説明

軸受スライド機構を有するエンコーダ

【課題】本発明は、符号板を有する中空軸と軸受を一体化した軸受ユニットを基台に対して軸方向移動可能とし、受光素子と符号板との間の隙間を調整可能とすることを目的とする。
【解決手段】本発明による軸受スライド機構を有するエンコーダは、基台(1)に対し、符号板(5)と中空軸(4)と軸受(2)からなる軸受ユニット(20)を軸方向移動可能に設け、プリント基板(7)に設けた受光素子(28)と符号板(5)との間の隙間(G)を調整可能とする構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受スライド機構を有するエンコーダに関し、特に、符号板を有する中空軸と軸受を一体化した軸受ユニットを基台に対して軸方向移動可能とし、受光素子と符号板との間の隙間を調整可能とするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のエンコーダとしては、例えば、特許文献1から4で示される構成を挙げることができるが、何れも、図示していないが、基台と軸受とは、強嵌合によって一体に結合されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−204572号公報
【特許文献2】特開昭62−278408号公報
【特許文献3】米国特許第5912541号明細書
【特許文献4】特開平9−105643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエンコーダは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、中空軸は軸受に固定され、軸受は基台に固定されているため、組立て後に、受光素子と符号板との間の隙間を調整することはできず、組立て時のバラツキによる受光素子と符号板との間の隙間はわずかにバラツクことがあり、歩留まり及び品質の向上は困難であった。
また、符号板と受光素子間の隙間を面挽きの加工精度により管理していたが、加工精度にバラツキがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による軸受スライド機構を有するエンコーダは、符号板を一端に固定した中空軸及び前記中空軸の外周に嵌合された一対の軸受けとからなる軸受ユニットと、前記軸受ユニットを嵌入するための嵌入孔を有する基台と、前記基台に設けられた発光素子と、前記基台の一端面側に設けられ内面に受光素子を有するプリント基板と、前記基台の外周面に設けられ前記プリント基板を覆うためのカップ状カバー部材と、を備え、前記軸受ユニットは前記嵌入孔内で軸方向に沿って移動可能としたことにより、前記符号板と受光素子間の隙間は調整自在である構成であり、また、前記基台と軸受ユニットとは、接着剤で固定されている構成であり、また、前記基台と軸受ユニットとは、前記基台の側部のねじ孔を貫通したねじが前記軸受ユニットのユニット外周面に当接していることにより、固定されている構成であり、また、前記基台の他端面には、前記嵌入孔の孔中心に向けて延設されたフランジ部が形成されており、前記フランジ部は前記嵌入孔内における前記軸受ユニットの軸方向移動のストッパとなる構成であり、また、前記プリント基板に接続されたリード線は、前記カップ状カバー部材の外径の接線方向に沿って引き出されている構成であり、また、前記基台は、樹脂で形成され、前記軸受ユニットは金属で形成されている構成である。
【発明の効果】
【0006】
本発明による軸受スライド機構を有するエンコーダは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、符号板を一端に固定した中空軸及び前記中空軸の外周に嵌合された一対の軸受けとからなる軸受ユニットと、前記軸受ユニットを嵌入するための嵌入孔を有する基台と、前記基台に設けられた発光素子と、前記基台の一端面側に設けられ内面に受光素子を有するプリント基板と、前記基台の外周面に設けられ前記プリント基板を覆うためのカップ状カバー部材と、を備え、前記軸受ユニットは前記嵌入孔内で軸方向に沿って移動可能としたことにより、前記符号板と受光素子間の隙間は調整自在であることにより、組立て後においても、軸受ユニットを軸方向移動可能であり、歩留まり及び品質の向上を得ることができる。また、面挽き工程を省略することができる。
また、前記基台と軸受ユニットとは、接着剤で固定されていることにより、受光素子と符号板との間の隙間を調整後に軸受ユニットの固定を行うことができる。
