を操作するための方法であって、前記車両速度(v)は、以下の方法、すなわち、
前記検出された車道マークと、前記記憶されたタイプの車道マークとの比較によって、前記検出された車道マークのタイプを確定することと、
前記検出された車道マークの前記周知の形状データから、および、この車道マークの測定された経時変化から、車両速度を確定することと、
により確定される。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか1に記載の車線認識装置を操作するための、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−538025(P2008−538025A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502263(P2008−502263)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001131
【国際公開番号】WO2006/099916
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(303049337)バレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー (18)
【Fターム(参考)】