説明

農作業機の昇降操作装置

【課題】 走行機体に連結した作業装置を油圧シリンダで駆動昇降するよう構成するとともに、前記油圧シリンダの作動を司る制御バルブを、上昇位置、および、下降位置に亘って操作可能な昇降レバーによって切換え操作するよう構成した農作業機の昇降操作装置において、作業装置を大きく昇降させる場合には速やかに昇降させることができるとともに、少しだけの昇降を簡単かつ正確に行えるようにする。
【解決手段】 昇降レバーの操作径路における、「中立」位置と「上昇」位置との間を、「上昇」位置に操作されたときの基準上昇速度Vusと異なる速度で作業装置を上昇作動させる上昇用中間操作域に設定するとともに、「中立」位置と「下降」位置との間を、「下降」位置に操作されたときの基準下降速度Vdsと異なる速度で作業装置を下降作動させる下降用中間操作域に設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に連結した苗植付け装置や直播装置などの作業装置を駆動昇降するよう構成した田植機や水田直播機などの農作業機に用いる昇降操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
田植機における昇降操作装置としては、例えば、特許文献1に示されているように、昇降レバーを「上昇」,「中立」,「下降」,「植付け」のいずれかに選択操作して昇降用油圧シリンダの制御バルブをするように構成したものがある。この昇降操作装置においては、昇降レバーが「中立」にあると制御バルブが中立状態に維持され、苗植付け装置は現在の高さ位置に保持される。そして、昇降レバーが「上昇」に操作されている間、制御バルブが上昇状態に切換え保持されて苗植付け装置が駆動上昇され、昇降レバーを「中立」に戻すと制御バルブも中立状態に復帰して、苗植付け装置が駆動上昇が停止されることになり、昇降レバーを「上昇」に操作している時間を加減することで、苗植付け装置を所望の高さ位置まで上昇させて停止することができる。また、昇降レバーを「上昇」に保持し続けておいても、苗植付け装置が上限高さまで上昇されると昇降レバーが機械的に「上昇」から「中立」に強制復帰されて、苗植付け装置が上限高さで停止される。
【0003】
また、昇降レバーが「下降」にあると自動昇降制御モードとなる。この自動昇降制御モードでは、苗植付け装置に備えられた対地高さ検出センサからの情報に基づいて制御バルブが作動され、苗植付け装置が田面に対して予め設定された目標高さになるまで下降され、その後、検出センサからの情報に基づいて苗植付け装置が自動的に昇降制御されて、機体の浮沈や前後傾斜に拘わらず苗植付け装置が田面に対して目標高さに定維持される。また、この「下降」では、苗植付け装置への動力伝達を断続する植付けクラッチは「クラッチ切り」に保持されており、苗植付けは行われない。更に、昇降レバーを「植付け」にすると、上した記自動昇降制御モードを維持しながら植付けクラッチが「クラッチ入り」に切換えられ、自動昇降制御を行いながら所定の植付け深さでの植付けが行われることになる。
【特許文献1】特開2003−70304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の昇降操作装置においては、田面上の苗植付け装置を上限高さなどの高い位置に速やかに上昇させることができるように、昇降レバーを「上昇」に操作すると制御バルブを大きく開いて大きい速度で上昇作動が行われるように設定されており、このため、田面上の苗植付け装置を田面から少しだけ浮上した位置などに上昇させたいような場合に、上昇速度が速いために過剰に上昇させてしまいやすく、昇降レバーを「中立」と「上昇」との間ですばやく繰り返し操作する、いわゆるインチング操作を行って少しづつ上昇させるような難しいレバー操作が要求されるものであった。
【0005】
また、苗植付け装置を田面上方の高い位置から田面に速やかに下降させることができるように、田面に着くまでの下降速度は比較的速く設定されており、このために、一旦大きく上昇させた苗植付け装置をメンテナンスなどのために少しだけ下げたいような場合、下げ過ぎが発生しやすいものであった。
【0006】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、作業装置を大きく昇降させる場合には速やかに昇降させることができるとともに、少しだけの昇降を簡単かつ正確に行えるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、走行機体に連結した作業装置を油圧シリンダで駆動昇降するよう構成するとともに、前記油圧シリンダの作動を司る制御バルブを、「上昇」位置、「中立」位置、および、「下降」位置に亘って操作可能な昇降レバーによって切換え操作するよう構成した農作業機の昇降操作装置において、
前記昇降レバーの操作径路における、「中立」位置と「上昇」位置との間を、「上昇」位置に操作されたときの基準上昇速度と異なる速度で作業装置を上昇作動させる上昇用中間操作域に設定するとともに、「中立」位置と「下降」位置との間を、「下降」位置に操作されたときの基準下降速度と異なる速度で作業装置を下降作動させる下降用中間操作域に設定してあることを特徴とする。
【0008】
上記構成によると、昇降レバーを「上昇」位置あるいは「下降」位置に操作すると作業装置は素早く上昇あるいは下降し、昇降レバーを「中立」位置と「上昇」位置との間の上昇用中間操作域、あるいは、「中立」位置と「下降」位置との間の下降用中間操作域に操作すると作業装置はゆっくり上昇あるいは下降する。
