説明

転がり軸受ユニットの状態量測定装置

【課題】コネクタ部25に何らかの外力が加わった場合でも、センサ9a、9bを保持したセンサホルダ8aがカバー7aに対してずれ動く事を防止できる構造を実現する。
【解決手段】上記コネクタ部25を、上記センサホルダ8aとは別体に構成され、且つ、このセンサホルダ8aと干渉しない位置に配置された、端子ホルダ22の一部分として形成する。この様な構造を採用する事により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明に係る転がり軸受ユニットの状態量測定装置は、転がり軸受ユニットを構成するハブと静止側軌道輪との間に作用する外力等の状態量を測定する為に利用する。更に、この求めた状態量を、自動車等の車両の走行安定性確保を図る為に利用する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の車輪は懸架装置に対し、複列アンギュラ型等の転がり軸受ユニットにより回転自在に支持する。又、自動車の走行安定性を確保する為に、例えばアンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)、更には、電子制御式ビークルスタビリティコントロールシステム(ESC)等の車両用走行安定化装置が使用されている。この様な各種車両用走行安定化装置を制御する為には、車輪の回転速度、車体に加わる各方向の加速度等を表す信号が必要になる。そして、より高度の制御を行う為には、車輪を介して上記転がり軸受ユニットに加わる荷重(例えばラジアル荷重とアキシアル荷重との一方又は双方)の大きさを知る事が好ましい場合がある。
【0003】
この様な事情に鑑みて、特許文献1には、特殊なエンコーダを使用して、転がり軸受ユニットに加わる荷重の大きさを測定する発明が記載されている。図3は、この特許文献1に記載された構造と同じ荷重の測定原理を採用している、転がり軸受ユニットの状態量測定装置に関する従来構造の1例を示している。この従来構造は、使用時にも回転しない外輪1の内径側に、使用時に車輪を支持固定した状態でこの車輪と共に回転するハブ2を、複数個の転動体3、3を介して、回転自在に支持している。これら各転動体3、3には、背面組み合わせ型の接触角と共に、予圧を付与している。尚、図示の例では、これら各転動体3、3として玉を使用しているが、重量が嵩む自動車用の軸受ユニットの場合には、玉に代えて円すいころを使用する場合もある。
【0004】
又、上記ハブ2の軸方向内端部(軸方向に関して「内」とは、自動車への組付け状態で車両の幅方向中央側を言い、各図の右側。反対に、車両の幅方向外側となる、各図の左側を、軸方向に関して「外」と言う。本明細書全体で同じ。)には、円筒状のエンコーダ4を、上記ハブ2と同心に支持固定している。このエンコーダ4は、円環状の芯金5と、この芯金5の外周面に添着固定した、永久磁石製で円筒状のエンコーダ本体6とから成る。被検出面である、このエンコーダ本体6の外周面の軸方向内半部には、S極とN極とを、円周方向に関して交互に且つ等間隔に配置している。これらS極とN極との境界は、軸方向中央部が円周方向に関して最も突出した、「く」字形となっている。
【0005】
又、上記外輪1の軸方向内端開口を塞ぐ、金属板製で有底円筒状のカバー7の内側に、合成樹脂製のセンサホルダ8を介して、1対のセンサ9a、9bを支持固定している。そして、この状態で、これら両センサ9a、9bの検出部を、上記エンコーダ4の被検出面の軸方向両半部に、それぞれ1つずつ近接対向させている。尚、上記両センサ9a、9bの検出部には、ホールIC、ホール素子、MR素子、GMR素子等の磁気検知素子を組み込んでいる。
【0006】
