説明

車載用楽曲再生装置および車載用楽曲再生装置における楽曲再生方法

【課題】走行している道路の種別および走行経路の周囲の状況に適合した速度による運転を運転手に促すことができる車載用楽曲再生装置および車載用楽曲再生装置における楽曲再生方法を提供する。
【解決手段】車載用楽曲再生装置は、まず目的地までの誘導経路を探索する。そして、誘導経路周辺に存在する車両の走行速度を調整すべき地帯(例えば学校、病院、渋滞地帯など)を検出する。次に、走行速度調整地帯を車両が通過する推定通過時刻を算出する。その推定通過時刻に走行速度調整地帯に合った楽曲が再生されるように再生開始時刻を決定することにより楽曲のプレイリストを作成する。走行速度調整地帯に合った楽曲とは走行速度を下げるべき地帯に対してはテンポが遅い楽曲などである。そして、交通状況などにより推定通過時刻に変化が生じた場合は、変化後の推定通過時刻に合わせてプレイリストを更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の運転手に適切な走行速度の調整を促すような楽曲を再生する車載用楽曲再生装置および車載用楽曲再生装置における楽曲再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の運転手は、走行速度を表示するメータの他にも、常時視覚を通じて得る周囲の景色の流れ方、聴覚から得るエンジン音、風切り音などからも速度の判断を行っていると考えられる。したがって、実際には走行速度が上がっている状態であっても、視覚、聴覚などによって得られる上述のような各種情報によっては運転手は速度はそれほど上がっていないと判断するおそれがある。すなわち、走行速度は視覚、聴覚などから得られる各種情報の影響を受けると考えられる。
【0003】
また、聴覚から得られる情報にはエンジン音、風切り音などの車両の走行と直接結びついている情報だけでなく、車両中において再生されている楽曲も含まれる。各種検証などによって、走行速度は再生される楽曲のテンポなどに影響されるという見解が提示されている。すなわち、運転中に再生されている楽曲のテンポが速い場合、それを聴いている運転手は気分が高揚し、必要以上に走行速度を上げてしまう可能性がある。さらに、運転手が速度を上げ過ぎていることに気付かない、または速度の上げ過ぎに気を付けるべきであることに気づかないという可能性もある。
【0004】
そこで、車両の速度と道路の種別ごとの基準速度とを比較して、走行速度が基準速度を超えた場合に、比較結果に応じた楽曲を再生することにより、運転手に走行速度の上げ過ぎに気づかせ、さらに、運転手の気分を落ち着かせることにより速度の上げすぎを防止する車載用音響装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−115567
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の発明は、あらかじめ定められた基準速度に対してのみ有効であり、渋滞などの交通状況は考慮されていない。速度は道路の渋滞などによって大きな影響を受けるため、運転手に速度の上げ過ぎに気づかせて交通状況に合った適切な運転を促すためには、渋滞などの交通状況に関する情報も楽曲の再生に反映させる必要がある。
【0007】
さらに、交通状況以外にも運転手に適切な運転を促すために考慮すべき情報がある。例えば、車両が走行している場所に関する情報である。車両が走行している場所に関する情報としては、学校、病院などの施設の有無についての情報、高速道路の急カーブなどの道路についての情報、事故多発地帯などについての情報などがある。特許文献1に記載の発明においてこれらは考慮されていない。たとえ、走行速度が道路の種別ごとに定められた基準速度以下あったとしても、安全な運転のためには、その走行地点の周囲に学校などの施設がある場合には走行速度を落とす必要がある。また、事故多発地帯については道路ごとの基準速度とは無関係に速度を落として走行するべきである。すなわち、適切な走行速度の調整を運転手に促すためには、道路の種別ごとの基準速度の他に上述のような走行経路の周囲の状況に関する情報も考慮する必要がある。
【0008】
したがって、この発明は、走行している道路の種別および走行経路の周囲の状況に適合した速度による運転を運転手に促すことができる車載用楽曲再生装置および車載用楽曲再生装置における楽曲再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、車両に搭載され、楽曲を再生する車載用楽曲再生装置であって、複数の楽曲のデータを格納する楽曲データベースと、地図データを格納する地図データベースと、車両の現在位置を計測する位置検出手段と、地図データに基づいて、目的地までの誘導経路を探索する誘導経路探索手段と、地図データに基づいて、誘導経路上における車両の走行速度を調整すべき地帯を検出する速度調整地帯検出手段と、速度調整地帯検出手段により検出された速度調整地帯を車両が走行しているときに所定の種類の楽曲が再生されるように楽曲のプレイリストを作成するプレイリスト作成手段と、プレイリストに基づき楽曲を再生する再生制御手段とを備える車載用楽曲再生装置である。
【0010】
第2の発明は、車両に搭載され、複数の楽曲データを格納する楽曲データベースと、地図データを格納する地図データベースとを備え、楽曲データに係る楽曲を再生する車載用楽曲再生装置における楽曲再生方法であって、車両の現在位置を計測する位置検出ステップと、地図データに基づいて、出発地から目的地までの誘導経路を探索する誘導経路探索ステップと、地図データに基づいて、誘導経路上における車両の走行速度を調整すべき地帯を検出する速度調整地帯検出ステップと、速度調整地帯検出ステップにより検出された速度調整地帯を車両が走行しているときに所定の種類の楽曲が再生されるように楽曲のプレイリストを作成するプレイリスト作成ステップと、プレイリストに基づき楽曲を再生する再生制御ステップとを含む車載用楽曲再生装置における楽曲再生方法である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、車両が走行している道路の状況、道路の周囲の状況などに適合した速度で運転することを運転手に促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の係る車載用楽曲再生装置の構成を示すブロック図である。
