説明

転写箔、これを用いたIDカード、及びIDカードの作成方法

【課題】十分な機械的強度及び耐退色性を有するIDカードを、低コストで簡便に作成し得る技術を提供する。
【解決手段】支持体上に紫外線硬化性樹脂層及び紫外線遮蔽層を含む積層を設けた転写箔。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転免許証、社員証、及び個人の資格や身分を証明するために用いられるIDカード等の印刷物、その作成方法、及びその作成に使用される転写箔に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車運転免許証や従業員証等、資格所有者本人の確認が必要な印刷物として、染料熱拡散記録装置を用いて顔写真を記録し、氏名・住所・生年月日等の個人文字情報を熱溶融転写記録した人物カラー画像入りIDカードが実用化されている。
【0003】
これらのIDカードは、変造、改ざんの防止の観点から、表面の高い機械的強度と、長期使用の観点から、記載事項、特にカラー画像の高い耐退色性が求められている。
【0004】
表面の機械的強度を向上する技術として、カード表面に、保護層として紫外線硬化性樹脂層を設ける技術があり、この紫外線硬化性樹脂層は、画像が形成されたカード基材表面に例えば支持体上に紫外線硬化性樹脂層が形成された転写箔を用いて熱転写することにより形成される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、カラー画像の耐退色性を向上する技術として、カラー画像上に紫外線遮蔽層を形成することが知られており、この紫外線遮蔽層は、画像が形成されたカード基材表面に例えば支持体上に紫外線遮蔽層が形成された転写箔を用いて熱転写することにより形成される。
【0006】
表面の高い機械的強度とカラー画像の高い耐退色性を両立するために、カラー画像上に、紫外線遮蔽層、及び紫外線硬化性樹脂層を順に設けることができる。この場合、各層の形成条件、例えば熱転写方式の場合には、転写温度、転写速度、及び剥離角度等が各々異なるため、個々に作成装置を設けていた。
【0007】
また、上述のような転写箔の紫外線硬化性樹脂層に紫外線吸収剤を加えること提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この場合、紫外線硬化性樹脂層を硬化する際に、紫外線吸収剤により紫外線が吸収され、硬化が不十分となり、表面の機械的強度が不十分になるという不利点があった。
【特許文献1】特開平11−78312号公報
【特許文献2】特開平4−344289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、十分な機械的強度及び耐退色性を有するIDカードを、低コストで簡便に作成し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の転写箔は、支持体、該支持体上に設けられた、紫外線硬化性樹脂層及び紫外線遮蔽層を含む積層を具備することを特徴とする。
【0010】
本発明のIDカードは、基材と、該基材上に設けられた画像層と、該画像層上に設けられた、紫外線遮蔽層及び紫外線硬化性樹脂層を含む積層とを有するIDカードであって、
前記積層は、支持体、該支持体上に設けられた、紫外線硬化性樹脂層及び紫外線遮蔽層を含む積層を有する転写箔を用いて、前記画像層を介して前記基材上に熱転写されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明を用いると、十分な機械的強度及び耐退色性を有するIDカードを、低コストで簡便に作成し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の転写箔は、支持体上に、少なくとも紫外線硬化性樹脂層及び紫外線遮蔽層の順に形成された積層を含む。
【0013】
また、本発明のIDカードは、上記転写箔を用いて形成されたもので、基材と、基材上に形成された画像層と、画像層を介して基材上に上記転写箔の紫外線遮蔽層側を当接して、熱転写することにより形成された紫外線遮蔽層及び紫外線硬化性樹脂層の積層とを有する。
【0014】
さらに、本発明のIDカードの作成方法は、基材上に画像層を形成する工程、上記転写箔を使用し、画像層を介して上記転写箔の紫外線遮蔽層側を当接して、熱転写することにより、紫外線遮蔽層及び紫外線硬化性樹脂層を含む積層を熱転写する工程、及び紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂層を硬化せしめる工程を具備する。
【0015】
上記作成方法において、支持体は、紫外線硬化性樹脂層を硬化する工程の前または後に剥離することができる。紫外線硬化性樹脂層を硬化する工程後に剥離する場合には、支持体として紫外線透過性を有する材料が使用される。支持体を剥離する前に紫外線硬化性樹脂層の紫外線照射を行った場合、支持体の剥離後に、再度、紫外線照射を行うことができる。