又、上記カバー7の内側に保持固定した上記センサホルダ8は、軸方向中間部に存在する円板部10と、この円板部10の外周縁部分から軸方向外方に延出する円筒部11と、この円板部10の中心部から軸方向内方に延出する、円筒状の外周面を有するコネクタ部12とを備える。そして、上記円板部10及び円筒部11を、上記カバー7の内側の奥端部に配置すると共に、上記コネクタ部12の先端部乃至中間部を、上記カバー7の底板部13の中央部に形成した通孔14を通じて、このカバー7の外部に突出させている。この様なセンサホルダ8のうち、上記円筒部11内に、上記両センサ9a、9bを包埋支持している。又、上記コネクタ部12内に、図示しない複数本の端子を保持している。これら各端子の先端部はそれぞれ、上記コネクタ部12の先端面に開口する状態で形成した図示しない凹孔の底面から、この凹孔内に突出させている。更に、上記各端子の基端部と上記両センサ9a、9bとの間を、それぞれ図示しない複数本のセンサリードにより直接、若しくは図示しない信号回路基板を介して繋いでいる。車両への組み付け時には、上記コネクタ部12の凹孔内に、図示しないケーブルの端部に設けたプラグを差し込んで、このプラグを上記各端子の先端部に接触させる。これにより、上記各センサ9a、9bの出力信号を、上記ケーブルを通じて車体側に設置した、後述する図示しない演算器に送信可能とする。
【0007】
上述の様に構成する転がり軸受ユニットの状態量測定装置の場合、外輪1とハブ2との間にアキシアル荷重が作用する事により、これら外輪1とハブ2とがアキシアル方向に相対変位すると、これに伴って、上記両センサ9a、9bの出力信号同士の間に存在する位相差比(=位相差/1周期)が変化する。この位相差比は、上記アキシアル荷重の作用方向及び大きさ(上記相対変位の方向及び大きさ)に見合った値をとる。従って、この位相差比に基づいて、上記アキシアル荷重の作用方向及び大きさ(上記相対変位の方向及び大きさ)を求める事ができる。尚、これらを求める処理は、図示しない演算器により行なう。この為、この演算器のメモリ中には、予め理論計算や実験により調べておいた、上記位相差比と、上記アキシアル方向の相対変位又は荷重との関係(零点及びゲイン)を表す、式やマップを記憶させておく。
【0008】
尚、上述した従来構造の場合には、エンコーダの被検出面にその検出部を対向させるセンサの数を、2個としている。これに対し、図示は省略するが、特許文献2〜3及び特願2006−345849には、当該センサの数を3個以上とする事で、多自由度の変位或は外力を求められる構造が記載されている。
【0009】
ところで、上述の図3に示した従来構造の場合には、センサホルダ8にコネクタ部12を一体的に形成している為、このコネクタ部12に何らかの外力が加わった場合に、上記センサホルダ8が上記カバー7に対してずれ動く可能性がある。ここで、上記何らかの外力としては、上記コネクタ部12にプラグを脱着する際に作用する荷重や、このコネクタ部12を周囲にぶつけた際に作用する衝撃荷重等が考えられる。何れにしても、上述の様にセンサホルダ8がカバー7に対してずれ動く事に伴い、エンコーダ4の被検出面と1対のセンサ9a、9bの検出部との位置関係が変化し、この結果、これら両センサ9a、9bの出力信号同士の間の位相差比が変化した場合には、その後、この位相差比に基づいて正確な状態量の測定を行えなくなる為、好ましくない。
【0010】
【特許文献1】特開2006−317420号公報
【特許文献2】特開2006−322928号公報
【特許文献3】特開2007−93580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の転がり軸受ユニットの状態量測定装置は、上述の様な事情に鑑み、コネクタ部に何らかの外力が加わった場合でも、センサを保持したセンサホルダがカバーに対してずれ動く事を防止できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の転がり軸受ユニットの状態量測定装置は、転がり軸受ユニットと、状態量測定装置とを備える。
このうちの転がり軸受ユニットは、内周面に複列の外輪軌道を有し、使用時にも回転しない外輪と、外周面に複列の内輪軌道を有し、使用時に回転するハブと、これら両列の内輪軌道と上記両列の外輪軌道との間に、両列毎に複数個ずつ転動自在に設けられた転動体とを備える。
又、上記状態量測定装置は、エンコーダと、少なくとも1個のセンサと、演算器とを備える。
このうちのエンコーダは、上記ハブの軸方向端部に支持固定されたものであって、このハブと同心の被検出面を備え、この被検出面の特性を円周方向に関して交互に変化させている。
