説明

軸受装置

【課題】 軸受異常が起こる前の状態を適切なタイミングで検出することができ、軸受異常を正確に、かつ迅速に検出することができる軸受装置を提供する。
【解決手段】 外輪間座5に、予圧荷重を検出するための検出手段を設けると共に、温度センサおよび振動センサの少なくともいずれか一方または両方を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械の主軸スピンドルなどに使用される軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械のスピンドル装置では、軸受に異常が起こる前に、その予兆を検出して軸受異常が起きることを防ぐ要求がある。この軸受の異常検出のために、温度センサや振動センサをハウジングや間座に設置しているものがある(特許文献1)。これらセンサにより、潤滑剤不足等に起因する急激な温度上昇等の軸受異常を検出している。
【特許文献1】特開2004−169756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記軸受の異常検出に、軌道輪温度および振動を測定しているが、この2つを測定しただけでは、軸受異常を正確、迅速に検出できない場合がある。たとえば、軸受の軌道輪の温度測定による異常検出では、焼付き等の異常直前に軌道輪の温度が急激に上昇したりすることがあるため、軸受異常が起こる前の状態を適切なタイミングで検出することができないことがある。
【0004】
この発明の目的は、軸受異常が起こる前の状態を適切なタイミングで検出することができ、軸受異常を正確に、かつ迅速に検出することができる軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の軸受装置は、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の軌道輪間に間座を介在させて予圧を受けるように構成した軸受装置において、前記間座に、予圧荷重を検出するための検出手段を設けると共に、温度センサおよび振動センサの少なくともいずれか一方または両方を設けたことを特徴とする。
【0006】
この構成によると、間座に設けた検出手段により、軸受内部に掛かっている荷重を検出することができる。この間座に温度センサを設けた場合、温度を検出することができ、間座に振動センサを設けた場合、振動を検出することができる。このように温度、振動だけでなく、軸受内部に掛かっている荷重をも検出して軸受の異常検出を行うので、軸受の異常予測を精度良く適切なタイミングで行うことができる。
【0007】
前記振動センサを、前記間座の軸受近傍に配置して設けても良い。この場合、軸受の振動をより正確に検出することができる。これにより、軸受の異常検出精度を高めることができる。
前記温度センサを、前記間座の検出手段近傍に配置して設けても良い。この場合、温度センサにより、検出手段における温度をより正確に検出することができる。
前記検出手段は、前記温度センサにより検出された温度を、同検出手段の温度補正に使用する機能を有するものであっても良い。このように検出手段により検出される予圧荷重を温度補正することで、予圧荷重検出精度をより高めることができる。
【0008】
前記間座は、軸方向に並ぶ外輪間に介在する外輪間座と、内輪間に介在する内輪間座とを有し、これら外輪間座および内輪間座のいずれか一方は、検出手段の軸方向一端および他端を挟み込む構成にしても良い。この場合、軸受装置の部品点数を低減して構造を簡単化し、軸受装置の製造コストの低減を図ることができる。
前記検出手段に、前記温度センサおよび振動センサの少なくともいずれか一方または両方を設けても良い。この場合も、軸受装置の部品点数を低減して構造を簡単化することができる。これら検出手段およびセンサ等を間座に組み込むときの取り扱いを容易にし、組立工数の低減を図ることが可能となる。
【0009】
前記検出手段は、加圧力に応じて磁気特性が変わる磁歪材を含むセンサを有するものでも良い。この磁歪材を含むセンサにより、予圧荷重を検出することができる。前記検出手段は、起歪体およびこの起歪体の歪みを検出するセンサを有するものであっても良い。この起歪体およびこの起歪体の歪みを検出するセンサにより、予圧荷重を検出することができる。
前記「起歪体」とは、間座の他の箇所よりも歪を大きく生じる部分である。例えば、起歪体は弱部を有し、この弱部は、同起歪体の他の部位よりも剛性が相対的に小さくなるように構成されている。
