説明

転がり軸受の異常判定方法及び異常判定装置

【課題】転がり軸受4の異常の有無の判定を、精度良く、しかも、効率良く行なう。
【解決手段】演算処理器2は、検出装置1が検出する振動を表す信号を、少なくとも2つの信号に分岐する。そして、このうちの一方の信号に基づき、転がり軸受4の損傷の有無、並びに、損傷部材の判定を行なうと共に、他方の信号に基づき、潤滑剤に混入した異物の量の判定を行なう。そして、少なくともこれら両判定の結果に基づき、上記転がり軸受4の異常の有無の判定を行ない、その結果を出力装置3に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明に係る転がり軸受の異常判定方法及び異常判定装置は、例えば各種回転機械装置に組み込まれる前(使用前)の転がり軸受や、これら各種回転機械装置に組み込まれた状態の(使用中の)転がり軸受に、異常が有るか否か(異常の有無)を判定する為に利用するものである。本発明は、この様な転がり軸受の異常の有無の判定を行なう際に、損傷の有無並びに損傷部材の判定(特定)と、異物の混入量(多少)の判定と(必要に応じてアンデロン値の判定と)を同時に行なう事により、上記異常の有無判定を精度良く、しかも、効率良く行なうべく、発明したものである。
【背景技術】
【0002】
電動機(電動モータ)や発電機(オルタネータ)等の各種回転機械装置の回転支持部には、例えばラジアル玉軸受、ラジアルころ軸受、スラストころ軸受等の各種転がり軸受が組み込まれている。又、この様な転がり軸受に異常が有るか否かを判定する為の技術として、例えば特許文献1には、この転がり軸受の回転時の振動に基づき、潤滑剤に混入した異物(例えば塵等の固形異物)の量を測定する技術が記載されている。又、特許文献2には、転がり軸受の回転時の騒音に基づき、異物の混入、損傷の有無、びびりの発生を判定し、この転がり軸受の異常の診断を行なう技術が記載されている。又、特許文献3には、転がり軸受の回転時の振動に基づき、潤滑剤の劣化、傷の有無を診断する技術が記載されている。但し、これら各特許文献に記載された技術の場合は、転がり軸受に異常が有るか否かを判定する場合に、潤滑剤に混入する異物の量の判定結果と、転がり軸受の損傷の有無、延いては、その損傷を有する部材の判定結果とを、互いに関連付けて判定する事ができない。この為、例えば、転がり軸受に損傷が有るにも拘わらず、この損傷に基づく振動を潤滑剤に混入する異物と判定してしまう可能性があり、この転がり軸受の異常の判定の精度(正確性)を確保する事と、この判定を効率良く行なう事との両立を、十分に図れない可能性がある。
【0003】
【特許文献1】特開昭49−29886号公報
【特許文献2】特開2000−146762号公報
【特許文献3】特開2004−347401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、転がり軸受の異常の判定を、精度良く、しかも、効率良く行なえる方法及び装置を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の転がり軸受の異常判定方法及び異常判定装置が対象とする(異常の判定を行なう)転がり軸受は、少なくとも、1対の軌道輪部材と、1対の軌道と、複数個の転動体と、潤滑剤とを備える。より具体的には、例えば、ラジアル転がり軸受{例えば、ラジアル玉軸受、ラジアルころ軸受(例えば、ラジアル円筒ころ軸受、ラジアル円すいころ軸受、ラジアルニードル軸受、ラジアル自動調心ころ軸受)}、スラスト転がり軸受{スラスト玉軸受、スラストころ軸受(例えば、スラスト円筒ころ軸受、スラスト円すいころ軸受、スラストニードル軸受)}、或は、例えば回転部材や静止部材に直接軌道を形成した回転支持装置等が挙げられる。
この様な転がり軸受を構成する上記各軌道輪は、互いに同心に配置されたもので、例えば、内輪、外輪、スラスト軌道輪、直接軌道が形成された部材(例えば回転部材、静止部材)等に相当する。
又、上記各軌道は、上記両軌道輪部材の互いに対向する面(例えば、内輪の外周面、外輪の内周面、スラスト軌道輪の側面、回転部材乃至は静止部材の内外両周面乃至は側面)に形成されたもので、例えば、内輪軌道、外輪軌道、スラスト軌道等に相当する。
又、上記各転動体は、上記両軌道同士の間に転動自在に設けられたもので、例えば、玉、ころ(例えば、円筒ころ、円すいころ、ニードル、球面ころ等)に相当する。
又、上記潤滑剤は、例えばグリース、潤滑油等、上記各転動体の転動面と上記各軌道の軌道面との転がり接触部を潤滑するものである。
【0006】
特に、本発明の転がり軸受の異常判定方法及び異常判定装置のうち、請求項1に記載した転がり軸受の異常判定方法の場合は、上記両軌道輪部材同士を相対回転させた状態で、この相対回転に伴う振動を(例えば加速度センサ、変位センサ、速度センサ、マイクロホン等により)検出して、例えば図3の(A)に示す様な電気信号に変換する。尚、この電気信号は、電気信号そのもの(例えば電圧の変化)でも良いし、この電気信号に対応する(電気的な)符号、数値、データ等の信号{例えばコンピュータ(電子計算機)で取り扱う事ができる符号、数値、データ等}でも良い。即ち、後述する第一、第二の両判定(更に必要に応じて第三の判定)を、ハードウエア(例えば電気回路そのもの)を用いて行なう場合には、電気信号そのもの(例えば電圧そのもの)を用いる事ができるし、同じくソフトウエアを用いて行なう場合には、このソフトウエアが取り扱える符号、数値、データ等の信号を用いる事ができる。又、この様な電気信号を増幅する必要がある場合には、必要に応じて、ハードウエアにより、又は、ソフトウエアにより増幅できる。何れにしても、上述の様な図3(A)に示す様な信号に変換したならば、この信号(電圧、符号、数値、データ等)を用いて少なくとも2つの異なる判定を行なう為に、この信号を少なくとも2つの同じ信号に分岐する。即ち、図3の矢印αに示す様に、振動の検出により得られた1つの信号(電圧、符号、数値、データ等)を、少なくとも2つの同じ信号{図3の(A−1)と(a−1)と}に分ける。
【0007】
この様に分岐した信号のうちの一方の信号{図3の(A−1)}は、必要に応じてフィルタ処理を施した後(必要なローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ等を通過させた後)、例えば図3の(A−2)並びに(A−3)に示す様に、エンベロープ処理(包絡線処理)を施す。即ち、例えば、図3の(A−2)に示す様に、上記一方の信号に絶対値処理を施すと共に、この絶対値処理を施した信号に、図3の(A−3)に示す様に、低周波通過処理を施して、これら絶対値処理と低周波通過処理とから成るエンベロープ処理(包絡線処理)を施す。尚、このエンベロープ処理は、この様な絶対値処理と低周波通過処理とを施す他に、ヒルベルト変換等により施す事もできる。但し、上述の様な絶対値処理と低周波通過処理とを施す方が、演算処理を簡略化できる。又、低周波通過処理を施す事なく絶対値処理のみを施すだけでも、上述の様なエンベロープ処理を施した場合と同様の効果を得られる場合もある。但し、高調波成分を含む場合には、S/N比が悪くなる為、この面からは、低周波通過処理を施す事が好ましい。
