説明

車載監視装置

【課題】通信回線を介して外部装置と接続可能であり、搭載された自車両の周囲の状況を外部装置から把握可能とする車載監視装置において、被災エリアの車両にて得た状況を公衆利用しようとするとプライバシーが害される。
【解決手段】監視装置は災害発生情報を受信すると被災モードを設定する。監視装置は、被災モード中は(S92)、登録ユーザからの接続要求に対しては被災モードが設定されない場合と同様に通常着信処理(S100)を行い得る。一方、公衆からの接続要求に対しては、車内画像の取得は許可せず、車外画像の取得のみを認めるなど、通常着信処理よりも制約を課した制限着信処理(S118)を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信回線を介して外部装置と接続可能であり、搭載された自車両の周囲の状況を外部装置から把握可能とする車載監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
災害時に被災地域の状況の情報を収集・公開する様々なシステムが開発され運用されている。そのようなシステムとして、被災地域にいる人が有する携帯電話等を用い、被災地の状況情報をボトムアップ的に収集し、ウェブサイトを通じて公開するものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
さて、近年、自動車に搭載されるようになってきた映像記録型イベントレコーダ(ドライブレコーダ)は、車載カメラを備え、当該カメラで車外の画像を撮影・記録し、例えば、衝突事故の前後に自動車の挙動がどうであったかを判断するために用いられる。このドライブレコーダのようなカメラを有する車載監視装置にさらに携帯電話等の移動体通信を組み合わせ、当該車載監視装置を用いて車両にて発生した事故を緊急対応機関に通報するシステムも存在する。当該システムでは、車載監視装置は衝突等の事故を検知すると通信回線を介して監視センタやユーザ等へ自動通報を行う他、監視センタやユーザ等から車載監視装置へ発呼を行い、当該車載監視装置のカメラによって撮影された画像を取得したり搭乗者と通話して状況確認等を行うことも考えられている。このような車載監視装置も被災情報の収集・提供に利用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−217411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の車載監視装置は、搭載された自車両の周囲の状況の情報を外部装置からプル型で把握可能とする。状況情報の提供先が自車両の所有者等が予め了承した者であれば、プライバシー保護の観点で特段の問題はないが、当該状況情報を公衆に開示される被災情報として利用する際には、自車両の搭乗者や被撮影者のプライバシー保護を考慮しなければならないという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、状況情報を被災情報として利用する場合において自車両の搭乗者や被撮影者のプライバシー保護が図られる車載監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車載監視装置は、通信回線を介して外部装置と接続可能であり、搭載された自車両の周囲の状況を前記外部装置から把握可能とする装置であって、前記自車両の車外を撮影した車外画像を含む状況情報を取得する状況取得部と、登録要求元が予め登録され、当該登録要求元からの取得要求に応じて、前記状況情報を当該登録要求元へ送信する制御部と、災害発生情報を受信する災害情報取得部と、を有し、前記制御部が、前記災害発生情報を受信した場合に被災モードを設定し、当該被災モード中は前記登録要求元ではない非登録要求元からの取得要求に対しても前記状況情報を当該要求元へ送信する。
【0008】
他の本発明に係る車載監視装置は、さらに、前記自車両の現在位置を取得する測位部を有し、前記制御部が、前記現在位置が被災エリア内である間、前記被災モードを設定する。
【0009】