【0009】
従って、第1の発明によると、作業装置を大きく昇降させる場合には速やかに昇降させることができるとともに、少しだけの昇降を低速で正確に行うことができ、作業装置の高さ調節を簡単に行える。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記上昇用中間操作域における上昇速度を、前記基準上昇速度より低い一定の速度に設定するとともに、前記下降用中間操作域における下降速度を、前記基準下降速度より低い一定の速度に設定してあるものである。
【0011】
上記構成によると、上昇用中間操作域あるいは下降用中間操作域のどこに操作しても一定の低速度で昇降させることができ、昇降レバーの微妙な操作が不要で、操作に未熟な作業者にとって取り扱いやすいものとなる。
【0012】
第3の発明は、上記第1の発明において、
前記上昇用中間操作域における上昇速度を、前記基準上昇速度より低く、かつ、「中立」位置に近いほど遅くなるように設定するとともに、前記下降用中間操作域における下降作動速度を、前記基準下降速度より低く、かつ、「中立」位置に近いほど遅くなるように設定してあるものである。
【0013】
上記構成によると、目標高さに向けての昇降において、その初期には昇降レバーを「中立」位置から離すことで比較的速く作動させ、目標の高さに近づくと昇降レバーを「中立」に近づけることで十分遅く作動させることができ、比較的短時間でかつ正確に目標高さに到達することが容易となる。
【0014】
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか一つの発明において、
前記昇降レバーの操作径路における前記「下降」位置よりも下降操作側に「作業」位置を設置し、この「作業」位置においては、対地高さ検知手段の検知結果に基づいて前記制御バルブを作動させて、前記作業装置を地面に対して設定高さに安定維持する自動昇降制御が実行されるよう構成してあるものである。
【0015】
上記構成によると、単一の昇降レバーを操作して人為的な昇降操作モードと自動昇降制御モードを簡単に切換えることができ、操作性に優れたものとなる。
【0016】
第5の発明は、上記第4の発明において、
前記昇降レバーを前記下降用中間操作域あるいは「下降」位置へ操作しての下降作動において、前記作業装置が設定された高さまで下降したことが前記対地高さ検知手段によって検知されると下降作動が自動停止されるよう構成してあるものである。
【0017】
上記構成によると、昇降レバーを「下降」位置へ操作維持しておいても、作業装置は所定の作業高さまで下降して自動停止するので、例えば、圃場外において空中から作業装置を下降させた際に、地上に障害物が隆起していたとしても、対地高さ検知手段がこれを検地して下降が停止され、作業装置が障害物に強くぶつかるまで下降させることが回避される。
【0018】
第6の発明は、上記第1〜5のいずれか一つの発明において、
前記作業装置を前記油圧シリンダによって駆動される昇降リンク機構に脱着自在に連結し、作業装置の脱着状態に応じて前記昇降リンク機構の下限位置が自動的に切換え変更されるよう構成してあるものである。
【0019】
上記構成によると、昇降リンク機構から作業装置が取り外されると、昇降リンク機構の下限位置が自動的に切換え変更されることになり、次に作業装置を連結する際に昇降リンク機構を下限位置にまで下降するだけで作業装置の連結に好適な高さにすることができ、作業装置連結時における昇降リンク機構の高さ調節操作が容易となる。
【0020】
第7の発明は、上記第6の発明において、
前記作業装置が取り外された状態での前記昇降リンク機構の前記下限位置を微調節する人為調節手段を備えてあるものである。
【0021】
上記構成によると、昇降リンク機構の下限位置を連結する作業装置の連結に好適な位置に任意に設定することができ、作業装置の連結作業を容易化する上で有効となる。
【0022】
第8の発明は、上記第7の発明において、
前記人為調節手段が、作業装置を所定の対地高さに自動昇降する昇降制御系の制御感度調節手段で兼用してあるものである。
【0023】
上記構成によると、調節手段の兼用化によってコストの低減を図ることができる。
【0024】
第9の発明は、上記第7の発明において、
前記人為調節手段が、作業装置の左右傾斜角度を所定の角度に自動制御するローリング制御系のローリング角度設定手段で兼用してあるものである。
【0025】
上記構成によると、調節手段の兼用化によってコストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1に、乗用田植機の全体側面図が、また、図2に、この田植機の全体平面図がそれぞれ示されている。この田植機は、操向可能な前輪1および操向不能な後輪2を備えて4輪駆動で走行する走行機体3の後部に、油圧シリンダ4によって駆動される平行四連リンク構造の昇降リンク機構5が装備されるとともに、この昇降リンク機構5の後部に苗植付け装6が脱着自在に取付けられ、また、必要に応じて機体後部に施肥装置7が装備された構造となっており、苗植付け装置6に代えて直播装置や除草装置などの他の水田作業装置を装着することができるようになっている。
【0027】
