説明

車載用表示装置の照明輝度設定システム

【課題】 表示装置を有する複数のユニットのバックライトの照明輝度の調整を性能よく容易に行うことができる車載用表示装置の照明輝度設定システムを提供すること。
【解決手段】 マスタユニット1〜フロントディスプレイ6は、複数段階の輝度を設定する同じ輝度設定テーブル12,22,32,42,52,62と、予め設定した、操作スイッチパネル2への輝度変更操作を、テーブル番号変更指示として、CANネットワークを介して送信し、受信したテーブル番号変更指示に基づいて、ナビモニタ43やLCD53、インジケータ231,541など照明輝度の設定変更を行うメイン制御処理部11,21,31,41,51,61を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用表示装置の照明輝度設定を車載用ネットワークの通信システムを用いて行う車載用表示装置の照明輝度設定システムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来では、車両の空調操作部において、コントロール操作により出力されるイルミネーション信号を変化させて、表示のバックライトの照度と時計蛍光表示管の表示輝度を同期して調整している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−240258号公報(第2−7頁、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来にあっては、表示装置を備えるユニットと、他のユニットの表示装置の輝度調整について、性能と容易さが充分ではなかった。
【0004】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、
表示装置を有する複数のユニットのバックライトの照明輝度の調整を性能よく容易に行うことができる車載用表示装置の照明輝度設定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、表示を行う車載用表示装置を有する車載装置の複数を通信線で接続してCAN通信を行うように車載ネットワークを構成し、複数の前記車載装置は、複数段階の輝度を設定する同じテーブルデータと、予め設定した、いずれかの前記車載装置への輝度変更操作を、テーブル番号変更指示として、前記車載ネットワークを介して送信する照明輝度設定指示手段と、受信した前記テーブル番号変更指示に基づいて、前記車載用表示装置の照明輝度の設定変更を行う照明輝度設定変更手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、表示装置を有する複数のユニットのバックライトの照明輝度の調整を性能よく容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の車載用表示装置の照明輝度設定システムを実現する実施の形態を、請求項1に係る発明に対応する実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の車載用表示装置の照明輝度設定システムのシステム構成を示す説明図である。
実施例1では、車載される複数のコントローラのユニットをCANバス10に接続することにより車載コントローラによる車載ネットワークが構築される。
この車載ネットワークは、マスタユニット1、操作スイッチパネル2、オーディオユニット3、ナビユニット4、エアコンユニット5、フロントディスプレイ6を主要な構成としている。
【0009】
マスタユニット1は、メイン制御処理部11と輝度設定テーブル12を備え、他の各ユニットの制御を行う。
マスタユニット1のメイン制御処理部11は、操作スイッチパネル情報の取り込み、表示ユニットの状態情報の転送、各ユニットの状態管理等を行う。
輝度設定テーブル12は、テーブル1〜テーブル10までの輝度制御デューティ比の値を予め設定したテーブルデータである。
【0010】
操作スイッチパネル2は、メイン制御処理部21と輝度設定テーブル22を備え、操作スイッチからの操作入力を処理するコントローラである。
メイン制御処理部21は、パネル上の押下スイッチの認識、マスタユニット1へのスイッチ情報の転送等を行う。
輝度設定テーブル22は、テーブル1〜テーブル10までの輝度制御デューティ比の値を予め設定したテーブルデータである。
【0011】
オーディオユニット3は、メイン制御処理部31と輝度設定テーブル32を備え、オーディオ機能を提供する処理を行うコントローラである。
メイン制御処理部31は、マスタユニット1からの状態情報に基づき、オーディオ制御等を行う。
輝度設定テーブル32は、テーブル1〜テーブル10までの輝度制御デューティ比の値を予め設定したテーブルデータである。
【0012】
