説明

転写用金型の製造方法及び凹凸付基板の製造方法

【課題】 例えば、太陽電池用基板に規則的な緩やかな曲面形状の凹凸を有する転写用金型の製造方法と、該転写用金型を用いた凹凸付基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 マスクパターンの遮光部の長さ及びまたは開口部の長さが露光装置の解像限界となる長さよりも長いマスクを用いて、感光層レジスト層表面に、焦点位置をずらしてマスクパターンを露光及び現像することにより、感光性レジスト層に曲面形状の凹凸を形成した母型を作製する工程の後、該母型に電鋳法により金属電鋳層を形成し、金属電鋳層と母型を剥離して、曲面形状の凹凸を有する金属電鋳製の転写用金型とする転写用金型の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面形状の凹凸を有する転写用金型の製造方法及びそれを用いた凹凸付基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板表面に曲面形状の凹凸を有する代表的な基板として、太陽電池用基板がある。例えば太陽電池では、結晶シリコンのインゴットを作製し、これをスライスして素子を形成する方法が主流である。しかし、この方法では結晶シリコンの薄型化に不利であり、更に切り代を必要とするため生産性が悪く高コストである。
太陽電池の低コスト化のために、プラズマ化学気相堆積法(プラズマCVD法)により発電層(以下、シリコン層)を薄膜化する研究が盛んに行われている。中でも光照射安定性に優れ、光吸収波長帯が広く、低温成膜が可能である微結晶シリコンに注目が集まっており、シリコン層内で光を散乱させて光路長を増大させる方法(光閉じ込め効果)により、太陽電池の高効率化の検討も盛んになされている。
光閉じ込め効果を発現するには、基板表面に数百nm〜数μmの微小凹凸を形成する方法が多くとられている。この場合、凹凸高さや凹凸間隔が不規則であると、光閉じ込め効果に寄与しない凹凸が形成される惧れがあり、高い発電効率を得ることができない。そのため、凹凸高さ及び凹凸間隔は、規則的に形成することが好ましい。
【0003】
規則的な凹凸付基板を作製する方法として、基板に直接的にレーザービームを照射する方法もあるが、この方法は曲面形状の凹凸形成が困難であり、大面積の基板全面に凹凸を形成するには長時間を要すると言った問題がある。一方、転写法は金型を被転写基板に押し当てた後、剥離することにより、金型の凹凸形状が転写された凹凸付基板を作製する方法であり、大面積の凹凸付基板の作製に適した方法である。この転写法に使用する金型の作製方法として、特開2001−121548号公報(特許文献1)、特開2003−298084号公報(特許文献2)、特開2003−298086号公報(特許文献3)がある。
【特許文献1】特開2003−298086号公報
【特許文献2】特開2003−298084号公報
【特許文献3】特開2001−121548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した微結晶シリコンの太陽電池は、プラズマCVDによりシリコン膜を形成するため、結晶粒は基板に対して垂直方向に成長する。この時、凹凸が急峻な形状である場合、凹部では結晶成長の衝突を生じて粒界欠陥が大きくなり、膜質の低下によりリーク電流が増大する。また凸部が急峻な場合は、シリコン膜にクラックが入りやすくなって短絡し易くなる。更に、凸部や凹部の表面が平坦面である場合、光閉じ込め効果が得難くなる。そのため、凹凸は規則的で緩やかな曲面形状にすることが重要である。
【0005】
上述した従来技術は、表面に規則的な凹凸を有する転写用金型であり、規則的な凹凸付基板の作製に適した方法である。しかし、特許文献1に開示される転写用金型は、ロール表面にダイヤモンド針やレーザービームにより規則的な凹凸を形成し、これを金型として用いる方法であるが、この方法では凹凸が急峻な形状となってしまうという問題がある。
また、特許文献2に開示される転写用金型は、ガラス板上に感光性レジスト層を形成した後、露光及び現像して感光性レジスト層に凹凸を形成し、これを原盤に用い、電鋳法により転写用金型を作製する方法である。しかし、この方法では原盤の凹凸の凸部や凹部が平坦な面になるため、凸部や凹部の表面が平坦面となってしまうという問題がある。