【図2】楽曲データベースの一例を示す図である。
【図3】速度調整地帯情報の一例を示す図ある。
【図4】道路種別情報の一例を示す図である。
【図5】車載用楽曲再生装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】プレイリスト作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】作成されるプレイリストの一例を示す図である。
【図8】楽曲のテンポと走行速度の対応関係を示す図である。
【図9】プレイリストの更新処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】更新されるプレイリストの一例を示す図である。
【図11】更新されるプレイリストのその他の例を示す図である。
【図12】地図データの一例を示す図である。
【図13】図12に示す地図データに基づいて作成されたプレイリストを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
<1.実施の形態>
[1−1.車載用楽曲再生装置の構成]
[1−2.車載用楽曲再生装置の動作]
<2.変形例>
【0014】
<1.実施の形態>
[1−1.車載用楽曲再生装置の構成]
図1は、この発明に係る車載用楽曲再生装置1の構成を示すブロック図である。車載用楽曲再生装置1は、車両(図示せず。)に搭載され、運転手が所望する目的地まで車両をナビゲートするナビゲーション装置の一部として構成されている。また、携帯可能なPND(Personal Navigation Device)として構成してもよい。車載用楽曲再生装置1は、入力部11、メディア再生部12、記憶部13、映像処理部14、表示部15、音声処理部16、スピーカ17、地図データベース18、位置検出部19、無線通信部20、RAM21、制御部22とから構成されている。
【0015】
入力部11は、運転手が車載用楽曲再生装置1に、ナビゲーションの開始、目的地の設定、ナビゲーションの各種設定、楽曲の再生などの各種指示を入力するための入力デバイスである。運転手による入力が行われると、入力部11はその入力内容に応じた制御信号を制御部22に出力する。入力部11は例えば、複数のボタンからなるコントロールパネル、表示部15と一体に構成されたタッチパネルなどにより構成されている。
【0016】
メディア再生部12は、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク(Blu-Ray Disc:登録商標)などの光ディスク記録媒体、半導体メモリにより構成される記録媒体(例えば、USBメモリなど)など、所要の記録媒体に記録されている楽曲データを読み出して再生するものである。また、メディアに収録されている楽曲データを記憶部13に保存する場合には、メディア再生部12は、楽曲データおよびTOC(Table Of Contents)情報を読み取って、それらを記憶部13に出力する。ただし、記憶部13に保存することなく音声処理部16を介してスピーカ17から直接出力することも可能である。
【0017】
記憶部13は、例えば、ハードディスク、SDメモリーカード、メモリースティック(ソニー株式会社の登録商標)などの大容量記憶媒体である。記憶部13は、メディア再生部12によりCDなどのメディアから読み出された楽曲データを記憶保存することにより、楽曲データベースとして機能する。保存される楽曲データのフォーマットは特に限定されるものではなく、例えば、MP3(MPEG Audio Layer-3)、WAV(RIFF waveform Audio Format)、AIFF(Audio Interchange File Format)などを用いることが可能である。
【0018】
図2は、記憶部13に保存されている複数の楽曲データからなる楽曲データベースの構成を示すものである。楽曲データには曲名、テンポ、アーティスト名、時間、ジャンルを示す情報が属性情報として対応付けられている。なお、属性情報の内容は上述の内容に限定されるものではなく、他の情報をさらに含んでもよい。属性情報を構成する各種情報はTOC情報としてメディアから取得することができる。また、インターネットを介してCDDB(Compact Disc Data Base)にアクセスして取得するようにしてもよい。また、制御部22が所定のプログラムを実行することにより楽曲のリズムパターンや平均レベルなどを検出し、それらの情報に基づいてテンポなどを決定するようにしてもよい。
【0019】
さらに、運転手が入力部11を介して属性情報を入力するようにしてもよい。例えば、TOC情報を読み込めず、またはCDDBに正常なアクセスが出来なかった場合であっても、運転手がブックレットなどを参照して楽曲をタイトルなどを入力する。さらに、実際に楽曲を聴いてその楽曲のテンポを判断してテンポを入力する。これにより、属性情報の欠如を補うことができると共に、運転手の嗜好に合わせた楽曲データベースを作成することができる。なお、テンポにおいては、例えば、「遅い」とは楽曲のBPM(Beats Per Minute)が100以下、「通常」はBPMが100以上150以下、「速い」はBPMが150以上、というように分類すること可能であると考えられる。ただし、この分類は一例であり、これに限られるものではない。また、テンポ情報はBPMそのものであってもよい。
【0020】
映像処理部14は、制御部22の処理により供給される映像データに対してフィルタ処理等の所定の処理を施し、表示部15に出力するものである。表示部15は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)、有機EL(Electro Luminescence)パネルなどのディスプレイにより構成された表示手段である。表示部15には、地図、運転手を誘導するナビゲーション情報、再生されている楽曲に関する情報などを表示して運転手に提示する。
