説明

車載用表示装置

【課題】開閉及び傾き可能な表示部を有する車載用表示装置において、表示部下端が車載用表示装置底面より下方に突出しないようにし、表示部下面とダッシュボードの取付け用開口の下辺との間に間隙を設ける必要をなくす。
【解決手段】表示部9の後面に所定幅長の可動シャーシ10を固定するとともに、車載用表示装置1の機器本体2の前方垂直部分にローラー12を設け、スライドベース8によって可動シャーシに移動可能に取付けられた垂直方向摺動体7の下端部分を後方へ向けて水平に引き込めば、可動シャーシが作動規制部材に接触し、可動シャーシ部材及び表示部は下部が後方に移動するとともに上部が前方に移動することによって梃子のように斜めに傾き、表示部前部下端を仮想支点として回動することによって表示部下端が車載用表示装置底面より下方に突出しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のダッシュボード等に設置される車載用表示装置、特に、その表示部を本体の前面に正立させた状態から水平に大きく傾けて前面を開放したり、表示部の角度を傾斜させてユーザに見やすくしたりすることを可能とした車載用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用ナビケーション機器が広く普及している。この車載用ナビケーション機器は一般的にはダッシュボードに設置されている。このとき、車載用ナビゲーション機器の表示部を見やすくするため、車載用ナビケーション機器はダッシュボードに固定したままで、表示部のみを最適な角度に傾けることが必要とされている。
【0003】
そのため、従来においては、例えば下記特許文献1で示す技術が提案されている。これは、奥部がダッシュボード内に収納されて固定されるシャーシと、このシャーシの前部に回動自在に連結され表示部を下方から支持する支持部とによって、車載用ナビケーション機器に表示部を回動可能に支持するものである。さらに、表示部の回動位置を所望の角度で固定する手段を有する。この固定手段は、表示部の背面に取り付けられシャーシのサイドフレームに摺接する摺動面を有する略コ字状の保持板と、摺動面の下部に突設された第1のピンと、摺動面の上部に所定の間隔を置いて配設された複数の取付け孔と、取付け孔に取付けられる第2のピン、第1のピンと第2のピンとが挿通して上下に摺動可能に嵌合するサイドフレームに形成された嵌合溝とからなる。
【0004】
その結果、表示部は所望の回動位置において嵌合溝を介して第2のピンを取付け孔に取付けることにより固定されるようになっている。例えば、表示部は正立する状態から上向き及び下向きの状態を任意の角度で設定することができる。
【0005】
従って、車両の種類が異なる場合や取付け箇所が異なることにより車載用表示装置の車両本体に対する取付け角度が異なっても、利用者が見やすい角度に表示部を変更できる。
【0006】
加えて、近時は機能の変更を可能にするため、車載用表示装置に内蔵された光ディスクドライブに新たな光ディスク、例えばナビゲーション用の地図情報が記録された光ディスクを装填することを可能にしたものがある。このような車載用表示装置は、表示部を水平位置まで大きく傾けることによって機器本体の前面を開放し、光ディスクを光ディスクドライブに装填できるようにしている。
【特許文献1】特開2002−154382号公報(段落[0013]〜[0016])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両に搭載される車載用表示装置では、その表示部が車両に搭乗する者の膝や持ち物などが当たらないように、ダッシュボードの表面から突出しない状態で取り付けられる場合が多い。しかしながら、上記従来技術の車載用表示マウント装置を表示部がダッシュボードに完全に埋め込まれた状態で取付け、表示部を下向きに傾けるため回動させると、表示部は、その後方の下端部を支点として回動するため、表示部の前方下縁は側方から見てシャーシの下面の延長線より下方に変位してしまう。従って予め表示部下面とダッシュボードの取付け用開口の下辺との間に間隙を設けないと、表示部の前方下縁がダッシュボードに突き当たってしまうために表示部を下向きに傾けることができない。また、表示部下面とダッシュボードの取付け用開口の下辺との間に間隙を設けると、美観上また防塵対策上好ましくないという問題点があった。
