説明

車載レーダ装置

【課題】自車が停車もしくは所定の速度以下の際に、放射するパルスの送信波の電力を下げるように制御すると、受信信号の受信レベルが小さくなるためS/Nが小さくなり、目標物体が検知しにくくなる。
【解決手段】目標物体30に向けて送信部11からパルスの電波を送信し、受信部12により目標物体で反射した電波を受信して、目標物体までの距離等を算出する信号処理手段13を備えた車載レーダ装置において、受信部で受信した信号から1/f雑音を抑えるノイズ除去手段123を設けると共に、自車が停車もしくは所定の速度以下の際に送信部から送信するパルスの電波の平均電力を低下させる電力制御手段112、115を設け、自車が停車もしくは所定速度以下の際に送信電力を低下させることに伴い受信信号のS/Nが低下するのを防ぎ、かつ電力消費を必要最小限に抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自車の進行方向前方の目標物体を検出するレーダ装置を搭載した車載レーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、自車の前方に存在する目標物体を検知し、その目標物体までの距離等を算出する車載レーダ装置が知られている。そのような車載レーダ装置において、自車が走行中であるときは、自車速に応じてレーダの出力を制御するようにしたものがある。例えば車速が大きい程レーザ出力を大きくし、低速の場合はレーザ出力を小さくして人体に対する安全性を図るようにしたものがある。また自車が停車中であるときは、電力の省力化を計るため、あるいは歩行者等の目がレーザビームに晒されるのを防止するために、送信するレーダ出力を低減、もしくは停止する機能を有するものも知られている。
後者の、自車が停車中や低速走行中にレーダ装置の出力を低減する方法として、駆動輪速度と従動輪速度とに基づきレーダ装置の出力を制御するようにし、車両が実際に停止している場合のみレーダ装置の出力を禁止するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
また、目標物体から反射されてくる受信信号のパワーが高ければ、次回送信する送信信号のパワーを低くし、逆に受信信号のパワーが低ければ、次回送信する送信信号のパワーを高くするよう、受信パワーに応じて送信パワーを制御することにより、目標物体までの測距のために必要な送信パワーにて距離測定が行えるようにし、また不必要に送信パワーを強めないようにして人体への安全性を確保したものがある(特許文献2参照)。
またこの特許文献2には、ブレーキ作動検知器、ハンドル角検知器、車速センサなどによって走行モードを検出し、例えばブレーキが作動された時は自車の前に人間が存在しているとして送信パワーを下げ、また車両がカーブ走行中である時は自車線内を走行する車両のみを測距対象とするため送信パワーを下げるようにして、不必要に強い送信パワーを照射しないようにしたことも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−84000号公報
【特許文献2】特開平7−174851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の車載レーダ装置において、特許文献1に記載されたレーダ装置では、電力の消費を抑えるため、あるいは歩行者等の目がレーザビームに晒されるのを防止するため、自車が所定速度以下(停止を含む)において送信電力を低下させるようにしている。送信電力を低下させると、受信信号の受信レベルが小さくなるため、S/Nが小さくなり、目標物体が検知しにくくなるという問題点があった。
また特許文献2に記載されたレーダ装置では、自車速に応じてレーダ出力を制御するとしても、ブレーキが作動された時、あるいはカーブ走行中のみレーダ装置の出力を下げるもので、通常に走行している状態で所定速度以下(停止を含む)になった時に、レーダ出力を下げるものでなく、電力消費を必要最小限に抑えるという点では十分でなかった。
【0006】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、自車が所定速度以下の際に送信電力を低下させて電力消費を抑えると共に、送信電力の低下に伴う受信信号のS/Nを向上させ、良好に目標物体を検知できる車載レーダ装置を得ることを目的とするも
