説明

転写成形用ガラスペースト、構造体の製造方法およびディスプレイ用部材の製造方法

【課題】プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションディスプレイ、および蛍光表示管等の平面ディスプレイに好適なパターンを、低コストで精度良く形成できるパターン形成技術を提供する。
【解決手段】(A)硬化性化合物、(B)重合開始剤、(C)無機微粒子および(D)炭素数5〜12のパーフルオロアルキル基およびポリアルキレングリコール残基を含む離型剤を含有することを特徴とする転写成形用ガラスペーストにより達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写成形用ガラスペースト、特にプラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションディスプレイ、および蛍光表示管等の平面ディスプレイのパターン化された構造体の製造に好適な転写成形用ガラスペースト、これを用いた構造体の製造方法およびディスプレイ用部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションディスプレイ、蛍光表示管、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、発光ダイオードなどの平面ディスプレイの開発が急速に進められている。このうち、プラズマディスプレイは、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に備えられた放電空間内で対向するアノード電極とカソード電極間にプラズマ放電を生じさせ、上記放電空間内に封入されているガスから発生した紫外線を、放電空間内に設けた蛍光体に照射することにより表示を行うものである。プラズマディスプレイや蛍光表示管などのガス放電タイプのディスプレイは、放電空間を仕切るための隔壁を必要とする。また、フィールドエミッションディスプレイなどの電界放射型ディスプレイは、ゲート電極とカソードを隔絶するための隔壁を必要とする。これらプラズマディスプレイやフィールドエミッションディスプレイなどの隔壁の形成においては、一般にガラス粉末などの無機材料をパターン加工した後に焼成して形成するため、ガラス粉末などの無機材料を、高精度かつ高アスペクト比など自在にパターン加工ができる材料や加工方法が必要である。特にプラズマディスプレイの隔壁は従来ストライプ状が主流であったが、発光効率向上のため、従来のストライプ状の隔壁と、これと直交する補助隔壁からなる格子状隔壁など複雑な形状を有するものに変化してきている。これらの形状は、従来のストライプ状隔壁の製法を適用して作製することが困難である。
【0003】
一方、高精度かつ高アスペクト比パターンを自在に形成する方法として、転写成形法がある。転写成形法は、光硬化法と熱硬化法などがよく用いられるが、高精度かつ高アスペクト比のパターンを得るためには、特に光硬化法が好適である。転写成形法では、所望のパターン形状と凹凸が逆であるような成形型を作製し、前記成形型の凹部に成形用材料を充填し、光硬化法を用いる場合は光照射によって硬化させ、続いて成形型を除去することによって、所望のパターンを得る。
【0004】
この転写成形法をストライプ状隔壁形成に適用する方法がある(特許文献1〜4)。この方法によると、まず、隔壁とは逆凹凸形状の成形型を製造する。次に、前記成形型の凹部に転写成形用ガラスペーストを充填し、凹部を基板に圧着した後、転写成形法の場合は光により転写成形用ガラスペーストを硬化させ、成形型を基板から剥離してガラスペーストを基板に転写して隔壁パターンを形成する。あるいは、基板にガラスペーストを塗布し、成形型をガラスペーストに圧着した後、光硬化法の場合は光によりガラスペーストを硬化させ、前記成形型を基板から剥離して隔壁パターンを形成する。しかる後、隔壁パターンを焼成して有機成分を除去し、所望の隔壁を得る。しかしながら、この方法を格子状隔壁に適用した場合、転写成形用ガラスペーストを充填、基板に圧着した後、成形型を基板から剥離する際に、成形型に転写成形用ガラスペーストが付着したり、隔壁パターンに亀裂、断線、高さムラといった欠陥が発生しやすかった。その結果、従来の方法では格子状隔壁などの複雑な形状の構造体を、低コストで自在に形成することは困難であった。
【特許文献1】特許第3589500号(請求項1)
【特許文献2】特許第3591910号(請求項1)
【特許文献3】特開2001−191345(請求項10)
【特許文献4】特表2007−503338(請求項19)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に着目し、格子状隔壁などの複雑な形状の構造体を、低コストで自在に形成できる転写成形用ガラスペースト、および構造体、ディスプレイ部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、上記課題は(A)硬化性化合物、(B)重合開始剤、(C)無機微粒子および(D)炭素数5〜12のパーフルオロアルキル基およびポリアルキレングリコール残基を含む離型剤を含有することを特徴とする転写成形用ガラスペーストによって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、および蛍光表示管等の平面ディスプレイの隔壁等のパターンを有する構造体を、低コストで精度良く形成できる技術を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