【0008】
何れにしても、上述の様なエンベロープ処理を施したならば、上記図3の(A−3)に示す様なエンベロープ処理を施した信号を、図3の(A−4)に示す様に、周波数分析{例えば高速フーリエー変換(FFT)}する。具体的には、周波数毎の振動のレベルに変換する。そして、この周波数分析により得られた周波数データのうち、上記転がり軸受の構成各部材にそれぞれ対応する所定の周波数成分と当該周波数成分に関する閾値とを比較する事により、上記転がり軸受の損傷(例えば傷、圧痕、フレッチング摩耗、異常摩耗等)の有無、並びに、その損傷を有する部材を判定する、第一の判定を行なう。具体的には、上記転がり軸受の構成各部材の少なくとも何れかに対応する周波数成分が上記閾値よりも大きいと判定された場合には、当該周波数に対応する構成部材に損傷有りと判定する。これに対して、総ての周波数成分が上記閾値以下であると判定された場合には、上記構成各部材の何れにも損傷は無いと判定する。尚、上記閾値は、上記転がり軸受に必要な性能、耐久性、騒音(静寂性)、振動(低振性)等を考慮して、上記損傷が許容できる範囲となる様に(予め)設定する。
【0009】
一方、上述の様に分岐した信号のうちの他方の信号{図3の(a−1)}は、必要に応じてフィルタ処理を施した後(必要なローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ等を通過させた後)、図3の(a−2)に実線で示す様に、所定のレベル(例えばX)以上でクリップする(抜き取る、刈り取る、クリッパー処理をする)。尚、上記レベルとは、振動の大きさ、強度を言う(例えば振動の大きさに対応する電圧の大きさを言う)。又、上記所定レベルXは、例えば、前記特許文献1に記載されている様に、転がり軸受の振動のうちで、所謂レース音(異物の混入に起因する振動以外の振動)に対応する振動の実効値の2√2倍程度の値とする。要するに、上記所定レベルXは、異物の混入に起因する(例えば異物が転がり接触部に入り込む事に基づく)振動のみをクリップできる値(レベル)に設定する(異物の振動に起因する振動レベルとそれ以外の振動レベルとの間に設定する)。
【0010】
何れにしても、この様にクリップした所定レベル以上の信号は、図3の(a−3)に示す様に、パルス信号として出力し、このパルス信号のパルス数を計測(カウント)する。そして、所定時間内に計測(カウント)されたパルス数とこのパルス数に関する閾値とを比較する事により、上記潤滑剤に混入する異物(例えば塵等の固形異物)の量を判定する、第二の判定を行なう。具体的には、上記パルス数が上記閾値よりも大きければ、上記異物が転がり接触部に入り込む事に伴う振動が多く、その分、この異物の量が多い(潤滑剤に起因する振動、騒音が大きい)と判定できる。これに対して、上記パルス数が上記閾値以下であれば、上記異物が転がり接触部に入り込む事に伴う振動が少なく、その分、この異物の量が少ない(潤滑剤に起因する振動、騒音が小さい)と判定できる。尚、上記閾値は、転がり軸受に必要な性能、耐久性、騒音(静寂性)、振動(低振性)等を考慮して、上記異物の量が許容できる範囲となる様に(予め)設定する。例えば、前記特許文献1に記載されている様に、所定時間120秒でパルス数300回以内とする。
【0011】
前述の様に第一の判定を行なうと共に、上述の様に第二の判定を行ったならば、少なくともこれら第一の判定と第二の判定との判定結果に基づいて、転がり軸受の異常の有無を判定する。より具体的には、請求項2に記載した様に、上記第一の判定で、上記転がり軸受の構成各部材の少なくとも何れかに対応する周波数成分が閾値よりも大きいと判定された場合には、当該周波数に対応する構成部材に損傷有りと判定する。尚、この場合には、上記第二の判定の結果は考慮しなくても良い。即ち、この第二の判定の結果が何れでも(異常が有っても無くても)、上記構成部材に損傷が有る事に変わりはなく、上記転がり軸受に異常有り(不良品である)と判定できる為である。一方、上記第一の判定で、総ての周波数成分が閾値以下であると判定され、且つ、上記第二の判定で、上記パルス数が閾値よりも大きいと判定された場合には、上記構成各部材の何れにも損傷は無いが、上記潤滑剤に混入する異物の量が多い(潤滑剤に起因する振動、騒音が大きい)と判定する。又、上記第一の判定で、総ての周波数成分が閾値以下であると判定され、且つ、上記第二の判定で、上記パルス数が閾値以下であると判定された場合には、上記構成各部材の何れにも損傷は無く、上記潤滑剤に混入する異物の量も少ない(潤滑剤に起因する振動、騒音が小さい)、即ち、転がり軸受に異常なし(良品である)と判定する。
【0012】
又、上述の様な本発明の転がり軸受の異常判定方法を実施する場合により好ましくは、請求項3に記載した様に、上記第二の判定で計測(カウント)した所定時間内のパルス数(異物の混入量)に応じて、転がり軸受の音響性能に関する順位付け(ランク分け)を行なう。又、請求項4に記載した様に、上記転がり軸受の振動の検出は、検出感度を確保し易い方向(ラジアル方向、アキシアル方向、或は、両方)から行なう。又、請求項5に記載した様に、前記1対の軌道輪部材のうちの一方の軌道輪部材(例えば外輪)を静止部材とすると共に、同じく他方の軌道輪部材(例えば内輪)を回転部材とし、このうちの静止部材を通じて振動の検出を行なう。又、請求項6に記載した様に、3つの異なる判定を行ない、これら3つの判定の判定結果に基づいて、転がり軸受の異常の有無の判定を行なう事もできる。即ち、3つの異なる判定を行なう為に、信号を3つの同じ信号に分岐し、このうちの2つの信号を用いて、前述した第一の判定に基づく、損傷の有無並びに損傷部材の判定と、同じく前述した第二の判定に基づく、異物の混入量の判定とを行なう。又、これと共に、残りの1つ信号を用いてアンデロン値を測定(算出)し、この測定(算出)されたアンデロン値とこのアンデロン値に関する閾値とを比較する第三の判定を行なう。そして、上記第一、第二の両判定結果に加え、このアンデロン値に関する第三の判定結果も用いて、転がり軸受の異常の有無の判定を行なう。
【0013】
