説明

車載用のワイヤハーネスおよびその組立方法

【課題】複数の仮結束ハーネスをワイヤハーネス組立作業台外で高い保持力で本結束できるようにする。
【解決手段】複数の仮結束ハーネスを集束して本結束して組み立てた車載用のワイヤハーネスであって、締結用本体からバンドを突設していると共に、前記締結用本体の一側面に係止部を設けていると共に対向する他側面に被係止部を設けている樹脂成形品のクランプを用い、該クランプの前記バンドを仮結束ハーネスの電線群に予め巻き付けており、前記複数の仮結束ハーネスを束ね、これら仮結束ハーネスに取り付けている前記クランプを並設し、隣接する一方のクランプの係止部を他方のクランプの被係止部に係止して連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載用のワイヤハーネスおよびその組立方法に関し、詳しくは、ワイヤハーネス組立作業台を用いることなく、複数の仮結束ハーネスを本結束してワイヤハーネスを組み立てることが出来るようにするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用のワイヤハーネスは、接続する電装品毎等により電線群を束ねて仮結束ハーネスを形成しておき、複数の仮結束ハーネスをワイヤハーネス組立作業台上で布線治具を用いて布線した後、テープ巻き等により本結束し、所要の部品(車体係止用のクランプやプロテクタ等)を取り付けることによりワイヤハーネスを組み立てている。
【0003】
例えば、本出願人は、特開平8−249953号公報(特許文献1)において本結束した仮結束ハーネスに緩みが生じにくい高い保持力を有する結束構造として、図5に示すような布線治具2をワイヤハーネス組立作業台(所謂 図板)1上に立設し、該布線治具2の各電線保持通路に複数本の仮結束ハーネス3を並列保持させて布線した後、仮結束ハーネス3の集束体4を所要位置にてテープ巻きで本結束することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−249953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記のようなテープ巻きによる本結束は、作業者の技能等によって保持力にばらつきが生じる場合がある。また、前記本結束を行うためにはワイヤハーネス組立作業台1上に立設した布線治具で仮結束ハーネス3の位置調整を行う必要があり、今後ワイヤハーネス組立作業台上での作業工数を削減してワイヤハーネスの組立作業性を向上させるためには、ワイヤハーネス組立作業台外でも高保持力を有する本結束が可能な構造にすることが重要である。前記結束構造ではこの点についても改善の余地がある。
また、ワイヤハーネス組立作業台を作成すると、手数およびコストがかかり、ワイヤハーネスが多品種少数ロットの場合には、ワイヤハーネス組立作業台を用いることなくワイヤハーネスを組み立てることができるようにすることが望まれている。
【0006】
本発明は、複数の仮結束ハーネスを、ワイヤハーネス組立作業台を用いることなく、常に高い保持力で本結束できることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、第1の発明は、複数本の仮結束ハーネスを集束して本結束して組み立てた車載用のワイヤハーネスであって、
締結用本体からバンドを突設していると共に、前記締結用本体の一側面に係止部を設けていると共に対向する他側面に被係止部を設けている樹脂成形品のクランプを用い、該クランプの前記バンドを仮結束ハーネスの電線群に予め巻き付けており、
前記複数の仮結束ハーネスを束ね、これら仮結束ハーネスに取り付けている前記クランプを並設し、隣接する一方のクランプの係止部を他方のクランプの被係止部に係止して連結していることを特徴とする車載用のワイヤハーネスを提供している。
【0008】