【0008】
ちなみに、上述の課題は、表示部の前方の下端部を支点として回動させることができれば解決するが、表示部の前方の下端部に軸を設けることは、表示部の構造上スペースを確保することが難しい為、実質不可能である。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、本発明者らは、表示部の後面に所定幅長の可動シャーシを固定するとともにこの可動シャーシを垂直方向摺動体に回動自在に固定し、車載用表示装置の機器本体前方の垂直部分に作動規制部材を設け、スライドベースに移動可能に取付けられた垂直方向摺動体の下端部分を表示部が正立状態となっている位置から更に後方へ向けて水平に引き込めば、可動シャーシ部材が作動規制部材に接触し、可動シャーシ部材及び表示部は、下部が後方に移動するとともに上部が前方に移動することによって表示部前方の下端部を仮想支点として回動するように傾くようになるので、表示部下端が車載用表示装置底面より下方に突出しないことを見出し、本発明に至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は上述したように開閉可能で、かつ最適な表示角度に傾けることが可能な表示部を有する車載用表示装置において、表示部下面とダッシュボードの取付け用開口の下辺との間に間隙を設ける必要のない、従来の問題点を一掃した車載用表示装置を提供することを目的とする。
【0011】
また本発明の更なる目的は、表示部を最適な表示角度に傾ける際に、表示部下端が車載用表示装置の底面より突出しないように、かつ表示部のスペースを制約することなく、表示部の回動の支点を表示部の前部下端に設けることが可能な車載用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る車載用表示装置の発明は、機器本体の側方において水平方向に延在する水平ガイドと、前記機器本体の前部側方において垂直方向に延在する垂直ガイドと、前記水平ガイドに摺動自在に取付けられたスライドベースと、下端部が前記スライドベースの前端部に回動自在に連結され上端部が前記垂直ガイドに沿って移動可能な垂直方向摺動体と、前記垂直方向摺動体に取り付けられる表示部と、を備え、
前記スライドベースを前方に移動させると前記垂直方向摺動体の下端が前方へ移動するのに伴い上端が前記垂直ガイドに沿って下降し、前記表示部を正立状態から水平状態にせしめる車載用表示装置において、
前記表示部の後面に固定され、下端後部が前記垂直方向摺動体の下端部に回動自在に固定されることにより移動可能に取り付けられる可動シャーシと
前記機器本体の前部に設けられ、前記可動シャーシの作動を規制する作動規制部材と、を更に備え、
前記スライドベースを前記表示部の正立状態から更に後方に移動すると、前記可動シャーシが前記垂直方向摺動体の下部とともに後方へ移動し、前記作動規制部材に当接することによって、前記表示部の下端前部に位置する仮想支点を中心として前記可動シャーシの下部が後方へ更に移動するとともに前記可動シャーシの上部が前方へ移動するように回動して、前記表示部を斜めに傾けることを特徴とする車載用表示装置。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車載用表示装置に係り、前記作動規制部材はローラーであることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車載用表示装置に係り、前記可動シャーシを前記垂直方向摺動体と平行になるように付勢する付勢手段を更に備えることを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車載用表示装置に係り、前記付勢手段はトーションバネであって、前記可動シャーシと前記垂直方向摺動体との間に取付けられることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の車載用表示装置に係り、前記可動シャーシには前記表示部の下端前部を中心とする円弧状の案内溝及び/又は案内スロットが設けられ、該案内溝及び/又は案内スロットには、前記垂直方向摺動体に取付けられた連結部材が移動可能に係合されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の車載用表示装置に係り、前記案内溝及び/又は案内スロットは、前記可動シャーシ後面に形成される前記作動規制部材との当接面の上方と下方とにそれぞれ形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上記の構成により以下に述べるとおりの優れた効果を奏する。