前記走行機体3の前部にはエンジン8が搭載され、その出力が前後進の切り換えが可能な油圧式無段変速装置(HST)からなる主変速装置9に伝達され、その変速出力がミッションケース10に入力されて走行系と作業系に分岐される。走行系の動力は図示されない副変速装置でギヤ変速された後、ミッションケース10に装備された前輪1に伝達されるとともに、後部伝動ケース11に装備された後輪2に伝達されるようになっており、主変速装置9を操作する主変速レバー12が、搭乗運転部の前部に配備されたステアリングハンドル13の左脇に前後揺動操作可能に設けられるとともに、ミッションケース10内の副変速装置を操作する副変速レバー14が、運転座席15の左脇に配備されている。また、ミッションケース10で分岐された作業系の動力は、図示されない株間変速装置でギヤ変速された後、後述する植付けクラッチ15を経て取り出され、伸縮伝動軸16を介して苗植付け装置6に伝達されるようになっている。
【0028】
前記苗植付け装置4は、6条分の苗を載置して左右方向に設定ストロークで往復移動される苗のせ台21、苗のせ台21の下端から1株分づつ苗を切り出して圃場に植付けてゆく6組の回転式の植付け機構22、植付け箇所を整地する3個の整地フロート23、ミッションケース10から取り出された作業用動力が入力されるフィードケース24、横長角筒状の植付け主フレーム25、等を備えて構成されており、この植付け主フレーム25の左右中間部位に前記フィードケース24が連結されるとともに、植付け主フレーム25の中央および左右箇所に後向き片持ち状に連結した3つの植付けケース26の後部に前記植付け機構22が左右2組づつ装備されている。
【0029】
図6〜10に、昇降リンク機構5の後部に苗植付け装置6を脱着自在に連結する構造が示されている。前記植付け主フレーム25における左右中央部の前部には基部ブラケット27が固着され、この基部ブラケット27が縦長形状に構成された連結フレーム28の下端ボス28aに前後向き軸心P周りに所定範囲内でローリング自在に連結されている。
【0030】
前記昇降リンク機構5は、前端を走行機体に枢支連結されたアッパーリンク29と左右一対のロアーリンク30、および、これらリンク29,30の後端同士を連結する縦リンク31とから構成されており、縦リンク31の上端に形成した連結凹部32に、前記連結フレーム28の上部に横架固定した連結軸33を上方から係止し、かつ、この係止部位より下方箇所に設けられた係合ロック機構34(図11参照)によって連結フレーム28を縦リンク31に係合連結することで、苗植付け装置6を昇降リンク機構5の後部に所定の姿勢で連結することができるようになっている。なお、係合ロック機構34は、縦リンク31に前後向き支点a回りに回動可能に装着された左右一対の係止金具35をハンドル36の揺動操作によって左右に回動出退させて、連結フレーム28の左右側面に形成された係合孔37に係脱するよう構成されている。
【0031】
苗植付け装置6を昇降リンク機構5から取外す場合には、先ず、図4に示すように、苗植付け装置6を上昇させてその下部にスタンド38を装着し、次いで、係合ロック機構34の連結を解除した状態で昇降リンク機構5を下降させる。スタンド38が接地してそれ以上の下降が阻まれた状態で更に昇降リンク機構5を下げると、苗植付け装置6が連結凹部32と連結軸33との係止部位を中心にして縦リンク31に対して相対的に後方に離間揺動し、更に昇降リンク機構5を下げることで縦リンク5が連結フレーム28の下方に逃がされ、苗植付け装置6はスタンド38を介して地上に安定載置されることになり、その後、図5に示すように、地上に載置された苗植付け装置6を残して走行機体3を前進移動させるのである。
【0032】
また、苗植付け装置6を昇降リンク機構5に連結するには、先ず、苗植付け装置6をスタンド38を介して地上に安定載置されて苗植付け装置6に対して走行機体3を後進接近させ、下降状態にある昇降リンク機構5の後部を連結フレーム28の下に入り込ませる。次いで、縦リンク31の連結凹部32で連結フレーム28の連結軸33をすくい上げるように係入させながら昇降リンク機構5を上昇させる。この上昇によって苗植付け装置6は連結凹部32と連結軸33との係止部位を中心にして自重で前方に揺動して連結フレーム28が縦リンク31に接近され、連結フレーム28が縦リンク31に対して所定の連結位置になった状態で係合ロック機構34を係合操作することで苗植付け装置6が昇降リンク機構5の後部に所定姿勢で連結されるのである。
【0033】
図13に示すように、前記縦リンク31の下部には、伸縮伝動軸16の後端に連結された中継伝動軸39が遊転自在に支承されるとともに、外周に係合爪を備えた伝動カラー40が前記中継伝動軸39にスプライン外嵌され、また、前記フィードケース24の前面に突出された入力軸41には、前記伝動カラー40に咬合可能な伝動ボス42が固着されており、苗植付け装置6が昇降リンク機構5の後部に所定姿勢で連結されると、中継伝動軸39の後端部が伝動ボス42に同芯状に位置決め挿入されるとともに伝動カラー40が伝動ボス42に咬合され、もって、ミッションケース10から取り出された作業用動力が伸縮伝動軸16、中継伝動軸39、および、入力軸41を介してフィードケース24に伝達されるようになっている。なお、苗植付け装置6の連結作動に伴って中継伝動軸40が伝動ボス42に挿入されてゆく際、伝動カラー40と伝動ボス42との咬合位相が合わないと、伝動カラー40はバネ43に抗してスライド後退され、中継伝動軸39が回転されて咬合位相が合うと伝動カラー40はバネ43によってスライド進出して正規の咬合状態となる。
【0034】
