車間距離制御装置及び車間距離制御方法
【課題】目標車間距離Lの初期値を大きな値に設定しなくとも、追従走行制御可能な車間距離範囲を大きくすることができ、運転者にとって違和感の低い追従走行制御を可能とする。
【解決手段】自車両MM進行方向に存在する先行車両と自車両MMとの車間距離Lrelが予め設定した制御開始距離以下になったと判定すると追従走行制御を開始して、上記車間距離Lrelが予め設定した目標車間距離Lとなるように自車両MMの制駆動力の制御を行う。そして、設定したアクセル開度初期値AP0に対し、現在のアクセル開度が大きい場合には上記目標車間距離Lを減少補正し、現在のアクセル開度が小さい場合には上記目標車間距離Lを増大補正する。
【解決手段】自車両MM進行方向に存在する先行車両と自車両MMとの車間距離Lrelが予め設定した制御開始距離以下になったと判定すると追従走行制御を開始して、上記車間距離Lrelが予め設定した目標車間距離Lとなるように自車両MMの制駆動力の制御を行う。そして、設定したアクセル開度初期値AP0に対し、現在のアクセル開度が大きい場合には上記目標車間距離Lを減少補正し、現在のアクセル開度が小さい場合には上記目標車間距離Lを増大補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行車両に対する追従走行を行うための車間距離制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車間距離制御装置としては例えば特許文献1に記載の装置がある。この装置では、先行車両と自車両との車間距離が目標車間距離初期値以下となった場合に、先行車両に対する追従走行制御を開始する。そして、この装置では、先行車両追従制御開始時点に対するアクセル開度の増大量が大きいほど、その増大量に応じた距離だけ目標車間距離初期値から減算した値を、追従走行制御の目標車間距離として設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−17000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の車間距離制御装置では、運転者が所望する車間距離が上記目標車間距離初期値より短い場合には、アクセルペダルを踏み込むことにより上記目標車間距離が短くなって、運転者が所望する車間距離で追従走行を行う事が可能となる。
ここで、上記車間距離制御装置では、追従走行制御が可能な車間距離範囲を大きく設定する場合、目標車間距離初期値を大きく設定しておく必要がある。しかし、目標車間距離初期値を大きく設定すると、運転者が所望する車間距離が短い場合、運転者が所望する車間距離となった時点のアクセル開度が大きくなりすぎて、運転者に違和感を与えるおそれがある。一方、目標車間距離初期値を短く設定すると、運転者が所望する車間距離が車間距離初期値よりも長い場合が発生する可能性が増大し、上記車間距離制御装置では、運転者が所望する車間距離で追従走行制御を行うことができない場合が出てくる。このように、上記車間距離制御装置では、目標車間距離初期値を適切な値に設定することが難しいので、運転者の違和感が低い追従走行制御を行うことが難しい。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、目標車間距離の初期値を大きな値に設定しなくとも、追従走行制御可能な車間距離範囲を大きくすることができ、運転者にとって違和感の低い追従走行制御を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、自車両進行方向に存在する先行車両と自車両との車間距離が予め設定した制御開始距離以下になったと判定すると追従走行制御を開始して、上記車間距離が予め設定した目標車間距離となるように自車両の制駆動力の制御を行う。そして、上記追従走行制御を開始した時点のアクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度をアクセル開度初期値として設定するとともに、設定したアクセル開度初期値に対し、現在のアクセル開度が大きい場合には上記目標車間距離を減少補正し、現在のアクセル開度が小さい場合には上記目標車間距離を増大補正する。
なお、上記制御開始距離と上記目標車間距離の初期値とは同じ距離であっても良い。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、設定したアクセル開度初期値からのアクセルの開度増大若しくは開度減少に応じて目標車間距離を減少若しくは増大する。このため、目標車間距離の初期値を大きく設定しなくとも、追従制御可能な車間距離範囲を大きくすることができ、運転者にとって違和感の低い追従走行制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る装置構成の概要図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係る車間距離制御装置の機能ブロックの例を示す図である。
【図3】本発明に基づく実施形態に係る制御ブロックを示す図である。
【図4】アクセル開度初期値設定部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】目標車間距離設定部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】ゲインGainLを算出するマップの一例である。
【図7】ゲインGainVを算出するマップの一例である。
【図8】目標車間距離の変化量ΔLとΔAPとの関係を示すマップの一例である。
【図9】車間距離サーボ部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】終了処理部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】追従走行制御時のタイミングチャートの一例を示す図である。
【図12】制御終了時のタイミングチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の車間距離制御装置を搭載した自車両MMの概略構成図である。
すなわち、自車両MMは、車輪速センサ7と、先行車情報検出センサ3と、アクセル開度センサ2と、スロットル開度センサ8と、ブレーキコントローラ6と、駆動力を制御するスロットル開度制御部5と、とを備える。本実施形態では、ブレーキコントローラ6とスロットル開度制御部5とによって、自車両MMの制駆動力の制御が可能となっている。符号9は、自車両MMを駆動する駆動源としてのエンジンである。また、符号1FL、1FR、1RL、1RRは車輪を表している。
車輪速センサ7は自車両MMの各輪に対応して設けられ、各輪の車輪速を検出して車間制御コントローラ4に出力する。
【0009】
先行車情報検出センサ3は、自車両MMの進行方向である自車両MM前方に位置する先行車を検出し、検出した先行車の情報を車間制御コントローラ4に出力する。先行車情報検出センサ3は、例えば自車両MM前方にレーザー光を出射すると共に反射光を受光し、そのレーザー光の出射から反射光の受光までの時間を検出して車間制御コントローラ4に出力するレーダセンサから構成される。レーダセンサとしては、レーザレーダ方式やミリ波レーダ方式などの公知のレーダセンサを適宜選択して使用すればよい。なお本実施形態においては、この先行車情報検出センサ3をレーザレーダ方式のレーダセンサとして記載するが、ミリ波レーダ方式でも良い。また、カメラ等であっても良い。車両進行方向前方の物体の情報を検出できるものであれば適宜変更可能である。先行車の情報としては、先行車両との車間距離Lrel、及び先行車両の相対速度ΔVがある。なお、相対速度ΔVは先行車両との車間距離Lrelから算出しても良いし、出射波に対する反射波の周波数変化から検出しても良い。
【0010】
アクセル開度センサ2は、運転者によって操作されるアクセルペダルの開度(操作量)であるアクセル開度APを検出し、検出したアクセル開度APを車間制御コントローラ4に出力する。
スロットル開度センサ8は、エンジン9のスロットル開度を検出し、検出したスロットル開度を車間制御コントローラ4及びスロットル開度制御部5に出力する。
【0011】
スロットル開度制御部5は、車間制御コントローラ4から入力する目標エンジントルクやアクセル開度センサ2によって検出されたアクセル開度APに基づいて、目標スロットル開度を算出し、算出した目標スロットル開度に基づいてエンジン9のスロットル開度を電子制御する。なお目標スロットル開度は、例えば目標エンジントルクやアクセル開度APと目標スロットル開度との相関関係を定めたマップを予め記憶しておき、入力する目標エンジントルクや検出されたアクセル開度APに基づいてマップ引きにより目標スロットル開度を算出すれば良い。また、例えば目標エンジントルクやアクセル開度APと目標スロットル開度との相関関係を数式として予め記憶しておき、入力する目標エンジントルクや検出されたアクセル開度APと予め記憶した数式とに基づいて目標スロットル開度を算出しても良い。目標スロットル開度の算出方法は適宜変更可能である。
【0012】
ブレーキコントローラ6は、車間制御コントローラ4から入力する各輪の目標ブレーキ力となるように、車輪1FL、1FR、1RL、1RRで発生するブレーキ力を制御する。
ここで自車両MMは、制動装置を備える。制動装置について説明すると、運転者が操作するブレーキペダル11が、ブースタ(不図示)を介してマスタシリンダ12に連結する。また、マスタシリンダ12は、流体圧回路14を介して各輪の各ホイールシリンダ13に連結する。これにより、制動制御が作動しない状態では、運転者によるブレーキペダル11の踏み込み量に応じて、マスタシリンダ12で制動流体圧を昇圧する。その昇圧した制動流体圧を、流体圧回路14を通じて、各車輪の各ホイールシリンダ13に供給する。制動流体圧制御部15は、ブレーキコントローラ6から出力される制動力指令値に基づいて流体圧回路中のアクチュエータを制御して、各輪への制動流体圧を個別に制御する。
【0013】
上記制動流体圧制御部15及び流体圧回路14としては、例えばアンチスキッド制御(ABS)、トラクション制御(TCS)又はビークルダイナミックスコントロール装置(VDC)で使用する制動流体圧制御部を利用すればよい。
車間制御コントローラ4は、先行車情報検出センサ3が検出する先行車両との車間距離Lrelと相対速度、車輪速センサ7が検出する各車輪の車輪速、アクセル開度センサ2が検出するアクセルペダルのアクセル開度値、スロットル開度センサ8が検出するスロットル開度制御部5に制御された現在エンジンスロットル開度を取得する。そして、車間制御コントローラ4は、これら取得した値に基づき追従走行のための目標車間距離Lを算出し、目標車間距離Lと先行車両との車間距離Lrelとを一致させるように、目標エンジントルクや目標スロットル開度をスロットル開度制御部5へ、目標ブレーキ力をブレーキコントローラ6へ出力する。
【0014】
上記車間制御コントローラ4は、図2に示す機能ブロックのように、アクセル開度初期値設定手段4A、目標車間距離手段4B、車間距離制御手段4Cを備える。