【0021】
音声処理部16は、制御部22の制御のもと記憶部13から供給された楽曲データ、案内音声データなどに対して音質補正、D/A変換処理などの所定の音声処理を施して、それらをアナログ音声信号としてスピーカ17に出力するものである。スピーカ17は、車両内に音楽、案内音声を再生する音声出力手段である。
【0022】
地図データベース18は、ハードディスクなどにより構成される記憶媒体であり、同一地域に対して縮尺の異なる複数種類の地図データが格納されている。また、地図データベース18には、インターチェンジの位置、交差点の位置、道路の種類などの道路に関する情報を示す道路情報、地図上の各地点の名称、学校、病院などの施設の名称、位置(住所含む)、電話番号などの施設情報が含まれている。地図データ、道路情報および施設情報は、メディア再生部12で最新の地図データが収録されたメディアを読み込む、または、ネットワークに接続して最新の地図データをダウンロードする、などにより定期的に更新するとよい。
【0023】
位置検出部19は、GPS(Global Positioning System)の受信デバイスにより構成されるものである。位置検出部19は、GPS衛星からGPS電波を受信して所定の処理を行って得られる軌道データと、GPS衛星から車両までの距離データとに基づいて車載用楽曲再生装置1が搭載されている車両の現在位置を検出する。検出された現在位置は、現在位置情報としてRAM21に格納される。
【0024】
無線通信部20は、例えば、FM放送波を受信するFM受信部により構成される。無線通信部20は、外部の道路交通情報サーバなどから道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Information and Communication System)に係る道路交通情報を受信し、所定の処理を施した後出力する。出力された道路交通情報はRAM21に一時的に格納される。なお、無線通信部20は、FM受信部に限られず、路肩などに設置されたビーコンから光ビーコン又は電波ビーコンを受信するビーコン受信部により構成してもよい。また、FM受信部とビーコン受信部とを併用してもよい。VICSにより道路交通情報として提供される情報としては、渋滞情報、事故情報、工事情報、速度規制・車線規制情報、駐車場の位置、駐車場の満車・空車情報などがある。
【0025】
RAM21(Random Access Memory)は、揮発性メモリにより構成される記憶媒体である。RAM21には、位置検出部19により検出された車両の現在位置を示す現在位置情報、無線通信部20により取得された道路交通情報、後述するプレイリスト作成部225により作成されたプレイリストなどが一時的に保存される。
【0026】
制御部22は、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)から構成されている。ROMには、CPUにより読み込まれるナビゲーション用プログラム、ナビゲーション用の映像データ、案内音声データなどが格納されている。RAMは、CPUのワークメモリとして用いられる。CPUは、ROMに格納されているプログラムに基づき様々な処理を実行してコマンドの発行を行うことによって通常のナビゲーション機能を実現し、車載用楽曲再生装置1全体の制御を行う。また、プレイリストに基づいた楽曲の再生制御を再生制御部としても機能する。制御部22はさらに、所定のプログラムを実行することにより、誘導経路探索部221、速度調整地帯検出部222、道路種別判定部223、通過時刻推定部224、プレイリスト作成部225として機能する。
【0027】
誘導経路探索部221は、地図データを参照することにより、位置検出部19により取得された現在位置から運転手により設定された目的地までの最適なルートである誘導経路を探索する。
【0028】
速度調整地帯検出部222は、地図データに含まれる道路情報、施設情報、さらに道路交通情報を参照することにより、誘導経路上において、運転手が車両の走行速度を調整すべき地帯(以下、速度調整地帯と称する。)を検出する。速度調整地帯は、速度を落とすべき地帯、速度を上げるべき地帯、に分類される。走行速度を下げるべき地帯としては、幼稚園、保育園、学校、病院、老人ホームなどの周辺地帯が考えられる。これらの地帯では、子供、老人などが歩道を歩行している頻度、可能性が高いため、安全運転のために車両の走行速度を下げるべきだからである。
【0029】
また、速度を下げるべき地帯としては、事故多発地帯、渋滞地帯も挙げられる。これらの地帯では、事故、渋滞により道路が混雑しているため、通常の速度では走行することができないからである。さらに、速度を下げるべき地帯としては、急カーブ、高速道路から一般道路へのインターチェンジなどが考えられる。走行速度を上げるべき地帯としては一般道路から高速道路へのインターチェンジなどが考えられる。なお、上述の速度調整地帯の具体例は一例であり、それに限定されるものではない。他にも倫理上、マナー上、道路交通法上、車両の走行速度を適切に調整すべき地帯と考えられる場所が存在する場合にはそれらも当然含まれる。
【0030】
速度調整地帯は、図3に示すように、速度を下げるべき地帯、速度を上げるべき地帯に分類された状態でリスト化されている。そのリストは速度調整地帯情報としてナビゲーション用プログラムと共にROMに格納しておくものとする。学校、病院などの施設および急カーブなどの道路は地図データと道路情報を参照することにより検出することができる。事故多発地帯、渋滞地帯などは道路交通情報を参照することにより検出することができる。速度調整地帯は様々な種類があるため、誘導経路上に上述のような複数の施設などが存在する場合には、複数の速度調整地帯が検出されることとなる。
【0031】
道路種別判定部223は、地図データベースに含まれる道路情報を参照することにより、誘導経路を構成する道路の種類の判定を行うものである。道路の種類は、例えば、図4に示すように「細い道路」、「一般道路」、「高速道路」などがある。ただし、図4に示す例は一例であり、さらに、市間高速道路、都市高速道路、国道、県道なども考えられる。判定結果は道路種別情報として、通過時刻推定部224、プレイリスト作成部225に出力される。
