説明

軸受支持構造及び電動パワーステアリング装置

【課題】モータの回転軸の径方向における位置決め調整を迅速且つ簡便に行うことができる軸受支持構造及び電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】電動モータ40の回転軸40aが回転可能に支持された軸受45を支持する軸受支持構造であって、軸線方向への移動を伴って挿入された軸受45の外面が当接可能な内側面46aを内側に有すると共に、内側面46aに開口する貫通孔48が形成された側壁部46Aと、側壁部46Aの貫通孔48に対して側壁部46Aの外側から一部が内側面46aから突出するように挿入されて、側壁部46Aに挿入された状態にある軸受45を内側面46aに押圧するC型ばね部材49とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転軸を回転可能に支持した軸受を支持する軸受支持構造、及び該軸受支持構造を備えた電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータを駆動源としてステアリングシャフトを回転駆動することにより、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置が広く知られている。こうした電動パワーステアリング装置に搭載されるモータは、例えば特許文献1に記載のモータのように、その回転軸が軸受によって回転可能に支持されるとともに、その軸受がモータを収容するハウジングに形成された円形凹状の軸受支持部により支持されている。
【0003】
また、軸受支持部の内側には、軸受の端面に圧接して軸受をモータの回転軸の軸方向に付勢するウェーブワッシャが収容されている。さらに、ウェーブワッシャには、軸受(具体的には軸受の外輪)を軸受支持部の内周面に対して圧接させるために軸受を径方向に付勢する板状のばね部材が延出形成されている。
【0004】
そして、モータを組み付ける際には、モータの回転軸に軸受及びウェーブワッシャを外嵌させた上で、モータの回転軸における軸受及びウェーブワッシャが取着された部分が軸受支持部内に挿入される。すると、ウェーブワッシャのばね部材が、軸受の外周面と軸受支持部の内周面との間に介在するように配置される。そのため、軸受は、ウェーブワッシャのばね部材の弾性力によって、軸受支持部の内周面におけるばね部材とは反対側の面部位に押圧される。その結果、モータの回転軸は、軸受支持部内においてモータの回転軸の径方向に位置決めされる。したがって、モータの回転軸の回転駆動に伴ってモータの回転軸に径方向に偏心荷重が作用したとしても、モータの回転軸が径方向に揺動することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−327740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のモータでは、ウェーブワッシャのばね部材から押圧力を受けて支持されている回転軸の径方向における位置調整をする場合、まず、軸受及びウェーブワッシャが外嵌されたモータの回転軸を軸受支持部から抜き出した上で、ばね部材付きのウェーブワッシャがモータの回転軸から取り外される。そして、取り外されたウェーブワッシャとは弾性力の異なるばね部材が延出形成された別のウェーブワッシャをモータの回転軸に新たに外嵌した上で、モータの回転軸が軸受支持部に再度挿入される。すなわち、上記のモータでは、モータの回転軸を径方向において位置決め調整する際に、軸受支持部に対するモータの回転軸の挿抜作業及びモータハウジングの取り外し及び組み付けなどという煩雑な作業を要するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、モータの回転軸の径方向における位置決め調整を迅速且つ簡便に行うことができる軸受支持構造及び電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の軸受支持構造は、モータの回転軸が回転可能に支持された軸受を支持する軸受支持構造であって、軸線方向への移動を伴って挿入された軸受の外面が当接可能な当接面を内側に有すると共に、前記当接面に開口する貫通部が形成された軸受挿入部と、前記軸受挿入部の前記貫通部に対して前記軸受挿入部の外側から一部が前記当接面から突出するように挿入されて、前記軸受挿入部に挿入された状態にある前記軸受を前記当接面に押圧する押圧部材とを備えたことを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、押圧部材は、軸受挿入部の外側から貫通部を通じて軸受に対して径方向に押圧力を作用させる。そして、軸受に対する径方向の押圧力を変更する際には、軸受挿入部の外側に設けられた押圧部材を軸受挿入部から取り外した上で、取り外された押圧部材とは軸受に対して付与可能な押圧力が異なる別の押圧部材を軸受挿入部に装着する。すなわち、軸受挿入部に対する押圧部材の着脱動作によって、押圧部材から軸受に対して径方向に作用する押圧力の大きさが簡易に変更される。したがって、モータの回転軸に対する径方向の位置決め調整を迅速且つ簡便に行うことができる。