【0016】
なお、ここでは特に区別していないが、上記紫外線硬化性樹脂層のうち、本発明の転写箔に含まれる紫外線硬化性樹脂層は未硬化物であり、また、本発明のIDカードに含まれる紫外線硬化性樹脂層は硬化物である。
【0017】
本発明によれば、支持体上に紫外線遮蔽層及び紫外線硬化性樹脂層を積層した転写箔を使用することにより、紫外線遮蔽層と紫外線硬化性樹脂層とを別々に形成する必要がない。このため、IDカードの作成時間を短縮し、IDカードの作成装置を簡素化し、及び例えば支持体等の廃棄物を低減化することが可能となる。
【0018】
また、本発明によれば、十分な機械的強度及び耐退色性が得られるため、IDカードの変造、改ざん防止機能、及び画像特にカラー画像の画質が良好となる。
【0019】
以下、図面を参照し、本発明を具体的に説明する。
【0020】
図1に、本発明に係る転写箔の構成の一例を表す断面図を示す。
【0021】
図示するように、この転写箔10は、支持体1上に、紫外線硬化性樹脂層2及び紫外線遮蔽層3を順に積層した構成を有する。
【0022】
紫外線硬化性樹脂層2としては、少なくともその未硬化物あるいは硬化物が、支持体1と剥離可能である材料が使用され得る。
【0023】
本発明の転写箔に使用する支持体としては例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレナフタレート、ポリカーボネート、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニール等の各種プラスチックフィルムが挙げられる。
【0024】
また、ポリイミド、ポリスルホン等の透明性の低い樹脂フィルムも、フィルムの厚さが薄ければ、紫外線等を透過できることから使用可能である。
【0025】
また、支持体に対して、紫外線硬化性樹脂層及び紫外線遮蔽層と反対面に、耐熱滑性層として、耐熱性及び平滑性の高いシリコーン樹脂、アクリル樹脂等を含有する層を形成することができる。
【0026】
支持体は、1〜200μmの厚さを有することが好ましい。
【0027】
支持体の厚さは、1μm未満であると、紫外線硬化性樹脂層及び遮蔽層の支持体上への形成が困難となる傾向があり、200μmを超えると、紫外線硬化性樹脂層及び遮蔽層のカード上への形成が困難となる傾向がある。
【0028】
紫外線硬化性樹脂層に使用できる材料としては、例えば3官能以上のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルがあげられる。
【0029】
このような(メタ)アクリル酸エステルとして、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ペンタエリスリトールポリアクリレート、及びジペンタエリスリトールポリアクリレート等が挙げられる。
【0030】
また、これら3官能以上のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルは複数のものを組み合わせて使用しても良いし、他の化合物との混合物であっても良い。
【0031】
これら3官能以上のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを用いた市販の紫外線硬化性樹脂材料として、例えば東亜合成化学工業(株)の商品名でアロニックスM−305、M−309、M−310、M−315、M−320、M−325、M−330、M−400、新中村化学(株)の商品名でNKエステルTMPT、A−TMPT、A−TMM−3、A−TMM−3L、A−TMMT、A−9530等が挙げられる。
【0032】
本発明の紫外線硬化性樹脂層には光反応開始剤を添加することができる。
【0033】
光反応開始剤として、例えばベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾイン類、チオキサントン類、アゾ化合物類、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド等を挙げることができる。
【0034】
紫外線硬化性樹脂層の厚さは、1μmから50μmが好ましい。
【0035】
紫外線硬化性樹脂層の厚さが1μm未満であると、IDカード表面の機械的強度が著しく弱くなる傾向があり、200μmを超えると、支持体上への形成が困難となる傾向がある。
【0036】
本発明に使用される紫外線遮蔽層として、透明性の高い樹脂と紫外線吸収剤との混合物を用いることができる。
【0037】
紫外線遮蔽層に使用し得る透明性の高い樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂及びこれらの混合物等があげられる。
【0038】