上記のように苗植付け装置6を昇降リンク機構5に連結する際に、連結フレーム28が基端ブラケット27に対してローリング支点P周りに左右に振れると上記連結操作が困難となるので、苗植付け装置6を昇降リンク機構5から分離すると自動的に連結フレーム28が基端ブラケット27に対して一定の姿勢に固定され、また、連結すると連結フレーム28と基端ブラケット27との相対揺動が自動的に許容されて、苗植付け装置6がローリング可能な状態がもたらされるようになっており、以下、その構造について説明する。
【0035】
図9,10に示すように、連結フレーム28における下端部の横一側には支点b周りに回動自在なフック部材46が装着されるとともに、基端ブラケット27にはこのフック部材46が係合するロックピン47が固着されており、フック部材46がバネ48によって付勢回動されてロックピン47に係合されることで、連結フレーム28と基端ブラケット27との相対揺動が阻止される。また、昇降リンク機構5における縦リンク31には、前記フック部材46に前方より接当するロック解アーム49が設けられている。そして、苗植付け装置6を昇降リンク機構5に連結した状態では、ロック解除アーム49との接当によってフック部材46がバネ48に抗して回動されてロックピン47から外れた姿勢に保持され、連結フレーム28と基端ブラケット27との支点P周りでの相対揺動が許容され、また、苗植付け装置6が昇降リンク機構5から分離されると、ロック解除アーム49との接当が解除されたフック部材46が付勢回動されてロックピン47に係合され、連結フレーム28と基端ブラケット27との支点P周りでの相対揺動が阻止されるのである。
【0036】
このようにして連結された苗植付け装置6は、昇降リンク機構5に対して支点P周りにローリング自在に支持されることになり、苗植付け装置6の適所に装着した傾斜センサ50(図17参照)の検出結果に基づいて以下のようにローリング制御される。
【0037】
つまり、図3に示すように、前記連結フレーム28の上端部には電動モータ51を備えたローリング駆動ユニット52が設けられており、このローリング駆動ユニッ52から左右に延出され一連の操作ワイヤ53と苗のせ台21を背部から支持するように植え付け主フレーム25に連結された固定支持枠54の上部とが緩衝用バネ55を介して連結され、電動モータ51を正転あるいは逆転作動させて操作ワイヤ53を引き込みおよび繰出し操作することで、苗植付け装置6が支点P周り左右に傾動されるようになっている。そして、苗植付け装置6が設定された姿勢(一般には水平姿勢)から外れたことが傾斜センサによって検知されると、その傾斜を是正する方向にローリング駆動ユニット51が作動制御され、もって、走行機体3が左右に傾斜しても苗植付け装置6が常に所定の傾斜姿勢(水平)に維持され、全植付け条で均一な植付け深さでの植付けが行われるようになっている。
【0038】
なお、ローリング駆動ユニット51が停止している状態でも苗植付け装置6は緩衝用バネ55を介して多少は自由にローリングできるので、走行機体3が多少左右に傾斜しても、整地フロート23を介して田面Tに幅広く接地支持された苗植付け装置6は走行機体3に対して自由ローリングして田面Tに沿った姿勢に安定維持されることになり、大きい機体傾斜などに対して前記自動ローリング制御が働くのである。
【0039】
図8,12に示すように、苗植付け装置6における前記基部ブラケット27には、上限あるいは下限まで昇降された苗植付け装置6が自由にローリングするのを接当阻止するローリングロック構造が備えられている。つまり、前記基部ブラケット27の左右には適度の硬度のゴム材からなる上部ストッパ56と下部ストッパ57が上下に対向して配備されるとともに、これら上部ストッパ56と下部ストッパ57の間に昇降リンク機構5における左右ロアーリンク30の後方延長部30aが入り込むように配備されている。
【0040】
この構成によると、図12中の仮想線で示すように、苗植付け装置6が上限まで上昇されると、左右ロアーリンク30における後方延長部30aの上面が左右の上部ストッパ56にそれぞれ受け止め支持されることになって、苗植付け装置6の自由ローリングが弾性的に接当阻止される。これによって、苗植付け装置6を上限まで上昇させての走行時に苗植付け装置6が自由ローリングして機体が動揺することが回避される。また、図12中の実線で示すように、苗植付け装置6が下限まで下降されると、左右ロアーリンク30における後方延長部30aの下面が左右の下部ストッパ57にそれぞれ受け止め支持されることになって、苗植付け装置6の自由ローリングが弾性的に接当阻止されるのである。これによって、平地において苗植付け装置6を下限まで下降させてメンテナンス等を行う場合に、苗植付け装置6を固定しておくことができるのである。
【0041】
また、図14に示すように、走行機体3の前部左右には、予備苗を複数段に収容する予備苗のせ台17が立設配備されるとともに、予備苗のせ台17の基部から左右に延出された支持アーム61の先端部に、植付け前進走行に伴って田面に次行程の走行基準線を形成する左右一対の線引きマーカ62が備えられている。この線引きマーカ62は、支点c周りに起伏揺動可能なマーカアーム63の先端部に回転自在な泥掻きホイール64を装着して構成されたものであり、図14中の実線で示すように、泥掻きホイール64が田面Tに没入するよう横外側方に張り出し倒伏された作用姿勢と、同図中の仮想線で示すように、泥掻きホイール64が上方に大きく浮上されるように起立退入された格納姿勢とに切換え揺動可となっている。そして、この線引きマーカ62のマーカアーム63はバネ65によって作用姿勢に向けて揺動付勢されるとともに、補助バネ66によって適度に起立付勢されて起立操作荷重の軽減が図られている。また、マーカアーム63の基部にはレリーズワイヤからなる操作ワイヤ67のインナ前端部が連結されており、操作ワイヤ67が引き操作されることで、作用姿勢の線引きマーカ62がバネ65に抗して格納姿勢に強制退入されるようになっている。