【0010】
また、本発明の軸受支持構造において、前記押圧部材は、前記軸受挿入部に対して弾性変形を伴いながら前記軸受挿入部を外側から挟持するように装着されることを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、押圧部材を弾性変形させつつ軸受挿入部の外側から軸受を挟持するように装着することにより、モータの回転軸に対する径方向の位置決め動作が完了する。そのため、モータの回転軸に対する径方向の位置決め調整をより迅速且つ簡便に行うことができる。
【0012】
また、本発明の軸受支持構造において、前記押圧部材は、一端側が前記貫通部の外側に位置した状態で他端側が前記軸受挿入部の外面に圧接可能な弾性部を有し、前記弾性部の前記一端側には、前記貫通部に前記軸受挿入部の外側から挿入されて先端が前記軸受挿入部の内側に突出する凸部が形成されていることを要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、押圧部材の弾性部は、弾性変形を伴いながら他端側が軸受挿入部の外面に圧接された状態で、その一端側に形成された凸部が軸受挿入部の内側に挿入される。そして、弾性部の凸部は、軸受挿入部に挿入された状態にある軸受を軸受挿入部の当接面に押圧する。したがって、押圧部材が軸受挿入部に対して弾性変形を伴いながら着脱されることにより、回転軸の径方向の位置決め調整を実現できる。
【0014】
また、本発明の軸受支持構造において、前記弾性部は、C字状に形成されていることを要旨とする。
上記構成によれば、弾性部は、一端側に形成された凸部が貫通部に対して外側から挿入されつつ他端側が軸受挿入部の外面に圧接可能な構成を容易に実現できる。
【0015】
また、本発明の軸受支持構造は、前記回転軸を軸線方向に付勢しつつ支持する支持部材を更に備えることを要旨とする。
支持部材がモータの回転軸を軸線方向に付勢しつつ支持することにより、軸受が軸受挿入部の当接面から径方向に離れた状態で支持された場合において、モータの回転軸に径方向に偏心荷重が作用すると、軸受が径方向に位置ずれを生じることもあり得る。この点、上記構成によれば、押圧部材が軸受を軸受挿入部の当接面に密着させるように押圧することにより、軸受を径方向に位置決めすることができる。
【0016】
また、本発明の軸受支持構造において、前記軸受挿入部及び前記押圧部材は、前記回転軸における少なくとも一方側の端部に設けられることを要旨とする。
上記構成によれば、モータの回転軸に径方向に偏心荷重が作用したとしても、回転軸の端部に設けられた押圧部材が回転軸の軸受を軸受挿入部の当接面に押圧して径方向に位置決めすることにより、回転軸の径方向の揺動を好適に抑制することができる。
【0017】
また、上記目的を達成するために、本発明の電動パワーステアリング装置は、モータから伝達される動力をステアリング操作を補助するためのアシスト力としてラック軸に付与する電動パワーステアリング装置であって、前記モータの回転軸を回転可能に支持した軸受を支持する軸受支持構造として、上記構成の軸受支持構造を備えたことを要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、電動パワーステアリング装置において上記軸受支持構造の発明と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、モータの回転軸の径方向における位置決め調整を迅速且つ簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る実施形態の電動パワーステアリング装置の概略構成図。
【図2】同実施形態の電動モータの部分破断面図。
【図3】図2の3−3線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置(Electric Power Steering、以下、「EPS」ともいう。)10において、ラック軸11が挿通されるハウジング12は、ラック軸11のほぼ全体が収容される略円筒状の第1ハウジング14と、ラック軸11の一部が収容される略円筒状の第2ハウジング15とを接合して形成されている。また、第1ハウジング14の第2ハウジング15側外周面には、モータとしての電動モータ40をハウジング12に固定するためのエンドハウジング13が形成されている。