尚、この場合の「アンデロン値」とは、転がり軸受の外輪を固定し(静止させ)、内輪を1800min-1 の速度で回転させた場合の、外輪のラジアル方向の振動成分を言う。この様なアンデロン値に関しても、測定値(算出値)と閾値とを比較する事で、上記転がり軸受の異常の判定を行なう際の判断要素の1つとする事ができる。具体的には、それぞれローバンド(50−300Hz)、ミディアムバンド(300−1800Hz)、ハイバンド(1800−10000Hz)のフィルタを通過した、それぞれの通過信号に対応するアンデロン値AL 、AM 、AH を算出する。そして、何れかのアンデロン値AL 、AM 、AH の算出値が上記閾値よりも大きいと判定された場合には、転がり軸受に異常有り(振動性能を満たさない)と判定する。例えばローバンドに対応するアンデロン値AL の算出値が閾値より大きい場合は、例えば転がり軸受の真円度不良が想定される。又、ミディアムバンドに対応するアンデロン値AM の算出値が閾値より大きい場合は、例えば転がり紬受の軌道輪の軌道面や転動体の転動面のびびり(例えば形状誤差等に伴うびびり振動)が大きい事が想定される。又、ハイバンドに対応するアンデロン値AH の算出値が閾値より大きい場合は、例えば転がり軸受に粗さ不良や微小傷の発生、異物の混入が想定される。一方、総てのアンデロン値AL 、AM 、AH の算出値が上記閾値以下であると判定された場合には、転がり軸受に異常無し(振動性能を満たす)と判定する。尚、これら各アンデロン値AL 、AM 、AH の閾値は、判定対象となる転がり軸受に必要な性能、耐久性、騒音(静寂性)、振動(低振性)等を考慮して、振動性能が許容できる範囲となる様に(予め)設定する。
【0014】
又、本発明の転がり軸受の異常判定方法及び異常判定装置のうち、請求項7に記載した転がり軸受の異常判定装置の場合は、振動検出手段(例えば加速度センサ、変位センサ、速度センサ、マイクロホン等)と、変換手段(例えばA/D変換器)と、分岐手段と、エンベロープ処理手段と、周波数分析手段と、第一の判定手段と、クリップ手段と、パルス出力手段と、カウント手段と、第二の判定手段と、異常判定手段とを備える。尚、このうちの分岐手段と、エンベロープ処理手段と、周波数分析手段と、第一の判定手段と、クリップ手段と、パルス出力手段と、カウント手段と、第二の判定手段と、異常判定手段とは、例えばコンピュータ(電子計算機)や、専用のマイクロチップ(集積回路)等により構成できる。
【0015】
上記異常判定装置を構成する各手段のうち、上記振動検出手段は、記前記両軌道輪同士の相対回転に伴う振動を検出する為のものである。
又、上記変換手段は、上記検出された振動を電気信号に変換するものである。即ち、前述の図3の(A)に示す様な電気信号を得る為のものである。尚、この電気信号は、前述した通りのものである。又、上記振動検出手段に上記変換手段の機能を持たせ、この変換手段を省略する事もできる。
又、上記分岐手段は、上記信号(電圧、符号、数値、データ等)を少なくとも2つの同じ信号に分岐する(少なくとも2つの同じ信号に分ける)ものである。即ち、前述の図3の矢印αの処理を行なうものである。
【0016】
又、上記エンベロープ処理手段は、図3の(A−1)に示す様な、上記分岐した信号のうちの一方の信号、乃至は、必要に応じてフィルタ処理が施された一方の信号に、エンベロープ処理(包絡線処理)を施すものである。例えば、上記図3の(A−2)に示す様な絶対値処理と、同図の(A−3)に示す様な低周波通過処理(例えばローパスフィルタ処理)とを施す。
又、上記周波数分析手段は、上記図3の(A−3)に示す様なエンベロープ処理を施した信号を、同図(A−4)に示す様に、周波数分析{例えば高速フーリエー変換(FFT)}するものである。即ち、周波数毎の振動のレベルに変換する。
そして、上記第一の判定手段は、上記周波数分析により得られた周波数データのうち、上記転がり軸受の構成各部材にそれぞれ対応する所定の周波数成分と当該周波数成分に関する閾値とを比較する事により、上記転がり軸受の損傷(例えば傷、圧痕、フレッチング摩耗、異常摩耗等)の有無、並びに、その損傷を有する部材を判定するものである。この判定は、前述の第一の判定で説明した通りである。
【0017】
又、前記クリップ手段は、図3の(a−1)に示す様な、上記分岐した信号のうちの他方の信号、乃至は、必要に応じてフィルタ処理が施された他方の信号を、図3の(a−2)に実線で示す様に、所定のレベル以上でクリップする(抜き取る、刈り取る、クリッパー処理する)ものである。
又、上記パルス出力手段は、図3の(a−2)に実線で示す様な、上記クリップした所定レベル以上の信号を、図3の(a−3)に示す様に、パルス信号として出力するものである。
又、上記カウント手段は、上記パルス信号のパルスを計測(カウント)するものである。
そして、上記第二の判定手段は、所定時間内のパルス数とこのパルス数に関する閾値とを比較し、前記潤滑剤に混入する異物(例えば塵等の固形異物)の量を判定するものである。この判定は、前述の第二の判定で説明した通りである。
更に、上記異常判定手段は、少なくとも上記第二の判定手段と上記第一の判定手段との判定結果に基づいて、転がり軸受の異常の有無の判定を行なうものである。この判定は、前述の異常の判定で説明した通りである。
【0018】
又、上述の様な本発明の転がり軸受の異常判定装置を実施する場合により好ましくは、請求項8に記載した様に、上記周波数分析手段により得られるデータと、上記カウント手段により得られるデータと、上記第一、第二各判定手段、並びに、上記異常判定手段より得られる各判定結果とのうちの少なくとも何れかを(リアルタイムに)出力(表示、発音等)する為の出力手段{例えばモニタ、或は、音や光により警報を発する警報機(ライト、ブザー)等}を備えたものとする。又、請求項9に記載した様に、上記周波数分析手段により得られるデータと、上記カウント手段により得られるデータと、上記第一、第二各判定手段、並びに、上記異常判定手段により得られる各判定結果とのうちの少なくとも何れかを記憶する為の記憶手段{例えばHDD(ハードディスクドライブ)等の記憶装置(メモリ)}を備えたものとする。又、請求項10に記載した様に、上記周波数分析手段により得られるデータと、上記カウント手段により得られるデータと、上記第一、第二各判定手段、並びに、上記異常判定手段により得られる各判定結果とのうちの少なくとも何れかを、他の装置に伝送する為の伝送手段(有線、無線は問わない)を備えたものとする。
【0019】
又、上述の様な本発明の転がり軸受の異常判定装置を実施する場合により好ましくは、請求項11に記載した様に、前記分岐手段は、信号を3つの同じ信号に分岐するものとする。又、これと共に、この3つの信号のうちの1つの信号を用いてアンデロン値を測定(算出)するアンデロン値測定手段(アンデロン値算出手段)と、この測定(算出)されたアンデロン値(算出値)とこのアンデロン値に関する閾値とを比較する第三の判定手段とを備える。尚、この第三の判定手段が行なう判定は、前述の第三の判定で説明した通りである。更に、上記異常判定手段は、上記第一、第二の両判手段の判定結果に加え、上記第三の判定手段の判定結果も用いて、転がり軸受の異常の有無の判定を行なうものとする。又、この場合により好ましくは、請求項12に記載した様に、上記周波数分析手段により得られるデータと、上記カウント手段により得られるデータと、上記アンデロン値測定手段(アンデロン値算出手段)により得られるデータと、第一、第二、第三各判定手段、並びに、異常判定手段により得られる各判定結果とのうちの少なくとも何れかを出力する為の上記出力手段と、同じく何れかを記憶する為の上記記憶手段と、同じく何れかを他の装置に伝送する為の上記伝送手段とのうちの少なくとも何れかの手段を備えたものとする。