本発明の好適な態様では、前記制御部は、前記被災モード中の前記要求元からの前記取得要求に対する前記状況情報の送信に関し、前記登録要求元に比べて前記非登録要求元に対して制約を課す。例えば、前記状況情報が、車外画像に加えさらに前記自車両の車内を撮影した車内画像を含む場合において、前記制御部は、前記非登録要求元に対する前記制約として、前記車内画像の送信を禁止する。また、例えば、前記制御部は、前記非登録要求元に対する前記制約として、前記非登録要求元との通信中に前記登録要求元から前記取得要求を受けた場合に、当該非登録要求元よりも当該登録要求元への前記状況情報の送信を優先する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車載監視装置によれば、当該装置が取得した状況情報を被災情報として利用する場合において自車両の搭乗者や被撮影者のプライバシー保護が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る監視システムの概略の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る監視システムにおける監視装置の概略のブロック構成図である。
【図3】災害発生情報を受信した場合の監視装置の動作を示す概略のフロー図である。
【図4】着呼時の監視装置の動作を示す概略のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)である監視システムについて、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、実施形態に係る監視システム2の概略の構成図である。監視システム2は、監視装置4、センタ装置6、ユーザ端末(利用者端末)8を含んで構成される。監視装置4は、自動車等の車両10に搭載され、当該車両10の周囲や車内を監視対象領域とし、車両10に発生した事故を通信回線を介して外部装置へ通報することができる車載監視装置である。センタ装置6は、例えば、監視サービスを提供する事業者の施設(監視センタ)に設置される。ユーザ端末8は、監視装置4が搭載された車両10の所有者や監視サービスの提供を受ける者によって操作される携帯電話、固定電話等の通信装置であり、その電話番号等の端末識別情報は予め監視装置4に登録される。一方、一般端末12は、ユーザ端末8以外の携帯電話、固定電話等の通信装置であり、その電話番号等の端末識別情報が監視装置4に登録されていないものである。
【0014】
監視システム2において、監視装置4は上述のように衝突等の事故を検知すると通信回線を介してセンタ装置6へ自動通報を行う。さらに、監視装置4は地震等の災害発生時に、例えば被災エリア14の被災情報の収集・提供に利用される。
【0015】
監視センタは監視装置4から事故検知の通報を受けると、センタ装置6から監視装置4へ発呼を行い、監視装置4のカメラによって撮影された画像を取得したり搭乗者と通話して状況確認等を行う。また、センタ装置6は、災害発生時に、被災地の情報のデータベース(被災情報DB)を作成し保持する。被災情報DBは、被災地の市区町村を示す被災エリア14と、被災エリア14に位置する車両10に搭載された監視装置4の電話番号とを対応づけた情報を含む。センタ装置6は被災情報DBを例えばインターネット上に公開するサーバ機能を有する。例えば、被災エリア14を示した地図をウェブページに表示させ、1つの被災エリア14が選択されると、そのエリアに位置する車両10の監視装置の電話番号を表示する。一般端末12の利用者は、災害発生時に公開された被災情報DBから、被災エリア14内の車両10の監視装置4の電話番号を知ることができる。
【0016】
監視装置4、センタ装置6、ユーザ端末8、一般端末12は、公衆回線網等のネットワーク16を介して互いに通信可能に構成される。ネットワーク16には、移動体通信の基地局18も接続される。車両10に搭載された監視装置4は移動体通信機能を有し、監視装置4と、センタ装置6、ユーザ端末8及び一般端末12とはネットワーク16及び移動体通信を介して通信することができる。なお、図1ではユーザ端末8、一般端末12が移動体通信装置である場合を示している。
【0017】
図2は、監視装置4の概略のブロック構成図である。監視装置4は、車両10の衝突事故等の異常検出機能、外部装置との通信機能、及び現在位置の測位機能を有し、撮像部20、センサ22、操作部24、通信部26、測位部28、記憶部30、マイク32、スピーカ34、電源切替部36、予備バッテリ38、及び制御部40を備える。
【0018】
撮像部20は車外カメラ42と車内カメラ44とを有する。車外カメラ42及び車内カメラ44は例えば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを撮像素子として備え、レンズ等の光学系を介して撮像面に形成される画像を電気信号に変換し出力する。車外カメラ42は、車外を撮影するカメラである。車外カメラ42として、基本的には車両10の前方領域を撮影するものが設けられるが、この他、車両10の後方領域を撮影するカメラや側方領域を撮影するカメラを併設してもよい。車外カメラ42は車体外面に取り付けるものであってもよいし、車内に取り付け窓を介して車外を撮影するものであってもよい。車内カメラ44は、車内を撮影するカメラであり、車内に取り付けられる。例えば、車内カメラ44は運転席より前に取り付けられ、運転席の搭乗者を含む範囲を撮影する。車外カメラ42及び車内カメラ44は制御部40から電力供給及び制御を受けて動作し、それらから出力される画像信号は制御部40に入力される。