更に、特許文献3に開示される方法は、ダイヤモンド針を金型ロールに押圧して尖状の凹凸を形成した後、めっきにより尖状部分を滑らかにして曲面形状とする方法であるが、この方法は凹凸形状がダイヤモンド針の先端径の制約を受けるので、狭い凹凸間隔、例えば凹凸間隔が1μmの凹凸形状加工が困難であると言った欠点がある。
【0006】
本発明の目的は、例えば、太陽電池用基板に規則的な緩やかな曲面形状の凹凸を有する転写用金型の製造方法と、該転写用金型を用いた凹凸付基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものである。
即ち本発明は、転写用金型の製造方法であって、基板表面に形成された感光層レジスト層表面に、マスクパターンを露光及び現像することにより、感光性レジスト層に曲面形状の凹凸を形成した母型を作製する工程の後、該母型に電鋳法により金属電鋳層を形成し、金属電鋳層と母型を剥離して、曲面形状の凹凸を有する金属電鋳製の転写用金型とする転写用金型の製造方法である。
好ましくは、上述のマスクパターンの露光は、マスクパターンの遮光部の長さ及びまたは開口部の長さが露光装置の解像限界となる長さよりも長いマスクを用いて、感光層レジスト層表面に、焦点位置をずらしてマスクパターンを露光する転写用金型の製造方法である。
【0008】
また本発明は、母型の曲面形状の凹凸が、曲面形状の凹凸の隣り合う凸部の4つの頂点を線で結んだ四角形の4辺の最短長さの辺に対する最長長さの辺の比が1.0〜1.3、隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士を直線で結んだ時、2つの直線の長さの短い方の直線に対する長い方の直線の比が1.0〜1.3、隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士の間隔が0.2〜5.0μm、凹凸高さが0.1〜2.0μmである転写用金型の製造方法である。
【0009】
更に本発明は、上述の転写用金型をロール表面に形成した転写ロールを用いて凹凸付基板を製造する凹凸付基板の製造方法であって、転写用基板素材を巻き出す工程と、前記転写用基板素材に樹脂を被覆して転写用基板を製造する工程と、前記転写ロールを加熱した状態で、転写ロール表面に形成した転写用金型の形状を転写用基板に転写する工程を含む凹凸付基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の転写用金型の製造方法及びそれを用いた凹凸付基板の製造方法では、規則的な曲面形状の凹凸を有する転写用金型を作製できる。
また、これを転写ロールとすることで、効率良く凹凸付基板を製造できる。本発明の方法で作製した凹凸付基板は、発電層や発光層となる反応層の面積増大、光閉じ込め効果の増大や発光効率及び発電効率のムラの低減が期待できるため、これを用いて成る太陽電池や発光デバイスは高い発電効率・発光効率を奏することが可能となる。更に、基板上に半導体や発光材料薄膜を形成しても、クラックやピンホールの発生を防止して、発電効率や発光効率の低下を防止することが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上述したように、本発明の重要な特徴は、曲面形状の凹凸を形成した母型を利用して電鋳法により規則的な曲面形状の凹凸を有する転写用金型を作製することである。以下に本発明を詳しく説明する。
転写用金型の凹凸を曲面形状にする理由は、転写用基板には転写用金型の凹凸がそのまま転写されるため、転写用金型に尖状部分や平坦部があれば、転写用基板にもその形状が形成されるからである。転写用基板に尖状部分や平坦部があれば、例えば太陽電池基板に用いた場合、シリコン層にクラックが入ったり、光閉じ込め効果が低減するためである。
【0012】
本発明の転写用金型の作製方法を図1を用いて説明する。
先ず、例えばSiウェハー等の基板(2)上に感光性レジスト層(1)が積層された積層体(3)を準備する。積層方法は、例えば基板(2)上に液状の感光性レジスト樹脂をスピンコートし、乾燥する方法がある。基板は平坦なものが好ましく、ガラスなどを用いても良いし、感光性ドライフィルムを単体で用いても良い。
次に、感光性レジスト層(1)の上にマスク(4)を配し、感光性レジスト層(1)表面にマスクパターンを露光及び現像することにより、曲面形状の凹凸を有する母型(5)を作製する。
【0013】
感光性レジスト層表面への曲面形状の凹凸を形成するに際して、規則的な曲面形状とするのが良い。この規則的な曲面形状の凹凸を形成する方法として、マスクパターンの遮光部の長さ及びまたは開口部の長さが露光装置の解像限界となる長さよりも長いマスクを用いて、感光性レジスト層を焦点位置をずらしてマスクパターンを露光及び現像する方法が好適である。