【発明の効果】
【0020】
上述の様に、本発明の転がり軸受の異常判定方法及び異常判定装置の場合には、少なくとも第一の判定(第一の判定手段)により損傷の有無並びに損傷部材の判定を行ない、第二の判定(第二の判定手段)により異物の混入量の(多少の)判定を行なう。そして、少なくともこれらの第一、第二両判定の判定結果に基づいて(異常判定手段により)、転がり軸受の異常の有無を判定する。この様に、この転がり軸受の異常の有無の判定を、損傷の有無並びにその損傷部材の判定結果と、異物の混入量の判定結果とを、互いに関連付けて行なえる。従って、例えば、転がり軸受に損傷が有るにも拘わらず、この損傷に基づく振動を潤滑剤に混入する異物と判定してしまうと言った不都合を防止して、上記異常の判定の精度(正確性)を確保する事と、この判定を効率良く行なう事とを、高次元で両立できる。そして、不良品解消の為の処置を、迅速、且つ、適切に講じる事ができる。
【0021】
又、請求項3に記載した様に、上記第二の判定で転がり軸受の音響性能に関する順位付け(ランク分け)を行なえば、損傷のない転がり軸受の峻別を細かく行なう事ができる他、潤滑剤(グリース、潤滑油等)の音響性能の峻別も行なえる(低騒音潤滑剤の開発に利用できる)。又、請求項6に記載した様に、アンデロン値の測定結果(第三の判定の判定結果)も用いれば、より精度の良い判定を行なえる。又、請求項9に記載した様に、異常判定装置に記憶手段を備えれば、過去のデータに基づく分析(例えば過去のデータとの比較、再検証)も行なえる為、より効率良く、しかも、精度良く(正確に)判定できる。又、例えば転がり軸受のセット換え時等に上記過去のデータに基づく分析を行なう事で、サイクルタイムの短縮等を図れる。又、請求項10に記載した様に、上記異常判定装置に伝送手段を備えれば、判定済みの転がり軸受の管理(例えばナンバー管理、転がり軸受の履歴の管理)等を容易に行なえる(トレーサビリティの確保を図れる)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[実施の形態の第1例]
図1〜3は、請求項1〜5、7〜10に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の転がり軸受の異常判定装置は、図1に示す様に、特許請求の範囲に記載した振動検出手段に相当する検出装置1と、演算処理器2と、特許請求の範囲に記載した出力手段に相当する出力装置3とを備える。このうちの検出装置1は、例えば加速度センサ、変位センサ、速度センサ、マイクロホン等により構成するもので、異常判定の対象となる転がり軸受4の回転に伴う振動を検出するものである。本例の場合、この判定対象となる転がり軸受4を、ラジアル玉軸受としている。このラジアル玉軸受は、内周面に外輪軌道5を有する外輪6と、外周面に内輪軌道7を有する内輪8と、これら内輪軌道7と外輪軌道8との間に転動自在に設けられた複数個の玉9、9と、これら各玉9、9の転動面と上記内輪軌道7及び外輪軌道8との転がり接触部を潤滑する潤滑剤(例えばグリースや潤滑油)とを備える。
【0023】
本例の異常判定装置の場合は、上記内輪8が回転した状態で、固定された(静止した)上記外輪6を通じて、上記検出装置1により、上記転がり軸受4の回転に伴う振動を検出する。尚、この転がり軸受4が、例えば回転機械装置に既に組み込まれているものであれば、この回転機械装置を運転する事により、上記内輪8(乃至は外輪6)を回転させた状態で、この転がり軸受4の振動を検出する。又、この転がり軸受4が、上記回転機械装置に組み込まれる前の(未使用の)ものである場合には、例えば電動モータ等の駆動装置(回転駆動手段)により、判定の対象となる転がり軸受4を相対回転させる。何れにしても、上記検出装置1は、この転がり軸受4を構成する軌道輪部材6、8同士を相対回転させた状態で、この相対回転に伴う振動を検出する。この場合に、より好ましくは、一方の軌道輪部材(例えば外輪6)を静止部材とすると共に、同じく他方の軌道輪部材(例えば内輪8)を回転部材とし、このうちの静止部材を通じて振動の検出を行なう。
【0024】
又、上記異常判定装置を構成する上記演算処理器2は、変換手段と、分岐手段と、エンベロープ処理手段と、周波数分析手段と、第一の判定手段と、クリップ手段と、パルス出力手段と、カウント手段と、第二の判定手段と、異常判定手段とを備える。このうちの変換手段は、例えばA/D変換器等により構成するもので、上記検出装置1により検出される振動を電気信号に変換する{例えば、アナログ信号をディジタル信号に変換する、コンピュータ(電子計算機)やマイクロチップ(集積回路)等により取り扱える電気信号、符号、数値、データ等に変換する}ものである。そして、この様な変換手段と上記検出装置1とにより、この検出装置1により検出された振動を、例えば図3の(A)に示す様な信号(電気信号、符号、数値、データ)に変換する。尚、上記検出装置1に上記変換手段の機能を持たせ、この変換手段を省略する事もできる。又、上述の様な信号を増幅する場合には、必要に応じて、上記演算処理器2に入力される前の段階でハードウエア的に行なう他、この演算処理器2によりソフトウエア的に行なう事ができる。
【0025】
又、上記演算処理器2のうちの、上記分岐手段と、上記エンベロープ処理手段と、上記周波数分析手段と、上記第一の判定手段と、上記クリップ手段と、上記パルス出力手段と、上記カウント手段と、上記第二の判定手段と、上記異常判定手段とは、例えばコンピュータ(電子計算機)や、専用のマイクロチップ(集積回路)等により構成できる。このうちの分岐手段は、図3の矢印αに示す様に、上記信号(電気信号、符号、数値、データ)を2つの同じ信号に分岐する(2つの同じ信号に分ける)。又、上記エンベロープ処理手段は、図3の(A−1)に示す様な、上記分岐した信号のうちの一方の信号、乃至は、必要に応じてフィルタ処理が施されたこの一方の信号に、同図の(A−2)に示す様な絶対値処理と、同図の(A−3)に示す様な低周波通過処理(例えばローパスフィルタ処理)とを施す{絶対値処理と低周波通過処理とから成るエンベロープ処理(包絡線処理)を施す}。
【0026】
又、上記周波数分析手段は、図3の(A−3)に示す様な、上記エンベロープ処理を施した信号を、同図(A−4)に示す様に、周波数分析{例えば高速フーリエー変換(FFT)}する。即ち、周波数毎の振動のレベルに変換する。そして、上記第一の判定手段は、上記周波数分析により得られた周波数データのうち、上記転がり軸受4の構成各部材にそれぞれ対応する所定の周波数成分と、当該周波数成分に関する閾値とを比較する事により、上記転がり軸受4の損傷(例えば傷、圧痕、フレッチング摩耗、異常摩耗等)の有無、並びに、その損傷を有する部材を判定(特定)する(第一の判定をする)。即ち、上記転がり軸受4に損傷があれば、その損傷に基づく衝撃振動が発生するが、その衝撃振動の発生の繰返し周期、即ち、その振動の周波数は、その損傷を有する部材(内輪、外輪、転動体、保持器)に応じた周波数を有する。具体的には、上記転がり軸受4の構成各部材に損傷が生じた場合の、その損傷に基づく振動の周波数は、下記の表1に示す関係を有する。