【0042】
前記操作ワイヤ67は苗植付け装置6の上昇作動によって引き操作されるようになっており、その連係構造が図15に示されている。つまり、前記操作ワイヤ67のインナ後端部が、走行機体3の適所に直線スライド移動可能に配備された中継部材68の一端に連結されるとともに、この中継部材68の他端にインナ前端部が連結された第2操作ワイヤ69が昇降リンク機構5の後部に延出されている。昇降リンク機構5の後部連結された苗植付け装置6における連結フレーム28には横向きの支点d周りに揺動自在にワイヤ操作レバー70が枢支連結され、このワイヤ操作レバー70の先端に前記第2操作ワイヤ69のインナ後端が連結されている。また、昇降リンク機構5におけるアッパーリンク29の後部からはワイヤ操作アーム71が下向きに延出され、このワイヤ操作アーム71の後端面がワイヤ操作レバー70の基端延長部に備えたローラ70aに対向されている。
【0043】
上記構成によると、昇降リンク機構5が上方に揺動作動して苗植付け装置6が上限まで上昇されると、連結フレーム28に対してアッパーリンク29が相対的に下方揺動することでワイヤ操作アーム71の後端面がワイヤ操作レバー70の基端延長部を後方に接当移動させ、ワイヤ操作レバー70が上方に揺動されて2本の第2操作ワイヤ69がそれぞれ引き操作されるとともに、この第2操作ワイヤ69に中継部材68を介して連結された操作ワイヤ67が引き操作され、作用姿勢の線引きマーカ62がバネ65に抗して格納姿勢に強制起立されることになる。逆に、昇降リンク機構5が下方に揺動作動して苗植付け装置6が下降されると、連結フレーム28に対してアッパーリンク29が相対的に上方揺動することでワイヤ操作アーム71によるワイヤ操作レバー70の押圧操作が解除され、ワイヤ操作レバー70が下方揺動可能となって2本の第2操作ワイヤ69がそれぞれ弛められ、これに伴って操作ワイヤ67が弛められることで線引きマーカ62がバネ65によって作用姿勢に倒伏されることになる。
【0044】
上記構成において、前記操作ワイヤ67と第2操作ワイヤ69とを繋ぐ中継部材68にはロック機構72が作用している。このロック機構72には、中継部材68をスライド自在に支持したブラケット73に支点e周りに回動自在に取り付けたロック爪74、このロック爪74を回動付勢するバネ75、および、ロック爪74をバネ75に抗して回動させる電磁ソレノイド76、が備えられており、苗植付け装置6の上昇作動に連動して上記のように中継部材68がマーカ格納方向(図15では左方)にスライド変位すると、この中継部材68に形成したノッチ68aにロック爪74が付勢係合されて中継部材68がマーカ突出方向(図15では右方)に復帰移動することが阻止され、もって、起立された線引きマーカ62が格納位置に保持されるようになっている。そして、電磁ソレノイド76が通電されてロック機構72がロック解除された状態で苗植付け装置6が下降されるか、苗植付け装置6が下降された状態でロック機構72がロック解除されることで、線引きマーカ62が格納位置から作用位置に倒伏されるようになっており、一対の電磁ソレノイド76への通電を後述のように人為的に選択することで左右いずれかの線引きマーカ62を作用位置に倒伏作動させることができるようになっている。
【0045】
前記昇降リンク機構5を駆動昇降する油圧シリンダ4は電磁式の制御バルブ80によって作動制御されるものであり、図16に示すように、この制御バルブ80には、パイロット圧の供給を受けて正または逆に作動する中立復帰型の主スプール81、主スプール81に上昇用のパイロット圧油を供給する上昇用デューティ弁82u、主スプール81に下降用のパイロット圧油を供給する下降用デューティ弁82d、両デューティ弁82u,82dの一次側に所定圧の圧油を供給するための減圧弁83、等が組込まれており、上昇用デューティ弁82uおよび下降用デューティ弁82dに供給す制御電流をデューティ制御することで油圧シリンダ4の作動速度を変更することが可能となっている。
【0046】
図17の制御ブロック図に示されているように、前記制御バルブ80はマイコンを利用した制御装置84に接続されており、苗植付け装置6の対地高さ検出情報に基づいて自動制御されるとともに、人為指令によっても操作できるようになっており、以下それらに関連する構成について説明する。
【0047】
走行機体3に備えられた運転座席18の右横脇には昇降レバー85が前後揺動自在に配備されている。この昇降レバー85の操作径路には、前方から後方に向けて、「植付け(作業)」、「下降」、「中立」、および、「上昇」の4つの操作位置がこの順に設定されるとともに、これらの更に後方に「自動」位置が設けられており、昇降レバー85の操作位置がポテンショメータ86で連続的に検出されて制御装置84に入力されている。
【0048】
苗植付け装置6に装備された整地フロート23の内、中央に位置する整地フロート23が苗植付け装置6の対地高さを検知するセンサフロートSFに構成されている。つまり、このセンサフロートSFの後部支点x周りの上下揺動変位がポテンショメータ87で検出され、このポテンショメータ87からの出力が、田面Tに対する苗植付け装置6の高さ位置情報として制御装置84に入力されている。
【0049】