前記検出手段からのセンサ信号と、温度センサおよび振動センサの少なくともいずれか一方または両方からのセンサ信号とから、軸受の異常検出を行う異常検出手段を設けても良い。このように、温度、振動だけでなく、軸受内部に掛かっている荷重をも検出して、軸受の異常検出を行うことができる。したがって、軸受の異常予測を精度良く適切なタイミングで行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明の軸受装置は、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の軌道輪間に間座を介在させて予圧を受けるように構成した軸受装置において、前記間座に、予圧荷重を検出するための検出手段を設けると共に、温度センサおよび振動センサの少なくともいずれか一方または両方を設けたため、軸受異常が起こる前の状態を適切なタイミングで検出することができ、軸受異常を正確に、かつ迅速に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図4と共に説明する。この第1の実施形態にかかる軸受装置は、ハウジング1に軸2を複数の軸受3で回転自在に支持したものである。この軸受装置は、例えば、工作機械のスピンドル装置に応用され、その場合、軸2はスピンドル装置の主軸2となる。
【0012】
主軸2には、軸方向に離隔した複数の軸受3を締まり嵌め状態で嵌合し、内輪3i,3i間に内輪間座4を、外輪3g,3g間に外輪間座5を介在させている。軸受3は、内輪3iと外輪3gの間に複数の転動体Tを介在させた転がり軸受であり、これら転動体Tは保持器Rtで保持されている。軸受3は、軸方向の予圧を付与することが可能な軸受であり、アンギュラ玉軸受、深溝玉軸受、またはテーパころ軸受等が用いられる。図示の例ではアンギュラ玉軸受が用いられ、2個の軸受3,3が背面組合わせで設置されている。
【0013】
外輪間座5はリング状の第1,第2間座部材6,7とセンサ部8とを有する。軸方向一方に設けられる第1間座部材6と、軸方向他方に設けられる第2間座部材7との間に、リング部材からなるセンサ部8を挟み込んでいる。本第1の実施形態では、このセンサ部8を、図2、図3に示すように、いわゆる片持ち梁状の起歪体8Aとし、同起歪体8Aに後述する複数のセンサを設けている。この起歪体8Aは、外輪間座5の他の箇所よりも歪を大きく生じる部分である。これら第1,第2間座部材6,7および起歪体8Aの幅寸法、つまり外輪間座5の幅寸法H1は、内輪間座4の幅寸法H2と異なっており、一方の軸受3の内輪端面に筒状部材9を介して当接するナットNtを締め付けることにより、これら外輪間座5、内輪間座4の幅寸法差に応じて軸受に予圧が付与される。
【0014】
前記外輪間座5のうち、右側の第1間座部材6は、この軸方向右端部が前記一方の軸受3の外輪背面3gaに当接し、軸方向左端部が起歪体8Aに当接する。この第1間座部材6の軸方向右端部は、外径側に外輪背面3gaに当接する当接面6aと、この当接面6aに段部を介して内径側に連なる軸受3に当接しない非当接面6bとを有する。
第1間座部材6の軸方向左端部は、例えば、外径側に起歪体8Aに当接しない図示外の非当接面と、この非当接面に段部を介して内径側に連なり、軸方向に所定小距離突出して起歪体8Aに荷重を付与する図示外の環状凸部とを有する。
【0015】
第2間座部材7は、この軸方向左端部が他方の軸受3の外輪背面3gaに当接し、軸方向右端部がいわゆるラジアル平面を成して起歪体8Aに当接する。この第2間座部材7の軸方向左端部は、外径側に外輪背面3gaに当接する当接面7aと、この当接面7aに段部を介して内径側に連なる軸受3に当接しない非当接面7bとを有する。
【0016】
前記起歪体8Aは、この半径方向内周部分に弱部8Aaを有する。つまり、弱部8Aaは、この起歪体8Aの半径方向外周部分よりも剛性が相対的に小さくなるように構成されている。換言すれば、起歪体8Aは、半径方向外周部分が厚肉で、かつ半径方向内周部分が前記半径方向外周部分よりも薄肉に形成されている。第1間座部材6の上記環状凸部が、前記弱部8Aaとなる半径方向内周部分の右端面に当接し、荷重を付与するようになっている。起歪体8Aの左端面は、外径側に第2間座部材7の軸方向右端部に当接する当接面8Abと、この当接面8Abに段部を介して内径側に連なる第2間座部材7に当接しない非当接面8Acとを有する。これら当接面8Ab、前記段部、および非当接面8Acにより、起歪体8Aをアキシアル平面で切断して視た断面が前記弱部8Aaを自由端とする片持ち梁形状を成す。本実施形態の場合、起歪体8Aの半径方向外周部分が固定端となり、起歪体8Aの半径方向内周部分が自由端となる片持ち梁形状となる。すなわち、起歪体8Aが、剛体となる第1,第2間座部材6,7間に介在され、この起歪体8Aの弱部8Aaに、第1間座部材7の環状凸部から軸方向力を付与するようになっている。
