説明

輸液バッグの梱包方法及び輸液バッグ梱包体

【課題】輸送時に生じる振動や衝撃による輸液バッグの損傷を防止することができ、梱包材料の部品点数及び材料使用量を少なくして梱包コストの抑制及び開梱時の廃棄物量を低減することができる輸液バッグの梱包方法及び輸液バッグの梱包体を提供する。
【解決手段】輸液バッグBの全長とほぼ等しい長辺側の内寸L1、バッグ本体2の短辺部Wの2倍未満の長さの短辺側の内寸L2及び輸液バッグBを所定段数積重可能な内寸を有する包装箱6を用意して内袋5を包装箱6に挿入した後、2つの輸液バッグBのバッグ本体2の長辺部Hを互いに所定距離重ねて配列し、この配列方向の長さL3を前記L2以下とした状態で輸液バッグ対を開口部から挿入して所定段数積層する。内袋5の上端を折り畳み、最上段の輸液バッグ対の胴部が包装箱6本体の上端に接するか又は当該上端から一部突出した状態で短辺フラップ6a部及び長辺フラップ部6bを閉じて閉蓋する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤が充填された医療用の合成樹脂製輸液バッグを所定数包装箱に収納するための輸液バッグの梱包方法及びその方法を用いて輸液バッグを収納した梱包体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、点滴により患者に薬剤を投与するための輸液バッグの一例として、略矩形の合成樹脂製フィルムシートの四辺を加熱溶着することにより形成された薬剤充填室と薬剤充填室の開口部に取付けられた口栓とを有する輸液バッグ(所謂シングルバッグ)が周知である。この輸液バッグは、外装袋により個別に包装された後、例えば、段ボール箱等の包装箱に収納、梱包されて医療機関に運搬される。
【0003】
このような輸液バッグの梱包方法として、図5に示す方法が知られている。この方法によれば、図5(a)に示すように、薬剤が充填された輸液バッグBは、外装袋50により個別に包装される。包装された複数の輸液バッグBは横向きの状態で単列に並べられる。このとき、口栓30は同一方向に向けられる。次に、並べられた複数の輸液バッグBは、90度回転され、左右の辺を上下に位置させるとともに、口栓30を水平方向に向けた状態に配置される。続いて、隣接する輸液バッグBの間に小仕切り部材65を挿入する。
【0004】
次に、一対のアーム爪100aと把持機構100bを有する移戴装置100を用いて、並列配置された複数の輸液バッグBを一対のアーム爪100aで挟持し、例えば、ラップラウンド形式の段ボール箱からなる包装箱60内に収納する。その後、収納された複数の輸液バッグBの上に矩形の大仕切り部材66を配置する。そして、大仕切り部材66の上に、同様にして複数の輸液バッグBを収納し、上蓋61を閉じて閉蓋することにより梱包体70を完成する(図5(b)参照。)。
【0005】
輸液バッグの梱包方法の他の例では、輸液バッグを密封包装袋に包装した後、複数の包装済輸液バッグをプラスチック袋に入れて包装箱内に積層収納する。このとき、横方向に隣接する包装済の輸液バッグは部分的に重ねた状態で配置される。(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2600011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5に示す輸液バッグの梱包方法では、小仕切り部材65の上端と下端が包装箱60の内壁又は大仕切り部材66に対して固定されていないため、梱包体70に横方向の振動が加わると、小仕切り部材65が横ずれして包装箱60内に収納した輸液バッグBが倒れたり片側に寄ったりすることがある。そのため、輸送中の振動や衝撃により包装箱60内で輸液バッグBが擦れ合い、輸液バッグBにピンホールやシール部の剥離等の損傷を生じさせる恐れがある。
【0008】
