説明

輻射式冷却装置及び還元鉄製造方法

【課題】基本的には定期的な部品の交換作業の必要がない輻射式冷却装置および還元鉄製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る輻射式冷却装置100は、回転炉床式加熱還元炉から排出された還元鉄9を貯蔵するサージホッパー20に設けられ、還元鉄9を輻射冷却する冷却パイプ30を有することを特徴とする。サージホッパー20に対する冷却パイプ30の相対位置を変更する位置変更装置32を有するようにすれば、輻射面積を変更することができ、冷却温度を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻射式冷却装置及び還元鉄製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄鉱石と炭材とを含む混合物から還元鉄を製造する直接還元製鉄法が開発されている。この製鉄法では上記混合物を成形した塊成物を炉に装入し、炉内で加熱バーナーによるガス伝熱や輻射熱で加熱することによって塊成物中の鉄鉱石に含まれる酸化鉄が還元され、還元鉄を製造できる。
【0003】
上記塊成物を加熱する炉(加熱炉)としては移動炉床炉、例えば回転炉床炉(RHF)を用いることができる。回転炉床炉を用いた場合は、炉床上に装入した上記塊成物は炉内を10分〜20分程度かけて1周する間に加熱され、上記炭材によって塊成物に含まれる酸化鉄が還元され、還元鉄として炉外へ排出される(FASTMET法)。
【0004】
得られた還元鉄を溶解炉あるいは高炉原料としてすぐに使用しない場合は、圧密塊成化してHBI(Hot Briquette Iron)にすることによって、再酸化を防止することができるとともに輸送に適した形状にすることができ、また品質を損なうことなく長期保管が可能となる。なお、FASTMET法により製造される還元鉄をペレットやブリケットの状態で使用するか、あるいは塊成化して使用するかについては、製品の用途および保存期間を考慮して決定される。
【0005】
還元鉄を塊成化する場合には、塊成化工程の前段階で還元鉄を塊成化に適した温度まで冷却する必要がある。その冷却装置としてロータリークーラーが提案されている(例えば特許文献1参照)。このロータリークーラーにおいては、内周面に螺旋状に送り羽根が設けられた回転ドラム内を窒素ガスにて非酸化性雰囲気に維持しつつ、高温還元鉄を回転ドラム中を通過させる間に回転ドラムの外周面を冷却水で冷却する間接冷却方式によって、還元鉄を熱間成形に適した600℃超750℃以下の温度まで冷却する。また、回転ドラムの内周面に断熱材を着脱可能に設置することにより出口温度を調整することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−74725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のロータリークーラーでは、還元鉄の搬送部品である送り羽根が磨耗により劣化するので、短期的な交換作業が必要となる。また、交換作業を行うためのスペースを確保するためにロータリークーラーを一定径以上の大きさの設備にする必要がある。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、基本的には定期的な部品の交換作業の必要がない輻射式冷却装置及び還元鉄製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る輻射式冷却装置は、移動式加熱還元炉から排出された還元鉄を貯蔵する還元鉄貯蔵部に設けられ、還元鉄を輻射冷却する冷却部を有することを要旨とする。
【0010】
この輻射式冷却装置によれば、従来の回転ドラムの送り羽根のような搬送部品を使用していなく、還元鉄との接触によって当該搬送部品が磨耗することがないので、冷却装置部品の定期的な交換作業が不要となる。
【0011】
また、送り羽根のような搬送部品が磨耗等により劣化して欠損することがないので還元鉄の中に搬送部品が混入する可能性を低くすることができる。
【0012】
冷却部のうち、還元鉄貯蔵部の内部に存在する部分の表面積が可変に構成されているようにすれば、輻射冷却の面積を可変に構成できるので、冷却温度(冷却能力)を制御することができる。
【0013】
冷却部に向けてガスを吹き付けるガス供給部を有するようにすれば、冷却部に付着したダスト(粉塵)を落とすことができるので、冷却効果の低下を防止できる。
【0014】
還元鉄貯蔵部は還元鉄を貯蔵するサージホッパーであってもよい。還元鉄が貯蔵される期間に冷却することができる。
【0015】
冷却部は冷却水を循環させる冷却パイプであってもよいし、冷却水を循環させる循環路が形成された冷却ボックスであってもよい。冷却水を循環させて使用することで、管状の搬送部等の外面に冷却水を供給することにより間接冷却を行う構成と比較して、冷却水の劣化を低減できる。
【0016】
本発明に係る還元鉄製造方法は、移動式加熱還元炉から排出された還元鉄を貯蔵する還元鉄貯蔵工程と、還元鉄を輻射冷却する冷却工程とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基本的には定期的な部品の交換作業の必要がないので当該部品の長寿命化を図ることができ、経済的である長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】移動炉床式加熱還元炉の工程を示す概略構成説明図である。
