説明

近接場光記録素子、近接場光ヘッド及び情報記録再生装置

【課題】小型化を図りながら低コストで容易に製造できると共に、近接場光を効率良く発生させて書き込みの信頼性が向上し、主磁極からの洩れ磁束を減少させてさらなる高密度記録化を図ること。
【解決手段】光束Lが導入される底面30aと、光束が導入されたときに近接場光Rが発せられる端面30bと、4つの側面30cとを有し、四角錐台状に形成された光透過性のコア30と、4つの側面のうち、磁気記録媒体Dの回転方向に並んだ状態で互いに対向する2つの側面上にそれぞれ形成され、両者の間に記録磁界を発生させる主磁極31及び補助磁極32とを備え、補助磁極は、コアの端面側において主磁極の一方の側面に向けて突出した突出部32aを備えている近接場光記録素子20を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光を利用して磁気記録媒体に各種の情報を超高密度で記録することができる近接場光記録素子、該近接場光記録素子を有する近接場光ヘッド及び該近接場光ヘッドを有する情報記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ機器におけるハードディスク等の容量増加に伴い、単一記録面内における情報の記録密度が増加している。例えば、磁気ディスクの単位面積当たりの記録容量を多くするためには、面記録密度を高くする必要がある。ところが、記録密度が高くなるにつれて、記録媒体上で1ビット当たりの占める記録面積が小さくなっている。このビットサイズが小さくなると、1ビットの情報が持つエネルギーが、室温の熱エネルギーに近くなり、記録した情報が熱揺らぎ等のために反転したり、消えてしまったりする等の熱減磁の問題が生じてしまう。
【0003】
一般的に用いられてきた面内記録方式では、磁化の方向が記録媒体の面内方向に向くように磁気を記録する方式であるが、この方式では上述した熱減磁による記録情報の消失等が起こり易い。そこで、このような不具合を解消するために、記録媒体に対して垂直な方向に磁化信号を記録する垂直記録方式に移行しつつある。この方式は、記録媒体に対して、単磁極を近づける原理で磁気情報を記録する方式である。この方式によれば、記録磁界が記録膜に対してほぼ垂直な方向を向く。垂直な磁界で記録された情報は、記録膜面内においてN極とS極とがループを作り難いため、エネルギー的に安定を保ち易い。そのため、この垂直記録方式は、面内記録方式に対して熱減磁に強くなっている。
【0004】
しかしながら、近年の記録媒体は、より大量且つ高密度情報の記録再生を行いたい等のニーズを受けて、さらなる高密度化が求められている。そのため、隣り合う磁区同士の影響や、熱揺らぎを最小限に抑えるために、保磁力の強いものが記録媒体として採用され始めている。そのため、上述した垂直記録方式であっても、記録媒体に情報を記録することが困難になっていた。
【0005】
そこで、この不具合を解消するために、近接場光により磁区を局所的に加熱して一時的に保磁力を低下させ、その間に書き込みを行うハイブリッド磁気記録方式(近接場光アシスト磁気記録方式)が提供されている。このハイブリッド磁気記録方式は、微小領域と、近接場光ヘッドに形成された光の波長以下のサイズに形成された光学的開口との相互作用により発生する近接場光を利用する方式である。このように、光の回折限界を超えた微小な光学的開口、即ち、近接場光発生素子を有する近接場光ヘッドを利用することで、従来の光学系において限界とされていた光の波長以下となる領域における光学情報を扱うことが可能となる。よって、従来の光情報記録再生装置等を超える記録ビットの高密度化を図ることができる。
なお、近接場光発生素子は、上述した光学的微小開口によるものだけでなく、例えば、ナノメートルサイズに形成された突起部により構成しても構わない。この突起部によっても、光学的微小開口と同様に近接場光を発生させることができる。
【0006】
上述したハイブリッド磁気記録方式による記録ヘッドとしては、各種のものが提供されているが、その1つとして、光スポットのサイズを縮小して記録密度の増大化を図った磁気記録ヘッドが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
この磁気記録ヘッドは、主に主磁極と、補助磁極と、螺旋状の導体パターンが絶縁体の内部に形成されたコイル巻線と、照射されたレーザ光から近接場光を発生させる金属散乱体と、金属散乱体に向けてレーザ光を照射する平面レーザ光源と、照射されたレーザ光を集束させるレンズとを備えている。これら各構成品は、ビームの先端に固定されたスライダの先端面に取り付けられている。
【0007】
主磁極は、一端側が記録媒体に対向した面となっており、他端側が補助電極に接続されている。つまり、主磁極及び補助電極は、1本の磁極(単磁極)を垂直方向に配置した単磁極型垂直ヘッドを構成している。また、コイル巻線は、磁極と補助電極との間を一部が通過するように補助電極に固定されている。これら磁極、補助電極及びコイル巻線は、全体として電磁石を構成している。
主磁極の先端には、金等からなる上記金属散乱体が取り付けられている。また、金属散乱体から離間した位置に上記平面レーザ光源が配置されると共に、該平面レーザ光源と金属散乱体との間に上記レンズが配置されている。
上述した各構成品は、スライダの先端面側から、補助磁極、コイル巻線、主磁極、金属散乱体、レンズ、平面レーザ光源の順に取り付けられている。
【0008】
このように構成された磁気記録ヘッドを利用する場合には、近接場光を発生させると同時に記録磁界を印加することで、記録媒体に各種の情報を記録している。
即ち、平面レーザ光源からレーザ光を照射させる。このレーザ光は、レンズによって集束され、金属散乱体に照射される。すると金属散乱体は、内部の自由電子がレーザ光の電場によって一様に振動させられるのでプラズモンが励起されて先端部分に近接場光を発生させる。その結果、記録媒体の磁気記録層は、近接場光によって局所的に加熱され、一時的に保磁力が低下する。
また、上記レーザ光の照射と同時に、コイル巻線の導体パターンに駆動電流を供給することで、主磁極に近接する記録媒体の磁気記録層に対して記録磁界を局所的に印加する。これにより、保磁力が一時的に低下した磁気記録層に各種の情報を記録することができる。つまり、近接場光と磁場との協働により、記録媒体への記録を行うことができる。
【0009】
更に、上述した磁気記録ヘッドに対して、さらに予熱機構を組み合わせた磁気記録ヘッドも知られている(例えば、特許文献3参照)。
この磁気記録ヘッドは、上述した主磁極と補助磁極との間に、予熱機構である抵抗ヒータを備えている。この抵抗ヒータは、主磁極及び金属散乱体に比べて先端面積が大きいので、加熱する対象領域が広く温度勾配が低い。そのため、抵抗ヒータは、記録媒体の磁気記録層に対して、予め予熱する程度の熱しか加えることができないようになっている。
このように構成された磁気記録ヘッドによれば、予め抵抗ヒータによって磁気記録層を予熱できるので、近接場光を発生させる金属散乱体における発熱を低減することができる。よって、温度上昇による金属散乱体の劣化や、損傷の可能性等を低下させることができ、耐久性の向上化を図ることができる。
【特許文献1】特開2004−158067号公報
【特許文献2】特開2005−4901号公報