前記のように、第1の発明では、バンドを設けたクランプの締結用本体の一側面および対向する他側面に係止部および被係止部を設け、仮結束ハーネスにバンドを巻き付けて固定したクランプ同士を並列状態で連結させる構成としている。即ち、前記クランプの締結用本体から突設するバンドによって各仮結束ハーネスの電線群を所定の締付力でクランプにしっかりと締結固定できると共に、該仮結束ハーネスを締結固定したクランプ同士も前記係止部と被係止部との係合によって強固に連結することができる。このような2段階の固定手段を備えたクランプを用いることで、複数本の仮結束ハーネスを常に高い保持力で本結束することができ、結束した仮結束ハーネスの緩みや位置ズレを効果的に防止することができる。また、前記構成によれば、ワイヤハーネス組立作業台上に立設した布線治具がなくても仮結束ハーネスを高保持力で本結束することが可能となる。
【0009】
前記クランプの締結用本体には、仮結束ハーネスの電線群に巻き付けたバンドを貫通させて係止するバンド係止穴を設け、該係止穴の内面に設けた係止爪を前記バンド表面の鋸歯状の被係止溝に係止させる構成とすることが好ましい。
【0010】
また、前記係止部および被係止部の形状は特に限定されないが、例えば、前記締結用本体の一側面より係止部を突設する一方、前記締結用本体の他側面には隣接するクランプの前記係止部が挿入、嵌合される凹状の被係止部を設けることが好ましい。より強固に連結するために、前記係止部の先端には弾性変形させながら挿入される係止凸部を形成しておくと共に、前記被係止部の奥部には隣接するクランプの前記係止凸部が弾性復帰して嵌合する被係止凹部を設けておくことも好ましい。また、前記係止部および被係止部は、締結用本体の一側面および他側面の中央位置付近に配置されていることが好ましい。
【0011】
第2の発明は、複数の仮結束ハーネスを集束して本結束して組み立てた車載用のワイヤハーネスであって、
基板の長さ方向の両側をテープ巻部とすると共にその間の上面にバンド貫通穴を設けた連結部を突設したクランプを用い、該クランプの基板を前記仮結束ハーネスにテープ巻き固着し、
前記複数の仮結束ハーネスを束ね、これら仮結束ハーネスに取り付けている前記クランプを軸直角方向に並設し、前記連結部のバンド挿通穴にタイバンドのバンドを挿通して締結していることを特徴とする車載用のワイヤハーネスを提供している。
【0012】
前記構成によれば、クランプを構成する基板の長さ方向の両側にテープ巻部を設けているため、仮結束ハーネスの電線群を前記クランプに両側2ヶ所でしっかりと締結固定することができる。さらに、前記基板のテープ巻部間の上面にバンド貫通穴を備えた連結部を設けているため、前記仮結束ハーネスを締結固定したクランプ同士も、各連結部の連通するバンド貫通穴にタイバンドを貫通、締結することによって、所定の固定力で連結することができる。このような2段階の固定手段を備えたクランプを用いることで、第1の発明と同様、複数本の仮結束ハーネスを常に高い保持力で本結束することができ、結束した仮結束ハーネスの緩みや位置ズレを効果的に防止することができる。また、ワイヤハーネス組立作業台上に立設した布線治具がなくても高保持力を有する本結束が可能となるため、ワイヤハーネス組立作業台上での作業工数を低減することができる。
【0013】
前記基板の上面に突設する連結部には軸直角方向にバンドを貫通させるバンド貫通穴が設けられており、該連結部は基板の中央位置付近に配置されていることが好ましい。また、前記連結部のバンド貫通穴に挿通するタイバンドは、バンドの一端に、該バンドを挿通係止する係止用本体を設けた一体成形品からなる汎用品を用いることができる。
【0014】
第3の発明は、複数の仮結束ハーネスを集束して本結束して組み立てた車載用のワイヤハーネスであって、
基板の長さ方向の両側をテープ巻部とすると共に、該基板の幅方向の一側面に係止部を突設すると共に他側面に被係止部を設けたクランプを用い、該クランプの基板を前記仮結束ハーネスにテープ巻き固着し、
前記複数の仮結束ハーネスを束ね、これら仮結束ハーネスに取り付けている前記クランプを軸直角方向に並設し、隣接する一方のクランプの係止部を他方のクランプの被係止部に係止していることを特徴とする車載用のワイヤハーネスを提供している。
【0015】