発明者らは、高精細かつ高アスペクト比のパターンの形成について鋭意検討を行った結果、以下に述べるような組成を有する転写成形用ガラスペーストによって達成されることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明の転写成形用ガラスペーストは、(A)硬化性化合物、(B)重合開始剤、(C)無機微粒子および(D)炭素数5〜12のパーフルオロアルキル基およびポリアルキレングリコール残基を含む離型剤を含有することが必要である。
【0010】
本発明の転写成形用ガラスペーストは、(A)硬化性化合物を含有することが必要である。(A)硬化性化合物を含有することで、成形型に充填した後に光や熱などにより転写成形用ガラスペーストを硬化し、パターン保持性および成形型からの離型性を向上することができる。(A)硬化性化合物は光、熱などのエネルギーによって硬化するものであれば特に限定されないが、光硬化性化合物であることが好ましく、特に(メタ)アクリルモノマーであることが好ましい。(メタ)アクリルモノマーなどの光硬化性化合物を用いることで、露光により硬化させることができ、高アスペクト比、高精細の構造体を、精度良く形成できる。
【0011】
(メタ)アクリルモノマーとしては、例えばアルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、オクタノール、シクロヘキサノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)の(メタ)アクリル酸エステル、カルボン酸(例えば、酢酸プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、酒石酸、クエン酸など)と(メタ)アクリル酸グリシジルとの反応生成物、アミド誘導体(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミドなど)、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物などを挙げることができるが、少なくとも一部に2官能、3官能などの多官能化合物を用いることが好ましい。多官能化合物を用いることで、本発明の転写成形用ガラスペーストを効率的に架橋させることができる。このような多官能化合物として、例えば、2官能化合物としては、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA−ジアクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA−ジアクリレートなどが挙げられる。3官能あるいはそれ以上の多官能化合物としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(以上、3官能化合物)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、(4官能化合物)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6官能化合物)などが挙げられる。また、これらの多官能化合物において、アクリル基は、一部もしくは全部をメタクリル基に置き換えて使用しても良い。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0012】
(A)硬化性化合物は、転写成形用ガラスペースト中、0.1〜80重量%であることが好ましい。さらに好ましくは、3〜30重量%である。含有量をこの範囲とすることで、パターン保持性や成形型からの離型性を良好なものとし、かつ硬化時や焼成時の収縮を抑制できる。
【0013】
さらに、(B)重合開始剤を含有することが必要である。(B)重合開始剤を添加することで、光や熱などにより転写成形用ガラスペーストの硬化をよりスムーズに行うことができる。
【0014】
本発明に用いる(B)重合開始剤は、光照射や熱によりラジカル種を発生するものが好ましい。重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アルキル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロペンアミニウムクロリド一水塩、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2ーヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イロキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミニウムクロリド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、メチルフェニルグリオキシエステル、