説明

輸液バッグ外装袋

【課題】酸素ガスバリア性、耐衝撃性、耐ピンホール性、透明性、加熱加圧殺菌適性、及び柔軟性を兼ね備えた輸液バッグ外装袋を提供する。
【解決手段】ポリアミド系樹脂フィルム(1)の一方の面に、炭素含有酸化珪素層(2)、ガスバリア性塗布膜(3)、及びプライマー剤層(4)を順に設けたガスバリア性フィルムの該プライマー剤層に、シーラントフィルム(5)を積層した積層体を製袋して得られた輸液バッグ外装袋を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を充填したプラスチック容器を包装するための輸液バッグ外装袋に関し、具体的には、酸素によって変質し易い輸液を充填したプラスチック容器、例えば輸液バッグを包装するのに特に適した輸液バッグ外装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤を封入するためのプラスチック容器、例えば輸液バッグは、薬剤と直接接することとなるため、添加剤無添加であることが多い。したがって、薬剤が酸素により変質し易い成分を含む場合は、該添加剤無添加のプラスチック容器を、酸素ガスバリア性の外装袋でさらに包装する必要がある。このような外装袋には、酸素ガスバリア性の他に、耐衝撃性、耐ピンホール性、及び透明性が要求される。また、内容物を充填後に加熱加圧殺菌する場合は、上記に加え、さらに加熱加圧殺菌適性も必要となる。
【0003】
これら全ての要求を満たすために、輸液バッグ外装袋を構成する積層体は、一般的に少なくとも3枚のフィルム、すなわち、ガスバリア層を設けたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと、耐衝撃性及び耐ピンホール性等に優れたポリアミド系樹脂フィルムと、シーラントフィルムとを含む必要があるとされていた。また、ポリアミド系樹脂フィルム上にガスバリア層を設けることも可能ではあるが、該フィルムは、吸水性が高く、加熱加圧処理等により寸法変化を起こすので、その場合は、ガスバリア層の剥離やクラックの発生等を防止するために、PETフィルム等の裏打ちフィルムを貼り合わせることが必須であった。
【0004】
例えば、特許文献1は、中間のナイロンフィルムにガスバリア性を付与した「二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム/ガスバリア性ナイロンフィルム/シーラントフィルム」(ここで、「/」はフィルム間の境界面を意味する)の積層体からなる輸液バッグ外装袋を開示している。また、特許文献2は、ガスバリア層に加えてさらに酸素吸収性樹脂層を有するフィルムを用いた積層体からなる輸液バッグ外装袋を開示している。
【0005】
しかしながら、これらの輸液バッグ外装袋は、いずれも3枚以上のフィルムを貼り合わせた積層体からなるものであり、このような積層体は、総厚みが厚く、腰強度が高い。したがって、該積層体を重ねて作られる輸液バッグ外装袋、特にそのシール部は極めて硬く、柔軟性を欠き、袋開封時に使用者が指を切ったり、角部で突き刺したりする等の危険性が指摘されていた。
【特許文献1】特開2006−256626号公報
【特許文献2】特開平7−67936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような問題に鑑み、輸液バッグ外装袋として必要な酸素ガスバリア性、耐衝撃性、耐ピンホール性、透明性、及び加熱加圧殺菌適性を備え、且つ柔軟性を有する薄く柔らかな素材からなる輸液バッグ外装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し、ガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルムとシーラントフィルムとの2枚のフィルムを積層した2層型積層体からなる輸液バッグ外装袋を開発した。
【0008】
具体的には、ポリアミド系樹脂フィルムの一方の面に、プラズマ化学気相成長法により形成した炭素含有酸化珪素層;一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は炭素数1〜8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す)で表される1種又はそれ以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及びエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂のいずれか一方又は両方とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物からなるガスバリア性塗布膜;及び、プライマー剤層;を順に設けたガスバリア性フィルムの該プライマー剤層に、シーラントフィルムを積層した積層体を製袋して得られた輸液バッグ外装袋、が上記課題を解決し得ることを見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明の輸液バッグ外装袋を構成する積層体は、「ポリアミド系樹脂フィルム/シーラントフィルム」からなる2層型積層体であり、裏打ちフィルムを貼り合わせて3層構成にする必要がない。また、3枚以上のフィルムからなる従来の積層体よりも、コストがかからず、容易に製造することができるだけでなく、優れた酸素ガスバリア性を示し、且つ耐衝撃性、耐ピンホール性、透明性にも優れている。
【0010】
さらに、本発明の輸液バッグ外装袋は、内部の輸液を無菌化するために高温高圧の殺菌処理に付しても、変形、変質することがなく、優れたレトルト適性を示す。さらに、柔軟性に富むため、開封時に使用者が指を切る等の危険性が低く、安全性に優れている。
【0011】
特に、腹膜透析液のような輸液を封入する輸液バッグは、病院での使用のみならず、患者自らが在宅にて使用する場合が多いので、薄く柔らかな2層型積層体からなる本発明の輸液バッグ外装袋は、嵩張らず、使用後の廃棄物が減容化される点でも好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明について、以下に図面等を用いてさらに詳しく説明する。
<1>本発明の輸液バッグ外装袋を構成する積層体の層構成
まず、本発明において用いられる積層体の層構成について説明する。図1は、本発明の輸液バッグ外装袋を構成する積層体の層構成の一例を示す断面図である。
該積層体は、図1に示すように、基材フィルムとしてのポリアミド系樹脂フィルム1の一方の面に、炭素含有酸化珪素層2、ガスバリア性塗布膜3、プライマー剤層4、及びシーラントフィルム5を順に積層した構成を基本構造とするものである。
本発明において、炭素含有酸化珪素層は、単層であっても、2層以上からなる多層であってもよい。
【0013】
<2>基材フィルム
本発明において、本発明に係る輸液バッグ外装袋を構成する積層体の製造法、使用する材料等について説明する。まず、本発明において、積層体を構成する基材フィルムとして、炭素含有酸化珪素層又はガスバリア性塗布膜を製膜化する条件等に耐え、また、その炭素含有酸化珪素層又はガスバリア性塗布膜等の膜特性を損なうことなく良好に保持し得ることができるポリアミド系樹脂フィルムを好ましく使用することができる。一軸又は二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、一層高い強度、耐薬品性及び透明性を有するため、特に好ましい。
【0014】
本発明において、上記のポリアミド系樹脂フィルムとしては、例えば、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6等のポリアミド系樹脂フィルムを使用することができる。