又、上記センサは、検出部を上記エンコーダの被検出面に対向させた状態で、上記外輪の軸方向端部開口を塞ぐ為にこの軸方向端部に固定した有底円筒状のカバー内に、合成樹脂製のセンサホルダを介して保持されていて、上記被検出面の特性変化に対応して出力信号を変化させる。
又、上記演算器は、上記センサの出力信号に基づいて、上記外輪と上記ハブとの間の相対変位と、これら外輪とハブとの間に作用する外力とのうちの、少なくとも1種類の状態量を算出する機能を有する。
【0013】
特に、本発明の転がり軸受ユニットの状態量測定装置に於いては、上記カバーの底板部の一部に通孔を形成すると共に、この通孔の内側に上記センサの出力信号を取り出す為の端子を、上記センサホルダとは別体に構成され、且つ、このセンサホルダと干渉しない位置に配置された合成樹脂製の端子ホルダを介して保持している。これと共に、この端子ホルダのうちで上記カバー外に露出した部分を、コネクタ部としている。
又、この様な特徴を有する本発明を実施する場合に、好ましくは、請求項2に記載した様に、上記端子の一部分で上記端子ホルダからカバー内に露出した部分に、この端子ホルダに外力が作用する事によりこの端子ホルダが上記カバーに対してずれ動いた場合に、自身が変形する事に基づいて上記端子ホルダに作用した外力が上記端子を介して上記センサホルダに伝達されるのを防止する、外力吸収部を設ける。
【0014】
又、上述の様な本発明を実施する場合に、好ましくは、請求項3に記載した様に、上記転がり軸受ユニットを自動車の車輪支持用のハブユニットとする。そして、使用状態で上記静止側軌道輪を自動車の懸架装置に支持すると共に、上記ハブに車輪を結合固定する。
【発明の効果】
【0015】
上述の様に、本発明の転がり軸受ユニットの状態量測定装置の場合には、センサを保持するセンサホルダにコネクタ部を、一体的に形成してはいない。即ち、本発明の場合には、このコネクタ部を、このセンサホルダとは別体に構成され、且つ、このセンサホルダと干渉しない位置に配置された、端子ホルダの一部分として形成している。この為、上記コネクタ部に何らかの外力が加わり、この結果、このコネクタ部を備えた上記端子ホルダがカバーに対してずれ動いた場合でも、上記センサホルダがこのカバーに対してずれ動く事を有効に防止できる。従って、上記コネクタ部に何らかの外力が加わる事に拘らず、エンコーダの被検出面とセンサの検出部との位置関係を正規の位置関係に保つ事ができ、正確な状態量測定を行える。
又、請求項2に記載した構成を採用すれば、上述の様にセンサホルダがカバーに対してずれ動く事を、より有効に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜2は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例の特徴は、転がり軸受ユニットを構成する外輪1(図3参照)の軸方向内端部に固定するカバー7aと、このカバー7aに支持する各構成部品の構造にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図3に示した従来構造の場合とほぼ同様である。この為、重複する図示並びに説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分、並びに、上記従来構造と異なる部分を中心に説明する。
【0017】
上記カバー7aは、アルミニウム合金等をダイキャスト成形する事により、或いは鋼板等の金属板に絞り加工を施す事により造った金属製、又は、高機能樹脂を射出成形する等により造った非金属製で、全体を有底円筒状に形成しており、底板部13aと、この底板部13aの外周縁部分から軸方向外方に延出する円筒部15とを備える。このうちの円筒部15の軸方向外端部は、軸方向中間部乃至内端部よりも外径寸法が小さくなった、薄肉の嵌合用円筒部16としている。又、この嵌合用円筒部16の外周面の基端部に、軸方向外側に向く段差面17を設けている。又、上記底板部13aの中心部に、円形の通孔14aを形成している。又、この底板部13aのうちで、この通孔14aの周囲部分に、この底板部13aの軸方向内側面から軸方向内方に突出する内向円筒部18と、同じく軸方向外側面から軸方向外方に突出する外向円筒部19とを、それぞれ設けている。又、上記通孔14aの内周面である、上記内向、外向両円筒部18、19の内周面の軸方向中間部に、軸方向外側に向く段差面20を設けている。