すなわち、請求項1に記載の発明によれば、表示部の回動の支点を仮想支点として表示部の前部下端に設けることができ、これによって表示部を斜めに(逆チルト状態)に傾ける際に、表示部下端が車載用表示装置の底面より突出しないようにすることができる。また、この車載用表示装置を自動車のダッシュボードに取り付けた際には、表示部の下端とダッシュボードの上端の間に間隙を設ける必要がなくなる。更に、間隙が不要であるため美観を損なうことが防止されるとともに、高い防塵効果を得ることができるようになる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明によれば、作動規制部材をローラーとしたことで、可動シャーシがローラーに当接した際に、可動シャーシの下部の後方移動、及び可動シャーシの上部の前方移動がローラーの外周面に沿って円滑に行われるようになる。また、可動シャーシのローラーへの当接面を損傷することを防止することも可能となる。
【0020】
また、請求項3に記載の発明によれば、付勢手段が可動シャーシを垂直方向摺動体と平行になるように付勢することによって、表示部は通常時は垂直方向摺動体とともに正立状態を維持することができるようになり、傾き状態(逆チルト状態)のときにも不正に表示部を開閉したりすることを防止できるようになる。
【0021】
また、請求項4に記載の発明によれば、付勢手段はトーションバネであって、可動シャーシと垂直方向摺動体との間に取付けられる。これによって付勢手段を広く市販されている安価な部品で構成することが可能であるとともに、比較的大きな付勢力を生じさせることが可能となる。また、トーションバネを可動シャーシと垂直方向摺動体の間に取付けたことによって、表示部を水平状態にした場合に、可動シャーシと垂直方向摺動体は共に移動し、バネは通常状態のままのため、バネが伸びて劣化してしまうことを防止できる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明によれば、可動シャーシに表示部の下端前部を中心とする円弧状の案内溝及び/又は案内スロットが設けられ、垂直方向摺動体に設けられた連結部材がそれらに係合されている。これにより、可動シャーシが作動規制部材に当接し、可動シャーシの下部が後方移動するとともに上部が前方移動する際に、可動シャーシは、案内溝及び/又は案内スロット内を連結部材が相対移動するように移動するため、案内溝及び/又は案内スロットの円弧の中心である表示部の下端前部を仮想支点として回動することができるようになる。
【0023】
また、請求項6に記載の発明によれば、作動規制部材の上方と下方に案内溝及び/又は案内スロットをそれぞれ設けたので、可動シャーシの下部の後方への移動、及び上部の前方への移動による可動シャーシの回動動作をより確実に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための車載用表示装置を例示するものであって、本発明をこの車載用表示装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例に係る車載用表示装置において、表示部が正立状態のときの全体外観斜視図である。図2は図1に示した車載用表示装置において表示部を取り除いた場合の外観斜視図である。図3は図1に示した車載用表示装置の側面図であって、図3(a)は側板を取り外して外側から見た場合の側面図、図3(b)は内側から見た場合の側面図、図3(c)は垂直方向摺動体を取り外して内側から見た場合の側面図である。
【0026】