マスクパターンの遮光部の長さ及び開口部の長さが露光装置の解像限界となる長さよりも長いマスクを用いて、感光性レジスト層を焦点位置をずらしてマスクパターンを露光及び現像する理由を図2、図3及び図4を用いて説明する。なお、ここではポジ型感光性レジストを用いた例で説明する。
【0014】
図2はマスクパターンの一部の拡大し、真上から見た図を示している。マスクパターンは、光透過性が高いガラスと光を遮断する金属膜で構成され、金属膜をパターニングしてマスクパターンを形成する。よって、遮光部(10)は金属膜、開口部(11)はガラスが露出した部分である。
なお、遮光部の長さ(8)とは、四角形の対角線の長さのことを言い、開口部の長さ(9)とは、開口部の交点が形成する四角形の対角線の長さを指す。
ここで、本発明で言う露光装置の解像限界となる長さについて説明する。露光方法には、等倍露光と縮小露光がある。等倍露光とは、感光性レジスト層上にマスクパターンを同じ縮尺で露光する方法であるのに対し、縮小露光とは、感光性レジスト層上にマスクパターンを縮小して露光する。ここで、露光装置の解像限界となる長さとは、縮小露光の場合は、縮小前の長さのことを言う。
例えば、露光装置の縮小倍率が1/5、縮小後の解像限界となる長さが0.5μmである場合、露光装置の解像限界となる長さとは、縮小前の長さ、つまり2.5μmとなる。
【0015】
図3は焦点位置が合った状態で露光した場合である。焦点位置が合った状態で露光すると、露光のコントラストが高く、マスクパターンを解像できるので、感光性レジスト層(1)が吸収する露光エネルギーは図3中の点線のようになる。これを現像して得られる表面形状は、角が尖状になる上、凹部及び凸部に平坦な面が形成され、これを母型(5)に用いた転写用金型は、角が尖状になり、凹部及び凸部が平坦になる。
一方、図4のように露光時に焦点位置をずらすと、露光のコントラストが低下してマスクパターンを解像できないため、感光性レジスト層(1)が吸収する露光エネルギーは図4中の点線のようになる。
これを現像して得られる感光性レジスト層(1)側表面は、凹凸形状が丸みを帯びた曲面形状になり、これを母型(5)とすることで、曲面形状を有する金属電鋳製の転写用金型を製造できるのである。
【0016】
ここで言う焦点位置をずらすことについて図5を用いて説明する。
焦点位置が合った状態から焦点をずらしていくと、感光性レジスト層は、凹部凸部とも平坦面が有り、凹凸の斜面が基板に対して約90°になる形状(a)から、凹部凸部とも平坦面があるが、凹凸の斜面が緩やかになる形状(b)を経て、凹部凸部とも曲面になる形状(c)のように変化していく。ここでは、レジスト形状が(c)のように、凹部凸部とも曲面になる条件で露光した場合を焦点位置をずらした状態とする。
この平坦面の長さは、凹凸間隔の20%以下(好ましくは15%以下)であれば良く、平坦面とは、凹凸高さの1%以内の高低差の部分を指す。この範囲であれは、光閉じ込め効果が低減する問題が生じにくくなる。なお、本発明で言う凹凸高さとは、凹凸の山(最高部)と谷(最低部)の高さ方向の距離のことを言い、凹凸間隔とは凹凸の山から、谷の延長線上にある隣接する山までの平面方向の距離のことを言う。図7で山間隔とは、距離ACまたはBDを指す。平坦面の長さは、断面観察により測定し、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することができる。
【0017】
なお、感光性レジスト層(1)側表面に凹凸形状が丸みを帯びた曲面形状を得る方法として、上述した焦点位置をずらす方法に匹敵する効果を得ることができる方法がある。
その方法とは、マスクパターンの遮光部の長さ(8)及び開口部の長さ(9)が露光装置の解像限界となる長さよりも短いマスクを用いて、感光性レジスト層を露光及び現像する方法である。このマスクパターンの遮光部の長さ及び開口部の長さが露光装置の解像限界となる長さよりも短いマスクを用いて、感光性レジスト層を露光及び現像する場合について、図6を用いて説明する。
マスクパターンの遮光部の長さ及び開口部の長さが露光装置の解像限界となる長さよりも短いマスクを用いて露光すると、マスクパターンを解像できないため、露光エネルギーは図6の点線で示すようになる。これを現像して得られる母型(5)の感光性レジスト層(1)側表面は、凹凸形状が丸みを帯びた曲面形状になり、これを母型とすることで、曲面形状を有する金属電鋳製の転写用金型を製造できる。