のである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の車載レーダ装置は、連続波の信号を出力する発振手段と、連続波の信号をパルス状に区切り、パルス状の送信波を生成するスイッチ手段と、パルス状の送信波を空間に放射する送信手段と、パルス状の送信波が目標物体で反射した反射信号を受信し、受信信号として出力する受信手段と、受信信号と連続波の信号とを混合してビート信号を生成する混合手段と、ビート信号から低周波成分を除去するノイズ除去手段と、低周波成分が除去されたビート信号に基づいて、自車と目標物体までの距離を算出する信号処理手段と、自車の速度を検出する自車速検知手段で検出した自車速に応じて、パルス状の送信波の平均電力を制御する電力制御手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、自車が停車もしくは所定速度以下の際に送信電力を低下させることに伴い受信信号のS/Nが低下するレーダにおいて、ノイズ除去手段によって1/f雑音を抑えることにより、S/Nを向上させることができ、目標物体を検知しやすくすることが可能となる。
また、自車が停車もしくは所定速度以下の際に、送信波の平均電力を低下させるので、電力消費を最小限にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1および実施の形態2におけるレーダ装置の全体構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態におけるレーダ装置の信号処理手段の構成図である。
【図3】この発明の実施の形態におけるレーダ装置の、送信パルスと受信信号の様子を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態におけるレーダ装置の、ミキサで発生する1/f雑音を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態におけるレーダ装置の、送信信号と受信信号とサンプリングタイミングとの簡略的な関係の一例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態におけるレーダ装置の、メモリに蓄積されたデータの様子を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1におけるレーダ装置の動作のフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態における、送信電力の制御について説明した図である。
【図9】この発明の実施の形態1における、パルス周期を長くした様子を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態における、受信信号について説明した図である。
【図11】この発明の実施の形態2におけるレーダ装置の動作のフローチャートである。
【図12】この発明の実施の形態2における、パルス幅を短くした様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1における車載レーダ装置を図1〜図10に基づいて説明する。
この発明の実施の形態1であるレーダ装置の全体構成図を示す図1において、車載レーダ装置10は、パルス方式に準じて動作するレーダ装置であり、送信部11と受信部12
と信号処理部13とからなる。また信号処理部13には車載レーダ装置10を搭載する自車の車速を検出する自車速検知手段としての車速センサ20が接続され、この車速センサ20から自車の車速に応じた車速パルス信号を信号処理部13に対して出力するようになっている。
【0011】
送信部11は、連続波の送信信号を出力する発振器111と、発振器111からの送信信号の電力が所定電力となるように制御する発振器制御部112と、発振器111からの送信信号を2つに分配する分配器113と、分配器113で分配された一方の送信信号を入力して、信号をオンオフすることにより連続波の送信信号をパルス状に区切り、パルス状の送信波を生成するスイッチ手段114と、スイッチ手段114で生成されるパルス状の送信波のパルスの周期を制御するスイッチ制御部115と、スイッチ手段114で生成されたパルス状の送信波を空間に放射して、自車の進行方向前方にある目標物体30に向けて放射する送信手段としての送信アンテナ116を備えている。なお、発振器制御部112とスイッチ制御部115は後述するようにパルス状の送信波の平均電力を制御する電力制御手段110として機能する。
【0012】
受信部12は、自車前方の目標物体30にて反射された反射信号の電波を受信する受信手段としての受信アンテナ121と、受信アンテナ121にて受信された受信信号を入力し、分配器113で分配された連続波の送信信号の他方と混合して、ビート信号を生成する混合手段としてのミキサ122と、このミキサ122で発生した直流近傍の低い周波数に反比例して分布する1/f雑音を取り除くノイズ除去手段としてのハイパスフィルタ123と、ハイパスフィルタ123を通過したビート信号をゲイン量に基づいて増幅する受信用可変ゲインアンプ124と、受信用可変ゲインアンプ124のゲイン量を制御する受信用可変ゲインアンプ制御部125と、受信用可変ゲインアンプ124によって増幅された受信信号を入力するローパスフィルタ126と、ローパスフィルタ126を通過したアナログの受信信号をデジタル信号に変換するA/D変換器127を備えている。