特許文献1に開示されている輸液バッグの梱包方法にあっては、包装箱の種類について特に記載されていないが、密封包装袋に包装された各輸液バッグは、ラップラウンド形式のダンボール箱に収納されている。通常、ラップラウンド形式の段ボール箱は、天板(上蓋61)に開封用切断線が形成されているため、天板(上蓋61)の強度が低く、包装箱内に隙間なく輸液バッグを収納した場合、天板(上蓋61)が破断する危険がある。それ故、輸液バッグを収納した梱包体の内部は所定の空隙が形成されている。
【0009】
しかしながら、梱包体の内部に空隙が形成されていると、前述と同様に、輸送中に梱包体が受ける振動や衝撃により包装箱内で輸液バッグが相互に移動して擦れ合う結果、輸液バッグにピンホールやシール部の剥離等の損傷を生じさせるという問題がある。
【0010】
また、図5に示した輸液バッグの梱包方法と特許文献1に開示されている輸液バッグの梱包方法について梱包材料の部品点数及び材料使用量に着目すると、前者は、包装箱60(1個)、外装袋50(10個)、小仕切り部材65(8枚)及び大仕切り部材66(1枚)の梱包材料を必要とする。一方、後者は、包装箱(1個)、プラスチック袋(1枚)及び密封包装袋(収納個数分)の梱包材料を必要とする。
【0011】
このように、両梱包方法は梱包材料の部品点数と材料使用量が多く、梱包作業に手間がかかるとともに、コスト低減化の妨げになっていた。また、開梱後には、梱包材料を廃棄あるいはリサイクルするが、梱包材料の使用量が多いということは、必然的に廃棄物量がそれだけ多くなることを意味し、処理費用が嵩むといった問題も有している。
【0012】
したがって、本発明は、このような問題点を解決することを課題としてなされたものであり、その目的とするところは、輸送時に生じる振動や衝撃による輸液バッグの損傷を防止することができ、梱包材料の部品点数及び材料使用量を少なくして梱包コストの抑制及び開梱時の廃棄物量を低減することができる輸液バッグの梱包方法及び輸液バッグの梱包体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の輸液バッグの梱包方法は、薬剤が充填される薬剤充填室を有し、平面形状が長辺と短辺とからなる略矩形状に形成されたバッグ本体及び該バッグ本体の開口部に取付けられた口栓を有する輸液バッグを包装箱の内部に複数収納する輸液バッグの梱包方法である。相互に対向して設けられた短辺フラップ部及び長辺フラップ部を折り曲げて、輸液バッグを出し入れする開口部を閉塞する直方体状の包装箱を用意し、用意される包装箱本体は、バッグ本体短辺の2倍未満の長さを有する短辺側の内寸と、輸液バッグの口栓の先端からバッグ本体の下端までの当該輸液バッグの全長とほぼ等しい長さを有する長辺側の内寸と、輸液バッグを所定段数積み重ねた時に最上段に位置する輸液バッグの胴部が当該包装箱本体の上端に接する又は当該上端から一部突出する長さを有する高さ方向の内寸とで形成され、包装箱の短辺フラップ部及び長辺フラップ部を両開きにした状態で包装箱の内寸よりも大きな略箱状の樹脂フィルムからなる内袋を包装箱内に挿入し、一方の輸液バッグのバッグ本体長辺と他方の輸液バッグのバッグ本体長辺とを互いに一部オーバーラップさせて配列し、この配列方向の長さを包装箱の短辺側の内寸以下とした状態で2つの輸液バッグを包装箱の開口部から挿入し、さらに、前記状態の2つの輸液バッグを所定段数積み重ねて前記包装箱内に収納した後、前記内袋の上端を閉止し、次いで、短辺フラップ部及び長辺フラップ部を閉じて閉蓋する。
【0014】
前記包装箱に収納されている複数の輸液バッグは、口栓が一方向に向いて位置し、前記包装箱は、A式ケース(JIS Z1507記載コード番号0201タイプ)からなるダンボール箱であってもよい。
【0015】