【0019】
センサ22は、車両事故発生を検出する事故検出手段として設けられる。例えば、衝突事故等を検出するためにセンサ22として加速度センサが用いられる。センサ22は制御部40から電力供給を受けて動作し、その出力信号は制御部40に入力される。
【0020】
操作部24は非常ボタン46と取消ボタン48とを有し、基本的にそれぞれ搭乗者により操作される。非常ボタン46は、非常事態の発生をセンタ装置6へ通報する際に操作される。非常事態として例えば、強盗に襲われた場合など、搭乗者に身の危険を感じさせる状況が挙げられる。取消ボタン48は、センサ22により誤って事故が検出された場合や、非常ボタン46を誤って操作した場合に、それら誤検出・誤操作によるセンタ装置6への通報を取り消すキャンセル操作に用いられる。非常ボタン46及び取消ボタン48の出力信号はそれぞれ制御部40に入力される。
【0021】
通信部26は、移動体通信を行うための手段であり、基地局18と無線回線で接続され、制御部40から入力された信号を送信し、また基地局18から受信した信号を制御部40に入力し、ネットワーク16を介して監視装置4と外部装置との通信を可能とする。例えば、通信部26は画像・音声の伝送を行い、センタ装置6やユーザ端末8との間で音声通話又はテレビ電話による通話を可能とする。
【0022】
測位部28は、監視装置4が搭載された車両10の現在位置を取得するための手段である。測位部28はGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)衛星信号の受信機や、ジャイロスコープ、加速度センサなどを用いて構成される。測位部28はGPSによる測位と、ジャイロスコープ、加速度センサ、及びタイヤの回転に伴う車速信号などの情報による自立航法による測位とを併用することにより高精度な現在位置の取得が可能である。
【0023】
記憶部30は、半導体メモリやハードディスクを用いて構成され、監視装置4の動作に必要な各種プログラムやデータを記憶する。例えば、記憶部30は、監視装置4にアクセス可能な相手先の登録情報を予め記憶する。当該登録情報は、センタ装置6の電話番号、ユーザ端末8の電話番号を含む。また、記憶部30は撮像部20により撮影された画像を記録することができる。記憶部30へのデータの格納及び記憶部30からのデータの読み出しは制御部40により行われる。例えば、記憶部30に記憶される画像は制御部40によってFIFO方式で更新され、制御部40はセンサ22や非常ボタン46により異常を感知すると一定時間後に当該更新処理を停止する。
【0024】
マイク32、スピーカ34は、電話機能における相手方との通話に用いられる。また、スピーカ34は、監視装置4からのメッセージを報知するためにも用いられる。例えば、制御部40は、センサ22や非常ボタン46からの信号により事故発生や非常事態を検知すると車内への報知処理を行い、事故発生や非常事態の検知を知らせるメッセージの音声信号を記憶部30から読み出してスピーカ34へ出力する。
【0025】
電源切替部36は、監視装置4の動作に用いる電源の供給を車載バッテリから受けるか、予備バッテリ38から供給するかを切り替える。電源切替部36は車載バッテリからの電源供給が存在する通常の状態では、当該電源を制御部40へ供給する。一方、大事故等によって車載バッテリからの電源供給が途絶えた場合には、予備バッテリ38から制御部40へ電力を供給する。予備バッテリ38は、リチウムイオン電池等の二次電池からなる。
【0026】
制御部40は、マイクロプロセッサ(MPU)等を用いて構成され、実行されるプログラムに応じて、監視装置4の各部の動作を制御する。具体的には、制御部40は、撮像部20、センサ22、操作部24、通信部26、測位部28、記憶部30、マイク32、スピーカ34、電源切替部36と接続され、各部から入力される信号を処理し、また各部の動作を制御する。
【0027】