【特許文献3】特開2005―78689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来の磁気記録ヘッドには、まだ以下の課題が残されていた。
即ち、上記特許文献1及び2に記載されている磁気記録ヘッドでは、金属散乱体が、走査方向の最後端に位置するように主磁極の外側に設けられているので、磁気記録層に情報を記録する際に、記録磁界を印加している位置に対して効率良く加熱を行うことが困難なものであった。つまり、記録媒体の回転に伴って磁気記録層は、補助磁極、磁極、金属散乱体の順に移動するので、近接場光で加熱される前に記録磁界が印加されてしまう。そのため、記録磁界が印加された領域外に、近接場光による加熱温度のピーク位置がきてしまい、書き込みの信頼性が劣るものであった。
特に、近接場光による温度勾配は、記録媒体の走査方向に対して遅れる傾向にあるので、加熱温度のピーク位置が金属散乱体の真下からずれてしまうと考えられる。この点を考慮すると、実際には加熱温度のピーク位置が記録磁界の印加領域からさらに外れる方向にずれてしまい、正確な書き込みを行えない可能性が高かった。
【0011】
一方、特許文献3に記載されている磁気記録ヘッドは、主磁極と補助磁極との間に抵抗ヒータ等の予熱機構を備えているので、上述した書き込みの信頼性の問題点を解消する構成にはなっているが、その反面、構成品としてさらに予熱機構が加わるので、構成がさらに煩雑になり大型化してしまう不都合があった。
【0012】
また、上記特許文献1から3に記載されている磁気記録ヘッドでは、記録トラック幅をより小さくしてさらなる高密度記録化を図ろうとする場合、両磁極の間隔を狭めたり、金属散乱体のサイズをさらに小さく設計したりする等、構成品自体のサイズをさらに微細化する必要がある。そのため、製造の困難化や高コスト化を招いてしまい、容易に行えるものではなかった。
【0013】
更に、従来の磁気記録ヘッドでは、記録磁界を印加した際に、記録媒体に対向する主磁極の先端面から磁束が流れるだけでなく、主磁極の側面から洩れ出た磁束も記録媒体に流れてしまう。そのため、記録媒体に流入する記録磁界の一部が、磁界の表面に対して垂直にならず、斜めになってしまっていた。つまり、磁界勾配がなだらかで小さくなってしまっていた。その結果、記録媒体の磁気記録層に対して一部の磁束が真直ぐに入らず、磁化反転を効率良く行うことが難しかった。従って、さらなる高密度記録化に対応することが難しかった。
【0014】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、小型化を図りながら低コストで容易に製造できると共に、近接場光を効率良く発生させて書き込みの信頼性が向上し、洩れ磁束を減少させてさらなる高密度記録化を図ることができる近接場光記録素子、近接場光ヘッド及び情報記録再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る近接場光記録素子は、導入された光束から近接場光を発生させて一定方向に回転する磁気記録媒体を加熱すると共に、磁気記録媒体に対して垂直方向の記録磁界を与えることで磁化反転を生じさせ、情報を記録させる近接場光記録素子であって、前記光束が導入される底面と、該底面から所定距離離間した位置に平行に配され、光束が導入されたときに前記近接場光が発せられる端面と、底面及び端面の頂点をそれぞれ結んで形成された4つの側面とを有し、四角錐台状に形成された光透過性のコアと、前記4つの側面のうち、前記磁気記録媒体の回転方向に並んだ状態で互いに対向する2つの側面上にそれぞれ形成され、両者の間に前記記録磁界を発生させる主磁極及び補助磁極とを備え、前記補助磁極は、前記コアの端面側において、前記主磁極の一方の側面に近接するように該一方の側面に向けて突出した突出部を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
この発明に係る近接場光記録素子においては、四角錐台状に形成されたコアを利用することで近接場光を発生させることができると共に、回転する磁気記録媒体に対して情報の書き込みを行うことができる。
まずコアの底面及び端面は、共に平面視四角形状(例えば、長方形、平行四辺形や台形形状)に形成されている。この際端面は、底面よりも小さいサイズに形成されているので、4つの側面は端面に向かうにしたがって、向い合う側面との間隔が漸次狭まる斜面状態となっている。そして、4つの側面のうち、磁気記録媒体の回転方向に並んだ状態で互いに対向する2つの側面上には、主磁極及び補助磁極がそれぞれ形成されている。この際、主磁極及び補助磁極は、斜面状態となっている側面上に形成されているので、同様にコアの端面に向かうにしたがって、互いの距離が漸次狭まる関係になっている。
【0017】
またコアの端面は、光束が底面側から導入されたときに近接場光を発せられるように、微小なサイズ(光束の波長よりも小さい微小開口となる大きさ)に形成されている。そのため、主磁極と補助磁極との間隔は、磁気記録媒体の表面に対向する端面において近い状態になっている。しかも、このコアの端面側において、補助磁極の一部が主磁極の一方の側面(補助磁極に対向する面)に向けて突出した突出部となっている。従って、主磁極とこの突出部との間隔(磁気ギャップ)は、微小な間隔となっている。
【0018】
ここで記録を行う場合には、まず光透過性のコアの内部に底面側から光束を導入する。コアの内部に導入された光束は、底面側から端面側に向かって進み、端面から近接場光として外部に漏れ出す。この近接場光によって磁気記録媒体は、局所的に加熱されて一時的に保磁力が低下する。
また、光束の導入と同時に、主磁極及び補助磁極の両磁極間に記録磁界を発生させる。即ち、磁気記録媒体に対して垂直方向の記録磁界を発生させる。具体的には、主磁極から発生した磁束が、磁気記録媒体に対して垂直に流れると共に、磁気記録媒体を経由した後に補助磁極に戻ってくる。この際、上述したように主磁極と補助磁極との間の磁気ギャップが微小な隙間となっているため、記録磁界は磁気記録媒体に対して局所的に作用する。これにより、近接場光によって保磁力が低下した磁気記録媒体の局所的な位置に対して、ピンポイントで記録磁界を作用させることができる。なおこの記録磁界は、記録する情報に応じて向きが反転する。
【0019】
そして、磁気記録媒体は、記録磁界を受けると、記録磁界の方向に応じて磁化の方向が垂直方向に反転する。その結果、情報の記録を行うことができる。つまり、近接場光と両磁極で発生した記録磁界とを協働させた、近接場光アシスト磁気記録方式により情報の記録を行うことができる。また、垂直磁気記録方式により情報の記録を行うことができるので、熱揺らぎの現象を受け難く、書き込みの信頼性が高い安定した記録を行うことができる。
【0020】
特に、主磁極と補助磁極との間で近接場光を発生させることができるので、記録磁界が局所的に作用する範囲内に近接場光による加熱温度のピーク位置を入れることができる。しかも近接場光による加熱の温度勾配が磁気記録媒体の移動方向に対して遅れたとしても、加熱温度のピーク位置を記録磁界の範囲内に留めておくことができる。従って、磁気記録媒体の局所的な位置に対して確実に記録を行うことができ、信頼性の向上化を図ることができる。
また、コアの側面に主磁極及び補助磁極を形成するだけで、近接場光の発生と記録磁界の発生とを同時に達成することができるので、従来のように複雑な構成にすることなく、シンプルな構造にすることができる。よって、構成を簡略化することができ、製造の容易化及び低コスト化を図りながら小型化にすることができる。
