説明

軸受ダンパ

【課題】回転機械の回転軸の振動振幅によらず所望のダンパの減衰特性を発現することができる軸受ダンパを提供することにある。
【解決手段】回転機械のロータ2を回転可能に支持する軸受パッド7と、軸受パッド7の外周側に配置される円環状の軸受ハウジング内輪4と、軸受ハウジング内輪4の外周側に装着され、軸受ハウジング内輪4に対しダンパ隙間19を有して配置された軸受ハウジング外輪5とを具備し、ダンパ隙間19に開口すると共に、軸受パッド7に対向する内周面に開口する油路13が軸受ハウジング内輪4に設けられ、ダンパ隙間19に開口すると共に、軸受パッド7に対向する内周面4bに開口する油路16と、ダンパ隙間19に開口すると共に、回転機械のロータ2に対向する内周面4cに開口する油路17,18が軸受ハウジング内輪4に設けられるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受ダンパに関し、特にガスタービンなどの軸系が大きい回転機械、ポンプや水車など低粘度の流体を用いた回転機械などに用いて好適な軸受ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
軸受ダンパとして、軸受背面にダンパを配置するスクイズフィルムダンパがある。この種の軸受ダンパの一例について、図8を用いて説明する。図8に示すように、軸受ダンパ100は、ガスタービン、ポンプ、水車などの回転機械の軸受台101に取り付けられ、前記回転機械のロータ(回転軸)102を回転可能に支持する機器である。軸受ダンパ100は、円環状の軸受ハウジング103と、軸受ハウジング103に内嵌される、4個の軸受パッド107とを備えている。軸受ハウジング103は、軸受ハウジング内輪104と、軸受ハウジング内輪104の外周に支持棒106により装着された円弧状の軸受ハウジング外輪105とで構成される。軸受パッド107は横断面にて円弧状に形成されている。
【0003】
軸受台101には、軸方向へ延在する給油ライン111に連通する給油溝112が形成されている。軸受ハウジング外輪105には、軸受ハウジング内輪104に対向する内周面側における軸方向両端部側のそれぞれに位置して溝部115,116が形成されている。軸受ハウジング外輪105には、外周面側にて軸方向略中央に開口すると共に、内周面側にて溝部115,116のそれぞれに開口する油路113,114が形成されている。軸受ハウジング内輪104には、溝部115,116のそれぞれに開口すると共に、軸受パッド107に対向する内周面側に開口する油路117,118が形成されている。軸受ハウジング内輪104の外周面と軸受ハウジング105の内周面との間に、ダンパ隙間(環状隙間)119が形成されている。
【0004】
よって、作動油を給油ライン111に供給すると、作動油が給油溝112、油路113,114、溝部115,116、油路117,118を介して、軸受パッド107の外周面側に流通する。そして、作動油が軸受パッド107の内周面側へ流通して、軸受パッド107と回転機械のロータ102との間の軸受隙間108に油膜が形成されるようになっている。また、作動油が溝部115,116を介してダンパ隙間119へも流通するようになっている。このダンパ隙間119では、作動油が軸方向前後から同一の圧力で供給されている。そのため、作動油がダンパ隙間119に満たされると、作動油がダンパ隙間119内にて淀んだ状態となっている。
【0005】
上述した構成の軸受ダンパにおいては、回転機械のロータ102の回転により振動すると、軸受ハウジング内輪104とともに軸受ハウジング外輪105が半径方向に振動し、ダンパ隙間119の半径方向の間隔が相対的に変化することにより、ダンパ隙間119に存在する作動油などの流体の粘性による振動減衰効果によって軸系の振動エネルギを吸収し、軸系にダンピングを与える構造となっている。
【0006】
なお、スクイズフィルムダンパが記載されている先行技術文献としては、例えば次のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−141545号公報(例えば、[図1]など参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、軸受ダンパのダンパ特性はダンパ隙間を流れる作動油(液体)のレイノルズ数により影響を受けるが、レイノルズ数を特定するには作動油の速度を把握する必要がある。作動油の代表的な速度が軸(回転機械のロータ)の振動速度(振動振幅)であり、この速度によりレイノルズ数が変わり、このレイノルズ数に応じてダンパ特性も変わっている。従来の軸受ダンパでは軸系が小さくレイノルズ数が非常に小さいためダンパ特性には影響を与えていなかった。しかしながら、上述した特許文献1に記載のスクイズフィルムダンパや上述した構成の軸受ダンパ100では、作動油がダンパ隙間に封入されているか、もしくはダンパ隙間119にて淀んでいる状態であり、軸の振動状態によって作動油の流動状態が大きく変化する場合には、レイノルズ数の予測が非常に難しくなることがあった。特に、軸系が大きくなったりダンパ隙間が広くなったりするとそれに応じてレイノルズ数が大きくなり、レイノルズ数が大きい領域では、軸の振動速度に応じて発生する減衰効果が流体慣性力のために増大し、逆にダンパ隙間が拘束され動きにくくなることで軸振動安定性が低下してしまう可能性があった。