【図2】本実施形態における輻射式冷却装置がサージホッパーに設けられている様子を示す説明図である。
【図3】サージホッパーに設けられた輻射式冷却装置の第2実施形態に係る説明図である。
【図4】他の例に係る輻射式冷却装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本実施形態に係る輻射式冷却装置および還元鉄製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0020】
還元鉄の製造において、炭素質還元剤および酸化鉄含有物質を含む原料混合物は、炭素質還元剤と酸化鉄含有物質の直接混合粉体、若しくは、後述する塊成化手段で塊成化されたものである。塊成化手段としては、ブリケット化用プレス機(シリンダープレス、ロールプレス、リングローラプレスなど)を用いる等、プレス機を用いる他、押出成形機、転動型造粒機(パンペレタイザー、ドラムペレタイザー等)等の公知の種々の機器を使用できる。
【0021】
塊成物の形状は、特に限定されず、塊状、粒状、ブリケット状、ペレット状、棒状などの種々の形状が採用できる。
【0022】
上記塊成物を還元して還元鉄を製造するが、具体的な還元方法については特に限定されず、公知の還元炉を用いればよい。以下では、移動炉床式加熱還元炉を用いて還元鉄を製造する場合を例に挙げるが、これに限定するものではない。
【0023】
図1は移動炉床式加熱還元炉の工程を示す概略構成説明図であり、回転炉床式のものを示している。
【0024】
図1に示すように、回転炉床式加熱還元炉Aには、上記塊成物1が原料投入ホッパー3を通して回転炉床4上へ連続的に装入される。
【0025】
図示した回転炉床式加熱還元炉Aの回転炉床4は反時計方向に回転されており、操業条件によって異なるが、約10分から20分程度で1周し、その間に塊成物1中に含まれる酸化鉄は固体還元される。該還元炉Aにおける回転炉床4の上方側壁及び/又は天井部には燃焼バーナー5が複数個設けられており、該燃焼バーナー5の燃焼熱あるいはその輻射熱によって炉床部に熱が供給される。
【0026】
耐火材で構成された回転炉床4上に装入された塊成物1は、該炉床4上で還元炉A内を周方向へ移動する中で、燃焼バーナー5からの燃焼熱や輻射熱によって加熱され、当該還元炉A内の加熱帯を通過する間に、当該塊成物1内の酸化鉄は固体還元されて還元鉄9となる。その後、還元鉄9は回転炉床4の下流側ゾーンで冷却固化された後、ディスチャージャー(排出装置)6によって炉床上からホッパー8を介して排出される。なお回転炉床4内の排ガスは排ガスダクト7から外部に排出される。
【0027】
図2は本実施形態における輻射式冷却装置100がサージホッパー20に設けられている様子を示す説明図である。
【0028】
図2に示すように、還元鉄9は矢印D1の方向からサージホッパー20内に投入されて盛られた状態で貯蔵されている。なお還元鉄9がサージホッパー20から排出される方向が矢印D2の方向となっており、排出された後はブリケッター(固形圧縮機)へ導入される。サージホッパー20の断熱効果を向上するために、サージホッパー20の外周面に断熱材21を被覆してもよい。
【0029】
輻射式冷却装置100は、冷却媒としての冷却水を循環させるU字型の炭素鋼又はステンレス鋼からなる冷却パイプ30と、この冷却パイプ30の一方端に接続されたフレキシブルパイプ31aと、冷却パイプ30の他方端に接続されたフレキシブルパイプ31bと、冷却パイプ30に接続されこの冷却パイプ30を矢印D3の方向に往復動させる位置変更装置32とを主として備える。
【0030】
冷却パイプ30はサージホッパー20の外部から内部に向かって挿通された状態で設けられている。なお冷却パイプ30とサージホッパー20との間には図示しないシーリング機構が設けられている。
【0031】
冷却水をフレキシブルパイプ31a、冷却パイプ30、及びフレキシブルパイプ31b内を流入させることによって、サージホッパー20内の還元鉄9を輻射冷却できる。
【0032】
位置変更装置32は矢印D3の方向に往復動できる台車によって構成されており、この位置変更装置32が往復動することによりサージホッパー20に対する輻射式冷却装置100の冷却パイプ30(冷却部)の相対位置を変更することができる。これにより輻射冷却の面積を可変に構成できるので、冷却温度(冷却能力)を制御することができる。
【0033】
また、ガス供給部33がサージホッパー20の外部から内部に向かって挿通された状態でかつ冷却パイプ30とほぼ平行に設けられている。このガス供給部33には複数の供給孔33aが設けられており、各供給孔33aから冷却パイプ30に向かって窒素等の不活性ガスが吹き付けられる。これにより、冷却パイプ30に付着したダスト(粉塵)を落とすことができるので、冷却効果の低下を防止できる。また不活性ガスを供給することで、外気が冷却パイプ30とサージホッパー20との間から流入する可能性を低くでき、シール性が向上する。また不活性ガス自体も還元鉄9の冷却効果を有する。
【0034】
本実施形態では、還元鉄9を非接触で冷却できる輻射式冷却装置100を採用することによって、この還元鉄9が輻射式冷却装置100に接触することによる冷却装置の磨耗劣化の可能性を低くすることができる。これにより、冷却装置部品の定期的な交換作業が不要となる。
【0035】