【0017】
センサ等について説明する。
図2、図3に示すように、前記起歪体8Aの右端面のうち、根元部分つまり半径方向外周部分に、例えば4個の歪ゲージ等の歪センサ10を設け、予圧荷重を検出する検出手段としての歪センサ10により、前記起歪体8Aの歪を検出する。これら4個の歪センサ10を、円周方向一定間隔おきつまり90度間隔おきに設けている。このように複数の歪センサ10を円周上に等配して設け、これらの出力を加算することで、荷重の偏りの影響をキャンセルして検出し得る。
【0018】
本実施形態では、起歪体8Aの右端面のいわゆる梁曲がりにより引張変形を発生する部分の歪を検出しているが、この形態に限定されるものではない。例えば、起歪体8Aの左端面に歪センサ10を設けて、この歪センサ10により、起歪体8Aの左端面のいわゆる圧縮変形を発生する部分の歪を検出しても良い。また、歪センサ8Aの個数は4個に限定されるものではない。これら複数の歪センサ10を、円周方向一定間隔おきに設けない場合もあり得る。なお、図4(B)に示すように、起歪体8Aの右端面の引張り部分と、左端面の圧縮部分に歪センサ10を設けて、これら歪センサ10のセンサ出力を加算することで歪検出感度を大きくしても良い。
【0019】
前記起歪体8Aの右端面のうち、上記歪センサ10と同一ピッチ円PCD上で且つ歪センサ10とは異なる位相に、温度センサ11および振動センサ12を設けている。温度センサ11は、起歪体8Aの温度を測定可能に、所定の歪センサ10から角度α(αは例えば30度)離隔した位置に設けている。この温度センサ11により測定される温度に基づいて、歪センサ10および振動センサ12の温度補正に使用し得る。この温度センサ11としては、熱電対、側温抵抗体、サーミスタ等を適用可能である。振動センサ12は、軸受3の振動を検出可能に、一の歪センサ10から角度β(βは例えば30度)離隔した位置に設けている。ただし、これら温度センサ11、振動センサ12は、このような位置に限定して設けられるものではない。外輪間座5と外輪3gとが軸方向に当接しているため、例えば、ハウジング1の内周に形成した凹部であって外輪外径面に臨む凹部に、温度センサ11を設置しておき、この温度センサ11により軸受外輪3gの温度を誤差を小さく測定することが可能となる。
【0020】
歪センサ10、温度センサ11、および振動センサ12の出力部である配線13は、ハウジング1に設けられた孔1aを介して、ハウジング1外に引き出され、転がり軸受の異常を検出する異常検出手段14に電気的に接続されている。歪センサ10により検出した歪、振動センサ12により検出した振動値は、電気信号に変換された後、温度センサ11で測定された温度に応じて補正される。異常検出手段14は、前記配線13を介して入力され補正された電気信号に比例する異常検出値を算出する電子回路等からなる。この異常検出手段14は、上記電気信号と異常検出値の関係を演算式またはテーブル等で設定した図示外の関係設定手段を有し、検出した歪、振動値に基づき補正された電気信号を前記関係設定手段に照らし検出値を算出する。また、異常検出手段14は、例えば、ピークホールド処理により前記電気信号のピーク電圧を測定し、このピーク電圧が所定の閾値外となったとき、軸受異常であると判定するようにしても良い。異常検出手段14は、独立して設けられた電子回路であっても、またスピンドル装置を制御する制御装置の一部であっても良い。
【0021】
上記構成の作用、効果を説明する。スピンドル装置の図示外の駆動源により主軸2が回転し、軸受3の温度が上昇して内輪3iが膨張し、予圧が初期設定値よりも大きくなると、外輪間座5の両端間に加わる軸方向力が増加する。この外輪間座5のうち起歪体8Aに、第1間座部材6の前記環状凸部から軸方向力が加わると、この起歪体8Aの右端面に引張り応力が作用すると共に、起歪体8Aの左端面に圧縮応力が作用する。これにより、この起歪体8Aに設けた歪センサ10に歪を生じる。異常検出手段14は、検出した歪に基づき補正された電気信号を前記関係設定手段に照らし予圧量を算出する。したがって、起歪体8Aに加わる軸方向外力と電気信号との関係を予め調べておけば、軸受装置に組み込まれた軸受3の初期予圧および運転時に増加した予圧を知ることができる。この増加した予圧、振動値等に基づき軸受異常を判定することができる。以上のように温度、振動だけでなく、軸受内部に掛かっている予圧荷重をも検出して軸受3の異常検出を行うので、軸受3の異常予測を精度良く適切なタイミングで行うことができる。