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)、ジフェニルスルフィド誘導体、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−ベンゾイル−4−メチルフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、ベンジルメトキシエチルアセタール、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、N−フェニルグリシン、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイルおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組み合わせなどが挙げられる。
【0015】
本発明では、これらを1種または2種以上使用することができる。重合開始剤は、転写成形用ガラスペースト中、0.005〜10重量%の範囲で含有されることが好ましく、より好ましくは、0.01〜5重量%である。重合開始剤の含有量をこの範囲とすることで、転写成形用ガラスペーストの硬化をスムーズに行うことができる。
【0016】
本発明の転写成形用ガラスペーストは、可塑剤を含有することも好ましい。可塑剤を含有することにより、転写成形用ガラスペーストの粘度を低下でき、成形型への充填性を向上できる。さらに、硬化時の硬化収縮を低減し、硬化収縮による構造体の変形、亀裂などの欠陥を大幅に抑制する効果が得られる。可塑剤としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジノニル、アジピン酸ジ−2−ブトキシエチルなどのアジピン酸エステル、アゼライン酸ジオクチルなどのアゼライン酸エステル、セパシン酸エステル、リン酸トリクレシル、アセチルクエン酸トリブチル、エポキシ化大豆油、トリメリット酸エステルなどや、これらのうち1種以上を含有する可塑剤が挙げられるが、安全性の面から、アジピン酸エステル、セパシン酸エステルなどが好ましい。可塑剤の含有量は、転写成形用ガラスペースト中、0.5〜70重量%であることが好ましく、さらに好ましくは1〜50重量%である。
【0017】
本発明の転写成形用ガラスペーストは、バインダー樹脂を含有しても良い。バインダー樹脂は、パターン形成時には(C)無機微粒子を良好に分散するバインダーとしての機能を保有し、焼成時には分解して除去されるものが好ましい。好ましく用いられるバインダー樹脂の例としては、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特にアクリル樹脂が、相溶性、易分解性の観点から好ましい。アクリル樹脂のガラス転移点(以下、Tgという)は−50〜50℃であることが好ましく、さらに好ましくは、0〜25℃である。アクリル樹脂のTgをこの範囲とすることで、取り扱いの容易さと柔軟性を両立することが可能となる。
【0018】
本発明の転写成形用ガラスペーストは、さらに必要に応じて溶媒を含有することができる。溶媒としては、一般的に使用される溶媒を用いることができるが、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、2,2,2−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチロラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。しかしながら、後述のように、本発明の転写成形用ガラスペーストは沸点が250℃以下である化合物の含有量が5重量%以下であることが好ましいため、溶媒の使用量に注意する必要がある。
【0019】
本発明の転写成形用ガラスペーストは、さらに(C)無機微粒子を含有する。本発明に用いられる(C)無機微粒子は、転写成形用ガラスペースト中の30〜90重量%であることが好ましい。無機微粒子の含有量をこの範囲とすることで、転写成形用ガラスペーストの流動性を保ったまま、焼成収縮応力を低減し、焼成時欠陥を抑制することができる。
【0020】
(C)無機微粒子としては、低軟化点ガラス粉末を含有することが好ましい。本発明において低軟化点ガラス粉末とは、荷重軟化温度が400〜600℃の範囲であるガラス粉末を指す。荷重軟化温度がこの範囲にあることで焼結時にパターンの変形がなく、溶融性も適切となるためである。より好ましい荷重軟化温度の範囲は450〜550℃である。また、低軟化温度ガラス粉末の無機成分に占める割合は60体積%〜100体積%が好ましい。含有割合をこの範囲とすることで、焼成時の焼結を十分なものとし、焼成後のパターンの空隙率を適当な範囲に抑えることができる。
【0021】
低軟化点ガラス粉末の粒子径は、作製しようとするパターンの形状を考慮して選ばれるが、重量分布曲線における50%粒子径(平均粒子径)が0.1〜3.0μm、最大粒子経(トップサイズ)が20μm以下であることが好ましい。
【0022】
転写成形用ガラスペーストの硬化に光硬化を用いる場合、低軟化点ガラス粉末の屈折率は1.50〜1.65であることが好ましい。無機微粒子と有機成分の屈折率を整合させ、光散乱を抑制することにより光硬化が容易になる。