ステアリングハンドル13の右脇には、優先的な昇降指令、マーカ選択指令、等を出すために十字操作式の優先操作レバー88が配備されている。この優先操作レバー88は、上下左右に揺動可能、かつ、中立位置に復帰付勢されており、中立位置より上方の上昇操作位置、中立位置より下方の下降操作位置、中立位置より前方の左マーカ操作位置、および、中立位置より後方の右マーカ操作位置への操作が可能となっている。そして、これらの各操作位置への操作が多接点スイッチ機構89によって検出され、その検出情報が制御装置84に入力されるようになっている。
【0050】
また、前記制御装置84には、苗植付け装置6の昇降位置を昇降リンク機構5の高さ位置として検知するポテンショメータ90、前記植付けクラッチ15を入り切り操作する電動モータ91、植付け深さを安定維持するために苗植付け装置6を自動昇降制御する際の制御感度を調節する回転ダイヤル式の制御感度調節器92が接続されている。さらに、制御装置84には、苗植付け装置6のローリング制御系の各電気機器、つまり、傾斜センサ50、ローリング駆動ユニット51の電動モータ52、および、苗植付け装置6の目標姿勢を設定する回転ダイヤル式のローリング角度設定器58も接続されている。
【0051】
この田植機においては、前記昇降レバー85を操作して苗植付け装置6を任意に昇降させる手動昇降モードと、苗植付け装置6を自動昇降制御する自動植付け深さ制御モードを選択することができるようになっており、各モードでの作動を以下に説明する。
【0052】
[手動昇降モード]
【0053】
昇降レバー85を「上昇」位置に切換え保持すると電磁制御バルブ80が上昇状態に切換えられ、昇降リンク機構5が予め設定されている上限位置に到達するまで上昇作動し、上限位置まで上昇したことがポテンショメータ90で検知されると制御バルブ80が自動的に中立に切換えられ、苗植付け装置6は上限高さで保持される。また、昇降レバー85を「上昇」位置に操作した後、苗植付け装置6が上限高さに到達するまでに昇降レバー85を「中立」位置に戻すことで、苗植付け装置6を任意の高さまで上昇させて停止することができる。なお、「上昇」位置および「中立」位置では植付けクラッチ15が電動モータ91によってクラッチ切り状態に切換えられる。
【0054】
苗植付け装置6が空中にある状態で、昇降レバー85を「下降」位置に操作すると、植付けクラッチ15がクラッチ切り状態に維持されたままで「自動植付け深さ制御モード」に切換わる。この制御モードでは、後述するように、センサフロートSFの姿勢検出情報に基づいて苗植付け装置6を所定の植付け作業高さに維持するものであるために、空中にある苗植付け装置6はセンサフロートSFが田面T接地して所定の基準姿勢になるまで下降制御される。なお、圃場外で苗植付け装置6を下降させると、昇降リンク機構5が予め入力設定されている下限位置まで下降して停止する。また、昇降レバー85を「下降」位置に操作した後、センサフロートSFが接地するまでに、あるいは、昇降リンク機構5の下限位置に到達するまでに昇降レバー85を「中立」位置に戻すことで、苗植付け装置6を任意の高さまで下降させて停止することもできる。
【0055】
ここで、昇降レバー85を用いて苗植付け装置6を昇降させる際の昇降速度を以下のようにして任意に調整することが可能となっている。
【0056】
つまり、図18に示すように、昇降レバー85を「上昇」位置に設定した場合の上昇速度Vu、および、「下降」位置に設定した場合の下降速度Vdは予め入力設定された基準上昇速度Vusと基準下降速度Vdsに定められているが、昇降レバー85を「中立」位置と「上昇」位置の間の上昇用中間操作域に操作した場合の上昇速度Vuが基準上昇速度Vusよりも低くなるように制御バルブ80が制御され、また、昇降レバー85を「中立」位置と「下降」位置の間の下降用中間操作域に操作した場合の下降速度Vdが基準下降速度Vdsよりも低くなるように制御バルブ80が制御されるものであり、かつ、「中立」位置から離れるほど比例的に速くなるように、昇降レバー85の操作位置に対応して上昇速度Vuおよび下降速度Vdが変更されるようになっている。従って、昇降レバー85を「中立」位置から適当量だけ上昇側あるいは下降側に操作することで、苗植付け装置6を任意の低速で昇降させることができるのである。
【0057】
[自動植付け深さ制御モード]
【0058】
昇降レバー85を「植付け」位置に操作すると、自動植付け深さ制御モードに切換わるとともに、センサフロートSFの接地がポテンショメータ87からの情報に基づいて検知されて植付けクラッチ15が電動モータ91によってクラッチ入り状態に切換えられる。この制御モードでは、センサフロートSFの上下揺動角度を目標基準角に維持するようポテンショメー87からの検出情報に基づいて制御バルブ80が作動制御される。つまり、ポテンショメー87により検出されたセンサフロートSFの上下揺動角の移動平均値(以下、単に検出角と略称する)が算出されるとともに、その検出角と予め制御装置84に入力設定されている目標基準角とが比較され、目標基準角と検出角との偏差に基づいて制御バルブ80が作動制御される。
【0059】
従って、目標基準角に対して検出角が大きい(センサフロートSFが目標基準角よりも前上がり方向にある)と判断されると苗植付け装置6が上昇制御され、逆に、基準目標角に対して検出角が小さい(センサフローSFが目標基準角よりも前下がり方向にある)と判断されると苗植付け装置6が下降制御され、もって、センサフロートSFの上下揺動角が目標基準角の不感帯幅内に納められる。これによって、圃場における耕盤の深さ変化などによって走行機体3が上下動したり前後に傾斜しても、苗植付け装置6の田面Tに対する高さを安定維持して、所定の深さでの植付けを行うことができるのである。