車載用表示装置1の機器本体2は、図1及び図2に示すように、機器本体2の両側部において対面し後方に向かって延在する2枚の水平側板3、機器本体2の両側部において対面し鉛直に立設される2枚の垂立側板5、対面する2枚の水平側板3の内面後部に取付けられそれらの間にわたされる後板23、対向する2枚の垂立側板5の上端部に取付けられる上板24、及び垂立側板5の下端部の間に渡される底板(図示せず)を備える。垂立側板5、上板24、及び底板によって開口25が形成され、その開口の前方には、表示部9が設置される。さらに垂立側板5、水平側板3、後板23によってディスクドライブ収納スペース26が形成され、ディスクドライブ(図示せず)の他、車載用表示装置1を制御・駆動するための電子回路や駆動機構が収められる。また、ディスクドライブには前記開口25を通じてDVD−ROM等の記録媒体を挿入したり取り出したりすることができ、これによって車載用表示装置のプログラムの変更やデータの更新を行うことができる。
【0027】
また、車載用表示装置1は、図3に示すように、後述する水平ガイド(図示せず)、スライドベース8、垂直ガイド6、垂直方向摺動体7、可動シャーシ10、ローラー12を更に備える。
【0028】
水平側板3は、金属平板等から形成される薄板状で、機器本体2の側部に所定長さ延在するが、その内面の底部には、底辺に平行して水平ガイド(図示せず)が形成される。水平ガイドは、スロット状、溝状、或いは他の形状で形成される。
【0029】
車載用表示装置1はスライドベース8を備える。スライドベース8は、長尺の部材で、水平方向に延在する本体部81と、本体部81の前端部において若干上方に屈曲し、後述する垂直方向摺動体7に回動自在に連結される連結部82を備える。スライドベース8の本体部81は、前記水平側板3の水平ガイドに摺動自在に係合する。
【0030】
図4は本発明に係る車載用表示装置の垂立側板5を示す外観斜視図である。図4に示すように、垂立側板5は、水平側板3と同様に金属平板等から形成される所定の長さ及び高さを有する薄板状で、機器本体2の前部両側に設置される。この垂立側板5の内面には、垂直ガイド6が形成され、この垂直ガイド6は、垂立側板5の内面の上部から下部に向かって鉛直方向に向かって形成されたスロット状または溝状の案内通路である。詳細に説明すると、垂直ガイド6は、垂立側板5の上端かつ前端近傍から若干後方に向かいつつ斜めに降下し、垂立側板5の中央付近において屈曲し、前方に向かいつつ斜めに降下し、垂立側板5の下端から所定高さまで達するように形成される。
【0031】
図5は本発明に係る車載用表示装置の垂直方向摺動体7を示す外観斜視図である。垂直方向摺動体7は、図5に示すように、細長い金属平板を折曲げ加工することによって形成され、上部71、下部73、及び上部71と下部73の間において略コの字型に屈曲した中間部72から構成される。
【0032】
垂直方向摺動体7の上部71の上端部近傍には開口74が形成されており、連結部材78(図3参照)をこの開口74に通し垂直ガイド6に係合させることによって、垂直方向摺動体7は連結部材78を中心として回動しつつ垂直ガイド6に沿って滑動できるようになる。なお、垂直方向摺動体7の略コの字型の中間部72は、垂直方向摺動体7が垂直ガイド6に取付けられた際に、機器の内側に向かって突出する。
【0033】
垂直方向摺動体7の下部73の下端部近傍には開口77が形成されており、この開口77と、スライドベース8の連結部82に設けられた開口(図示せず)に連結部材11(図3参照)を通して軸支する。これによって、図3に示すように、垂直方向摺動体7は、スライドベース8に対して回動自在に連結される。
【0034】
また、垂直方向摺動体7の下部73の上方にはさらに開口76が設けられ、同様に中間部72の上方にも開口75が形成される。
【0035】
表示部9は矩形で薄型の構造で、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどが用いられ、機器本体2から供給される映像信号等により映像を表示するものである。なお、この表示部9には映像を表示するディスプレイの他、ユーザが機器本体2に対して各種の設定入力を行うための押しボタン、タッチパネル等の操作入力手段を設けてもよい。