前記構成によれば、クランプを構成する基板の長さ方向の両側にテープ巻部を設けているため、各仮結束ハーネスの電線群を前記クランプに2ヶ所でしっかりと締結固定することができる。さらに、基板の幅方向の一側面に係止部を突設すると共に他側面に被係止部を設けているため、前記仮結束ハーネスを締結固定したクランプ同士も、前記係止部と被係止部との係合によって強固に連結することができる。このような2段階の固定手段を備えたクランプを用いることで、第1、第2の発明と同様、複数本の仮結束ハーネスを常に高い保持力で本結束することができ、結束した仮結束ハーネスの緩みや位置ズレを効果的に防止することができる。また、ワイヤハーネス組立作業台上に立設した布線治具がなくても高保持力を有する本結束が可能となるため、ワイヤハーネス組立作業台上での作業工数を低減あるいは、ワイヤハーネス組立作業台なしでワイヤハーネスを組み立てることができる。
【0016】
前記係止部および被係止部の形状等は特に限定されないが、例えば、前記基板幅方向の一側面より係止部を突設する一方、他側面には隣接するクランプの前記係止部が挿入、嵌合される凹状の被係止部を設けることが好ましい。より強固に連結するために、前記係止部の上面に係止突起を設けておくと共に、前記被係止部の上面には隣接するクランプの前記係止突起が挿通係止される被係止穴を穿設しておくことも好ましい。また、前記係止部および被係止部は、前記基板幅方向に位置する一側面および他側面の基板長さ方向中央位置付近に設けられることが好ましい。
【0017】
前記第1〜第3の発明において、前記仮結束ハーネスへの前記クランプの取付位置は、本結束状態での分岐位置であることが好ましい。
【0018】
本結束状態での分岐位置では、結束された仮結束ハーネスが屈曲力を受けて緩みや位置ズレを生じやすい。したがって、保持力の高い前記構成のクランプを本結束状態での分岐位置に取り付けることにより、結束した仮結束ハーネスの緩みや位置ズレを効果的に防止することができる。
【0019】
第4の発明は前記車載用のワイヤハーネスの組立方法であって、前記各仮結束ハーネスへのクランプの取り付け、および該クランプを取り付けた仮結束ハーネスのクランプ同士の連結はワイヤハーネス組立作業台外で行っている車載用のワイヤハーネスの組立方法を提供している。
【0020】
前記構成のクランプを用いることによりワイヤハーネス組立作業台上に立設した布線治具がなくても複数本の仮結束ハーネスを高保持力で本結束することができる。即ち、各仮結束ハーネスへのクランプの取り付けや各仮結束ハーネスに取り付けたクランプ同士の連結をワイヤハーネス組立作業台外で行うことにより、ワイヤハーネス組立作業台上での作業工数を低減し、ワイヤハーネスの組立作業性を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
前述したように、本発明によれば、仮結束ハーネスを締結固定する手段と仮結束ハーネスを締結固定したクランプ同士を連結固定する手段とを備えたクランプを用いているため、複数本の仮結束ハーネスを常に高い保持力で本結束することができ、結束した仮結束ハーネスの緩みや位置ズレを効果的に防止することができる。また、各仮結束ハーネスへのクランプの取り付けや各仮結束ハーネスに取り付けたクランプ同士の連結をワイヤハーネス組立作業台外で行うことができるため、ワイヤハーネス組立作業台上での作業工数を低減しワイヤハーネスの組立作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(A)は第1実施形態の車載用のワイヤハーネスを形成する複数本の仮結束ハーネスを本結束するクランプを示す概略斜視図、(B)はクランプを仮結束ハーネスに取り付けた状態を示す概略斜視図、(C)は仮結束ハーネスに取り付けたクランプ同士を連結し、仮結束ハーネスの本結束が完了した状態を示す概略断面図である。
【図2】クランプの取付位置を示すワイヤハーネスの要部拡大図である。
【図3】(A)は第2実施形態の車載用のワイヤハーネスを形成する複数本の仮結束ハーネスを本結束するクランプ(基板)を示す概略斜視図、(B)はクランプを仮結束ハーネスに取り付けた状態を示す概略斜視図、(C)は仮結束ハーネスに取り付けたクランプ同士を連結し、仮結束ハーネスの本結束が完了した状態を示す概略斜視図である。