【0021】
また、記録磁界を発生させる際に、磁気記録媒体の表面に対向する主磁極の先端面から磁束が流れるだけでなく、主磁極の側面からも磁束が漏れ出している。ところが、補助磁極の一部は、上述したようにコアの端面側において主磁極の側面に向かって突出した突出部となっているので、主磁極の側面から漏れ出した磁束が磁気記録媒体に流れる前に、この突出部に流入させることができる。これにより、側面からの洩れ磁束が減少するので、主磁極の先端面から集中的に磁気記録媒体に磁束を流すことができ、従来に比べ磁界勾配を急峻にすることができる。つまり、磁気記録媒体に対してより垂直に磁束を流すことができる。従って、磁気記録媒体の磁化反転をより容易に行わせることができ、さらなる高密度記録化を図ることができる。
【0022】
また、主磁極及び補助磁極は、コアの側面上にそれぞれ形成されているので、両者のトラック幅を同じ幅にすることができる。よって、主磁極から出た磁束が磁気記録媒体を経由して補助磁極に戻る際に、トラック幅方向に磁束が広がってしまうことがない。よって、シャープな磁化転移状態を形成することができ、トラックエッジノイズを極力減少させることができる。この点においても、さらなる高密度記録化を図ることができる。
【0023】
上述したように、本発明に係る近接場光記録素子によれば、小型化を図りながら低コストで容易に製造することができると共に、近接場光を効率良く発生させて書き込みの信頼性を向上することができる。また、主磁極の側面からの洩れ磁束を減少させると共に、磁束の広がりを抑えることができるので、さらなる高密度記録化を図ることができる。
【0024】
また、本発明に係る近接場光記録素子は、上記本発明の近接場光記録素子において、前記主磁極の他方の側面上に形成された絶縁層と、該絶縁層上に形成された磁気シールド層とを備えていることを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係る近接場光記録素子においては、主磁極の他方の側面(コア側の内面ではなく外部に露出している外面)上に、絶縁層を介して磁気シールド層が形成されている。これにより、記録磁界を発生させる際に、主磁極の他方の側面から漏れ出す磁束を磁気シールド層で遮断することができる。つまり、補助磁極の突出部により主磁極の一方の側面から漏れ出す磁束を吸収できることに加え、この磁気シールドによって主磁極の他方の側面から漏れ出す磁束を遮断することができる。
従って、主磁極の先端面からより集中的に磁気記録媒体に磁束を流すことができ、磁界勾配をさらに急峻にすることができる。その結果、磁気記録媒体に対してさらに垂直に磁束を流すことができ、さらに顕著な高密度記録化を図ることができる。
【0026】
また、本発明に係る近接場光記録素子は、上記本発明の近接場光記録素子において、前記絶縁層が、前記コアの側面全ての周囲を囲むように形成され、前記磁気シールド層が、前記コアの側面全ての周囲を囲んだ前記絶縁層の周囲をさらに囲むように形成されていることを特徴とするものである。
【0027】
この発明に係る近接場光記録素子においては、絶縁層及び磁気シールド層がそれぞれ主磁極の他方の面上だけでなく、コアの端面及び底面を除く、4つの側面の周囲を囲むように形成されている。特に、狙った面上にだけ絶縁層及び磁気シールド層を形成する必要がないので、絶縁層及び磁気シールド層を形成し易い。従って、製造の容易化を図ることができる。
【0028】
また、本発明に係る近接場光記録素子は、上記本発明のいずれかの近接場光記録素子において、前記主磁極と前記コアとの間には、前記近接場光の光強度を増加させる金属膜が形成されていることを特徴とするものである。
【0029】
この発明に係る近接場光記録素子においては、コアの内部に光束が導入されると、該光束は底面側から端面側に向かって進み、端面から近接場光となって外部に漏れ出す。また、これと同時にコアの内部に導入された光束は、金属膜にも入射する。金属膜に光束が入射すると、該金属膜には表面プラズモンが励起される。励起された表面プラズモンは、共鳴効果によって増強されながら金属膜とコアとの界面を端面に向かって伝播する。そして、コアの端面に達した時点で、光強度の強い近接場光となって外部に漏れ出す。特に、金属膜を伝播した近接場光の方が、直接底面から端面に向かって透過した後に生じた近接場光よりも光強度が強いので、磁気記録媒体の加熱により貢献する光となる。
【0030】
このように、近接場光の光強度を増加させて磁気記録媒体をより効率良く加熱することができるので、書き込みの信頼性をより向上することができる。特に、金属膜とコアとの界面に近接場光を発生させることができるので、各構成品の設計サイズ自体に直接影響を受けることがない。つまり、コアの端面のサイズをより微細化する等の作りこみを行わなくても、これら物理的な設計に影響されることなく、光強度の強い近接場光を発生させることができる。
【0031】
また、本発明に係る近接場光記録素子は、上記本発明のいずれかの近接場光記録素子において、前記4つの側面のうち、前記主磁極及び前記補助磁極がそれぞれ形成された側面に挟まれる少なくとも1つの側面上には、前記近接場光の光強度を増加させる金属膜が形成されていることを特徴とするものである。
【0032】
この発明に係る近接場光記録素子においては、主磁極及び補助磁極が形成された側面に隣接する2つの側面のうち、少なくともいずれか一方の側面上に光強度を増加させる金属膜が形成されている。よって、この金属膜は、磁気記録媒体の移動方向に平行状態となっている。そしてコアの内部に光束が導入されると、該光束は底面側から端面側に向かって進み、端面から近接場光となって外部に漏れ出す。また、これと同時にコアの内部に導入された光束は、金属膜にも入射する。金属膜に光束が入射すると、該金属膜には表面プラズモンが励起される。励起された表面プラズモンは、共鳴効果によって増強されながら金属膜とコアとの界面を端面に向かって伝播する。そして、コアの端面に達した時点で、光強度の強い近接場光となって外部に漏れ出す。特に、金属膜を伝播した近接場光の方が、直接底面から端面に向かって透過した後に生じた近接場光よりも光強度が強いので、磁気記録媒体の加熱により貢献する光となる。
【0033】
このように、近接場光の光強度を増加させて磁気記録媒体をより効率良く加熱することができるので、書き込みの信頼性をより向上することができる。特に、金属膜とコアとの界面に近接場光を発生させることができるので、各構成品の設計サイズ自体に直接影響を受けることがない。つまり、コアの端面のサイズをより微細化する等の作りこみを行わなくても、これら物理的な設計に影響されることなく、光強度の強い近接場光を発生させることができる。
【0034】
また、上述したように金属膜は磁気記録媒体の移動方向に平行となっているので、加熱に貢献する光強度の強い近接場光を磁気記録媒体の移動方向に沿ってライン状に発生させることができる。つまり、磁気記録媒体のトラック方向に沿ってライン状に発生させることができる。従って、隣接するトラックに記録された情報に影響を与えることなく、所望するトラックに対して情報を正確に記録することができる。
【0035】
また、本発明に係る近接場光記録素子は、上記本発明の近接場光記録素子において、前記金属膜が、前記主磁極及び前記補助磁極上にも形成されていることを特徴とするものである。
【0036】
