説明

転がり軸受ユニット

【課題】偏心カム部3a、3bの周囲に振れ回り部材4a、4bを回転自在に支持する為の円筒ころ軸受5a、5bを構成する保持器9a、9bの軸方向変位を抑える為の座板13A、13Bの組み付け作業が容易でこれら両座板13A、13Bの支持強度を確保でき、しかも上記両円筒ころ軸受5a、5bに供給する潤滑油の量を確保できる構造を実現する。
【解決手段】上記両座板13A、13Bの内径寄り部分を、隣接する円すいころ軸受2、2の内輪12、12の軸方向内端面と、上記偏心カム部3a、3bの軸方向外端面との間で、全周に亙り挟持固定する。又、上記両座板13A、13Bの外径寄り部分で上記両保持器9a、9bに軸方向対向する部分の円周方向複数個所に、切り欠き16、16を形成する。これら各切り欠き16、16の内接円の直径を、上記両保持器9a、9aのリム部10、10の内径よりも小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転動力を減速しつつ伝達する動力伝達装置に組み込む転がり軸受ユニットの改良に関する。具体的には、必要な機能を確保しつつ、偏心カム部の周囲に振れ回り部材を支持する為のころ軸受(ニードル軸受を含む、本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ)に十分な潤滑油を流通させられる構造の実現を図るものである。
【背景技術】
【0002】
回転運動を大きく減速しつつ伝達する、減速機構を備えた動力伝達装置として、特許文献1に記載された構造が知られている。この動力伝達装置は、高速で回転する入力軸の回転運動を、外周縁に外歯を形成した振れ回り部材(外歯歯車)の振れ回り運動に変換し、この振れ回り運動を、ピンと内歯とを介して外径側部材(内歯歯車)に伝達し、この外径側部材を固定した出力軸を低速で回転させるものである。この様な動力伝達装置で、上記入力軸の回転を上記振れ回り部材の振れ回り運動に変化する部分を従来は、図9〜10に示す様に構成している。
【0003】
駆動源により回転駆動される回転軸1は、軸方向に離隔して配置された、それぞれが特許請求の範囲に記載した回転支持用転がり軸受である1対の円すいころ軸受2、2により、回転自在に支持されている。上記回転軸1の一部で、これら両円すいころ軸受2、2同士の間部分に、1対の偏心カム部3a、3bを固設(例えば一体形成)している。これら両偏心カム部3a、3bは、上記回転軸1の回転中心αに対し偏心した円筒状の外周面を有し、それぞれの外径が、この回転軸1のうちで上記両偏心カム部3a、3bに隣接する部分の外径よりも大きい。又、これら両偏心カム部3a、3bの中心軸β、γが上記回転軸1の回転中心αに対し偏心している方向は、この回転軸1の径方向に関して180度逆方向としている。
【0004】
又、上記両偏心カム部3a、3bの周囲に振れ回り部材4a、4bを、それぞれ円筒ころ軸受5a、5bにより、回転自在に支持している。これら両円筒ころ軸受5a、5bは、それぞれ、上記両偏心カム部3a、3bの外周面である内輪軌道6a、6bと、上記両振れ回り部材4a、4bの内周面である外輪軌道7a、7bとの間に、複数個ずつの円筒ころ8a、8bを配置して成る。これら各円筒ころ8a、8bはそれぞれ、保持器9a、9bにより転動自在に保持している。これら両保持器9a、9bは、M形保持器と呼ばれるもので、金属板を曲げ形成する事により、断面略M字形で全体を円筒状に形成している。そして、軸方向両端部に設けた円輪状のリム部10、10同士の間に、柱部11、11とポケットとを、円周方向に関して交互に配置している。そして、これら各ポケット内に上記各円筒ころ8a、8bを、転動自在に保持している。
【0005】