薬剤容量が1000mLの輸液バッグを前記包装箱に収納する場合、前記一方の輸液バッグのバッグ本体長辺と他方の輸液バッグのバッグ本体長辺とを互いに一部オーバーラップさせるオーバーラップ代が約20mmであることが好ましい。
【0016】
本発明の輸液バッグ梱包体は、薬剤が充填される薬剤充填室を有し、平面形状が長辺と短辺とからなる略矩形状に形成されたバッグ本体及び該バッグ本体の開口部に取付けられた口栓を有する輸液バッグを内部に複数収納した包装箱からなる輸液バッグ梱包体である。前記包装箱は、相互に対向して設けられた短辺フラップ部及び長辺フラップ部を折り曲げて、前記輸液バッグを出し入れする開口部を閉塞する直方体状である。包装箱本体は、バッグ本体短辺の2倍未満の長さを有する短辺側の内寸と、輸液バッグの口栓の先端からバッグ本体の下端までの当該輸液バッグの全長とほぼ等しい長さを有する長辺側の内寸と、輸液バッグを所定段数積み重ねた時に最上段に位置する輸液バッグの胴部が当該包装箱本体の上端に接する又は当該上端から一部突出する長さを有する高さ方向の内寸とで形成されている。前記輸液バッグ梱包体は、包装箱の短辺フラップ部及び長辺フラップ部を両開きにした状態で包装箱の内寸よりも大きな略箱状の樹脂フィルムからなる内袋を包装箱内に挿入し、一方の輸液バッグのバッグ本体長辺と他方の輸液バッグのバッグ本体長辺とを互いに一部オーバーラップさせて配列し、この配列方向の長さを包装箱の短辺側の内寸以下とした状態で2つの輸液バッグを包装箱の開口部から挿入し、さらに、前記状態の2つの輸液バッグを所定段数積み重ねて包装箱内に収納した後、内袋の上端が閉止され、短辺フラップ部及び長辺フラップ部が閉じられて閉蓋されている。
【0017】
前記包装箱に収納されている複数の輸液バッグは、口栓が一方向に向いて位置し、前記包装箱は、A式ケース(JIS Z1507記載コード番号0201タイプ)からなるダンボール箱である梱包体であってもよい。
【0018】
薬剤容量が1000mLの輸液バッグを前記包装箱に収納する場合、前記一方の輸液バッグのバッグ本体長辺と他方の輸液バッグのバッグ本体長辺とを互いに一部オーバーラップさせるオーバーラップ代が約20mmである梱包体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明の輸液バッグの梱包方法によれば、包装箱内で輸液バッグ同士が互いに密着し、さらに輸液バッグが内袋を介して包装箱の内壁と密着するので、各輸液バッグの包装箱内での相互に移動する動きが規制され、所定段数積み重ねられた所定個数の輸液バッグで構成される集積体としての形態が崩れない状態を保持できる輸液バッグ梱包体を得ることができる。
【0020】
これにより、梱包体の輸送時や保管時、当該梱包体を90度回転させて縦向きにした状態にしても、上段に位置する輸液バッグが下方にずり落ちることがなく、上段に位置する輸液バッグの荷重が下段に位置する輸液バッグにかかることを効果的に回避できる。また、梱包体を輸送する場合、梱包体に振動や衝撃が付与されても、包装箱内では複数の輸液バッグで構成される集積体の動きが規制されているので、包装箱内で相互に擦れ合うことによる傷やピンホールの発生を抑制できる。しかも、包装箱内には内袋が介在しているので、包装箱の内壁と輸液バッグとが直接接触することがなく、輸液バッグの損傷抑制効果を高めることができる。
【0021】
さらに、本発明の輸液バッグの梱包方法及び輸液バッグ梱包体によれば、梱包材料の部品点数及び材料使用量を少なくして梱包コストの抑制及び開梱時の廃棄物量を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る輸液バッグの梱包方法及び輸液バッグ梱包体の梱包対象である輸液バッグの一例を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態において、輸液バッグを包装箱へ収納する過程を説明する斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る輸液バッグの梱包方法を説明する側面断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る輸液バッグ梱包体における運搬時及び保管時の状態を説明する側面断面図である。
