説明

転写電圧制御方法及び画像形成装置

【課題】感光体ドラムと中間転写ベルトとの間のトナー面に所望値の電流を流すことができるような一次転写電圧を短時間で求めて印加できるようにすること。
【解決手段】感光体ドラム43の表面電位の変化量と、この表面電位の変化に応じて変化する測定電圧の変化量と、の関係を示す関係式を求めて、これを記憶しておく。次に、感光体ドラム43の表面電位が任意の電位のときに、電圧を測定する。次に、前記関係式と、前記測定電圧と、前記測定電圧が測定されたときの感光体ドラム43の表面電位と、を用いて、感光体ドラム43の表面電位が基準電位のときに測定されるであろう測定電圧を推定する。次に、感光体ドラム43の表面電位が基準電位の場合の、測定電圧と印加すべき転写電圧との関係に基づき、この関係における測定電圧として、前記推定された測定電圧を用いて、印加すべき転写電圧を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複写機や、レーザビームプリンタ、ファクシミリ、ディジタル複合機等の画像形成装置、及び、その転写電圧の制御方法に関する。特に、感光体ドラムと中間転写体との間に転写電圧を印加することにより、感光体ドラムの表面に形成されたトナー像を中間転写体に効率的かつ安定的に転写するようになされた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体ドラムと中間転写体(中間転写ベルト)との間に転写電圧(一次転写電圧)を印加する場合において、感光体ドラムから中間転写体へのトナー像の転写状態に大きな影響を及ぼすのは、実質上、トナー面に流れる電流である。このため、このトナー面に所望値の電流が流れるように、転写電圧を印加することが求められる。
【0003】
そこで、従来、一次転写電圧を印加したときの抵抗値を正確に測定する方法が提案されている。特許文献1では、トナー層の厚みに応じて抵抗が変わることを考慮して、トナーのない状態で電流及び抵抗を測定する技術が開示されている。
【0004】
しかし、トナーがない状態で抵抗値を測定したとしても、測定値は感光体ドラムの表面電位の影響を受けてしまう問題がある。
【0005】
そこで、特許文献2では、感光体ドラムの表面電位(V0電位)を一定にして抵抗を測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−212872号公報
【特許文献2】特開2007−11076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献2で開示されているように、感光体ドラムの表面電位を一定にして抵抗を測定すれば、正確な抵抗測定を行うことができると考えられる。しかし、特許文献2で開示されている方法を用いると、抵抗測定の時間に加えて、感光体ドラムの表面電位を固定値に切り替える時間が必要となる。その結果、抵抗測定にかかる時間が長くなり、ひいては、一次転写電圧を決定するまでの時間が長くなる欠点がある。
【0008】
このように、従来の画像形成装置においては、感光体ドラムと中間転写ベルトとの間のトナー面に所望値の電流を流すことができるような一次転写電圧を、短時間で求めて印加することは困難な問題があった。
【0009】
本発明の目的は、感光体ドラムと中間転写ベルトとの間のトナー面に所望値の電流を流すことができるような一次転写電圧を短時間で求めて印加できる、転写電圧制御方法及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の転写電圧制御方法の一つの態様は、
表面にトナー像が形成される感光体ドラムと、前記感光体ドラムに近接して設けられた転写ローラと、前記感光体ドラムと前記転写ローラとの間に設けられ、前記感光体ドラムから前記トナー像が転写される中間転写体と、前記感光体ドラムと前記転写ローラとの間に一定電流を流したときの、前記感光体ドラムと前記転写ローラとの間の電圧を測定する電圧測定部と、前記感光体ドラムと前記転写ローラとの間に転写電圧を印加する電圧印加部と、を有する画像形成装置における前記転写電圧の制御方法であって、
前記感光体ドラムの表面電位の変化量と、この表面電位の変化に応じて変化する前記測定電圧の変化量と、の関係を示す関係式を求めて、これを記憶させる関係式算出ステップと、
前記感光体ドラムの表面電位が任意の電位のときに、前記測定電圧を測定する測定ステップと、