又、上記両偏心カム部3a、3bの軸方向外端面(互いに反対側の端面)と、前記両円すいころ軸受2、2を構成する内輪12、12の軸方向内端面(互いに対向する端面)との間に、座板13a、13bの内周縁部を挟持している。これら両座板13a、13bは、上記両円筒ころ軸受5a、5bを構成する上記両保持器9a、9bの軸方向の変位を抑える為に設けたもので、金属板を打ち抜く事により円輪状に形成している。即ち、上記両保持器9a、9bは、上記各円筒ころ8a、8bの自転中心が上記両偏心カム部3a、3bの中心軸β、γに対し傾斜する、所謂スキューに基づいて発生するスラスト力により、軸方向に変位する可能性がある。この様な場合にも、上記両保持器9a、9bの軸方向位置を適正位置に保持し、これら両保持器9a、9bに保持された上記各円筒ころ8a、8bの転動面が、上記内輪軌道6a、6b及び上記外輪軌道7a、7bから外れない様にすべく、上記両座板13a、13bを設けている。
【0006】
これら両座板13a、13bは、内周縁部の円周方向の一部のみを、図9の右下部及び左上部に示す様に、上記両偏心カム部3a、3bの軸方向外端面と上記両内輪12、12の軸方向内端面との間で挟持している。具体的には、上記両偏心カム部3a、3bの軸方向外端面のうちで、これら両偏心カム部3a、3bの偏心量が多くなった部分(前記回転軸1の回転中心αからの距離が大きくなった部分)と上記両内輪12、12の軸方向内端面との間で挟持している。そして、上記両座板13a、13bの内周縁の円周方向の残部と、上記両内輪12、12の軸方向内端面の外周縁及び上記両偏心カム部3a、3bの軸方向外端面の外周縁との間に、図9の右上部及び左下部に示す様に、隙間14a、14bを形成している。具体的には、上記両偏心カム部3a、3bの軸方向外端面のうちで、これら両偏心カム部3a、3bの偏心量が少なくなった部分(前記回転軸1の回転中心αからの距離が小さくなった部分)の外周縁と、上記両座板13a、13bの内周縁との間に、上記両隙間14a、14bを設けている。これら両隙間14a、14bは、上記両円筒ころ軸受5a、5bに潤滑油を流通させる為のもので、それぞれが図11〜12に示す様な三日月形である。上記両隙間14a(14b)の円周方向位置は、前記回転軸1の回転に伴う、上記両偏心カム部3a、3bの回転に伴って、図13の(A)→(B)→(C)→(D)→(A)に示す様に円周方向に移動し、前記各円筒ころ8a、8bの公転運動に伴って、上記両円筒ころ軸受5a(5b)の全周に亙って潤滑油を供給可能にする。
【0007】
上記各円筒ころ8a、8bのスキューに基づいて上記両保持器9a、9bが軸方向に変位する傾向になった場合も、上記両座板13a、13bの存在に基づき、この変位を抑える。即ち、何れかの保持器9a(9b)が、他の保持器9b(9a)から離れる方向に変位する傾向になると、当該保持器9a(9b)のリム部10と上記座板13a(13b)とが当接して、それ以上この保持器9a(9b)が軸方向に変位するのを阻止する。これに対して、何れかの保持器9a(9b)が、他の保持器9b(9a)に近付く方向に変位する傾向になると、当該保持器9a(9b)のリム部10とこの他の保持器9b(9a)のリム部10とが当接して、それ以上この保持器9a(9b)が軸方向に変位するのを阻止する。そして、何れの場合も、上記両保持器9a、9bに保持された前記各円筒ころ8a、8bの転動面が、前記内輪軌道6a、6b及び前記外輪軌道7a、7bから外れない様にする。
【0008】
上述の様な従来構造の場合、上記両円筒ころ軸受5a(5b)への潤滑油の供給量を確保する事が難しい。この理由は、前記両隙間14a、14bの開口面積を確保する事が難しい為である。即ち、これら両隙間14a、14bは、図11〜12から明らかな通り、円周方向の長さ寸法Lは或る程度確保できるが、径方向の幅寸法Wを確保する事は難しい。この為、著しい場合には、上記両隙間14a、14b部分がラビリンスシール的に機能する等により、これら両隙間14a、14bを通過する潤滑油の量を確保しにくい。上記幅寸法Wを大きくしてこれら両隙間14a、14bを通過する潤滑油の量を確保する事だけを考えれば、上記両座板13a、13bの内径を大きくしたり、前記両内輪12、12に対するこれら両座板13a、13bの偏心量を多くすれば良い。但し、この様な構造を採用した場合には、これら両座板13a、13bの内周縁部の円周方向の一部で、前記両偏心カム部3a、3bの軸方向外端面と前記両内輪12、12の軸方向内端面との間で挟持する部分の面積が狭くなり、上記両座板13a、13bの支持強度を確保しにくくなる。しかも、上記従来構造の場合には、上記両座板13a、13bを上記両内輪12、12に対し、適正方向に適正量だけ偏心した状態で組み付ける必要があり、組み付け作業が面倒になる。