この発明に係る近接場光記録素子においては、金属膜がコアの側面だけでなく主磁極及び補助磁極上にも形成されているので、表面プラズモンの伝播によって主磁極及び補助磁極のより近傍に近接場光を発生させることができる。よって、近接場光と記録磁界とを、より効率良く協働させることができ、書き込みの信頼性をさらに高めることができる。
【0037】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、上記本発明のいずれかの近接場光記録素子と、前記磁気記録媒体の表面から所定距離だけ浮上した状態で配置され、磁気記録媒体の表面に対向する対向面を有するスライダと、前記底面側から前記コア内に前記光束を導入させる光束導入手段と、磁性材料から形成され、前記主磁極と前記補助磁極とを接続する磁気回路と、前記情報に応じて変調された電流が供給され、前記磁気回路を中心として該磁気回路の周囲を巻回するコイルとを備え、前記コアが、前記スライダの対向面に前記底面が面接触した状態で固定されていることを特徴とするものである。
【0038】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、スライダが対向面を磁気記録媒体の表面に対向させた状態で、該磁気記録媒体の表面から所定距離だけ浮上した状態で配置されている。そして、近接場光記録素子のコアが、スライダの対向面に底面を面接触させた状態で固定されている。これにより、コアは、端面を磁気記録媒体の表面に対向させながら、磁気記録媒体上を浮遊した状態となっている。
記録を行う場合には、まず光束導入手段によりコアの内部に底面側から光束を導入する。この際、光束導入手段は、従来の光の入れ方とは異なり、スライダの上面側からコアの端面に向けて略一直線に光束を容易且つ確実に導入できるので、効率良く近接場光を発生させることができる。
また、光束の導入と同時に、記録する情報に応じて変調した電流をコイルに供給する。すると電磁石の原理により、電流磁界が磁気回路内に磁束を発生させるので、主磁極と補助磁極との間に記録磁界を確実に発生させることができる。
【0039】
特に、小型化を図りながら低コストで容易に製造できる近接場光記録素子を備えているので、近接場光ヘッド自体の小型化、低コスト化及び製造の容易化をも図ることができる。また、近接場光を効率良く発生させて、書き込みの信頼性が向上した近接場光記録素子でもあるので、同様に近接場光ヘッド自体の書き込みの信頼性が高まって高品質化を図ることができる。更には、洩れ磁束が減少して高密度記録化が図られた近接場光素子でもあるので、近接場光ヘッド自体を高密度記録に対応した高性能なものにすることができる。
【0040】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、上記本発明の近接場光ヘッドにおいて、前記磁気回路が、前記スライダの対向面に垂直な方向に沿う垂直回路部を一部に有し、前記コイルが、前記対向面に沿って広がるように、前記垂直回路部の周囲を螺旋状に巻回した状態で形成されていることを特徴とするものである。
【0041】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、主磁極と補助磁極とを接続する磁気回路の一部が、スライダの対向面に垂直な方向に沿う垂直回路部となっている。そして、コイルは、スライダの対向面に沿って広がるように、垂直回路部を中心として該垂直回路部の周囲を螺旋状に巻回した状態で形成されている。つまり、コイルは、スライダの対向面に対して平行した状態となっている。
よって、コイルの巻線を増やしたとしても。スライダの厚みに影響しないので、薄型化を図りながら記録磁界の強度を高めることができる。また、垂直面ではなく水平面にコイルを作製できるので、特別な方法を用いずとも従来の方法で容易に作製を行える。そのため、コイルを細くしたり巻線を増やしたりする等、設計の自由度を向上することができる。また、コイルを自由に設計できるため、磁気回路についても幅を太くする等自由に設計を行い易い。このように、磁気回路及びコイルを状況に応じて自由に設計でき、信頼性のある電磁石を製造することができる。
【0042】
また、本発明に係る情報記録再生装置は、上記本発明の近接場光ヘッドと、前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に移動可能とされ、該磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態で前記近接場光ヘッドを先端側で支持するビームと、前記光束導入手段に対して前記光束を入射させる光源と、前記ビームの基端側を支持すると共に、該ビームを前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に向けて移動させるアクチュエータと、前記磁気記録媒体を前記一定方向に回転させる回転駆動部と、前記コイルに前記電流を供給すると共に、前記光源の作動を制御する制御部とを備えていることを特徴とするものである。
【0043】
この発明に係る情報記録再生装置においては、回転駆動部により磁気記録媒体を一定方向に回転させた後、アクチュエータによりビームを移動させて近接場光ヘッドをスキャンさせる。そして、近接場光ヘッドを磁気記録媒体上の所望する位置に配置させる。この際、近接場光ヘッドは、磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態、即ち、2軸を中心として捻れることができるようにビームに支持されている。よって、磁気記録媒体にうねりが生じたとしても、うねりに起因する風圧変化を捩じりによって吸収でき、近接場光ヘッドを安定して浮上させることができる。
【0044】
その後、制御部は光源を作動させると同時に、情報に応じて変調した電流をコイルに供給する。これにより、近接場光ヘッドは、近接場光と記録磁界とを協働させて、磁気記録媒体に情報を記録することができる。
特に、上述した近接場光記録素子を有する近接場光ヘッドを備えているので、小型化、低コスト化を図ることができ、また、書き込みの信頼性が高まって高品質化を図ることができる。また、高密度記録化に対応することができる高品質なものにすることができる。
【発明の効果】
【0045】
この発明に係る近接場光記録素子によれば、小型化を図りながら低コストで容易に製造することができると共に、近接場光を効率良く発生させて書き込みの信頼性を向上することができる。また、主磁極の側面からの洩れ磁束を減少させると共に、磁束の広がりを抑えることで、さらなる高密度記録化を図ることができる。
【0046】
また、本発明に係る近接場光ヘッド及び情報記録再生装置によれば、上述した近接場光記録素子を備えているので、小型化、低コスト化及び製造の容易化を図ることができると共に、書き込みの信頼性が高まって高品質化を図ることができる。また、高密度記録に対応した高性能なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明に係る近接場光記録素子、近接場光ヘッド及び情報記録再生装置の一実施形態を、図1から図28を参照して説明する。なお、本実施形態の情報記録再生装置1は、垂直記録層d2を有するディスク(磁気記録媒体)Dに対して、垂直記録方式で書き込みを行う装置である。
【0048】