アクセル開度初期値設定手段4Aは、アクセル開度初期値AP0を設定する。本実施形態のアクセル開度初期値設定手段4Aは、アクセル開度センサ2の検出に基づき、追従走行制御を開始したときのアクセルペダルの開度をアクセル開度初期値AP0に設定する。また、本実施形態のアクセル開度初期値設定手段4Aは、先行車情報検出センサ3が検出する先行車両との車間距離Lrelが目標車間距離Lと一致したと判定すると、当該一致したと判定したときのアクセル開度APをアクセル開度初期値AP0に再設定する。なお、アクセル開度初期値AP0は、固定値であっても良いし、追従走行制御開始時のアクセル開度APに所定のゲインを乗算した値であっても良い。
【0015】
目標車間距離手段4Bは、追従走行制御を開始と判定すると、目標車間距離Lを求めて設定する。また、目標車間距離手段4Bは、アクセル開度初期値設定手段4Aが設定したアクセル開度初期値AP0と、アクセル開度センサ2が検出するアクセル開度とに基づき、上記設定した目標車間距離Lを補正する。具体的には、アクセル開度初期値AP0に対しアクセル開度が大きい場合には上記目標車間距離Lを減少補正し、アクセル開度初期値AP0に対しアクセル開度が小さい場合には上記目標車間距離Lを増大補正する。
【0016】
車間距離制御手段4Cは、現在の車間距離Lrelが予め設定した制御開始距離Ls以下となったと判定すると追従走行制御を開始し、当該追従走行制御として、先行車情報検出センサ3が検出する先行車両との車間距離Lrelが追従走行用の上記目標車間距離Lとなるように自車両MMの制駆動力を制御する。具体的には、車間距離Lrelが目標車間距離Lとなるように、スロットル開度制御部5及びブレーキコントローラ6を通じて自車両MMの制駆動力を制御する。また、車間距離制御手段4Cは、先行車情報検出センサ3が検出する先行車両との車間距離Lrelが追従走行を終了するための制御終了距離より大きくなったと判定すると、上記追従走行を終了するための終了処理制御を実施する。
【0017】
次に、上記車間制御コントローラ4で実行される車間距離制御の一例を、制御ブロック図である図3を参照して説明する。
この車間制御コントローラ4は、図3に示すように、アクセル開度初期値設定部41、目標車間距離設定部42、車間距離サーボ部43、及び終了処理部44を備える。
アクセル開度初期値設定部41は、先行車情報検出センサ3の検出に基づく先行車両との相対距離である車間距離Lrelと、アクセル開度センサ2が検出したアクセルペダルのアクセル開度APとから、アクセル開度初期値AP0と、追従制御フラグFfwを設定する。
【0018】
そのアクセル開度初期値設定部41の処理を、図4のフローチャートを参照して説明する。
ステップS10で、先行車情報検出センサ3の検出に基づく先行車両との車間距離Lrelと、アクセル開度センサ2が検出したアクセルペダルのアクセル開度APと、目標車間距離設定部42で設定した目標車間距離Lの前回値Lzとを読み込む。目標車間距離Lの前回値Lzは、現在の目標車間距離Lに相当する。
次に、ステップS20では、追従走行制御が開始されているか否かを判定する。追従走行制御が開始されている場合には、ステップS21へ移行し、追従制御フラグFfwをセットする。その後、ステップS50に移行する。一方追従走行制御が開始されていない場合には、ステップS30に移行する。
【0019】
ここで、本実施形態では、車間距離Lrelが制御開始車間距離Ls以下の場合となったと判定したときを、追従走行の制御開始と判定している。これに代えて、アクセル開度APが予め設定した所定の値(予め設定したアクセル開度)よりも大きく且つ、車間距離Lrelが制御開始車間距離Ls以下の場合となったと判定したときを、追従走行の制御開始としても良い。なお、上記所定の値(予め設定したアクセル開度)とは、運転者がアクセルペダル19を踏んで加速意図があると判断できる最小のアクセル開度であり、すなわち運転者が意図的にアクセルを操作している(踏んでいる)と判定できる最小のアクセル開度であり、実験等によって予め定められたアクセル開度である。また、アクセル開度が上記予め設定した所定の値(予め設定したアクセル開度)よりも小さい場合でも、現在の車間距離Lrelが制御開始車間距離Lsよりも小さい予め設定した距離以下となっている場合には制御開始と判定する。
【0020】
ステップS30では、上記先行車両との車間距離Lrelが、制御開始車間距離Lsより小さいか否かを判定する。条件を満足する場合には、ステップS40に移行する。条件を満足しない場合にはそのまま処理を終了して、復帰する。なお、制御開始車間距離Lsを目標車間距離Lの前回値Lzと一致させておいても良いし、異なっていても良い。
なお、制御開始車間距離Ls及び目標車間距離Lの初期値は、予め設定した値を採用する。速度などに基づきマップ等で与えても良い。
ステップS40では、現在のアクセル開度APをアクセル開度初期値AP0に設定して処理を終了し、復帰する。
AP0 = AP
【0021】
追従走行制御中と判定されてステップS50に移行すると、上記先行車両との車間距離Lrelが、現在の目標車間距離Lである上記目標車間距離Lの前回値Lzと一致したか否かを判定する。具体的には、上記先行車両との車間距離Lrelと、現在の目標車間距離Lである上記目標車間距離Lの前回値Lzとの差の絶対値が、アクセル開度初期値AP0更新判断閾値(α)以下か否かを判定する。条件を満足する場合にはステップS60に移行する。条件を満足しない場合には、そのまま処理を終了する。
|Lref −Lz| < α
ここで、アクセル開度初期値AP0更新判断閾値αは、実質的に上記先行車両との車間距離Lrelと現在の目標車間距離Lとが一致している判定可能な閾値であって、制御誤差やセンサの精度などを考慮して設定する。例えばα=1mに設定する。
【0022】
ステップS60では、現在のアクセル開度APをアクセル開度初期値AP0に設定して、処理を終了する。
AP0 = AP
ここで、車間距離として、車間距離を自車両速度に基づく車頭時間THWを用いても良い。車頭時間THWは、自車両MMが進行方向前方の先行車両の位置に到達するのに要する時間である。
【0023】
次に、目標車間距離設定部42は、上記アクセル開度初期値AP0と、アクセル開度センサ2が取得したアクセルペダルのアクセル開度APと、車輪速センサ7の検出に基づく自車両速度Vhと、先行車情報検出センサ3が検出する先行車両との車間距離Lrelと相対速度ΔVとから、目標車間距離Lを設定する。なおここで、相対速度ΔVは自車両が先行車両に近づく方向を正とする。
【0024】
目標車間距離設定部42の処理を、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
先ずステップS100で、アクセル開度初期値設定部41で設定したアクセル開度初期値AP0と、アクセル開度センサ2から入力される運転者が操作したアクセル開度APと、車輪速センサ7の検出に基づく自車両速度Vhとを読み込む。そして、以降のステップでの処理によって、目標車間距離Lを演算する。
【0025】
まずステップS110にて、アクセル開度初期値設定部41で設定した追従制御フラグFfwと、その前回値Ffwzから、追従走行の制御開始か否かを判定する。追従制御フラグの前回値Ffwzがリセット状態で、追従制御フラグFfwがセット状態の場合に、制御開始と判断し、それ以外の場合は制御開始と判断しない。制御開始と判定した場合には、ステップS120に移行する。一方制御開始と判定しない場合にはステップS150に移行する。
【0026】
ステップS120では、制御を開始するときの車両状態に応じた相対目標車間距離ΔLrelを演算する。相対目標車間距離ΔLrelは、例えば上記先行車両との車間距離Lrelと、先行車情報検出センサ3からの情報に基づく先行車両の相対速度ΔVと、自車両速度Vhとに基づく車両状態から算出する。例えば下記(4)式に基づき算出する。
ΔLrel= GainL ×GainV ×Lrel ・・・(4)
ここで、GainLは、車間距離Lrelに応じたゲインであって、制御開始時の先行車両との車間距離Lrelが大きい場合、当該車間距離Lrelが小さい場合に比較して大きな値となるように設定する。例えば、GainLは図6に示すマップに基づき決定する。すなわち、車間距離Lrelが大きい場合には、GainLを相対的に大きな値としている。
【0027】
また、GainVは、相対速度ΔVに応じたゲインであって、相対速度ΔVが大きい場合、相対速度ΔVが小さい場合に比較して大きな値となるように設置する。例えば、GainVは図7に示すマップに基づき決定するすなわち、相対速度ΔVが大きい状態でアクセルペダルが踏まれて制御開始となった場合には、もっと車間距離Lrelを小さくしたいという運転者の意図があると推定される。このため、相対速度が大きい場合には、GainVを相対的に大きな値としている。
【0028】
次に、ステップS130では、相対目標車間距離ΔLrelを用いて、式(6)に基づき、目標車間距離Lの初期値を設定する。そして、処理を終了して復帰する。
L =Lrel −ΔLrel ・・・(6)
また制御開始時以外の場合にはステップS150に移行し、アクセル開度APに基づき目標車間距離Lの変化量ΔLを算出する。
具体的には、まず下記(7)式に基づき、アクセル開度初期値AP0と現在のアクセル開度APの開度差であるアクセル開度変化量ΔAPを求める。
ΔAP = AP −AP0 ・・・(7)
【0029】
次に、上記アクセル開度変化量ΔAPに基づき目標車間距離Lの変化量ΔLを求める。目標車間距離Lの変化量ΔLは、上記アクセル開度変化量に図8に示す様なほぼ逆比例した値とする。但し、図8に示すように、アクセル開度APの値がゼロ近傍に不感帯を設ける。不感帯を設けることで、運転者の意図しないアクセルペダルの動きによる影響を排除する。
【0030】
ここで、目標車間距離Lの変化量ΔLは、運転者がアクセルを急閉した際の急激な車間変化を防ぐために、上限値ΔLmaxを有する。上限値ΔLmaxは固定値でも良いし、車両状態に応じて設定しても良い。なお、アクセル全閉時は、下記式によって、目標車間距離Lの変化量ΔLを目標車間距離Lの変化量の上限値ΔLmaxとする。
ΔL =min(ΔL、ΔLmax)
【0031】
次に、ステップS160では、目標車間距離Lを、目標車間距離Lの前回値Lzと、目標車間距離Lの変化量ΔLとから、(6)式に基づき算出する。そして、処理を終了して復帰する。
L = Lz +ΔL ・・・(6)
ここで、目標車間距離Lの前回値Lzの替わりに目標車間距離Lの初期値を採用しても良い。
【0032】
また、目標車間距離Lには、先行車両との最低限の車間を維持するための下限値Lminを有し、下記式によって、目標車間距離LをLmin以上の値とする。この下限値Lminは、固定値でも良いし、車両状態などに応じて変更しても良い。
L = max(L、Lmin)
さらに、アクセル開度変化量ΔAPが小さい時には、運転者の意図しないアクセルペダルの動きの影響を排除するために、不感帯を予め固定に設定、またはマップ等で設定する。
なお、目標車間距離Lとして、上述のように、車間距離Lrelを自車両速度で規格化した車頭時間THW(=車間距離Lrel/自車両速度)を用いても良い。
【0033】