【0032】
通過時刻推定部224は、現在位置から、誘導経路において車両が次に通過する速度調整地帯までの距離と、誘導経路を構成する道路の種類ごとに設定された制限速度に基づいて、次の速度調整地帯を通過する時刻(以下、推定通過時刻と称する。)を算出する。道路の種類ごとに設定された制限速度は、道路種別判定部223から供給された道路種別情報に基づいて、図4に示すような道路の種類と制限速度が対応付けられた情報(以下、制限速度情報と称する。)を参照することにより得ることができる。道路ごとに対応付けられた制限速度は、法令で定められた法定最高速度、この発明における独自の基準などに基づいて設定されたものである。
【0033】
推定通過時刻は、誘導経路を構成する道路の種別を判定し、車両がその道路に設定されている制限速度で走行したと仮定することにより、制限速度と速度調整地帯までの距離から算出することができる。算出された推定通過時刻は通過する速度調整地帯を示す情報と対応付けられてプレイリスト作成部225に出力される。
【0034】
プレイリスト作成部225は、道路種別判定部223から供給された道路種別情報、通過時刻推定部224から供給された推定通過時刻に基づいて、再生する楽曲の選択、楽曲の再生開始時刻の設定、楽曲の再生順序を決定することによりいわゆるプレイリストを作成するものである。プレイリスト作成の詳細については後述する。
【0035】
このようにして車載用楽曲再生装置1が構成されている。制御部22は、位置検出部19により検出された車両の現在位置、無線通信部20から所得される道路交通情報および地図データに基づいてナビゲーション処理を行う。現在位置周辺の地図などナビゲーション用映像を映像処理部14に出力する。また、ナビゲーションの内容に対応する案内音声データなどを記憶部13から読み出して音声処理部16に出力する。そして、表示部15にナビゲーション用映像が表示され、スピーカ17から案内音声が出力されることにより一般的なナビゲーションが行われる。運転手はそのナビゲーションに従って車両の運転を行いながら、スピーカ17から出力される任意に選択した楽曲、プレイリストに従い再生される楽曲を聴くことができる。
【0036】
[1−2.車載用楽曲再生装置の動作]
以下、車載用楽曲再生装置1の動作について説明する。図5は、車載用楽曲再生装置1が行う処理の流れを示すフローチャートである。なお、前提として、車両を運転する運転手は車載用楽曲再生装置1のスピーカ17から出力される音楽を聴きながら、車載用楽曲再生装置1を含んで構成されたナビゲーション装置のナビゲーションにしたがって目的地まで運転するものとする。
【0037】
また、以下の処理は運転手が車両に乗り込み、運転手によって入力部11を介して処理開始の指示が入力されることにより開始されるものとする。ただし、車載用楽曲再生装置1の電源がオンになり、目的地が設定されるとデフォルトで処理が開始されるようにしてもよい。ただし、運転開始後に運転手が処理開始の入力を行った場合など、運転開始後に処理を開始してもよい。
【0038】
処理が開始されると、まず、ステップS11で、入力部11を介して入力された目的地が設定される。次にステップS12で、位置検出部19による車両の現在位置の取得が開始される。出発時における現在位置は、制御部22により出発地点情報と登録される。ステップS12以降、車両の現在位置は自動的に一定時間おきに随時取得される。
【0039】
次にステップS13で、無線通信部20による道路交通情報の取得が開始される。なお、現在位置と同様に、ステップS13以降は道路交通情報も自動的に一定時間おきに随時取得される。そして、ステップS14で、ナビゲーション情報の生成およびその表示が開始される。ナビゲーション情報の生成および表示は制御部22の制御のもと、車両の現在位置の移動に応じて随時行われる。
【0040】
ナビゲーション情報の生成を行うには、まず、現在位置情報を基に車両の現在位置を含む周辺地域の地図データが地図データベースから読み出される。そして、その地図データを参照して誘導経路探索部221によって現在位置から目的地までの誘導経路が求められる。次に、無線通信部20により取得された道路交通情報から誘導経路の周辺地域に対応する道路交通情報が抽出される。そして、地図データ、誘導経路、道路交通情報が合成されることにより、運転手に提供するナビゲーション情報が生成される。生成されたナビゲーション情報はそれに対応する映像データとともに映像処理部14に出力され、最終的に表示部15に表示されることにより運転手に提供される。また、必要に応じて、ナビゲーション情報に対応する案内音声データも音声処理部16に出力され、最終的にスピーカ17から音声として出力されることにより運転手に提供される。
【0041】
次にステップS15で、速度調整地帯検出部222により、現在位置から目的地までの誘導経路上に存在する速度調整地帯の検出が行われる。速度調整地帯の検出は上述のように地図データに含まれる道路情報、施設情報、さらに道路交通情報を参照することにより行われる。次にステップS16で、次の速度調整地帯を通過する時刻(推定通過時刻)が算出される。なお、「次の速度調整地帯」とは、誘導経路上に速度調整地帯が複数存在する場合においては、車両が誘導経路上を目的地に向けて走行して次に通過する速度調整地帯を指すものである。
【0042】
次にステップS17で、次の速度調整地帯までの範囲におけるプレイリストの作成が行われる。ここで、プレイリストの作成について説明する。図6はプレイリスト作成の処理の流れを示すフローチャートである。図7は作成されるプレイリストの一例を示す図である。なお、図7に示す例は走行開始から次の速度調整地帯までのプレイリストであり、次の速度調整地帯までの推定通過時刻は推定通過時刻算出時から7分後とする。
【0043】
まずステップS171で、上述のステップS15で検出された速度調整地帯の中の「次の速度調整地帯」が走行速度を上げるべき場所なのか下げるべき場所なのかが判定される。判定は、図3に示す速度調整地帯情報を参照して行われる。例えば、次の速度調整地帯が学校である場合には、次の速度調整地帯は走行速度を下げるべき場所であると判定される。