【0009】
以上のことから、本発明は、前述した課題を解決するために為されたもので、回転機械の回転軸の振動振幅によらず所望のダンパの減衰特性を発現することができる軸受ダンパを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決する第1の発明に係る軸受ダンパは、
回転機械の回転軸を回転可能に支持する軸受部と、
前記軸受部の外周側に配置される円環状の軸受ハウジング内輪と、
前記軸受ハウジング内輪の外周側に装着され、前記軸受ハウジング内輪に対し隙間を有して配置された軸受ハウジング外輪とを具備し、
前記隙間に開口する油供給路が前記軸受ハウジング外輪に設けられ、
前記隙間に開口すると共に、前記軸受部に対向する内周面に開口する第1の油排出路と、前記隙間に開口すると共に、前記回転機械の回転軸に対向する内周面に開口する第2の油排出路とが、前記軸受ハウジング内輪に設けられた
ことを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決する第2の発明に係る軸受ダンパは、
第1の発明に係る軸受ダンパであって、
前記油供給路が、前記隙間における軸方向の一方の端部に連通し、
前記第1の油排出路が、前記隙間における軸方向の一方の端部に連通し、
前記第2の油排出路が、前記隙間における軸方向の他方の端部に連通する
ことを特徴とする。
【0012】
上述した課題を解決する第3の発明に係る軸受ダンパは、
第1または第2の発明に係る軸受ダンパであって、
前記軸受ハウジング外輪に対向する前記軸受ハウジング内輪の外周面に、軸方向に沿って延在する溝部が周方向に亘って複数形成されている
ことを特徴とする。
【0013】
上述した課題を解決する第4の発明に係る軸受ダンパは、
回転機械の回転軸を回転可能に支持する軸受部と、
前記軸受部の外周側に配置される円環状の軸受ハウジング内輪と、
前記軸受ハウジング内輪の外周側に装着され、前記軸受ハウジング内輪に対し隙間を有して配置された軸受ハウジング外輪とを具備し、
前記隙間における軸方向中央に開口する油供給路が前記軸受ハウジング外輪に設けられ、
前記隙間における軸方向の一方の端部に開口すると共に、前記軸受部に対向する内周面に開口する第1の油排出路と、前記隙間における軸方向の他方の端部に開口すると共に、前記軸受部に対向する内周面に開口する第2の油排出路とが、前記軸受ハウジング内輪に設けられた
ことを特徴とする。
【0014】
上述した課題を解決する第5の発明に係る軸受ダンパは、
第4の発明に係る軸受ダンパであって、
前記軸受ハウジング外輪に対向する前記軸受ハウジング内輪の外周面に、軸方向に沿って延在する溝部が周方向に亘って複数形成されている
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る軸受ダンパによれば、隙間に作動油を一定の速度にて流通させることができ、回転機械の回転軸の振動による隙間における作動油の流速の変動に対して、隙間を流通する作動油の速度を大きくなるように設定することで、前記回転機械の回転軸の振動振幅によらず所望のダンパの減衰特性を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一番目の実施形態に係る軸受ダンパの断面図である。
【図2】軸受ダンパのダンパ隙間での作動油の流れを説明するための図である。
【図3】本発明の第二番目の実施形態に係る軸受ダンパの断面図である。
【図4】軸受ダンパのダンパ隙間での作動油の流れを説明するための図である。
【図5】本発明の第三番目の実施形態に係る軸受ダンパの側面図である。
【図6】軸受ダンパが具備する軸受ハウジング内輪の説明図である。
【図7】軸受ダンパのダンパ隙間での作動油の流れを説明するための図である。
【図8】従来の軸受ダンパの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る軸受ダンパについて、各実施形態にて具体的に説明する。
【0018】
[第一番目の実施形態]