【0018】
また、マスクパターンの遮光部または開口部のどちらか一方が、露光装置の解像限界となる長さよりも長い場合、例えば、遮光部のみが露光装置の解像限界となる長さよりも長い場合は、焦点位置が合っていれば凹部は曲面形状になるものの、凸部に平坦面が形成されるため、焦点位置をずらす必要がある。
更に、凹凸の傾斜を調節したい場合は、露光エネルギーを変化させれば良く、より傾斜をつけたい場合は露光エネルギーを多くし、傾斜を緩やかにしたい場合は露光エネルギーを小さくするのが良い。
更に、広い面積に凹凸を形成したい場合は、ステップアンドリピート方式により感光性レジスト層を露光すると良い。
【0019】
上述した感光性レジスト層(1)側表面に凹凸形状が丸みを帯びた曲面形状を得る方法にて作製する母型(5)においては、凹凸の配置が重要になる。例えば、太陽電池では、凹凸により発電層内で光を散乱させて光閉じ込め効果を発現すると共に、接合面積も増大する。しかし、凹凸が不規則に形成されていれば、発電層から散乱光が漏れ、光閉じ込め効果が小さくなり、接合面積も一定しないので、発電効率が低下したり、ムラが生じたりする。また、発光デバイスの場合は、凹凸が不規則であれば、発光面積は増大するが、発光輝度にムラが生じる。
これを防止するには、母型の曲面形状の凹凸の配列は規則的となるように配列し、且つ、できる限り表面積を広く確保できるようにすると良い。そのため、隣り合う凸部の4つ頂点を四角形となるように直線で結んだ時には正方形に近づけるように配列を行うと良い。また、直線で結んだ隣り合う頂点同士の間隔もある程度の距離を確保し、且つ凸部の高さ、凹部の深さを有る程度確保すれば、太陽電池の場合は光閉じ込め効果を確保でき、発光デバイスの場合は、効率良く光を外部へ取り出すことができる。
【0020】
そのため、母型の凹凸形状は、凹凸の隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結んだ四角形の4辺の最短長さの辺に対する最長長さの辺の比が1.0〜1.3(好ましくは1.0〜1.2、更に好ましくは1.0〜1.1)、隣り合う凸部の4つの頂点を線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士を直線で結んだ時、2つの直線の長さの短い方の直線に対する長い方の直線の比が1.0〜1.3(好ましくは1.0〜1.2、更に好ましくは1.0〜1.1)とし、更に、凹凸高さが0.1〜2.0μm、凹凸間隔が0.2〜5.0μmとした。
このように、母型の凹凸を規則的な形態とすることにより、転写用金型の凹凸形状は母型の反転形状が反映された形状になるため、この転写用金型の形状が転写された凹凸付基板表面の反応面積や光閉じ込め効果を増大でき、発光輝度のムラを低減できるため、発電効率や発光効率を増大できる。
【0021】
上述の直線の長さの測定を図7にて説明する。
図7は本発明の母型の表面電子顕微鏡写真であり、白く光る個所が凸部で、黒い部分が凹部である。
まず、この隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結び四角形ABCDを形成する。次に、この四角形の4辺の長さ(AB、BC、CD、DA)を測定し、最短長さ及び最長長さを決定する。同様に、対向する2つの頂点同士を結んだ直線(AC、BD)の長さを測定し、短い方の直線及び長い方の直線を決定し、それぞれの比を求める。測定は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定できる。
なお、図7に示すような形態であることを確認するためには、ランダムに少なくとも5〜10視野を選び、測定を行って、表面形状を確認することが望ましい。
【0022】
以上、説明した方法により作製した母型(5)の感光性レジスト層(1)側に金属電鋳層(6)を形成し、更に、金属電鋳層(6)と母型(5)を剥離して曲面形状の凹凸を有する金属電鋳製の転写用金型(7)を作製する(図1)。
この電鋳層の形成は、めっきにより金属電鋳層を形成すると良い。めっきには電気めっきと無電解めっきがあるが、前者の方がめっき速度が速いので電気めっきで金属電鋳層を形成するのが好ましい。
ここで、母型表面(感光性レジスト層表面)は、絶縁性であるので、電気めっきにより金属電鋳層を形成する場合は、レジスト層にスパッタリングやCVDにより導電膜を形成すると良い。また、金属電鋳層の材質は、CrまたはNiを用いることで、耐食性の高い転写用金型を作製できる。