前記関係式と、前記電圧測定部によって測定された測定電圧と、前記測定電圧が測定されたときの前記感光体ドラムの表面電位と、を用いて、前記感光体ドラムの表面電位が基準電位のときに前記電圧測定部によって測定されるであろう測定電圧を推定する推定ステップと、
前記感光体ドラムの表面電位が基準電位の場合の、測定電圧と印加すべき転写電圧との関係に基づき、この関係における測定電圧として、前記推定された測定電圧を用いて、印加すべき転写電圧を決定するステップと、
を含む。
【0011】
本発明の画像形成装置の一つの態様は、
表面にトナー像が形成される感光体ドラムと、
前記感光体ドラムに近接して設けられた転写ローラと、
前記感光体ドラムと前記転写ローラとの間に設けられ、前記感光体ドラムから前記トナー像が転写される中間転写体と、
前記感光体ドラムと前記転写ローラとの間に一定電流を流したときの、前記感光体ドラムと前記転写ローラとの間の電圧を測定して測定電圧を得る電圧測定部と、
前記感光体ドラムと前記転写ローラとの間に転写電圧を印加する電圧印加部と、
を有する画像形成装置であって、
前記感光体ドラムの表面電位が基準電位の場合の、前記測定電圧と印加すべき転写電圧との関係が記憶された記憶部と、
前記感光体ドラムの表面電位が任意の電位の条件下で前記電圧測定部によって測定された測定電圧を、前記感光体ドラムの表面電位が前記基準電位の条件下で前記電圧測定部によって測定されるであろう推定測定電圧に変換する推定部と、
前記推定部によって得られた前記推定測定電圧と、前記記憶部に記憶された前記関係とを用いて、前記電圧印加部によって印加されるべき転写電圧を決定する転写電圧決定部と、
を具備する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、感光体ドラムと中間転写ベルトとの間のトナー面に所望値の電流を流すことができるような一次転写電圧を短時間で求めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態による画像形成装置の要部構成を示す図
【図2】感光体ドラムと転写ローラとの間に一定電流を流して、感光体ドラムと転写ローラとの間の電圧を測定するための構成を示す図
【図3】感光体ドラムの表面電位V0と、測定電圧Vmと、抵抗値Rtとの関係を示す図
【図4】感光体ドラムの表面電位V0と、測定電圧Vmと、抵抗値Rtとの関係を示す図
【図5】αとRtとの関係を示す図
【図6】感光体ドラムの表面電位が基準感光体電位に設定されている場合における、測定電圧と、その測定電圧が得られたときに一次転写部に印加すべき一次転写電圧と、の関係を示す対応テーブルの説明に供する図
【図7】感光体ドラムと転写ローラとの間に電圧を印加するための構成を示す図
【図8】画像形成装置の制御系及び測定系の構成例を示すブロック図
【図9】感光体ドラムの表面電位V0と、測定電圧Vmと、抵抗値Rtとの関係を示す図
【図10】抵抗値Rtによってαが変動する様子を示した図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
[1]全体構成
図1は本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。
【0016】
図1に示す画像形成装置1は、原稿に形成されているカラー画像を読み取って取得された画像データ、又は、ネットワークを介して外部の情報機器(例えばパーソナルコンピュータ)から入力された画像データに基づいて、用紙に色を重ね合わせることにより画像を形成する。画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応する感光体ドラム43Y、43M、43C、43Kを被転写体(画像形成装置1では中間転写ベルト47a)の走行方向に直列に配置され、被転写体に一回の手順で各色トナー像を順次転写させる、タンデム方式の画像形成装置である。
【0017】
画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、搬送部50、定着装置60、及び制御部70を備えて構成される。
【0018】
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成されており、画像形成装置1の各ブロック(画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、搬送部50、定着装置60等)の動作を集中制御する。