次に、車間距離サーボ部43は、先行車情報検出センサ3から入力される先行車両との車間距離Lrelと自車両速度Vhとに基づき、先行車両との車間距離Lrelが、上記目標車間距離Lと一致するように、例えばPID制御に代表されるサーボ制御を行う。車間距離サーボ部43は、目標スロットル開度TH0と各輪の目標ブレーキ力Br_xx(;xxはFL、FR、RL、RR)、アクセル開度を変換したスロットル開度THapを出力する。
【0034】
その車間距離サーボ部43の処理について、図9に示すフローチャートを参照して説明する。
先ずステップS200にて、先行車情報検出センサ3の検出に基づく先行車両との車間距離Lrelと、目標車間距離設定部42が設定した目標車間距離Lとを、読み込む。
次に、ステップS210にて、先行車両との車間距離Lrelが上記目標車間距離Lと一致させるサーボ制御のための目標加速度Goutを算出する。
【0035】
目標加速度Goutは、下記(8)式のように、車間距離Lrelと目標車間距離Lとの偏差ΔLservoを求め、その偏差を小さくするための目標加速度を、PID制御等を用いて、例えば下記(9)式に基づき演算する。
ΔLservo = L −Lrel ・・・(8)
Gout=Pservo×ΔLservo
+Dservo×ΔLservo
+Iservo×ΔLservo ・・・(9)
ここで、Pservo、Dservo、Iservoは、PID制御のゲインを表し、各々比例ゲイン、微分ゲイン、積分ゲインを示す。
【0036】
次に、ステップS220にて、制駆動力のための指令値を算出する。
すなわち、目標スロットル開度TH0と、各輪の目標ブレーキ力Br_xx(;xxはFL、FR、RL、RR)を、目標加速度Goutと、エンジンブレーキにより発生可能な車両加速度Gengとから、(10)(11)式により決定する。なお、関数f(x)は、エンジンブレーキにより車両加速度xを発生させる際のスロットル開度を求める関数であって、マップ等を使用しても良い。また、Wは自車両MMの車重を示す。
Gout ≧ Gengの場合 ・・・(10)
TH0 = f(Gout)
Br_xx =0
Gout < Gengの場合 ・・・(11)
TH0 = f(Gout)
Br_xx = {(Gout −Geng)×W}/4
【0037】
なお、ステップS220にて求めた目標スロットル開度TH0、及び各輪の目標ブレーキ力Br_xx(;xxはFL、FR、RL、RR)の出力は、終了処理部44で行う。
次に、ステップS230で、アクセル開度センサ2が検出したアクセルペダルのアクセル開度APから、予め設定したマップなどを使用してアクセル開度APをスロットル開度に変換し、アクセル開度を変換したスロットル開度THapを決定する。
次に、終了処理部44は、先行車情報検出センサ3から入力される先行車両との車間距離Lrelから、追従走行のための制御終了を判断し、制御終了と判定すると終了制御を行う。
ここで、車間距離Lrelが予め設定した制御終了距離Lend(>L)以上となると制御終了と判定する。
【0038】
制御終了と判定すると終了制御に移行し、アクセル開度センサ2から入力されるアクセル開度APと上記目標スロットル開度TH0とから、制御終了時目標スロットル開度TH1を算出して、当該制御終了時目標スロットル開度TH1を出力するとともに、上記各輪の目標ブレーキ力Br_xxをゼロに設定して出力する。
ここで、制御終了時以外は、車間距離サーボ部43で算出した目標スロットル開度TH0と各輪の目標ブレーキ力Br_xxを出力する。
【0039】
上記終了処理部44の処理を、図10に記載のフローチャートに基づき説明する。
まずステップS300で、アクセル開度センサ2が検出する現在のアクセル開度APと、先行車情報検出センサ3の検出に基づく先行車両との車間距離Lrelと、現在のスロットル開度THと、アクセル開度初期値設定部41で設定した追従制御フラグFfwと、車間距離サーボ部43で生成したアクセル開度を変換したスロットル開度THapと、目標スロットル開度TH0と、各輪の目標ブレーキ力Br_xx(;xxはFL、FR、RL、RR)とを、読み込む。
【0040】
次に、ステップS301で、追従制御中かを判断する。具体的には、アクセル開度初期値設定部41で設定した追従制御フラグFfwが、セットされているか否かを判定する。上記条件を満足する場合は、追従制御中演算処理を実施するためにステップS310に移行する。上記条件を満足しない場合にはステップS302に移行する。
次に、ステップS302では、目標スロットル開度TH0と、各輪の目標ブレーキ力Br_xx(;xxはFL、FR、RL、RR)とを、下記式のように、追従制御中ではない時の値に変更し、ステップS340に移行する。
TH0 =THap
Br_xx =0
【0041】
次に、ステップS310で、終了制御を実行するかを判断する。具体的には、上記先行車両との車間距離Lrelが追従制御終了を判定するための制御終了距離Lendより大きいか否かを判定する。上記条件を満足する場合には、終了制御演算処理を実施するためにステップS311へ移行する。ステップS311では、制御終了時のスロットル開度差ΔTHendを、制御終了時のアクセル開度を変換したスロットル開度THendと、制御終了時の目標スロットル開度TH0endとから算出する。制御終了時のスロットル開度THendは、先行車両との車間距離Lrelが追従制御終了を判定するための制御終了距離Lendより大きいと判定した時点の、車間距離サーボ部43で生成した、アクセル開度を変換したスロットル開度THapとする。制御終了時の目標スロットル開度TH0endは、先行車両との車間距離Lrelが追従制御終了を判定するための制御終了距離Lendより大きいと判定した時点の目標スロットル開度TH0とする。ここで、制御終了時のスロットル開度差ΔTHendは、下記式のように、上記制御終了時のスロットル開度THendと、上記制御終了時の目標スロットル開度TH0endとから算出する。
ΔTHend =THend −TH0end
【0042】
その後、ステップS320に移行する。上記条件を満足しない場合にはステップS312へ移行する。ステップS312では、車間距離サーボ部43で生成した目標スロットル開度TH0と、各輪の目標ブレーキ力Br_xx(;xxはFL、FR、RL、RR)とを、制御目標として保持する。その後、ステップS340に移行する。上記制御終了距離Lendは、固定値であっても良いし、車両状態に応じた値であっても良い。
【0043】
なお、終了制御中に制御開始条件を満たした場合は、追従走行の制御を再開する。
ステップS320では、アクセル開度APと現在スロットル開度(TH)とが、共に全開、または全閉となっているか判定する。条件を満足する場合には、ステップS321へ移行し、アクセル開度初期値設定部41で設定した追従制御フラグFfwをリセットし、アクセル開度初期値AP0を初期値にクリアして、終了制御を終了して復帰する。条件を満足しない場合にはステップS330に移行する。
【0044】
次に、ステップS330では、目標スロットル開度TH0を、(12)(13)式に示す、制御終了時目標スロットル開度TH1に変更する。また、各輪の目標ブレーキ力Br_xx(;xxはFL、FR、RL、RR)を、(12)(13)式に示すように、終了制御中の値に変更する。
ここで、現在スロットル開度THに対応するアクセル開度APをアクセル開度APthとする。アクセル開度APthは、予め設定したマップなどを使用して現在スロットル開度THをアクセル開度に変換する。なお、THzはスロットル開度THの前回値である。
AP ≧ APthの場合 ・・・(12)
TH1 =TH −ΔTHend
TH0 =TH1
Br_xx =0
AP < APthの場合 ・・・(13)
TH1 =max(THz −THstep、THap)
TH0 =TH1
Br_xx =0
ここで、制御終了時のスロットル開度差ΔTHendは、ステップS311で算出される。
【0045】
また、THstepは、1制御サイクルで減少させるための値として、予め設定したアクセル開度減少分である。
ここで、制御終了時に、運転者が操作したアクセル開度APが現在スロットル開度THに相当するアクセル開度よりも大きい場合に、スロットル開度をアクセル開度に合わせてスロットル開度を大きくすると、車両は意図しない加速をする。これを防止するために、制御終了時に、運転者が操作したアクセル開度APが現在スロットル開度THに相当するアクセル開度よりも大きいと判定すると、アクセル開度とスロットル開度の相対関係を維持する制御を行う。
【0046】
一方、上記運転者が操作したアクセル開度APが現在スロットル開度THに相当するアクセル開度よりも小さい場合は、アクセル開度=スロットル開度相当のアクセル開度となるように、スロットル開度を徐々に減少させ、アクセル開度に一致させる制御を行う。
次に、ステップS340では、目標スロットル開度TH0と、各輪の目標ブレーキ力Br_xx(;xxはFL、FR、RL、RR)とを、スロットル開度制御部5及びブレーキコントローラ6に出力する。
【0047】
(動作その他)
例えば、アクセルペダルが踏まれた状態で、先行車両に対し自車両MMが制御開始距離以下に接近すると、先行車両に対する追従走行制御を開始する。
このとき、制御開始したときのアクセル開度APをアクセル開度初期値AP0として設定する。
また本実施形態では、制御開始時の車両の状態に応じて、目標車間距離Lを設定する。例えば、制御開始時の相対速度が大きい場合、若しくは車間距離Lrelが大きい場合には、運転者に先行車両に近づこうとする意図が推定されるので、相対的に目標車間距離Lを小さく設定する。
【0048】
また追従走行制御中に、制御開始時のアクセル開度APであるアクセル開度初期値AP0よりもアクセルペダルが踏み込まれた場合には、先行車両に近づこうとする運転者の意図が推定されるので、目標車間距離Lを減少補正する。一方、追従走行制御中に、制御開始時のアクセル開度APであるアクセル開度初期値AP0よりもアクセルペダルが戻された場合には、先行車両から離れようとする運転者の意図が推定されるので、目標車間距離Lを増大補正する。以上の補正によって、運転者の意図に沿った目標車間距離Lに設定されることとなる。
【0049】
追従走行制御時のタイミングチャート例を図11に示す。
先行車両との車間距離Lrelが目標車間距離Lとなった状態で、且つアクセル開度APが一定の状態では、目標車間距離Lの変化が無い。この状態で先行車両が速度を落とすと、それに追従して自車両MMの速度も低下して、目標車間距離Lを一定に制御する。
また、運転者がアクセルペダルを踏み増してアクセル開度APが大きくなる方向に変化すると、それに追従して目標車間距離Lは小さくなる。この場合、先行車両との車間距離Lrelを短くするために自車両MMに速度を増加することで、車間距離Lrelを縮める。そして、車間距離Lrelが目標車間距離Lとなると、先行車両との相対速度がゼロとなるように制駆動力が制御される。
【0050】
また、運転者がアクセルペダルを戻すと、それに応じて目標車間距離Lが大きくなる。この場合、自車速を減速して、先行車両との車間距離Lrelが大きくなるように制御する。
続いてアクセル開度APがアクセルオフと判定されるほど戻されると、目標車間距離Lは上限値に設定されて、追従走行制御を終了して終了制御を経た後、制御を停止する。
【0051】
図12に終了制御時のタイミングチャート例を示す。