【0009】
【特許文献1】特開2006−336702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、偏心カム部の周囲に振れ回り部材を回転自在に支持する為の円筒ころ軸受を構成する保持器の軸方向変位を抑える為の座板の組み付け作業が容易でこの座板の支持強度を確保でき、しかも上記円筒ころ軸受に供給する潤滑油の量を確保できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の転がり軸受ユニットは、前述した従来から知られている転がり軸受ユニットと同様に、回転軸と、偏心カム部と、振れ回り部材と、複数個の円筒ころと、回転支持用転がり軸受と、座板とを備える。
上記偏心カム部は、上記回転軸の一部に固設されたもので、この回転軸の回転中心に対し偏心した円筒状の外周面を有し、外径がこの回転軸のうちで隣接する部分の外径よりも大きい。
又、上記振れ回り部材は、上記偏心カム部の周囲に配置されたもので、円筒状の内周面を有する。
又、上記各円筒ころは、上記偏心カム部の外周面と上記振れ回り部材の内周面との間に、保持器に転動自在に保持された状態で設けられている。
又、上記回転支持用転がり軸受は、上記回転軸のうちで軸方向に関して上記偏心カム部に隣接する部分に設けられて、上記回転軸を回転自在に支持する。
更に、上記座板は、上記回転支持用転がり軸受を構成する、上記回転軸に外嵌固定された内輪の軸方向端面と、上記偏心カム部の軸方向端面との間で挟持固定されている。
そして、上記座板の軸方向片側面と上記保持器の軸方向端面とを軸方向に対向させている。
【0012】
特に、本発明の転がり軸受ユニットに於いては、上記座板の内径寄り部分を、上記内輪の軸方向端面と上記偏心カム部の軸方向端面との間で全周に亙り挟持固定している。又、上記座板の外径寄り部分で上記保持器に軸方向対向する部分の円周方向複数個所に、切り欠き若しくは通孔を形成している。更に、これら各切り欠き若しくは通孔の内接円の直径を、上記保持器の内径よりも小さくしている。
【0013】
この様な本発明の転がり軸受ユニットを実施する場合に、例えば請求項2、3に記載した発明の様に、上記座板の外周縁の円周方向等間隔の複数個所に、この座板の径方向に関する寸法が互いに同じである切り欠きを形成する。
そして、例えば請求項2に記載した発明の様に、上記座板のうちでこれら各切り欠き部分の外径をdW とし、保持器の内径をRC とし、回転軸の回転中心に対する偏心カム部の外周面の中心の偏心量をδとした場合に、dW <RC −2δを満たすべく、各部の寸法dW 、RC 、2δを規制する。そして、好ましくは、RC −2δ−dW >0.05RC とする。
或いは、請求項3に記載した発明の様に、上記座板のうちでこれら各切り欠き部分の外径をdW とし、同じくこれら各切り欠きから外れた部分の外径をDW とし、保持器の内径をRC とし、同じく外径をDC とし、回転軸の回転中心に対する偏心カム部の外周面の中心の偏心量をδとした場合に、DW ≒(RC +DC )/2+2δ、言い換えれば、0.9{(RC +DC )/2+2δ}≦DW ≦1.1{(RC +DC )/2+2δ}を満たすべく、各部の寸法dW 、DW 、RC 、DC 、δを規制する。
【発明の効果】
【0014】
上述の様に構成する本発明の転がり軸受ユニットによれば、座板の組み付け作業の容易化と、この座板の支持強度の確保と、円筒ころ軸受に供給する潤滑油の量の確保とを、高次元で並立させられる。
即ち、上記座板の内径寄り部分を、内輪の軸方向端面と偏心カム部の軸方向端面との間で全周に亙り挟持固定する為、上記座板の内径を、回転軸のうちでこの偏心カム部に隣接する部分に外嵌できる大きさに規制さえすれば、上記座板の組み付け位置規制を容易に行なえる。そして、この座板を、上記内輪の軸方向端面と偏心カム部の軸方向端面との間で全周に亙り挟持する為、この座板の支持強度を十分に確保できる。