【0022】
温度センサ11は、起歪体8Aの温度を測定可能に、歪センサ10から角度α離隔した歪センサ近傍に配置して設けている。このため、歪センサ10における温度をより正確に検出することができる。温度センサ11を、起歪体8Aの右端面のうち、上記歪センサ10、振動センサ12と同一ピッチ円PCD上つまり同心円上に設けたため、歪センサ10、振動センサ12と温度センサ11に熱伝導される熱量を略同一にして、温度補正する精度をより高めることができる。
【0023】
また、歪センサ10を円周方向複数箇所に設けて、これら複数の歪センサ10のセンサ出力を加算することで、歪検出感度を大きくすることができる。間座は、外輪間座5と内輪間座4とを有し、このうち外輪間座5は、起歪体8Aの両端を挟み込む構成にしたため、軸受装置の部品点数を低減し構造を簡単化し、軸受装置の製造コストの低減を図ることができる。起歪体8Aに、歪センサ10、温度センサ11および振動センサ12を設けた一体品としたため、軸受装置の部品点数を低減して構造を簡単化することができる。この一体品を間座に組み込むときの取り扱いを容易にし、組立工数の低減を図ることが可能となる。
【0024】
本実施形態では、起歪体8Aに、歪センサ10、温度センサ11および振動センサ12を設けたが、この形態に限定されるものではない。例えば、起歪体8Aに、歪センサ10および温度センサ11を設け、振動センサ12を省略しても良い。起歪体8Aに、歪センサ10および振動センサ12を設け、温度センサ11を省略することも可能である。この場合、温度センサ11をハウジング1等に設けることができる。
【0025】
次に、この発明の第2の実施形態を図5〜図8と共に説明する。図1も参照しつつ説明する。以下の説明において、第1の実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0026】
本第2の実施形態では、センサ部8を、複数の磁歪材15と、複数のコイル16と、これら磁歪材15およびコイル16を保持するリング部材RBとで構成している。複数(本実施形態では3個)の磁歪材15は、リング部材RBに円周方向一定間隔おきに設けられている。リング部材RBは、例えばステンレス鋼等の非磁性材料で製作され、磁歪材15等を保持つまり収容する収容孔RBa、温度センサ11および振動センサ12の少なくともいずれか一方又は両方を収容するセンサ収容孔RBbが形成されている。
上記温度センサ11および振動センサ12は、リング部材RBのうち、磁歪式センサ8Bの磁歪材15の軸心と同一ピッチ円上で且つ磁歪式センサ8Bとは異なる位相に、設けられている。温度センサ11は、磁歪式センサ8Bから所定角度α(図3参照)離隔した磁歪式センサ近傍に配置して設けても良い。この場合、磁歪式センサ8Bにおける温度をより正確に検出することができる。
【0027】
なお、複数の磁歪材15を円周方向適当間隔おきに設けることも可能である。また、磁歪材の個数は、3個に限定されるものではなく、適切な数は状況に応じて選べば良い。各磁歪材15は、主軸2の軸方向に平行な円柱状の部材であり、この円柱状の部材の外周にコイルボビン17が嵌合され、このコイルボビン17にコイル16が巻回されている。各磁歪材15にコイルボビン17を介してコイル16を巻回することで、磁歪式センサ8Bが構成される。複数の磁歪材15にわたってコイル16を直列に接続しても良い。このコイル16は、例えばエナメル線からなる。
【0028】
前記コイルボビン17は、磁歪材15の外周に嵌合するボビン本体17aと、このボビン本体17aの軸方向一端に半径方向外方に突出するように付設される第1フランジ17bと、ボビン本体17aの軸方向他端に半径方向外方に突出するように付設される第2フランジ17cとを有する。これらボビン本体17a、第1および第2フランジ17b,17cによって囲まれる環状領域に、コイル16が好適に巻回される。
【0029】