具体的なポリエステル系樹脂として、例えば東洋紡績(株)製バイロン200、バイロナールMD1100、バイロナールMD1200、バイロナールMD1245、バイロナールMD1400、バイロナールGX−W27、ユニチカ(株)製エリーテルUE−3350、エリーテルUE−3380、エリーテルUE−3200等の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0039】
具体的なポリウレタン系樹脂として、例えば日本ポリウレタン工業(株)製ニッポラン2301、ニッポラン2304、ニッポラン3016、ニッポラン3022、ニッポラン3027、電気化学工業(株)製ハードロックWX−2000R、ハードロックWX−2000S等の商品名で市販されているものを使用することができる。また、これらのウレタン樹脂は適当なイソシアネート化合物と混合して用いることができる。
【0040】
具体的なアクリル系樹脂として、例えばダイセル化学工業(株)製セビアン45000、セビアン45610、セビアン46777、三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBR−80、ダイヤナールBR−83、ダイヤナールBR−85、ダイヤナールBR−87等の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0041】
具体的なエポキシ系樹脂として、例えば旭電化工業(株)製アデカレジンEP−4100、EP−4300、EP−4530、EP−5100−70X、東邦化成工業(株)製ウルタイト2550、東レ(株)製ケミットエポキシTE2101、及びセメダイン(株)製セメダインEP−001等の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0042】
具体的なポリビニルブチラール系樹脂として、例えば積水化学工業(株)製エスレックBL−3、エスレックBL−S、エスレックBX−L等の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0043】
具体的なエチレン−酢酸ビニル系樹脂として、例えば三井デュポンポリケミカル(株)製エバフレックス210、エバフレックス220、エバフレックス250、ヒロダイン工業(株)製ヒロダイン1800−5、ヒロダイン3706、ヒロダイン4309、コニシ(株)製ボンドBC677、及びボンドMP786W等の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0044】
また、紫外線遮蔽層に使用し得る紫外線吸収剤としては、有機系、無機系紫外線吸収剤があげられる。
【0045】
有機系紫外線吸収剤として、具体的に、例えば共同薬品(株)製バイオソーブ520、バイオソーブ550、バイオソーブ580、バイオソーブ582、バイオソーブ583、バイオソーブ590、バイオソーブ591、チバガイギー(株)製Tinuvin P、Tinuvin PFL、Tinuvin 234、Tinuvin 320、Tinuvin 292、及びTinuvin 326、Tinuvin 326FL等の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0046】
無機系紫外線吸収剤としては、具体的に、例えば出光石油化学(株)製チタニアIT−S、チタニアIT−UD、チタニアIT−OA、多木化学(株)製ニードラールW−100、ニードラールU−100等の商品名で市販されている酸化チタン、酸化セリウム、酸化錫等の無機酸化物を使用することができる。
【0047】
紫外線吸収効果及び紫外線吸収剤による着色性等を考慮すると、塩化ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤と、塩素を含まないベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤とを混合して使用することが好ましい。塩化ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤と塩素を含まないベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の配合比は、1:1〜1:10、好ましくは、1:1〜1:5の比率で添加すると良い。上記範囲外であると、着色性あるいは紫外線吸収能に問題が発生する傾向がある。
【0048】
紫外線吸収剤の添加量は、特に限定されないが、透明性の高い樹脂100重量部当たり、2〜66重量部、好ましくは、10〜40重量部の割合で添加すると良い。添加量が2重量部より少ないと、紫外線遮蔽層としての効果が得がたく、66重量部より多いと、着色、コスト増等の問題が発生する。
【0049】
紫外線遮蔽層の厚さは0.1μmないし30μmであることが好ましい。
【0050】
紫外線遮蔽層の厚さが0.1μm未満であると、紫外線遮蔽層としての効果が得難く、30μmを超えると、着色及びコストの面で問題が発生する傾向がある。
【0051】