【0022】
ハウジング12内において、ラック軸11の両端には、ラックエンド16を介してタイロッド17が連結されている。なお、本実施形態のラックエンド16には、周知のボールジョイントが用いられている。そして、タイロッド17の先端は、転舵輪18を支持するナックル(図示略)に連結されている。
【0023】
また、ハウジング12内には、ステアリングシャフト19の基端側を構成するピニオン軸20がラック軸11と交差する状態で回転自在に支持されている。なお、本実施形態のステアリングシャフト19は、ピニオン軸20、及び一端にステアリング21が設けられたコラムシャフト22、並びにピニオン軸20とコラムシャフト22を接続するインターミディエイトシャフト23により構成されている。そして、ラック軸11の周面に形成されたラック歯11aは、このピニオン軸20と噛合されている。
【0024】
すなわち、ラック軸11は、周知のラック&ピニオン機構24を介してステアリングシャフト19と連結されており、ステアリング21の操作に伴うステアリングシャフト19の回転は、このラック&ピニオン機構24によりラック軸11の往復動に変換される。そして、ラック軸11の軸方向への移動により、転舵輪18の舵角が変更される。
【0025】
本実施形態のEPS10は、ボール螺子装置30を用いて電動モータ40の回転(動力)をラック軸11の往復動に変換することにより、操舵系にアシスト力を付与する所謂ラックアシスト型のEPSとして構成されている。より詳しくは、電動モータ40の回転軸40aと、ラック軸11とが互いの回転中心線P1,P2がほぼ平行となるようにハウジング12に対し電動モータ40が配置されたラックパラレル型のEPSとして構成されている。
【0026】
ラック軸11は、その外周に螺子溝が螺刻された螺子部11bを形成することにより、螺子軸として構成されている。そして、ボール螺子装置30は、この螺子部11bに複数のボール32を介してボール螺子ナット33を螺合することにより形成されている。
【0027】
また、ボール螺子ナット33は、従動プーリ34と一体回転可能に構成されるとともに、この従動プーリ34の径方向外側には、ベルト35を介して駆動連結された駆動プーリ36が並列配置されている。そして、電動モータ40の回転軸40aには駆動プーリ36が連結されるとともに、この駆動プーリ36と従動プーリ34にはベルト35が掛け渡されている。電動モータ40における回転軸40aの回転動力は、駆動プーリ36、ベルト35、及び従動プーリ34を介してボール螺子ナット33に伝達されるとともに、ボール螺子ナット33のラック軸11に対する相対回転がラック軸11の往復動に変換される。したがって、本実施形態のEPS10は、従動プーリ34、ベルト35、及び駆動プーリ36からなるベルト式伝達機構を介して、モータトルクに基づく軸方向の押圧力(駆動力)を、ステアリング操作を補助するためのアシスト力(補助操舵力)として操舵系に付与する。
【0028】
次に、本実施形態のEPS10における電動モータ40の構成について説明する。
図2に示すように、電動モータ40は、一端が塞がれた略円筒状のモータケース41を有している。モータケース41は、その開口端をエンドハウジング13に当接させた状態でエンドハウジング13に対してボルト42によって固定されている。そして、エンドハウジング13及びモータケース41によって囲まれる空間域には、電動モータ40の回転軸40a及び図示しないロータ等からなるモータ本体が収容されている。
【0029】
電動モータ40においてロータと一体的に回転する回転軸40aの一端側(図2では左端側となるフロント側)にはボールベアリングからなるフロント側の軸受44が外嵌されている。その一方、回転軸40aの他端側(図2では右端側となるリヤ側)には同じくボールベアリングからなるリヤ側の軸受45が外嵌されている。そして、両軸受44,45のうちフロント側の軸受44はエンドハウジング13に形成された支持孔13aに外輪が圧入されることによってエンドハウジング13に固定されている。
【0030】
また、図2に示すように、モータケース41の底面の略中央部には、リヤ側の軸受45を挿抜可能とする一端が塞がれた略円筒状の軸受挿入部46がモータケース41の軸線方向に沿ってモータケース41の外側に向けて延びるように突出形成されている。軸受挿入部46は、略円筒状の側壁部46Aと、該側壁部46Aの一端側の開口を閉塞する底壁部46Bとを有している。そして、その軸受挿入部46の内側には、回転軸40aにおけるリヤ側の軸受45が軸線方向に沿って移動することで挿入されている。また、軸受挿入部46は、底壁部46Bの内底面46bと軸受45の端面(図2では右端面)との間に、軸受45を回転軸40aの軸線方向においてフロント側へ付勢しつつ支持する支持部材としてのウェーブワッシャ47が設けられている。詳しくは、ウェーブワッシャ47は、環状に形成されていて、例えば、山部及び谷部がそれぞれ3つずつ形成されている。ウェーブワッシャ47は、図2を参照して、軸受45の外輪および底壁部46Bの内底面46bに接触し、軸受45の外輪を軸線方向のフロント側に付勢している。