【0023】
好ましく使用できる低軟化点ガラス粉末は例えば酸化物表記で下記の組成を有するものである。
【0024】
酸化リチウム、酸化ナトリウムまたは酸化カリウム 3〜15質量%
酸化ケイ素 5〜30質量%
酸化ホウ素 20〜45質量%
酸化バリウムまたは酸化ストロンチウム 2〜15質量%
酸化アルミニウム 10〜25質量%
酸化マグネシウムまたは酸化カルシウム 2〜15質量%
上記のように、酸化リチウム、酸化ナトリウムまたは酸化カリウムのアルカリ金属酸化物のうち少なくとも1種を用い、その合計量が3〜15質量%、さらには3〜10質量%であることが好ましい。
【0025】
また、上記の組成には表記されていないが、酸化亜鉛や酸化チタン、酸化ジルコニウムなどを含有させることも好ましい。
【0026】
低軟化点ガラス粉末の作製法としては、例えば原料である酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化バリウム、酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムなどを所定の配合組成となるように混合し、900〜1200℃で溶融後、急冷し、ガラスフリットにしてから粉砕して1〜5μmの微細な粉末にする。原料は高純度の炭酸塩、酸化物、水酸化物などを使用できる。また、ガラス粉末の種類や組成によっては99.99%以上の超高純度なアルコキシドや有機金属の原料を使用し、ゾルゲル法で均質に作製した粉末を使用すると、高電気抵抗かつ緻密で気孔の少ない、高純度な焼成膜が得られるので好ましい。
【0027】
本発明における無機微粒子は、フィラー成分を含有することが好ましい。ここでいうフィラー成分とは、構造体の強度や、焼成収縮率を改善するために添加されるものであり、焼成温度でも溶融流動しにくい無機微粒子を指す。具体的には、600℃以下で軟化温度や融点、分解温度を有さず、600℃において固体として存在するような無機微粒子をいう。フィラー成分を添加することで、パターンの焼成による収縮を抑制するとともに、パターンの強度を向上させることができる。
【0028】
本発明では、フィラー成分として、シリカ系複合酸化物粒子や、荷重軟化温度が600〜1200℃である高軟化点ガラス粉末、コーディエライト、アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニアなどのセラミックス粉末から選ばれた少なくとも1種をシリカ系複合酸化物粒子と同時に用いることができるが、平均粒子径や平均屈折率の調節のしやすさの点からシリカ系複合酸化物、あるいは高軟化点ガラス粉末から1つ以上選択することが好ましい。
【0029】
フィラー成分は転写成形用ガラスペースト中への分散性や充填性を考慮し、平均粒子径0.1〜3.0μmであるものを好ましく使用することができる。また、転写成形用ガラスペーストの硬化に光硬化を用いる場合、露光時の光散乱の抑制の観点から、平均屈折率が1.50〜1.65であることが好ましい。
【0030】
本発明の成形型用硬化性樹脂組成物は、(D)炭素数5〜12のパーフルオロアルキル基およびポリアルキレングリコール残基を含む離型剤を含有することが必要である。
【0031】
離型剤が炭素数5〜12のパーフルオロアルキル基を含有することで、転写成形用ガラスペーストの表面張力を低減して離型性を向上できるため、硬化した構造体を成形型から離型する際の塑性変形、ハガレ、亀裂などの欠陥の発生を大幅に抑制できる。また、ポリアルキレングリコール残基を含有することで、転写成形用ガラスペースト中の他の有機成分との相溶性が良好となり、均一分散を可能とできる。さらに、炭素数5〜12のパーフルオロアルキル基およびポリアルキレングリコール残基の両方を含有することで、エイジングや加熱によりパーフルオロアルキル基が界面に効率的に配向するため、少量添加においても十分な離型効果が得られる。離型剤の添加量を減らすことで、コストを低減でき、かつ形成した構造体の特性を変化させることがない。
【0032】
離型剤は、1官能型あるいは2官能型であることがさらに好ましい。1官能型あるいは2官能型離型剤を用いることで、上述の加熱時の配向をさらに効率的に行うことができる。さらに好ましくは1官能である。
【0033】
本発明で好ましく用いられる(D)離型剤の具体的な例を挙げると、大日本インキ(株)製“メガファック”F−479、F−482、F−483、F−487、MCF−350SFなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、これらの化合物は、混合して用いても良い。
【0034】
このような分散剤は、好ましくは下記一般式(1)または(2)で示される構造を有する。
【0035】
{(CHO}−R (1)
(ここで、Rは炭素数5〜12のパーフルオロアルキル基であり、mは2〜4、nは1〜30の自然数である)
【0036】
【化1】

【0037】
(ここで、Rは炭素数5〜12のパーフルオロアルキル基、Rは炭素数1〜5のアルキル基または置換アルキル基である。R、Rは1価の有機基、Rは水素またはメチル基を示す。mは2〜4、nは5〜30、pおよびqは3〜20の自然数である。)