本発明の第一番目の実施形態に係る軸受ダンパについて、図1および図2を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る軸受ダンパ10は、図1に示すように、ガスタービン、ポンプ、水車などの回転機械の軸受台1に取り付けられ、前記回転機械のロータ(回転軸)2を回転可能に支持する機器である。軸受ダンパ10は、円環状の軸受ハウジング3と、軸受ハウジング3に内嵌される、4個の軸受パッド7とを備えている。軸受ハウジング3は、軸受ハウジング内輪4と、軸受ハウジング内輪4の外周に支持棒6により装着され、軸受ハウジング内輪4の軸方向略中央部の外周面4aに対しダンパ隙間(環状隙間)19を有して配置された円弧状の軸受ハウジング外輪5とで構成される。軸受パッド7は横断面にて円弧状に形成されている。
【0020】
軸受台1には、軸方向へ延在する給油ライン11に連通する給油溝12が形成されている。軸受ハウジング外輪5には、軸受ハウジング内輪4に対向する内周面5a側における軸方向両端部側のそれぞれに位置して溝部14,15が形成されている。軸受ハウジング外輪5および軸受台1には、溝部14に開口すると共に、給油溝12に開口する油路13が形成されている。軸受ハウジング内輪4には、外周面4a側にて溝部14に開口すると共に、軸受パッド7に対向する内周面4b側に開口する油路16が形成されている。軸受ハウジング内輪4には、溝部15に開口し軸方向に延在する油路17と、油路17に連通すると共に、径方向に延在し、回転機械のロータ2に対向する内周面4cに開口する油路18とが形成されている。すなわち、油路13がダンパ隙間19に作動油を供給する油供給路として構成される。油路16がダンパ隙間19から軸受パッド7へ作動油を排出する第1の油排出路として構成される。油路17と油路18が、ダンパ隙間19から回転機械の回転軸2に作動油を排出する第2の油排出路として構成される。
【0021】
よって、作動油を給油ライン11に供給すると、作動油が給油溝12、油路13、溝部14、油路16を介して、軸受パッド7の外周面側に流通する。そして、作動油が軸受パッド7の内周面側へ流通して、軸受パッド7と回転機械のロータ2との間の軸受隙間8に油膜が形成されるようになっている。また、作動油が溝部14を介してダンパ隙間19へも流通するようになっている。具体的には、図2に示すように、作動油が油路13の流体入口13aから溝部14に供給されると、作動油が溝部14に沿って周方向へ流通すると共に、ダンパ隙間19へ流通する。ダンパ隙間19に流通した作動油が軸方向へ流通して溝部15に流通する。溝部15に流通した作動油が溝部15に沿って周方向へ流通し、流体出口17aを通って、油路17へ流通する。そして、作動油は、油路18を通って系外へ排出される。このようにダンパ隙間19にあっては、作動油が軸方向の一方の端部(溝部14)側からのみ供給される構造となっており、ダンパ隙間19の軸方向の両端部にて圧力差ができるため、作動油がダンパ隙間19にて軸方向へ常に一定の速度にて流通することになる。
【0022】
したがって、本実施形態に係る軸受ダンパ10によれば、作動油がダンパ隙間19にて一定の速度で流通することになり、回転機械のロータ2の振動によるダンパ隙間19における作動油の流速の変動に対して、ダンパ隙間19を流通する作動油の速度を大きくなるように設定することで、ダンパのレイノズル数が回転機械のロータ2の振動によらずに一定となり、振動振幅によらず所望のダンパの減衰特性を発現することができる。
【0023】
[第二番目の実施形態]
本発明の第二番目の実施形態に係る軸受ダンパについて、図3および図4を参照して説明する。本実施形態では、上述した第一番目の実施形態に係る軸受ダンパが具備する軸受ハウジング外輪および軸受ハウジング内輪に設けられた油路を変更した構成であって、それ以外は同一の機器を具備する。本実施形態では、第一番目の実施形態に係る軸受ダンパと同じ機器には同一符号を付記しその説明を省略する。
【0024】
本実施形態に係る軸受ダンパ20は、図3に示すように、軸受ハウジング内輪4に対向する内周面5a側における軸方向中央に位置して溝部22が形成された軸受ハウジング外輪5を具備する。軸受ハウジング外輪5および軸受台1には、溝部22に開口すると共に、給油溝12に開口する油路21が形成されている。油路21の流体入口21aは、図4に示すように、軸受ハウジング外輪5の内周面5aにおける周方向にて複数設けられる。軸受ハウジング内輪4には、外周面4a側にて溝部15に開口すると共に、軸受パッド7に対向する内周面4b側に開口する油路23が形成されている。軸受ハウジング外輪5は、軸受ハウジング内輪4の外周に支持棒6により装着され、軸受ハウジング内輪4の軸方向略中央部の外周面4aに対しダンパ隙間(環状隙間)24を有して配置されている。すなわち、油路21がダンパ隙間24に作動油を供給する油供給路として構成される。油路16がダンパ隙間24から軸受パッド7へ作動油を排出する第1の油排出路として構成される。油路23がダンパ隙間24から軸受パッド7へ作動油を排出する第2の油排出路として構成される。