【0013】
信号処理部13は、A/D変換器127により変換された受信信号のデジタル信号をレンジゲート毎に区分して蓄積するメモリ131と、メモリ131に蓄積されたデジタルデータをレンジゲート毎にFFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)処理するFFT演算部132と、FFT演算部132で処理されたFFT結果を入力して自車と目標物体30までの距離を測定するCPU133を備えている。
【0014】
更に、信号処理部13のCPU133は、図2に示すように、FFT演算部132で処理されたFFT結果を入力して目標物体30までの距離を測定する距離測定手段134の他に、ビート信号に基づいて受信信号の受信レベルを算出する受信レベル算出手段135と、車速センサ20で検出した自車速が自車の停止もしくは所定の速度以下となっているか否かを判定する速度判定手段136と、速度判定手段136での判定が自車の停止もしくは所定の速度以下であった場合、または受信レベル算出手段135で算出された受信レベルが所定しきい値にマージンを持たせた値(後述する)に比べて大きい信号レベルであった場合、もしくは上記した両方の条件を満たした場合に、電力制御手段110にパルス状の送信波の平均電力を低下させる制御信号を送る制御信号送信手段137を有している。
【0015】
次に図1に示した車載レーダ装置の全体構成図における動作を図3〜図6に基づいて説明する。
図1に示す発振器制御部112で発振器111から所定の電力を出力するように制御し、発振器111から連続波の送信信号が発生される。発振器111からの送信信号は分配器113において、スイッチ114とミキサ122に電力(送信信号)を分配する。スイッチ114に送られた送信信号は、スイッチ制御部115からの信号でオンオフ制御され、スイッチ114において図3(a)に示すように所定のオン時間で区切られ、すなわちオン時間のパルス幅τをもつ信号とし、送信アンテナ116から空間に電波として放射される。
【0016】
その後、自車前方の目標物体30にて反射された該電波は、受信アンテナ121にて受信され、受信信号としてミキサ122に入力される。ミキサ122では受信信号が分配器113で分配された送信信号と混合される。ミキサ122に使用される半導体素子では、一般的に結晶構造中の不純物や欠陥の影響により、図4に示すように直流近傍に周波数に反比例して分布する1/f雑音が発生する。ミキサ122で混合された受信信号と1/f雑音はハイパスフィルタ123に入力される。ハイパスフィルタ123はカットオフ周波数をパルス信号の繰り返し周波数よりも低くしてあるため、受信信号のパルス信号はハイパスフィルタを123通過し、1/f雑音は上記の通り直流近傍に分布する低周波信号であるため、ハイパスフィルタ123において雑音成分が低減され、S/Nが向上する。
【0017】
その後、受信用可変ゲインアンプ制御部125で受信用可変ゲインアンプ124のゲイン量を制御し、受信用可変ゲインアンプ124によりミキサ122で混合された受信信号は増幅される。次に受信用可変ゲインアンプ124によって増幅された受信信号は、ローパスフィルタ126に入力される。ローパスフィルタ126からは、図3(b)に示すように立ち上がりが遅れた形で出力され、A/D変換器127によってデジタル信号に変換される。その様子を図5に示す。
【0018】
図5に示すように、パルスの送信信号に対し、目標物体30までの距離Rに応じた遅延時間Td=2R/c(cは光速)だけ遅れて受信信号が受信されている。A/D変換器127は、送信信号の各パルス立下りを基準とし、サンプリング周期Tsで受信信号をデジタルデータに変換する。
ここで、送信信号の第i番目のパルス(送信パルスi)の立下りからr×Tsだけ遅れたサンプリングタイミングで得られたデジタルデータを、airとする。この実施例ではrは0〜7までの整数としており、rは送信パルスからの遅延時間、すなわち距離に対応していることからレンジゲートと呼ぶ。以上のように得られたデジタルデータは、図6に示すようにレンジゲート毎に区分けされ、メモリ131に蓄積される。この例では、各レンジゲートに蓄積されるデータ数、すなわち送信パルスの数は256個としている。
【0019】
以上のようにして蓄積されたデジタルデータは、FFT演算器132でレンジゲート毎にFFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)が行われ、そのFFT結果はCPU133に入力される。CPU133では、各レンジゲートのFFT結果が参照され、信号が存在すると判定されたレンジゲートrに対応した距離、すなわちc×r×Ts/2を目標物体30までの距離として測定する。具体的には、各レンジゲートのFFT結果に対し所定のしきい値を設け、しきい値を超えるピーク信号がある場合に信号が存在すると判定し、目標物体があるか否かを判定する。