これらのポリアミド系樹脂フィルムの厚さとしては、6〜200μm、より好ましくは9〜100μmが望ましい。
また、上記のポリアミド系樹脂フィルムとしては、必要ならば、その表面にアンカーコート剤等をコーティングして表面平滑化処理等を施すこともできる。
【0015】
本発明において、基材フィルムとなるポリアミド系樹脂フィルムは、例えば、上記の樹脂1種又はそれ以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の製膜化法により、又は、2種以上の樹脂を使用して多層共押し出し製膜化法により製造することができる。さらに、所望により、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラー方式等を利用して一軸ないし二軸方向に延伸することができる。
なお、上記の製膜化に際して種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて任意に添加することができる。一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料等を使用することができ、さらには、改質用樹脂等も使用することができる。
【0016】
また、本発明において、ポリアミド系樹脂フィルムの表面は、炭素含有酸化珪素層等との密接着性等を向上させるために、必要に応じて、予め、所望の表面処理層を設けることができる。表面処理層としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理等の前処理を任意に施すことにより、コロナ処理層、オゾン処理層、プラズマ処理層、酸化処理層等を設けることができる。
ポリアミド系樹脂フィルムは、基材フィルムとして一般に用いられるポリエステル系樹脂フィルムと比較すると、水分、水蒸気等の吸湿により膨潤し、寸法変化が2〜10倍程度と大きく、その寸法変化に炭素含有酸化珪素層が追従することが極めて困難であることが知られている。したがって、基材フィルムとしてポリアミド系樹脂フィルムを使用することは、本来かなりの注意を要する。本発明においては、ポリアミド系樹脂フィルムの膨潤、寸法変化等を抑制するための裏打ちフィルムは必須ではないが、場合によっては、ポリアミド系樹脂フィルムの、炭素含有酸化珪素層を設けない側の面に、耐水性膜を設けてもよい。耐水性膜としては、例えば、樹脂をビヒクルの主成分とする樹脂組成物によるコーティング膜等を使用することができる。
【0017】
<3>炭素含有酸化珪素層
本発明において、炭素含有酸化珪素層は、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止、遮断するガスバリア性能を有する薄膜であり、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)、具体的には、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等を用いて珪素酸化物を製膜化する方法によって製造することができる。特に、低温プラズマ化学気相成長法を用いて製造することが望ましい。
【0018】
本発明においては、具体的には、有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマーガス、酸素ガス及び不活性ガスを含有する製膜用混合ガス組成物を使用し、かつ、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長装置を用いて、ポリアミド系樹脂フィルムの表面に炭素含有酸化珪素層を形成することができる。
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができるが、本発明においては、高活性の安定したプラズマを得るために、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが望ましい。
【0019】
また、本発明において、少なくとも2室以上の製膜室を有する低温プラズマ化学気相成長装置を使用し、各製膜室毎に使用する製膜用混合ガス組成物のガスの成分混合比を変化させることにより、2層以上の炭素含有酸化珪素蒸着膜を形成してもよい。ここで、各炭素含有酸化珪素蒸着膜中に含まれる炭素原子含有量が、互いに異なるとさらに好ましい。これにより、炭素含有酸化珪素層が単層の蒸着膜からなる場合よりも、一層高いガスバリア性が得られる。
具体的に、上記のプラズマ化学気相成長法による炭素含有酸化珪素層の形成法について、その一例を例示して説明する。図2は、上記の低温プラズマ化学気相成長法による炭素含有酸化珪素層の形成法について、その概要を示す低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である。
図2に示すように、本発明において、低温プラズマ化学気相成長装置11は、ポリアミド系樹脂フィルム供給室12、第1の製膜室13、第2の製膜室14、第3の製膜室15、及び炭素含有酸化珪素層を積層したガスバリア性フィルムを巻き取る巻取り室16から構成される。
【0020】
本発明においては、まず、ポリアミド系樹脂フィルム供給室12内に配置された巻き出しロール17から、ポリアミド系樹脂フィルム1を第1の製膜室13に繰り出し、更に、該ポリアミド系樹脂フィルム1を、補助ロール18を介して所定の速度で冷却・電極ドラム19周面上に搬送する。
次に、原料揮発供給装置20、および、ガス供給装置21等から有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマーガス、酸素ガス、不活性ガス等を供給し、それらからなる製膜用混合ガス組成物を調整しながら、原料供給ノズル22を通して第1の製膜室13内に上記の製膜用混合ガス組成物を導入し、そして、上記の冷却・電極ドラム19周面上に搬送されたポリアミド系樹脂フィルム1の上に、グロー放電プラズマ23によってプラズマを発生させ、これを照射して、珪素酸化物等からなる第1層の炭素含有酸化珪素層を製膜化する。
さらに場合によっては、上記の第1の製膜室13で第1層の炭素含有酸化珪素層を製膜化したポリアミド系樹脂フィルム1を、第2の製膜室14、及びさらに第3の製膜室15に繰り出し、上記と同様に、珪素酸化物等からなる第2層、第3層の炭素含有酸化珪素層を製膜化することができる。
【0021】
次いで、本発明においては、上記で第1層、第2層、及び第3層の炭素含有酸化珪素層を重層したポリアミド系樹脂フィルム1を、補助ロール38を介して、巻取り室16に繰り出し、次いで、巻取りロール39に巻き取って、第1層、第2層、及び第3層の炭素含有酸化珪素層が重層したガスバリア性フィルムを製造することができる。
なお、本発明においては、各第1、第2、第3の製膜室13、14、15に配設されている各冷却・電極ドラム19、26、33は、各製膜室の外に配置されている電源40から所定の電力が印加されており、また、各冷却・電極ドラム19、26、33の近傍には、マグネット41、42、43を配置してプラズマの発生が促進される。
なお、図示しないが、上記のプラズマ化学気相成長装置には、真空ポンプ等が設けられ、各製膜室等は真空に保持されるように調製し得ることは勿論である。
【0022】
上記の例示は、その一例を例示するものであり、これによって本発明は限定されるものではないことは言うまでもないことである。