図2に、本発明に係る転写箔の構成の他の一例を表す断面図を示す。
【0052】
図示するように、この転写箔20は、紫外線硬化性樹脂層2及び紫外線遮蔽層3の間に中間層4をさらに設けた以外は、図1の転写箔と同様の構成を有する。
【0053】
図示するように、本発明の転写箔では、紫外線遮蔽層と紫外線硬化性樹脂層の間に中間層を用いることができる。中間層を設けることにより、転写箔作成時の紫外線吸収剤の紫外線硬化性樹脂層への進入を防止することができ、IDカード表面の機械的強度をより高めることができる。
【0054】
中間層としては、透明性の高い樹脂を用いることができる。透明性の高い樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂及びこれらの各樹脂の混合物等が用いられる。
【0055】
中間層の厚さは、0.1μmから30μmが好ましい。
【0056】
中間層の厚さが0.1μm未満であると、中間層形成の再現性に問題が発生する傾向があり、30μmを超えると、IDカード転写時にバリなどが発生しやすくなる傾向がある。
【0057】
図3及び図4に、本発明に係る転写箔の構成の他の一例、さらに他の一例を表す断面図を各々示す。
【0058】
図示するように、この転写箔30,40は、支持体1と紫外線硬化性樹脂層2との間に剥離層5をさらに設けた以外は、図1及び図2の転写箔と同様の構成を各々有する。
【0059】
本発明に係る転写箔では、支持体と紫外線硬化性樹脂層との間に剥離層を設けることにより、熱転写後あるいは紫外線硬化処理後、支持体1及び紫外線硬化性樹脂層2間を容易に剥離し得る。
【0060】
剥離層に用いる樹脂は、支持体との接着力が適度に調節されていることが望ましい。接着力が過度に大きいと、熱接着後の剥離時に支持体から紫外線硬化性樹脂層をカード表面に転写できなくなる。また、接着力が過度に小さいと、支持体剥離後にカード端面にバリが発生する傾向がある。
【0061】
剥離層に適した適度な接着力を持つ樹脂としては、ワックス樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂及びこれらの各樹脂の混合物等があげられる。
【0062】
ワックス樹脂としては、具体的に、日本精蝋(株)製Hi−Mic−2065、Hi−Mic−1045、Hi−Mic−2045、PALVAX−1230、PALVAX−1330、PALVAX−1335、PALVAX−1430、BONTEX−0011、BONTEX−0100、BONTEX−2266等の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0063】
酢酸ビニル樹脂としては、具体的に、電気化学工業(株)サクノールSN−04、サクノールSN−04S、サクノールSN−04D、サクノールSN−09A、サクノールSN−09T、サクノールSN−10、サクノールSN−10N、サクノールSN−17A、ASR CH−09、ASR CL−13、クラリアントポリマー(株)製モビニールDC、ダイセル化成品(株)製セビアンA530、セビアンA700、セビアンA707、セビアンA710、セビアンA712、セビアンA800等の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0064】
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂としては、具体的には、三井・デュポン・ポリケミカル(株)製エバフレックス45X、エバフレックス40、エバフレックス150、エバフレックス210、エバフレックス220、エバフレックス250、エバフレックス260、エバフレックス310、エバフレックス360、エバフレックス410、エバフレックス420、エバフレックス450、エバフレックス460、エバフレックス550、エバフレックス560、クラリアントポリマー(株)製モビニール081F、住友化学工業(株)製エバテートD3022、D3012、D4032、CV8030、ヒロダイン工業(株)製ヒロダイン1800−5、ヒロダイン1800−6、ヒロダイン1800−8、ヒロダイン3706、ヒロダイン4309、コニシ(株)製ボンドCZ250、ボンドCV3105等の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0065】
アクリル樹脂としては、具体的には、ダイセル化成品(株)製セビアンA45000、セビアンA45610、セビアンA46777、セビアンA4635、三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBR−80、ダイヤナールBR−83、ダイヤナールBR−85、ダイヤナールBR−87、ダイヤナールBR−101、ダイヤナールBR−102、ダイヤナールBR−105、ダイヤナールBR−106等の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0066】