【0036】
表示部9の後面には、可動シャーシ10が固設される。図6は本発明における車載用表示装置の可動シャーシの側面図であり、図6(a)は可動シャーシを機器本体の外側から見た場合の側面図、図6(b)は可動シャーシを機器本体の内側から見た場合の側面図である。
【0037】
可動シャーシ10は、表示部9と略同じ大きさの所定幅及び高さを有し表示部9の後面に取付けられる矩形の薄板部分と、その両側部において後方に向かって垂直に突出した側部とを備え、上方から見て略コの字型の部材である。それぞれの側部は、図6に示すように、所定幅長及び厚さを有し、その上部にはその内面に第一案内溝101が所定の深さで形成される。また、可動シャーシ10の下部には内面から外面へ貫通するように第二案内スロット102が設けられる。また、可動シャーシ10の前面108には、前面108から垂直に突出する突起104が複数個設けられており、この突起104を表示部9の後面に対応するように形成された凹部に嵌入させることによって可動シャーシ10は表示部9の後面に固定される。
【0038】
可動シャーシ10に形成された第一案内溝101及び第二案内スロット102は、それぞれ中心点103を等しくする円弧状に形成される。この円弧状の第一案内溝101及び第二案内スロット102は、その中心点103が図6(b)に示すように可動シャーシ10外に存在するが、その位置は、図3に示すように、可動シャーシ10が表示部9に取付けられた際に表示部9の下端前部に位置するようにされ、これを目的として第一案内溝101及び第二案内スロット102の曲率、弧の長さ、及び位置が決められている。
【0039】
可動シャーシ10は、下記の構成によって車載用表示装置1の固定部分である垂立側板5に取付けられる。すなわち、第一案内溝101と垂直方向摺動体7の中間部72の上方の開口75とを位置合わせして軸ピン等の連結部材106によって連結し、第二案内スロット102と垂直方向摺動体7の下部73の上方に設けられた開口76とを位置合わせして軸ピン等の連結部材107によって連結する。すると、可動シャーシ10の第一案内溝101と第二案内スロット102はそれぞれ円弧状であるから垂直方向摺動体7と可動シャーシ10は所定範囲で相対的に回動可能に連結されることになる。また垂直方向摺動体7は、その上部において連結部材78によって垂直ガイド6に係合され、さらに下部においてスライドベース8に連結部材11によって回動自在に連結されており、この構成によって表示部9、及び可動シャーシ10は、垂立側板5及び水平側板3に対して移動可能に組立てられることになる。
【0040】
また、可動シャーシ10は第一案内溝101よりも下方で、第二案内スロット102よりも上方に位置する後面109を有する。また、可動シャーシ10の側部中央部分にはばね取付け孔105が設けられる。
【0041】
垂立側板5の内側の面には、作動規制部材であるローラー12が取付けられる。ローラー12は、軸ピン等の取付け手段によって垂立側板5に回動自在に軸支される。ローラー12は、垂立側板5の下部中央付近に設置され、表示部9が正立した状態の際には、可動シャーシ10の後面109と所定の間隙だけ離れて対峙する。また、ローラー12は、第一案内溝101よりも下方に位置し、第二案内スロット102よりも上方に位置するように垂立側板5に取付けられる。
【0042】
なお、本実施例においては、作動規制部材としてローラー12を使用したが、可動シャーシ10の移動を規制するものであれば他の形状のものでもよく、適宜変更して使用することができる。ただし、ローラーを使用した場合は、可動シャーシ10の後面109が後述するようにローラー12に当接した際に、後面109がローラーの外周面に沿って円滑に回動することが可能となるので好ましい。また、可動シャーシ10の後面109がローラーに接触することによる損傷を防止することも可能となる。
【0043】
図3(a)に示すように、可動シャーシ10と垂直方向摺動体7の間にはトーションバネ13が取付けられる。つまり、トーションバネ13の一端は可動シャーシ10のばね取付け孔105にネジ等の固定部材で固定され、他端は、垂直方向摺動体7にやはり固定部材等で固定される。これによって、トーションバネ13は可動シャーシ10の取付けられた表示部9を垂直方向摺動体7の方向に向けて付勢し、表示部9が正立状態あるいは水平状態の場合に表示部9と垂直方向摺動体7とが共に移動するようにする。