【0027】
【表1】

【0028】
そこで、上記第一の判定手段は、上記表1の関係に基づき、判定対象となる転がり軸受4の構成各部材にそれぞれ対応する所定の周波数成分が、予め設定した閾値を超えているか否かを判定する。そして、上記転がり軸受4の構成各部材の少なくとも何れかに対応する周波数成分が閾値よりも大きいと判定された場合には、当該周波数に対応する構成部材に損傷有りと判定する。これに対して、総ての周波数成分が閾値以下であると判定された場合には、上記構成各部材の何れにも損傷は無いと判定する。尚、上記閾値は、上記転がり軸受4に必要な性能、耐久性、騒音(静寂性)、振動(低振性)等を考慮して、上記損傷が許容できる範囲となる様に設定する。
【0029】
一方、前記クリップ手段は、図3の(a−1)に示す様な、上記分岐した信号のうちの他方の信号、乃至は、必要に応じてフィルタ処理が施されたこの他方の信号を、図3の(a−2)に実線で示す様に、所定のレベル(例えばX)以上でクリップする(抜き取る、刈り取る、クリッパー処理する)。尚、上記レベルとは、振動の大きさ、強度を言う(例えば振動の大きさに対応する電圧の大きさを言う)。又、上記所定レベルXは、例えば、前記特許文献1に記載されている様に、転がり軸受4の振動のうちで、所謂レース音{異物の混入に起因する振動以外の振動}に対応する振動の実効値の2√2倍程度の値とする。要するに、上記所定レベルXは、異物(例えば塵等の固形異物)の混入に起因する(例えば異物が転がり接触部に入り込む事に基づく)振動のみをクリップできる値(レベル)に設定する(異物の振動に起因する振動レベルとそれ以外の振動レベルとの間に設定する)。
【0030】
又、前記パルス出力手段は、図3の(a−2)に実線で示す様な、上記クリップした所定レベルX以上の信号を、図3の(a−3)に示す様に、パルス信号として出力する。又、前記カウント手段は、上記パルス信号のパルス数を計測(カウント)する。そして、前記第二の判定手段は、所定時間内のカウント数と上記パルス数に関する閾値とを比較し、上記潤滑剤に混入する異物の量を判定する(第二の判定をする)。即ち、上記パルス数が上記閾値よりも大きければ、上記異物が転がり接触部に入り込む事に伴う振動が多く(振動発生の頻度が高く)、この異物の量が多い(潤滑剤に起因する振動、騒音が大きい)と判定する。これに対して、上記パルス数が上記閾値以下であれば、上記異物が転がり接触部に入り込む事に伴う振動が少なく、この異物の量が少ない(潤滑剤に起因する振動、騒音が小さい)と判定する。尚、上記閾値は、転がり軸受4に必要な性能、耐久性、騒音(静寂性)、振動(低振性)等を考慮して、上記異物の量(振動、騒音)が許容できる範囲となる様に設定する。例えば、前記特許文献1に記載されている様に、所定時間120秒でパルス数300回以内とする。
【0031】
更に、前記異常判定手段は、上記第二の判定手段と前記第一の判定手段との判定結果に基づいて、転がり軸受4の異常の有無の判定を行なう。具体的には、上記第一の判定手段により、上記転がり軸受4の構成各部材の少なくとも何れかに対応する周波数成分が閾値よりも大きいと判定された場合には、当該周波数に対応する構成部材に損傷有りと判定する。尚、この場合には、上記第二の判定手段による結果は考慮しなくても良い。即ち、この第二の判定手段の結果が何れでも(異常が有っても無くても)、上記構成部材に損傷が有る事に変わりはなく、上記転がり軸受4に異常有り(不良品である)と判定して良い為である。一方、上記第一の判定手段により、総ての周波数成分が閾値以下であると判定され、且つ、上記第二の判定手段により、上記パルス数が閾値よりも大きいと判定された場合には、上記構成各部材の何れにも損傷は無いが、上記潤滑剤に混入する異物の量が多い(潤滑剤に起因する振動、騒音が大きい)と判定する。又、上記第一の判定により、総ての周波数成分が閾値以下であると判定され、且つ、上記第二の判定手段により、上記パルス数が閾値以下であると判定された場合には、上記構成各部材の何れにも損傷は無く、上記潤滑剤に混入する異物の量も少ない(潤滑剤に起因する振動、騒音が小さい)、良品であると判定する。
【0032】
又、前記出力装置3は、例えばモニタ、或は、音や光により警報を発する警報機(ライト、ブザー)等により構成するものである。そして、上記周波数分析手段により得られるデータと、上記カウント手段により得られるデータと、上記第一、第二各判定手段、並びに、上記異常判定手段により得られる各判定結果とのうちの少なくとも何れかを出力(表示、発音等)する。尚、必要に応じて、これらデータや判定結果の少なくとも何れかを記憶する為の記憶手段{例えばHDD(ハードディスクドライブ)等の記憶装置}や、同じくこれらデータや判定結果の少なくとも何れかを、他の装置に伝送する為の伝送手段(有線、無線は問わない)を備える事もできる。
【0033】
図2は、上述の様な異常判定装置が行なう、転がり軸受4の異常の判定の処理手順(フローチャート)を示している。本例の異常判定装置の場合は、先ずステップ1で、前記検出装置1の検出信号を前記演算処理器2に入力する。次いで、ステップ2で、図3の(A)に示す様に、この検出信号を前記変換手段により、アナログ信号からディジタル信号{コンピュータ(電子計算機)やマイクロチップ(集積回路)等により取り扱える電気信号、符号、数値、データ等}に変換する。そして、前記分岐手段により、図3の矢印αに示す様に、上記信号(電気信号、符号、数値、データ)を2つの同じ信号に分岐する(2つの同じ信号に分ける)。尚、この分岐した信号のうちの一方の信号から、続く処理に必要な振動のみを取り出す為の、フィルタ処理で通過させる振動周波数並びに振動レベルは、予め設定(フィルタ帯域を選定)しておく(ステップ3)。この設定は、例えば、異常判定の対象となる転がり軸受4の諸元、この転がり軸受4の回転速度、この転がり軸受4の振動以外に検出される振動、続く処理等を考慮して行なう。そして、ステップ4で、上記一方の信号に必要なフィルタ処理を施す(必要なローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ等を通過させ、不要な周波数帯域を除去する)と共に、続くステップ5で、前記エンベロープ処理手段により、絶対値処理と低周波通過処理とから成るエンベロープ処理(包絡線処理)を施して、上記一方の信号に、図3の(A−1)から同図の(A−3)に示す処理を施す。
【0034】