上述の構成にて、撮像部20及びマイク32は、監視対象領域からその状況を示す状況情報を取得する状況取得部としての機能を有する。具体的には車外カメラ42、車内カメラ44はそれぞれ状況情報として車外、車内の画像を取得し、マイク32は状況情報として車内の音声を取得する。また、センサ22及び非常ボタン46は、監視対象領域の状況に関連がある所定の異常事象の発生を感知する異常感知部としての機能を有する。具体的には、センサ22は異常事象として上述したように車両事故発生を検出し、また、非常ボタン46は、搭乗者等の操作により非常事態を感知する。通信部26はネットワーク16を介して災害発生情報を受信する災害情報取得部として機能する。例えば、災害発生情報はセンタ装置6から送信される。
【0028】
図3は、災害発生情報を受信した場合の監視装置4の動作を示す概略のフロー図である。
【0029】
センタ装置6は例えば、災害発生時に、被災エリアを示した災害発生情報を全監視装置4に配信する。なお、併せてセンタ装置6は災害発生時に被災情報DBを作成する。
【0030】
制御部40は災害発生情報を受信すると(S60)、測位部28を用いて自車両の現在位置を測位し(S62)、被災エリア14内に位置しているか否かを判定する(S64)。
【0031】
取得した現在位置が被災エリア14内になければ、制御部40は、被災エリア14の被災情報を収集・提供する被災モードを設定せず(S64にて「No」)、災害発生情報受信時の処理を終了する(S80)。この場合、当該監視装置4は、事故発生の際の通報等の対応を行う基本機能を実行する。
【0032】
一方、制御部40は被災エリア14内に位置していることを検知すると(S64にて「Yes」)、被災モードに移行し(S66)、センタ装置6へ現在位置及び被災モードを設定したことを通知する被災通知処理を行う(S68)。被災モードでは、登録要求元ではない非登録要求元、つまり一般端末12からの取得要求に対しても、一定の制約の下で状況情報を送信する。これにより、被災エリア14の状況情報を公衆が利用可能となる。
【0033】
センタ装置6は、監視装置4から被災通知を受信すると、当該監視装置4を被災エリア14と対応付けて被災情報DBに登録する。そして、上述したように、被災エリア14を示した地図上に当該監視装置4から送られた現在位置をプロットし、一般端末12の利用者に被災エリア14に関する情報として公開する。地図上の位置は監視装置4から送られる位置情報に応じて更新していく。
【0034】
監視装置4は、被災モードの期間中、周期的に測位を行い(S70)、まだ被災エリア14内にいるか否かを判断する(S72)。まだ被災エリア14内にいる場合は(S72にて「Yes」)、被災モードを維持し、取得した現在位置をセンタ装置6へ送信する(S74)。被災エリア14から出た場合は(S72にて「No」)制御部40は被災モードを解除し(S76)、センタ装置6へ被災モードを解除したことを通知する被災解除通知処理を行う(S78)。
【0035】
なお、処理S72において、現在位置が被災エリア14内か否かの実質的な判定をセンタ装置6にて行い、監視装置4はその判定結果に基づいて処理S72における分岐を選択する構成とすることも可能である。この構成では、監視装置4は測位した現在位置をセンタ装置6へ通知し、センタ装置6は当該現在位置を災害発生情報と照合して、当該現在位置が被災エリア14内か否かを判定し、判定結果を監視装置4へ返信する。この場合、監視装置4からの被災通知(S68)、被災解除通知(S78)は不要となる。
【0036】
上述の構成では、センタ装置6は全監視装置4へ災害発生情報を送信へ配信するが、別の構成として、災害発生情報、またはセンタ装置6にて判定した被災エリア14内か否かの判定結果を、被災エリア14の監視装置4のみに配信してもよい。例えば、事故発生の通報等を行う基本機能での動作モード状態で、監視装置4が定期的に位置をセンタ装置6へ登録したり、監視装置4に対応する基地局18の位置情報をセンタ装置6にて取得する場合に、当該構成を採用することができる。この場合、処理S62、S64を省略することができる。
【0037】
また、監視装置4へ与えられる災害発生情報は、センタ装置6以外からであってもよい。例えば、緊急地震速報などを利用することが可能である。
【0038】
図4は、着呼時の監視装置4の動作を示す概略のフロー図である。
【0039】
制御部40は、外部装置から接続要求を受けると(S90)、被災モード中であるか、被災モードが設定されていない基本モードであるかを判定する(S92)。基本モードである場合は(S92にて「No」)、発信者の電話番号が記憶部30に登録しているアクセス可能な相手先(登録要求元)の番号であり(S94にて「Yes」)、かつ現在、通話中でなければ(S98にて「No」)通常の着信処理を行う(S100)。