時刻t1が追従走行制御終了と判定され、終了制御開始に移行した時点である。
時刻t1より前の追従走行制御を実施している場合には、アクセル開度APが一定で目標車間距離Lが一定となっていても、先行車両の速度変化に応じて、車間距離Lrelが目標車間距離Lとなるように、エンジン9スロットル開度が制御される。図12では、先行車両が速度を落としたことに追従して自車両MMの速度を落とすためにスロットル開度を小さくした場合が例示されている。
【0052】
このように、追従走行制御時には、アクセル開度APとスロットル開度の相関が乖離した状態となっている。このため、追従走行制御が終了したとして、そのまま制御を終了すると、アクセル開度APが、現在のスロットル開度に相当するアクセル開度値よりも大きい場合には、運転者の意図に反して車両が加速してしまう。
このため、本実施形態では、追従走行制御を終了すると判定すると終了制御を実施する。
【0053】
すなわち、図12に示す例では、アクセル開度APが、現在のスロットル開度に相当するアクセル開度値よりも大きい場合であるので、現在のアクセル開度APと現在のスロットル開度に相当するアクセル開度値の開度差が一定若しくは一定に近い状態に保持する。これによって、運転者の意図に反した自車両MMの加速を防止する。
そして、運転者がアクセルペダルを戻すと、それに応じてスロットル開度も小さくなる。この例では、先にスロットル開度がゼロになってから、アクセル開度APもゼロとなる。これによって、アクセル開度APと現在のスロットル開度に相当するアクセル開度値とが一致したとして、終了制御を終了する。
【0054】
ただし、上記終了制御において、アクセル開度APが全開となるまで、運転者がアクセルペダルを踏み増した場合には、スロットル開度も所定の増加率を大きくしてアクセル開度全開に相当するスロットル開度まで大きくする。そして、アクセル開度APと現在のスロットル開度に相当するアクセル開度値とが一致したとして、終了制御を終了する。これによって、運転者の意図に応じた自車両MMの加速が実現される。
【0055】
一方、追従制御終了時に、アクセル開度APが、現在のスロットル開度に相当するアクセル開度値よりも低い場合には、スロットル開度を所定の減少率で徐々に小さくして、アクセル開度APが、現在のスロットル開度に相当するアクセル開度値に一致した時点で終了処理を終了する。
なお、上記終了制御中であっても、追従走行制御の開始条件を満足すれば、追従走行制御に移行する。
【0056】
ここで、先行車情報検出センサ3が車間距離測定手段を構成する。アクセル開度センサ2がアクセル開度検出手段を構成する。車間距離サーボ部43が車間距離制御手段4Cを構成する。アクセル開度初期値設定部41がアクセル開度初期値設定手段4Aを構成する。ステップS150,S160が、目標車間距離補正手段を構成する。終了処理部44が終了処理制御手段を構成する。
【0057】
(本実施形態の効果)
(1)車間距離制御手段4Cは、自車両MM進行方向に存在する先行車両と自車両MMとの車間距離Lrelが、予め設定した制御開始距離以下となったと判定すると追従走行制御を開始する。そして、当該追従走行制御として、上記車間距離測定手段が測定する車間距離Lrelが追従走行用の目標車間距離Lとなるように自車両のスロットル開度を制御して、自車両MMの制駆動力を制御する。アクセル開度初期値設定手段4Aは、上記追従走行制御を開始した時点のアクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度をアクセル開度初期値AP0として設定する。目標車間距離補正手段は、上記アクセル開度初期値設定手段4Aが設定したアクセル開度初期値AP0と、上記アクセル開度検出手段が検出するアクセル開度とに基づき、上記目標車間距離Lを補正する。すなわち、上記目標車間距離補正手段は、アクセル開度初期値に対して上記アクセル開度検出手段が検出したアクセル開度が大きい場合には上記目標車間距離を減少補正し、アクセル開度初期値に対して上記アクセル開度検出手段が検出したアクセル開度が小さい場合には上記目標車間距離を増大補正する。
【0058】
設定したアクセル開度初期値AP0からのアクセル開度増大量に応じて目標車間距離Lを減少すると共に、設定したアクセル開度初期値AP0からのアクセル開度減少量に応じて目標車間距離Lを増大する。このため、目標車間距離Lの初期値を大きく設定しなくとも、追従制御可能な車間距離範囲を大きくすることができ、運転者にとって違和感の無い追従走行制御が可能となる。
【0059】
(2)アクセル開度初期値設定手段4Aは、追従走行制御を開始後に、車間距離測定手段が測定する車間距離Lrelが、目標車間距離Lと一致したと判定すると、当該一致したと判定したときのアクセル開度をアクセル開度初期値AP0に再設定する。
これによって、アクセル開度初期値AP0を自車両MMの車両状態に応じて更新することが可能となる。
【0060】
(3)終了処理制御手段は、車間距離測定手段が測定する車間距離Lrelが、追従走行を終了するための予め定められた制御終了距離より大きくなったと判定すると、上記追従走行を終了するための終了処理制御を実施する。
通常、追従走行時は、アクセル開度APとスロットル開度とは乖離している。この乖離を解消してから制御を終了することが可能となる。
【0061】
(4)終了処理制御手段は、現在のアクセル開度APが、現在のスロットル開度に対応するアクセル開度よりも大きいと判定した場合には、アクセル開度APとスロットル開度に対応するアクセル開度との開度差を維持するようにスロットル開度を制御する。
これによって、現在のスロットル開度をアクセル開度APに応じた値にすることによる自車両MMの急加速の発生を抑えることができる。
【0062】
(5)終了処理制御手段は、現在のアクセル開度APが、現在のスロットル開度に対応するアクセル開度よりも小さいと判定した場合には、スロットル開度を、現在のアクセル開度APに対応するスロットル開度に近づける。
これによって、現在のスロットル開度を現在のアクセル開度AP相当に近づけることが可能となる。
【0063】
(6)終了処理制御手段は、現在のアクセル開度APが、全開又は全閉になったと判定すると、スロットル開度を現在のアクセル開度APに対応するスロットル開度に近づける。
これによって、現在のスロットル開度を現在のアクセル開度AP相当に近づけることが可能となる。
(7)終了処理制御手段は、スロットル開度が現在のアクセル開度APに対応するスロットル開度と一致したと判定すると、上記追従走行を終了するための終了処理制御を終了する。
これによって、制御から制御終了における不用意な自車両MMの加速の発生を抑えることが出来る。
【符号の説明】
【0064】
2 アクセル開度センサ
3 先行車情報検出センサ
4 車間制御コントローラ
4A アクセル開度初期値設定手段
4B 目標車間距離手段
4C 車間距離制御手段
41 アクセル開度初期値設定部
42 目標車間距離設定部
43 車間距離サーボ部
44 終了処理部
5 スロットル開度制御部
6 ブレーキコントローラ
7 車輪速センサ
8 スロットル開度センサ
9 エンジン
19 アクセルペダル
AP アクセル開度
AP0 アクセル開度初期値
Br_xx 目標ブレーキ力
Gout 目標加速度
L 目標車間距離
Lend 制御終了距離
Lrel 車間距離
Ls 制御開始車間距離
TH スロットル開度
Vp 相対速度
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行車両に対する追従走行を行うための車間距離制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車間距離制御装置としては例えば特許文献1に記載の装置がある。この装置では、先行車両と自車両との車間距離が目標車間距離初期値以下となった場合に、先行車両に対する追従走行制御を開始する。そして、この装置では、先行車両追従制御開始時点に対するアクセル開度の増大量が大きいほど、その増大量に応じた距離だけ目標車間距離初期値から減算した値を、追従走行制御の目標車間距離として設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−17000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の車間距離制御装置では、運転者が所望する車間距離が上記目標車間距離初期値より短い場合には、アクセルペダルを踏み込むことにより上記目標車間距離が短くなって、運転者が所望する車間距離で追従走行を行う事が可能となる。
ここで、上記車間距離制御装置では、追従走行制御が可能な車間距離範囲を大きく設定する場合、目標車間距離初期値を大きく設定しておく必要がある。しかし、目標車間距離初期値を大きく設定すると、運転者が所望する車間距離が短い場合、運転者が所望する車間距離となった時点のアクセル開度が大きくなりすぎて、運転者に違和感を与えるおそれがある。一方、目標車間距離初期値を短く設定すると、運転者が所望する車間距離が車間距離初期値よりも長い場合が発生する可能性が増大し、上記車間距離制御装置では、運転者が所望する車間距離で追従走行制御を行うことができない場合が出てくる。このように、上記車間距離制御装置では、目標車間距離初期値を適切な値に設定することが難しいので、運転者の違和感が低い追従走行制御を行うことが難しい。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、目標車間距離の初期値を大きな値に設定しなくとも、追従走行制御可能な車間距離範囲を大きくすることができ、運転者にとって違和感の低い追従走行制御を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、自車両進行方向に存在する先行車両と自車両との車間距離が予め設定した制御開始距離以下になったと判定すると追従走行制御を開始して、上記車間距離が予め設定した目標車間距離となるように自車両の制駆動力の制御を行う。そして、上記追従走行制御を開始した時点のアクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度をアクセル開度初期値として設定するとともに、設定したアクセル開度初期値に対し、現在のアクセル開度が大きい場合には上記目標車間距離を減少補正し、現在のアクセル開度が小さい場合には上記目標車間距離を増大補正する。
なお、上記制御開始距離と上記目標車間距離の初期値とは同じ距離であっても良い。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、設定したアクセル開度初期値からのアクセルの開度増大若しくは開度減少に応じて目標車間距離を減少若しくは増大する。このため、目標車間距離の初期値を大きく設定しなくとも、追従制御可能な車間距離範囲を大きくすることができ、運転者にとって違和感の低い追従走行制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る装置構成の概要図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係る車間距離制御装置の機能ブロックの例を示す図である。