本実施形態の情報記録再生装置1は、図1に示すように、後述する近接場光記録素子20を有する光近接場光ヘッド2と、ディスク面(磁気記録媒体の表面)D1に平行なXY方向に移動可能とされ、ディスク面D1に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回りに回動自在な状態で近接場光ヘッド2を先端側で支持するビーム3と、光導波路4の基端側から該光導波路4に対して光束Lを入射させる光信号コントローラ(光源)5と、ビーム3の基端側を支持すると共に、該ビーム3をディスク面D1に平行なXY方向に向けてスキャン移動させるアクチュエータ6と、ディスクDを一定方向に回転させるスピンドルモータ(回転駆動部)7と、情報に応じて変調した電流を後述するコイル24に対して供給すると共に、光信号コントローラ5の作動を制御する制御部8と、これら各構成品を内部に収容するハウジング9とを備えている。
【0049】
ハウジング9は、アルミニウム等の金属材料により、上面視四角形状に形成されていると共に、内側に各構成品を収容する凹部9aが形成されている。また、このハウジング9には、凹部9aの開口を塞ぐように図示しない蓋が着脱可能に固定されるようになっている。凹部9aの略中心には、上記スピンドルモータ7が取り付けられており、該スピンドルモータ7に中心孔を嵌め込むことでディスクDが着脱自在に固定される。凹部9aの隅角部には、上記アクチュエータ6が取り付けられている。このアクチュエータ6には、軸受10を介してキャリッジ11が取り付けられており、該キャリッジ11の先端にビーム3が取り付けられている。そして、キャリッジ11及びビーム3は、アクチュエータ6の駆動によって共に上記XY方向に移動可能とされている。
【0050】
なお、キャリッジ11及びビーム3は、ディスクDの回転停止時にアクチュエータ6の駆動によって、ディスクD上から退避するようになっている。また、近接場光ヘッド2とビーム3とで、サスペンション12を構成している。また、光信号コントローラ5は、アクチュエータ6に隣接するように凹部9a内に取り付けられている。そして、このアクチュエータ6に隣接して、上記制御部8が取り付けられている。
【0051】
上記近接場光ヘッド2は、図2及び図3に示すように、近接場光記録素子20と、ディスク面D1から所定距離Hだけ浮上した状態で配置され、ディスク面D1に対向する対向面を有するスライダ21と、後述するコア30の底面30a側からコア30内に光束Lを導入させる光束導入手段22と、磁性材料から形成され、後述する主磁極31と補助磁極32とを接続させる磁気回路23と、磁気回路23を中心として該磁気回路23の周囲を巻回するコイル24とを備えている。
【0052】
上記近接場光記録素子20は、導入された光束Lから近接場光Rを発生させてディスクDを加熱すると共に、ディスクDに対して垂直方向の記録磁界を与えることで磁化反転を生じさせ、情報を記録させるものである。
即ち、近接場光記録素子20は、図4から図6に示すように、近接場光Rを発生させるコア30と、コア30に形成された主磁極31及び補助磁極32とを備えている。なお、本実施形態では、コア30の端面30bの一部に、補助磁極32の突出部32aが埋まるように形成されている場合を例に挙げて説明する。
【0053】
コア30は、石英ガラス等の光透過性材料に形成されており、底面30aと端面30bと4つの側面30cとを有する四角錐台状に形成されている。具体的には、少なくとも互いに平行な2辺を一組有するように平面視正方形状に形成され、ディスク面D1に平行な状態で配されて光束Lが導入される底面30aと、該底面30aより小さな面積で同一形状(平面視正方形状)に形成され、底面30aから所定距離離間した位置に配された端面30bと、底面30a及び端面30bの頂点をそれぞれ結んで形成された4つの側面30cとを有するように加工されている。
但し、本実施形態では、上述したように、端面30bの一部に突出部32aが埋まるように形成されているので、端面30bに段部30dが形成されている。
【0054】
なお、コア30の底面30a及び端面30bは、正方形状に限定されるものではなく、平面視四角形状に形成されていれば構わない。例えば、平面視、長方形状、平行四辺形状や台形状であっても構わない。また、底面30a及び端面30bは、共に平面視四角形状に形成されていればよく、同じ形状でなくても構わない。
【0055】
コア30の端面30bは、光束Lが内部に導入されたときに近接場光Rを発生させるサイズに形成されている。即ち、コア30の端面30bのサイズは、光束Lの波長よりも遥かに微細なサイズ(例えば、一辺が数十nm程度のサイズ)となるように設計されており、通常の伝播光を透過させることがないが、近接場光Rを近傍に漏れ出させることを可能にしている。よって、4つの側面30cは、端面30bに向かうにしたがって向い合う側面30cとの間隔が漸次狭まる斜面状態となっている。
【0056】
また、コア30の4つの側面30cのうち、ディスクDの回転方向に並んだ状態で互いに対向する2つの側面30c上には、両者の間に上記記録磁界を発生させる主磁極31及び補助磁極32が形成されている。これら両磁極31、32は、磁束密度が高い高飽和磁束密度(Bs)材料(例えば、CoNiFe合金、CoFe合金等)を蒸着等の薄膜成膜技術によって形成されたものである。
【0057】
また、補助磁極32の一部は、コア30の端面30b側において、主磁極31の一方の側面(補助磁極32に対向する面)に近接するように該一方の側面に向けて突出した突出部32aとなっている。しかも、この突出部32aは、端面30bの一部に埋まるように形成されている。そのため、端面30bと突出部32aとの表面とは、面一になっている。この突出部32aによって、露出している端面30bの領域はさらに微小なサイズとなっている。また、主磁極31と突出部32aとの間隔(磁気ギャップG)は、微小な間隔(例えば、数nmから数十nm)となっている。
なお、補助磁極32の膜厚は、主磁極31の膜厚よりも厚くなるように膜厚が調整されている。また、突出部32aの厚みは、さらに薄く(例えば、数十nmから数百nm)なるように調整されている。
【0058】
このように構成されたコア30は、図2及び図3に示すように、底面30aをスライダ21の対向面21aに面接触させた状態で固定されている。この際、コア30は、主磁極31及び補助磁極32がディスクDの移動方向に沿って並ぶと共に、主磁極31が補助磁極32よりもディスクDの移動方向側(進行方向側)に位置するように向きが調整された後、固定されている。
【0059】
上記スライダ21は、コア30と同様に石英ガラス等の光透過性材料によって直方体状に形成されている。このスライダ21は、対向面21aをディスクD側にした状態で、ジンバル部35を介してビーム3の先端にぶら下がるように支持されている。このジンバル部35は、ディスク面D1に垂直なZ方向、X軸回り及びY軸回りにのみ変位するように動きが規制された部品である。これによりスライダ21は、上述したようにディスク面D1に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回りに回動自在とされている。
【0060】
スライダ21の対向面21aには、回転するディスクDによって生じた空気流の粘性から、浮上するための圧力を発生させる凸状部21bが形成されている。本実施形態では、レール状に並ぶように、長手方向に沿って延びた凸状部21bを2つ形成している場合を例にしている。但し、この場合に限定されるものではなく、スライダ21をディスク面D1から離そうとする正圧とスライダ21をディスク面D1に引き付けようとする負圧とを調整して、スライダ21を最適な状態で浮上させるように設計されていれば、どのような凹凸形状でも構わない。なお、この凸状部21bの表面はABS(Air Bearing Surface)と呼ばれる面とされている。