式(1)において、m、nは他の有機成分との相溶性を考慮に入れて設計することが可能であるが、特にmは2〜4、nは1〜30の範囲とすることで相溶性を向上することができる。
【0038】
(D)離型剤は、転写成形用ガラスペースト中、0.001〜5重量%含有することが好ましい。さらに好ましくは、0.01〜3重量%である。含有量をこの範囲とすることで、表面張力低減の効果を十分なものとすることができ、かつ成形した構造体の特性を損なうことがない。
【0039】
さらに、本発明の転写成形用ガラスペーストは、沸点が200℃以下であるような低沸点化合物の含有量が5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3重量%以下である。低沸点化合物の含有量をこの範囲とすることで、(D)離型剤の配向を目的に加熱する工程において、低沸点化合物の揮発による組成変化および体積収縮を抑制することが可能となる。沸点が200℃以下である低沸点化合物の含有量は、例えば熱重量分析によって200℃で10分間保持した後の重量変化から求めることができる。
【0040】
本発明の構造体の製造方法は、基板と成形型との間に上述の転写成形用ガラスペーストを充填する工程、前記転写成形用ガラスペーストを加熱する工程、および前記成形型を除去する工程を含む。
【0041】
具体例として、本発明の転写成形用ガラスペーストにより、プラズマディスプレイの隔壁を形成する方法の例について詳細に説明する。
【0042】
まず、成形型を用意する。成形型は、所望の隔壁と逆の凹凸形状を有しているもので、柔軟かつ透明であるものが好ましい。透明であることで本発明の転写成形用ガラスペーストの硬化に光照射を用いることができ、柔軟であることで成形型を除去する際、欠けや断線などの欠陥を抑制することができる。このような特性を有する材料として、アクリル樹脂やウレタン樹脂、シリコーン樹脂が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0043】
続いて、基板と成形型との間に上述の転写成形用ガラスペーストを充填する。充填方法としては、まず基板上に転写成形用ガラスペーストを塗布し成形型を圧着する方法や、成形型に転写成形用ガラスペーストを充填し基板に圧着する方法、さらには成形型の凹部に請求項1または2に記載の転写成形用ガラスペーストを充填し、該転写成形用ガラスペーストを充填した面を基板に接触させる方法などが挙げられるが、例として、基板上に転写成形用ガラスペーストを塗布し成形型を圧着する方法を以下に詳説する。
【0044】
転写成形用ガラスペーストの塗布方法としては、スクリーン印刷、ナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーター等の方法を用いることができ、必要に応じて乾燥することができる。塗布厚みは、所望の隔壁の高さと転写成形用ガラスペーストの硬化および焼成による収縮率を考慮して決めることができる。通常は、5〜1000umの範囲であり、好ましくは、7〜500umの範囲である。塗布厚みは、塗布条件、硬化性樹脂組成物の粘度等によって調整できる。
【0045】
本発明の構造体の製造方法では、塗布後、転写成形用ガラスペースト塗布膜を加熱することが必要である。転写成形用ガラスペースト塗布膜を加熱することで、離型剤のフッ素原子含有基を表面に配向させ、転写成形用ガラスペースト塗布膜離型性を大幅に向上し、離型時の欠陥抑制を大幅に抑制することが可能となる。加熱は熱風乾燥機、IR乾燥機、ホットプレート等を用いて行うことができ、加熱温度は好ましくは50〜200℃、より好ましくは70〜150℃である。加熱時間は好ましくは0.1〜200分、より好ましくは0.5〜90分である。加熱温度、時間をこの範囲とすることで、離型剤の配向を十分に行うことができ、かつ転写成形用ガラスペースト中の硬化性化合物等の変化を抑制することができる。
【0046】
次に、転写成形用ガラスペーストを塗布した基板上に成形型を圧着する。圧着方法としては特に限定されないが、真空プレス機やラミネートロールによるラミネート法を用いると、抜けや気泡のない均一な膜が得られる。ここで、上述の加熱工程を行うことにより、離型剤を配向させ、離型性を向上することも好ましい。
【0047】
成形型、転写成形用ガラスペーストが基板に圧着された状態で、転写成形用ガラスペーストを硬化させる。本用途においては転写成形用ガラスペーストを光硬化性とすることが好ましく、この場合は透明な成形型を用いて成形型側から光照射を行うことが好ましい。この際使用される活性光源は、例えば、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザー光などが挙げられる。これらの中で紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。光照射条件は塗布厚みにより異なるが、通常、1〜100mW/cmの出力の超高圧水銀灯を用いて0.01〜10分間行う。
【0048】
その後、基板および転写成形用ガラスペーストを成形型から分離し、構造体を得る。得られた構造体は変形、亀裂、断線などの欠陥がない。
【0049】