例えば、上記の例においては、第1層、第2層、および、第3層の炭素含有酸化珪素層を重層したガスバリア性フィルムを製造しているが、炭素含有酸化珪素層は、所望のガスバリア性に応じて製膜室の数を任意に調製し、1層、2層又は4層以上等のように任意に製膜化し得るものであり、本発明は、上記の第1層、第2層、および、第3層の炭素含有酸化珪素層が重層したガスバリア性フィルムを製造する例だけに限定されるものではない。
【0023】
上記において、各製膜室は、真空ポンプ等により減圧し、真空度1×10〜1×10-6Pa、好ましくは、真空度1×10-1〜1×10-5Paに調製することが望ましい。
一方、各冷却・電極ドラムには、電源から所定の電圧が印加されているため、各製膜室内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成され、このグロー放電プラズマは、製膜用混合ガス組成物中の1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態において、ポリアミド系樹脂フィルムを一定速度で搬送させ、グロー放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上のポリアミド系樹脂フィルムの上に、珪素酸化物等からなる炭素含有酸化珪素層を製膜化することができる。
なお、このときの各製膜室内の真空度は、1×101〜1×10-2Pa、好ましくは、真空度1×101〜1×100Paに調製することが望ましく、また、ポリアミド系樹脂フィルムの搬送速度は、10〜300m/分、好ましくは、50〜150m/分に調製することが望ましい。
【0024】
また、原料揮発供給装置においては、原料である有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマーガスを揮発させ、ガス供給装置から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合させ、それらからなる製膜用混合ガス組成物を調整しながら、その製膜用混合ガス組成物を原料供給ノズルを介して各製膜室内に導入される。
この場合、製膜用混合ガス組成物の各ガス成分のガス混合比は、製膜用モノマーガスの含有量は1〜40%、酸素ガスの含有量は0〜70%、不活性ガスの含有量は1〜60%の範囲として調製することが好ましい。
而して、本発明においては、各製膜室毎に、導入される製膜用混合ガス組成物の各ガス成分の混合比を変えて製膜化し、珪素酸化物等からなる炭素含有酸化珪素層を重層して、本発明に係るガスバリア性フィルムを製造するものである。
【0025】
本発明において、上記の製膜用混合ガス組成物の各ガス成分の混合比は、用いる原料化合物の種類、チャンバー内に残留する酸素ガス及び水、プラズマのエネルギー等種々の条件に応じて変化し、当業者が適宜決定することができる。
上記低温プラズマ化学気相成長装置において、珪素酸化物等からなる炭素含有酸化珪素層の製膜化は、各製膜室において、ポリアミド系樹脂フィルムの上に設けたプラズマエッチング層の上に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOxの形で薄膜状に製膜化されるので、緻密で、隙間の少ない、延展性、屈曲性、可撓性等に富む薄膜となるものであり、従って、酸化珪素等からなる炭素含有酸化珪素層のガスバリア性は、従来の真空蒸着法等によって形成される珪素酸化物等からなる酸化珪素層のガスバリア性と比較してはるかに高いものとなる。
【0026】
また、本発明においては、SiOXプラズマにより、ポリアミド系樹脂フィルムの表面が清浄化され、その表面に、極性基やフリーラジカル等が発生するので、製膜化される珪素酸化物等からなる炭素含有酸化珪素層とポリアミド系樹脂フィルムとの密接着性が高くなるという利点を有するものである。
さらに、少なくとも2室以上の製膜室からなるプラズマ化学気相成長装置を使用して炭素含有酸化珪素層を連続的に2層以上を積層させる場合、それぞれの層が高いガスバリア性を有するように製膜化することができることから、単層のそれよりも更に高いガスバリア性を得ることができ、更に、大気に開放ぜす連続的に製膜化することによりクラックの発生原因となる異物、塵埃等が製膜層間に混入することを防止することができ、かつ、そのガスバリア性の低下も認められず、更にまた、各炭素含有酸化珪素層は、珪素酸化物を主体とし、炭素、水素、珪素、および、酸素の中の1種類または2種類以上の元素からなる化合物を少なくとも1種類含有し、かつ、各炭素含有酸化珪素層毎に上記の化合物の含有量が異なる不連続層であることから、酸素ガス、水蒸気等の透過を完全に阻止することができるという種々の利点を有する。
【0027】
本発明において、ガスバリア性層を構成する各製膜室において製膜化される炭素含有酸化珪素層の総膜厚としては、膜厚60Å〜4000Å位であることが望ましく、特に100〜1000Å位が望ましい。1000Å、更には、4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生し易くなるので好ましくなく、また、100Å、更には、60Å未満であると、ガスバリア性の効果を奏することが困難になることから好ましくない。
次に、本発明において、製膜用モノマーガスを構成する有機珪素化合物としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等を使用することができる。
本発明において、上記のような有機珪素化合物の中でも、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンは、その取り扱い性や形成された連続膜の特性等から、特に好ましい原料である。
また、本発明において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
【0028】
<4>ガスバリア性塗布膜
本発明においては、上記炭素含有酸化珪素層上に、さらに、アルコキシドと水溶性高分子とを含み、更にゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物からなるガスバリア性塗布膜を設ける。これにより、ガスバリア性をさらに向上させることができる。
本発明においては、ガスバリア性塗布膜は、一般式R1nM(OR2m(式中、R1、R2は炭素数1〜8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す)で表される1種又はそれ以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂(PVOH)及びエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂のいずれか一方又は両方とを含有し、さらに、ゾルゲル法の触媒、酸、水、及び有機溶剤の存在下で、ゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物を調製する工程、ポリアミド系樹脂フィルムの一方の面に設けた炭素含有酸化珪素層の上に、上記のゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物を塗工する工程、上記の塗工膜を設けたポリアミド系樹脂フィルムを、20℃〜150℃で、かつ、上記のポリアミド系樹脂フィルムの融点以下の温度で30秒〜10分間加熱処理して、硬化膜を形成する工程からなる製造工程により製造することができる。
【0029】