【0025】
よって、作動油を給油ライン11に供給すると、作動油が給油溝12、油路21、溝部22を介して、ダンパ隙間24に流通する。具体的には、図4に示すように、作動油が油路21の流体入口21aから溝部22に供給されると、作動油が溝部22から軸方向両端部側へ流通し、ダンパ隙間24を通って溝部14,15に流通する。溝部14,15に流通した作動油が、油路16,23を通って軸受パット7の外周面側に流通する。そして、作動油が軸受パッド7の内周面側へ流通して、軸受パッド7と回転機械のロータ2との間の軸受隙間8に油膜が形成されるようになっている。このようにダンパ隙間24にあっては、作動油が軸方向の中央部からのみ供給される構造となっており、ダンパ隙間24における軸方向の中央部とその両端部にて圧力差ができるため、作動油がダンパ隙間24にて軸方向中央部から両端部のそれぞれへ常に一定の速度にて流通することになる。
【0026】
したがって、本実施形態に係る軸受ダンパ20によれば、上述した第一番目の実施形態に係る軸受ダンパ10と同様、作動油がダンパ隙間24にて一定の速度で流通することになり、回転機械のロータ2の振動によるダンパ隙間24における作動油の流速の変動に対して、ダンパ隙間24を流通する作動油の速度を大きくなるように設定することで、ダンパのレイノズル数が回転機械のロータ2の振動によらずに一定となり、振動振幅によらず所望のダンパの減衰特性を発現することができる。また、ダンパ隙間24に作動油を供給する油路21の流体入口21aを周方向に亘って複数を設けたことにより、周方向にて作動油の速度分布の偏りが抑制される。
【0027】
さらに、作動油がダンパ隙間24を流通する距離は、ダンパ隙間19の軸方向の一方の端部(溝部14)側から他方の端部(溝部15)側へ流れる第一番目の実施形態に係る軸受ダンパ10と比べて短くなるため、作動油の流通抵抗が少なくなり、所望のダンパ特性をより安定して発現することができる。
【0028】
[第三番目の実施形態]
本発明の第三番目の実施形態に係る軸受ダンパについて、図5、図6、および図7を参照して説明する。本実施形態では、上述した第一番目の実施形態に係る軸受ダンパが具備する軸受ハウジング内輪の一部を変更したものであって、それ以外は同一の機器を具備する。本実施形態では、第一番目の実施形態に係る軸受ダンパと同じ機器には同一符号を付記しその説明を省略する。
【0029】
本実施形態に係る軸受ダンパ30は、図5、図6、および図7に示すように、軸受ハウジング外輪5の内周面5aに対向する外周面4aに位置して、軸方向へ延在する溝部31が周方向に亘って複数形成された軸受ハウジング内輪4を具備する。軸受ハウジング外輪5は、軸受ハウジング内輪4の外周に支持棒6により装着され、軸受ハウジング内輪4の軸方向略中央部の外周面4aに対しダンパ隙間(環状隙間)32を有して配置されている。すなわち、油路16がダンパ隙間32から軸受パッド7へ作動油を排出する第1の油排出路として構成される。油路17と油路18が、ダンパ隙間32から回転機械の回転軸2に作動油を排出する第2の油排出路として構成される。
【0030】
よって、作動油を給油ライン11に供給すると、作動油が給油溝12、油路13、溝部14、油路16を介して、軸受パッド7の外周面側に流通する。そして、作動油が軸受パッド7の内周面側へ流通して、軸受パッド7と回転機械のロータ2との間の軸受隙間8に油膜が形成されるようになっている。また、作動油が溝部14を介してダンパ隙間32へも流通するようになっている。具体的には、図7に示すように、作動油が油路13の流体入口13aから溝部14に供給されると、作動油が溝部14に沿って周方向へ流通すると共に、ダンパ隙間32へ流通する。ダンパ隙間32に流通した作動油が溝部31に沿って軸方向へ流通して溝部15に流通する。溝部15に流通した作動油が溝部15に沿って周方向へ流通し、流体出口17aを通って、油路17へ流通する。そして、作動油は、油路18を通って系外へ排出される。このようにダンパ隙間32にあっては、作動油が軸方向の一方の端部(溝部14)側からのみ供給される構造となっており、ダンパ隙間32の軸方向の両端部にて圧力差ができるため、作動油がダンパ隙間32にて軸方向へ常に一定の速度にて流通することになる。
【0031】
したがって、本実施形態に係る軸受ダンパ30によれば、上述した第一番目の実施形態に係る軸受ダンパ10と同様、作動油がダンパ隙間32にて一定の速度で流通することになり、回転機械のロータ2の振動によるダンパ隙間32における作動油の流速の変動に対して、ダンパ隙間32を流通する作動油の速度を大きくなるように設定することで、ダンパのレイノズル数が回転機械のロータ2の振動によらずに一定となり、振動振幅によらず所望のダンパの減衰特性を発現することができる。