ナビユニット4は、メイン制御処理部41と輝度設定テーブル42を備え、ナビゲーション機能を提供する処理を行うコントローラである。
メイン制御処理部41は、マスタユニット1からの状態情報に基づき、ナビ制御等を行う。
輝度設定テーブル42は、テーブル1〜テーブル10までの輝度制御デューティ比の値を予め設定したテーブルデータである。
【0013】
エアコンユニット5は、メイン制御処理部51と輝度設定テーブル52を備え、エアコン機能を提供する処理を行うコントローラである。
メイン制御処理部51は、マスタユニット1からの状態情報に基づき、エアコン制御等を行う。
輝度設定テーブル52は、テーブル1〜テーブル10までの輝度制御デューティ比の値を予め設定したテーブルデータである。
【0014】
フロントディスプレイ6は、メイン制御処理部61と輝度設定テーブル62を備え、表示処理を行うコントローラである。
メイン制御処理部61は、マスタユニット1から状態情報に基づき、ディスプレイ表示制御等を行う。
輝度設定テーブル62は、テーブル1〜テーブル10までの輝度制御デューティ比の値を予め設定したテーブルデータである。
なお、輝度設定テーブル11,21,31,41,51,61は、予め不揮発性メモリに格納されているものとする。
【0015】
次に、上記説明した各コントローラを有する各装置の表示装置のLED駆動回路の構成例について説明する。
図2は実施例1の車載用表示装置の照明輝度設定システムにおける各表示装置のLED駆動回路の構成例を示す説明図である。
各装置の表示部として機能する各表示装置は、LCD等のバックライトとして、LEDを駆動する構成である。
【0016】
LED駆動回路7は、抵抗71,72,74、トランジスタ73、照明用のLED75を主要な構成としている。
このLED駆動回路7は、抵抗74と照明用のLED75の多数の組を、抵抗71,72、トランジスタ73によるオンオフ制御する構成である。
また、あるいは、スイッチのそれぞれに設けられたインジケータの発光をオンオフするよう抗74と照明用のLED75の組をそれぞれのスイッチに対応させて設けるものであってもよい。
【0017】
次に、実施例1の車載用表示装置の照明輝度設定システムの一部のより具体的構成について説明する。
図3は実施例1の車載用表示装置の照明輝度設定システムの一部の構成例を示す説明図である。
図3に示す例では、具体的に車両の車室内のインストルメントパネルの一部として、ナビユニット4、操作スイッチパネル2、オーディオユニット3、エアコンユニット5の順に縦列させて構成されている。
【0018】
ナビユニット4の全面にはナビ情報を表示するナビモニタ43が設けられている。また、操作スイッチパネル2には、インジケータ231を備えたスイッチ23が複数組、設けられている。
また、エアコンユニット5は、エアコン状態を表示するLCD53と、インジケータ541を備えたスイッチ54が複数組、設けられている。
【0019】
作用を説明する。
[車載装置の輝度調整について]
従来では、例えば図3に示す構成のように、ナビユニット、操作スイッチパネル、オーディオユニット、エアコンユニット等を車両に組み付けた状態で照明確認を行ない、表示部位の輝度が周囲ユニットと相関取れる様、輝度チューニングを行っている。
【0020】
あるユニットの輝度が周囲ユニットより高い場合、輝度を落とす様、チューニングすることになるが、その場合、ユニット単体で輝度チューニングを行っている。あるいは、従来公報のように、表示のバックライトの照度と時計蛍光表示管の表示輝度を同期して調整する程度であり、ユニット全体の輝度調整を考えると、ユニット毎に行っていると同じである。
例えば、照明用のLEDの電流値を変えて輝度チューニング(抵抗定数変更)を行ったり、レンズの透過率を下げたりして輝度チューニングしている。
【0021】
しかしながら、ユニット毎に輝度チューニングを行うと、非効率で容易性に欠けており、また、チューニングに時間(期間)を要するという問題があった。
本実施例1では、これらを解決している。
【0022】
[LED輝度調整について]
ここで、各装置(各ユニット)において、表示のバックライト、スイッチのインジケータ、夜間照明などのために駆動されるLEDの輝度調整について説明する。
図2において、輝度調整は、照明用のLED75のデューティ比制御にて行う。実施例1では、輝度設定テーブル12,22,32,42,52,62にデューティ比を格納しておき、調光制御を行う。
デューティ制御は、図2(b)に示すように一定周期Tに対してのON時間(%)を制御するものである。つまり、デューティ比は次のようになる。DUTY比=LED_ON/(LED_ON+LED_OFF)となる。よって、このデューティ比を変更することによりLED75の輝度調整ができるのである。
【0023】
[性能よく容易な輝度調整処理]
