説明

軽元素分析装置

【課題】
中性子を用いた簡易な軽元素分析装置を提供する。
【解決手段】
α線検出器を備えた中性子発生管と、軽元素の飛行方向とエネルギーを同定可能な軽元素検出器を用い、それぞれの検出器からの信号を同時計数することにより、加速器等の大型の装置を用いることなく、簡便な装置で試料中の水素及び重水素等の軽元素分布を非破壊で計測することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軽元素分析装置に係り、特に、非破壊で検査対象物中の軽元素濃度分布を計測可能とし、生体物質,水素吸蔵合金、或いは燃料電池の電解質膜中等の軽元素濃度分布を測定して、例えば電解質膜であれば膜の劣化の度合いを判断するものに好適な軽元素分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常市販されている非破壊元素分析装置としては、蛍光X線分析装置がある。蛍光X線分析装置は、検査対象物にX線を照射した時に、発生するX線を分光し、得られた特性X線の波長及びその強度から原子の存在情報を得る分析装置である。特性X線は、軽元素ほど波長が長くなり空気の吸収を強く受けることと、分析装置に用いられるX線検出器には窓材が必要であり、その窓材によってX線が吸収されてしまうことから、通常、ナトリウムより原子番号の小さい元素の分析は困難である。しかし、非破壊計測が可能で、測定試料の前処理はほとんど不要であることから、簡易な分析装置として広く用いられている
(例えば、特開2001−307672号公報参照)。
【0003】
加速器等の大型の装置を用いた半非破壊元素分析法としては、ERDA(弾性反跳粒子検出)法或いはNRA(核反応分析)法がある。
【0004】
ERDA法は、Heイオンまたは重イオンを試料表面に照射し、照射イオンによってはじき出された原子のエネルギースペクトルを測定することで元素分析を行う方法である。照射イオンによってはじき出される原子を測定することから、水素等の軽元素の分析が可能であるが、表面分析に限られている。
【0005】
NRA法は、高エネルギーの陽子または重イオンを試料に照射することで、試料中の軽元素が核反応を起こし、その核反応によって発生する軽元素やγ線を測定することで元素分析を行う方法である。照射イオンは、試料中でエネルギー損失を起こすことから、入射エネルギーを変化させることによって核反応を起こす深さ方向位置を同定することができ、軽元素の深さ方向分布の測定が可能である。しかし、高エネルギーの陽子または重イオンを使う必要があるため加速器が必要である。
【0006】
【特許文献1】特開2001−307672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、従来からERDA法或いはNRA法を用いた半非破壊分析は行われていたが、夫々に一長一短があり、簡易な装置で試料中の水素及び重水素等の軽元素分布を非破壊で計測するものは今まで無かった。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、加速器等の大型の装置を用いることなく、簡便な装置で試料中の水素及び重水素等の軽元素分布を非破壊で計測することのできる軽元素分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
重水素とトリチウムの核融合反応により生成する中性子のエネルギーは一定である。また、中性子発生と同時に発生するα線は、中性子の飛行方向とほぼ180度反対方向に放出されることから、α線の飛行方向を計測することで中性子の飛行方向を同定できる。中性子のエネルギーと飛行方向が同定でき、かつ、中性子が試料内で軽元素と弾性散乱することで放出される軽元素の放出方向とエネルギーが同定できれば、弾性散乱する以前の試料内での軽元素の位置が同定できる。
【0010】