【0020】
次に、この発明の実施の形態1の車載レーダ装置における送信波の電力制御について、その動作を図7に示すフローチャートに沿って図8〜図10に基づいて説明する。
図7のステップS1では、図1の車速センサ20が自車の速度に応じた車速パルス信号をCPU133に対して出力し、その後、CPU133の速度判定手段136は車速センサ20からの車速パルスに基づいて、自車が所定の速度以下(停止を含む)となっているか否かを判定する。ここで、所定の速度以下と判定された場合はCPU133に所定速度以下となったことを記憶する。
ステップS1において自車が所定速度より速い場合は、ステップS2に進む。
【0021】
ステップS2において、送信アンテナ116から送信される送信電力は図8(a)の高
速走行時の電力Phとし、ステップS3に進む。ステップS3では、CPU133の距離測定手段134において、目標物体30があると判定された場合、その信号が存在すると判定されてレンジゲートrに対応した距離c×r×Ts/2の関係から目標物体30までの距離を算出し、ステップS4において目標物体30までの距離情報を外部に出力する。
【0022】
ステップS1において、自車が所定速度以下である場合、ステップS5に進み、CPU133の速度判定手段136において、所定の速度以下となったのが連続であるか否かを判定する。ステップS5において、所定の速度以下となったのが連続でなければ、ステップS6に進む。
ステップS6において、スイッチ制御部115がスイッチ114を制御し、図9のようにパルス状の送信信号のパルス周期Tが長くなるようにパルス動作する。ここで、パルス幅τとパルス周期Tとすると、送信信号の平均電力はτ/Tの関係により低下させることができる。
【0023】
次にステップS7において、発振器制御部112により、発振器111から出力する電力を一定量低下させ、送信電力が図8(b)に示すように所定の電力Pmとなるようにし、送信アンテナ116から送信する平均電力を低下させる。この時の送信電力設定をCPU133において記憶する。
次にステップS8で、CPU133の受信レベル算出手段135において受信信号の受信レベルを算出する。この受信レベルをPrとする。
【0024】
次にステップS9において、図10(a)のように受信信号の信号レベルが(所定しきい値+α)以上である場合は、ステップS10において、発振器制御部112により、発振器111から送信する電力を図8(c)に示すように、図8(b)に示す電力PmからさらにPr−(所定しきい値+α)分だけ低下させた電力Piとする。この時の送信電力設定をCPU133において記憶する。
ステップS3に進み、前述と同様にCPU133において目標物体30までの距離を算出し、ステップS4において目標物体30までの距離情報を外部に出力する。
【0025】
ここで、ステップS10において送信する電力を低下させた際に、受信レベルがしきい値のギリギリとならないようにαだけマージンを持たせることにより、受信レベルの変動により、しきい値を下回らないようにし、目標物体が未検知とならないようにする。
またステップS9において、図10(b)のように受信信号の信号レベルが所定しきい値以上、且つ、(所定しきい値+α)未満である場合は、ステップS3に進み、CPU133において目標物体30までの距離を算出し、ステップS4において目標物体30までの距離情報を外部に出力する。
【0026】
また、ステップS9において、図10(c)のように受信信号の信号レベルが所定しきい値未満である場合は、CPU133において目標物体30がないと判定され、目標物体30までの距離を算出できないため処理を終了する。
また、ステップS5において所定の速度以下となったのが連続であれば、ステップS11において、CPU133で記憶している設定の送信電力を保持し、ステップS8へ進み、それ以降の処理は上記と同様なので省略する。
【0027】
以上のようにして、自車が停止もしくは所定速度以下の際に、受信レベルに応じて発振器111から出力する連続波の送信電力を低下させ平均電力を低下することにより、真に必要な量だけ電力消費を低下させることが可能となり、効果的に電力の消費を抑えることができる。
さらに、受信部12の1/f雑音を抑えることにより、低速時に送信電力を低下させてもS/Nを向上させることが可能となる。
またさらに、送信信号のパルス周期を長くすることにより、パルスの平均電力を小さくし、電力消費をさらに低下させることが可能となる。
【0028】