更に、この座板の外径寄り部分の円周方向複数個所に形成する切り欠き若しくは通孔の大きさは、上記支持強度に関係なく大きく(径方向に関する幅寸法を確保)できる。この為、上記切り欠き若しくは通孔を通じて上記円筒ころに十分量の潤滑油を供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[実施の形態の第1例]
図1〜6は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、1対の座板13A、13Bの形状及び組み付け構造を工夫する事により、これら両座板13A、13Bの組み付け作業の容易化と、これら両座板13A、13Bの支持強度の確保と、1対の円筒ころ軸受5a、5bに供給する潤滑油の量の確保とを、高次元で並立させる点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図9〜13に示した従来構造と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。
【0016】
上記両座板13A、13Bは、ステンレス鋼板、炭素鋼板等の鉄系合金板、或いは真鍮等の銅系合金板等の金属板を打ち抜き形成する事により、図6の(A)又は(B)に示す様な、円輪状に加工している。即ち、上記両座板13A、13Bは、中心部に円孔15を、外周縁の円周方向等間隔複数個所(図示の例では4個所)に切り欠き16、16を、それぞれ形成している。上記円孔15の内径R15は、回転軸1の一部で偏心カム部3a、3bに隣接する部分の外径D1 と同じか僅かに小さく(R15≦D1 )して、上記両座板13A、13Bを、これら両部分に、径方向に関する位置決めを図った状態で外嵌できる様にしている。
【0017】
又、上記両座板13A、13Bのうちで、上記各切り欠き16、16から外れた外径寄り部分17、17の外径DW は、上記両偏心カム部3a、3bの外周面である内輪軌道6a、6bの偏心運動に拘らず、上記各外径寄り部分17、17と、上記両円筒ころ軸受5a、5bに組み込む保持器9a、9bを構成する各リム部10、10のうち、上記両座板13A、13B側に存在する1対のリム部10、10とが軸方向に対向し続ける様に、これら両リム部10、10の内径RC との関係で規制している。言い換えれば、上記両座板13A、13Bの外周縁が、上記両リム部10、10に対し最も径方向内側に変位した状態でも、これら両リム部10、10に確実に対向する様に、上記両寸法DW 、RC を規制している。
【0018】
好ましくは、上記両座板13A、13Bのうちで上記各切り欠き16、16部分の外径をdW とし、同じくこれら各切り欠き16、16から外れた部分の外径をDW とし、上記両保持器9a、9bの内径である、上記両座板13A、13B側に存在する1対のリム部10、10の内径をRC とし、同じく外径をDC とし、回転軸1の回転中心αに対する上記両偏心カム部3a、3bの外周面である内輪軌道6a、6bの中心(これら両偏心カム部3a、3bの中心軸)β、γの偏心量を、それぞれδとした場合に、DW ≒(RC +DC )/2+2δ、言い換えれば、0.9{(RC +DC )/2+2δ}≦DW ≦1.1{(RC +DC )/2+2δ}を満たすべく、各部の寸法dW 、DW 、RC 、DC 、δを規制する。この様にこれら各部の寸法dW 、DW 、RC 、DC 、δを規制すれば、上記両座板13A、13Bの外周縁が上記両リム部10、10に対し最も径方向内側に変位した状態でも、上記両座板13A、13Bにより上記両リム部10、10を、円周方向に関して均等に支承して、これら両リム部10、10を含む上記両保持器9a、9b、延ては、これら両保持器9a、9bに保持された各円筒ころ8a、8bの自転軸が、正規の方向に対し傾斜する事を十分に防止できる。
【0019】
又、上記両座板13A、13Bのうちで、上記各切り欠き16、16部分の外径dW は、上記偏心運動に拘らず、これら各切り欠き16、16部分の外周縁が、上記両リム部10、10の内周縁よりも径方向内方に存在し続ける(これら外周縁と内周縁との間に隙間14A、14Bが存在し続ける)様に、これら両リム部10、10の内径RC との関係で規制している。