したがって、上記課題は、α線検出器を備えた中性子発生管と、軽元素の飛行方向とエネルギーを同定可能な軽元素検出器を用い、それぞれの検出器からの信号を同時計数し、それに基づいて試料中の軽元素分布を解析することで解決できる。具体的には、本発明の軽元素分析装置は、重水素とトリチウムの核融合反応で中性子が発生する中性子発生管と、該中性子発生管で発生する中性子と同時に発生し、該中性子の飛行方向と反対方向に放出されるα線を検出するα線検出器と、前記中性子が試料に照射されることにより放出される軽元素を検出する軽元素検出器と、前記α線検出器からの出力信号と軽元素検出器からの出力信号が入力され、前記軽元素が前記α線と同時に発生した中性子によって放出された軽元素であることの判断を行う判断装置と、該判断装置で前記軽元素が前記α線と同時に発生した中性子によって放出されたと判断されたことをもって、予め収集された情報に基づいて前記試料中の軽元素分布を解析する解析装置とを備えていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施例)
以下、本発明の軽元素分析装置の一実施例を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1に本発明に係る軽元素分析装置の一実施例を示す。該図において、1は中性子発生管で、この中性子発生管1の内部にあるイオン源4において重水素イオンがイオン化され、イオン化された重水素イオンは、引出し電極6が作る電場によって引出され、加速電極7が作る電場によって加速され重水素イオンビーム5となる。この重水素イオンビーム5は、トリチウムが吸蔵してある水素吸蔵合金ターゲット3と衝突することで、重水素とトリチウムの核融合反応を起こす。核融合反応によってα線17と中性子18aは同時に発生し、この同時に発生したα線17と中性子18aは、ほぼ180度反対方向に飛行する。したがって、α線17の飛行方向を同定することで、中性子18aの飛行方向を同定できる。
【0013】
上記核融合反応によって発生したα線17は、中性子発生管1の内部に設置されたα線検出器2で検出され、検出されたα線検出器2からの信号は、α線検出器信号処理部11によってα線17のエネルギーに比例した波高値信号とα線17の検出時刻と関連したタイミング信号に変換される。重水素イオンビーム5が、水素吸蔵合金ターゲット3上に作るビームスポットとα線検出器2の設置位置によって決定される直線をα線17の飛行方向とする。したがって、α線17の飛行方向の同定には、ビームスポットの大きさとα線検出器2の大きさで決まる誤差を含んでいる。
【0014】
核融合反応によって発生した中性子18aは、試料9中で軽元素19aと弾性散乱し、散乱された軽元素19bは、試料9中でエネルギーを損失させた後、試料外部に設置したガス検出器10aを通過し、固体検出器10bに入射される。ガス検出器10aの各信号線からの信号は、ガス検出器信号処理部12aにおいて、各信号線に信号が発生した時刻に関連したタイミング信号に変換される。固体検出器10bからの信号は、固体検出器信号処理部12bにおいて、エネルギーに比例した波高値信号と軽元素を検出した時刻に関連したタイミング信号に変換される。固体検出器10bが散乱された軽元素19bを検出した時刻に関連したタイミング信号を基準に、各信号線に信号が発生した時刻に関連したタイミング信号との時刻差を計測することでドリフト時間が計測でき、したがって、電離位置が同定できる。これらの複数の電離位置情報から、軽元素の飛行方向を同定できる。
【0015】
α線検出器信号処理部11からのタイミング信号、ガス検出器信号処理部12aからの各信号線のタイミング信号及び固体検出器信号処理部12bからのタイミング信号を判断装置である同時計数回路部13に入力し、同時計数回路部13でα線17とそれと同時に発生した中性子18aによって散乱された軽元素19bであることの判断を行う。同時計数回路部13で同時と判断した事象に関して、α線検出器信号処理部11からのエネルギーに比例した波高値信号とα線を検出した時刻に関連したタイミング信号、ガス検出器信号処理部12aからの各信号線に信号を検出した時刻に関連したタイミング信号及び固体検出器信号処理部12bからのエネルギーに比例した波高値信号と散乱された軽元素19bを検出した時刻に関連したタイミング信号を、データ収集装置14で収集する。データ収集装置14で収集したデータからデ−タ解析装置15において試料9中の軽元素分布を求め、その結果を解析結果表示装置16で表示する。
【0016】