【0019】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11及びスキャナ12等を備えて構成される。
【0020】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿dを搬送機構により搬送してスキャナ12へ送り出す。画像読取部10は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0021】
スキャナ12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサ12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10によって読み取られた画像には、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0022】
操作表示部20は、タッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部70から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部70に出力する。
【0023】
画像処理部30は、アナログデジタル(A/D)変換処理を行う回路及びデジタル画像処理を行う回路等を備えて構成される。画像処理部30は、画像読取部10からのアナログ画像信号にA/D変換処理を施すことによりデジタル画像データ(RGB信号)を生成する。また、画像処理部30は、このデジタル画像データに、色変換処理、初期設定又はユーザ設定に応じた補正処理(シェーディング補正等)、及び圧縮処理等を施す。これらの処理が施されたデジタル画像データ(YMCK信号)に基づいて、画像形成部40が制御される。
【0024】
画像形成部40は、異なる色成分Y、M、C、Kに対応して設けられた、露光装置41Y、41M、41C、41K、現像装置42Y、42M、42C、42K、感光体ドラム43Y、43M、43C、43K、帯電装置44Y、44M、44C、44K、クリーニング装置45Y、45M、45C、45K、一次転写ローラ46Y、46M、46C、46K、及び中間転写ユニット47等を備えて構成される。
【0025】
画像形成部40のY成分用のユニットにおいて、帯電装置44Yは、感光体ドラム43Yを帯電させる。露光装置41Yは、例えば半導体レーザで構成され、感光体ドラム43Yに対してY成分に対応するレーザ光を照射する。これにより、感光体ドラム43Yの表面にY成分の静電潜像が形成される。現像装置42Yは、Y成分の現像剤(例えば、小粒径のトナーと磁性体とからなる二成分現像剤)を収容しており、感光体ドラム43Yの表面にY成分のトナーを付着させることにより、静電潜像を現像する(トナー像の形成)。M成分、C成分、及びK成分用のユニットにおいても、同様にして、対応する感光体ドラム43M、43C、43Kの表面に各色トナー像が形成される。
【0026】
中間転写ユニット47は、複数の支持ローラ47bに被転写体となる無端状の中間転写ベルト47aが張架されて構成される。一次転写ローラ46Y、46M、46C、46Kによって、中間転写ベルト47aが感光体ドラム43Y、43M、43C、43Kに圧接されると、中間転写ベルト47aに各色トナー像が順次重ねて一次転写される。そして、一次転写された中間転写ベルト47aが二次転写ローラ49によって用紙に圧接されると、用紙にトナー像が二次転写される。
【0027】
クリーニング装置45Y、45M、45C、45Kは、一次転写後に感光体ドラム43Y、43M、43C、43Kの表面に残存するトナーを除去する。クリーニング装置48は、二次転写後に中間転写ベルト47aに残存するトナーを除去する。
【0028】
搬送部50は、給紙装置51、搬送機構52、及び排紙装置53等を備えて構成される。給紙装置51は、3つの給紙トレイユニット51a〜51cを備えている。これらの給紙トレイユニット51a〜51cには、用紙の坪量やサイズ等に基づいて識別された規格用紙や特殊用紙Sが予め設定された種類ごとに収容される。給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、レジストローラ52a等の複数の搬送ローラを備えた搬送機構52により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラ52aが配設されたレジスト部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。