【0060】
また、この自動植付け深さ制御における前記目標基準角は、前記制御感度調節器92によって複数段階(例えば7段階)に調節設定することができるものであり、ダイヤル値を小さく設定するほど目標基準角にある(制御中立状態にある)センサフロートSFの姿勢が前下がり方向に変更され、ダイヤル値を大きく設定するほど目標基準角にある(制御中立状態にある)センサフロートSFの姿勢が前上がり方向に変更されるようになっている。
【0061】
これによると、ダイヤル値を小さく設定して目標基準角にあるセンサフロートSFの姿勢を前下がり方向に変更するほど、センサフロートSFが接地圧を受けやすくなり、小さい接地圧変動でもセンサフロートSFが上下揺動し、敏感な昇降制御が行われることになる。逆に、ダイヤル値を大きく設定して目標基準角にあるセンサフロートSFの姿勢を前上がり方向に変更するほど、センサフロートSFが接地反力を受けにくくなり、接地圧が大きく変動しないとセンサフロートSFが上下揺動しなくなり鈍感な昇降制御が行われることになる。従って、水が多くて柔らかい水田では小さいダイヤル値に設定して制御感度を敏感にすることで、センサフロートSFを不当に大きく沈下させてしまうことなく昇降制御を行うことができ、逆に、硬い水田では大きいダイヤル値に設定して制御感度を鈍感にすることで、田面Tの凹凸などに不当に感応することなく安定した昇降制御を行うことができるのである。
【0062】
昇降レバー85を「自動」位置に操作すると、上記した「自動植付け深さ制御モード」が設定されるとともに「優先昇降制御」と「バックアップ制御」が実行可能となるものであり、以下にこれら制御の作動について説明する。
【0063】
(優先昇降制御)
【0064】
植付け装置6が所定の高さを維持するよう昇降制御される状態で植付け走行を行って畦際に到達すると、ステアリングハンドル13の右脇にある前記優先操作レバー88を上昇操作位置にワンショット操作することで、苗植付け装置6は自動植付け深さ制御作動に優先して上限高さまで上昇制御されるとともに植付けクラッチ15が電動モータ91によって切り制御され、苗植付け装置6の駆動が停止される。畦際での機体方向転換を終えると、優先操作レバー88を下降操作位置に1回ワンショット操作することで元の自動昇降制御状態に復帰して、苗植付け装置6は接地するまで下降制御される。但し、この下降においては植付けクラッチ15は未だクラッチ切り状態に維持される。方向転換および次の植付け行程に対する条合わせがすむと、タイミングを見はからって優先操作レバー88を再び下降操作位置にワンショット操作することで、植付けクラッチ15が入り制御されて植付けを開始することができる。
【0065】
(バックアップ制御)
【0066】
畦際などで植付け装置6が下降している状態のまま、主変速レバー12を後進に切り換えると、これが電気的に検出されて植付け装置6は上限高さまで自動的に上昇する。このとき、植付けクラッチ15が入っておれば上昇作動とともに切り制御され、後進によって植付け装置6の後部が畦などにぶつかることが未然に回避される。
【0067】
また、上記のように苗植付け装置6の優先昇降を指令する優先操作レバー88は、線引きマーカ62の選択作動を行うものであり、畦際において苗植付け装置6が上限まで上昇された後の任意のタイミングで行われることになり、優先操作レバー88を前方の左マーカ操作位置にワンショット操作すると、左側の線引きマーカ62に対するロック機構72の電磁ソレノイド76が通電励磁されて係止ロックが解除され、優先操作レバー88を後方の右マーカ操作位置にワンショット操作すると右側の線引きマーカ62に対するロック機構72の電磁ソレノイド76が通電励磁されて係止ロックが解除されることになり、係止ロックが解除された側の線引きマーカ62だけが苗植付け装置6の下降作動に伴って作用姿勢に倒伏されてゆくのである。
【0068】
なお、苗植付け装置6に代えて他の作業装置を連結する場合、苗植付け装置6に備えられた電気機器と走行機体3の電気機器とを接続する配線をカプラ95(図17参照)を介して分離することになるが、このカプラ95にはダミー端子(図示せず)が組み込まれており、カプラ95が接続された植付け作業モードとカプラ95が分離された他の作業モードが走行機体側の制御装置84で認識されるようになっている。そして、カプラ95が接続された植付け作業モードでは、昇降レバー85を「下降」位置に操作して昇降リンク機構5を下降作動させると、昇降リンク機構5が予め入力設定された基準下限位置まで下降して停止され、また、カプラ95が分離された他の作業モードでは、昇降レバー85を「下降」位置に操作して昇降リンク機構5を下降作動させると、任意に変更調節可能な下限位置まで下降して停止されるようになっている。つまり、他の作業モードでの下限位置は、前記制御感度調節器92が下限位置調節器として利用され、その感度調節範囲の中間位置(ダイヤル目盛り4)で植付け作業モードでの前記基準下限位置と同一の下限位置が設定され、制御感度調節器92を中間位置より敏感側に調節するほど下限位置が低くなり、中間位置より鈍感側に調節するほど下限位置が高くなるように設定されている。
【0069】
〔他の実施例〕
【0070】