この様にステップ5でエンベロープ処理を施したならば、続くステップ6で、前記周波数分析手段により、周波数分析{例えば高速フーリエー変換(FFT)}をする。即ち、図3の(A−4)に示す様に、同図の(A−3)の信号を、周波数毎の振動のレベルに変換する。そして、次のステップ7で、異常判定の対象となる転がり軸受4の諸元、この転がり軸受4の回転速度、前記表1等に基づき、この転がり軸受4の構成各部材の損傷の有無を判定する為に必要な周波数を算出する。尚、このステップ7での算出は、上記ステップ6よりも前に行なう事ができる他、以前に同様の算出を行なっている場合には、この以前のデータ(算出結果)を用いる事もできる。何れにしても、ステップ8で、上記ステップ6の周波数分析により得られた周波数データのうち、上記転がり軸受4の構成各部材にそれぞれ対応する所定の周波数成分(ステップ7で算出された周波数に対応する成分)を抽出する。一方、ステップ9で、上記転がり軸受4の諸元等と、上記転がり軸受4に必要な性能、耐久性、騒音(静寂性)、振動(低振性)等を考慮して予め求めた閾値等との関係等から、現在の判定対象の転がり軸受4に対応した閾値(基準値)を算出しておく。
【0035】
そして、ステップ10で、上記ステップ8で抽出された、上記転がり軸受4の構成各部材にそれぞれ対応する所定の周波数成分と、上記ステップ9で算出しておいた、当該周波数成分に対応する閾値(基準値)とを比較する。この様なステップ10で、上記転がり軸受4の構成各部材の少なくとも何れかに対応する周波数成分が閾値(基準値)よりも大きい{何れかの不等式が満たされる(一致する)}と判定された場合には、ステップ11に進み、当該周波数に対応する構成部材に損傷有りと判定する。そして、前記出力装置3を構成する、例えばモニタに、この判定結果を出力(表示)する。一方、上記ステップ10で、総ての周波数成分が閾値(基準値)以下である{何れの不等式も満たされない(一致しない)}と判定された場合には、上記構成各部材の何れにも損傷は無いと判定し、後述するステップ15に進む。尚、上記ステップ7〜11の処理は、前記第一の判定手段、並びに、前記異常判定手段により行なう。
【0036】
一方、前述の様に分岐手段により分岐された信号のうちの他方の信号{図3の(a−1)}は、ステップ12で、必要なフィルタ処理を施す。このステップ12で行なうフィルタ処理も、前述のステップ3、4と同様に、続く処理に必要な振動のみを取り出す為に行なう。又、このフィルタ処理で通過させる振動周波数並びに振動レベルは、異常判定の対象となる転がり軸受4の諸元、この転がり軸受4の回転速度、この転がり軸受4の振動以外に検出される振動、続く処理等を考慮して行なう。例えば、異物の種類及び大きさが広範囲に亙る場合は300〜10000Hz、比較的大きい異物を感度良く測定(判定)したい場合は300〜1800Hz、比較的小さい異物を感度良く測定(判定)したい場合は1800〜10000Hzのバンドパスフィルタ処理を施す等、測定対象となる混入する異物の大きさ、種類、条件等により必要なフィルタを適宜選定する。この様なステップ12で、必要なフィルタ処理を施したならば(必要なローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ等を通過させたならば)、続くステップ13で、前記クリップ手段により、図3の(a−2)に実線で示す様に、所定のレベル(例えばX)以上でクリップする(抜き取る、刈り取る、クリッパー処理をする)。
【0037】
次いで、ステップ14で、上記クリップした所定レベル以上の信号を、前記パルス出力手段により、図3の(a−3)に示す様に、パルス信号として出力すると共に、前記カウント手段により、このパルス信号のパルス数を計測(カウント)する。そして、ステップ15で、所定時間内に計測(カウント)されたパルス数Nとこのパルス数に関する閾値とを比較する。尚、このステップ15から先の処理は、前記ステップ10で、総ての周波数成分が閾値(基準値)以下であると判定された場合に行なう。この理由は、上記ステップ10で、少なくとも何れかの構成部材に対応する周波数成分が閾値(基準値)よりも大きいと判定された場合には、当該構成部材に損傷有り(不良品である)と判定される為、更に次述する様な潤滑剤に混入する異物(例えば塵等の固形異物)の量までも判定する必要が無い為である。尚、この様に損傷有りと判定された場合でも、上記異物の混入量が必要であれば、この混入量も判定しても良い(ステップ11の結果と共に、ステップ15以降の結果を出力しても良い)。
【0038】
上述の様なステップ15で、上記パルス数Nが上記閾値よりも多ければ、ステップ17に進み、上記異物が転がり接触部に入り込む事に伴う振動が多く、この異物の量が多い(潤滑剤に起因する振動、騒音が大きい)と判定し、前記出力装置3(例えばモニタ)にその旨を出力(表示)する。一方、上記パルス数Nが上記閾値以下であれば、ステップ16に進み、上記異物が転がり接触部に入り込む事に伴う振動が少なく、この異物の量が少ない(潤滑剤に起因する振動、騒音が小さい)と判定し、前記出力装置3(例えばモニタ)にその旨(異常なし)を出力(表示)する。尚、上記ステップ15〜17の処理は、前記第二の判定手段、並びに、前記異常判定手段により行なう。
【0039】
上述の様に本例の場合は、前述の第一の判定手段による判定(第一の判定)で、上記転がり軸受4の構成各部材の少なくとも何れかに対応する周波数成分が閾値よりも大きいと判定された場合には、当該周波数に対応する構成部材に損傷が有る旨を出力する。一方、上記第一の判定で、総ての周波数成分が閾値以下であると判定され、且つ、上記第二の手段による判定(第二の判定)で、上記パルス数が閾値よりも大きいと判定された場合には、上記構成各部材の何れにも損傷は無いが、上記潤滑剤に混入する異物の量が多い(潤滑剤に起因する振動、騒音が大きい)旨を出力する。又、上記第一の判定で、総ての周波数成分が閾値以下であると判定され、且つ、上記第二の判定で、上記パルス数が閾値以下であると判定された場合には、上記構成各部材の何れにも損傷は無く、上記潤滑剤に混入する異物の量も少ない(潤滑剤に起因する振動、騒音が小さい)旨、即ち、異常がない旨を出力する。尚、この様に異常がないと判定された転がり軸受4に就いて、上記第二の判定で計測された所定時間内のパルス数Nに応じて、この転がり軸受4の音響性能に関する順位付けを行なう事もできる。
【0040】
上述の様に本例の場合は、第一、第二両判定の結果に基づいて転がり軸受4の異常の判定を行なう為、例えば、この転がり軸受4に損傷が有るにも拘わらず、この損傷に基づく振動を潤滑剤に混入する異物と判定してしまうと言った不都合を防止できる。この為、この転がり軸受4の異常の判定の精度(正確性)を確保する事と、この判定を効率良く行なう事とを、高次元で両立できる。又、不良品が発生した場合に、これを無くす為の対策を、迅速、且つ、適切に講じる事ができる。尚、上述の様に第二の判定で転がり軸受4の音響性能に関する順位付け(ランク分け)を行なえば、損傷のない転がり軸受4の峻別を細かく行なう事ができる他、潤滑剤(グリース、潤滑油等)の音響性能の峻別も行なえる(低騒音潤滑剤の開発に利用できる)。更に、上述の様な異常判定装置に、前述した様な記憶装置を設ければ、過去のデータに基づく分析(例えば過去のデータとの比較)も行なえる為、より効率良く、しかも、精度良く(正確に)判定できる。又、例えば転がり軸受のセット換え時等に上記過去のデータに基づく分析を行なう事で、サイクルタイムの短縮等を図れる。更に、上記異常判定装置に前述した様な伝送手段を設ければ、判定済みの転がり軸受4の管理(例えばナンバー管理、転がり軸受4の履歴の管理)等を容易に行なえる(トレーサビリティの確保を図れる)。