α線検出器信号処理部11からのタイミング信号、ガス検出器信号処理部12a及び固体検出器信号処理部12bからのタイミング信号を同時計数回路部13に入力し、この同時計数回路部13でα線17とそれと同時に発生した中性子18aによって散乱された軽元素19bであることの判断を行う。同時計数回路部13で同時と判断した事象に関して、α線検出器信号処理部11からのエネルギーに比例した波高値信号とα線を検出した時刻に関連したタイミング信号、ガス検出器信号処理部12a及び固体検出器信号処理部
12bからの散乱された軽元素19bのエネルギーに比例した波高値信号、散乱された軽元素19bの検出時刻と関連したタイミング信号及び散乱された軽元素19bの飛行方向決定に必要なタイミング信号に関連したタイミング信号を情報収集装置であるデータ収集装置14で収集する。データ収集装置14で収集したデータから、データ解析装置15において試料9中の軽元素分布を求め、その結果を解析結果表示装置16で表示する。図2に軽元素検出器の一例を示す。該図に示す軽元素検出器は、散乱された軽元素19bの飛行方向を同定するガス検出器10aと散乱された軽元素19bのエネルギー及びα線と同時計数した軽元素であることを同定するための固体検出器10bで構成される。
【0017】
図2に示す如く、核融合反応によって発生した中性子18aは、試料9中で軽元素19aと弾性散乱し散乱中性子18bとなる。一方、散乱された軽元素19bは、試料9中でエネルギーを損失させた後、ガス検出器10aに入射され、ガス検出器10aにおいて、散乱された軽元素19bの飛行方向が同定される。
【0018】
ガス検出器10aを通過した散乱された軽元素19bは固体検出器10bに入射し、固体検出器10bでエネルギー分析される。中性子18aは、重水素とトリチウムの核融合反応で発生するため、エネルギーが14MeVと既知である。したがって、中性子18aの入射方向と散乱された軽元素19bの散乱方向が同定できれば、エネルギーと運動量保存の法則から、散乱された軽元素19bの散乱直後のエネルギーが計算できる。散乱された軽元素19bは、試料9内での飛行距離に応じてエネルギーを損失する。したがって、散乱された軽元素19bの試料9を飛び出した時点におけるエネルギーを測定することで、試料9内での飛行距離を同定することができ、試料9中での飛行方向を同定することができる。試料9中での位置を同定した多数の散乱された軽元素19bの情報から、試料9中の軽元素濃度分布を測定することができる。
【0019】
図3に本発明に係るα線検出器の設置の一例を示す。該図に示す如く、α線検出器をα線検出素子2bと光電子増倍管等から成るα線信号変換部2aで構成し、α線検出素子
2bを中性子発生管1の内部に、α線信号変換部2aをα線検出器2の外部に設置している。α線検出素子2bとα線信号変換部2aの間には、光が透過するようにガラスがはめ込まれている。α線検出素子2bは、CeをドーピングしたYAlO等の無機シンチレーション素子でできており、α線17がα線検出素子2bに入射すると、α線17のエネルギーに比例した強度の光を発光する。発光した光は、α線検出素子2bとα線信号変換部2aの間のガラスを通過してα線信号変換部2aに入射され、α線信号変換部2aでエネルギーに比例した波高値信号に変換される。
【0020】
図4に本発明に係る軽元素検出器の設置の一例を示す。該図に示す如く、軽元素検出器を、散乱された軽元素19bの飛行方向を同定するためのガス検出器10aと軽元素のエネルギー及びα線と同時計数した軽元素であることを同定するための固体検出器10bで構成する。ガス検出器10aの後段には、飛行方向を同定するための信号に変換するガス検出器信号処理部12aを設置し、固体検出器10bの後段には、散乱された軽元素19bのエネルギーに比例した波高値信号及び散乱された軽元素19bの検出時刻と関連したタイミング信号に変換する固体検出器信号処理部12bを設置し、これらの信号を同時計数回路部に入力する。固体検出器10bとしては、Si等の半導体検出器を用いる。
【0021】