(1)図19に示すように、昇降レバー85を「中立」位置と「上昇」位置の間の上昇用中間操作域に操作した場合には、上昇速度Vuが「上昇」位置に操作した場合の基準上昇速度Vusよりも低い一定の速度となり、また、昇降レバー85を「中立」位置と「下降」位置の間の下降用中間操作域に操作した場合には、「下降」位置に設定した場合の基準下降速度Vdsよりも低い一定の速度となるよう設定することもできる。
【0071】
(2)図20に示すように、昇降レバー85を「中立」位置と「上昇」位置の間の上昇用中間操作域に操作した場合、昇降レバー85を「中立」位置に近づけるほど上昇速度Vuが段階的に遅くなり、また、昇降レバーを「中立」位置と「下降」位置の間の下降用中間操作域に操作した場合、昇降レバー85を「中立」位置に近づけるほど下降速度Vdが段階的に遅くなるように設定することもできる。
【0072】
(3)カプラ95が分離された他の作業モードにおいて昇降リンク機構5の下限位置を微調節する手段として、ローリング角度設定器58を利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】田植機の全体側面図
【図2】田植機の全体平面図
【図3】苗植付け装置の背面図
【図4】連結状態の苗植付け装置を示す側面図
【図5】分離状態の苗植付け装置を示す側面図
【図6】連結状態の連結部を示す側面図
【図7】分離状態の連結部を示す側面図
【図8】連結部の正面図
【図9】分離状態の連結部を示す側面図
【図10】上昇状態の連結部を示す側面図
【図11】連結ロック構造を示す縦断正面図
【図12】ローリングロック構造を示す側面図
【図13】苗植付け装置の入力部を示す縦断側面図
【図14】線引きマーカの正面図
【図15】線引きマーカの操作構造を示す操作系統図
【図16】昇降用の油圧回路図
【図17】制御ブロック図
【図18】昇降レバーの操作位置と昇降速度との関係を示す特性線図
【図19】他の実施例の特性線図
【図20】他の実施例の特性線図
【符号の説明】
【0074】
3 走行機体
4 油圧シリンダ
6 作業装置(苗植付け装置)
80 制御バルブ
85 昇降レバー
Vu 上昇速度
Vus 基準上昇速度
Vd 下降速度
Vds 基準下降速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に連結した作業装置を油圧シリンダで駆動昇降するよう構成するとともに、前記油圧シリンダの作動を司る制御バルブを、「上昇」位置、「中立」位置、および、「下降」位置に亘って操作可能な昇降レバーによって切換え操作するよう構成した農作業機の昇降操作装置において、
前記昇降レバーの操作径路における、「中立」位置と「上昇」位置との間を、「上昇」位置に操作されたときの基準上昇速度と異なる速度で作業装置を上昇作動させる上昇用中間操作域に設定するとともに、「中立」位置と「下降」位置との間を、「下降」位置に操作されたときの基準下降速度と異なる速度で作業装置を下降作動させる下降用中間操作域に設定してあることを特徴とする農作業機の昇降操作装置。
【請求項2】
前記上昇用中間操作域における上昇速度を、前記基準上昇速度より低い一定の速度に設定するとともに、前記下降用中間操作域における下降速度を、前記基準下降速度より低い一定の速度に設定してある請求項1記載の農作業機の昇降操作装置。
【請求項3】
前記上昇用中間操作域における上昇速度を、前記基準上昇速度より低く、かつ、「中立」位置に近いほど遅くなるように設定するとともに、前記下降用中間操作域における下降作動速度を、前記基準下降速度より低く、かつ、「中立」位置に近いほど遅くなるように設定してある請求項1記載の農作業機の昇降操作装置。
【請求項4】
前記昇降レバーの操作径路における前記「下降」位置よりも下降操作側に作業位置を設置し、この作業位置においては、対地高さ検知手段の検知結果に基づいて前記制御バルブを作動させて、前記作業装置を地面に対して設定高さに安定維持する自動昇降制御が実行されるよう構成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の農作業機の昇降操作装置。
【請求項5】
前記昇降レバーを前記下降用中間操作域あるいは「下降」位置へ操作しての下降作動において、前記作業装置が設定された高さまで下降したことが前記対地高さ検知手段によって検知されると下降作動が自動停止されるよう構成してある請求項4記載の農作業機の昇降操作装置。
【請求項6】
前記作業装置を前記油圧シリンダによって駆動される昇降リンク機構に脱着自在に連結し、作業装置の脱着状態に応じて前記昇降リンク機構の下限位置が自動的に切換え変更されるよう構成してある請求項1〜5のいずれか一項に記載の農作業機の昇降操作装置。
【請求項7】
前記作業装置が取り外された状態での前記昇降リンク機構の前記下限位置を微調節する人為調節手段を備えてある請求項6記載の農作業機の昇降操作装置。
【請求項8】
前記人為調節手段が、作業装置を所定の対地高さに自動昇降する昇降制御系の制御感度調節手段で兼用してある請求項7記載の農作業機の昇降操作装置。
【請求項9】
前記人為調節手段が、作業装置の左右傾斜角度を所定の角度に自動制御するローリング制御系のローリング角度設定手段で兼用してある請求項7記載の農作業機の昇降操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−136249(P2006−136249A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329269(P2004−329269)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】