図4に示すのは、実施例1の車載用表示装置の照明輝度設定システムで実行される輝度調整処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
【0024】
まず、操作スイッチパネル2上の2つ以上のスイッチ23を同時に押した状態でIGN電源を投入する。なお、同時押しが通常操作にてありえないスイッチを予め定義、設定しておく。
【0025】
ステップS1では、マスタユニット1は、操作スイッチパネル2上の2つ以上のスイッチ23を同時に押した状態であることを示すスイッチ情報を、認識したかどうかを判断し、認識したならばステップS2へ進み、認識しないならばステップS1へ戻る。
【0026】
ステップS2では、マスタユニット1は、輝度設定を変更するモード状態であることを全てのユニット(操作スイッチパネル2〜フロントディスプレイ6)へ指示する。この指示はメッセージの送信により行われる。
【0027】
ステップS3では、各ユニットは、マスタユニット1からの輝度設定の変更情報を待つ、待ち状態となる。
【0028】
ステップS4では、フロントディスプレイ6などの表示ユニットは、画面上に輝度設定モードであることを表示する。
また、操作スイッチパネル2のスイッチ操作にて各ユニットの輝度変更を可能にする操作方法を表示する。
【0029】
ステップS5では、フロントディスプレイ6に表示される操作方法に従って、操作スイッチパネル2のスイッチ操作にて輝度設定情報を変更する。
なお、このとき、どのスイッチ23が押されたら、どのユニットの輝度設定情報を変更するかなどは、予め定義、設定しておく。
【0030】
ステップS6では、操作に該当するユニットは、マスタユニット1からの輝度設定情報を受信したら、現在の輝度設定情報を変更する。
【0031】
ステップS7では、マスタユニット1が、変更操作終了の操作情報を認識したかどうかを判断し、操作終了を認識したならば、ステップS8に進み、認識しないならばステップS5へ戻る。
【0032】
この操作スイッチパネル2のスイッチ操作による輝度設定情報の変更、送信、該当ユニットにおける輝度設定情報の変更を、操作スイッチパネル2〜フロントディスプレイ6まで、順次行う。
【0033】
ステップS8では、全てのユニットの輝度設定情報変更が終了し、操作スイッチパネル2の所定のスイッチ23を押下し、輝度設定モード状態から通常動作モードに移行することをマスタユニット1が宣言する出力を行う。なお、どのスイッチ23が押されたら輝度設定情報変更を終了するかは、予め定義、設定しておく。
また、モード状態の移行は、IGN電源のオン/オフ操作により移行するようにしてもよい。
【0034】
[性能よく容易な輝度調整作用]
本実施例1の車載用表示装置の照明輝度設定システムでは、マスタユニット1〜フロントディスプレイ6までの各ユニット(コントローラ)の輝度設定テーブル12,22,32,42,52,62に、同じテーブルデータを記憶させておく。
【0035】
そのデータは、テーブル1がデューティ100%、テーブル2がデューティ90%、テーブル3がデューティ85%、テーブル4がデューティ80%、テーブル5がデューティ75%、テーブル6がデューティ70%、テーブル7がデューティ65%、テーブル8がデューティ60%、テーブル9がデューティ55%、テーブル10がデューティ50%である。
【0036】
そして、各ユニットのメイン制御処理部11,21,31,41,51,61では、それぞれ定められる初期設定値により、何番のテーブルデータを使用するかを得て、そのテーブル番号のデューティ比にで、LED75を駆動する。
つまり、調整前の段階において、各ユニットは全て、初期設定に従ったテーブル番号のデューティ比でLED駆動を行なっている。
これに対し、車両組付け時、あるいは、その後に、所定の操作で通常動作モードから輝度設定変更モードに移行することで、各ユニットの輝度調整を行う。
【0037】
この輝度調整の際には、各ユニットが全て、同じテーブルデータを持っていることにより、同じ操作感覚、同じ考えの操作により、全てのユニットの輝度調整ができるため、調整を容易に行うことができる。また、このことにより、設定及び調整が性能よくできる。
【0038】
さらに、各ユニットはCANバス10によるCAN通信により、テーブルデータ番号の変更指示を受信するだけで、各メイン制御処理部11〜61がそれぞれのユニットで備える輝度設定テーブル12〜62を参照して、駆動デューティ比を変更する。そのため、設定や調整の操作は、各ユニットに対して個別に行う必要がなく、操作スイッチパネル2の調整操作を割り当てたスイッチ23に行えばよい。
また、各ユニットがテーブルデータを備え、そのテーブル番号の変更に相当するデューティ比の制御を変更するため、照明輝度の変更に対して、ハードやソフトの変更を行う必要がない。
【0039】