金属電鋳層(6)と母型(5)の剥離は、物理的に母型(5)を金属電鋳層(6)から引き剥がした後に、金属電鋳層(6)に付着した感光性レジスト層(1)をレジスト剥離液などで溶解し、除去すると良い。これにより、母型(5)金属電鋳層(6)を容易に分離でき、転写用金型(7)を容易に作製することができる。
【0023】
次に上述の転写用金型をロール表面に形成した転写ロールを用いて凹凸付基板を製造する凹凸付基板の製造方法について説明する。
本発明の転写用金型はフレキシブル性を有するので、ロールに巻付けることにより、転写ロールとすることで、生産性の良いロール方式のプロセスに用いることができる。
図9に示す様に、巻出しロール(12)から転写用基板素材(13)を巻出し、スリットコーター(14)で液状樹脂を被覆して、乾燥炉(15)で乾燥することにより、転写用基板(16)を作製する。更に、転写用金型を巻付けることにより、転写用金型をロール表面に形成した転写ロール(17)を加熱し、転写用金型の形状を転写用基板(16)に転写する。
転写ロール(17)の転写用基板(16)と対向する側には補助ロール(18)を設け、転写の際に転写ロール(17)と補助ロール(18)で転写用基板(16)を押圧することにより、転写用金型の形状を転写し、最後に巻取りロール(21)で、凹凸付基板(20)を巻き取る。また、冷却装置(19)は転写ロールを押圧した後に樹脂の流動性が大きく、転写用金型の形状通りに凹凸を形成できない場合に、強制的に樹脂を冷却して固化するためのものであり、樹脂の性質を考慮して適宜設置すれば良い。
【0024】
また、液状樹脂を被覆する方法はロールコーターなどを用いても良い。また、基材は、フレキシブル性を有するものが好ましく、金属薄板や樹脂フィルムが適している。樹脂は、転写し易い熱可塑性樹脂が適しており、耐熱性が必要な場合は、熱可塑性のポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォンなどがある。
この方法を採用することで、連続的に転写用金型の形状を転写用基板に転写できるので、生産性良く被転写基板を製造することができる。
【実施例】
【0025】
以下に図1で示しながら実施例を説明する。
Siウェハーを基板(2)として、基板上に感光性レジスト層(1)を形成した積層体(3)を準備した。次に、マスクパターンの遮光部の長さが4.5μm、開口部の長さが2.5μmのマスク(4)を用いてマスクパターンを焦点位置をずらして感光性レジスト層に縮小露光後、現像することにより、規則的な曲面形状を有する母型(5)を作製した。
なお、露光装置は縮小投影型i線ステッパー(Nikon社製NSR−TFHi12)を用い、露光装置の縮小倍率は1/5、縮小後の解像限界となる長さは0.4μmである。よって、露光装置の解像限界となる長さは、縮小前の長さ、つまり2.0μmであり、マスクパターンの遮光部の長さ及び開口部の長さは、露光装置の解像限界となる長さよりも長い。
この母型(5)の感光性レジスト層側にスパッタリングにより感光性レジスト層との密着層としてCr、その上に導電膜としてCuを積層し、その上に電気Niめっきにより金属電鋳層(6)を形成した。続いて金属電鋳層から母型を引き剥がした後、レジスト剥離液で金属電鋳層に付着した感光性レジスト層を溶解して除去し、規則的な曲面形状を有する転写用金型(7)を得た。
【0026】
上述の母型(5)の凹凸形状を原子間力顕微鏡(AFM;パシフィックナノテクノロジー社製、Nano−Rシステム)を用いて、四角形ABCDの4辺の長さ、対向する2つの頂点を結んだ直線の長さを5視野測定し、最短長さの辺に対する最長長さの辺の比を求め、表1に示した。なお、隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士の間隔は約1.4μmであり、凹凸高さが0.6μmであった。
また、転写用金型(7)の凹凸形状を原子間力顕微鏡(AFM;パシフィックナノテクノロジー社製、Nano−Rシステム)を用いて、四角形ABCDの4辺の長さ、対向する2つの頂点を結んだ直線の長さを5視野測定し、最短長さの辺に対する最長長さの辺の比を求め、表2に示した。なお、隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士の間隔は約1.4μmであり、凹凸高さが0.6μmであった。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