【0031】
なお、回転軸40aの両端を回転自在に支持する各軸受44,45は支持孔13a及び側壁部46Aに当接した状態で互いに同一の高さに位置しているため、回転軸40aは水平に配置される。また、側壁部46Aに対してリヤ側の軸受45を挿抜可能とするべく、リヤ側の軸受45の外径は側壁部46Aの内径よりも小さいため、軸受45の外周面と側壁部46Aにおける当接面としての内側面46aとの間にはミクロンオーダーの隙間が介在している。
【0032】
また、図2及び図3に示すように、側壁部46Aには、回転軸40aの軸線方向と直交する径方向に沿う貫通孔(貫通部)48が形成されている。そして、この側壁部46Aには、押圧部材としてのC型ばね部材49がモータケース41の外側から弾性変形を伴いながら側壁部46Aを挟持するように装着されている。
【0033】
図3に示すように、C型ばね部材49は、側壁部46Aの外周面の半周分よりも少し長いC字状をなす弾性部50と、その弾性部50の端部から径方向の内側に向けて延出される凸部51とを有している。弾性部50は、凸部51が延出形成された端部とは反対側の端部を側壁部46Aの外面に圧接させている。凸部51は、側壁部46Aの貫通孔48にモータケース41の外側から挿通された場合に、その先端が側壁部46Aの内側面46aよりも内側へ突出する形状をしている。また、弾性部50は、図3に2点鎖線で示すように、C型ばね部材49が側壁部46Aに装着される前段階では、凸部51の先端を通る内径寸法L1が側壁部46Aの外径寸法L2よりも小径となるC字状に形成されている。また、凸部51の先端を通る径方向における凸部51の先端と弾性部50の内面との距離は、軸受45の内径と側壁部46Aの厚みの合計よりも小さく設定されている。
【0034】
すなわち、C型ばね部材49は、側壁部46Aに対して装着された状態においては、弾性部50が側壁部46Aを弾性変形しながら挟圧しつつ、外側から貫通孔48を通じて側壁部46Aの内側に挿入された凸部51が軸受45の外周面を押圧する。そして、本実施形態では、軸受挿入部46、ウェーブワッシャ47、及びC型ばね部材49によって、リヤ側の軸受45を支持する軸受支持構造52が構成されている。
【0035】
次に、上記のように構成された電動パワーステアリング装置10の作用について、特に、軸受支持構造52がリヤ側の軸受45を回転軸40aの径方向に押圧する力の大きさを調整する際の作用に着目して以下説明する。
【0036】
さて、電動モータ40がエンドハウジング13に組み付けられる際には、その組み付け前に、電動モータ40の回転軸40aの両端部に対して軸受44,45がそれぞれ外嵌される。そして、まず、回転軸40aのフロント側の端部に外嵌されたフロント側の軸受44がエンドハウジング13に固定される。
【0037】
そして次に、側壁部46Aの内側にウェーブワッシャ47を収容したモータケース41が、エンドハウジング13にフロント側の軸受44を介して回転軸40aが片持ち支持された状態にあるモータ本体をリヤ側から覆うように配置される。すると、回転軸40aにおけるリヤ側の軸受45が、モータケース41の側壁部46Aの内側に挿入される。この場合、軸受45の外径は側壁部46Aの内径よりも小さいため、軸受45は側壁部46Aの内側に容易に挿入される。そして、軸受45の中心軸と側壁部46Aの中心軸とを一致させた状態で、軸受45がウェーブワッシャ47によって回転軸40aの軸方向に付勢されつつ支持される。なお、この場合、軸受45の外側面(外輪の外周面)と側壁部46Aの内側面46aとは接触していない。そして、その状態において、モータケース41がエンドハウジング13に対してボルト42によって固定される。
【0038】
続いて、C型ばね部材49が側壁部46Aに対して弾性部50を拡径させる弾性変形を伴いながらモータケース41の外側から装着される。そして、C型ばね部材49の凸部51が側壁部46Aの貫通孔48に外側から挿入される。すると、側壁部46A内に位置する軸受45は、C型ばね部材49における弾性部50の弾性力に基づいて、側壁部46Aの内側面46aから突出した凸部51によって径方向に押圧される。そのため、軸受45は、側壁部46Aの内側面46aにおける貫通孔48とは径方向反対側の面部位に密着することにより、回転軸40aのリヤ側の端部を軸線方向と直交する径方向に位置決めする。
【0039】