上記において、本発明に係るガスバリア性塗布膜を形成する一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、該アルコキシドの加水分解物、該アルコキシドの縮合物、該アルコキシドのキレート化合物、該キレート化合物の加水分解物および金属アシレート、の少なくとも1種以上を使用することができ、また、上記のアルコキシドの加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されている必要はなく、1個以上が加水分解されているもの、及びその混合物であってもよく更に、アルコキシドの縮合物としては、加水分解したアルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2〜6量体のものが使用される。さらに、上記のアルコキシドのキレート化合物は、アルコキシドと、β−ジケトン類、β−ケトエステル類、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸エステル、ケトアルコールおよびアミノアルコールから選ばれる少なくとも1種の化合物との反応で得られる。また、上記のキレート化合物の加水分解物は、上記のアルコキシドの加水分解物と同様に、キレート化合物に含まれるOR2基がすべて加水分解されている必要はなく、例えば、その1個だけが加水分解されているもの、2個以上が加水分解されているもの、あるいは、これらの混合物であってもよい。
【0030】
上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドにおいて、Mで表される金属原子としては、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム等を使用することができる。
本発明において、好ましい金属としては、例えば、珪素を挙げることができる。
また、本発明において、アルコキシドの用い方としては、単独又は2種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使うこともできる。
また、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドにおいて、R1で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等のアルキル基を挙げることができる。
また、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドにおいて、R2で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等を挙げることができる。
なお、本発明において、同一分子中にこれらのアルキル基は同一であっても、異なってもよい。
【0031】
本発明において、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、例えば、MがSiであるアルコキシシランを使用することが好ましい。上記のアルコキシシランとしては、一般式Si(ORa)4(ただし、式中、Raは、低級アルキル基を表す。)で表されるものである。Raとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が用いられる。
上記のアルコキシシランの具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン Si(OCH34、テトラエトキシシラン Si(OC254、テトラプロポキシシラン Si(0C374、テトラブトキシシラン Si(OC494等を使用することができる。
【0032】
また、本発明において、上記のアルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的には、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエトキシシラン等を使用することができる。
【0033】
次に、ガスバリア性塗布膜を形成するポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、又は、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂とを組み合わせて使用することができ、本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂を使用することにより、ガスバリア性塗布膜のガスバリア性、耐水性、耐候性等の物性を著しく向上させることができる。
特に、本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂とを組み合わせて使用することにより、上記のガスバリア性、耐水性、および耐候性等の物性に加えて、耐熱水性および熱水処理後のガスバリア性等に著しく優れたガスバリア性塗布膜を形成することができる。
【0034】
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂とを組み合わせて使用する場合、それぞれの配合割合としては、重量比で、ポリビニルアルコール系樹脂:エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂=10:0.05〜10:6位であることが好ましく、更には、約10:1位の配合割合で使用することが更に好ましい。
また、本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂との含有量は、上記のアルコキシドの合計量100重量部に対して5〜500重量部の範囲であり、好ましくは、約20〜200重量部位の配合割合でガスバリア性組成物を調製することが好ましい。
上記において、500重量部を越えると、ガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、得られるガスバリア性フィルムの耐水性および耐候性等も低下する傾向にあることから好ましくなく、更に、5重量部を下回るとガスバリア性が低下することから好ましくない。
【0035】
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂としては、まず、ポリビニルアルコール系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。
上記のポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、もしくは、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、あるいは、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。上記ポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、株式会社クラレ製のRSポリマーであるRS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)等を使用することができる。
【0036】
また、本発明において、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。具体的には、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないか又は酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されるものではないが、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度は、80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
【0037】