【0029】
そして、画像形成部40において、中間転写ベルト47aのトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着装置60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラ53aを備えた排紙装置53により機外の排紙トレイ53bに排紙される。
【0030】
[2]一次転写電圧の設定
本実施の形態の画像形成装置1の特徴は、感光体ドラムと中間転写ベルトとの間に印加する一次転写電圧の設定の仕方にある。なお、以下では、感光体ドラムと中間転写ベルトのことを一次転写部と呼ぶことにする。
【0031】
本実施の形態の画像形成装置1は、図2に示すような、電圧測定のための構成を有する。図2に示した構成は、定電流電源81によって一次転写部に一定電流Iを供給し、そのときの一次転写部の電圧Vmを電圧計82にて測定するものである。ここで、一定電流Iを供給する前後での一次転写部において測定された電圧変化量をΔVmとし、感光体ドラム43の表面電位V0の変化量をΔV0とする。そして、一次転写部に一定電流Iを供給したときの電圧変化量ΔVmが、一次転写部の抵抗値Rtによらず一定であると見なして、次式を満たすαを予め求めておき、それをメモリに記憶させておく。
ΔVm = α×ΔV0 ………(1)
【0032】
つまり、式(1)に示したように、一次転写部の電圧変化量と、感光体ドラム43の表面電位の変化量とを、αを用いて紐付けし、このαを計算で求め、それを記憶しておく。
【0033】
図3は、横軸を抵抗値Rtとし、縦軸を測定電圧Vmとしたときの、感光体ドラム43の表面電位V0と、測定電圧Vmと、抵抗値Rtとの関係を示す図である。この図から、抵抗値Rtが同じであっても表面電位V0が異なれば、測定される電圧Vmも異なることが分かる。これは、抵抗値Rtが同じであっても、表面電位V0が異なれば、トナー面に流れる電流値が異なることを意味する。なお、図におけるV0_baseは感光体ドラムの基準表面電位(以下、基準感光体電位と呼ぶ)を表す。V0_他は基準感光体電位とは異なる感光体ドラム表面電位を表す。
【0034】
図4は、横軸を感光ドラム43の表面電位とし、縦軸を測定電圧としたときの、感光体ドラム43の表面電位V0と、測定電圧Vmと、抵抗値Rtとの関係を示す図である。この図から、次式が成り立つことが分かる。次式において、Vm’は、感光体ドラム43の表面電位が基準表面電位V0_baseのときの測定電圧を示す。
Vm − Vm’ = α × (V0 −V0_base) ………(2)
【0035】
式(2)は、上述した式(1)と等価である。式(2)のαは、図4の直線の傾きを示す。図4から分かるように、直線の傾きαは、抵抗値Rt_1、Rt_2、Rt_3によらず一定である。つまり、αとRtとの関係は、図5に示すようになる。
【0036】
本実施の形態の画像形成装置1は、装置の出荷時、又は、装置の初期動作時に、上述したように、αを求めてこれを記憶させておく。つまり、式(2)に、基準感光体電位V0_baseと、感光体ドラム43の表面電位を基準感光体電位V0_baseに設定した状態で定電流Iを流した時の測定値Vm’と、感光体ドラム43の表面電位をV0に設定して定電流Iを流した時の測定値Vmと、を代入することで、αの値を求める。
【0037】
式(2)を変形すると、次式となる。
Vm’ = Vm −α × (V0 −V0_base) ………(3)
【0038】
本実施の形態の画像形成装置1は、ATVC(Automatic Transfer Voltage Control:
自動転写電圧制御)時には、先ず、一次転写部に定電流Iを流して、そのときの電圧Vmを測定する。そして、この測定電圧Vmと、測定電圧Vmを測定したときに設定していた表面電位V0と、基準感光体電位V0_baseと、予め求められ記憶されていたαと、を式(3)に代入することにより、基準感光体電位V0_baseを設定したときに得られると推定される電圧Vm’を求める。
【0039】
つまり、測定した電圧Vmから、式(3)を用いて、感光体ドラム43の表面電位が基準電位V0_baseのときに測定されるであろう測定電圧Vm’を算出(推定)する。
【0040】