シリコーン樹脂としては、具体的には、東芝シリコーン(株)製トスガード510等の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0067】
ポリエステル樹脂としては、具体的には、東洋紡績(株)製バイロン200、バイロン220、バイロン240、バイロン245、バイロン280、バイロン296、バイロン530、バイロン560、バイロン600、バイロナールMD1100、バイロナールMD1200、バイロナールMD1245、バイロナールMD1400、バイロナールGX−W27、ユニチカ(株)製エリーテルUE−3300、エリーテルUE−3320、エリーテルUE−3350、エリーテルUE−3370、エリーテルUE−3380等の商品名で市販されているものを使用することができる。
【0068】
剥離層の厚さは、0.1μmから30μmが好ましい。
【0069】
剥離層の厚さは、0.1μm未満であると、剥離層形成の再現性に問題が発生する傾向があり、30μmを超えると、IDカード転写時にバリなどが発生しやすくなる傾向がある。
【0070】
転写箔の作成方法としては、上記各層の材料を塗料化し、支持体上に、種々の塗布方法例えばグラビアコート、リバースコート、ダイコート、ワイヤーバーコート、及びホットメルトコート等により、順次塗布、乾燥することがあげられる。
【0071】
また、本発明に係る転写箔をカラー画像層が具備されたカード基材上に形成する方法としては、転写箔の紫外線遮蔽層及び紫外線硬化性樹脂層を含む積層を、画像層を介してカード基材と重ね、例えばヒートローラ、プラテンローラ、及びシャフトにより転写箔とカード基材を送りながら、転写箔の支持体面からヒートローラによって、例えば100℃ないし150℃の温度で、加熱及び加圧することにより、プラテンローラ上に位置するカード基材の表面と、紫外線遮蔽層及び紫外線硬化性樹脂層を含む積層を、熱融着させて転写することができる。
【0072】
続いて、積層を転写したカード基材に紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させることにより保護膜を形成し、表面の機械的強度に優れたカードを作製することができる。
【0073】
本発明に使用される紫外線ランプとしては、メタルハライドランプが好適であるが、紫外線等の高エネルギー光線を発するものであればこれに限定されるものではない。反応開始剤を励起するに適した波長の紫外線を発する光源を使用することが好ましい。
【0074】
紫外線硬化性樹脂層に対する紫外線の照射は、転写箔の支持体をカードから剥離する前に、転写箔の支持体面から行うことができる。
【0075】
紫外線を照射するとき、紫外線の光量は、100μW/cmないし2000μW/cmであることが好ましい。紫外線の光量が100μW/cm未満であると、IDカード表面の機械的強度が弱くなる傾向があり、2000μW/cmを超えると、紫外線照射のための装置が大型化する傾向がある。
【0076】
また、紫外線硬化性樹脂層に対する紫外線の照射は、転写箔の支持体をカードから剥離した後に、転写箔の支持体面から行うことができる。
【0077】
さらに、紫外線硬化性樹脂層に対する紫外線の照射を、転写箔の支持体をカードから剥離する前後の両方に行うことができる。このようにすると、より高速に転写箔をカード上に転写できるという利点がある。
【0078】
本発明のIDカードに使用される画像の形成には、染料熱拡散記録技術、熱溶融転写記録技術、熱現像銀塩写真記録技術、電子写真記録技術、インクジェット記録技術等、階調画像が形成できる記録技術で有ればどのような記録技術でも適用し得る。簡便性及び階調性、解像度等の画質の点から、染料熱拡散記録技術、インクジェット記録技術を用いることが好ましい。
【0079】
図5に、本発明に係るIDカードの構成の一例を表す断面図を示す。
【0080】
図示するように、このIDカード50は、カード基材6上に、画像層7を介して、紫外線遮蔽層3、及び紫外線硬化性樹脂層2を順に積層した構成を有する。
【0081】
このIDカード50は、図1に示す転写箔10または図3に示す転写箔30を用いて形成することができる。
【0082】
図6に、本発明に係るIDカードの構成の他の一例を表す断面図を示す。
【0083】
図示するように、このIDカード60は、紫外線硬化性樹脂層2及び紫外線遮蔽層3の間に中間層4をさらに設けた以外は、図5に示すIDカードと同様の構成を有する。
【0084】
このIDカード60は、図2に示す転写箔20または図4に示す転写箔40を用いて形成することができる。
【0085】
また、なお、画像層7と紫外線遮蔽層3との間に受像層を設けることもできる。
【0086】
図7及び図8に、各々、本発明に係るIDカードの構成のさらに他の一例を表す断面図を示す。
【0087】
図示するように、このIDカード70,80は、画像層7と紫外線遮蔽層3との間に受像層8を設けたこと以外は、図5及び図6に示すIDカード50,60と同様の構成を有する。