表1、表2から分かる様に、母型の四角形ABCDの4辺の長さ、対向する2つの頂点を結んだ直線の長さにおける最短長さの辺に対する最長長さの辺の比は、何れも1.0〜1.1であった。また、転写用金型においては、何れも1.0〜1.2であった。この様に、母型の凹凸の規則性は、転写用金型に反映されていることが分かる。
図7に母型表面の電子顕微鏡写真を、図8に転写用金型表面の電子顕微鏡写真を示す。この顕微鏡写真から、転写用金型の形状は、母型の反転形状であり、母型の形状が転写用金型に精度良く反映されているのが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明を用いることにより、規則的な曲面形状を有する転写用金型を作製できるようになり、この転写用金型をロールに巻付けて転写ロールとすることで、連続的に凹凸付基板を製造できるようになる。また、本発明の製造方法により得られた凹凸付基板は高い発電効率・発光効率を発揮する太陽電池や発光デバイスを作製できるため、今後需要の増大が予想される本分野にとって、欠くことのできない技術となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の転写用金型の作製方法である。
【図2】本発明のマスクパターンの模式図である。
【図3】本発明の露光原理の模式図である。
【図4】本発明の露光原理の模式図である。
【図5】本発明の焦点位置をずらすことについての説明図である。
【図6】本発明の露光原理の模式図である。
【図7】本発明の母型の表面電子顕微鏡写真とその模式図である。
【図8】本発明の転写用金型の表面電子顕微鏡写真である。
【図9】本発明の凹凸付基板の製造方法の模式図である。
【符号の説明】
【0032】
1.感光性レジスト層
2.基板
3.積層体
4.マスク
5.母型
6.金属電鋳層
7.転写用金型
8.遮光部の長さ
9.開口部の長さ
10.遮光部
11.開口部
12.巻出しロール
13.転写用基板素材
14.スリットコーター
15.乾燥炉
16.転写用基板
17.転写ロール
18.補助ロール
19.冷却装置
20.凹凸付基板
21.巻取りロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写用金型の製造方法であって、基板表面に形成された感光層レジスト層表面に、マスクパターンを露光及び現像することにより、感光性レジスト層に曲面形状の凹凸を形成した母型を作製する工程の後、該母型に電鋳法により金属電鋳層を形成し、金属電鋳層と母型を剥離して、曲面形状の凹凸を有する金属電鋳製の転写用金型とすることを特徴とする転写用金型の製造方法。
【請求項2】
マスクパターンの露光は、マスクパターンの遮光部の長さ及びまたは開口部の長さが露光装置の解像限界となる長さよりも長いマスクを用いて、感光層レジスト層表面に、焦点位置を深さ方向にずらしてマスクパターンを露光することを特徴とする請求項1に記載の転写用金型の製造方法。
【請求項3】
母型の曲面形状の凹凸が、曲面形状の凹凸の隣り合う凸部の4つの頂点を線で結んだ四角形の4辺の最短長さの辺に対する最長長さの辺の比が1.0〜1.3、隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士を直線で結んだ時、2つの直線の長さの短い方の直線に対する長い方の直線の比が1.0〜1.3、隣り合う凸部の4つの頂点を直線で結んだ四角形の対向する2つの頂点同士の間隔が0.2〜5.0μm、凹凸高さが0.1〜2.0μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の転写用金型の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の転写用金型をロール表面に形成した転写ロールを用いて凹凸付基板を製造する凹凸付基板の製造方法であって、転写用基板素材を巻き出す工程と、前記転写用基板素材に樹脂を被覆して転写用基板を製造する工程と、前記転写ロールを加熱した状態で、転写ロール表面に形成した転写用金型の形状を転写用基板に転写する工程を含むことを特徴とする凹凸付基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−55665(P2008−55665A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233205(P2006−233205)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】