次に、画像形成装置1は、推定した測定電圧Vm’を用いて、印加すべき一次転写電圧を決定する。本実施の形態では、図6に示すようなテーブルが格納されており、このテーブルを用いて、印加すべき一次転写電圧を決定する。図6のテーブルは、感光体ドラム43の表面電位が基準感光体電位V0_baseに設定されている場合における、測定電圧Vmと、その測定電圧Vmが得られたときに一次転写部に印加すべき一次転写電圧Vtと、の関係を示すものである。つまり、測定電圧Vmに適合する一次転写電圧Vtの値が格納されている。
【0041】
本実施の形態の画像形成装置1は、図6のテーブルの測定電圧Vmとして、上記推定された測定電圧Vm’を用いて、一次転写電圧Vtを決定する。
【0042】
このようにすることで、感光体ドラム43の表面電位を基準感光体電位V0_baseに変更することなしに、感光体ドラム43の表面電位が仮に基準感光体電位V0_baseであった場合の仮想的な測定電圧Vm’を式(3)を用いて推定して、所望値の電流を流すことができるような一次転写電圧Vtを求めることができる。この結果、所望値の電流を流すことができるような一次転写電圧Vtを短時間で求めることができるようになる。
【0043】
決定された一次転写電圧Vtは、図7に示すように、定電圧電源83によって一次転写部に印加される。
【0044】
図8は、画像形成装置1における、制御系及び測定系の構成例を示すブロック図である。画像形成装置1は、制御部70と、帯電電圧制御部91と、転写電流/転写電圧制御部92と、転写電圧測定部93と、を有する。
【0045】
制御部70は、CPU、ROM、RAMを有し、画像形成装置1の各ブロック(画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、搬送部50、定着装置60等)の動作を集中制御する。また、制御部70は、一次転写電圧を設定する際の演算等を行う。
【0046】
帯電電圧制御部91は、帯電装置44の電圧を制御することにより、感光体ドラム43の帯電量を制御する。これにより、感光体ドラム43の表面電位が制御される。つまり、上述したような、感光体ドラム43の表面電位を基準表面電位V0_baseにしたり、任意の電位V0にする処理は、主に、帯電電圧制御部91によって制御される。
【0047】
転写電流/転写電圧制御部92は、転写電流及び転写電圧を制御する。具体的には、図2に示したような定電流処理や、図7に示したような定電圧処理を制御する。
【0048】
転写電圧測定部93は、感光体ドラム43と転写ローラ46との間に一定電流を流したときの、感光体ドラム43と転写ローラ46との間の電圧を測定して測定電圧を得る。具体的には、転写電圧測定部93は、図2の電圧計82に相当する。
【0049】
ここで、制御部70のRAMには、図6に示したような、感光体ドラム43の表面電位が基準電位V0_baseの場合の、測定電圧Vmと印加すべき転写電圧Vtとの関係を示すテーブルが記憶されている。
【0050】
また、制御部70は、感光体ドラム43の表面電位が任意の電位V0の条件下で転写電圧測定部93によって測定された測定電圧を、感光体ドラム43の表面電位が基準電位V0_baseの条件下で転写電圧測定部93によって測定されるであろう推定測定電圧Vm’に変換する推定部としての機能を有する。
【0051】
具体的には、制御部70は、前記式(3)に、基準表面電位V0_base、転写電圧測定部93で測定された測定電圧Vm、この電圧測定時の感光体ドラム43の表面電位V0を代入することで、感光体ドラム43の表面電位が基準電位V0_baseのときに転写電圧測定部93によって測定されるであろう測定電圧Vm’を推定する。
【0052】
また、制御部70は、推定した推定測定電圧Vm’と、上記予め記憶したテーブル(図6)とを用いて、転写電圧Vtを決定する転写電圧決定部としての機能を有する。制御部70は、決定した転写電圧Vtを転写電流/転写電圧制御部92に通知する。これにより、一次転写部に印加される一次転写電圧は、制御部70によって決定された転写電圧Vtとなるように制御される。
【0053】
以上をまとめると、本実施の形態の画像形成装置1は、一次転写電圧を次の手順で決定する。
【0054】
ステップ1: 感光体ドラム43の表面電位の変化量と、この表面電位の変化に応じて変化する測定電圧Vmの変化量と、の関係を示す関係式を求めて、これを記憶する。つまり、上述したように、式(2)のαを求めて、式(2)を記憶しておく。
【0055】
ステップ2: 感光体ドラム43の表面電位V0が任意のときに、一次転写部に一定電流を流し、そのときの電圧Vmを転写電圧測定部93によって測定する。