ここで、リヤ側の軸受45がC型ばね部材49によって回転軸40aの径方向に十分に位置決めされていない場合には、C型ばね部材49が側壁部46Aから取り外される。そして、取り外されたC型ばね部材49よりも弾性部50の弾性力が大きい別のC型ばね部材49が側壁部46Aに対して新たに装着される。すると、新たに装着されたC型ばね部材49の弾性力に基づいて、軸受45が側壁部46Aの内側面46aに対してより強固に密着する。そのため、軸受45が回転軸40aの径方向により確実に位置決めされる。
【0040】
すなわち、本実施形態によれば、モータケース41の外側に設けられたC型ばね部材49を着脱交換することにより、回転軸40aの径方向における軸受45の位置決め調整が完了する。そのため、軸受45の位置決め調整に際して、モータケース41をエンドハウジング13から取り外す必要がないため、軸受45の位置決め調整が迅速且つ簡便に行われる。
【0041】
また、本実施形態によれば、C型ばね部材49が側壁部46Aに対して弾性変形を伴いつつ装着されると、軸受45は、C型ばね部材49の弾性力に基づいて押圧される。そのため、同一のC型ばね部材49が側壁部46Aに装着された場合には、C型ばね部材49から軸受45に対して同一の大きさの押圧力が作用する。したがって、同一のC型ばね部材49を用いて軸受45の位置決め調整を行うことにより、C型ばね部材49から軸受45に対して予め定められた一定の大きさの押圧力が作用する。また、弾性力の異なる複数のC型ばね部材49を用いた場合、C型ばね部材49から軸受45に作用する押圧力の大きさを段階的に変化させつつ軸受45の位置決め調整が行われる。
【0042】
上記実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)C型ばね部材49は、側壁部46Aの外側から貫通孔48を通じて軸受45に対して径方向に押圧力を作用させる。そして、軸受45に対する径方向の押圧力を変更する際には、側壁部46Aの外側に設けられたC型ばね部材49を側壁部46Aから取り外した上で、新たなC型ばね部材49を側壁部46Aに装着する。すなわち、側壁部46Aに対するC型ばね部材49の着脱動作によって、C型ばね部材49から軸受45に対して径方向に作用する押圧力の大きさが簡易に変更される。したがって、電動モータ40の回転軸40aに対する径方向の位置決め調整を迅速且つ簡便に行うことができる。
【0043】
(2)C型ばね部材49における弾性部50を弾性変形させつつ側壁部46Aを外側から挟持するように装着することにより、電動モータ40の回転軸40aに対する径方向の位置決め動作が完了する。そのため、電動モータ40の回転軸40aに対する径方向の位置決め調整をより迅速且つ簡便に行うことができる。
【0044】
(3)ウェーブワッシャ47が軸受45を側壁部46Aの内側面46aから径方向に離れた状態で支持する場合であっても、C型ばね部材49が軸受45を側壁部46Aの内側面46aに密着させるように押圧することにより、軸受45を径方向に位置決めすることができる。
【0045】
(4)電動モータ40の回転軸40aに径方向に偏心荷重が作用したとしても、C型ばね部材49が回転軸40aの端部に設けられた軸受45を側壁部46Aの内側面46aに押圧して径方向に位置決めすることにより、回転軸40aの径方向の揺動を好適に抑制することができる。
【0046】
(5)軸受45は、C型ばね部材49の弾性力に基づいて押圧される。そのため、同一のC型ばね部材49を用いて軸受45の位置決め調整を行った場合、C型ばね部材49から軸受45に対して予め定められた一定の大きさの押圧力を作用させることができる。
【0047】
なお、上記実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、回転軸40aにおけるエンドハウジング13側の端部に外嵌されたフロント側の軸受44を支持する構造として、貫通孔48が形成される軸受挿入部46、及び軸受挿入部46に装着されるC型ばね部材49からなる軸受支持構造を設けてもよい。また、回転軸40aにおけるモータケース41側の端部に軸受挿入部46及びC型ばね部材49を設けることなく、回転軸40aにおけるエンドハウジング13側の端部に軸受挿入部46及びC型ばね部材49からなる軸受支持構造を設けてもよい。
【0048】
・上記実施形態において、回転軸40aを軸線方向に付勢しつつ支持する支持部材としてコイルばねや板ばね等を設けてもよい。
・上記実施形態において、軸受45を側壁部46Aの内側面46aに押圧する押圧部材として、環状ばね部材を採用し、側壁部46Aに形成された貫通孔48に対して環状ばね部材の内側面を嵌合させてもよい。この場合、環状ばね部材の内側面が、側壁部46Aの内側面46aから突出することにより、軸受45を側壁部46Aの内側面46aにおける貫通孔48とは反対側の面部位に押圧する。