この磁歪材15に用いる磁歪材料としては、磁歪効果の大きい材料が好ましい。また、この磁歪材料は、逆磁歪効果の大きい材料が好ましい。逆磁歪効果は、磁歪材15が、加圧の程度に応じて透磁率などの磁気特性が変わる効果のことである。本実施形態において、磁歪材15は、例えば、Ni、Fe-Ni系合金、Fe-Co系合金、Fe-Al系合金、アモルファス磁歪合金、超磁歪材料からなる。
【0030】
上記巻回されたコイル16の外側に、覆い部材としてのヨーク18が設けられている。このヨーク18は、磁性材料からなり、有底円筒状のヨーク本体18aと、リング状の蓋部材18bとを有する。ヨーク本体18aの筒底部18aaに形成された貫通孔18abに、磁歪材15の一端が挿入され、前記筒底部18aaがコイルボビン17の第1フランジ17bに当接または近接するように配置される。この配置状態において、ヨーク本体18aの内筒面がコイル16全体を覆うと共に、ヨーク本体18aの先端縁部が、蓋部材18bの外周端部に固着される。このとき蓋部材18bの貫通孔18baに、磁歪材15の他端が挿入され、この蓋部材18bの一表面部がコイルボビン17の第2フランジ17cに当接または近接するように配置される。このように、磁歪材15とヨーク18とでコイル16の閉磁路を形成している。前記ヨーク本体18aおよび蓋部材18bを有するヨーク18は、間座よりも透磁率が高い材料であることが望ましい。
【0031】
上記コイル16の磁路をいわゆる閉磁路構造にすることで、コイル全体の磁気抵抗が小さくなり、磁歪式センサ8Bのセンサ感度が従来のものに比べて高くなる。したがって、外輪間座5、内輪間座4を例えばステンレス鋼等のような非磁性材料で製作した場合であっても、磁歪材15にかかる応力を感度良く検出することができる。ただし、外輪間座5、内輪間座4は、ステンレス鋼に限定されるものではない。
【0032】
前記磁歪式センサ8Bのコイル両端の出力部である配線13は、ハウジング1に設けられた孔1aを介してハウジング外に引き出され、異常検出手段14に電気的に接続されている。この場合、異常検出手段14は、磁歪式センサ8Bを構成するコイル16に一定周期の正弦波を印加し、その位相遅れからインダクタンスを検出し、予圧量等を算出する電子回路からなる。この異常検出手段14は、上記位相遅れと予圧量の関係を演算式またはテーブル等で設定した関係設定手段(図示せず)を有していて、検出した位相遅れを前記関係設定手段に照らし予圧量等を算出する。コイル16のインダクタンスの検出には、上記のほかに、コンデンサとコイルの共振周波数を測定してもよく、また、ブリッジ回路を使用しても良い。
【0033】
上記第2の実施形態の構成によると、特に、磁歪式センサ8Bのコイル16の外周部、軸方向一端部および他端部に、磁性材料からなるヨーク18を設けてこの磁歪式センサ8Bのコイル磁路を閉磁路構造にしたため、コイル16の磁気抵抗が小さくなる。このため、磁歪式センサ8Bのセンサ感度が従来のものに比べて良くなる。したがって、磁歪式センサ8Bは周りの部品の影響を受け難くなり、磁歪式センサ8Bの信頼性が高まり、軸受の予圧検出、異常検出を正確に行うことが可能となる。各磁歪材15に巻回されたコイル16を直列に接続した場合、それぞれのコイル16のインダクタンスが加算され、このインダクタンスの絶対値を大きくできる。これによりセンサ感度を上げることができると共に、荷重の偏りをキャンセルすることができる。その他第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0034】
次に、この発明の第3の実施形態を図9と共に説明する。
この第3の実施形態に係る軸受装置では、第1間座部材6における外輪背面3gaに臨む位置に、温度センサ11および振動センサ12のいずれか一方または両方を設けている。また第2間座部材7における外輪背面3gaに臨む位置に、温度センサ11および振動センサ12のいずれか一方または両方を設けている。このようにセンサ等を軸受近傍に設けている。この場合、軸受3の温度、振動を第1,第2の実施形態の軸受装置よりも正確に検出することができる。その他第1,第2の実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0035】