続いて、無機成分のみからなる構造体を得る場合には、焼成炉にて焼成を行うことができる。焼成雰囲気や温度は、成形用材料や基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素などの雰囲気中で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉などを用いることができ、350〜800℃、好ましくは520〜620℃の温度で1〜60分間保持して焼成を行う。
【0050】
本発明はディスプレイ用部材の製造方法に特に好ましく適用することができる。図1に光硬化型の転写成形用ガラスペーストを用いてプラズマディスプレイの隔壁を形成する方法の例を模式的に示す。
【0051】
まず、図1(a)に示すように、ガラス基板3上にストライプ状のアドレス電極4およびアドレス電極4を覆う誘電体層5を設けた基板6を用意し、基板6上に本発明の転写成形用ガラスペースト7aを塗布する。次に上述の成形型1を配置し、ラミネートロール2を用いて圧着させることにより、基板6と成形型1との間に転写成形用ガラスペースト7aを充填する。ついで、図1(b)に示すように、基板6と成形型1との間に転写成形用ガラスペースト7aが充填された状態で加熱し、F原子含有離型剤の配向を促進する。
【0052】
次に図1(c)に示すように、成形型1側から紫外線8を照射して転写成形用ガラスペースト7aを硬化させ、次いで基板6および転写成形用ガラスペースト硬化物から成形型1を剥離して図1(d)に示すような隔壁パターン7bが形成された基板6を得る。さらにこれを焼成することによって、隔壁7cを有するプラズマディスプレイ用部材を得ることができる。
【実施例】
【0053】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。本発明を用いて、画素数207万画素の42インチプラズマディスプレイを作製した。
転写成形用ガラスペーストに用いた原料は次の通りである。
硬化性化合物I:エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート(日本油脂(株)製、“ブレンマーPDBE−450”)
硬化性化合物II:テトラプロピレングリコールジアクリレート(日本油脂(株)製、“ブレンマーPDP−400”)
重合開始剤:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(チバスペシャリティーケミカルズ社製“IC369”)
無機微粒子I:低軟化点ガラス(酸化リチウム7質量%、酸化ケイ素22質量%、酸化ホウ素33質量%、酸化亜鉛3質量%、酸化アルミニウム19質量%、酸化マグネシウム6質量%、酸化バリウム5質量%、酸化カルシウム5質量%(荷重軟化点529℃、屈折率1.56))
無機微粒子II:フィラー(酸化ナトリウム1質量%、酸化ケイ素40質量%、酸化ホウ素10質量%、酸化アルミニウム33質量%、酸化亜鉛4質量%、酸化カルシウム9質量%、酸化チタン3質量%(荷重軟化点728℃、屈折率1.56))
離型剤I:炭素数9のフッ化アルキル基とポリアルキレングリコール残基を有する1官能型フッ素原始含有離型剤(大日本インキ(株)製、“F482”)
離型剤II:炭素数9のフッ化アルキル基とポリアルキレングリコール残基を有する1官能型フッ素原始含有離型剤(大日本インキ(株)製、“MCF−350SF”)
離型剤III:炭素数7のフッ化アルケニル基とポリアルキレングリコール残基を有する4官能型離型剤((株)ネオス製、“FTX−212D”)
離型剤IV:炭素数8のフッ化アルキル基とポリアルキレングリコール残基を有さない離型剤(共栄社化学(株)製、“FM−108”)
離型剤V:シリコーン系界面活性剤(ビッグケミー社製、“BYK−3700”)
分散剤:ポリエステル系分散剤
可塑剤:アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)
A.母型の用意
母型の作製には、ネガ型感光性ペースト法を用いた。まず基板に、ネガ型感光性有機成分と無機成分からなるネガ型感光性ペーストを所望の厚みに塗布、乾燥し、続いて露光マスクを介して露光を行い、現像によって未硬化部分の感光性ペーストを除去してパターンを得た。作製した母型は、ストライプ状の主隔壁(ピッチ160μm、頂部線幅50μm、底部線幅80μm、高さ170μm)と、該主隔壁と交差するストライプ状の補助隔壁(ピッチ800μm、頂部線幅80μm、底部線幅100μm、高さ150μm)からなる格子状の隔壁パターンを有するものであった。
【0054】
B.シリコーン樹脂組成物の作製
成形型には、シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製“シルポット184”)を用いた。シルポット184(10重量部)とシルポット184用触媒(1重量部)を混合し、真空脱泡を0.3KPaで15分行った。
【0055】
C.成形型の作製
作製したシリコーン樹脂組成物を用い、成形型を以下の手順で作製した。
【0056】
シリコーン樹脂組成物を、ブレード塗布により母型に均一充填した。続いて、支持体(PETフィルム、東レ(株)製“ルミラー”)を母型上に配置し、ラミネートロールを用いて、均一に圧着した。膜厚は凹部(母型の凸部上の位置)で約300μmであった。母型に支持体が圧着している状態で、120℃で60分加熱を行い、シリコーン樹脂組成物を硬化させた。しかる後、支持体と硬化したシリコーン樹脂組成物を母型から剥離し、所望の隔壁形状と逆の凹凸を有する成形型を得た。得られた成形型は、亀裂、断線および支持体からのハガレなどの欠陥がなかった。