図5(a),図5(b)に本発明に係るガス検出器の一例を示し、図5(a)がガス検出器の断面図、図5bは正面図である。該図に示す如く、ガス検出器10aは、電極20に挟まれた信号線21とガス検出器外枠22で構成されている。電極20には、散乱された軽元素19bのエネルギー損失をできるだけ低く抑えるために、アルミ蒸着マイラー材等の薄い材料を用いる。信号線21は、表面の耐腐食性能を高めることと十分な強度を保たせるために、金メッキタングステン材等を用いる。ガス検出器10aの内部には、ガス25を充満させ、ガス導入口23からガスを導入し、ガス排出口24からガスを排出することでガスフローさせている。ガスフローが淀みなく行われるために、ガス導入口23とガス排出口24は、互い違いの位置に設置することが望ましい。使用するガス25としては、荷電粒子に対して電離しやすいアルゴンと放電が起こりにくいイソブタンの混合ガス等を用いる。放電が問題にならない場合は、電離度の高いアルゴンとメタンが90:10で混合されているガスを用いても良い。ガス検出器10aに入射した散乱された軽元素
19bは、ガス検出器10a内部で飛行方向に沿ってガス25を電離させる。電離電子は、電極20と信号線21が作る電場に従って、電極20側から信号線21側にドリフトする。ドリフト電子群26は、信号線21近傍の高い電場領域で電子雪崩を起こし、信号線21に信号を誘起する。ガスの種類が一定であれば、ドリフト電子群の移動速度がほぼ一定であることから、信号線21から遠いところで電離した場合は、信号の発生時刻が遅くなり、信号線21から近いところで電離した場合は、信号の発生時刻が早くなる。したがって、信号の発生時刻を計測することで電離した位置を同定することができ、複数の電離した位置の情報から、散乱された軽元素19bの飛行方向を同定できる。
【0022】
図6に本発明に係る軽元素分析装置の他の実施例を示す。該図において、10は軽元素検出器であり、上記核融合反応によって発生した中性子18aは、試料9中で軽元素と弾性散乱し、散乱された軽元素19bが試料9中でエネルギーを損失させた後、この軽元素検出器10に入射される。軽元素検出器10からの信号は、軽元素検出器信号処理部12によって、散乱された軽元素19bのエネルギーに比例した波高値信号と散乱された軽元素19bの検出時刻と関連したタイミング信号及び散乱された軽元素19bの飛行方向決定に必要なタイミング信号に変換される。
【0023】
α線検出器信号処理部11からのタイミング信号、軽元素検出器信号処理部12からのタイミング信号を判断装置である同時計数回路部13に入力し、この同時計数回路部13でα線17とそれと同時に発生した中性子18aによって散乱された散乱された軽元素
19bであることの判断を行う。同時計数回路部13で同時と判断した事象に関して、α線検出器信号処理部11からのエネルギーに比例した波高値信号とα線を検出した時刻に関連したタイミング信号、軽元素検出器信号処理部12からの散乱された軽元素19bのエネルギーに比例した波高値信号、散乱された軽元素19bの検出時刻と関連したタイミング信号及び散乱された軽元素19bの飛行方向決定に必要なタイミング信号に関連したタイミング信号を情報収集装置であるデータ収集装置14で収集する。データ収集装置
14で収集したデータから、データ解析装置15において試料9中の軽元素分布を求め、その結果を解析結果表示装置16で表示する。
【0024】
図7に各検出器信号のタイミングの一例を示す。α線検出器信号処理部11からの信号計測時刻に関連したタイミング信号を、同時計数回路部13でΔT2遅らせ、信号幅を
ΔT3に広げ同時計測ゲート信号とする。固体検出器信号処理部12bからのタイミング信号が、同時計測ゲート信号内に入ったときに、同時計数信号を発生させる。ΔT2及びΔT3の長さは、あらかじめ調整しておく。同時計数信号は同時計数回路部13でΔT5遅らせ、信号幅をΔT6に広げ波高値計測ゲート信号とする。α線検出器波高値信号(1)及び固体検出器波高値信号(2)は、それぞれΔT1及びΔT4遅らせることで、波高値計測ゲート信号内に入るように調整し、波高値計測ゲート信号内に入った時のみ、データ収集装置14でそれぞれの波高値信号の大きさを計測する。波高値信号は、エネルギーの大きさに比例することから、α線17及び散乱された軽元素19のエネルギー値を計測できる。同時計数信号は、ガス検出器の各信号線からのタイミング信号(1)〜(4)との時刻差を計測するためのスタート信号として用い、ガス検出器の各信号線からのタイミング信号(1)〜(4)をストップ信号とし、データ解析装置15で時刻差データを収集する。データ解析装置15では、時刻差データから散乱された軽元素19の飛行方向を計算し、散乱された軽元素19の飛行方向、散乱された軽元素19のエネルギー値から、散乱された軽元素19の発生位置を計算する。発生位置を同定した散乱された軽元素19の各位置での発生率から、散乱された軽元素19の試料9内の濃度分布が計算でき、計算した濃度分布を、解析結果表示装置16に表示する。