【0044】
なお、本実施例では、可動シャーシ10を垂直方向摺動体7と平行になるように付勢する付勢手段としてトーションバネ13を使用しているが、これにより、広く流通している安価な部品で付勢手段を構成することが可能となる。さらには、トーションバネによって比較的大きな付勢力を発生させることが可能である。また、トーションバネ13以外の付勢手段、例えばコイルスプリング等を使用してもよいことは明らかである。
【0045】
上記説明した車載用表示装置1の動作について下記に説明する。この車載用表示装置1の機器本体2の内部に設けられたディスクドライブ収納スペース26にはモータ等の駆動部と、それを制御する制御回路等が収容されており、表示部9に設けられた操作入力手段からユーザによって設定入力される指示に従って動作する。なお、ユーザによる設定入力の指示は、リモートコントローラーや音声指示等、表示部9の操作入力手段以外からのものであってもよい。また、車載用表示装置1の駆動はモータ以外の動力源によるものであってもよい。
【0046】
この車載用表示装置1の表示部9は、ユーザの指示に従って、図1〜図3に示す正立状態、図7、図8に示す水平状態、図9、図10に示す傾き(逆チルト)状態の三つの位置を取ることができる。
【0047】
図1〜図3に示すように、表示部9が正立状態のとき、スライドベース8は水平側板3に設けられた水平ガイドに沿って後方に引き込まれており、したがって垂直方向摺動体7の下端部は、スライドベース8の連結部82に連結されているため、垂立側板5の下端部分に位置する。垂直方向摺動体7の上端部分は連結部材78により垂直ガイド6に沿って滑動可能であるが、このとき垂直方向摺動体7の上端部分は垂立側板5の上端部分に位置する。
【0048】
次に、表示部9を水平状態まで傾けることによって開口25を露出させ、ディスクドライブ収納スペース26に内蔵されたディスクドライブにアクセスできるようにする際の動作について説明する。図7は表示部を水平状態まで傾けた際の車載用表示装置の外観斜視図である。また、図8は図7に示した車載用表示装置の側面図である。
【0049】
車載用表示装置1の機器本体2内部に収容されたモータ等を含む駆動機構によってスライドベース8を水平ガイドに沿って前方へ送り出すと、スライドベース8及び連結部82は機器本体2の前方及び自動車のダッシュボードから前方へ突出する。垂直方向摺動体7の下端部はスライドベース8の連結部82に連結部材11によって連結され、上端部は垂直ガイド6に沿ってのみ移動可能であるため、垂直方向摺動体7はスライドベース8の移動に伴い、その下端部が前方へ移動するとともにその上端部は垂直ガイド6に沿って垂直ガイドの下端まで降下し、これによって垂直方向摺動体7は連結部材11を中心として回動し、略水平状態になる。
【0050】
このとき、垂直方向摺動体7の中間部72の上部の開口75が連結部材106によって可動シャーシ10の第一案内溝101に係合され、垂直方向摺動体7の下部73の上部の開口76が連結部材107によって可動シャーシ10の第二案内スロット102に係合され、可動シャーシ10と垂直方向摺動体7とはトーションバネ13によって付勢されているため、可動シャーシ10は垂直方向摺動体7が連結部材11を中心として回動するのに伴い垂直方向摺動体7とともに略水平方向になるまで移動し、表示部9を水平状態まで傾ける。このとき、表示部9は、下端部が自動車のダッシュボードから前方に引き出されるように移動し、上端部は、下端部後方を中心として回動しながら降下するように移動して水平状態に達する。
【0051】
これによって、表示部9の後方の開口25が現れ、開口25を通じて機器本体2内部のディスクドライブ収納スペース26に設置されたディスクドライブにDVD−ROM等の記録媒体を挿入したり取り出したりすることが可能となる。
【0052】