【0018】
又、上記カバー7aの通孔14aの内側に、複数本の端子21、21を保持した、合成樹脂製の端子ホルダ22を内嵌支持している。この端子ホルダ22は、厚肉円筒状の基部23と、この基部23の軸方向内端開口を塞ぐ塞ぎ板部24と、この基部23の軸方向内端縁部から軸方向内方に延出する薄肉円筒状のコネクタ部25とを備える。又、上記基部23の外周面の軸方向外端部に外向フランジ状の鍔部26を、全周に亙り形成している。そして、このうちの塞ぎ板部24に、上記各端子21、21の軸方向中間部を包埋支持している。又、この状態で、これら各端子21、21の軸方向内端部を、上記コネクタ部25の径方向内側の空間内に配置すると共に、上記各端子21、21の軸方向外端部を、上記基部23の軸方向外端縁よりも軸方向外方に突出させている。
【0019】
上述の様な端子ホルダ22は、上記基部23の軸方向中間部乃至内端部を、上記カバー7aの通孔14aの軸方向内半部(上記内向円筒部18)にがたつきなく内嵌している。これと共に、上記鍔部26の軸方向内側面を、上記通孔14aの内周面の軸方向中間部に設けた段差面20に当接させている。又、この状態で、上記通孔14aの軸方向外端部(上記外向円筒部19の軸方向外半部)に締り嵌めで内嵌(圧入)した金属製又は高機能樹脂等の非金属製の抑え環27により、上記基部23の軸方向外側面を抑え付けている。これにより、上記端子ホルダ22の軸方向の位置決めを図った状態で、この端子ホルダ22を上記通孔14aの内側にがたつきなく内嵌支持している。尚、図示の例では、上記基部23の外周面に形成した係止溝28に係止した、シール部材であるOリング29を、上記内向円筒部18の内周面に弾性的に当接させている。これにより、この内向円筒部18の内周面と上記端子ホルダ22の外周面との間の水密を保持している。
【0020】
又、上記カバー7aの内側に、6個(図1では便宜上、4個のみ図示)のセンサ9a、9bを保持した、合成樹脂製のセンサホルダ8aを支持固定している。このセンサホルダ8aは、断面略L字形で全体を円環状に構成しており、円輪部30と、この円輪部30の外周縁部から軸方向外方に延出する円筒部31と、この円輪部30の径方向中間部から軸方向外方に突出する、薄肉で短尺な小径円筒部32とを備える。そして、このうちの円筒部31の内周面のうちで、円周方向に関して互いに間隔をあけた3個所に、それぞれ軸方向に亙る凹溝33、33を形成している。そして、これら3つの凹溝33、33内に上記各センサ9a、9bをそれぞれ2個ずつ、軸方向に間隔をあけて保持固定している。又、これら各センサ9a、9bにそれぞれの一端部を接続したセンサリード34、34の中間部を、上記円輪部30に包埋すると共に、これら各センサリード34、34の他端部を、この円輪部30の軸方向外側面の径方向内端寄り部分から突出させている。
【0021】
上述の様なセンサホルダ8aは、上記円筒部31を上記カバー7aの円筒部15にがたつきなく内嵌すると共に、上記円輪部30を上記カバー7aの外向円筒部19にがたつきなく外嵌した状態で、これら各嵌合する面同士を接着している。又、この状態で、上記円輪部30と上記カバー7aの底板部13aとの間に、隙間を設けている。そして、この様な隙間を設ける事により、温度上昇に伴う上記センサホルダ8aの熱膨張時に、このセンサホルダ8aが軸方向両側に向け熱膨張できる様にして、上記各センサ9a、9bの軸方向位置が大きく変化するのを抑制できる様にしている。
【0022】
又、上述の様にカバー7aの内側にセンサホルダ8aを支持固定した状態で、このセンサホルダ8aの小径円筒部32の径方向内側の奥端部に、信号回路基板35を保持固定している。この為に、具体的には、この信号回路基板35の軸方向内側面の径方向外端部を、上記センサホルダ8aの円輪部30の軸方向外側面のうち、上記小径円筒部32の径方向内側に隣接する部分に接触させている。これと共に、上記信号回路基板35の軸方向内側面の径方向外端寄り部分を、合成樹脂製で円輪状の間座36を介して、上記カバー7aの外向円筒部19の先端面に接触させている。そして、この状態で、上記信号回路基板35を上記センサホルダ8aに対し、図示しない複数本のねじにより結合固定している。又、この様に結合固定した状態で、上記信号回路基板35に、前記各端子21、21の軸方向外端部及び上記各センサリード34、34の他端部を、それぞれハンダ付け等により接続している。そして、この様に接続する事により、上記6個のセンサ9a、9bの出力信号を、上記各端子21、21から取り出せる様にしている。