【0044】
次にステップS172で、プレイリスト作成部225により、その速度調整地帯を通過するときに再生される楽曲の選択が行われる。以下、速度調整地帯通過時に再生される楽曲を「調整地帯用楽曲」と称する。ステップS172の選択は、図2に示す楽曲データベースにおいて楽曲データごとに対応付けられている属性情報の中のテンポ情報を参照することにより行われる。例えば、次の速度調整地帯が走行速度を下げるべき場所である場合には、テンポ情報が「遅い」楽曲が選択される。また、次の速度調整地帯がスピードを上げるべき場所である場合には、テンポ情報が「速い」楽曲が選択される。なお、候補となる楽曲が複数ある場合には、ランダムに選択する、曲名の五十音順に従い選択する、特定のジャンルを優先して選択する、再生回数が多い順に選択する、などの選択方法により楽曲が決定される。この説明においては、次の速度調整地帯は走行速度を下げるべき場所であり、図7に示すプレイリストにおいては、テンポが遅い楽曲の中から調整地帯用楽曲として楽曲Eが選択されるものとする。
【0045】
次にステップS173で、プレイリスト作成部225により、上述のステップS172で選択された調整地帯用楽曲の再生開始時刻が決定される。本実施の形態においては、図7Bに示すように、調整地帯用楽曲の再生開始時刻は速度調整地帯通過時に曲の中間が再生されるように決定される。楽曲Eは長さが4分であるため、速度調整地帯通過の2分前が再生開始時刻に設定される。
【0046】
このように調整地帯用楽曲の再生開始時刻を決定することにより、調整地帯用楽曲は速度調整地帯を通過する前から再生が開始される。そして、速度調整地帯通過後も調整地帯用楽曲の後半部分が再生されることとなる。これにより、速度調整地帯に車両が近づくと調整地帯用楽曲の再生が開始されるため、速度調整地帯通過前の段階で走行速度の調整を運転手に促すことができる。したがって、より安全な運転を運転手に促すことができる。また、速度調整地帯を通過した後も調整地帯用楽曲の後半部分の再生がなされるため、速度調整地帯通過後も一定時間その速度調整地帯に合った走行速度で走行することを運転手に促すことができる。これによっても、より安全な運転を実現することができる。
【0047】
次にステップS174で、道路種別判定部223により、次の速度調整地帯までに走行する道路の種別が判定される。そして、ステップS175でプレイリスト作成部225により、道路の種別に基づいて調整地帯用楽曲が再生される前に再生される楽曲が選択される。ステップS175における選択を行うにはまず、図4に示す制限速度情報を参照してステップS174で判定された道路の種別に対応する制限速度を求める。次に、図8に示すような速度とテンポの対応関係を示す情報を参照してその制限速度に対応するテンポを求める。例えば、制限速度40km/hは50km/h以下であるのでテンポは「遅い」となる。
【0048】
次に、楽曲ごとに対応付けられた属性情報の中のテンポ情報を参照して、楽曲が選択される。図7の例では、速度調整地帯までの道路は「通常道路」とする。そうすると、楽曲データベースの中からはテンポが「通常」である、楽曲A、楽曲B、楽曲C、楽曲G、楽曲Jのいずれかが選択される。図7Cにおいては、楽曲Bが選択されている。この選択は上述のように、ランダムに選択する、曲名の五十音順に従い選択する、特定のジャンルを優先して選択する、再生回数が多い順に選択する、などの選択方法により楽曲が決定される。なお、次の速度調整地帯までの時間が複数の曲を再生可能なほど長時間である場合は、複数の曲が選択されて、それらの曲が順に再生されるようにプレイリストが作成される。
【0049】
次にステップS176で、プレイリスト作成部225により、プレイリスト上において、調整地帯用楽曲と次の速度調整地帯までの間に再生する曲との間に曲が再生されない空白期間があるか否かが判定される。空白期間がない場合にはプレイリストの作成は終了となる(ステップS176のNo)。
【0050】
一方、空白期間がある場合には、処理はステップS177に進み、調整地帯用楽曲の再生開始時刻が調整される(ステップS176のYes)。図7Cに示す例では、楽曲Bと楽曲Eとの間に空白期間が存在している。したがって、空白期間を埋めるように、調整地帯用楽曲である楽曲Eの再生開始時刻が早められる。楽曲Eの再生開始時刻は、楽曲Eの再生開始時刻と楽曲Bの終了時刻と一致するように早められる。これにより、連続して楽曲が再生され、プレイリスト上に楽曲が再生されない期間が生じることを防止することができる。また、再生開始時刻を調整することにより空白期間を埋めるため、再生中の楽曲が途中で急に打ち切られて次の楽曲が再生される、ということを防止することができる。これにより、再生中の楽曲が唐突に打ち切られて運転手に不快感を与えることを防止することができる。
【0051】
そして、作成されたプレイリストは最終的に図7Dに示すようになる。このようにしてプレイリストは速度調整地帯単位で作成される。作成されたプレイリストはRAM21または記憶部13に格納される。
【0052】
プレイリストの作成後、処理は図5に示すフローチャートに戻る。次にステップS18で、作成されたプレイリストに基づいて曲の再生が開始される。次にステップS19で、調整地帯用楽曲の再生が開始されたか否かが判定される。まだ調整地帯用楽曲が再生されていない場合、すなわち、車両が速度調整地帯に近づいてはいない場合、処理はステップS20に進む(ステップS19のNo)。そして、ステップS20でプレイリストの見直しおよび更新が行われる。プレイリストの更新とはすなわちプレイリストを作成し直すことである。
【0053】
ここで、プレイリストの見直しおよび更新について説明する。図9はプレイリストの見直しおよび更新処理の流れを示すフローチャートである。図10は更新されたプレイリストの一例を示すための図である。図10Aは図7Dに示した作成済みのプレイリストである。
【0054】