【図5】従来の輸液バッグの梱包方法及び輸液バッグ梱包体を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る輸液バッグ梱包体の落下耐久試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る輸液バッグの梱包方法及び輸液バッグ梱包体について、添付図面に従って説明する。なお、「上部」、「下部」及びそれらの用語を含む用語等を便宜上用いるが、これらは発明の理解を容易にするためであり、それらの用語によって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されるべきではない。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る輸液バッグの梱包方法及び輸液バッグ梱包体の梱包対象である輸液バッグの一例を示している。この輸液バッグBは、大略、内部に薬剤充填部20を有するバッグ本体2とバッグ本体2の開口部に取付けられた薬剤排出用の口栓部3とからなるシングルバッグである。バッグ本体2は、対向する2枚の合成樹脂製フィルムシート1,1の周縁部4を熱融着処理することにより長辺部Hと短辺部Wを有する縦長の扁平袋状に形成され、内部に薬剤充填部20を収容している。また、バッグ本体2の下端部には吊り下げ用のフック孔9が形成されている。
【0025】
口栓部3は、合成樹脂の部材で構成され、薬剤充填時、バッグ本体2の長手方向上部に位置している。この口栓部3は、針刺し用ゴム栓を備えたポート3aを先端に有する筒状の薬剤排出管3bからなり、薬剤排出管3bを対向する2枚の合成樹脂製フィルムシート1,1の内壁の間に狭持することにより合成樹脂製フィルムシート1,1に保持されて薬剤充填部20に連通している。
【0026】
薬剤充填部20は、薬剤が充填されることにより、合成樹脂製フィルムシート1,1が扁平状態から略筒状に変形する。例えば、薬剤充填部20の内容量は1000mLとされ、この容量の輸液バッグBのポート3aの先端からバッグ本体2の下端までの当該輸液バッグBの全長は約338mm、短辺部Wの長さは約120mmである。
【0027】
バッグ本体2を構成する合成樹脂製フィルムシート1,1は、柔軟性を有するポリオレフィン系樹脂材料で構成されていることが好ましい。より好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン材料からなるものである。また、合成樹脂製フィルムシート1,1は単層または多層構造であり、その厚みは約100〜500μm程度である。さらに、合成樹脂製フィルムシート1,1にはアルミニウム箔等がラミネートされていてもよい。
【0028】
なお、本発明の対象となる輸液バッグは、例えば、本出願人が特開2006−034788号公報にて開示している形態の輸液バッグであってもよい。
【0029】
次に、本発明の実施の形態に係る輸液バッグの梱包方法及び輸液バッグ梱包体について、図2及び図3を参照して説明する。先ず、図2に示すように、天面及び底面を構成する短辺フラップ部6a及び長辺フラップ部6bを備えている直方体状の包装箱6を用意する。
【0030】