【0025】
図8に本発明に係る軽元素分析装置の他の実施例を、また、図9に軽元素検出器の配置の一例を示す。図8に示す如く、本実施例ではα線検出器2を複数個、中性子発生管1の内部に2次元に設置したものである。これにより、核融合反応により発生した中性子18aの複数の飛行方向を同定することができる。また、それぞれの中性子18aの飛行方向に対して、軽元素検出器10を図9の如く2次元的に設置することで、一度に複数箇所の軽元素濃度分布を計測できる。また、一個の軽元素検出器10においても、それを移動させながら測定することで複数箇所の軽元素濃度分布を計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例である軽元素分析装置のブロック図である。
【図2】軽元素検出の説明図である。
【図3】α線検出器設置の模式図である。
【図4】軽元素検出器設置の模式図である。
【図5(a)】ガス検出器断面図の模式図である。
【図5(b)】ガス検出器正面図の模式図である。
【図6】本願発明の他の実施例である軽元素分析装置のブロック図である。
【図7】各検出器信号のタイミング図である。
【図8】本願発明の他の実施例である軽元素分析装置のブロック図である。
【図9】軽元素検出器配置の正面図と側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1…中性子発生管、2…α線検出器、2a…α線信号変換部、2b…α線検出素子、3…水素吸蔵合金ターゲット、4…イオン源、5…重水素イオンビーム、6…イオン引出し電極、7…イオン加速電極、8…中性子発生管電力供給部、9…試料、10…軽元素検出器、10a…ガス検出器、10b…固体検出器、11…α線検出器信号処理部、12…軽元素検出器信号処理部、12a…ガス検出器信号処理部、12b…固体検出器信号処理部、13…同時計数回路部、14…データ収集装置、15…データ解析装置、16…解析結果表示装置、17…α線、18a…中性子、18b…散乱中性子、19a…軽元素、19b…散乱された軽元素、20…電極、21a…信号線、21b…信号線取出部、22…ガス検出器外枠、23…ガス導入口、24…ガス排出口、25…ガス、26…ドリフト電子群。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重水素とトリチウムの核融合反応で中性子が発生する中性子発生管と、
該中性子発生管で発生する中性子と同時に発生し、該中性子の飛行方向と反対方向に放出されるα線を検出するα線検出器と、
前記中性子が試料に照射されることにより放出される軽元素を検出する軽元素検出器と、
前記α線検出器からの出力信号と軽元素検出器からの出力信号が入力され、前記軽元素が前記α線と同時に発生した中性子によって放出された軽元素であることの判断を行う判断装置と、
該判断装置で前記軽元素が前記α線と同時に発生した中性子によって放出されたと判断されたことをもって、予め収集された情報に基づいて前記試料中の軽元素分布を解析する解析装置と
を備えていることを特徴とする軽元素分析装置。
【請求項2】
重水素とトリチウムの核融合反応で中性子が発生する中性子発生管と、
該中性子発生管で発生する中性子と同時に発生し、該中性子の飛行方向と反対方向に放出されるα線を検出するα線検出器と、
前記中性子が試料に照射されることにより放出される軽元素を検出する軽元素検出器と、
前記α線検出器からの信号を所定の信号に変換するα線信号処理部と、
前記軽元素検出器からの信号を所定の信号に変換する軽元素信号処理部と、
前記α線信号処理部と軽元素信号処理部からの出力信号が入力され、前記軽元素が前記α線と同時に発生した中性子によって放出された軽元素であることの判断を行う判断装置と、
前記α線信号処理部及び軽元素信号処理部からの出力信号を基に情報を収集する情報収集装置と、
前記判断装置で前記軽元素が前記α線と同時に発生した中性子によって放出されたと判断されたことをもって、前記情報収集装置に収集された情報に基づいて前記試料中の軽元素分布を解析する解析装置と
を備えていることを特徴とする軽元素分析装置。
【請求項3】