【実施例】
【0088】
実施例1
紫外線硬化性樹脂の作成
支持体として、厚さ12μmのポリエステルフィルムを用意し、その片面に以下に示す組成の紫外線硬化性樹脂層樹脂液を厚さ25μmになるようにワイヤーバーコート法で塗布し、その後乾燥して紫外線硬化性樹脂層を形成した。
【0089】
紫外線硬化性樹脂液組成
脂環式エポキシ樹脂(米国UCC製 商品型番;UVR6110)
…………………56重量部
εカプロラクトントリオール………………17重量部
グリシジルエーテル…………………………24重量部
6弗化アンチモンスルホニュウム塩…………3重量部
シリコーンポリエーテル……………………0.5重量部
ステアリルアルコール…………………………1重量部
紫外線遮蔽層の形成
紫外線硬化性樹脂層上に、次に示す組成の紫外線遮蔽膜樹脂液を厚さ20μmになるようにワイヤーバーコート法で塗布し、その後乾燥して紫外線硬化性樹脂層を形成し、図1と同様の構成を有する保護層転写箔を得た。
【0090】
紫外線遮蔽膜樹脂液組成
メチルエチルケトン…………………………30重量部
トルエン………………………………………30重量部
ポリエステル・ウレタン樹脂(東洋紡KK製 商品型番;UR−1400)
………………30重量部
紫外線吸収剤(住友化学製 商品型番;スミソーブ200)
………………30重量部
紫外線吸収剤(住友化学製 商品型番;スミソーブ300)
………………6重量部
実施例2
実施例1と同様にして、支持体上に紫外線硬化性樹脂層を形成し、得られた紫外線硬化性樹脂層上に、以下に示す組成の中間層塗布液を10μmになるようにワイヤーバーコート法で塗布し、その後、乾燥して中間層を形成した。
【0091】
中間層塗布液組成
メチルエチルケトン…………………………50重量部
トルエン………………………………………50重量部
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製)商品型番;エスレックBL−3
………………10重量部
続いて、得られた中間層上に、実施例1と同様にして紫外線遮蔽層を形成し、保護層転写箔を得た。
【0092】
実施例3及び4
受像層の作成
支持体として、厚さが50μmの白色ポリエステルフィルム(東レKK製、商品型番:E20)を用意し、その片面に、以下の組成の受像層塗布液を塗布して、120℃で30分間、加熱及び乾燥して、受像層を形成し、受像層転写箔を得た。
【0093】
受像層塗布液組成
メチルエチルケトン…………………………10重量部
トルエン………………………………………30重量部
ポリエステル・ウレタン樹脂(東洋紡KK製、商品型番;UR−1400)
………………………30重量部
アミノ変性シリコーンオイル(東芝シリコーンKK製 商品型番;TSF4700
…………………0.2重量部
イソシアネート(日本ポリウレタンKK製 商品名;コロネート2513
…………………1重量部
IDカード化
上記した方法で作成した受像層付きフィルムを、厚さが350μmのポリエステルフィルム2枚と張り合わせて一体化した後、外径寸法が85.6mm×54.0mmの形状に打ち抜き、支持体を剥離して、受像層付きカード基材を作成した。
【0094】
カラー画像の作成
作成したカード基材の受像層表面に、昇華性染料を含有させたインクリボンを当接し、インクリボンの背面からTPH(発熱抵抗体配列密度;400DPI)を用いて熱エネルギーを加え、カラー人物画像を形成した。
【0095】
インクリボンはイエロー色昇華性染料、マゼンタ色昇華性染料、シアン色昇華性染料をそれぞれ含有するインク層が面順次に設けられており、記録すべき人物画像の色分解データに基づいて記録動作を繰り返し、カラー人物画像が得られる。
【0096】
保護層転写箔の転写
実施例1及び実施例2で得られた保護層転写箔を使用し、各々、紫外線遮蔽層が受像層表面と当接するように、カード基材に転写箔を重ねた。そして、ヒートローラ、プラテンローラ、及びシャフトにより転写箔とカード基材を送りながら、転写箔の支持体側からヒートローラによって温度180℃、圧力9kg重/mで加熱及び加圧することにより、プラテンローラ上に位置するカード基材の表面に、紫外線遮蔽層及び紫外線硬化性樹脂層の積層を転写した。
【0097】
その後、支持体上から、紫外線ランプを用いて、光量150μW/cm の紫外線を照射した。支持体を剥離した後、再度、紫外線ランプを用いて、光量300μW/cm の紫外線を照射し、IDカードを得た。
【0098】
得られたIDカードについて、以下のような機械的強度試験、耐退色性試験、及びその評価を行った。
【0099】
機械的強度試験
得られたIDカードを用いて、カラー画像上の機械的強度試験として、先端半径0.1mmのサファイア針を用いて、荷重を10g単位で変えることによりカラー画像が破損する加重を評価した。
【0100】
その結果、このIDカードのカラー画像は加重400gまで破損しないことがわかった。