【0023】
又、本例の場合には、図2に詳示する様に、上記各端子21、21のうち、前記端子ホルダ22の塞ぎ板部24と上記信号回路基板35との間に存在する部分に、それぞれアーチ状の外力吸収部37、37を設けている。これら各外力吸収部37、37は、上記各端子21、21の軸方向の外力が作用した際に、自身が屈伸する方向に弾性変形して、当該外力を吸収する。
【0024】
又、本例の場合、前記外輪1(図3参照)の軸方向内端部に前記カバー7aを固定する場合には、この外輪1の軸方向内端部にこのカバー7aの嵌合用円筒部16を、締り嵌めで内嵌(圧入)する。これと共に、この外輪1の軸方向内端面に、上記嵌合用円筒部16の外周面の基端部に存在する段差面17を突き当てる事で、上記外輪1に対する上記カバー7aの軸方向の位置決めを図る。そして、この様に外輪1にカバー7aを固定した状態で、上記6個のセンサ9a、9bの検出部を、ハブ2の軸方向内端部に支持固定したエンコーダ4(図3参照)の被検出面の軸方向両半部に近接対向させる。
【0025】
又、上記カバー7aを固定した転がり軸受ユニットを車両に組み付ける際には、車体側に設けた図示しない演算器に通じるケーブルの端部に設けたプラグを、上記カバー7aの外部に露出した前記コネクタ部25の内側に差し込んで、このプラグを上記各端子21、21の軸方向内端部に導通させる。これにより、上記各センサ9a、9bの出力信号を、上記演算器に送信できる様にする。尚、前記特願2006−345849に開示されている様に、上述の様な6個のセンサ9a、9bとエンコーダ4との組み合わせを含んで構成する状態量測定装置によれば、これら6個のセンサ9a、9bの出力信号同士の間に存在する位相差比に基づいて、上記外輪1とハブ2との間の多方向の相対変位と、これら外輪1とハブ2との間に作用する多方向の外力とを測定できる。但し、当該測定の原理に就いては、本例の特徴部分ではない為、詳しい説明は省略する。
【0026】
上述の様に構成する本例の転がり軸受ユニットの状態量測定装置の場合には、複数個のセンサ9a、9bを保持するセンサホルダ8aにコネクタ部25を、一体的に形成してはいない。即ち、本例の場合には、このコネクタ部25を、上記センサホルダ8aとは別体に構成され、且つ、このセンサホルダ8aと干渉しない位置に配置された、端子ホルダ22の一部分として形成している。この為、上記コネクタ部25に何らかの外力(例えば、このコネクタ部25にプラグを脱着する際に作用する荷重や、このコネクタ部25を周囲にぶつけた際に作用する衝撃荷重等)が加わり、この結果、このコネクタ部25を備えた上記端子ホルダ22がカバー7aに対してずれ動いた場合でも、上記センサホルダ8aが上記カバー7aに対してずれ動く事を有効に防止できる。更に、本例の場合、上記端子ホルダ22に軸方向の外力が作用する事により、この端子ホルダ22が上記カバー7aに対してずれ動いた場合には、各端子21、21の一部に設けた外力吸収部37、37が屈伸する方向に弾性変形する事に基づき、上記外力を吸収する。従って、この様な外力を吸収する効果によっても、上記端子ホルダ22がカバー7aに対してずれ動いた場合に、上記センサホルダ8aが上記カバー7aに対してずれ動く事を有効に防止できる。従って、上記コネクタ部25に何らかの外力が加わる事に拘らず、エンコーダ4の被検出面と上記各センサ9a、9bの検出部との位置関係を正規の位置関係に保つ事ができ、正確な状態量測定を行える。
【0027】