【0057】
D.転写成形用ガラスペーストの作製
転写成形用ガラスペーストは以下の要領で作製した。
【0058】
硬化性化合物、離型剤、重合開始剤(0.15重量%)、分散剤(0.5重量%)、可塑剤(9.5〜28.35重量%)を所定量秤量後、溶剤を適宜添加して粘度を調整し、加熱攪拌して有機溶液を作製した。続いて、無機微粒子I、無機微粒子IIを添加、混練して転写成形用ガラスペーストとした。各実施例、比較例で用いた硬化性化合物、離型剤、無機微粒子の添加量を表1に示した。
【0059】
【表1】

【0060】
E.プラズマディスプレイ隔壁の作製方法
作製した成形型を用い、プラズマディスプレイ隔壁を以下の手順にて作製した。旭硝子株式会社製 “PD−200”ガラス基板(42インチ)上に、感光性銀ペーストを用いたフォトリソグラフィ法により、ピッチ160μm、線幅50μmのアドレス電極パターンを形成した。次いで、アドレス電極が形成されたガラス基板上に誘電体層をスクリーン印刷法により20μmの厚みで形成した。しかる後、表1に示す組成の転写成形用ガラスペーストをダイコート塗布法によりアドレス電極パターンおよび誘電体層が形成された背面板ガラス基板上に厚み100μmになるように均一に塗布した。
【0061】
つづいて、ラミネートロールによるラミネート法にて、前述の成形型を転写成形用ガラスペーストに圧着した。転写成形用ガラスペースト、誘電体層、電極を介して、基板に支持体が圧着している状態で、成形型面から、50mW/cm出力の超高圧水銀灯で20秒間紫外線露光した。しかる後、成形型を隔壁転写成形用ガラスペーストから剥離し、所望の隔壁形状を有する隔壁パターンを得た。その後、560℃で30分保持して焼成することにより隔壁を形成した。得られた隔壁の亀裂、断線および高さムラの有無を観察した。亀裂、断線および高さムラが1ヶ所以内ならば隔壁評価はAA、2〜5ヶ所以内であれば隔壁評価はA、6〜20ヶ所以内であれば隔壁評価はB、20ヶ所以上で隔壁としては不可であり、Cとした。
【0062】
F.プラズマディスプレイの作製方法
得られた隔壁付き基板に、蛍光体層をディスペンサー法にて厚さ20μmに形成し、焼成してプラズマディスプレイ背面板を得た。
【0063】
続いて、プラズマディスプレイ前面板を以下の手順にて作製した。旭硝子株式会社製“PD−200”ガラス基板(42インチ)上に、フォトエッチング法によりITO電極を1μmの厚みで形成した後、感光性銀ペーストを用いたフォトリソグラフィ法によりバス電極パターンを形成した。しかる後、透明誘電体層をスクリーン印刷法により30μmの厚みで形成した。最後に、500nm厚のMgO膜を電子ビーム蒸着により形成して、前面板を得た。
【0064】
作製した前面板と背面板を封着後、前背面の基板間隔に形成された空間に、キセノンが5体積%のキセノン−ネオン混合ガスの希ガスを450mmHgの圧力で封入することによって、プラズマディスプレイのパネル部分を作製した。さらに、駆動用のドライバーICを実装することによって、画素数207万画素のプラズマディスプレイを作製した。得られたプラズマディスプレイを隔壁方向に沿って、1列おきに点灯させ、誤放電による点灯、不灯、またはちらつきがないか目視で評価した。評価は、誤放電による点灯セルや不灯セルの数が1個以内ならばディスプレイ評価はAA、2〜5個以内であればディスプレイ評価はA、6〜20個以内であればディスプレイ評価はB、20個以上でディスプレイパネルとしては不可であり、Cとした。ちらつきのみが発生した場合には、ディスプレイ評価はAとした。
【0065】
(実施例1)
表1に示す転写成形用ガラスペーストを用いて隔壁を作製したところ、良好な形状でかつ変形や亀裂、断線などの欠陥がないプラズマディスプレイ用隔壁が得られ隔壁評価はAAであり、プラズマディスプレイを作製したところ、ディスプレイ評価もAAであった。
【0066】
(実施例2)
離型剤に離型剤IIを用いた他は、実施例1を繰り返した。得られたプラズマディスプレイ用隔壁およびプラズマディスプレイは欠陥がなく良好であり、評価はいずれもAAであった。
【0067】
(実施例3)
硬化性化合物の添加量および離型剤Iの添加量を変化させた他は、実施例1を繰り返した。得られたプラズマディスプレイ用隔壁およびプラズマディスプレイは欠陥がなく良好であり、評価はいずれもAAであった。
【0068】
(実施例4)
表1の組成を用いて隔壁を形成したところ、焼成時に隔壁断線が2ヶ所発生した。焼成時の焼成応力が原因と考えられる。プラズマディスプレイも不灯セルが2ヶ所あり、いずれも評価Aであった。
【0069】
(実施例5)
無機微粒子の添加量を変化させた他は実施例1を繰り返したところ、隔壁成形時に硬化不足のため、隔壁欠けが4ヶ所発生し、プラズマディスプレイも不灯セルが4ヶ所あり、いずれも評価Aであった。
(実施例6)