また、上記のエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは20〜45モル%である。
上記のエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂の具体例としては、株式会社クラレ製、エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)、日本合成化学工業株式会社製、ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)等を使用することができる。
上記のガスバリア性組成物を調製するに際し、例えば、シランカップリング剤等も添加することができる。シランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができる。
【0038】
本発明においては、特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適であり、それには、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、あるいは、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。
上記のようなシランカップリング剤は、1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。
本発明において、上記のようなシランカップリング剤の使用量は、上記のアルコキシシラン100重量部に対して1〜20重量部位の範囲内で使用することができる。
上記において、20重量部以上を使用すると、形成されるガスバリア性塗布膜の剛性と脆性とが大きくなり、また、ガスバリア性塗布膜の絶縁性および加工性が低下する傾向にあることから好ましくない。
【0039】
次に、上記のガスバリア性組成物において用いられる、ゾルゲル法の触媒、主として、重縮合触媒としては、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三級アミンが用いられる。
具体的には、例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等を使用することができる。
本発明においては、特に、N,N−ジメチルべンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシド、及びシランカップリング剤の合計量100重量部当り、0.01〜1.0重量部、好ましくは約0.03重量部が好ましい。
【0040】
また、上記のガスバリア性組成物において用いられる酸は、上記ゾルゲル法の触媒、主として、アルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。
上記の酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに、酢酸、酒石酸等の有機酸を使用することができる。
上記の酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対し0.001〜0.05モル、好ましくは約0.01モルが好ましい。
【0041】
更に、上記のガスバリア性組成物においては、上記のアルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは0.8〜2モルの割合の水を用いることができる。
上記の水の量が、2モルを越えると、上記のアルコキシシランと金属アルコキシドとから得られるポリマーが球状粒子となり、更に、この球状粒子同士が3次元的に架橋し、密度の低い、多孔性のポリマーとなり、そのような多孔性のポリマーは、ガスバリア性フィルムのガスバリア性を改善することができなくなることから好ましくない。
また、上記の水の量が0.8モルを下回ると、加水分解反応が進行しにくくなる傾向にあることから好ましくない。
【0042】
更にまた、上記のガスバリア性組成物において用いられる有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等を用いることができる。
【0043】
更に、上記のガスバリア性組成物において、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂は、上記のアルコキシドやシランカップリング剤などを含む塗工液中で溶解した状態であることが好ましく、そのため上記の有機溶媒の種類が適宜選択される。
ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂とを組み合わせて使用する場合には、n−ブタノールを使用することが好ましい。
本発明において、溶媒中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂は、例えば、ソアノール(商品名)として市販されているものを使用することができる。
上記の有機溶媒の使用量は、通常、上記のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、酸およびゾルゲル法の触媒の合計量100重量部当り30〜500重量部位である。
【0044】
次に、本発明においては、本発明に係るバリア性フィルムは、具体的には、例えば、以下のようにして製造される。
まず、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、ゾルゲル法の触媒、酸、水、有機溶媒、及び必要に応じて、金属アルコキシド等を混合してガスバリア性組成物(塗工液)を調製する。
次に、上記のガスバリア性組成物(塗工液)中では次第に重縮合反応が進行する。
次いで、ポリアミド系樹脂フィルムの一方の面に設けた炭素含有酸化珪素層の上に、常法により、上記のガスバリア性組成物(塗工液)を通常の方法で塗布し、乾燥する。
上記の乾燥により、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤およびポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂等の重縮合が進行し、塗工膜が形成される。更に、好ましくは、上記の塗布操作を繰り返して、2層以上からなる複数の塗工膜を積層する。
最後に、上記の塗工液を塗布したポリアミド系樹脂フィルムを20℃〜150℃で、かつ、ポリアミド系樹脂フィルムの融点以下の温度で、30秒〜10分間加熱処理して、ポリアミド系樹脂フィルムの一方の面に形成した炭素含有酸化珪素層の上に、上記のガスバリア性組成物(塗工液)によるガスバリア性塗布膜を1層ないし2層以上形成して、本発明に係るガスバリア性フィルムを製造することができる。
このようにして得られた本発明に係るガスバリア性フィルムは、ガスバリア性に優れている。
【0045】
なお、本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂の代わりに、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、あるいは、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂との両者を用いて、上記と同様に、塗工、乾燥および加熱処理を行うことにより製造される本発明に係るガスバリア性フィルムにおいては、ボイル処理、レトルト処理等の熱水処理後のガスバリア性が更に向上するという利点を有する。
【0046】