具体的には、上記各切り欠き16、16部分の外径dW 、即ち、これら各切り欠き16、16の内接円の直径を、上記両リム部10、10の内径RC よりも小さく(dW <RC )している。更に、上記両内輪軌道6a、6bの偏心量をδとした場合に、dW <RC −2δを満たすべく、各部の寸法dW 、RC 、2δを規制している。そして、好ましくは、RC −2δ−dW >0.05RC としている。
【0020】
上述の様に、上記各部の寸法dW 、RC 、2δを規制すれば、上記各切り欠き16、16部分の外周縁と上記両リム部10、10の内周縁との間に、図5に示す様に、常に隙間14A、14Bが存在する状態となる。尚、これら各隙間14A、14Bの径方向に関する幅寸法Wの最小値は、0.5mm以上確保する。この幅寸法Wが0.5mm未満の場合には、上記隙間14A、14B部分がラビリンスシール的に機能する等により、これら両隙間14A、14Bを通過する潤滑油の量を確保する面から不利になる。これに対して、上記幅寸法Wを過大にすると、上記両座板13A、13Bの内径寄り部分で上記各切り欠き16、16の内径側に存在する部分の、径方向に関する幅寸法が短くなって、上記両座板13A、13Bの強度及び剛性確保が難しくなる。
【0021】
上述の様に構成する本例の転がり軸受ユニットによれば、上記両座板13A、13Bの組み付け作業の容易化と、これら両座板13A、13Bの支持強度の確保と、前記両円筒ころ軸受5a、5bに供給する潤滑油の量の確保とを、高次元で並立させられる。
即ち、上記両座板13A、13Bの内径は、前記回転軸1のうちで前記両偏心カム部3a、3bに隣接する部分にがたつきなく外嵌自在な大きさとしている。従って、上記両座板13A、13Bの内径寄り部分を、それぞれ円すいころ軸受2、2を構成する内輪12、12の軸方向内端面と前記両偏心カム部3a、3bの軸方向外端面との間で全周に亙り挟持固定する際に、別途、上記座板13A、13Bの径方向位置を規制する為の作業を行う必要がない。この為、これら両座板13A、13Bを所定位置に組み付ける作業を容易に行える。そして、これら両座板13A、13Bを、上記両内輪12、12の軸方向内端面と上記両偏心カム部3a、3bの軸方向外端面との間で全周に亙り挟持する事により、上記両座板13A、13Bを、十分に大きな強度で支持できる。
【0022】
これら両座板13A、13bのうちで前記各切り欠き16、16の外周縁と、前記両リム部10、10の内周縁との間にそれぞれ設けた上記両隙間14A、14Bは、それぞれが図3〜4に示す様な円弧形で、径方向に関する幅寸法は、円周方向両端まで十分に確保される。又、上記両隙間14A(14B)の円周方向位置は、前記回転軸1の回転に伴う、上記両偏心カム部3a、3bの回転に伴って、図5の(A)→(B)→(C)→(D)→(A)に示す様に円周方向に移動し、前記両円筒ころ軸受5a、5bの周方向複数個所から同時に潤滑油を供給する。この為、これら両円筒ころ5a、5bへの潤滑油の供給量を十分に確保できる。
【0023】
[実施の形態の第2例]
図7〜8は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、座板13Cの径方向中間部外径寄り部分の円周方向等間隔複数個所に、それぞれが円周方向に長い円弧形の透孔18、18を形成している。そして、これら各透孔18、18を、常に、保持器9bを構成するリム部10の内径側に開口させる様に、各部の寸法を規制している。切り欠き16、16が透孔18、18に変わった点以外の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明を実施する場合に、切り欠き16、16の形状は特に問わない。図6の(A)に示す様な円弧形であっても、(B)に示す様な角形であっても良い。又、上記各切り欠き16、16の数に就いても、複数であれば良く、4個所に限定されず、3個所、5個所、6個所に形成する事もできる。更に、回転軸1を支持する為の回転支持用転がり軸受は、図示の様な円すいころ軸受に限らず、玉軸受、自動調心ころ軸受等、他の転がり軸受であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す部分断面図。