【0056】
ステップ3: 記憶しておいた式(2)と、転写電圧測定部93によって測定された測定電圧Vmと、測定電圧Vmが測定されたときの感光体ドラムの表面電位V0と、を用いて、感光体ドラム43の表面電位が基準電位V0_baseのときに電圧測定部63によって測定されるであろう測定電圧Vm’を推定する。
【0057】
ステップ4: 感光体ドラム43の表面電位が基準電位V0_baseの場合の、測定電圧Vmと印加すべき転写電圧Vtとの関係(つまり図6の関係)に基づき、この関係における測定電圧Vmとして、前記推定された測定電圧Vm’を用いて、印加すべき転写電圧Vtを決定する。
【0058】
これにより、感光体ドラム43の表面電位を基準感光体電位V0_baseに変更することなしに、感光体ドラム43の表面電位が仮に基準感光体電位V0_baseであった場合の仮想的な測定電圧Vm’を式(3)を用いて推定して、所望値の電流を流すことができるような一次転写電圧Vtを短時間で求めて印加できる。
【0059】
なお、上述の実施の形態では、図4で説明したように、感光体ドラム43の表面電位の変化量(V0−V0_base)と、この表面電位の変化に応じて変化する測定電圧の変化量(Vm−Vm’)と、の比を示す直線の傾きαが、抵抗値Rt_1、Rt_2、Rt_3によらず一定である場合について説明した。
【0060】
しかし、本発明はこれに限らず、図9に示すように、直線の傾きαが、抵抗値Rt_1、Rt_2、Rt_3によって変動する場合にも適用できる。因みに、図10は、抵抗値Rtによってαが変動する様子を示したものである。このように、抵抗値によって直線の傾きが変動する場合は、式(2)に代えて、次式を用いればよい。
Vm − Vm’ = f(V0 −V0_base) ………(4)
【0061】
但し、f()はV0 −V0_baseを変数とする関数を表す。この関数をαを求めたのと同様にして、予め求めておけばよい。そして、求めておいた式(4)と、転写電圧測定部93によって測定された測定電圧Vmと、測定電圧Vmが測定されたときの感光体ドラム43の表面電位V0と、を用いて、感光体ドラム43の表面電位が基準電位V0_baseのときに電圧測定部93によって測定されるであろう測定電圧Vm’を推定すればよい。
【0062】
例えば、f(x)=ax+bx、 x=V0 −V0_baseと定義した場合には、aとbとを予め求めておけばよい。因みに、上述の実施の形態は、関数f()がf(x)=α×xである例である。関数f()は、例えば指数関数でもよく、その他の関数でもよい。
【0063】
また、上述の実施の形態では、最終的な転写電圧Vtを決定するために、図6に示したテーブルを用いたが、最終的な転写電圧Vtの決定の仕方はこれに限らない。要は、感光体ドラム43の表面電位が基準電位V0_baseの場合の、測定電圧と印加すべき転写電圧との関係を予め保持しておき、それを用いて転写電圧Vtを決定すればよい。
【0064】
以上、本発明の各実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記各装置の構成及び動作についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0065】
1 画像形成装置
43(43Y、43M、43C、43K) 感光体ドラム
46(46Y、46M、46C、46K) 一次転写ローラ
47a 中間転写ベルト
70 制御部
81 定電流電源
82 電圧計
83 定電圧電源
91 帯電電圧制御部
92 転写電流/転写電圧制御部
93 転写電圧測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にトナー像が形成される感光体ドラムと、前記感光体ドラムに近接して設けられた転写ローラと、前記感光体ドラムと前記転写ローラとの間に設けられ、前記感光体ドラムから前記トナー像が転写される中間転写体と、前記感光体ドラムと前記転写ローラとの間に一定電流を流したときの、前記感光体ドラムと前記転写ローラとの間の電圧を測定する電圧測定部と、前記感光体ドラムと前記転写ローラとの間に転写電圧を印加する電圧印加部と、を有する画像形成装置における前記転写電圧の制御方法であって、
前記感光体ドラムの表面電位の変化量と、この表面電位の変化に応じて変化する前記測定電圧の変化量と、の関係を示す関係式を求めて、これを記憶させる関係式算出ステップと、