更に、本発明においては、上記のようにエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、あるいは、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂とを組み合わせて使用しない場合、すなわち、ポリビニルアルコール系樹脂のみを使用して、本発明に係るガスバリア性フィルムを製造する場合には、熱水処理後のガスバリア性を向上させるために、例えば、予め、ポリビニルアルコール系樹脂を使用したガスバリア性組成物を塗工して第1の塗工層を形成し、次いで、その塗工層の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂を含有するガスバリア性組成物を塗工して第2の塗工層を形成し、それらの複合層を形成することにより、本発明に係るガスバリア性フィルムのガスバリア性を向上させることを可能とする。
【0047】
更にまた、上記のエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂を含有するガスバリア性組成物により形成される塗工層、又は、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂とを組み合わせて含有するガスバリア性組成物により形成される塗工層を、複数層重層して形成することによっても、本発明に係るガスバリア性フィルムのガスバリア性の向上に有効な手段となる。
上記のガスバリア性組成物を、炭素含有酸化珪素層の上に塗布し、加熱して溶媒及び重縮合反応により生成したアルコールを除去すると、重縮合反応が完結し、透明なガスバリア性塗布膜が形成される。
【0048】
更に、加水分解によって生じた水酸基や、シランカップリング剤由来のシラノール基が炭素含有酸化珪素層の表面の水酸基と結合する為、該炭素含有酸化珪素層とガスバリア性塗布膜との密接着性等が良好なものとなる。
上述のように形成されることにより、本発明のガスバリア性塗布膜は、結晶性を有する直鎖状ポリマーを含み、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造を取る。このような結晶構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高いため、良好なガスバリア性を示す。
【0049】
本発明においては、炭素含有酸化珪素層とガスバリア性塗布膜とが、例えば、加水分解・共縮合による化学結合、水素結合、或いは、配位結合等を形成し、これら2層間の密着性が向上し、相乗効果により、より良好なガスバリア性の効果を発揮し得る。
本発明において、上記のガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーター等のロールコート、スプレーコート、ディッピング、刷毛、バーコート、アプリケータ等の塗布手段により、1回或いは複数回の塗布で、乾燥膜厚が0.01〜30μm、好ましくは0.1〜10μmのガスバリア性塗布膜を形成することができる。
【0050】
<5>プライマー剤層
本発明において、上記のガスバリア性塗布膜の上に、さらにプライマー剤層を形成することにより、本発明の輸液バッグ外装袋を構成するガスバリア性フィルムが得られる。
本発明において、プライマー剤層は、ガスバリア性塗布膜と、印刷模様層、ラミネート用接着剤層、及びシーラントフィルムを積層する際に、その密着性を高め、層間剥離を防止する役割や、印刷等の外部ストレスの緩和層として働くものであり、プライマー剤をガスバリア性塗布膜上に塗布し乾燥させることにより形成される層である。
プライマー剤の主成分となる樹脂としては、本発明のガスバリア性塗布膜に密着性を示す樹脂であればよく、例えばポリウレタン系又はポリエステル系の樹脂が挙げられる。好ましくは、プライマー剤は、主成分となる樹脂1〜30重量%に対し、シランカップリング剤0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、充填剤0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%を添加し、さらに、必要ならば、安定剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を任意に添加し、溶媒、希釈剤等を加えて充分に混合して調製した樹脂組成物である。
【0051】
上記プライマー剤は、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート等により、前述のガスバリア性塗布膜の上にコーティングされる。次いで、このコーティング膜を乾燥させて、溶媒、希釈剤等を除去し、エージング処理等を行うことにより、本発明に係るプライマー剤層を形成することができる。
本発明において、プライマー剤層の層厚は、例えば0.1〜10.0g/m2(乾燥状態)の範囲が望ましい。
上記プライマー剤からなるプライマー剤層は、本発明のガスバリア性フィルムを構成するガスバリア性塗布膜表面と相互作用し、高い層間結合強度を提供する。また、当該プライマー剤層は高い伸長度を有するため、該プライマー剤層上にシーラントフィルムを積層してなる本発明に係る積層体は、優れた耐屈曲性を示すことができる。したがって、製袋加工等の後加工適性に優れ、後加工時における本発明に係る積層体を構成する炭素含有酸化珪素層のクラック等の発生を防止することができる。
【0052】
上記において、プライマー剤を構成するポリウレタン系樹脂としては、例えば、多官能イソシアネートとヒドロキシル基含有化合物との反応により得られるポリウレタン系樹脂を使用することができる。具体的には、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、あるいは、ヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール等のヒドロキシル基含有化合物との反応により得られる一液または二液硬化型のポリウレタン系樹脂を使用することができる。
【0053】
また、プライマー剤を構成するポリエステル系樹脂としては、例えば、テレフタル酸等のベンゼン核を基本骨格とする芳香族飽和ジカルボン酸の一種またはそれ以上と、飽和二価アルコールの一種またはそれ以上との重縮合により生成する熱可塑性のポリエステル系樹脂を使用することができる。具体的には、例えば、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合により生成する熱可塑性ポリエチレンテレフタレート樹脂、テレフタル酸とテトラメチレングリコールとの重縮合により生成する熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂等を使用することができる。
【0054】
また、プライマー剤を構成するシランカップリング剤としては、二元反応性を有する有機官能性シランモノマー類を使用することができ、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルシリコーンの水溶液等の1種またはそれ以上を使用することができる。
【0055】
本発明において、シランカップリング剤が有する無機性と有機性とを利用し、ガスバリア性塗布膜及びさらにラミネートされるシーラントフィルムとの密接着性を向上させ、これにより、そのラミネート強度を高める。
次に、プライマー剤を構成する充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、タルク、ガラスフリット、樹脂粉末等を使用することができる。上記充填剤は、プライマー剤の粘度を調製し、そのコーティング適性を向上させると共にバインダーとしての樹脂とシランカップリング剤を介して結合し、塗膜の凝集力を向上させる。