重水素とトリチウムの核融合反応で中性子が発生する中性子発生管と、
該中性子発生管で発生する中性子と同時に発生し、該中性子の飛行方向と反対方向に放出されるα線を検出するα線検出器と、
前記中性子が試料に照射されることにより放出される軽元素を検出する軽元素検出器と、
前記α線検出器からの信号を、前記α線のエネルギーに比例した波高値信号とα線の検出時刻と関連したタイミング信号に変換するα線信号処理部と、
前記軽元素検出器からの信号を、前記軽元素のエネルギーに比例した波高値信号と軽元素の検出時刻と関連したタイミング信号及び軽元素の飛行方向に必要なタイミング信号に変換する軽元素信号処理部と、
前記α線信号処理部からのタイミング信号及び軽元素信号処理部からのタイミング信号が入力され、前記軽元素が前記α線と同時に発生した中性子によって放出された軽元素であることの判断を行う判断装置と、
前記α線信号処理部からのエネルギーに比例した波高値信号と前記α線を検出した時刻に関連したタイミング信号、前記軽元素信号処理部からの前記軽元素のエネルギーに比例した波高値信号、前記軽元素の検出時刻と関連したタイミング信号及び前記軽元素の飛行方向に必要なタイミング信号を収集する情報収集装置と、
前記判断装置で前記軽元素が前記α線と同時に発生した中性子によって放出されたと判断されたことをもって、前記情報収集装置に収集された情報に基づいて前記試料中の軽元素分布を解析する解析装置と
を備えていることを特徴とする軽元素分析装置。
【請求項4】
前記中性子発生管における重水素とトリチウムの核融合反応は、前記中性子発生管内部に配置されているイオン源でイオン化された重水素イオンが引出し電極が作る電場によって引出され、加速電極が作る電場によって加速されて発生する重水素イオンビームが、トリチウムを吸蔵してある水素吸蔵合金ターゲットに衝突することで起こることを特徴とする請求項1,2、又は3に記載の軽元素分析装置。
【請求項5】
前記中性子は、前記試料に照射されることで該試料中で軽元素と弾性散乱し、散乱した軽元素が前記試料中でエネルギーを損失させた後、前記軽元素検出器に入力されることを特徴とする請求項1,2、又は3に記載の軽元素分析装置。
【請求項6】
前記α線検出器が複数個設置されると共に、夫々のα線と反対方向に飛行する中性子の夫々の飛行方向に対して軽元素検出器が設置されていることを特徴とする請求項1,2、又は3に記載の軽元素分析装置。
【請求項7】
前記α線検出器は、α線検出素子と光電子増倍管から形成され、前記α線検出素子が前記中性子発生管の内部に、前記光電子増倍管が前記中性子発生管の外部に夫々設置されていることを特徴とする請求項1,2、又は3に記載の軽元素分析装置。
【請求項8】
前記軽元素検出器は、前記軽元素の飛行方向を同定するためのガス検出器、前記軽元素のエネルギー及びα線と同時に発生した中性子によって放出された軽元素であることを同定するための固体検出器から形成され、前記ガス検出器の後段には、前記軽元素の飛行方向を同定するための信号に変換するガス検出器信号処理部が設置され、前記固体検出器の後段には、前記軽元素に比例した波高値信号及び軽元素の検出時刻と関連したタイミング信号に変換する固体検出器信号処理部がされ、前記ガス検出器信号処理部と固体検出器信号処理部からの信号が前記判断装置に入力されることを特徴とする請求項1,2、又は3に記載の軽元素分析装置。
【請求項9】
前記ガス検出器は、2枚の電極と、該電極間に挟まれた複数の信号線と、外枠とから形成され、前記外枠には、軽元素が前記ガス検出器に入射したときにイオン化するためのガスを前記電極間に導入するガス導入口及び排出するガス排出口を備えていることを特徴とする請求項8記載の軽元素分析装置。
【請求項10】
前記解析装置により解析された前記試料中の軽元素分布を表示する解析結果表示装置を更に備えていることを特徴とする請求項1,2、又は3に記載の軽元素分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−71799(P2007−71799A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261492(P2005−261492)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】