【図3】本発明に基づく実施形態に係る制御ブロックを示す図である。
【図4】アクセル開度初期値設定部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】目標車間距離設定部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】ゲインGainLを算出するマップの一例である。
【図7】ゲインGainVを算出するマップの一例である。
【図8】目標車間距離の変化量ΔLとΔAPとの関係を示すマップの一例である。
【図9】車間距離サーボ部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】終了処理部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】追従走行制御時のタイミングチャートの一例を示す図である。
【図12】制御終了時のタイミングチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の車間距離制御装置を搭載した自車両MMの概略構成図である。
すなわち、自車両MMは、車輪速センサ7と、先行車情報検出センサ3と、アクセル開度センサ2と、スロットル開度センサ8と、ブレーキコントローラ6と、駆動力を制御するスロットル開度制御部5と、とを備える。本実施形態では、ブレーキコントローラ6とスロットル開度制御部5とによって、自車両MMの制駆動力の制御が可能となっている。符号9は、自車両MMを駆動する駆動源としてのエンジンである。また、符号1FL、1FR、1RL、1RRは車輪を表している。
車輪速センサ7は自車両MMの各輪に対応して設けられ、各輪の車輪速を検出して車間制御コントローラ4に出力する。
【0009】
先行車情報検出センサ3は、自車両MMの進行方向である自車両MM前方に位置する先行車を検出し、検出した先行車の情報を車間制御コントローラ4に出力する。先行車情報検出センサ3は、例えば自車両MM前方にレーザー光を出射すると共に反射光を受光し、そのレーザー光の出射から反射光の受光までの時間を検出して車間制御コントローラ4に出力するレーダセンサから構成される。レーダセンサとしては、レーザレーダ方式やミリ波レーダ方式などの公知のレーダセンサを適宜選択して使用すればよい。なお本実施形態においては、この先行車情報検出センサ3をレーザレーダ方式のレーダセンサとして記載するが、ミリ波レーダ方式でも良い。また、カメラ等であっても良い。車両進行方向前方の物体の情報を検出できるものであれば適宜変更可能である。先行車の情報としては、先行車両との車間距離Lrel、及び先行車両の相対速度ΔVがある。なお、相対速度ΔVは先行車両との車間距離Lrelから算出しても良いし、出射波に対する反射波の周波数変化から検出しても良い。
【0010】
アクセル開度センサ2は、運転者によって操作されるアクセルペダルの開度(操作量)であるアクセル開度APを検出し、検出したアクセル開度APを車間制御コントローラ4に出力する。
スロットル開度センサ8は、エンジン9のスロットル開度を検出し、検出したスロットル開度を車間制御コントローラ4及びスロットル開度制御部5に出力する。
【0011】
スロットル開度制御部5は、車間制御コントローラ4から入力する目標エンジントルクやアクセル開度センサ2によって検出されたアクセル開度APに基づいて、目標スロットル開度を算出し、算出した目標スロットル開度に基づいてエンジン9のスロットル開度を電子制御する。なお目標スロットル開度は、例えば目標エンジントルクやアクセル開度APと目標スロットル開度との相関関係を定めたマップを予め記憶しておき、入力する目標エンジントルクや検出されたアクセル開度APに基づいてマップ引きにより目標スロットル開度を算出すれば良い。また、例えば目標エンジントルクやアクセル開度APと目標スロットル開度との相関関係を数式として予め記憶しておき、入力する目標エンジントルクや検出されたアクセル開度APと予め記憶した数式とに基づいて目標スロットル開度を算出しても良い。目標スロットル開度の算出方法は適宜変更可能である。
【0012】
ブレーキコントローラ6は、車間制御コントローラ4から入力する各輪の目標ブレーキ力となるように、車輪1FL、1FR、1RL、1RRで発生するブレーキ力を制御する。
ここで自車両MMは、制動装置を備える。制動装置について説明すると、運転者が操作するブレーキペダル11が、ブースタ(不図示)を介してマスタシリンダ12に連結する。また、マスタシリンダ12は、流体圧回路14を介して各輪の各ホイールシリンダ13に連結する。これにより、制動制御が作動しない状態では、運転者によるブレーキペダル11の踏み込み量に応じて、マスタシリンダ12で制動流体圧を昇圧する。その昇圧した制動流体圧を、流体圧回路14を通じて、各車輪の各ホイールシリンダ13に供給する。制動流体圧制御部15は、ブレーキコントローラ6から出力される制動力指令値に基づいて流体圧回路中のアクチュエータを制御して、各輪への制動流体圧を個別に制御する。
【0013】
上記制動流体圧制御部15及び流体圧回路14としては、例えばアンチスキッド制御(ABS)、トラクション制御(TCS)又はビークルダイナミックスコントロール装置(VDC)で使用する制動流体圧制御部を利用すればよい。
車間制御コントローラ4は、先行車情報検出センサ3が検出する先行車両との車間距離Lrelと相対速度、車輪速センサ7が検出する各車輪の車輪速、アクセル開度センサ2が検出するアクセルペダルのアクセル開度値、スロットル開度センサ8が検出するスロットル開度制御部5に制御された現在エンジンスロットル開度を取得する。そして、車間制御コントローラ4は、これら取得した値に基づき追従走行のための目標車間距離Lを算出し、目標車間距離Lと先行車両との車間距離Lrelとを一致させるように、目標エンジントルクや目標スロットル開度をスロットル開度制御部5へ、目標ブレーキ力をブレーキコントローラ6へ出力する。
【0014】
上記車間制御コントローラ4は、図2に示す機能ブロックのように、アクセル開度初期値設定手段4A、目標車間距離手段4B、車間距離制御手段4Cを備える。
アクセル開度初期値設定手段4Aは、アクセル開度初期値AP0を設定する。本実施形態のアクセル開度初期値設定手段4Aは、アクセル開度センサ2の検出に基づき、追従走行制御を開始したときのアクセルペダルの開度をアクセル開度初期値AP0に設定する。また、本実施形態のアクセル開度初期値設定手段4Aは、先行車情報検出センサ3が検出する先行車両との車間距離Lrelが目標車間距離Lと一致したと判定すると、当該一致したと判定したときのアクセル開度APをアクセル開度初期値AP0に再設定する。なお、アクセル開度初期値AP0は、固定値であっても良いし、追従走行制御開始時のアクセル開度APに所定のゲインを乗算した値であっても良い。
【0015】
目標車間距離手段4Bは、追従走行制御を開始と判定すると、目標車間距離Lを求めて設定する。また、目標車間距離手段4Bは、アクセル開度初期値設定手段4Aが設定したアクセル開度初期値AP0と、アクセル開度センサ2が検出するアクセル開度とに基づき、上記設定した目標車間距離Lを補正する。具体的には、アクセル開度初期値AP0に対しアクセル開度が大きい場合には上記目標車間距離Lを減少補正し、アクセル開度初期値AP0に対しアクセル開度が小さい場合には上記目標車間距離Lを増大補正する。
【0016】
車間距離制御手段4Cは、現在の車間距離Lrelが予め設定した制御開始距離Ls以下となったと判定すると追従走行制御を開始し、当該追従走行制御として、先行車情報検出センサ3が検出する先行車両との車間距離Lrelが追従走行用の上記目標車間距離Lとなるように自車両MMの制駆動力を制御する。具体的には、車間距離Lrelが目標車間距離Lとなるように、スロットル開度制御部5及びブレーキコントローラ6を通じて自車両MMの制駆動力を制御する。また、車間距離制御手段4Cは、先行車情報検出センサ3が検出する先行車両との車間距離Lrelが追従走行を終了するための制御終了距離より大きくなったと判定すると、上記追従走行を終了するための終了処理制御を実施する。
【0017】
次に、上記車間制御コントローラ4で実行される車間距離制御の一例を、制御ブロック図である図3を参照して説明する。
この車間制御コントローラ4は、図3に示すように、アクセル開度初期値設定部41、目標車間距離設定部42、車間距離サーボ部43、及び終了処理部44を備える。
アクセル開度初期値設定部41は、先行車情報検出センサ3の検出に基づく先行車両との相対距離である車間距離Lrelと、アクセル開度センサ2が検出したアクセルペダルのアクセル開度APとから、アクセル開度初期値AP0と、追従制御フラグFfwを設定する。
【0018】
そのアクセル開度初期値設定部41の処理を、図4のフローチャートを参照して説明する。
ステップS10で、先行車情報検出センサ3の検出に基づく先行車両との車間距離Lrelと、アクセル開度センサ2が検出したアクセルペダルのアクセル開度APと、目標車間距離設定部42で設定した目標車間距離Lの前回値Lzとを読み込む。目標車間距離Lの前回値Lzは、現在の目標車間距離Lに相当する。
次に、ステップS20では、追従走行制御が開始されているか否かを判定する。追従走行制御が開始されている場合には、ステップS21へ移行し、追従制御フラグFfwをセットする。その後、ステップS50に移行する。一方追従走行制御が開始されていない場合には、ステップS30に移行する。
【0019】
ここで、本実施形態では、車間距離Lrelが制御開始車間距離Ls以下の場合となったと判定したときを、追従走行の制御開始と判定している。これに代えて、アクセル開度APが予め設定した所定の値(予め設定したアクセル開度)よりも大きく且つ、車間距離Lrelが制御開始車間距離Ls以下の場合となったと判定したときを、追従走行の制御開始としても良い。なお、上記所定の値(予め設定したアクセル開度)とは、運転者がアクセルペダル19を踏んで加速意図があると判断できる最小のアクセル開度であり、すなわち運転者が意図的にアクセルを操作している(踏んでいる)と判定できる最小のアクセル開度であり、実験等によって予め定められたアクセル開度である。また、アクセル開度が上記予め設定した所定の値(予め設定したアクセル開度)よりも小さい場合でも、現在の車間距離Lrelが制御開始車間距離Lsよりも小さい予め設定した距離以下となっている場合には制御開始と判定する。
【0020】
ステップS30では、上記先行車両との車間距離Lrelが、制御開始車間距離Lsより小さいか否かを判定する。条件を満足する場合には、ステップS40に移行する。条件を満足しない場合にはそのまま処理を終了して、復帰する。なお、制御開始車間距離Lsを目標車間距離Lの前回値Lzと一致させておいても良いし、異なっていても良い。
なお、制御開始車間距離Ls及び目標車間距離Lの初期値は、予め設定した値を採用する。速度などに基づきマップ等で与えても良い。
ステップS40では、現在のアクセル開度APをアクセル開度初期値AP0に設定して処理を終了し、復帰する。
AP0 = AP
【0021】