【図2】図1の右半部拡大図。
【図3】図1のイ−イ視図。
【図4】同ロ−ロ視図。
【図5】回転軸の回転に伴う各隙間の移動状況を示す、図3と同様の図。
【図6】座板に設けた切り欠きの形状の2例を示す半部側面図。
【図7】本発明の実施の形態の第2例を示す部分断面図。
【図8】座板の側面図。
【図9】従来構造の1例を示す部分断面図。
【図10】図9の右半部拡大図。
【図11】図9のハ−ハ視図。
【図12】同ニ−ニ視図。
【図13】回転軸の回転に伴う各隙間の移動状況を示す、図11と同様の図。
【符号の説明】
【0026】
1 回転軸
2 円すいころ軸受
3a、3b 偏心カム部
4a、4b 振れ回り部材
5a、5b 円筒ころ軸受
6a、6b 内輪軌道
7a、7b 外輪軌道
8a、8b 円筒ころ
9a、9b 保持器
10 リム部
11 柱部
12 内輪
13a、13b、13A、13B、13C 座板
14a、14b、14A、14B 隙間
15 円孔
16 切り欠き
17 外径寄り部分
18 通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、この回転軸の一部に固設された、この回転軸の回転中心に対し偏心した円筒状の外周面を有し、外径がこの回転軸のうちで隣接する部分の外径よりも大きい偏心カム部と、この偏心カム部の周囲に配置された、円筒状の内周面を有する振れ回り部材と、これら偏心カム部の外周面と振れ回り部材の内周面との間に、保持器に転動自在に保持された状態で設けられた複数個の円筒ころと、上記回転軸のうちで軸方向に関して上記偏心カム部に隣接する部分に設けられて、上記回転軸を回転自在に支持する回転支持用転がり軸受と、この回転支持用転がり軸受を構成する、上記回転軸に外嵌固定された内輪の軸方向端面と上記偏心カム部の軸方向端面との間で挟持固定された座板とを備え、この座板の軸方向片側面と上記保持器の軸方向端面とを軸方向に対向させた転がり軸受ユニットに於いて、上記座板の内径寄り部分を、上記内輪の軸方向端面と上記偏心カム部の軸方向端面との間で全周に亙り挟持固定しており、上記座板の外径寄り部分で上記保持器に軸方向対向する部分の円周方向複数個所に、切り欠き若しくは通孔を形成すると共に、これら各切り欠き若しくは通孔の内接円の直径を、上記保持器の内径よりも小さくした事を特徴とする転がり軸受ユニット。
【請求項2】
座板の外周縁の円周方向等間隔の複数個所に、この座板の径方向に関する寸法が互いに同じである切り欠きが形成されており、この座板のうちでこれら各切り欠き部分の外径をdW とし、保持器の内径をRC とし、回転軸の回転中心に対する偏心カム部の外周面の中心の偏心量をδとした場合に、dW <RC −2δを満たす、請求項1に記載した転がり軸受ユニット。
【請求項3】
座板の外周縁の円周方向等間隔の複数個所に、この座板の径方向に関する寸法が互いに同じである切り欠きが形成されており、この座板のうちでこれら各切り欠き部分の外径をdW とし、同じくこれら各切り欠きから外れた部分の外径をDW とし、保持器の内径をRC とし、同じく外径をDC とし、回転軸の回転中心に対する偏心カム部の外周面の中心の偏心量をδとした場合に、DW ≒(RC +DC )/2+2δを満たす、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した転がり軸受ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−185849(P2009−185849A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24700(P2008−24700)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】