【図4】(A)は第3実施形態の車載用のワイヤハーネスを形成する複数本の仮結束ハーネスを本結束するクランプ(基板)を示す概略斜視図、(B)はクランプを仮結束ハーネスに取り付けた状態を示す概略斜視図、(C)は仮結束ハーネスに取り付けたクランプ同士を連結し、仮結束ハーネスの本結束が完了した状態を示す概略断面図である。
【図5】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1および図2に本発明の第1実施形態を示す。
本実施形態では、複数本の仮結束ハーネス11を集束して本結束することにより車載用のワイヤハーネス10を形成しており、複数本の仮結束ハーネス11の集束、本結束を行うために、図1(A)に示すような樹脂成形品からなるクランプ12を用いている。
【0024】
クランプ12は直方体状の締結用本体13を備え、締結用本体13の上面13cに載置した仮結束ハーネス11に巻き付けるバンド14を前記締結用本体13の一側面13aの上辺近接位置から突設している。また、仮結束ハーネス11に巻き付けたバンド14を締結用本体13の対向する他側面13bから一側面13aへと貫通させて係止するバンド係止穴15を締結用本体13に設け、該バンド係止穴15の内面に設けた係止爪15aをバンド14表面に設けた鋸歯状の被係止溝14aに係止させることにより、バンド14で仮結束ハーネス11を締結固定する構成としている。
【0025】
また、締結用本体13の一側面13aおよび他側面13bには、仮結束ハーネス11に取り付けたクランプ12同士を連結するための係止部16および被係止部17をそれぞれ設けている。即ち、締結用本体13の一側面13aには、前記バンド係止穴15の下部側中央位置より係止部16を突設している一方、他側面13bの対応位置には隣接するクランプ12の係止部16を挿入、嵌合させる凹状の被係止部17を設けている。また、係止部16の先端には弾性変形させながら隣接するクランプ12の被係止部17に挿入する係止凸部16aを形成していると共に、被係止部17の奥部には隣接するクランプ12の係止凸部16aが弾性復帰して嵌合する被係止凹部17aを設けている。
【0026】
以下、前記クランプ12を用いた仮結束ハーネス11の本結束について説明する。
まず、複数本(本実施形態では3本)の仮結束ハーネス11に前記クランプ12をそれぞれ取り付ける[図1(B)参照]。具体的には、位置決め保持したクランプ12の締結用本体13の上面13cに仮結束ハーネス11を押し当て、該仮結束ハーネス11の外周にバンド14を巻き付けてその先端側をバンド係止穴15に貫通させる。貫通させたバンド14に締結工具等で所定の締付力を加え、バンド係止穴15内面の係止爪15aをバンド14表面の被係止溝14aに係止させることにより、バンド14で仮結束ハーネス11を締結固定する。なお本実施形態では、各仮結束ハーネス11へのクランプ12の取付位置を本結束状態での分岐位置(図2参照)としている。
【0027】
バンド14の先端を出代2〜3mm程度残してカットした後、仮結束ハーネス11に取り付けたクランプ12同士を並列させて連結する。具体的には、クランプ12の係止部16を隣接するクランプ12の被係止部17に挿入し、係止部16先端の係止凸部16aを被係止部17奥部の被係止凹部17aに嵌合させることにより、隣接するクランプ12同士を連結している。前記作業を繰り返し、複数個(本実施形態では3個)のクランプ12を連結したところで、仮結束ハーネス11の本結束が完了する[図1(C)参照]。なお、本実施形態では、前記仮結束ハーネス11へのクランプ12の取り付けおよび仮結束ハーネス11に取り付けたクランプ12同士の連結をワイヤハーネス組立作業台外で行っている。
【0028】
前記のように、バンド14を設けたクランプ12の締結用本体13の一側面13aおよび対向する他側面13bに係止部16および被係止部17を設け、仮結束ハーネス11にバンド14を巻き付けて固定したクランプ12同士を並列状態で連結させる構成としている。即ち、クランプ12の締結用本体13から突設するバンド14によって各仮結束ハーネス11の電線群を所定の締付力でクランプ12に締結固定できると共に、仮結束ハーネス11を締結固定したクランプ12同士も係止部16と被係止部17との係合によって強固に連結することができる。このような2段階の固定手段を備えたクランプ12を用いることで、複数本の仮結束ハーネス11を常に高い保持力で本結束することができ、結束した仮結束ハーネス11の緩みや位置ズレを効果的に防止することができる。また、ワイヤハーネス組立作業台外でも高保持力を有する本結束が可能となるため、ワイヤハーネス組立作業台上での作業工数を低減してワイヤハーネスの組立作業性を高めることができる。