追従走行制御中と判定されてステップS50に移行すると、上記先行車両との車間距離Lrelが、現在の目標車間距離Lである上記目標車間距離Lの前回値Lzと一致したか否かを判定する。具体的には、上記先行車両との車間距離Lrelと、現在の目標車間距離Lである上記目標車間距離Lの前回値Lzとの差の絶対値が、アクセル開度初期値AP0更新判断閾値(α)以下か否かを判定する。条件を満足する場合にはステップS60に移行する。条件を満足しない場合には、そのまま処理を終了する。
|Lref −Lz| < α
ここで、アクセル開度初期値AP0更新判断閾値αは、実質的に上記先行車両との車間距離Lrelと現在の目標車間距離Lとが一致している判定可能な閾値であって、制御誤差やセンサの精度などを考慮して設定する。例えばα=1mに設定する。
【0022】
ステップS60では、現在のアクセル開度APをアクセル開度初期値AP0に設定して、処理を終了する。
AP0 = AP
ここで、車間距離として、車間距離を自車両速度に基づく車頭時間THWを用いても良い。車頭時間THWは、自車両MMが進行方向前方の先行車両の位置に到達するのに要する時間である。
【0023】
次に、目標車間距離設定部42は、上記アクセル開度初期値AP0と、アクセル開度センサ2が取得したアクセルペダルのアクセル開度APと、車輪速センサ7の検出に基づく自車両速度Vhと、先行車情報検出センサ3が検出する先行車両との車間距離Lrelと相対速度ΔVとから、目標車間距離Lを設定する。なおここで、相対速度ΔVは自車両が先行車両に近づく方向を正とする。
【0024】
目標車間距離設定部42の処理を、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
先ずステップS100で、アクセル開度初期値設定部41で設定したアクセル開度初期値AP0と、アクセル開度センサ2から入力される運転者が操作したアクセル開度APと、車輪速センサ7の検出に基づく自車両速度Vhとを読み込む。そして、以降のステップでの処理によって、目標車間距離Lを演算する。
【0025】
まずステップS110にて、アクセル開度初期値設定部41で設定した追従制御フラグFfwと、その前回値Ffwzから、追従走行の制御開始か否かを判定する。追従制御フラグの前回値Ffwzがリセット状態で、追従制御フラグFfwがセット状態の場合に、制御開始と判断し、それ以外の場合は制御開始と判断しない。制御開始と判定した場合には、ステップS120に移行する。一方制御開始と判定しない場合にはステップS150に移行する。
【0026】
ステップS120では、制御を開始するときの車両状態に応じた相対目標車間距離ΔLrelを演算する。相対目標車間距離ΔLrelは、例えば上記先行車両との車間距離Lrelと、先行車情報検出センサ3からの情報に基づく先行車両の相対速度ΔVと、自車両速度Vhとに基づく車両状態から算出する。例えば下記(4)式に基づき算出する。
ΔLrel= GainL ×GainV ×Lrel ・・・(4)
ここで、GainLは、車間距離Lrelに応じたゲインであって、制御開始時の先行車両との車間距離Lrelが大きい場合、当該車間距離Lrelが小さい場合に比較して大きな値となるように設定する。例えば、GainLは図6に示すマップに基づき決定する。すなわち、車間距離Lrelが大きい場合には、GainLを相対的に大きな値としている。
【0027】
また、GainVは、相対速度ΔVに応じたゲインであって、相対速度ΔVが大きい場合、相対速度ΔVが小さい場合に比較して大きな値となるように設置する。例えば、GainVは図7に示すマップに基づき決定するすなわち、相対速度ΔVが大きい状態でアクセルペダルが踏まれて制御開始となった場合には、もっと車間距離Lrelを小さくしたいという運転者の意図があると推定される。このため、相対速度が大きい場合には、GainVを相対的に大きな値としている。
【0028】
次に、ステップS130では、相対目標車間距離ΔLrelを用いて、式(6)に基づき、目標車間距離Lの初期値を設定する。そして、処理を終了して復帰する。
L =Lrel −ΔLrel ・・・(6)
また制御開始時以外の場合にはステップS150に移行し、アクセル開度APに基づき目標車間距離Lの変化量ΔLを算出する。
具体的には、まず下記(7)式に基づき、アクセル開度初期値AP0と現在のアクセル開度APの開度差であるアクセル開度変化量ΔAPを求める。
ΔAP = AP −AP0 ・・・(7)
【0029】
次に、上記アクセル開度変化量ΔAPに基づき目標車間距離Lの変化量ΔLを求める。目標車間距離Lの変化量ΔLは、上記アクセル開度変化量に図8に示す様なほぼ逆比例した値とする。但し、図8に示すように、アクセル開度APの値がゼロ近傍に不感帯を設ける。不感帯を設けることで、運転者の意図しないアクセルペダルの動きによる影響を排除する。
【0030】
ここで、目標車間距離Lの変化量ΔLは、運転者がアクセルを急閉した際の急激な車間変化を防ぐために、上限値ΔLmaxを有する。上限値ΔLmaxは固定値でも良いし、車両状態に応じて設定しても良い。なお、アクセル全閉時は、下記式によって、目標車間距離Lの変化量ΔLを目標車間距離Lの変化量の上限値ΔLmaxとする。
ΔL =min(ΔL、ΔLmax)
【0031】
次に、ステップS160では、目標車間距離Lを、目標車間距離Lの前回値Lzと、目標車間距離Lの変化量ΔLとから、(6)式に基づき算出する。そして、処理を終了して復帰する。
L = Lz +ΔL ・・・(6)
ここで、目標車間距離Lの前回値Lzの替わりに目標車間距離Lの初期値を採用しても良い。
【0032】
また、目標車間距離Lには、先行車両との最低限の車間を維持するための下限値Lminを有し、下記式によって、目標車間距離LをLmin以上の値とする。この下限値Lminは、固定値でも良いし、車両状態などに応じて変更しても良い。
L = max(L、Lmin)
さらに、アクセル開度変化量ΔAPが小さい時には、運転者の意図しないアクセルペダルの動きの影響を排除するために、不感帯を予め固定に設定、またはマップ等で設定する。
なお、目標車間距離Lとして、上述のように、車間距離Lrelを自車両速度で規格化した車頭時間THW(=車間距離Lrel/自車両速度)を用いても良い。
【0033】
次に、車間距離サーボ部43は、先行車情報検出センサ3から入力される先行車両との車間距離Lrelと自車両速度Vhとに基づき、先行車両との車間距離Lrelが、上記目標車間距離Lと一致するように、例えばPID制御に代表されるサーボ制御を行う。車間距離サーボ部43は、目標スロットル開度TH0と各輪の目標ブレーキ力Br_xx(;xxはFL、FR、RL、RR)、アクセル開度を変換したスロットル開度THapを出力する。
【0034】
その車間距離サーボ部43の処理について、図9に示すフローチャートを参照して説明する。
先ずステップS200にて、先行車情報検出センサ3の検出に基づく先行車両との車間距離Lrelと、目標車間距離設定部42が設定した目標車間距離Lとを、読み込む。
次に、ステップS210にて、先行車両との車間距離Lrelが上記目標車間距離Lと一致させるサーボ制御のための目標加速度Goutを算出する。
【0035】
目標加速度Goutは、下記(8)式のように、車間距離Lrelと目標車間距離Lとの偏差ΔLservoを求め、その偏差を小さくするための目標加速度を、PID制御等を用いて、例えば下記(9)式に基づき演算する。
ΔLservo = L −Lrel ・・・(8)
Gout=Pservo×ΔLservo
+Dservo×ΔLservo
+Iservo×ΔLservo ・・・(9)
ここで、Pservo、Dservo、Iservoは、PID制御のゲインを表し、各々比例ゲイン、微分ゲイン、積分ゲインを示す。
【0036】
次に、ステップS220にて、制駆動力のための指令値を算出する。
すなわち、目標スロットル開度TH0と、各輪の目標ブレーキ力Br_xx(;xxはFL、FR、RL、RR)を、目標加速度Goutと、エンジンブレーキにより発生可能な車両加速度Gengとから、(10)(11)式により決定する。なお、関数f(x)は、エンジンブレーキにより車両加速度xを発生させる際のスロットル開度を求める関数であって、マップ等を使用しても良い。また、Wは自車両MMの車重を示す。
Gout ≧ Gengの場合 ・・・(10)
TH0 = f(Gout)
Br_xx =0
Gout < Gengの場合 ・・・(11)
TH0 = f(Gout)
Br_xx = {(Gout −Geng)×W}/4
【0037】
なお、ステップS220にて求めた目標スロットル開度TH0、及び各輪の目標ブレーキ力Br_xx(;xxはFL、FR、RL、RR)の出力は、終了処理部44で行う。
次に、ステップS230で、アクセル開度センサ2が検出したアクセルペダルのアクセル開度APから、予め設定したマップなどを使用してアクセル開度APをスロットル開度に変換し、アクセル開度を変換したスロットル開度THapを決定する。
次に、終了処理部44は、先行車情報検出センサ3から入力される先行車両との車間距離Lrelから、追従走行のための制御終了を判断し、制御終了と判定すると終了制御を行う。
ここで、車間距離Lrelが予め設定した制御終了距離Lend(>L)以上となると制御終了と判定する。
【0038】
制御終了と判定すると終了制御に移行し、アクセル開度センサ2から入力されるアクセル開度APと上記目標スロットル開度TH0とから、制御終了時目標スロットル開度TH1を算出して、当該制御終了時目標スロットル開度TH1を出力するとともに、上記各輪の目標ブレーキ力Br_xxをゼロに設定して出力する。
ここで、制御終了時以外は、車間距離サーボ部43で算出した目標スロットル開度TH0と各輪の目標ブレーキ力Br_xxを出力する。
【0039】
上記終了処理部44の処理を、図10に記載のフローチャートに基づき説明する。
まずステップS300で、アクセル開度センサ2が検出する現在のアクセル開度APと、先行車情報検出センサ3の検出に基づく先行車両との車間距離Lrelと、現在のスロットル開度THと、アクセル開度初期値設定部41で設定した追従制御フラグFfwと、車間距離サーボ部43で生成したアクセル開度を変換したスロットル開度THapと、目標スロットル開度TH0と、各輪の目標ブレーキ力Br_xx(;xxはFL、FR、RL、RR)とを、読み込む。
【0040】
次に、ステップS301で、追従制御中かを判断する。具体的には、アクセル開度初期値設定部41で設定した追従制御フラグFfwが、セットされているか否かを判定する。上記条件を満足する場合は、追従制御中演算処理を実施するためにステップS310に移行する。上記条件を満足しない場合にはステップS302に移行する。
次に、ステップS302では、目標スロットル開度TH0と、各輪の目標ブレーキ力Br_xx(;xxはFL、FR、RL、RR)とを、下記式のように、追従制御中ではない時の値に変更し、ステップS340に移行する。
TH0 =THap
Br_xx =0
【0041】