以上説明した軸受装置を、スピンドル装置以外の装置、ロボット等に適用することも可能である。本実施形態では、2個の軸受を背面組み合わせで設置したが、正面組み合わせで設置する場合もあり得る。また、軸受の個数は2個に必ずしも限定されるものではない。本実施形態では、外輪間座の第1,第2間座部材の軸方向端部に起歪体を設けたが、前記スピンドル装置以外の装置において、例えば、内輪間座の間座本体の軸方向端部に起歪体を設けても良い。この場合、外輪回転となり、起歪体の出力用の配線を、軸内部を通して軸受装置外に引き出すことが望ましい。
【0036】
本実施形態で説明した起歪体は一例であって、間座を局所的に歪ませることができるものであれば、説明した例に限定されるものではない。
間座の一部に、円周方向の溝またはスリット等を形成して成る起歪体であって間座の他の箇所よりも歪を大きく生じる起歪体を設け、間座本体に一体に起歪体を設けても良い。この場合、軸受装置の部品点数を第1,第2の実施形態のものよりさらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る軸受装置の断面図である。
【図2】同軸受装置の起歪体の断面図である。
【図3】同起歪体の正面図である。
【図4】(A)同起歪体とセンサとの位置関係を拡大して表す拡大断面図、(B)起歪体の左端面にセンサを設けた例を表す拡大断面図である。
【図5】この発明の第2の実施形態に係る軸受装置のセンサ部の要部の断面図である。
【図6】同センサ部の正面図である。
【図7】同センサ部の磁歪式センサの拡大断面図である。
【図8】同磁歪式センサの正面図である。
【図9】この発明の第3の実施形態に係る軸受装置の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
3…軸受
3g…外輪
4…内輪間座
5…外輪間座
6,7…第1,第2間座部材
8…センサ部
8A…起歪体
8B…磁歪式センサ
10…歪センサ
11…温度センサ
12…振動センサ
14…異常検出手段
15…磁歪材
16…コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の軌道輪間に間座を介在させて予圧を受けるように構成した軸受装置において、
前記間座に、予圧荷重を検出するための検出手段を設けると共に、温度センサおよび振動センサの少なくともいずれか一方または両方を設けたことを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
請求項1において、前記振動センサを、前記間座の軸受近傍に配置して設けた軸受装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記温度センサを、前記間座の検出手段近傍に配置して設けた軸受装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記検出手段は、前記温度センサにより検出された温度を、同検出手段の温度補正に使用する機能を有する軸受装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記間座は、軸方向に並ぶ外輪間に介在する外輪間座と、内輪間に介在する内輪間座とを有し、これら外輪間座および内輪間座のいずれか一方は、検出手段の軸方向一端および他端を挟み込む構成になっている軸受装置。
【請求項6】
請求項5において、前記検出手段に、前記温度センサおよび振動センサの少なくともいずれか一方または両方を設けた軸受装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記検出手段は、加圧力に応じて磁気特性が変わる磁歪材を含むセンサを有する軸受装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記検出手段は、起歪体およびこの起歪体の歪みを検出するセンサを有する軸受装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、前記検出手段からのセンサ信号と、温度センサおよび振動センサの少なくともいずれか一方または両方からのセンサ信号とから、軸受の異常検出を行う異常検出手段を設けた軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−36312(P2009−36312A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201513(P2007−201513)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】