尚、本発明は、上述した実施の形態の構造に限らず、特許請求の範囲に記載された要件を満たす、各種の構造を対象として実施可能である。例えば、本発明は、エンコーダとして単なる磁性材製のもの(被検出面に中実部と除肉部とを交互に配置したもの)を組み込んだ構造(この構造では、センサ側に永久磁石を組み込む)や、エンコーダの被検出面を円輪面とし、且つ、この被検出面にセンサの検出部を軸方向に対向させる事で、静止側軌道輪とハブとの間に作用するラジアル荷重を測定可能とした構造を対象として実施する事もできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す要部断面図。
【図2】図1のA矢視図。
【図3】転がり軸受ユニットの状態量測定装置の従来構造の1例を示す断面図。
【符号の説明】
【0029】
1 外輪
2 ハブ
3 転動体
4 エンコーダ
5 芯金
6 エンコーダ本体
7、7a カバー
8、8a センサホルダ
9a、9b センサ
10 円板部
11 円筒部
12 コネクタ部
13、13a 底板部
14、14a 通孔
15 円筒部
16 嵌合用円筒部
17 段差面
18 内向円筒部
19 外向円筒部
20 段差面
21 端子
22 端子ホルダ
23 基部
24 塞ぎ板部
25 コネクタ部
26 鍔部
27 抑え環
28 係止溝
29 Oリング
30 円輪部
31 円筒部
32 小径円筒部
33 凹溝
34 センサリード
35 信号回路基板
36 間座
37 外力吸収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受ユニットと、状態量測定装置とを備え、
このうちの転がり軸受ユニットは、内周面に複列の外輪軌道を有し、使用時にも回転しない外輪と、外周面に複列の内輪軌道を有し、使用時に回転するハブと、これら両列の内輪軌道と上記両列の外輪軌道との間に、両列毎に複数個ずつ転動自在に設けられた転動体とを備えたものであり、
上記状態量測定装置は、エンコーダと、少なくとも1個のセンサと、演算器とを備えたものであり、
このうちのエンコーダは、上記ハブの軸方向端部に支持固定されたものであって、このハブと同心の被検出面を備え、この被検出面の特性を円周方向に関して交互に変化させたものであり、
上記センサは、検出部を上記エンコーダの被検出面に対向させた状態で、上記外輪の軸方向端部開口を塞ぐ為にこの軸方向端部に固定した有底円筒状のカバー内に、合成樹脂製のセンサホルダを介して保持されていて、上記被検出面の特性変化に対応して出力信号を変化させるものであり、
上記演算器は、上記センサの出力信号に基づいて、上記外輪と上記ハブとの間の相対変位と、これら外輪とハブとの間に作用する外力とのうちの、少なくとも1種類の状態量を算出する機能を有するものである、
転がり軸受ユニットの状態量測定装置に於いて、
上記カバーの底板部の一部に通孔を形成すると共に、この通孔の内側に上記センサの出力信号を取り出す為の端子を、上記センサホルダとは別体に構成され且つこのセンサホルダと干渉しない位置に配置された合成樹脂製の端子ホルダを介して保持すると共に、この端子ホルダのうちで上記カバー外に露出した部分をコネクタ部としている事を特徴とする転がり軸受ユニットの状態量測定装置。
【請求項2】
端子の一部分で端子ホルダからカバー内に露出した部分に、この端子ホルダに外力が作用する事によりこの端子ホルダが上記カバーに対してずれ動いた場合に、自身が変形する事に基づいて上記端子ホルダに作用した外力が上記端子を介してセンサホルダに伝達されるのを防止する外力吸収部を設けている、請求項1に記載した転がり軸受ユニットの状態量測定装置。
【請求項3】
転がり軸受ユニットが自動車の車輪支持用のハブユニットであり、使用状態で静止側軌道輪が自動車の懸架装置に支持されると共に、ハブに車輪が結合固定される、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した転がり軸受ユニットの状態量測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−186393(P2009−186393A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28475(P2008−28475)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】