【0101】
耐光退色性試験
得られたIDカードを用いて、7万ルクスのキセノンランプを7日間照射し、照射後の画像濃度の残存率を評価することにより、耐光退色性試験を行った。
【0102】
その結果について、イエロー画像の場合は画像残像率91%、マゼンタ画像の場合を95%、及びシアン画像の場合は93%であった。
【0103】
その結果、このIDカードは耐光退色性も非常に良好であることがわかった。
【0104】
比較例1
紫外線遮蔽層を形成しないこと以外は実施例1と同様にして、支持体上に紫外線硬化性樹脂層が設けられた紫外線硬化性樹脂層転写箔を作成した。
【0105】
さらに、支持体として、厚さ6μmのポリエステルフィルムを用意し、その片面に実施例1と同様の組成の紫外線遮蔽層塗布液を用いて、厚さ20μmになるようにワイヤーバーコート法で塗布して乾燥し、支持体上に紫外線遮蔽層が設けられた紫外線遮蔽層転写箔を作成した。
【0106】
実施例3と同様にカラー画像が具備されたカード基材を作成し、その上に紫外線硬化性樹脂層転写箔を転写温度が160℃であること以外は実施例3と同様な方法で転写して、支持体を剥離して紫外線硬化性樹脂層を形成した。続いて、紫外線遮蔽層転写箔を、転写温度が160℃であること以外は実施例3と同様な方法で転写して紫外線遮蔽層を形成し、IDカードを得た。
【0107】
得られたIDカードについて、実施例3と同様に機械的強度試験及び耐退色性試験を行った。
【0108】
その結果、カラー画像を破損しない加重は380gであり、イエロー、マゼンタ、シアンの画像残像率は90%、95%、92%であった。
【0109】
上述のように、実施例3,4で作成したIDカードは、比較例1,2で作成したカードと同等の表面の機械的強度およびカラー画像の耐退色性を有しており、かつ比較例と比較して、簡便な機構かつ最小限の作成時間でカードが作成でき、さらには廃棄物の低減化が達成できた。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明に係る転写箔の構成の一例を表す断面図
【図2】本発明に係る転写箔の構成の他の一例を表す断面図
【図3】本発明に係る転写箔の構成の他の一例を表す断面図
【図4】本発明に係る転写箔の構成のさらに他の一例を表す断面図
【図5】本発明に係るIDカードの構成の一例を表す断面図
【図6】本発明に係るIDカードの構成の他の一例を表す断面図
【図7】本発明に係るIDカードの構成のさらに他の一例を表す断面図
【図8】本発明に係るIDカードの構成のさらにまた他の一例を表す断面図
【符号の説明】
【0111】
1…支持体、2…紫外線硬化性樹脂層、3…紫外線遮蔽層、4…中間層、5…剥離層、6…カード基材、7…画像層、8…受像層、10,20,30,40…転写箔、50,60,70,80…IDカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、該支持体上に設けられた、紫外線硬化性樹脂層及び紫外線遮蔽層を含む積層を具備することを特徴とする転写箔。
【請求項2】
前記積層は、光透過性を有することを特徴とする請求項1に記載の転写箔。
【請求項3】
前記紫外線硬化性樹脂層は、前記支持体と剥離可能である請求項1または2に記載の転写箔。
【請求項4】
前記紫外線硬化性樹脂層と前記支持体との間に剥離層がさらに設けられ、該剥離層は該紫外線硬化性樹脂層と剥離可能である請求項1または2に記載の転写箔。
【請求項5】
前記積層は、紫外線硬化性樹脂層と前記紫外線遮蔽層との間に中間層をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の転写箔。
【請求項6】
基材と、該基材上に設けられた画像層と、該画像層上に設けられた、紫外線遮蔽層及び紫外線硬化性樹脂層を含む積層とを有するIDカードであって、
前記積層は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の転写箔を用いて、前記画像層を介して前記基材上に熱転写されたことを特徴とするIDカード。
【請求項7】
基材上に画像層を形成する工程、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の転写箔を使用し、該画像層を介して該基材上に紫外線遮蔽層及び紫外線硬化性樹脂層を含む積層を熱転写する工程、及び紫外線を照射して該紫外線硬化性樹脂層を硬化せしめる工程を具備することを特徴とするIDカードの作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−229931(P2007−229931A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50532(P2006−50532)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】