【0040】
一方、発信者番号が登録されたものではない場合(S94にて「No」)、及び通話中である場合は(S98にて「Yes」)、それぞれ着信を拒否する(S96)。例えば、着信拒否は、通信部26がオフフックに続いてオンフックを行うことでなされ、これにより、単に接続要求元が発呼を断念するのを待つよりも回線が話中となる時間が短縮され、センタ装置6からの接続要求を速やかに受けられる。
【0041】
通常着信処理S100では、発信者であるセンタ装置6やユーザ端末8に着信を許可し、通話を開始する。またテレビ電話機能を実行時には、車外カメラ42、車内カメラ44から得られる画像を送信する。この画像送信は監視装置4とセンタ装置6又はユーザ端末8との通話、つまり回線接続が維持されている間、例えば一定の時間間隔で周期的に行われる。例えば、制御部40はデフォルトとして車内カメラ44の画像を送信し、センタ装置6やユーザ端末8からの画像切替の制御信号に応じて車外カメラ42の画像と車内カメラ44の画像とを切り替えて送信する。
【0042】
なお、センタ装置6やユーザ端末8から監視装置4への制御信号として例えば、DTMF(Dual-Tone Multi-Frequency)信号を用いる。監視装置4側では制御部40が予め定められたシーケンスでDTMF信号を解釈し、要求元に対して予め設定された許可範囲内で、例えば、カメラ切り替えや、記憶部30に蓄積された画像の再生・消去等の動作を実行する。
【0043】
被災モード中である場合は(S92にて「Yes」)、制御部40は発信者が登録要求元であり(S102にて「Yes」)、かつ現在、通話中でなければ(S104にて「No」)、通常着信処理S100を行う。発信者が登録要求元であるが(S102にて「Yes」)通話中である場合は(S104にて「Yes」)、制御部40は現在通話中の相手の電話番号が登録されたものかを判定する(S106)。相手が登録された番号でなければ(S106にて「No」)、その通話を切断する処理をした上で(S108)登録要求元からの接続要求に対して通常着信処理S100を行う。相手が登録された番号であれば(S106にて「Yes」)、登録要求元からの接続要求に対し着信を拒否する(S120)。
【0044】
さて、被災モード中においては、既に述べたように、制御部40は、非登録要求元である一般端末12からの接続要求に対し着信を許可し、一般端末12による状況情報の取得を可能とする(S110〜S118)。但し、その状況情報の取得に関しては、登録要求元であるセンタ装置6やユーザ端末8に比べて非登録要求元に対して制約を課す。
【0045】
具体的には、制御部40は、現在、通話中でなければ(S110にて「No」)、所定の制約を課した上で着信を許可する制限着信処理S118を行う。通話中である場合は(S110にて「Yes」)、通話相手が登録された番号でなく(S112にて「No」)、かつ所定の利用制限時間が経過している場合には(S114にて「Yes」)その通話を切断する処理をした上で(S116)接続要求に対して制限着信処理S118を行う。
【0046】
一方、通話中の相手が登録された番号、つまりセンタ装置6またはユーザ端末8である場合は(S112にて「Yes」)、その通話を優先するために、一般端末12からの接続要求に対し着信を拒否する(S120)。また、通話相手が一般端末12であっても(S112にて「No」)、所定の利用制限時間内は、後からの接続要求に対し着信を拒否する(S120)。このように一旦、着信を許可された者の接続を所定時間は保護することで、接続が頻繁に切り替わり被災地の状況情報を効率的に取得できなくなるという事態を防止している。利用制限時間は、着信許可を得た者が被災地状況を把握できるという観点と、多くの接続希望者に許容できる待ち時間で着信許可を与えられるという観点とのバランスを考慮して定めることができる。例えば、利用制限時間は3〜5分程度に設定することができる。
【0047】
上述のように、被災モード中では、制御部40は登録要求元及び非登録要求元それぞれの接続要求に応え、それら要求元へ状況情報を送信するが、その際、制限着信処理S118では登録要求元に比べて非登録要求元に対して制約を課す。既に述べた、通話中の相手が登録要求元である場合に、非登録要求元からの接続要求は着信を拒否することや、非登録要求元が通話中の場合に利用制限時間を経過していれば、当該通話を切断して他の接続要求に着信許可を与えることは、当該制約に該当する。また、非登録要求元が通話中のときに登録要求元から接続要求を受けた場合、当該通話を切断して登録要求元からの接続要求に着信許可を与えることも当該制約の一形態である。