また、例えば、全てのユニットの輝度をデューティ5%分下げることも、予め設定したスイッチ操作で、CAN通信により即時に全てのユニットに送信して、実施することが容易にできる。このように、調整は非常に容易になる。
これによって、各ユニットが有するLCDのバックライトもしくは夜間照明、あるいはインジケータ等のLEDの照明輝度調整が容易に性能よく行える。
【0040】
次に、効果を説明する。
実施例1の車載用表示装置の照明輝度設定システムにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0041】
(1)表示を行うナビモニタ43やLCD53、インジケータ231,541などを有するマスタユニット1、操作スイッチパネル2、オーディオユニット3、ナビユニット4、エアコンユニット5、フロントディスプレイ6をCANバス10で接続してCAN通信を行うように車載ネットワークを構成し、マスタユニット1〜フロントディスプレイ6は、複数段階の輝度を設定する同じ輝度設定テーブル12,22,32,42,52,62と、予め設定した、操作スイッチパネル2への輝度変更操作を、テーブル番号変更指示として、CANネットワークを介して送信し、受信したテーブル番号変更指示に基づいて、ナビモニタ43やLCD53、インジケータ231,541など照明輝度の設定変更を行うメイン制御処理部11,21,31,41,51,61を備えたため、表示装置を有する複数のユニットのバックライトの照明輝度の調整を性能よく容易に行うことができる。
【0042】
以上、本発明の車載用表示装置の照明輝度設定システムを実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、車載表示装置の例として、ナビモニタ43やLCD53、インジケータ231,541を示したが、他の表示装置であっても照明輝度をパーセンテージのデータで制御するものであればよい。
実施例1では、車載装置の例として、マスタユニット1、操作スイッチパネル2、オーディオユニット3、ナビユニット4、エアコンユニット5、フロントディスプレイ6を示したが、この中の一部で車載ネットワークが構成されていてもよいし、他の車載装置が加わってもよい。
CANネットワークには、他のユニットが接続されていても、自ユニットあてでないメッセージは無視する処理となるので問題はない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1の車載用表示装置の照明輝度設定システムのシステム構成を示す説明図である。
【図2】実施例1の車載用表示装置の照明輝度設定システムにおける各表示装置のLED駆動回路の構成例を示す説明図である。
【図3】実施例1の車載用表示装置の照明輝度設定システムの一部の構成例を示す説明図である。
【図4】実施例1の車載用表示装置の照明輝度設定システムで実行される輝度調整処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1 マスタユニット
11 メイン制御処理部
12 輝度設定テーブル
2 操作スイッチパネル
21 メイン制御処理部
22 輝度設定テーブル
23 スイッチ
231 インジケータ
3 オーディオユニット
31 メイン制御処理部
32 輝度設定テーブル
4 ナビユニット
41 メイン制御処理部
42 輝度設定テーブル
43 ナビモニタ
5 エアコンユニット
51 メイン制御処理部
52 輝度設定テーブル
53 LCD
54 スイッチ
541 インジケータ
6 フロントディスプレイ
61 メイン制御処理部
62 輝度設定テーブル
7 LED駆動回路
71 抵抗
72 抵抗
73 トランジスタ
74 抵抗
75 LED
10 CANバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示を行う車載用表示装置を有する車載装置の複数を通信線で接続してCAN通信を行うように車載ネットワークを構成し、
複数の前記車載装置は、
複数段階の輝度を設定する同じテーブルデータと、
予め設定した、いずれかの前記車載装置への輝度変更操作を、テーブル番号変更指示として、前記車載ネットワークを介して送信する照明輝度設定指示手段と、
受信した前記テーブル番号変更指示に基づいて、前記車載用表示装置の照明輝度の設定変更を行う照明輝度設定変更手段を備えた、
ことを特徴とする車載用表示装置の照明輝度設定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−120173(P2008−120173A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304314(P2006−304314)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】