なお以上の実施の形態1の説明では、送信信号の平均電力を低下するのに、スイッチ114のオフ期間を長くして送信信号のパルス周期を長くすることと、発振器111から出力する連続波の送信電力を低下させることの2つを併用したが、そのどちらか一方を用いて送信信号の平均電力を低下させるようにしてもよい。
【0029】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2における車載レーダ装置を図11〜図12に基づいて説明する。この発明の実施の形態2のレーダ装置の全体構成図については図1と同じであるが、送信部11のスイッチ制御部115は、実施の形態1ではパルス状の送信波のパルス周期を制御していたが、実施の形態2ではパルス周期は同じで、パルス幅を制御するようにしたものである。その他の構成は図1と同じにつき説明を省略する。またCPUの構成については図2と同じであるので、その説明を省略する。
したがって車載レーダ装置の全体構成図における動作は実施の形態1と同じであり、この発明の実施の形態2の車載レーダ装置における送信波の電力制御についてのみ、その動作を図11に示すフローチャートに沿って図12に基づいて説明する。
【0030】
図5のステップS101では、図1の車速センサ20が自車の速度に応じた車速パルス信号をCPU133に対して出力し、その後、CPU133の速度判定手段136は車速センサ20からの車速パルスに基づいて、自車が所定の速度以下(停止を含む)となっているか否かを判定する。ここで、所定の速度以下と判定された場合はCPU133に所定速度以下となったことを記憶する。
ステップS101において自車が所定速度より速い場合は、ステップS102に進む。
【0031】
ステップS102において、送信アンテナ116から送信される送信電力は図8(a)の高速走行時の電力Phとし、ステップS103に進む。ステップS103では、CPU133の距離測定手段134において、目標物体30があると判定された場合、その信号が存在すると判定されてレンジゲートrに対応した距離c×r×Ts/2の関係から目標物体30までの距離を算出し、ステップS104において目標物体30までの距離情報を外部に出力する。
【0032】
ステップS101において、自車が所定速度以下である場合、ステップS105に進み、CPU133の速度判定手段136において、所定の速度以下となったのが連続であるか否かを判定する。ステップS105において、所定の速度以下となったのが連続でなければ、ステップS106に進む。
ステップS106において、スイッチ制御部115がスイッチ114を制御し、図12のように送信信号のパルス幅τが短くなるようする。この場合パルス周期Tは変えないで同じになるようにしておく。ここで、パルス幅τとパルス周期Tとすると、送信信号の平均電力はτ/Tの関係により低下させることができる。
【0033】
次にステップS107において、発振器制御部112により、発振器111から出力する電力を一定量低下させ、送信電力が図8(b)に示すように所定の電力Pmとなるようにし、送信アンテナ116から送信する平均電力を低下させる。この時の送信電力設定をCPU133において記憶する。
次にステップS108で、CPU133の受信レベル算出手段135において受信信号の受信レベルを算出する。この受信レベルをPrとする。
【0034】
次にステップS109において、図10(a)のように受信信号の信号レベルが(所定
しきい値+α)以上である場合は、ステップS110において、発振器制御部112により、発振器111から送信する電力を図8(c)に示すように、図8(b)に示す電力PmからさらにPr−(所定しきい値+α)分だけ低下させた電力Piとする。この時の送信電力設定をCPU133において記憶する。
ステップS103に進み、前述と同様にCPU133において目標物体30までの距離を算出し、ステップS104において目標物体30までの距離情報を外部に出力する。
【0035】
ここで、ステップS110において送信する電力を低下させた際に、受信レベルがしきい値のギリギリとならないようにαだけマージンを持たせることにより、受信レベルの変動により、しきい値を下回らないようにし、目標物体が未検知とならないようにする。
またステップS109において、図10(b)のように受信信号の信号レベルが所定しきい値以上、且つ、(所定しきい値+α)未満である場合は、ステップS103に進み、CPU133において目標物体30までの距離を算出し、ステップS104において目標物体30までの距離情報を外部に出力する。
【0036】
また、ステップS109において、図10(c)のように受信信号の信号レベルが所定しきい値未満である場合は、CPU133において目標物体30がないと判定され、目標物体30までの距離を算出できないため処理を終了する。
また、ステップS105において所定の速度以下となったのが連続であれば、ステップS111において、CPU133で記憶している設定の送信電力を保持し、ステップS108へ進み、それ以降の処理は上記と同様なので省略する。