さらに、上記間接冷却する管状の搬送部では、冷却水はこの搬送部の外面に供給されるので劣化し易いが、本実施形態の輻射式冷却装置100では冷却水を循環させて用いるので劣化を低減できる。
【0036】
(第2実施形態)
図3はサージホッパー20に設けられた輻射式冷却装置100の第2実施形態に係る説明図である。なお同図では第1実施形態と同じ構成部については同じ符号を付しており、その説明を省略する。
【0037】
図3に示すように、本実施形態では冷却パイプ30を還元鉄9群の斜面9aにほぼ平行に配設することで、還元鉄9を冷却し易くなる。また冷却パイプ30を水平方向に対して傾斜させることで冷却パイプ30へのダストの付着を低減できる。
【0038】
また、ガス供給部33についても冷却パイプ30とほぼ平行に配設する。これにより、冷却パイプ30に付着した粉塵を不活性ガスにより落とし易くなる。
【0039】
本実施形態でも第1実施形態と同様に、還元鉄9を非接触で冷却できる輻射式冷却装置100を採用することによって、この還元鉄9が輻射式冷却装置100に接触することによる冷却装置の磨耗劣化の可能性を低くすることができる。これにより、冷却装置部品の定期的な交換作業が不要となる。
【0040】
(第3実施形態)
図4は他の例に係る輻射式冷却装置101の構成を示す断面図である。
【0041】
上記第1及び第2実施形態では、冷却パイプ30を有する輻射式冷却装置100の構成を採用したが、図4に示すようにボックス型の輻射式冷却装置101を採用してもよい。
【0042】
この輻射式冷却装置101は、冷却ボックス41とこの冷却ボックス41の内側一壁面に開口側が固定された断面コノ字状の循環路形成部42とを主に備える。循環路形成部42によって循環路43が形成され、冷却水導入口43aから導入された冷却水が循環路43を循環して冷却水排出口43bから排出される。
【0043】
本実施形態でも第1及び第2実施形態と同様に、還元鉄9を非接触で冷却できる輻射式冷却装置100を採用することによって、この還元鉄9が輻射式冷却装置100に接触することによる冷却装置の磨耗劣化の可能性を低くすることができる。これにより、冷却装置部品の定期的な交換作業が不要となる。
【0044】
(その他の形態)
上記実施形態では、冷却パイプ30内の循環路が水平面に対して略垂直となるよう冷却パイプ30を配設したが、冷却パイプ30の循環路で囲まれる仮想平面が水平面に対して略平行となるよう冷却パイプ30を配設してもよい。この場合、冷却面積が増加し冷却効果の向上が期待できる。
【0045】
サージホッパー20に設ける輻射式冷却装置100,101の数は、冷却必要量に応じて設定することができる。
【0046】
輻射式冷却装置100が設けられる場所はサージホッパー20に限定されるものではなく、還元鉄9が搬送されるシュートであってもよい。
【0047】
また上記実施形態では、台車からなる位置変更装置32により冷却パイプ30を往復動するようにしたが、シリンダー機構により冷却パイプ30を往復動する構成を採用することもできる。
【0048】
また冷却パイプ30と同様に、ガス供給部33を矢印D3の方向に往復動させる構成を採用してもよいし、この往復動は冷却パイプ30と一体化させてもよい。
【0049】
さらに上記実施形態では、冷却媒として冷却水を循環させたが、これに限定されるものではなく、冷却媒として低温の空気を用いてもよい。
【0050】
本発明はもとより上記実施形態によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0051】
1 塊成物
3 原料投入ホッパー
4 回転炉床
5 燃焼バーナー
6 ディスチャージャー
7 排ガスダクト
8 ホッパー
9 還元鉄
20 サージホッパー
30 冷却パイプ
32 位置変更装置
33 ガス供給部
41 冷却ボックス
100,101 輻射式冷却装置
A 回転炉床式加熱還元炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式加熱還元炉から排出された還元鉄を貯蔵する還元鉄貯蔵部に設けられ、前記還元鉄を輻射冷却する冷却部を有することを特徴とする輻射式冷却装置。
【請求項2】
前記冷却部のうち、前記還元鉄貯蔵部の内部に存在する部分の表面積が可変に構成されている請求項1に記載の輻射式冷却装置。
【請求項3】
前記冷却部に向けてガスを吹き付けるガス供給部を有する請求項1または2に記載の輻射式冷却装置。
【請求項4】
前記還元鉄貯蔵部は前記還元鉄を貯蔵するサージホッパーである請求項1〜3のいずれか1項に記載の輻射式冷却装置。
【請求項5】
前記冷却部は、冷却水を循環させる冷却パイプである請求項1〜4のいずれか1項に記載の輻射式冷却装置。
【請求項6】
前記冷却部は、冷却水を循環させる循環路が形成された冷却ボックスである請求項1〜4のいずれか1項に記載の輻射式冷却装置。
【請求項7】
移動式加熱還元炉から排出された還元鉄を貯蔵する還元鉄貯蔵工程と、前記還元鉄を輻射冷却する冷却工程とを有することを特徴とする還元鉄製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−29251(P2013−29251A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165842(P2011−165842)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】