【0061】
スライダ21は、この2つの凸状部21bによってディスク面D1から浮上する力を受けていると共に、ビーム3によってディスク面D1側に押さえ付けられる力を受けている。スライダ21は、この両者の力のバランスによって、上述したようにディスク面D1から所定距離H離間した状態で浮上するようになっている。
【0062】
また、上述したようにスライダ21の対向面21aには、底面30aを面接触させた状態でコア30が固定されているので、コア30の端面30bも同様にスライダ21の対向面21a及びディスク面D1に対して平行状態となっている。この際、端面30bの高さが凸状部21bの高さと同じになるように、コア30の高さが設定されている。
なお、コア30とスライダ21とをそれぞれ別々に作製した後、互いを固定しても構わないし、石英ガラス等から一体的に作製しても構わない。特に、一体的に作製することで、製造工程の簡略化、製造時間の短縮化等を図ることができるので、より好ましい。
【0063】
また、スライダ21の上面には、コア30の真上に当たる位置にレンズ36が形成されている。このレンズ36は、例えば、グレースケールマスクを用いたエッチングによって形成される非球面のマイクロレンズである。更に、スライダ21の上面には、光ファイバー等の光導波路4が取り付けられている。この光導波路4は、先端が略45度にカットされたミラー面4aとなっており、該ミラー面4aがレンズ36の真上に位置するように取り付け位置が調整されている。そして、光導波路4は、ビーム3及びキャリッジ11等を介して光信号コントローラ5に引き出されて接続されている。
これにより光導波路4は、光信号コントローラ5から入射された光束Lを先端側まで導き、ミラー面4aで反射させて向きを変えた後、レンズ36に出射することができるようになっている。また、出射された光束Lは、レンズ36によって集束した後、スライダ21を透過してコア30の底面30aに導入されるようになっている。即ち、光導波路4及びレンズ36は、上述した光束導入手段22を構成している。
【0064】
上記磁気回路23は、図3に示すように、磁性材料によりスライダ21内にパターニングされて形成されている。この磁気回路23は、両端がそれぞれ主磁極31及び補助磁極32に接続されていると共に、図7に示すように、回路の略中間付近にあたる一部分が、スライダ21の対向面21aに垂直な方向に沿って折り曲げられた垂直回路部23aとなっている。
【0065】
そして、コイル24は、磁気回路23のうち上述した垂直回路部23aの周囲を螺旋状に巻回した状態で、スライダ21の対向面21aに沿うように形成されている。この際コイル24は、ショートしないように、隣り合う線材間、磁気回路23との間が絶縁状態とされている。また、このコイル24は、ビーム3やキャリッジ11を介して制御部8に電気的に接続されており、該制御部8から情報に応じて変調された電流が供給されるようになっている。即ち、磁気回路23及びコイル24は、全体として電磁石を構成している。
【0066】
また、スライダ21の先端面には、図2及び図3に示すように、ディスクDの垂直記録層d2から洩れ出ている磁界の大きさに応じて電気抵抗が変換する磁気抵抗効果膜37が形成されている。この磁気抵抗効果膜37には、図示しないリード膜等を介して制御部8からバイアス電流が供給されている。これにより制御部8は、ディスクDから洩れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することでき、この電圧の変化から信号の再生を行っている。即ち、磁気抵抗効果膜37は、再生素子として機能している。
【0067】
なお、本実施形態のディスクDは、少なくとも、ディスク面D1に垂直な方向に磁化容易軸を有する垂直記録層d2と、高透磁率材料からなる軟磁性層d3との2層で構成される垂直2層膜ディスクDを使用する。このようなディスクDとしては、例えば、図2に示すように、基板d1上に、軟磁性層d3と、中間層d4と、垂直記録層d2と、保護層d5と、潤滑層d6とを順に成膜したものを使用する。
基板d1としては、例えば、アルミ基板やガラス基板等である。軟磁性層d3は、高透磁率層である。中間層d4は、垂直記録層d2の結晶制御層である。垂直記録層d2は、垂直異方性磁性層となっており、例えばCoCrPt系合金が使用される。保護層d5は、垂直記録層d2を保護するためのもので、例えばDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)膜が使用される。潤滑層d6は、例えば、フッ素系の液体潤滑材が使用される。
【0068】
ここで、本実施形態の近接場光記録素子20の製造方法について、図8を参照しながら以下に説明する。なお、ここではスライダ21とコア30とを1枚の基板Tから一体的に製造する場合を例に挙げて説明する。但し、コア30の製造方法を中心に説明する。よって、下記に説明する工程の途中で、凸状部21bやレンズ36等を適宜形成すれば良い。なお、図8では、それぞれ異なった視点の断面図を左側と右側とにそれぞれ図示する。左側の断面図は、図4に示す平面Aに沿った断面図を示している。また、左側の断面図は、図4に示す平面Bに沿った断面図を示している。
【0069】
初めに、石英ガラス等の基板Tを用意した後、図8(a)に示すように、基板T上に端面30bの段部30dを形成するためのエッチングマスクM1を所定領域だけパターニングする。このエッチングマスクM1は、フォトリソグラフィ技術で加工されたフォトレジスト薄膜である。
次いで、エッチングマスクM1をマスクとして、基板Tの表面をエッチング加工する。なお、エッチング加工としては、ウェットエッチングでも構わないし、ドライエッチングでも構わない。そして、エッチングマスクM1を除去することで、図8(b)に示すように、基板T上に段部30dを形成することができる。なお、段部30dの深さが、数十nmから数百nmの範囲内に収まるようにエッチング加工を行う。
【0070】
次いで、図8(c)に示すように、基板T上に端面30bを形成するためのエッチングマスクM2を、段部30dの一部を含んだ所定領域だけパターニングする。この際、エッチングマスクM2は、上面視すると略正方形である。
次いで、エッチングマスクM2をマスクとして、基板Tのエッチング加工を行う。この際、ドライエッチングでもウェットエッチングでも構わないが等方性エッチングを行う。これにより、エッチングマスクM2の下に隠れている基板Tの表面の一部にもエッチャントが入り込み、四角錐台状のコア30を形成することができる。なお、基板Tとして石英ガラスを用いた場合には、フッ化水素酸水溶液による等方性のウェットエッチングが好ましい。
【0071】
続いて、エッチングマスクM2を除去した後、図8(d)に示すように、主磁極31及び補助磁極32を形成するための金属膜M3を基板Tの表面にスパッタ等により成膜する。これにより、コア30の4つの側面30c上及び端面30b上の全てに金属膜M3が成膜された状態となる。
【0072】