【0029】
図3に第2実施形態を示す。
第2実施形態では図3に示すクランプ22を用いて仮結束ハーネス11の本結束を行った点以外は第1実施形態と同様としている。
クランプ22は、図3に示すように、長さ方向の両側にテープ巻部24を設けた樹脂製の基板23からなり、基板23の長さ方向に沿って基板下面23dに押し当てるように配置した仮結束ハーネス11と基板23とを前記テープ巻部24でテープ(27)巻き固着することにより、仮結束ハーネス11にクランプ22を取り付ける[図3(B)参照]。
【0030】
また、仮結束ハーネス11に取り付けたクランプ22同士を軸直角方向に連結するために、前記基板23の上面23cには、両側のテープ巻部24間の中央位置に連結部25を突設していると共に、該連結部25には軸直角方向にタイバンド28を貫通させるバンド貫通穴26を設けている。タイバンド28としては、バンド29の一端に係止用本体30を設けた一体成形品を用い、連結させる複数個(本実施形態では3個)のクランプ22のバンド貫通穴26にタイバンド28を貫通させて締結する。詳しくは、各バンド貫通穴26にタイバンド28のバンド29を貫通させた後、該バンド29の先端側をタイバンド28の係止用本体30に設けたバンド係止穴31に貫通させ、該バンド係止穴31の内面に突設した係止爪(図示せず)をバンド29表面に設けた鋸歯状の被係止溝(図示せず)に係止させることによりタイバンド28を締結して、クランプ22同士を連結させる[図3(C)参照]。
【0031】
前記のように、クランプ22を構成する基板23の長さ方向の両側にテープ巻部24を設けているため、仮結束ハーネス11の電線群をクランプ22に両側2ヶ所でしっかりと締結固定することができる。さらに、基板23のテープ巻部24間の上面にバンド貫通穴26を備えた連結部25を設けているため、仮結束ハーネス11を締結固定したクランプ22同士も、各連結部25のバンド貫通穴26にタイバンド28を貫通、締結することによって、所定の固定力で連結することができる。このような2段階の固定手段を備えたクランプ22を用いることで、第1実施形態と同様、複数本の仮結束ハーネス11を常に高い保持力で本結束することができ、結束した仮結束ハーネス11の緩みや位置ズレを効果的に防止することができる。また、ワイヤハーネス組立作業台外で仮結束ハーネスを高保持力で本結束できる。
【0032】
図4に第3実施形態を示す。
第3実施形態では図4に示すクランプ32を用いて仮結束ハーネス11の本結束を行った点以外は第1実施形態と同様としている。
クランプ32は、図4に示すように、長さ方向の両側にテープ巻部34を設けた樹脂製の基板33からなり、基板33の長さ方向に沿って基板下面33dに押し当てるように配置した仮結束ハーネス11と基板33とを前記テープ巻部34でテープ(37)巻き固着することにより、仮結束ハーネス11にクランプ32を取り付ける[図4(B)参照]。
【0033】
また、仮結束ハーネス11に取り付けたクランプ32同士を軸直角方向に連結するために、基板33の幅方向の一側面33aおよび他側面33bに係止部35および被係止部36をそれぞれ設けている。即ち、基板33の一側面33aには基板長さ方向の中央位置より段差をつけた係止部35を突設している一方、他側面33bの対応位置には隣接するクランプ32の係止部35が嵌合する凹状の被係止部36を設けている。また、係止部35の先端側上面に係止突起35aを設けていると共に、被係止部36の内方側上面には隣接するクランプ32の係止突起35aが挿通係止される被係止穴36aを設けている。
隣接させるクランプ32同士を前記係止部35と被係止部36との係合によって連結し、複数個(本実施形態では3個)のクランプ32を連結したところで、仮結束ハーネス11の本結束が完了する[図4(C)参照]。
【0034】