また、前記基台と軸受ユニットとは、前記基台の側部のねじ孔を貫通したねじが前記軸受ユニットのユニット外周面に当接していることにより、固定されていることにより、前述の接着剤を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
また、前記基台の他端面には、前記嵌入孔の孔中心に向けて延設されたフランジ部が形成されており、前記フランジ部は前記嵌入孔内における前記軸受ユニットの軸方向移動のストッパとなることにより、軸受ユニットの移動時の位置制限を行うことができる。
また、前記プリント基板に接続されたリード線は、前記カップ状カバー部材の外径の接線方向に沿って引き出されていることにより、エンコーダのリード線を外部に導出する際のスペースを小さくし、エンコーダ取付スペースを最小化できる。
また、前記基台は、樹脂で形成され、前記軸受ユニットは金属で形成されていることにより、軸受の金属による電蝕を防止し、信頼性の向上を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、符号板を有する中空軸と軸受を一体化した軸受ユニットを基台に対して軸方向移動可能とし、受光素子と符号板との間の隙間を調整可能とした軸受スライド機構を有するエンコーダを提供することを目的とする。
【実施例】
【0008】
以下、図面と共に本発明による軸受スライド機構を有するエンコーダの好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。
図1において符号1で示されるものはエンコーダの基台であり、この基台1の嵌入孔3内には本発明による軸受ユニット20が軸方向Aに沿って移動可能な状態で嵌入されている。
【0009】
前記軸受ユニット20は、図2に示されるように、中空軸4と、前記中空軸4の一端4aに設けられた符号板5と、前記中空軸4の外周4bに嵌合された一対の軸受2と、前記各軸受2の外周に設けられた軸受保持筒21とから構成されている。
前記中空軸4の外周4bに螺合された締め用ナット22が軸受2に当接することにより、各軸受2と中空軸4とが一体状に結合されている。
【0010】
前記基台1の一部に形成された凹部23内には、LEDからなる発光素子24が設けられ、この凹部23に隣接する位置には、ピン25が植設して設けられ、前記基台1の一端面26に形成されたボス26aに一部7aが嵌入支持されたプリント基板7の他部7bは、前記ピン25に接続されることにより、輪状の前記プリント基板7は前記符号板5に対して所定の間隔Dを保持して固定配設されている。尚、前記ボス26aによりプリント基板7を基台1に位置決めしているため、プリント基板7の取付けが極めて容易かつ確実となる。
【0011】
前記プリント基板7の内面27には、前記発光素子24及び符号板5に対して対向するように配設した受光素子28が設けられており、前記発光素子24からの光が符号板5を通過して前記受光素子28に受光され、前記符号板5の符号信号が読み取られるように構成されている。
【0012】
前記受光素子28と符号板5とは、互いに極めて接近した状態で対向しており、この符号板5を通過した光は、周辺に極力漏れることのない状態で受光素子28で受光され、クロストローク等の問題の発生を伴うことなく良好なS/N比のエンコーダ信号が得られるように構成されている。
【0013】
前記軸受ユニット20は軸方向Aに沿って、前記嵌入孔3内でユニット外周面30が移動できるように構成されているため、この軸受ユニット20を矢印Aの方向に移動させることにより、前記受光素子28と符号板5との間のわずかな隙間Gを微調整することができる。尚、前記微調整後は、嵌入孔3と軸受ユニット20との間に接着剤35を注入もしくは予め軸受保持筒21の外周に塗布することにより、前記軸受ユニット20は前記基台1の嵌入孔3内に固定される。
【0014】
前記基台1の他端面31側には、前記嵌入孔3の孔中心32に向けて延設されたフランジ部33が形成されており、前記フランジ部33は前記嵌入孔3内における軸受ユニット20の軸方向移動のストッパ34となるように構成されている。
【0015】
前記基台1の外周面1aには、全体形状がキャップ型をなすカップ状カバー部材6が設けられ、前記プリント基板7及び符号板5が覆われるように構成されている。
【0016】
また、他の形態として、前記基台1と軸受ユニット20の微調整後の固定方法は、前述の接着剤35による方法の他に、例えば、図3で示されるように、前記基台1の側部40に形成され半径方向に沿うねじ孔41が前記嵌入孔3に連通しており、このねじ孔41内に螺入かつ貫通されたねじ42の先端は、前記軸受ユニット20のユニット外周面30に当接することにより、基台1に軸受ユニット20が固定されている。