次に、表示部9を好適な表示角度とするため所定角度下向きに傾けた傾き状態(逆チルト状態)時の動作について説明する。図9は本発明の実施例に係る車載用表示装置において、表示部が傾き状態(逆チルト状態)のときの全体外観斜視図である。図10は図9に示した車載用表示装置の側面図であって、図10(a)は側板を取り外して外側から見た場合の側面図、図10(b)は内側から見た場合の側面図、図10(c)は垂直方向摺動体を取り外して内側から見た場合の側面図である。
【0053】
図1〜図3に示す正立状態において、スライドベース8を、モータ等の駆動機構により水平ガイドに沿ってさらに後方に引き込むと、スライドベース8の連結部82は、正立状態のときよりも若干後方に移動する。垂直方向摺動体7は、その下端部分がスライドベース8の連結部82に連結されているので、下端部分はスライドベース8の後方移動に伴って若干後方に移動するとともに、上端部分は垂直ガイド6に沿ってのみ移動可能であるが、このときはスライドベース8の後方への移動に伴って移動できる経路が存在しないため、上端部分は垂直ガイド6の上端から移動しない。したがって、垂直方向摺動体7は下端部分が後方に引っ張られ、上端部分を中心として後方へ向かって若干回動する。
【0054】
このとき、垂直方向摺動体7の下部73の上方に設けられた開口76とそこに挿通された連結部材107は後方に向かって移動するが、連結部材107は可動シャーシ10の第二案内スロット102に係合されているため、可動シャーシ10は後方に向かって移動し、可動シャーシ10の後面109がローラー12に当接する。スライドベース8を更に後方へ移動させると、それに伴って垂直方向摺動体7の下部が後方に移動し、可動シャーシ10を更に後方へ移動させようとするが、可動シャーシ10の後面109がローラー12に当接しているため、可動シャーシ10は全体としてはそれ以上後方へ移動することは不可能である。しかしながら、可動シャーシ10は、ローラー12への当接部分よりも下方において垂直方向摺動体7に係合されているため、垂直方向摺動体7下部が後方へ移動するのに伴い、可動シャーシ10の下部のみが後方へ引っ張られて移動し、可動シャーシ10のローラー12への当接部分がローラー12の外周面に沿って摺接しながら回動し、可動シャーシ10の上部は前方へ移動する。
【0055】
このとき、可動シャーシ10は、表示部9の前面下部に存在する仮想支点(中心点103)を中心として回動する。これは、可動シャーシ10に設けられた第一案内溝101と第二案内スロット102がそれぞれ中心点103を中心とする円弧状に形成されており、それらに垂直方向摺動体7の中間部と下部の開口75、76に係合された連結部材106、107が挿通されることによって可能となる。可動シャーシ10の後面109がローラー12へ当接した状態で、可動シャーシ10の下部が後方へ引っ張られると、上述したように、可動シャーシ10のローラー12への当接部分がローラー12の外周面に沿って摺接しながら回動し、可動シャーシ10の上部は前方へ移動するが、このとき、可動シャーシ10は、垂直方向摺動体7の中間部と下部の開口75、76に係合された連結部材106、107が相対的に第一案内溝101及び第二案内スロット102内を移動するように中心点103を仮想支点として回動する。
【0056】
このようにして表示部9はその前部下端を中心として斜め下方に傾くので、表示部9の傾き動作の中心が表示部の前部下端となり、表示部の下端部は機器本体2の底面より下方に突出しない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例に係る車載用表示装置において、表示部が正立状態のときの全体外観斜視図である。
【図2】図1に示した車載用表示装置において表示部を取り除いた場合の外観斜視図である。
【図3】図1に示した車載用表示装置の側面図であって、図3(a)は側板を取り外して外側から見た場合の側面図、図3(b)は内側から見た場合の側面図、図3(c)は垂直方向摺動体を取り外して内側から見た場合の側面図である。
【図4】本発明に係る車載用表示装置の垂立側板を示す外観斜視図である。
【図5】本発明に係る車載用表示装置の垂直方向摺動体を示す外観斜視図である。
【図6】本発明における車載用表示装置の可動シャーシの側面図であり、図6(a)は、可動シャーシを機器本体の外側から見た場合の側面図、図6(b)は、可動シャーシを機器本体の内側から見た場合の側面図である。