【0056】
<6>シーラントフィルム
上記で得られる、ポリアミド系樹脂フィルム/炭素含有酸化珪素層/ガスバリア性塗布膜/プライマー剤層、からなる本発明に係るガスバリア性フィルムの、プライマー剤層側の面に、ラミネート用接着剤層を介してシーラントフィルムを積層することにより、本発明の輸液バッグ外装袋を構成する積層体が得られる。
該ラミネート用接着剤層を構成する接着剤としては、例えばポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマー、あるいは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等の接着剤を使用することができる。
上記の接着剤は、例えば、ロールコート、グラビアコート、キスコート法等のコート法、あるいは、印刷法等によって施すことができ、そのコーティング量としては、0.1〜10g/m2(乾燥状態)が望ましい。
【0057】
本発明に係る積層体を構成するシーラントフィルムは、本発明の輸液バッグ外装袋の最内層を形成する。このようなシーラントフィルムとしては、例えば、熱によって溶融し相互に融着し得るヒートシール性樹脂のフィルムを使用することができ、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。
また、上記のフィルムないしシートは、その樹脂を含む組成物によるコーティング膜の状態で使用することができる。膜もしくはフィルムないしシートの厚さとしては、5μmないし300μm、好ましくは10μmないし100μmが望ましい。
【0058】
<7>輸液バッグ外装袋の製造
次に、本発明において、上記のような積層体を製袋して、本発明に係る輸液バッグ外装袋を製造する方法について説明する。
製造に際し、上記積層体のシーラントフィルム側の面を対向させて、それを折り重ねるか、或いはその二枚を重ね合わせ、更にその周辺端部をヒートシールしてシール部を設けて、所望の形態を有する輸液バッグ外装袋を製造することができる。
上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。なお、袋の構造は、内部に封入する輸液バッグに合わせて適宜選択することができる。
実際の作業においては、輸液バッグを挿入するための挿入口を残し、それ以外の周縁を熱融着により製袋する。そして、輸液バッグを充填し、挿入口を熱融着により塞ぐ。より具体的には、本発明の輸液バッグ外装袋の開口部から、輸液バッグを挿入し、次いで、例えば、窒素ガス置換等を行いながら、その開口部をヒートシール等により密閉することによって、本発明に係る輸液バッグ外装袋中に包装された、輸液バッグの包装製品を製造することができる。
本発明の輸液バッグ外装袋は、構成成分である積層体の特性に基いて、輸液バッグ外装袋として必要なガスバリア性、耐衝撃性、耐ピンホール性、透明性、及び加熱加圧殺菌適性を備え、且つ柔軟性を有しているため、内部の溶液の酸化分解を防ぐだけでなく、好ましい取り扱い特性を備えている。
次に本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。
【実施例】
【0059】
[実施例1]
(1)基材フィルムとして、厚さ15μmの二軸延伸ナイロン6フィルムを準備し、これを図2に示すような3室からなるプラズマ化学気相成長装置に装着した。
次に、プラズマ化学気相成長装置のチャンバー内を減圧した。
一方、原料である有機珪素化合物であるヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を原料揮発供給装置において揮発させ、ガス供給装置から供給された酸素ガスおよび不活性ガスであるヘリウム、アルゴンと混合させて製膜用混合ガス組成物とした。
第1の製膜室で使用する製膜用混合ガス組成物として、その混合比を、HMDSO:O2:He:Ar=1.2:6.0:0.5:0.5(単位;slm、スタンダードリッターミニット)とし、また、第2の製膜室で使用する製膜用混合ガス組成物として、その混合比を、HMDSO:O2:He:Ar=1.2:1.0:0.5:0.5(単位;slm)とし、更に、第3の製膜室で使用する製膜用混合ガス組成物として、その混合比を、HMDSO:O2:He:Ar=1.2:3.0:0.5:0.5(単位;slm)とした。
上記のような製膜用混合ガス組成物を使用し、その製膜用混合ガス組成物をそれぞれ第1の製膜室、第2の製膜室、および、第3の製膜室にそれぞれ導入し、次いで、上記の厚さ15μmの二軸延伸ナイロン6フィルムをライン速度200m/minで搬送させながら、電力を印加させ、厚さ15μmの二軸延伸ナイロン6フィルムの一方のコロナ処理面の上に、第1層の膜厚30Å、第2層の膜厚30Å、第3層の膜厚30Å、総膜厚90Åからなる3層重層の炭素含有酸化珪素層を製膜した。
【0060】
(2)他方、下記の表1に示す組成に従って、組成a.EVOH(エチレン共重合比率29%)をイソプロピルアルコールおよびイオン交換水の混合溶媒にて溶解したEVOH溶液に、予め調製した組成b.のエチルシリケート40、イソプロピルアルコール、アセチルアセトンアルミニウム、イオン交換水からなる加水分解液を加えて撹拌し、更に予め調製した組成c.のポリビニルアルコール水溶液、シランカップリング剤(エポキシシリカSH6040) 、酢酸、イソプロピルアルコール及びイオン交換水からなる混合液を加えて撹拌し、無色透明のバリア塗工液を得た。
【0061】
【表1】

【0062】
次に、上記の(1)で形成した炭素含有酸化珪素層の面に、上記で製造したガスバリア性組成物を使用し、これをグラビアコート法によりコーティングして、次いで、100℃で30秒間、加熱処理して、厚さ0.4g/m2(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成した。
【0063】
(3)次に、上記の(2)で形成したガスバリア性塗布膜の面に、ポリウレタン系樹脂に、エポキシ系のシランカップリング剤(1.2重量部)とブロッキング防止剤(1.0重量部)を添加し、十分に混合してなるプライマー樹脂組成物を使用し、これをグラビアコート法により、膜厚0.2g/m2(乾燥状態)になるようにコーティングしてプライマー剤層を形成し、本発明に係るガスバリア性フィルム(IB-ON15)を製造した。
【0064】
(4)次に、上記の(3)で形成したプライマー剤層の面に、2液硬化型のポリウレタン系ラミネート用接着剤をグラビアコート法を用いて厚さ4.0g/m2(乾燥状態)にコーティングしてラミネート用接着剤層を形成し、次いで、該ラミネート用接着剤層の面に、厚さ80μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP80)を重ね合わせ、ドライラミネートにより積層し、「IB-ON15/接着剤/CPP80」の仕様を有する本発明に係る積層体を製造した。
【0065】
(5)次に、上記の(4)で製造した積層体の2枚を用意し、その無延伸ポリプロピレンフィルムの面を対向して重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部を三方ヒートシールしてシール部を形成すると共に上方に開口部を有する三方シール型の輸液バッグ外装袋を製造した。上記で製造した三方シール型の輸液バッグ外装袋内に、その開口部から薬液(3000mL)の入ったプラスチック容器を挿入し、内部を窒素ガス置換した後に脱気包装し、本発明の輸液バッグ外装袋中に包装された包装製品を製造した。
【0066】
(6)次に、上記の(5)で得られた包装製品をレトルト釜に入れて、温度120℃、圧力0.21MPa、時間30分間からなるレトルト処理条件で加熱加圧殺菌を行った。