【0041】
[実施の形態の第2例]
図4は、請求項1〜12に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。上述した実施の形態の第1例の場合は、分岐手段により信号を2つに分岐し、この分岐した2つの信号を用いて、第一、第二両判定を行なうと共に、これら第一、第二両判定の判定結果を用いて、転がり軸受4(図1参照)の異常の有無の判定を行なう。これに対して、本例の場合は、3つの異なる判定を行なう為に、分岐手段により、信号を3つの同じ信号に分岐する。そして、このうちの2つの信号を用いて、前述した実施の形態の第1例と同様に、第一の判定に基づく、損傷の有無並びに損傷部材の判定と、同じく第二の判定に基づく、異物の混入量の判定とを行なう。更に、本例の場合には、上記3つの同じ信号のうちの残りの1つ信号を用いてアンデロン値AL 、AM 、AH を測定(算出)し、この測定(算出)されたアンデロン値AL 、AM 、AH とこのアンデロン値AL 、AM 、AH に関する閾値(基準値)とを比較する第三の判定も行なう。そして、上記第一、第二の両判定結果に加え、このアンデロン値AL 、AM 、AH に関する第三の判定結果も用いて、転がり軸受4の異常の有無の判定を行なう。
【0042】
この為に、本例の場合は、図4に示すフローチャート(処理手順)に沿って、転がり軸受4の異常を判定する為の処理を行なう。尚、この図4中のステップ1〜17は、前述の実施の形態の第1例で説明したのと同様の処理を行なう。但し、本例の場合には、このうちのステップ15で、パルス数Nが閾値以下である(不等式を満たさない)場合(第一の判定で、総ての周波数成分が閾値以下であると判定され、且つ、第二の判定で、パルス数Nが閾値以下であると判定された場合)は、ステップ19に進む。一方、ステップ2でA/D変換され、上述の様に分岐手段により分岐された3つの信号のうちの残りの1つの信号は、ステップ18で、アンデロン値AL 、AM 、AH の測定(算出)に用いられる。即ち、それぞれローバンド(50−300Hz)、ミディアムバンド(300−1800Hz)、ハイバンド(1800−10000Hz)のフィルタを通過させ、それぞれの通過信号に対応するアンデロン値AL 、AM 、AH を求める(算出する)。
【0043】
そして、ステップ19で、上記各アンデロン値AL 、AM 、AH の算出値と、これら各アンデロン値AL 、AM 、AH に関する閾値(基準値)とを比較する(第三の判定を行なう)。この様なステップ19で、これら総てのアンデロン値AL 、AM 、AH の算出値が上記閾値(基準値)以下である{何れの不等式も満たされない(一致しない)}と判定された場合には、ステップ16に進み、転がり軸受4に異常無し(振動性能を満たす)と判定し、出力装置3(図1参照)にその旨を出力する。これに対して、何れかのアンデロン値AL 、AM 、AH の算出値が上記閾値(基準値)よりも大きい{何れかの不等式が満たされる(一致する)}と判定された場合には、ステップ20に進み、転がり軸受4に異常有り(振動性能を満たさない)と判定し、上記出力装置3にその旨を出力する。
【0044】
この場合に、例えばローバンドに対応するアンデロン値AL の算出値が閾値(基準値)より大きい場合は、例えば転がり軸受4の真円度不良が想定される。又、ミディアムバンドに対応するアンデロン値AM の算出値が閾値(基準値)より大きい場合は、例えば転がり軸受4の軌道輪の軌道面や転動体の転動面のびびり(例えば形状誤差等に伴うびびり振動)が大きい事が想定される。又、ハイバンドに対応するアンデロン値AH の算出値が閾値(基準値)より大きい場合は、例えば転がり軸受4に粗さ不良や微小傷の発生、異物の混入が想定される。何れの場合も、上記出力装置3にその旨を出力する事が好ましい。尚、上記各アンデロン値AL 、AM 、AH の閾値(基準値)は、判定対象となる転がり軸受4に必要な性能、耐久性、騒音(静寂性)、振動(低振性)等を考慮して、振動性能が許容できる範囲となる様に予め設定しておく。
【0045】
上述の様な本例の場合には、第一の判定に基づく、損傷の有無並びに損傷部材の判定の結果と、第二の判定に基づく、異物の混入量の判定の結果とに加え、上述の様なアンデロン値に関する第三の判定の結果も用いて、転がり軸受の異常の有無の判定を行なう為、より精度の良い判定を行なえる。
尚、前述した実施の形態の第1例の様に、第一の判定と第二の判定とに基づいて転がり軸受4の異常の有無を判定する場合、第一の判定に基づく構成各部材の損傷の有無の判定は、検出対象となる転がり軸受に予圧を付与した状態で、アキシアル方向の振動を検出する事が、この検出感度を確保する面から好ましい場合がある。これに対して、本例の様に、アンデロン値に関する第三の判定も用いて転がり軸受の異常の有無を判定する場合には、このアンデロン値により転がり軸受の真円度や軌道面のびびり等の判定を行なう為、ラジアル方向の振動を検出する事が好ましい。
その他の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す模式図。
【図2】本発明の特徴となる判定処理手順を示すフローチャート。
【図3】検出信号に施す処理を模式的に示す図。
【図4】本発明の実施の形態の第2例を示す、図2と同様の図。
【符号の説明】
【0047】
1 検出装置
2 演算処理器
3 出力装置
4 転がり軸受
5 外輪軌道
6 外輪
7 内輪軌道
8 内輪
9 玉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同心に配置された1対の軌道輪部材と、これら両軌道輪部材の互いに対向する面に形成された1対の軌道と、これら両軌道同士の間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、これら各転動体の転動面と上記各軌道の軌道面との転がり接触部を潤滑する潤滑剤とを備えた転がり軸受の異常判定方法であって、
上記両軌道輪部材同士を相対回転させた状態で、この相対回転に伴う振動を検出して電気信号に変換した後、この信号を用いて少なくとも2つの異なる判定を行なう為に、この信号を少なくとも2つの同じ信号に分岐し、
この分岐した信号のうちの一方の信号に、エンベロープ処理を施した後、このエンベロープ処理を施した信号を周波数分析し、この周波数分析により得られた周波数データのうち、上記転がり軸受の構成各部材にそれぞれ対応する所定の周波数成分と当該周波数成分に関する閾値とを比較する事により、上記転がり軸受の損傷の有無、並びに、その損傷を有する部材を判定する第一の判定を行なうと共に、