次に、ステップS310で、終了制御を実行するかを判断する。具体的には、上記先行車両との車間距離Lrelが追従制御終了を判定するための制御終了距離Lendより大きいか否かを判定する。上記条件を満足する場合には、終了制御演算処理を実施するためにステップS311へ移行する。ステップS311では、制御終了時のスロットル開度差ΔTHendを、制御終了時のアクセル開度を変換したスロットル開度THendと、制御終了時の目標スロットル開度TH0endとから算出する。制御終了時のスロットル開度THendは、先行車両との車間距離Lrelが追従制御終了を判定するための制御終了距離Lendより大きいと判定した時点の、車間距離サーボ部43で生成した、アクセル開度を変換したスロットル開度THapとする。制御終了時の目標スロットル開度TH0endは、先行車両との車間距離Lrelが追従制御終了を判定するための制御終了距離Lendより大きいと判定した時点の目標スロットル開度TH0とする。ここで、制御終了時のスロットル開度差ΔTHendは、下記式のように、上記制御終了時のスロットル開度THendと、上記制御終了時の目標スロットル開度TH0endとから算出する。
ΔTHend =THend −TH0end
【0042】
その後、ステップS320に移行する。上記条件を満足しない場合にはステップS312へ移行する。ステップS312では、車間距離サーボ部43で生成した目標スロットル開度TH0と、各輪の目標ブレーキ力Br_xx(;xxはFL、FR、RL、RR)とを、制御目標として保持する。その後、ステップS340に移行する。上記制御終了距離Lendは、固定値であっても良いし、車両状態に応じた値であっても良い。
【0043】
なお、終了制御中に制御開始条件を満たした場合は、追従走行の制御を再開する。
ステップS320では、アクセル開度APと現在スロットル開度(TH)とが、共に全開、または全閉となっているか判定する。条件を満足する場合には、ステップS321へ移行し、アクセル開度初期値設定部41で設定した追従制御フラグFfwをリセットし、アクセル開度初期値AP0を初期値にクリアして、終了制御を終了して復帰する。条件を満足しない場合にはステップS330に移行する。
【0044】
次に、ステップS330では、目標スロットル開度TH0を、(12)(13)式に示す、制御終了時目標スロットル開度TH1に変更する。また、各輪の目標ブレーキ力Br_xx(;xxはFL、FR、RL、RR)を、(12)(13)式に示すように、終了制御中の値に変更する。
ここで、現在スロットル開度THに対応するアクセル開度APをアクセル開度APthとする。アクセル開度APthは、予め設定したマップなどを使用して現在スロットル開度THをアクセル開度に変換する。なお、THzはスロットル開度THの前回値である。
AP ≧ APthの場合 ・・・(12)
TH1 =TH −ΔTHend
TH0 =TH1
Br_xx =0
AP < APthの場合 ・・・(13)
TH1 =max(THz −THstep、THap)
TH0 =TH1
Br_xx =0
ここで、制御終了時のスロットル開度差ΔTHendは、ステップS311で算出される。
【0045】
また、THstepは、1制御サイクルで減少させるための値として、予め設定したアクセル開度減少分である。
ここで、制御終了時に、運転者が操作したアクセル開度APが現在スロットル開度THに相当するアクセル開度よりも大きい場合に、スロットル開度をアクセル開度に合わせてスロットル開度を大きくすると、車両は意図しない加速をする。これを防止するために、制御終了時に、運転者が操作したアクセル開度APが現在スロットル開度THに相当するアクセル開度よりも大きいと判定すると、アクセル開度とスロットル開度の相対関係を維持する制御を行う。
【0046】
一方、上記運転者が操作したアクセル開度APが現在スロットル開度THに相当するアクセル開度よりも小さい場合は、アクセル開度=スロットル開度相当のアクセル開度となるように、スロットル開度を徐々に減少させ、アクセル開度に一致させる制御を行う。
次に、ステップS340では、目標スロットル開度TH0と、各輪の目標ブレーキ力Br_xx(;xxはFL、FR、RL、RR)とを、スロットル開度制御部5及びブレーキコントローラ6に出力する。
【0047】
(動作その他)
例えば、アクセルペダルが踏まれた状態で、先行車両に対し自車両MMが制御開始距離以下に接近すると、先行車両に対する追従走行制御を開始する。
このとき、制御開始したときのアクセル開度APをアクセル開度初期値AP0として設定する。
また本実施形態では、制御開始時の車両の状態に応じて、目標車間距離Lを設定する。例えば、制御開始時の相対速度が大きい場合、若しくは車間距離Lrelが大きい場合には、運転者に先行車両に近づこうとする意図が推定されるので、相対的に目標車間距離Lを小さく設定する。
【0048】
また追従走行制御中に、制御開始時のアクセル開度APであるアクセル開度初期値AP0よりもアクセルペダルが踏み込まれた場合には、先行車両に近づこうとする運転者の意図が推定されるので、目標車間距離Lを減少補正する。一方、追従走行制御中に、制御開始時のアクセル開度APであるアクセル開度初期値AP0よりもアクセルペダルが戻された場合には、先行車両から離れようとする運転者の意図が推定されるので、目標車間距離Lを増大補正する。以上の補正によって、運転者の意図に沿った目標車間距離Lに設定されることとなる。
【0049】
追従走行制御時のタイミングチャート例を図11に示す。
先行車両との車間距離Lrelが目標車間距離Lとなった状態で、且つアクセル開度APが一定の状態では、目標車間距離Lの変化が無い。この状態で先行車両が速度を落とすと、それに追従して自車両MMの速度も低下して、目標車間距離Lを一定に制御する。
また、運転者がアクセルペダルを踏み増してアクセル開度APが大きくなる方向に変化すると、それに追従して目標車間距離Lは小さくなる。この場合、先行車両との車間距離Lrelを短くするために自車両MMに速度を増加することで、車間距離Lrelを縮める。そして、車間距離Lrelが目標車間距離Lとなると、先行車両との相対速度がゼロとなるように制駆動力が制御される。
【0050】
また、運転者がアクセルペダルを戻すと、それに応じて目標車間距離Lが大きくなる。この場合、自車速を減速して、先行車両との車間距離Lrelが大きくなるように制御する。
続いてアクセル開度APがアクセルオフと判定されるほど戻されると、目標車間距離Lは上限値に設定されて、追従走行制御を終了して終了制御を経た後、制御を停止する。
【0051】
図12に終了制御時のタイミングチャート例を示す。
時刻t1が追従走行制御終了と判定され、終了制御開始に移行した時点である。
時刻t1より前の追従走行制御を実施している場合には、アクセル開度APが一定で目標車間距離Lが一定となっていても、先行車両の速度変化に応じて、車間距離Lrelが目標車間距離Lとなるように、エンジン9スロットル開度が制御される。図12では、先行車両が速度を落としたことに追従して自車両MMの速度を落とすためにスロットル開度を小さくした場合が例示されている。
【0052】
このように、追従走行制御時には、アクセル開度APとスロットル開度の相関が乖離した状態となっている。このため、追従走行制御が終了したとして、そのまま制御を終了すると、アクセル開度APが、現在のスロットル開度に相当するアクセル開度値よりも大きい場合には、運転者の意図に反して車両が加速してしまう。
このため、本実施形態では、追従走行制御を終了すると判定すると終了制御を実施する。
【0053】
すなわち、図12に示す例では、アクセル開度APが、現在のスロットル開度に相当するアクセル開度値よりも大きい場合であるので、現在のアクセル開度APと現在のスロットル開度に相当するアクセル開度値の開度差が一定若しくは一定に近い状態に保持する。これによって、運転者の意図に反した自車両MMの加速を防止する。
そして、運転者がアクセルペダルを戻すと、それに応じてスロットル開度も小さくなる。この例では、先にスロットル開度がゼロになってから、アクセル開度APもゼロとなる。これによって、アクセル開度APと現在のスロットル開度に相当するアクセル開度値とが一致したとして、終了制御を終了する。
【0054】
ただし、上記終了制御において、アクセル開度APが全開となるまで、運転者がアクセルペダルを踏み増した場合には、スロットル開度も所定の増加率を大きくしてアクセル開度全開に相当するスロットル開度まで大きくする。そして、アクセル開度APと現在のスロットル開度に相当するアクセル開度値とが一致したとして、終了制御を終了する。これによって、運転者の意図に応じた自車両MMの加速が実現される。
【0055】
一方、追従制御終了時に、アクセル開度APが、現在のスロットル開度に相当するアクセル開度値よりも低い場合には、スロットル開度を所定の減少率で徐々に小さくして、アクセル開度APが、現在のスロットル開度に相当するアクセル開度値に一致した時点で終了処理を終了する。
なお、上記終了制御中であっても、追従走行制御の開始条件を満足すれば、追従走行制御に移行する。
【0056】
ここで、先行車情報検出センサ3が車間距離測定手段を構成する。アクセル開度センサ2がアクセル開度検出手段を構成する。車間距離サーボ部43が車間距離制御手段4Cを構成する。アクセル開度初期値設定部41がアクセル開度初期値設定手段4Aを構成する。ステップS150,S160が、目標車間距離補正手段を構成する。終了処理部44が終了処理制御手段を構成する。
【0057】
(本実施形態の効果)
(1)車間距離制御手段4Cは、自車両MM進行方向に存在する先行車両と自車両MMとの車間距離Lrelが、予め設定した制御開始距離以下となったと判定すると追従走行制御を開始する。そして、当該追従走行制御として、上記車間距離測定手段が測定する車間距離Lrelが追従走行用の目標車間距離Lとなるように自車両のスロットル開度を制御して、自車両MMの制駆動力を制御する。アクセル開度初期値設定手段4Aは、上記追従走行制御を開始した時点のアクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度をアクセル開度初期値AP0として設定する。目標車間距離補正手段は、上記アクセル開度初期値設定手段4Aが設定したアクセル開度初期値AP0と、上記アクセル開度検出手段が検出するアクセル開度とに基づき、上記目標車間距離Lを補正する。すなわち、上記目標車間距離補正手段は、アクセル開度初期値に対して上記アクセル開度検出手段が検出したアクセル開度が大きい場合には上記目標車間距離を減少補正し、アクセル開度初期値に対して上記アクセル開度検出手段が検出したアクセル開度が小さい場合には上記目標車間距離を増大補正する。
【0058】
設定したアクセル開度初期値AP0からのアクセル開度増大量に応じて目標車間距離Lを減少すると共に、設定したアクセル開度初期値AP0からのアクセル開度減少量に応じて目標車間距離Lを増大する。このため、目標車間距離Lの初期値を大きく設定しなくとも、追従制御可能な車間距離範囲を大きくすることができ、運転者にとって違和感の無い追従走行制御が可能となる。
【0059】
(2)アクセル開度初期値設定手段4Aは、追従走行制御を開始後に、車間距離測定手段が測定する車間距離Lrelが、目標車間距離Lと一致したと判定すると、当該一致したと判定したときのアクセル開度をアクセル開度初期値AP0に再設定する。
これによって、アクセル開度初期値AP0を自車両MMの車両状態に応じて更新することが可能となる。
【0060】
(3)終了処理制御手段は、車間距離測定手段が測定する車間距離Lrelが、追従走行を終了するための予め定められた制御終了距離より大きくなったと判定すると、上記追従走行を終了するための終了処理制御を実施する。