【0032】
さらに、軸受ハウジング内輪4の外周面4aに位置して、軸方向に延在する溝部31を周方向に亘って複数設けたことにより、ダンパ隙間32にて作動油をより一層円滑に軸方向へ案内することができる。これにより、所望のダンパの減衰特性を安定して発現することができる。
【0033】
なお、上述した第二番目の実施形態に係る軸受ダンパにて、軸受ハウジング外輪5の内周面5aに対向する軸受ハウジング内輪4の外周面4aに軸方向に延在する溝部を周方向に亘って複数設けることも可能である。このような軸受ダンパによれば、上述した第三番目の実施形態に係る軸受ダンパと同様な作用効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る軸受ダンパによれば、ダンパ隙間に作動油を一定の速度にて流通させることができ、回転機械のロータの振動によるダンパ隙間における作動油の流速の変動に対して、ダンパ隙間を流通する作動油の速度を大きくなるように設定することで、回転機械のロータの振動振幅によらず所望のダンパの減衰特性を発現することができるため、ガスタービン、ポンプ、水車などを用いる産業などで有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 軸受台
2 回転機械のロータ
3 軸受ハウジング
4 軸受ハウジング内輪
5 軸受ハウジング外輪
6 支持棒
7 軸受パッド(軸受部)
8 軸受隙間
10 軸受ダンパ
11 給油ライン
12 給油溝
13 油路(油供給路)
13a 流体入口
14,15 溝部
16 油路(第1の油排出路)
17,18 油路(第2の油排出路)
17a 流体出口
19 ダンパ隙間
20 軸受ダンパ
21 油路(油供給路)
22 溝部
23 油路(第2の油排出路)
24 ダンパ隙間
30 軸受ダンパ
31 溝部
32 ダンパ隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械の回転軸を回転可能に支持する軸受部と、
前記軸受部の外周側に配置される円環状の軸受ハウジング内輪と、
前記軸受ハウジング内輪の外周側に装着され、前記軸受ハウジング内輪に対し隙間を有して配置された軸受ハウジング外輪とを具備し、
前記隙間に開口する油供給路が前記軸受ハウジング外輪に設けられ、
前記隙間に開口すると共に、前記軸受部に対向する内周面に開口する第1の油排出路と、前記隙間に開口すると共に、前記回転機械の回転軸に対向する内周面に開口する第2の油排出路とが、前記軸受ハウジング内輪に設けられた
ことを特徴とする軸受ダンパ。
【請求項2】
請求項1に記載された軸受ダンパであって、
前記油供給路は、前記隙間における軸方向の一方の端部に連通し、
前記第1の油排出路は、前記隙間における軸方向の一方の端部に連通し、
前記第2の油排出路は、前記隙間における軸方向の他方の端部に連通する
ことを特徴とする軸受ダンパ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された軸受ダンパであって、
前記軸受ハウジング外輪に対向する前記軸受ハウジング内輪の外周面に、軸方向に沿って延在する溝部が周方向に亘って複数形成されている
ことを特徴とする軸受ダンパ。
【請求項4】
回転機械の回転軸を回転可能に支持する軸受部と、
前記軸受部の外周側に配置される円環状の軸受ハウジング内輪と、
前記軸受ハウジング内輪の外周側に装着され、前記軸受ハウジング内輪に対し隙間を有して配置された軸受ハウジング外輪とを具備し、
前記隙間における軸方向中央に開口する油供給路が前記軸受ハウジング外輪に設けられ、
前記隙間における軸方向の一方の端部に開口すると共に、前記軸受部に対向する内周面に開口する第1の油排出路と、前記隙間における軸方向の他方の端部に開口すると共に、前記軸受部に対向する内周面に開口する第2の油排出路とが、前記軸受ハウジング内輪に設けられた
ことを特徴とする軸受ダンパ。
【請求項5】
請求項4に記載された軸受ダンパであって、
前記軸受ハウジング外輪に対向する前記軸受ハウジング内輪の外周面に、軸方向に沿って延在する溝部が周方向に亘って複数形成されている
ことを特徴とする軸受ダンパ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−122537(P2012−122537A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273216(P2010−273216)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】