車両を運転している場合、不意の事故や渋滞などの交通状況の変化によって次の速度調整地帯までの到着が遅れる場合がある。また、推定通過時刻はあくまで推定であるため、次の速度調整地帯までの到着時刻が早まる場合もある。プレイリストの見直しおよび更新処理は、そのような推定通過時刻の変化にプレイリストを対応させるためにプレイリストを作成し直す処理である。なお、プレイリストの見直しおよび更新処理は、所定の時間間隔を置いて車両の走行中随時行うものとする。例えば、一般的に楽曲の長さは6分ほどであるため、その半分である3分おきに行う。また、楽曲の長さとは関係なく、1分おきや30秒おきに行うようにしてもよい。
【0055】
プレイリストの見直しおよび更新処理では、まずステップS201で、通過時刻推定部224により、現在位置から次の速度調整地帯までの推定通過時刻が算出される。次にステップS202で、ステップS201で求められた推定通過時刻と、上述のステップS16で求められた推定通過時刻(直前に推定した推定通過時刻)とが異なっている否かが判定される。例えば、推定通過時刻と、直前に推定した推定通過時刻との間に差が存在する場合に異なっていると判定することができる。また、推定通過時刻と、直前に推定した推定通過時刻との差を所定の閾値と比較し、差が閾値以上である場合に異なっていると判定することもできる。このように、閾値との比較を行う場合には、閾値の大きさを調整することによって推定通過時刻の変化判定の感度を調整することができる。例えば、閾値を大きい値に設定すれば、推定通過時刻の変化が小さい場合(例えば、数秒から十数秒など)には、推定通過時刻に変化がないと判定し、プレイリストの更新処理をスキップすることが可能となる。また、閾値を小さい値に設定すれば、推定通過時刻の変化が極めて小さい場合であってもプレイリストの更新を行うようにすることができる。
【0056】
推定通過時刻が異なっていない場合、プレイリストの更新を行う必要はないため、処理は終了となる(ステップS202のNo)。一方、推定通過時刻が異なっている場合、処理はステップS203に進む(ステップS202のYes)。図10Bにおいては、推定通過時刻に変化があり、推定通過時刻が3分遅れた場合を想定している。
【0057】
次にステップS203で、調整地帯用楽曲の再生開始時刻の調整が行われる。この調整は図10Cに示すように、速度調整地帯通過時に曲の丁度中間が再生されるように行われる。次にステップS204で、次の速度調整地帯までの道路の種別に基づいて調整地帯用楽曲の前に再生される楽曲が選択される。推定通過時刻に遅延が発生している場合には、図10Cに示すような遅延により生じた空白期間を埋めるために、テンポが通常の楽曲がさらに追加される。楽曲データベースにおいてテンポが通常の楽曲は楽曲A、B、C、G、Jであり、図10Dでは新たに楽曲Jが選択されて追加されている。なお、推定通過時刻の遅延により調整地帯用楽曲の再生開始時刻までの時間が長時間になった場合には複数の楽曲が選択される。
【0058】
次にステップS205で、調整地帯用楽曲と、上述のステップS204で決定された次の速度調整地帯までの間に再生する曲との間に曲が再生されない空白期間があるか否かを判定する。空白期間がない場合にはプレイリストの作成は終了となる(ステップS205のNo)。
【0059】
一方、空白期間がある場合には、処理はステップS206に進み、調整地帯用楽曲の再生開始時刻の調整処理が行われる(ステップS205のYes)。この調整処理は、上述のステップS177で行ったプレイリスト作成処理におけるものと同様である。図10Dに示す例では楽曲Jと楽曲Eとの間に空白期間が存在している。したがって、調整地帯用楽曲である楽曲Eの再生開始時刻が早められる。そして、更新されたプレイリストは最終的に図10Eに示すようになる。このようにして、プレイリストが更新される。
【0060】
なお、推定通過時刻は遅れる場合もあれば早まる場合もある。図11に推定通過時刻が早まった場合のプレイリストの更新の一例を示す。図11Aは図10Aと同じ作成済みのプレイリストである。そして、図11においては図11Bに示すように、推定通過時刻はが2分早まり、5分後となっている。この場合、図11Cに示すように、速度調整地帯通過時に調整地帯用楽曲である楽曲Eの丁度中間が再生されるように曲Eの再生開始時刻が早められる。この場合、楽曲Eは、楽曲Bの再生を途中で打ち切ってから再生されることとなる。そのような場合には、曲Bから曲Eへの切り換えにおいて、曲Bをフェードアウトさせ、曲Eをフェードインさせることにより、運転手に不快感を与えないようにするとよい。また、図11Dに示すように、楽曲Bを、楽曲Eの再生開始時刻前に楽曲の全体を再生可能である楽曲G(長さが3分)に変更してもよい。このように変更すれば、楽曲の再生が途中で打ち切られることを防止することができる。
【0061】
ステップS20のプレイリストの見直しおよび更新処理が終了したら処理は再び図5にのフローチャートのステップS19に戻る。そして、ステップ19で再び、調整地帯用楽曲の再生が開始されたか否かが判定される。ステップS19およびステップS20を繰り返すことにより調整地帯用楽曲の再生が開始されるまで車両の走行状況に合わせて随時プレイリストの見直しおよび更新が行われる。
【0062】
そして、ステップS19で調整地帯用楽曲の再生が開始されたと判定された場合、処理はステップS21に進む(ステップS19のYes)。次に、ステップS21で目的地に到着したか否かを判定される。目的地に到達したか否かの判定は、現在位置とステップS11で設定した目的地が一致したか否かは判定することにより行うことができる。目的地に到着した場合、処理は終了、すなわちプレイリストに基づく曲の再生は終了となる(ステップS21のYes)。
【0063】
一方、目的地には到着していない場合、処理はステップS16に戻る(ステップS21のNo)。ステップS21からステップS16に戻る場合、すなわち、調整地帯用楽曲が再生され、まだ目的地に到着していない場合とは、目的地までの誘導経路に速度調整地帯が複数存在する場合である。その場合、ステップS16でさらに、通過した速度調整地帯の次の速度調整地帯(出発地点から数えると二つ目の速度調整地帯)までのプレイリストの作成が行われる。そして、目的地に到着するまで速度調整地帯の個数分ステップS19乃至ステップS21を繰り返す。そして、ステップS21で目的地に到着したと判定された場合、処理は終了となる。