前記感光体ドラムの表面電位が任意の電位のときに、前記測定電圧を測定する測定ステップと、
前記関係式と、前記電圧測定部によって測定された測定電圧と、前記測定電圧が測定されたときの前記感光体ドラムの表面電位と、を用いて、前記感光体ドラムの表面電位が基準電位のときに前記電圧測定部によって測定されるであろう測定電圧を推定する推定ステップと、
前記感光体ドラムの表面電位が基準電位の場合の、測定電圧と印加すべき転写電圧との関係に基づき、この関係における測定電圧として、前記推定された測定電圧を用いて、印加すべき転写電圧を決定するステップと、
を含む画像形成装置における転写電圧制御方法。
【請求項2】
前記関係式は、
前記感光体ドラムの基準表面電位をV0_base、前記感光体ドラムの任意の表面電位をV0、前記感光体ドラムの表面電位が基準表面電位V0_baseのときの測定電圧をVm’、前記感光体ドラムの表面電位が前記任意の電位V0のときの測定電圧をVmとしたとき、次式により表され、
Vm − Vm’ = f(V0 −V0_base) ………(1)
但し、前記f()はV0 −V0_baseを変数とする関数を表し、この関数f()は前記関数式算出ステップで求められ、
前記推定ステップでは、前記式(1)に、前記基準表面電位V0_base、前記測定ステップ時の前記感光体ドラムの表面電位V0、前記測定ステップで測定された測定電圧Vmを代入することで、前記感光体ドラムの表面電位が基準電位のときに前記電圧測定部によって測定されるであろう測定電圧Vm’を推定する、
請求項1に記載の転写電圧制御方法。
【請求項3】
表面にトナー像が形成される感光体ドラムと、
前記感光体ドラムに近接して設けられた転写ローラと、
前記感光体ドラムと前記転写ローラとの間に設けられ、前記感光体ドラムから前記トナー像が転写される中間転写体と、
前記感光体ドラムと前記転写ローラとの間に一定電流を流したときの、前記感光体ドラムと前記転写ローラとの間の電圧を測定して測定電圧を得る電圧測定部と、
前記感光体ドラムと前記転写ローラとの間に転写電圧を印加する電圧印加部と、
を有する画像形成装置であって、
前記感光体ドラムの表面電位が基準電位の場合の、前記測定電圧と印加すべき転写電圧との関係が記憶された記憶部と、
前記感光体ドラムの表面電位が任意の電位の条件下で前記電圧測定部によって測定された測定電圧を、前記感光体ドラムの表面電位が前記基準電位の条件下で前記電圧測定部によって測定されるであろう推定測定電圧に変換する推定部と、
前記推定部によって得られた前記推定測定電圧と、前記記憶部に記憶された前記関係とを用いて、前記電圧印加部によって印加されるべき転写電圧を決定する転写電圧決定部と、
を具備する画像形成装置。
【請求項4】
前記推定部は、
前記感光体ドラムの表面電位の変化量と、この表面電位の変化に応じて変化する前記測定電圧の変化量と、の関係を示す関係式と、
前記電圧測定部によって測定された測定電圧と、
前記測定電圧が測定されたときの前記感光体ドラムの表面電位と、
を用いて、前記感光体ドラムの表面電位が基準電位のときに前記電圧測定部によって測定されるであろう測定電圧を推定する、
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記関係式は、
前記感光体ドラムの基準表面電位をV0_base、前記感光体ドラムの任意の表面電位をV0、前記感光体ドラムの表面電位が基準表面電位V0_baseのときの測定電圧をVm’、前記感光体ドラムの表面電位が前記任意の電位V0のときの測定電圧をVmとしたとき、次式により表され、
Vm − Vm’ = f(V0 −V0_base) ………(2)
但し、前記f()はV0 −V0_baseを変数とする関数を表し、
前記推定部では、前記式(2)に、前記基準表面電位V0_base、前記測定部で測定された測定電圧Vm、この電圧測定時の前記感光体ドラムの表面電位V0を代入することで、前記感光体ドラムの表面電位が基準電位のときに前記電圧測定部によって測定されるであろう測定電圧Vm’を推定する、
請求項4に記載の画像形成装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−25181(P2013−25181A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160930(P2011−160930)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】