【0049】
・上記実施形態において、軸受45を側壁部46Aの内側面46aに押圧する押圧部材は、弾性変形を伴うことなく側壁部46Aの外側から装着されるようにしてもよい。例えば、側壁部46Aの内側面46aに開口する雌ねじ孔を側壁部46Aに設け、この雌ねじ孔に対して側壁部46Aの外側から調整ボルトを螺入させてもよい。この場合、調整ボルトの回動操作に伴って、調整ボルトの軸部が側壁部46Aの内側面46aからの突出量を変化させることにより、調整ボルトの軸部が軸受45を側壁部46Aの内側面46aに押圧する力の大きさが変化する。
【0050】
・上記実施形態において、軸受45を支持する内側面を有する軸受挿入部の形状は円筒状に限定されず、例えば角筒状に形成してもよい。また、側壁部46Aが筒状ではなく、C字状などの非環状に形成してもよい。
【0051】
・上記実施形態において、モータとして電動モータ40に具体化したが、エンジン等の外部駆動源で駆動されるモータであってもよい。
・上記実施形態において、本発明をEPS10のモータを対象として、その回転軸を支持する軸受の軸受支持構造に具体化したが、その他、EPS10以外の用途に用いられるモータを対象としてもよい。また、EPS10に用いられるモータを対象とする場合においても、本実施形態のEPS10のように、所謂ラックアシスト型のEPS10に限らず、その他、所謂コラム型やピニオン型、その他の形式のEPSに用いられるモータを対象としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…電動パワーステアリング装置(EPS)、11…ラック軸、40…モータとしての電動モータ、40a…回転軸、45…軸受、46…軸受挿入部、46a…当接面としての内側面、47…支持部材としてのウェーブワッシャ、48…貫通部としての貫通孔、49…押圧部材としてのC型ばね部材、50…弾性部、51…凸部、52…軸受支持構造。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転軸が回転可能に支持された軸受を支持する軸受支持構造であって、
軸線方向への移動を伴って挿入された前記軸受の外面が当接可能な当接面を内側に有すると共に、前記当接面に開口する貫通部が形成された軸受挿入部と、
前記軸受挿入部の前記貫通部に対して前記軸受挿入部の外側から一部が前記当接面から突出するように挿入されて、前記軸受挿入部に挿入された状態にある前記軸受を前記当接面に押圧する押圧部材と
を備えたことを特徴とする軸受支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の軸受支持構造において、
前記押圧部材は、前記軸受挿入部に対して弾性変形を伴いながら前記軸受挿入部を外側から挟持するように装着されることを特徴とする軸受支持構造。
【請求項3】
請求項2に記載の軸受支持構造において、
前記押圧部材は、一端側が前記貫通部の外側に位置した状態で他端側が前記軸受挿入部の外面に圧接可能な弾性部を有し、前記弾性部の前記一端側には、前記貫通部に前記軸受挿入部の外側から挿入されて先端が前記軸受挿入部の内側に突出する凸部が形成されていることを特徴とする軸受支持構造。
【請求項4】
請求項3に記載の軸受支持構造において、
前記弾性部は、C字状に形成されていることを特徴とする軸受支持構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の軸受支持構造において、
前記回転軸を軸線方向に付勢しつつ支持する支持部材を更に備えることを特徴とする軸受支持構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の軸受支持構造において、
前記軸受挿入部及び前記押圧部材は、前記回転軸における少なくとも一方側の端部に設けられることを特徴とする軸受支持構造。
【請求項7】
モータから伝達される動力をステアリング操作を補助するためのアシスト力としてラック軸に付与する電動パワーステアリング装置であって、
前記モータの回転軸を回転可能に支持した軸受を支持する軸受支持構造として、請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の軸受支持構造を備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−7418(P2013−7418A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139609(P2011−139609)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】