【0064】
この発明を用いることにより、学校や病院などの走行速度を下げるべき地帯では、例えばテンポが遅く運転手の気分を落ち着かせる楽曲を再生することにより運転手に走行速度を下げることを促すことができる。また、通常の速度で走行すべき道路や、高速道路へのインターチェンジなどの走行速度を上げるべき地帯では、運転手に適切な走行速度の調整を行うことを促すことができる。また、速度調整地帯に至るまでの道路においても制限速度に合った種類の楽曲を再生するため、出発から目的地到着まで一貫して運転手に適切な走行速度の調整を促すことができる。
【0065】
また、学校などの施設だけでなく、渋滞などの今現在の交通状況に応じてプレイリストを作成することも可能である。さらに、道路状況などによって、作成済みのプレイリストが現在の運転状況に適合しなくなった場合であっても動的にプレイリストを更新することも可能である。したがって、常に車両がおかれている今現在の環境に応じた楽曲の再生を行うことができる。
【0066】
次に、プレイリスト作成について具体例を挙げて説明する。図12は、交通状況の一例を示すものである。図13は図12の交通状況に対して作成されるプレイリストである。プレイリスト作成開始時における車両の現在位置は図12中の出発地点である。また、地図上の左上に目的地が設定されている。そして、地図上において太線で示されているのが誘導経路探索部221によって探索された目的地までの誘導経路である。地図中のW、X、Y、Zは速度調整地帯検出部222により検出された速度調整地帯である。Wは学校、Xは高速道路に入るインターチェンジ、Yは急カーブ、Zは一般道路に出るインターチェンジである。なお、車両が12時に出発する場合を想定して説明を行う。
【0067】
この場合、まず、図13Aに示すように、第1の速度調整地帯であるW(学校)を通過するまでのプレイリストが作成される。プレイリスト作成のためにはまず、W(学校)を通過する推定通過時刻が算出される。推定通過時刻は12:09とする。そして、W(学校)は走行速度を下げるべき地帯であるから、テンポが遅い楽曲の中から例えば楽曲Eが調整地帯用楽曲として選択される。なお、上述のように調整地帯用楽曲は速度調整地帯通過時に楽曲の中間が再生されるように再生開始時刻が設定される。よって、長さが4分である曲Eは12:07から再生が開始される。
【0068】
そして、W(学校)までに走行する道路は通常道路であるから、W(学校)までの間に再生される曲としては、テンポが通常である楽曲が選択される。楽曲データベースにおいてテンポが通常の楽曲は楽曲A、B、C、G、Jであり、その中から楽曲Aが選択される。
【0069】
次に、第2の速度調整地帯であるX(高速道路へのインターチェンジ)について推定通過時刻が算出される。推定通過時刻は12:21とする。そして、X(高速道路へのインターチェンジ)は走行速度を上げるべき地帯であるから図13Bに示すように、テンポが速い楽曲の中から例えば楽曲Dが調整地帯用楽曲として選択される。次に、X(高速道路へのインターチェンジ)までの間に再生される曲が選択される。W(学校)からX(高速道路へのインターチェンジ)までに走行する道路は通常道路であるから、テンポが通常である楽曲の中から例えば楽曲「C」および楽曲「B」が選択される。そして、図13Bに示すように、楽曲「D」と楽曲「B」間には楽曲が再生されない空白期間があるため、図13Cに示すように楽曲「D」の再生開始時刻が早められる。
【0070】
次に、第3の速度調整地帯であるY(急カーブ)について推定通過時刻が算出される。推定通過時刻は12:27とする。そして、Y(急カーブ)は走行速度を下げるべき地帯であるため、テンポが遅い楽曲の中から例えば楽曲Hが調整地帯用楽曲として選択される。そして、Y(急カーブ)までに走行する道路は高速道路であるため、Y(急カーブ)までの間に再生される曲として、テンポが速い楽曲の中から例えば楽曲Fが選択される。
【0071】
次に、第4の速度調整地帯であるZ(高速道路から一般道路に出るインターチェンジ)について推定通過時刻が算出される。推定通過時刻は12:33とする。Z(一般道路に出るインターチェンジ)は走行速度を下げるべき地帯であるため、調整地帯用楽曲としてテンポが遅い楽曲Eが選択される。そして、Z(一般道路に出るインターチェンジ)までに走行する道路は高速道路であるため、テンポが速い楽曲Fが選択される。最後に、目的地に到着するまでに走行する道路は一般道路であるためテンポが通常の楽曲「B」が選択される。
【0072】
このようにしてプレイリストの作成が行われ、そのプレイリストに基づいて楽曲の再生が行われる。なお、図12に示す交通状況、図13に示すプレイリストは一例である。また、図13に示す例ではプレイリストの更新は行われなかったが、走行中に渋滞が発生するなどにより、推定通過時刻が変化した場合はそれに応じてプレイリストの更新が行われる。
【0073】
<3.変形例>
以上、この発明の一実施の形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、楽曲の選択は楽曲のテンポに基づいて行ったが、他の情報、例えばジャンルに基づいて選択するようにしてもよい。例えば、テンポが遅い楽曲であっても激しい曲調であるメタル、ハードロックなどの音楽を聴くと運転手は車両の速度を上げる、テンポが通常の楽曲であってもクラシックを聴くと運転手は速度を下げる可能性が考えられる。そこで、ジャンルに基づいて、走行速度を下げるべき地帯ではクラシックを再生するなどにより、運転手に走行速度の調整を促すことができると考えられる。また、テンポとジャンルを組み合せて楽曲の選択を行ってもよい。
【0074】
また、選択可能な楽曲が複数ある場合、アルファベット順で選択、一度選択した楽曲は選択しない、楽曲の再生回数に基づいて選択する、運転手が嗜好するジャンルに基づいて選択する、などを例として挙げた。さらに、これに加え、現在再生中の楽曲のジャンルを参照して、曲調の変化が最小限になるように選択することも考えられる。例えば、ハードロックの次にはクラシックは選択せず、音楽のタイプが近似しているロック、メタルを選択するなどである。
【0075】