上記分岐した信号のうちの他方の信号を、所定のレベル以上でクリップすると共に、このクリップした所定レベル以上の信号をパルス信号として出力し、所定時間内に計測されたこのパルス信号のパルス数とこのパルス数に関する閾値とを比較する事により、上記潤滑剤に混入する異物の量を判定する第二の判定を行ない、
少なくともこの第二の判定と上記第一の判定との判定結果に基づいて、転がり軸受の異常の有無を判定する、転がり軸受の異常判定方法。
【請求項2】
転がり軸受の異常の有無の判定は、第一の判定で、転がり軸受の構成各部材の少なくとも何れかに対応する周波数成分が閾値よりも大きいと判定された場合に、当該周波数に対応する構成部材に損傷有りと判定し、上記第一の判定で、総ての周波数成分が閾値以下であると判定され、且つ、第二の判定で、パルス数が閾値よりも大きいと判定された場合に、上記構成各部材の何れにも損傷は無いが、潤滑剤に混入する異物の量が多いと判定し、上記第一の判定で、総ての周波数成分が閾値以下であると判定され、且つ、上記第二の判定で、上記パルス数が閾値以下であると判定された場合に、上記構成各部材の何れにも損傷は無く、上記潤滑剤に混入する異物の量も少ないと判定する、請求項1に記載した転がり軸受の異常判定方法。
【請求項3】
第二の判定で計測された所定時間内のパルス数に応じて、転がり軸受の音響性能に関する順位付けを行なう、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した転がり軸受の異常判定方法。
【請求項4】
転がり軸受の振動の検出を、検出感度を確保し易い方向から行なう、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した転がり軸受の異常判定方法。
【請求項5】
1対の軌道輪部材のうちの一方の軌道輪部材を静止部材とすると共に、同じく他方の軌道輪部材を回転部材とし、このうちの静止部材を通じて振動の検出を行なう、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載した転がり軸受の異常判定方法。
【請求項6】
3つの異なる判定を行なう為に、信号を3つの同じ信号に分岐し、このうちの2つの信号を用いて、第一の判定に基づく、損傷の有無並びに損傷部材の判定と、第二の判定に基づく、異物の混入量の判定とを行なうと共に、残りの1つ信号を用いてアンデロン値を測定し、この測定されたアンデロン値とこのアンデロン値に関する閾値とを比較する第三の判定を行ない、上記第一、第二の両判定結果に加え、このアンデロン値に関する第三の判定結果も用いて、転がり軸受の異常の有無の判定を行なう、請求項1〜5のうちの何れか1項に記載した転がり軸受の異常判定方法。
【請求項7】
互いに同心に配置された1対の軌道輪部材と、これら両軌道輪部材の互いに対向する面に形成された1対の軌道と、これら両軌道同士の間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、これら各転動体の転動面と上記各軌道の軌道面との転がり接触部を潤滑する潤滑剤とを備えた転がり軸受の異常判定装置であって、
上記両軌道輪部材同士の相対回転に伴う振動を検出する為の振動検出手段と、この検出された振動を電気的な信号に変換する変換手段と、この信号を少なくとも2つの同じ信号に分岐する分岐手段と、
この分岐した信号のうちの一方の信号に、エンベロープ処理を施すエンベロープ処理手段と、このエンベロープ処理を施した信号を周波数分析する周波数分析手段と、この周波数分析により得られた周波数データのうち、上記転がり軸受の構成各部材にそれぞれ対応する所定の周波数成分と当該周波数成分に関する閾値とを比較する事により、上記転がり軸受の損傷の有無、並びに、その損傷を有する部材を判定する第一の判定手段と、
上記分岐した信号のうちの他方の信号を、所定のレベル以上でクリップするクリップ手段と、このクリップした所定レベル以上の信号をパルス信号として出力するパルス出力手段と、このパルス信号のパルスを計測するカウント手段と、所定時間内のパルス数とこのパルス数に関する閾値とを比較し、上記潤滑剤に混入する異物の量を判定する第二の判定手段と、
少なくともこの第二の判定手段と上記第一の判定手段との判定結果に基づいて、転がり軸受の異常の有無の判定を行なう異常判定手段とを備えた転がり軸受の異常判定装置。
【請求項8】
周波数分析手段により得られるデータと、カウント手段により得られるデータと、第一、第二各判定手段、並びに、異常判定手段により得られる各判定結果とのうちの少なくとも何れかを出力する為の出力手段を備えた、請求項7に記載した転がり軸受の異常判定装置。
【請求項9】
周波数分析手段により得られるデータと、カウント手段により得られるデータと、第一、第二各判定手段、並びに、異常判定手段により得られる各判定結果とのうちの少なくとも何れかを記憶する為の記憶手段を備えた、請求項7〜8のうちの何れか1項に記載した転がり軸受の異常判定装置。
【請求項10】
周波数分析手段により得られるデータと、カウント手段により得られるデータと、第一、第二各判定手段、並びに、異常判定手段により得られる各判定結果とのうちの少なくとも何れかを、他の装置に伝送する為の伝送手段を備えた、請求項7〜9のうち何れか1項に記載した転がり軸受の異常判定装置。
【請求項11】
分岐手段は、信号を3つの同じ信号に分岐するものであり、この3つの信号のうちの1つの信号を用いてアンデロン値を測定するアンデロン値測定手段と、この測定されたアンデロン値とこのアンデロン値に関する閾値とを比較する第三の判定手段とを備えており、異常判定手段は、第一、第二の両判手段の判定結果に加え、上記第三の判定手段の判定結果も用いて、転がり軸受の異常の有無の判定を行なうものである、請求項7〜10のうちの何れか1項に記載した転がり軸受の異常判定装置。
【請求項12】
周波数分析手段により得られるデータと、カウント手段により得られるデータと、アンデロン値測定手段により得られるデータと、第一、第二、第三各判定手段、並びに、異常判定手段により得られる各判定結果とのうちの少なくとも何れかを出力する為の出力手段と、同じく何れかを記憶する為の記憶手段と、同じく何れかを他の装置に伝送する為の伝送手段とのうちの少なくとも何れかの手段を備えた、請求項11に記載した転がり軸受の異常判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−109267(P2009−109267A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280143(P2007−280143)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】