【0067】
[比較例1]
実施例1の(3)で製造された本発明に係るガスバリア性フィルムの代わりに、厚さ15μmの共押出しバリアナイロンフィルム[三菱樹脂(株)製スーパーニール、ナイロン6(5μm)/ナイロンMXD6(5μm)/ナイロン6(5μm)]を用いた以外は、実施例1と同様にして、「共押出しバリアナイロンフィルム/接着剤/CPP80」の仕様を有する積層体、及びそれからなる輸液バッグ外装袋、並びに該輸液バッグ外装袋中に包装された包装製品を製造し、加熱加圧殺菌を行った。
【0068】
[比較例2]
実施例1の(3)で製造された本発明に係るガスバリア性フィルムの代わりに、厚さ15μmのPVD法酸化珪素蒸着ナイロンフィルム(三菱樹脂(株)製テックバリア)を用いた以外は、実施例1と同様にして、「PVD法酸化珪素蒸着ナイロンフィルム/接着剤/CPP80」の仕様を有する積層体、及びそれからなる輸液バッグ外装袋、並びに該輸液バッグ外装袋中に包装された包装製品を製造し、加熱加圧殺菌を行った。
【0069】
[比較例3]
厚さ12μmのPVD法酸化アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET12、東レフィルム加工(株)製バリアロックス1011)の酸化アルミニウム蒸着層の面に、2液硬化型のポリウレタン系ラミネート用接着剤をグラビアコート法を用いて厚さ3.0g/m2(乾燥状態)にコーティングしてラミネート用接着剤層を形成し、次いで、該ラミネート用接着剤層の面に、厚さ15μmの二軸延伸ナイロン6フィルムを重ね合わせ、ドライラミネートにより積層した。この積層体の二軸延伸ナイロン6フィルムの面に、上記と同様にしてラミネート用接着剤層を形成し、しかる後、そのラミネート用接着剤層の面に、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP60)を重ね合わせ、ドライラミネートにより積層した。これにより、「PET12/接着剤/二軸延伸ナイロン6フィルム/接着剤/CPP60」の仕様を有する積層体を得た。この積層体を用いて、実施例1と同様にして、輸液バッグ外装袋、及び該輸液バッグ外装袋中に包装された包装製品を製造し、加熱加圧殺菌を行った。
【0070】
[評価]
上記の実施例1、及び比較例1〜3において製造した積層体について、酸素透過度及び腰強度を測定し、さらに加熱加圧殺菌後の外観を観察した。
酸素透過度:温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OX−TRAN)〕にて測定した。
腰強度:各積層体を150mm(流れ方向)×10mm(巾方向)の短冊状に切り出し、該試験片を円周60mmのループ状にし、そのループを横から押し潰し、その反発力の最大値を(株)東洋精機製作所製ループスティフネス試験機にて測定した。
上記の測定結果について、下記の表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
上記の表2から明らかなように、実施例1で得られた本発明に係る輸液バッグ外装袋を構成する積層体は、加熱加圧殺菌の前後において優れた酸素ガスバリア性を示し、また加熱加圧殺菌後も、フィルム剥がれは生じず、層間の強固な結合が維持された。また、輸液バッグ外装袋として好ましい柔軟性を有していた。
【0073】
これに対し、比較例1で得られた積層体は酸素ガスバリア性に劣り、これは加熱加圧殺菌後に一層劣化した。
また、比較例2で得られた積層体は、層間の結合が弱く、加熱加圧殺菌によりフィルム剥がれが生じた。これに伴い、酸素ガスバリア性も大幅に劣化した。
比較例3で得られた積層体は、3層構成を有するが、積層体全体の厚さは実施例1とほぼ同じである。それにもかかわらず、腰強度は、実施例1の積層体の1.5倍以上の大きさを示し、柔軟性を欠くものであった。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る輸液バッグ外装袋を構成する積層体についてその層構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る輸液バッグ外装袋を構成する積層体についてその炭素含有酸化珪素層を製膜化する低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である。
【符号の説明】
【0075】
1 ポリアミド系樹脂フィルム
2 炭素含有酸化珪素層
3 ガスバリア性塗布膜
4 プライマー剤層
5 シーラントフィルム
11 低温プラズマ化学気相成長装置
12 ポリアミド系樹脂フィルム供給室
13 第1の製膜室
14 第2の製膜室
15 第3の製膜室
16 巻取り室
17 巻き出しロール
18、24、25、31、32、38 補助ロール
19、26、33 冷却・電極ドラム
20、27、34 原料揮発供給装置
21、28、35 ガス供給装置
22、29、36 原料供給ノズル
23、30、37 グロー放電プラズマ
39 巻取りロール
40 電源
41、42、43マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系樹脂フィルムの一方の面に、
プラズマ化学気相成長法により形成した炭素含有酸化珪素層;
一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は炭素数1〜8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す)で表される1種又はそれ以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及びエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂のいずれか一方又は両方とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物からなるガスバリア性塗布膜;及び
プライマー剤層;
を順に設けたガスバリア性フィルムの該プライマー剤層に、シーラントフィルムを積層した積層体を製袋して得られた輸液バッグ外装袋。
【請求項2】
腹膜透析液バッグを包装するための、請求項1に記載の輸液バッグ外装袋。
【請求項3】
炭素含有酸化珪素層が、少なくとも2室以上の製膜室を有する低温プラズマ化学気相成長装置を使用し、且つ、有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマーガス、酸素ガス及び不活性ガスを含有する製膜用混合ガス組成物の各ガス成分の混合比を各製膜室毎に変えて使用することにより製膜された、2層以上の炭素含有酸化珪素層からなり、更に、各炭素含有酸化珪素層は、各層毎に含有する炭素量が異なることを特徴とする、請求項1又は2に記載の輸液バッグ外装袋。
【請求項4】
プライマー剤層が、ポリウレタン系樹脂又はポリエステル系樹脂をビヒクルの主成分とし、これにシランカップリング剤及び充填剤を添加し、混合してなる樹脂組成物を塗布し、乾燥させてなる層である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の輸液バッグ外装袋。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−70224(P2010−70224A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240409(P2008−240409)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】