さらに、速度調整地帯の検出においては、現在時刻、月日、曜日などを参照してもよい。例えば、速度調整地帯の1つである学校の場合、学生が学校周辺を歩行しているのは朝の通学時間および夕方の下校時間である。また、土曜日、日曜日、夏休みや冬休みなどの長期休暇期間においてはいつの時刻であっても学校周辺を歩行している学生の数は少ないと考えられる。したがって、速度調整地帯検出部222は、車載用楽曲再生装置1に設けられた時刻計測部(図示せず。)から得た現在時刻、月日、曜日を参照して速度調整地帯を検出することにより、より車両が走行する環境に適合したプレイリストの作成を行うことができる。例えば、誘導経路上に学校が存在するとしても、現在時刻が13時である場合には学校は速度調整地帯として検出しない、などである。
【0076】
車載用楽曲再生装置1の構成においては、GPSデバイスである位置検出部19によって、車両の現在位置を取得するように説明を行った。しかし、さらに、車両の進行方向を検出するジャイロセンサ、車両の駆動輪の回転速度を検出して車速パルス信号を生成する車速検出部を設けて、それらの検出結果を用いて現在位置検出の精度をより高めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1・・・・・車載用楽曲再生装置
13・・・・記憶部
18・・・・地図データベース
19・・・・位置検出部
20・・・・無線通信部
22・・・・制御部
221・・・誘導経路探索部
222・・・速度調整地帯検出部
223・・・道路種別判定部
224・・・通過時刻推定部
225・・・プレイリスト作成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、楽曲を再生する車載用楽曲再生装置であって、
複数の前記楽曲のデータを格納する楽曲データベースと、
地図データを格納する地図データベースと、
前記車両の現在位置を検出する位置検出手段と、
前記地図データに基づいて、目的地までの誘導経路を探索する誘導経路探索手段と、
前記地図データに基づいて、前記誘導経路上における前記車両の走行速度を調整すべき地帯を検出する速度調整地帯検出手段と、
該速度調整地帯検出手段により検出された速度調整地帯を前記車両が走行しているときに所定の種類の前記楽曲が再生されるように前記楽曲のプレイリストを作成するプレイリスト作成手段と、
前記プレイリストに基づき前記楽曲を再生する再生制御手段と
を備える車載用楽曲再生装置。
【請求項2】
前記車両が前記速度調整地帯を通過する時刻を推定する通過時刻推定手段をさらに備え、
前記プレイリスト作成手段は、前記通過時刻推定手段により推定された通過時刻に基づいて前記所定の種類の楽曲の再生開始時刻を決定することにより前記プレイリストを作成する請求項1に記載の車載用楽曲再生装置。
【請求項3】
前記通過時刻推定手段は所定の間隔で前記通過時刻の推定を行い、
前記プレイリスト作成手段は、前記通過時刻が直前に推定した通過時刻と異なる場合に前記プレイリストを作成し直す請求項2に記載の車載用楽曲再生装置。
【請求項4】
前記車載用楽曲再生装置は、道路交通情報を受信する受信手段をさらに備え、
前記速度調整地帯検出手段は、さらに、前記道路交通情報に基づいて前記速度調整地帯を検出する請求項1に記載の車載用楽曲再生装置。
【請求項5】
前記楽曲のデータは、属性情報と対応付けられて前記楽曲データベースに格納されており、
前記プレイリスト作成手段は、前記速度調整地帯の種類と前記属性情報に基づいて前記所定の種類の楽曲が再生されるように前記プレイリストを作成する請求項1または3に記載の車載用楽曲再生装置。
【請求項6】
前記プレイリスト作成手段は、前記速度調整地帯が走行速度を下げるべき地帯である場合に前記所定の種類の楽曲が再生されるように前記プレイリストを作成する請求項1または3に記載の車載用楽曲再生装置。
【請求項7】
前記所定の種類の楽曲とは、テンポが遅い楽曲である請求項6に記載の車載用楽曲再生装置。
【請求項8】
前記速度調整地帯は、前記誘導経路付近に存在する施設の周辺地帯を含む請求項1に記載の車載用楽曲再生装置。
【請求項9】
前記速度調整地帯は、前記誘導経路付近に存在する事故発生地点および/または渋滞地点の周辺地帯を含む請求項1に記載の車載用楽曲再生装置。
【請求項10】
前記車載用楽曲再生装置は、前記誘導経路に含まれる道路の種別を判別する道路種別判定手段をさらに備え、
前記プレイリスト作成手段は、さらに、前記道路の種別に基づいて前記所定の種類の楽曲が再生される前に再生される前記楽曲を決定して前記プレイリストを作成する請求項1または3に記載の車載用楽曲再生装置。
【請求項11】
前記プレイリスト作成手段は、前記速度調整地帯を通過する時刻より所定時間前に前記所定の種類の楽曲の再生が開始されるように該所定の種類の楽曲の再生開始時刻を決定することにより前記プレイリストを作成する請求項2または3に記載の車載用楽曲再生装置。
【請求項12】
車両に搭載され、複数の楽曲データを格納する楽曲データベースと、地図データを格納する地図データベースとを備え、前記楽曲データに係る楽曲を再生する車載用楽曲再生装置における楽曲再生方法であって、
前記車両の現在位置を検出する位置検出ステップと、
前記地図データに基づいて、出発地から目的地までの誘導経路を探索する誘導経路探索ステップと、
前記地図データに基づいて、前記誘導経路上における前記車両の走行速度を調整すべき地帯を検出する速度調整地帯検出ステップと、
該速度調整地帯検出ステップにより検出された速度調整地帯を前記車両が走行しているときに所定の種類の楽曲が再生されるように前記楽曲のプレイリストを作成するプレイリスト作成ステップと、
前記プレイリストに基づき前記楽曲を再生する再生制御ステップと
を含む車載用楽曲再生装置における楽曲再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−18719(P2012−18719A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154710(P2010−154710)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】