通常、追従走行時は、アクセル開度APとスロットル開度とは乖離している。この乖離を解消してから制御を終了することが可能となる。
【0061】
(4)終了処理制御手段は、現在のアクセル開度APが、現在のスロットル開度に対応するアクセル開度よりも大きいと判定した場合には、アクセル開度APとスロットル開度に対応するアクセル開度との開度差を維持するようにスロットル開度を制御する。
これによって、現在のスロットル開度をアクセル開度APに応じた値にすることによる自車両MMの急加速の発生を抑えることができる。
【0062】
(5)終了処理制御手段は、現在のアクセル開度APが、現在のスロットル開度に対応するアクセル開度よりも小さいと判定した場合には、スロットル開度を、現在のアクセル開度APに対応するスロットル開度に近づける。
これによって、現在のスロットル開度を現在のアクセル開度AP相当に近づけることが可能となる。
【0063】
(6)終了処理制御手段は、現在のアクセル開度APが、全開又は全閉になったと判定すると、スロットル開度を現在のアクセル開度APに対応するスロットル開度に近づける。
これによって、現在のスロットル開度を現在のアクセル開度AP相当に近づけることが可能となる。
(7)終了処理制御手段は、スロットル開度が現在のアクセル開度APに対応するスロットル開度と一致したと判定すると、上記追従走行を終了するための終了処理制御を終了する。
これによって、制御から制御終了における不用意な自車両MMの加速の発生を抑えることが出来る。
【符号の説明】
【0064】
2 アクセル開度センサ
3 先行車情報検出センサ
4 車間制御コントローラ
4A アクセル開度初期値設定手段
4B 目標車間距離手段
4C 車間距離制御手段
41 アクセル開度初期値設定部
42 目標車間距離設定部
43 車間距離サーボ部
44 終了処理部
5 スロットル開度制御部
6 ブレーキコントローラ
7 車輪速センサ
8 スロットル開度センサ
9 エンジン
19 アクセルペダル
AP アクセル開度
AP0 アクセル開度初期値
Br_xx 目標ブレーキ力
Gout 目標加速度
L 目標車間距離
Lend 制御終了距離
Lrel 車間距離
Ls 制御開始車間距離
TH スロットル開度
Vp 相対速度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両進行方向に存在する先行車両と自車両との車間距離を測定する車間距離測定手段と、
運転者が操作するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、
上記車間距離測定手段が測定する車間距離が予め設定した制御開始距離以下となったと判定すると追従走行制御を開始し、当該追従走行制御として、上記車間距離測定手段が測定する車間距離が追従走行用の目標車間距離となるように自車両のスロットル開度を制御して、自車両の制駆動力を制御する車間距離制御手段と、
上記追従走行制御を開始した時点のアクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度をアクセル開度初期値として設定するアクセル開度初期値設定手段と、
上記アクセル開度初期値設定手段が設定したアクセル開度初期値と、上記アクセル開度検出手段が検出するアクセル開度とに基づき、上記目標車間距離を補正する目標車間距離補正手段と、を備え、
上記目標車間距離補正手段は、アクセル開度初期値に対して上記アクセル開度検出手段が検出したアクセル開度が大きい場合には上記目標車間距離を減少補正し、アクセル開度初期値に対して上記アクセル開度検出手段が検出したアクセル開度が小さい場合には上記目標車間距離を増大補正することを特徴とする車間距離制御装置。
【請求項2】
上記アクセル開度初期値設定手段は、追従走行制御を開始後に、車間距離測定手段が測定する車間距離が、目標車間距離と一致したと判定すると、当該一致したと判定したときのアクセル開度をアクセル開度初期値に再設定することを特徴とする請求項1に記載した車間距離制御装置。
【請求項3】
上記車間距離測定手段が測定する車間距離が、追従走行を終了するための予め定められた制御終了距離より大きくなったと判定すると、上記追従走行を終了するための終了処理制御を実施する終了処理制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した車間距離制御装置。
【請求項4】
上記終了処理制御手段は、現在のアクセル開度が、現在のスロットル開度に対応するアクセル開度よりも大きいと判定した場合には、アクセル開度とスロットル開度に対応するアクセル開度との開度差を維持するようにスロットル開度を制御することを特徴とする請求項3に記載した車間距離制御装置。
【請求項5】
上記終了処理制御手段は、現在のアクセル開度が、現在のスロットル開度に対応するアクセル開度よりも小さいと判定した場合には、スロットル開度を、現在のアクセル開度に対応するスロットル開度に近づけることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載した車間距離制御装置。
【請求項6】
上記終了処理制御手段は、現在のアクセル開度が、全開又は全閉になったと判定すると、スロットル開度を現在のアクセル開度に対応するスロットル開度に近づけることを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載した車間距離制御装置。
【請求項7】
上記終了処理制御手段は、スロットル開度が現在のアクセル開度に対応するスロットル開度と一致したと判定すると、上記追従走行を終了するための終了処理制御を終了することを特徴することを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載した車間距離制御装置。
【請求項8】
自車両進行方向に存在する先行車両と自車両との車間距離が予め設定した制御開始距離以下になったと判定すると追従走行制御を開始し、当該追従走行制御として、上記車間距離が予め設定した目標車間距離となるように自車両の制駆動力を制御し、
上記追従走行制御を開始した時点のアクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度をアクセル開度初期値として設定するとともに、設定したアクセル開度初期値に対し、現在のアクセル開度が大きい場合には上記目標車間距離を減少補正し、現在のアクセル開度が小さい場合には上記目標車間距離を増大補正することを特徴とする車間距離制御方法。
【請求項1】
自車両進行方向に存在する先行車両と自車両との車間距離を測定する車間距離測定手段と、
運転者が操作するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、
上記車間距離測定手段が測定する車間距離が予め設定した制御開始距離以下となったと判定すると追従走行制御を開始し、当該追従走行制御として、上記車間距離測定手段が測定する車間距離が追従走行用の目標車間距離となるように自車両のスロットル開度を制御して、自車両の制駆動力を制御する車間距離制御手段と、
上記追従走行制御を開始した時点のアクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度をアクセル開度初期値として設定するアクセル開度初期値設定手段と、
上記アクセル開度初期値設定手段が設定したアクセル開度初期値と、上記アクセル開度検出手段が検出するアクセル開度とに基づき、上記目標車間距離を補正する目標車間距離補正手段と、を備え、
上記目標車間距離補正手段は、アクセル開度初期値に対して上記アクセル開度検出手段が検出したアクセル開度が大きい場合には上記目標車間距離を減少補正し、アクセル開度初期値に対して上記アクセル開度検出手段が検出したアクセル開度が小さい場合には上記目標車間距離を増大補正することを特徴とする車間距離制御装置。
【請求項2】
上記アクセル開度初期値設定手段は、追従走行制御を開始後に、車間距離測定手段が測定する車間距離が、目標車間距離と一致したと判定すると、当該一致したと判定したときのアクセル開度をアクセル開度初期値に再設定することを特徴とする請求項1に記載した車間距離制御装置。
【請求項3】
上記車間距離測定手段が測定する車間距離が、追従走行を終了するための予め定められた制御終了距離より大きくなったと判定すると、上記追従走行を終了するための終了処理制御を実施する終了処理制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した車間距離制御装置。
【請求項4】
上記終了処理制御手段は、現在のアクセル開度が、現在のスロットル開度に対応するアクセル開度よりも大きいと判定した場合には、アクセル開度とスロットル開度に対応するアクセル開度との開度差を維持するようにスロットル開度を制御することを特徴とする請求項3に記載した車間距離制御装置。
【請求項5】
上記終了処理制御手段は、現在のアクセル開度が、現在のスロットル開度に対応するアクセル開度よりも小さいと判定した場合には、スロットル開度を、現在のアクセル開度に対応するスロットル開度に近づけることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載した車間距離制御装置。
【請求項6】
上記終了処理制御手段は、現在のアクセル開度が、全開又は全閉になったと判定すると、スロットル開度を現在のアクセル開度に対応するスロットル開度に近づけることを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載した車間距離制御装置。
【請求項7】
上記終了処理制御手段は、スロットル開度が現在のアクセル開度に対応するスロットル開度と一致したと判定すると、上記追従走行を終了するための終了処理制御を終了することを特徴することを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載した車間距離制御装置。
【請求項8】
自車両進行方向に存在する先行車両と自車両との車間距離が予め設定した制御開始距離以下になったと判定すると追従走行制御を開始し、当該追従走行制御として、上記車間距離が予め設定した目標車間距離となるように自車両の制駆動力を制御し、
上記追従走行制御を開始した時点のアクセル開度検出手段によって検出されたアクセル開度をアクセル開度初期値として設定するとともに、設定したアクセル開度初期値に対し、現在のアクセル開度が大きい場合には上記目標車間距離を減少補正し、現在のアクセル開度が小さい場合には上記目標車間距離を増大補正することを特徴とする車間距離制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−187979(P2012−187979A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52071(P2011−52071)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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