【0048】
また、他の制約の例として、要求元が取得できる状況情報の内容・種類に制限を設ける。例えば、一般端末12から閲覧できる画像は、車外カメラ42による撮影画像のみとし、車内カメラ44による撮影画像の送信を禁止する。さらに、マイク32による車内の音声の送信も禁止する。また、記憶部30に記録された画像の閲覧も禁止する。すなわち、一般に開放すべき被災エリア14に関する情報ではない車内の状況情報については、搭乗者のプライバシーを保護する目的から、一般端末12に配信しない。具体的には、監視装置4は一般端末12に対して着信許可すると、車外カメラ42の撮影画像を送信し、車内カメラ44への切替制御信号等は無視する。
【0049】
このように監視装置4は、災害発生時に被災エリア14の画像を提供することができ、災害時の情報資源の有効活用を可能とする。その際、監視装置4は、自車両の搭乗者や監視サービスの登録ユーザのプライバシーを保護し、またセンタ装置6やユーザ端末8からの利用が阻害されないようにすることができる。
【0050】
なお、上述の実施形態では異常通報をしない場合でも監視装置4はセンタ装置6へ着信許可する構成を示したが、異常通報をした場合だけセンタ装置6の着信を許可するようにしてもよい。また、上述の実施形態では、通信方式に移動体通信を利用したテレビ電話を採用した例を示したが、通信方式はこれに限定されるものではなく、遠隔から無線で画像伝送が可能な公知の技術で代替することができる。
【符号の説明】
【0051】
2 監視システム、4 監視装置、6 センタ装置、8 ユーザ端末、10 車両、12 一般端末、14 被災エリア、16 ネットワーク、18 基地局、20 撮像部、22 センサ、24 操作部、26 通信部、28 測位部、30 記憶部、32 マイク、34 スピーカ、36 電源切替部、38 予備バッテリ、40 制御部、42 車外カメラ、44 車内カメラ、46 非常ボタン、48 取消ボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線を介して外部装置と接続可能であり、搭載された自車両の周囲の状況を前記外部装置から把握可能とする車載監視装置であって、
前記自車両の車外を撮影した車外画像を含む状況情報を取得する状況取得部と、
登録要求元が予め登録され、当該登録要求元からの取得要求に応じて、前記状況情報を当該登録要求元へ送信する制御部と、
災害発生情報を受信する災害情報取得部と、
を有し、
前記制御部は、前記災害発生情報を受信した場合に被災モードを設定し、当該被災モード中は前記登録要求元ではない非登録要求元からの取得要求に対しても前記状況情報を当該要求元へ送信すること、
を特徴とする車載監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載監視装置において、さらに、
前記自車両の現在位置を取得する測位部を有し、
前記制御部は、前記現在位置が被災エリア内である間、前記被災モードを設定すること、
を特徴とする車載監視装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車載監視装置において、
前記制御部は、前記被災モード中の前記要求元からの前記取得要求に対する前記状況情報の送信に関し、前記登録要求元に比べて前記非登録要求元に対して制約を課すこと、
を特徴とする車載監視装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車載監視装置において、
前記状況情報は、さらに前記自車両の車内を撮影した車内画像を含み、
前記制御部は、前記非登録要求元に対する前記制約として、前記車内画像の送信を禁止すること、
を特徴とする車載監視装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の車載監視装置において、
前記制御部は、前記非登録要求元に対する前記制約として、前記非登録要求元との通信中に前記登録要求元から前記取得要求を受けた場合に、当該非登録要求元よりも当該登録要求元への前記状況情報の送信を優先すること、
を特徴とする車載監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−199722(P2011−199722A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65942(P2010−65942)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】