離型剤Iの添加量を2.0重量%に増やした他は実施例1を繰り返したところ、良好な形状でかつ変形や亀裂、断線などの欠陥がない隔壁が得られ隔壁評価はAAであった。しかし、隔壁間に蛍光体層を形成する際に、隔壁表面のフッ素原子によるはじきに起因する塗布不良が発生し、蛍光体抜けが8ヶ所発生し、プラズマディスプレイを作製したところ、不灯セルが8ヶ所あり、ディスプレイ評価はBであった。
(実施例7)
離型剤IIの添加量を0.005重量%に減らした他は実施例2を繰り返した。隔壁を成形する際、成形型からの離型性が部分的に不十分となり、断線が3ヶ所発生した。作製したプラズマディスプレイも不灯セルが3ヶ所あり、隔壁、ディスプレイ評価はいずれもAであった。
(実施例8)
可塑剤のうち8重量%を3−メトキシ−3−メチルアルコール(沸点174℃)に置き換えた他は、実施例1を繰り返した。ガラスペースト乾燥時に3−メトキシ−3−メチルアルコールの一部が蒸発して膜厚および粘度にムラが生じたことに起因し、5μm以上隔壁高さが大きい箇所が20ヶ所発生し、隔壁評価はBであった。プラズマディスプレイを作製したところ、隔壁高さが大きい箇所でチッピングが2ヶ所発生し、ディスプレイ評価はAであった。
(実施例9)
離型剤に離型剤IIIを用いた他は、実施例1を繰り返した。隔壁を成形する際、成形型からの離型性が部分的に不十分となり、断線が6ヶ所発生した。作製したプラズマディスプレイも不灯セルが6ヶ所あり、隔壁、ディスプレイ評価はいずれもBであった。
(比較例1)
離型剤に離型剤IVを用いた他は、実施例1を繰り返した。離型剤がポリアルキレングリコール残基を有さない為にガラスペーストの相溶性が低下し、ガラスペースト塗布時に塗布不良が多発した。得られた隔壁は断線が20ヶ所以上発生し、プラズマディスプレイも不灯セルが20ヶ所以上あり、評価はいずれもCであった。
(比較例2)
離型剤に離型剤Vを用いた他は、実施例1を繰り返した。隔壁成形時に、成形型からの離型性が極めて不十分なため断線が20ヶ所以上発生し、プラズマディスプレイも不灯セルが20ヶ所以上あり、評価はいずれもCであった。
(比較例3)
離型剤を添加しなかった他は、実施例1を繰り返した。隔壁成形時に、成形型からの離型性が極めて不十分なため断線が20ヶ所以上発生し、プラズマディスプレイも不灯セルが20ヶ所以上あり、評価はいずれもCであった。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明によりプラズマディスプレイの隔壁を形成する方法の一例を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0071】
1:成形型
2:ラミネートロール
3:ガラス基板
4:アドレス電極
5:誘電体層
6:基板
7a:転写成形用ガラスペースト
7b:隔壁パターン
7c:隔壁
8:紫外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硬化性化合物、(B)重合開始剤、(C)無機微粒子および(D)炭素数5〜12のパーフルオロアルキル基およびポリアルキレングリコール残基を有する離型剤を含有することを特徴とする転写成形用ガラスペースト。
【請求項2】
沸点が200℃以下である化合物の含有量が5重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の転写成形用ガラスペースト。
【請求項3】
基板と成形型との間に請求項1または2に記載の転写成形用ガラスペーストを充填する工程、前記転写成形用ガラスペーストを加熱する工程、および前記成形型を除去する工程を含むことを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項4】
基板上に請求項1または2に記載の転写成形用ガラスペーストを塗布し、成形型を圧着する工程、前記転写成形用ガラスペーストを加熱する工程、および前記成形型を除去する工程を含むことを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項5】
成形型の凹部に請求項1または2に記載の転写成形用ガラスペーストを充填し、該転写成形用ガラスペーストを充填した面を基板に接触させる工程、前記転写成形用ガラスペーストを加熱する工程、および前記成形型を除去する工程を含むことを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項6】
前記成形型としてシリコーン樹脂からなる成形型を用いることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の構造体の製造方法。
【請求項7】
さらに、350〜800℃の温度で焼成する工程を含むことを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれかに記載の構造体の製造方法により基板上に構造体を形成することを特徴とするディスプレイ用部材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−203356(P2009−203356A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47355(P2008−47355)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】