本実施の形態の包装箱6は、本体の外形寸法が例えば、344mm(長辺)×226mm(短辺)×255mm(高さ)のA式ケース(JIS Z1507記載コード番号0201タイプ)からなるダンボール箱で構成されている。この包装箱6本体の長辺側の内寸L1は、上記内容量が1000mLの輸液バッグBの全長(長辺方向の長さ)とほぼ等しい長さに設定されている。また、短辺側の内寸L2は、バッグ本体2の短辺方向の長さの2倍未満、例えば、220mmに設定されている。さらに、包装箱6本体の高さ方向の内寸は、上記内容量の輸液バッグBを所定段数積み重ねたとき、輸液バッグBの胴部(バッグ本体2)が包装箱6本体の上端に接する又は当該上端から一部突出する高さに設定されている。本実施の形態では、輸液バッグBを5段積することが可能な高さに設定されている。
【0031】
図において、包装箱6の短辺フラップ部6a,6aは、例えば、それらのフラップ長さが同じであってもよいし、一方のフラップ長さが他方のフラップ長さよりも長くてもよい。いずれの形態であっても、封緘時に包装箱6内に収納されている輸液バッグBに対して上方から均等に押し付けることができるよう、短辺フラップ部6a,6aを閉じたときに対向するフラップ部の先端が互いに近接する形態が好ましい。
【0032】
なお、包装箱6本体の各内寸(実質的に包装箱本体の外形寸法に関係する。)は、収納する輸液バッグBの全長及び短辺方向の長さ(実質的に薬剤充填量に関係する。)と輸液バッグBの収納個数に応じて適宜変更可能であることはいうまでもない。
【0033】
輸液バッグBの収納時、包装箱6は、所定位置に戴置し、天面を構成する短辺フラップ部6a,6a及び長辺フラップ部6b,6bを外方に折り曲げて両開き状態にする。その後、包装箱6本体の内寸(長辺、短辺及び高さ)よりも大きな略箱型形状の内袋5を包装箱6の開口部から挿入する。包装箱6内に挿入した内袋5は、例えば、テープ等により内袋5の上端4箇所を短辺フラップ部6a,6a及び長辺フラップ部6b,6bに仮固定してもよいし、内袋5の上端を折り返して短辺フラップ部6a,6a及び長辺フラップ部6b,6bの端部に引掛けて仮固定してもよい。
【0034】
なお、内袋5は、輸液バッグBを包装箱6内へ効率良く収納でき、開梱時には開封しやすい材料であれば特に限定するものではないが、取り扱いが良好な材料、例えば、厚みが50μm±20μm程度の低密度ポリエチレン(LDPE)材料で構成されていることが好ましい。
【0035】
次に、輸液バッグBを2個用意し、一方の輸液バッグB1と他方の輸液バッグB2の各口栓部3,3を同一方向に向ける。そして、一方の輸液バッグB1のバッグ本体2及び他方の輸液バッグB2のバッグ本体2の長辺部H同士を所定距離t、例えば、約20mmオーバーラップさせて並列に配列し、輸液バッグB1,B2の各バッグ本体2,2を並列に配列した配列方向(横方向)の長さL3を包装箱6本体の短辺側の内寸L2(220mm)以下とする。
【0036】
なお、輸液バッグB1,B2のオーバーラップ代tの「約20mm」は、各輸液バッグB1,B2を理想的に配列した状態を示したものであり、2つの輸液バッグBのバッグ本体2の長辺部H同士を部分的に重ねる実際の作業は人的又は機械的に実施されるため、ある程度のばらつきが生じる。したがって、輸液バッグB1,B2のオーバーラップ代tの「約20mm」は厳密な値を意図するものではなく、ばらつきを当然に含むものである。
【0037】
輸液バッグ対B1,B2は、上記配列状態が維持されたまま、例えば真空吸着移戴装置10により真空吸着され、包装箱6にその上部開口部から挿入され、包装箱6の底部に置かれる。続いて、輸液バッグ対B1,B2と同様に並列配置された別の輸液バッグ対B3,B4を輸液バッグ対B1,B2上に積み重ねる。同様に、輸液バッグ対B5,B6、B7,B8及びB9,B10を順に積み重ねて5段積みにする。その後、内袋5の上端を折り畳んで当該内袋5の開口を閉止する。
【0038】
内袋5の開口を閉止する処理は、内袋5の上端を折り畳んで開口を閉止するほか、内袋5の上端を包装箱6の内壁に沿って底面側に向けて押し込むようにしてもよい。また、例えば、内袋5の開口はテープ又はヒートシール等で封止してもよい。