【0037】
以上のようにして、自車が停止もしくは所定速度以下の際に、受信レベルに応じて発振器111から出力する連続波の送信電力を低下させ平均電力を低下することにより、真に必要な量だけ電力消費を低下させることが可能となり、効果的に電力の消費を抑えることができる。
さらに、受信部12の1/f雑音を抑えることにより、低速時に送信電力を低下させてもS/Nを向上させることが可能となる。
またさらに、送信信号のパルスの幅を短くすることにより、パルスの平均電力を小さくし、電力消費をさらに低下させることが可能となる。
【符号の説明】
【0038】
10:車載レーダ装置 11:送信部
12:受信部 13:信号処理部(信号処理手段)
20:車速センサ(自車速検知手段) 30:目標物体
110:電力制御手段 111:発振器(発振手段)
112:発振器制御部(電力制御手段) 113:分配器
114:スイッチ(スイッチ手段) 115:スイッチ制御部(電力制御手段)
116:送信アンテナ(送信手段)
121:受信アンテナ(受信手段) 122:ミキサ(混合手段)
123:ハイパスフィルタ(ノイズ除去手段)
124:受信用可変ゲインアンプ 125:受信用可変ゲインアンプ制御部
126:ローパスフィルタ 127:A/D変換器
131:メモリ 132:FFT演算器
133:CPU 134:距離測定手段
135:受信レベル算出手段 136:速度判定手段
137:制御信号送信手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続波の信号を出力する発振手段と、前記連続波の信号をパルス状に区切り、パルス状の送信波を生成するスイッチ手段と、前記パルス状の送信波を空間に放射する送信手段と、前記パルス状の送信波が目標物体で反射した反射信号を受信し、受信信号として出力する受信手段と、前記受信信号と前記連続波の信号とを混合してビート信号を生成する混合手段と、前記ビート信号から低周波成分を除去するノイズ除去手段と、前記低周波成分が除去されたビート信号に基づいて、自車と前記目標物体までの距離を算出する信号処理手段と、前記自車の速度を検出する自車速検知手段で検出した自車速に応じて、前記パルス状の送信波の平均電力を制御する電力制御手段を備えたことを特徴とする車載レーダ装置。
【請求項2】
前記電力制御手段は、自車の停止もしくは所定の速度以下であった場合に、前記パルス状の送信波の平均電力を低下させることを特徴とする請求項1に記載の車載レーダ装置。
【請求項3】
前記信号処理手段はビート信号に基づいて受信信号の受信レベルを算出する受信レベル算出手段と、前記自車速検知手段において検出した自車速が自車の停止もしくは所定の速度以下となっているか否かを判定する速度判定手段とを有し、前記電力制御手段は、前記速度判定手段での判定が自車の停止もしくは所定の速度以下であった場合で、且つ前記受信レベル算出手段で算出された受信レベルが所定しきい値にマージンを持たせた値に比べて大きい信号レベルである場合に、前記パルス状の送信波の平均電力をさらに低下させることを特徴とする請求項2に記載の車載レーダ装置。
【請求項4】
前記発振手段は出力する連続波信号の電力が可変であり、前記電力制御手段は、前記発振手段から出力する連続波信号の電力を低下させることにより、前記パルス状の送信波の平均電力を低下させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車載レーダ装置。
【請求項5】
前記電力制御手段は、前記パルス状の送信波を生成するスイッチ手段によるパルスの周期を長くすることにより、前記パルス状の送信波の平均電力を低下させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の車載レーダ装置。
【請求項6】
前記電力制御手段は、前記パルス状の送信波を生成するスイッチ手段によるパルスの幅を短くすることにより、前記パルスの送信波の平均電力を低下させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の車載レーダ装置。
【請求項7】
ノイズ除去手段は、周波数に反比例して分布する1/f雑音を除去するハイパスフイルタで構成された請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の車載レーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−256027(P2010−256027A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102950(P2009−102950)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】