【0017】
前記プリント基板7に接続されたリード線8は、前記カップ状カバー部材6の外径6aの接線方向8aに沿って引き出されているため、平面的にみて、リード線8を引き出すためのスペースが従来よりもやや少なくて済むことになる。
【0018】
前記基台1は、アルミニウム等の金属で形成することもできるが、この基台1を樹脂で形成し、前記軸受ユニット20を金属で形成した場合には、各軸受2の電蝕による劣化を防止することができる。
また、図3の他の形態としては、図4に示されるように、前記基台1の一部を符号板5の方向に延出させる基板押え爪50を形成し、この基板押え爪50によってプリント基板7を係止して位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による軸受スライド機構を有するエンコーダを示す断面図である。
【図2】図1の要部を示す断面図である。
【図3】図1の要部の他の形態を示す半断面図である。
【図4】図1の平面図である。
【図5】従来構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 基台
1a 外周面
2 軸受
3 嵌入孔
A 軸方向
4 中空軸
4b 外周
5 符号板
6 カップ状カバー部材
6a 外径
7 プリント基板
7a 一部
7b 他部
8 リード線
8a 接線方向
20 軸受ユニット
21 軸受保持筒
23 凹部
24 発光素子
25 ピン
26 一端面
26a ボス
27 内面
28 受光素子
30 ユニット外周面
31 他端面
32 孔中心
33 フランジ部(ストッパ34)
40 側部
41 ねじ孔
42 ねじ
50 基板押え爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号板(5)を一端(4a)に固定した中空軸(4)と、前記中空軸(4)の外周に嵌合された一対の軸受(2)とからなる軸受ユニット(20)と、前記軸受ユニット(20)を嵌入するための嵌入孔(3)を有する基台(1)と、前記基台(1)に設けられた発光素子(24)と、前記基台(1)の一端面(26)側に設けられ内面(27)に受光素子(28)を有するプリント基板(7)と、前記基台(1)の外周面(1a)に設けられ前記プリント基板(7)を覆うためのカップ状カバー部材(6)と、を備え、
前記軸受ユニット(20)は前記嵌入孔(3)内で軸方向(A)に沿って移動可能としたことにより、前記符号板(5)と受光素子(28)間の隙間(G)は調整自在であることを特徴とする軸受スライド機構を有するエンコーダ。
【請求項2】
前記基台(1)と軸受ユニット(20)とは、接着剤(35)で固定されていることを特徴とする請求項1記載の軸受スライド機構を有するエンコーダ。
【請求項3】
前記基台(1)と軸受ユニット(20)とは、前記基台(1)の側部(40)のねじ孔(41)を貫通したねじ(42)が前記軸受ユニットのユニット外周面(30)に当接していることにより、固定されていることを特徴とする請求項1記載の軸受スライド機構を有するエンコーダ。
【請求項4】
前記基台(1)の他端面(31)には、前記嵌入孔(3)の孔中心(32)に向けて延設されたフランジ部(33)が形成されており、前記フランジ部(33)は前記嵌入孔(3)内における前記軸受ユニット(20)の軸方向移動のストッパ(34)となることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の軸受スライド機構を有するエンコーダ。
【請求項5】
前記プリント基板(7)に接続されたリード線(8)は、前記カップ状カバー部材(6)の外径(6a)の接線方向(8a)に沿って引き出されていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の軸受スライド機構を有するエンコーダ。
【請求項6】
前記基台(1)は、樹脂で形成され、前記軸受ユニット(20)は金属で形成されていることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の軸受スライド機構を有するエンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−32290(P2010−32290A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193217(P2008−193217)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】