【0039】
閉蓋前の状態では、輸液バッグB1〜B10からなる集積体の最上段に位置する輸液バッグ対B9,B10は、そのバッグ本体2,2が包装箱6本体の上端に接するか又は当該上端から一部突出する。この状態で先ず、短辺フラップ部6a,6aを閉じると、最上段の輸液バッグ対B9,B10のバッグ本体2,2が短辺フラップ部6a,6aにより押し付けられ、この押し付け力が下段の輸液バッグ対B7,B8、B5,B6、B1,B2に伝達する。また、各輸液バッグBが隣接する輸液バッグBから受ける反発力により、包装箱6内で各輸液バッグB1〜B10同士が密着する。次いで、長辺フラップ部6b,6bを閉じて例えばホットメルト接着剤等で封止することにより、梱包体7が完成する。
【0040】
このように、本実施の形態の輸液バッグの梱包方法によれば、包装箱6内で輸液バッグB1〜B10同士が互いに密着し、さらに輸液バッグB1〜B10が内袋5を介して包装箱6の内壁と密着するので、各輸液バッグB1〜B10の包装箱6内での相互移動が規制される。その結果、5段積みされた10個の輸液バッグBで構成された集積体は、振動や衝撃が作用しても集積状態を維持する。
【0041】
輸液バッグBを収納した梱包体7の輸送時及び保管時、図3に示す状態で多数の輸液バッグBが上下に重なるように梱包体7を保つと、各輸液バッグBはその上に積まれた輸液バッグBの重量を長時間にわたって受け続ける。この状態は、バッグ本体2の保護及びシール部の剥離防止の観点から、好ましいことではない。したがって、図4に示すように、梱包体7は、図3の状態から時計回り方向に90度回転させて縦向きに位置させ、各輸液バッグB1〜B10が他の輸液バッグBから受ける重量をできるだけ小さくすることが好ましい。
【0042】
ただし、図4に示すように輸液バッグBを縦向きに配置した場合(すなわち、輸液バッグBの短辺部を上下方向に向けた場合)、上段の輸液バッグが下段の隣接する輸液バッグの間に落ち込み易くなる。しかし、本実施の形態の輸液バッグの梱包方法により得られた輸液バッグ梱包体7では、上述のように、包装箱6内で輸液バッグB1〜B10同士が互いに密着するとともに、それらが内袋5を介して包装箱6の内壁と密着することにより生じる摩擦力で、梱包体7の輸送時や保管時に梱包体7を90度回転させて縦向きにした状態にしても、上段に位置する輸液バッグB1,B3,B5,B7,B9が下方にずり落ちることがなく、各輸液バッグB1〜B10は包装箱6内への収納時の位置を維持できる。その結果、上段に位置する輸液バッグB1,B3,B5,B7,B9の荷重が下段に位置する輸液バッグB2,B4,B6,B8,B10にかかることを回避できる。
【0043】
また、梱包体7を90度回転させて縦向きにした状態で輸送する場合、梱包体7に振動や衝撃が作用しても、包装箱6内で輸液バッグB1〜B10の動きが規制されているので、相互に擦れ合うことによる傷やピンホールの発生を抑制できる。しかも、包装箱6内には内袋5が介在しているので、包装箱6の内壁と輸液バッグBとが直接接触することがなく、輸液バッグBの損傷抑制効果を高めることができる。
【0044】
さらに、梱包体7は、一つの包装箱6と一枚の内袋5で構成されるため、従来の輸液バッグ梱包体に比べて梱包材料の部品点数が極めて少ない。そのため、梱包作業に手間がかからないばかりでなく、梱包材料の廃棄処理費用を大幅に抑えることができる。
【0045】