前記のように、第3実施形態においてもクランプ32を構成する基板33の長さ方向の両側にテープ巻部34を設けているため、各仮結束ハーネス11の電線群をクランプ32に2ヶ所でしっかりと締結固定することができる。さらに、基板33の幅方向の一側面33aに係止部35を突設すると共に他側面33bに被係止部36を設けているため、仮結束ハーネス11を締結固定したクランプ32同士も、係止部35と被係止部36との係合によって強固に連結することができる。このような2段階の固定手段を備えたクランプ32を用いることで、第1、第2実施形態と同様、複数本の仮結束ハーネス11を常に高い保持力で本結束することができ、結束した仮結束ハーネス11の緩みや位置ズレを効果的に防止することができる。また、ワイヤハーネス組立作業台外で仮結束ハーネスを高保持力で本結束できる。
【符号の説明】
【0035】
10 車載用のワイヤハーネス
11 仮結束ハーネス
12、22、32 クランプ
13 締結用本体
13a 一側面
13b 他側面
14 バンド
16、35 係止部
17、36 被係止部
23、33 基板
23c 上面
33a 一側面
33b 他側面
24、34 テープ巻部
25 連結部
26 バンド貫通穴
28 タイバンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の仮結束ハーネスを集束して本結束して組み立てた車載用のワイヤハーネスであって、
締結用本体からバンドを突設していると共に、前記締結用本体の一側面に係止部を設けていると共に対向する他側面に被係止部を設けている樹脂成形品のクランプを用い、該クランプの前記バンドを仮結束ハーネスの電線群に予め巻き付けており、
前記複数の仮結束ハーネスを束ね、これら仮結束ハーネスに取り付けている前記クランプを並設し、隣接する一方のクランプの係止部を他方のクランプの被係止部に係止して連結していることを特徴とする車載用のワイヤハーネス。
【請求項2】
複数の仮結束ハーネスを集束して本結束して組み立てた車載用のワイヤハーネスであって、
基板の長さ方向の両側をテープ巻部とすると共にその間の上面にバンド貫通穴を設けた連結部を突設したクランプを用い、該クランプの基板を前記仮結束ハーネスにテープ巻き固着し、
前記複数の仮結束ハーネスを束ね、これら仮結束ハーネスに取り付けている前記クランプを軸直角方向に並設し、前記連結部のバンド挿通穴にタイバンドのバンドを挿通して締結していることを特徴とする車載用のワイヤハーネス。
【請求項3】
複数の仮結束ハーネスを集束して本結束して組み立てた車載用のワイヤハーネスであって、
基板の長さ方向の両側をテープ巻部とすると共に、該基板の幅方向の一側面に係止部を突設すると共に他側面に被係止部を設けたクランプを用い、該クランプの基板を前記仮結束ハーネスにテープ巻き固着し、
前記複数の仮結束ハーネスを束ね、これら仮結束ハーネスに取り付けている前記クランプを軸直角方向に並設し、隣接する一方のクランプの係止部を他方のクランプの被係止部に係止していることを特徴とする車載用のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記仮結束ハーネスへの前記クランプの取付位置は、本結束状態での分岐位置である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車載用のワイヤハーネス。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車載用のワイヤハーネスの組立方法であって、前記各仮結束ハーネスへのクランプの取り付け、および該クランプを取り付けた仮結束ハーネスのクランプ同士の連結はワイヤハーネス組立作業台外で行っている車載用のワイヤハーネスの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−250510(P2011−250510A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118400(P2010−118400)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】