次いで、成膜した金属膜M3上の一部にスプレーコート法等の指向性を有する成膜方法を利用して、図8(e)に示すように、エッチングマスクM4を形成する。具体的には、後に主磁極31及び補助磁極32が形成される2つの側面30c上と、これら2つの側面30cの間に挟まれる2つの側面30cのうちいずれか一方の側面30c上と、端面30b上と、に成膜されている金属膜M3上にそれぞれエッチングマスクM4を形成する。
次いで、このエッチングマスクM4をマスクとして、金属膜M3をエッチング加工する。そして、エッチングマスクM3を除去することで、図8(f)に示す状態となる。
【0073】
次いで、スプレーコート法等の指向性を有する成膜方法を利用して、再び残りの金属膜M3の一部に図示しないエッチングマスクを形成する。具体的には、後に主磁極31及び補助磁極32が形成される2つの側面30c及び端面30b上に成膜されている金属膜M3上にエッチングマスクを形成する。そして、このエッチングマスクをマスクとして、再度金属膜M3をエッチング加工する。そして、エッチングマスクを除去することで、図8(g)に示す状態となる。
【0074】
そして、最後にコア30の端面30b上方から、端面30bと略平行に研磨加工を行う。これにより、図8(h)に示すように、主磁極31と突出部32aを有する補助磁極32とが形成されたコア30を、スライダ21に固定した状態で製造することができる。しかも、段部30dを形成しているので、突出部32aを端面30bに埋め込んだ状態で形成することができると共に、端面30bと突出部32aの表面とを面一にすることができる。
【0075】
上述したように、通常使用されるフォトリソグラフィ技術及びエッチング加工等の半導体加工技術を利用して、容易にコア30、主磁極31、補助磁極32及びスライダ21を一体的に製造することができる。従って、効率良く製造を行えると共に、製造コストを抑えることができる。
また、エッチング加工により段部30dを形成し、その上から金属膜M3を成膜するだけで突出部32aを形成できるので、該突出部32aの厚みを容易に薄くすることができる。なお、突出部32aを薄くすることの利点については、後に説明する。
【0076】
次に、このように構成された情報記録再生装置1により、ディスクDに各種の情報を記録再生する場合について以下に説明する。
まず、スピンドルモータ7を駆動させてディスクDを一定方向に回転させる。次いで、アクチュエータ6を作動させて、キャリッジ11を介してビーム3をXY方向にスキャンさせる。これにより、図1に示すように、ディスクD上の所望する位置に近接場光ヘッド2を位置させることができる。この際、近接場光ヘッド2は、スライダ21の対向面21aに形成された2つの凸状部21bによって浮上する力を受けると共に、ビーム3等によってディスクD側に所定の力で押さえ付けられる。近接場光ヘッド2は、この両者の力のバランスによって、図2に示すようにディスクD上から所定距離H離間した位置に浮上する。
【0077】
また、近接場光ヘッド2は、ディスクDのうねりに起因して発生する風圧を受けたとしても、ジンバル部35によってZ方向、XY軸回りに変位することができるようになっているので、うねりに起因する風圧を吸収することができる。そのため、近接場光ヘッド2を安定した状態で浮上させることができる。
【0078】
ここで、情報の記録を行う場合、制御部8は光信号コントローラ5を作動させると共に、情報に応じて変調した電流をコイル24に供給する。
光信号コントローラ5は、制御部8からの指示を受けて光束Lを光導波路4の基端側から入射させる。入射した光束Lは、光導波路4内を先端側に向かって進み、図2に示すようにミラー面4aで略90度向きを変えて光導波路4内から出射する。出射した光束Lは、レンズ36によって集束された状態でスライダ21内部を透過すると共に、レンズ36の略真下に設けられた近接場光記録素子20のコア30の内部に底面30a側から入射する。つまり、光束Lは、光束導入手段22によってスライダ21の上面側から略一直線状にコア30に向かって導入される。
【0079】
コア30の内部に導入された光束は、底面30a側から端面30b側に向かって進み、図9に示すように、ディスク面D1に対向する端面30bから近接場光Rとして外部に漏れ出す。この近接場光Rによって、ディスクDは局所的に加熱されて一時的に保磁力が低下する。
なお、両磁極31、32を光非透過性の材料から形成することが好ましい。こうすることで、両磁極31、32が形成された側面30cから光束がコア30の外部に洩れてしまうことを防止することができる。
【0080】
一方、制御部8によってコイル24に電流が供給されると、電磁石の原理により電流磁界が磁気回路23内に磁束を発生させるので、両磁極31、32間にディスクDに対して垂直方向の記録磁界が生じる。すると、主磁極31側から発生した磁束が、図9に示すように、ディスクDの垂直記録層d2を真直ぐ通り抜けて軟磁性層d3に達する。これによって、垂直記録層d2の磁化をディスク面D1に対して垂直に向けた状態で記録を行うことができる。また、軟磁性層d3に達した磁束は、該軟磁性層d3を経由して補助磁極32に戻る。この際、補助磁極32に戻るときには磁化の方向に影響を与えることはない。これは、ディスク面D1に対向する補助磁極32の面積が、主磁極31よりも大きいので磁束密度が大きく磁化を反転させるほどの力が生じないためである。つまり、主磁極31側でのみ記録を行うことができる。
【0081】
その結果、近接場光Rと両磁極31、32で発生した記録磁界とを協働させた近接場光アシスト磁気記録方式により情報の記録を行うことができる。しかも垂直記録方式で記録を行うので、熱揺らぎ現象等に影響を受け難く、安定した記録を行うことができる。よって、書き込みの信頼性を高めることができる。
【0082】
次に、ディスクDに記録された情報を再生する場合には、スライダ21の先端面に形成されている磁気抵抗効果膜37が、ディスクDの垂直記録層d2から洩れ出ている磁界を受けて、その大きさに応じて電気抵抗が変化する。よって、磁気抵抗効果膜37の電圧が変化する。これにより制御部8は、ディスクDから洩れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することができる。そして制御部8は、この電圧の変化から信号の再生を行うことで、情報の再生を行うことができる。
【0083】
特に、本実施形態の情報記録再生装置1によれば、従来の光の入れ方とは異なり、光束Lをスライダ21の上面側からコア30の端面30bに向けて略一直線に容易且つ確実に導入できるので、効率良く近接場光Rを発生させることができる。
また、スライダ21の対向面21aにコア30を固定すると共に、コア30の側面30cに両磁極31、32を形成するだけで、近接場光Rの発生と記録磁界の発生とを同時に達成することができるので、従来のように複雑な構成にすることなく、シンプルな構造にすることができる。よって、構成を簡略化することができ、小型化を図ることができる。
【0084】
また、主磁極31と補助磁極32との間の磁気キャップGが微小な隙間となっているため、記録磁界はディスクDに対して局所的に作用する。これにより、近接場光Rによって保磁力が低下した局所的な位置に対して、ピンポイントで記録磁界を作用させることができる。