次に、本実施の形態の輸液バッグの梱包方法により得られた輸液バッグ梱包体7の落下耐久試験及びその試験結果について、図6を参照して説明する。この落下耐久試験では、JISの包装貨物の評価試験方法通則(JIS Z 0200−1999)、包装貨物の落下耐久試験方法(JIS Z 0202−1994)に従い、輸液バッグBを10個(2列×5段)収納した梱包体7をランダムに5個抽出し、それぞれの梱包体7について、底面(ア),左側面(イ),右側面(ウ),天面(エ),前面(オ),背面(カ)の部位と、(キ)〜(ケ)の各稜線部と、角部(コ)の合計10箇所の部位を80cmの高さから地面に向って垂直に落下させ、収納されている10個の輸液バッグBのバッグ本体2に生じるピンホールやシール部の剥離等の損傷の有無及び包装箱6の外観状態を確認した。
【0046】
「試験例1.」では、本実施の形態の図1に示した輸液バッグBを10個収納した梱包体7−(1)〜7−(5)について試験を実施した。その結果、梱包体7−(1)〜7−(5)の全てにおいて、包装箱6の前面上部の稜線部が破れて包装箱6自体が開封(※1参照。)したが、各梱包体7−(1)〜7−(5)に収納されている全ての輸液バッグBにピンホールやシール部の剥離等の損傷が生じなかった。
【0047】
「試験例2.」では、本実施の形態の図1に示した輸液バッグBに代えて、薬剤充填部20内に封入されている空気を少なくした透析機器の洗浄に用いる輸液バッグB(薬剤容量、バッグ本体2の外形寸法等は図1に示したものと同様である。)を10個収納した梱包体7−(6)〜7−(10)について試験を実施した。その結果、梱包体7−(6)では、包装箱6の背面上部の稜線部の約半分が破れ、かつ、包装箱8の左右側面に膨れが発生した(※2参照。)。梱包体7−(7)、梱包体7−(8)及び梱包体7−(10)では、包装箱6の前面上部の稜線部の約半分が破れ、かつ、包装箱8の左右側面に膨れが発生した(※3参照。)。梱包体7−(9)では、包装箱8の左右側面に膨れが発生した(※4参照。)。しかし、各梱包体7−(6)〜7−(10)に収納されている全ての輸液バッグBにピンホールやシール部の剥離等の損傷が生じなかった。
【0048】
これらの試験結果からも明らかなように、梱包体7を所定の高さから地面に向って自由に落下させた場合、包装箱6本体に損傷が生じるものの、包装箱6内に収納されている輸液バッグBの損傷は皆無である。このように、本実施の形態の輸液バッグの梱包方法によれば、輸液バッグBの耐衝撃性が高められた輸液バッグ梱包体が得られることが確認できた。
【0049】
今回、開示した実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は、上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1 合成樹脂製フィルムシート
2 バッグ本体
3 口栓部
4 周縁部
5 内袋
6 包装箱
6a 短辺フラップ部
6b 長辺フラップ部
7 梱包体
B 輸液バッグ
L1 長辺側の内寸
L2 短辺側の内寸
t オーバーラップ代

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が充填される薬剤充填室を有し、平面形状が長辺と短辺とからなる略矩形状に形成されたバッグ本体及び該バッグ本体の開口部に取付けられた口栓を有する輸液バッグを包装箱の内部に複数収納する輸液バッグの梱包方法であって、
相互に対向して設けられた短辺フラップ部及び長辺フラップ部を折り曲げて、前記輸液バッグを出し入れする開口部を閉塞する直方体状の包装箱を用意し、
用意される前記包装箱本体は、前記バッグ本体短辺の2倍未満の長さを有する短辺側の内寸と、前記輸液バッグの口栓の先端から前記バッグ本体の下端までの当該輸液バッグの全長とほぼ等しい長さを有する長辺側の内寸と、前記輸液バッグを所定段数積み重ねた時に最上段に位置する輸液バッグの胴部が当該包装箱本体の上端に接する又は当該上端から一部突出する長さを有する高さ方向の内寸とで形成され、
前記包装箱の短辺フラップ部及び長辺フラップ部を両開きにした状態で前記包装箱の内寸よりも大きな略箱状の樹脂フィルムからなる内袋を前記包装箱内に挿入し、