【図7】表示部を水平状態まで傾けた際の車載用表示装置の外観斜視図である。
【図8】図7に示した車載用表示装置の側面図である。
【図9】本発明の実施例に係る車載用表示装置において、表示部が傾き状態(逆チルト状態)のときの全体外観斜視図である。
【図10】図9に示した車載用表示装置の側面図であって、図10(a)は側板を取り外して外側から見た場合の側面図、図10(b)は内側から見た場合の側面図、図10(c)は垂直方向摺動体を取り外して内側から見た場合の側面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 車載用表示装置
2 機器本体
23 後板
24 上板
25 開口
26 ディスクドライブ収納スペース
3 水平側板
5 垂立側板
6 垂直ガイド
7 垂直方向摺動体
71 上部
72 中間部
73 下部
74 開口
75 開口
76 開口
77 開口
78 連結部材
8 スライドベース
81 本体部
82 連結部
9 表示部
10 可動シャーシ
101 第一案内溝
102 第二案内スロット
103 中心点
104 突起
105 ばね取付け孔
106 連結部材
107 連結部材
108 前面
109 後面
11 連結部材
12 ローラー
13 トーションバネ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体の側方において水平方向に延在する水平ガイドと、前記機器本体の前部側方において垂直方向に延在する垂直ガイドと、前記水平ガイドに摺動自在に取付けられたスライドベースと、下端部が前記スライドベースの前端部に回動自在に連結され上端部が前記垂直ガイドに沿って移動可能な垂直方向摺動体と、前記垂直方向摺動体に取り付けられる表示部と、を備え、
前記スライドベースを前方に移動させると前記垂直方向摺動体の下端が前方へ移動するのに伴い上端が前記垂直ガイドに沿って下降し、前記表示部を正立状態から水平状態にせしめる車載用表示装置において、
前記表示部の後面に固定され、下端後部が前記垂直方向摺動体の下端部に回動自在に固定されることにより移動可能に取り付けられる可動シャーシと
前記機器本体の前部に設けられ、前記可動シャーシの作動を規制する作動規制部材と、を更に備え、
前記スライドベースを前記表示部の正立状態から更に後方に移動すると、前記可動シャーシが前記垂直方向摺動体の下部とともに後方へ移動し、前記作動規制部材に当接することによって、前記表示部の下端前部に位置する仮想支点を中心として前記可動シャーシの下部が後方へ更に移動するとともに前記可動シャーシの上部が前方へ移動するように回動して、前記表示部を斜めに傾けることを特徴とする車載用表示装置。
【請求項2】
前記作動規制部材はローラーであることを特徴とする請求項1に記載の車載用表示装置。
【請求項3】
前記可動シャーシを前記垂直方向摺動体と平行になるように付勢する付勢手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の車載用表示装置。
【請求項4】
前記付勢手段はトーションバネであって、前記可動シャーシと前記垂直方向摺動体との間に取付けられることを特徴とする請求項3に記載の車載用表示装置。
【請求項5】
前記可動シャーシには前記表示部の下端前部を中心とする円弧状の案内溝及び/又は案内スロットが設けられ、該案内溝及び/又は案内スロットには、前記垂直方向摺動体に取付けられた連結部材が移動可能に係合されていることを特徴とする請求項1に記載の車載用表示装置。
【請求項6】
前記案内溝及び/又は案内スロットは、前記可動シャーシ後面に形成される前記作動規制部材との当接面の上方と下方とにそれぞれ形成されることを特徴とする請求項5に記載の車載用表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−49726(P2008−49726A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225090(P2006−225090)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】