一方の輸液バッグのバッグ本体長辺と他方の輸液バッグのバッグ本体長辺とを互いに一部オーバーラップさせて配列し、この配列方向の長さを前記包装箱の短辺側の内寸以下とした状態で2つの輸液バッグを前記包装箱の開口部から挿入し、
さらに、前記状態の2つの輸液バッグを所定段数積み重ねて前記包装箱内に収納した後、前記内袋の上端を閉止し、
次いで、前記短辺フラップ部及び長辺フラップ部を閉じて閉蓋することを特徴とする輸液バッグの梱包方法。
【請求項2】
前記包装箱に収納されている複数の輸液バッグは、前記口栓が一方向に向いて位置し、
前記包装箱は、A式ケース(JIS Z1507記載コード番号0201タイプ)からなるダンボール箱であることを特徴とする請求項1に記載の輸液バッグの梱包方法。
【請求項3】
薬剤容量が1000mLの輸液バッグを前記包装箱に収納する場合、前記一方の輸液バッグのバッグ本体長辺と他方の輸液バッグのバッグ本体長辺とを互いに一部オーバーラップさせるオーバーラップ代が約20mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の輸液バッグの梱包方法。
【請求項4】
薬剤が充填される薬剤充填室を有し、平面形状が長辺と短辺とからなる略矩形状に形成されたバッグ本体及び該バッグ本体の開口部に取付けられた口栓を有する輸液バッグを内部に複数収納した包装箱からなる輸液バッグ梱包体であって、
前記包装箱は、
相互に対向して設けられた短辺フラップ部及び長辺フラップ部を折り曲げて、前記輸液バッグを出し入れする開口部を閉塞する直方体状であって、
前記包装箱本体は、前記バッグ本体短辺の2倍未満の長さを有する短辺側の内寸と、前記輸液バッグの口栓の先端から前記バッグ本体の下端までの当該輸液バッグの全長とほぼ等しい長さを有する長辺側の内寸と、前記輸液バッグを所定段数積み重ねた時に最上段に位置する輸液バッグの胴部が当該包装箱本体の上端に接する又は当該上端から一部突出する長さを有する高さ方向の内寸とで形成され、
前記輸液バッグ梱包体は、
前記包装箱の短辺フラップ部及び長辺フラップ部を両開きにした状態で前記包装箱の内寸よりも大きな略箱状の樹脂フィルムからなる内袋を前記包装箱内に挿入し、
一方の輸液バッグのバッグ本体長辺と他方の輸液バッグのバッグ本体長辺とを互いに一部オーバーラップさせて配列し、この配列方向の長さを前記包装箱の短辺側の内寸以下とした状態で2つの輸液バッグを前記包装箱の開口部から挿入し、
さらに、前記状態の2つの輸液バッグを所定段数積み重ねて前記包装箱内に収納した後、前記内袋の上端が閉止され、
前記短辺フラップ部及び長辺フラップ部が閉じられて閉蓋されていることを特徴とする輸液バッグ梱包体。
【請求項5】
前記包装箱に収納されている複数の輸液バッグは、前記口栓が一方向に向いて位置し、
前記包装箱は、A式ケース(JIS Z1507記載コード番号0201タイプ)からなるダンボール箱であることを特徴とする請求項4に記載の輸液バッグ梱包体。
【請求項6】
薬剤容量が1000mLの輸液バッグを前記包装箱に収納する場合、前記一方の輸液バッグのバッグ本体長辺と他方の輸液バッグのバッグ本体長辺とを互いに一部オーバーラップさせるオーバーラップ代が約20mmであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の輸液バッグ梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−102138(P2011−102138A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257854(P2009−257854)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000238201)扶桑薬品工業株式会社 (42)
【Fターム(参考)】