特に主磁極31と補助磁極32との間で近接場光Rを発生させることができるので、記録磁界が局所的に作用する範囲内に、近接場光Rによる加熱温度のピーク位置を入れることができる。しかも近接場光Rによる加熱の温度勾配がディスクDの移動方向に対して遅れたとしても、図10(点線は近接場光Rの発生領域を示し、実線は近接場光Rによる加熱温度分布を示し、2点鎖線は両磁極31、32から発する磁界強度分布を図示している)に示すように、加熱温度のピーク位置を主磁極31に近づけることができる。従って、書き込み可能領域Aが、第主磁極31の略真下となり、ディスクDの局所的な位置に対して確実に記録を行うことができる。
【0085】
また、コア30の側面30cに主磁極31及び補助磁極32を形成するだけで、近接場光Rの発生と記録磁界の発生とを同時に達成できるので、従来のように複雑な構成にすることなく、シンプルな構成にすることができる。よって、構成を簡略化して小型化を図ることができる。また、上述した製造方法でも述べたように、容易且つ低コストで製造を行うことができる。
【0086】
また、記録磁界を発生させる際に、ディスクDの表面に対向する主磁極31の先端面から磁束が流れるだけでなく、主磁極31の側面30cからも磁束が漏れ出している。ところが、図9に示すように、補助磁極32の一部が突出部32aとなっているので、主磁極31の側面30cから漏れ出した磁束がディスクDに流れる前に、この突出部32aに流入させることができる。これにより、主磁極31の側面30cからの洩れ磁束が減少するので、主磁極31の先端面から集中的にディスクDに磁束を流すことができ、従来に比べ磁界勾配を急峻にすることができる。つまり、ディスクDに対してより垂直に磁束を流すことができる。従って、ディスクDの磁化反転をより容易に行わせることができ、さらなる高密度記録化を図ることができる。
【0087】
また、突出部32aの厚みを数μmから数十μm程度に薄くすることが好ましい。突出部32aの厚みを薄くすることで、主磁極31から突出部32aに向けて過度に磁束が流れ込むことを防止することができる。仮に、突出部32aの厚みを厚くした場合には、主磁極31の側面30cから洩れる磁束に加え、先端面からディスクDに流れる磁束(情報の記録に貢献する必要な磁束)まで流れ込む可能性がある。従って、突出部32aの厚みをできるだけ薄くすることが好ましい。特に、上述した製造方法で述べたように、容易に厚みの薄い突出部32aを製造することができるので、情報の書き込みに必要な磁束に影響を与えずに、側面30cから洩れ出る磁束のみを吸収することができる。
【0088】
また、主磁極31及び補助磁極32は、コア30の側面30c上にそれぞれ形成されているので、図10に示すように、両者のトラック幅(W1、W2)を同じ幅にすることができる。よって、主磁極31から出た磁束がディスクDを経由して補助磁極32に戻る際に、トラック幅方向に磁束が広がってしまうことがない。よって、シャープな磁化転移状態を形成することができ、トラックエッジノイズを極力減少させることができる。この点においても、さらなる高密度記録化を図ることができる。
【0089】
また、コイル24は、図7に示すように、磁気回路23の垂直回路部23aの周囲を螺旋状に巻回した状態で形成され、スライダ21の対向面21aに対して平行している。よって、コイル24の巻線を増やしたとしても、スライダ21の厚みに影響しないので、薄型化を図りながら記録磁界の強度を高めることができる。また、垂直面ではなく水平面にコイル24を作製できるので、特別な方法を用いずとも従来の方法で容易に作製を行える。そのため、コイル24を細くしたり巻線を増やしたりする等、設計の自由度を向上することができる。また、コイル24を自由に設計できるため、磁気回路23についても幅を太くする等自由に設計を行い易い。このように、磁気回路23及びコイル24を状況に応じて自由に設計でき、信頼性のある電磁石を製造することができる。
【0090】
上述したように本実施形態の近接場光記録素子20によれば、小型化を図りながら低コストで容易に製造することができると共に、近接場光Rを効率良く発生させて書き込みの信頼性を向上することができる。また、主磁極31の側面30cからの洩れ磁束を減少させると共に、磁束の広がりを抑えることができるので、さらなる高密度記録化を図ることができる。
本実施形態の近接場光ヘッド2及び情報記録再生装置1によれば、上述した近接場光記録素子20を備えているので、小型化、低コスト化及び製造の容易化を図ることができると共に、書き込みの信頼性が高まって高品質化を図ることができる。また、高密度記録に対応した高性能なものにすることができる。
【0091】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0092】
例えば、上記実施形態では、コア30の底面30a及び端面30bの形状を上面視正方形状としたが、この場合に限られるものではない。例えば、図11に示すように、上面視平行四辺形状や、図12に示すように、上面視台形状に形成しても構わない。更には、図13に示すように、4辺のいずれもが平行関係とならない上面視四角形状に形成しても構わない。いずれにしても、コア30が四角錐台状に形成されていれば構わない。
【0093】
また、上記実施形態では、コア30の端面30bの一部に埋まるように突出部32aを形成したが、この場合に限られるものではない。例えば、図14及び図15に示すように、コア30の端面30b上に重なるように突出部32aを形成しても構わない。また、この場合には、主磁極31をコア30の端面30b側に若干突出するように形成すれば良い。こうすることで、コア30の端面30b側において、主磁極31の側面30cに突出部32aを近接させることができる。この場合であっても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。特に、この場合には、端面30bに段部30dを形成する必要がないので、より製造が容易になる。
【0094】
また、上記実施形態において、図16及び図17に示すように、主磁極31の他方の側面(コア30側の内面ではなく外部に露出している外面)上に絶縁層40を形成すると共に、該絶縁層40上に磁気シールド層41(例えば、NiFe等からなる)を形成しても構わない。
こうすることで、記録磁界を発生させる際に、主磁極31の他方の側面から漏れ出す磁束を磁気シールド層41で遮断することができる。つまり、補助磁極32の突出部32aにより主磁極31の一方の側面から漏れ出す磁束を吸収できることに加え、この磁気シールド層41によって主磁極31の他方の側面から漏れ出す磁束を遮断することができる。従って、主磁極31の先端面からより集中的にディスクDに磁束を流すことができ、磁界勾配をさらに急峻にすることができる。その結果、ディスクDに対してさらに垂直に磁束を流すことができ、さらに顕著な高密度記録化を図ることができる。
【0095】
なお、絶縁層40及び磁気シールド層41を形成する際に、図18に示すように、コア30の側面30c全ての周囲を囲むように絶縁層40を形成すると共に、このコア30の絶縁層40の周囲をさらに囲むように磁気シールド層41を形成しても構わない。つまり、コア30の端面30b及び底面30aを除く、4つの側面30cの周囲を囲むように絶縁層40及び磁気シールド層41をそれぞれ形成する。
この場合であっても、上述した作用効果と同様の作用効果を奏することができる。それに加え、狙った面上にだけ絶縁層40及び磁気シールド層41を形成する必要がないので、絶縁層40及び磁気シールド層41を形成し易くなる。従って、製造の容易化を図ることができる。
【0096】
また、図19及び図20に示すように、主磁極31とコア30との間に、近接場光Rの光強度を増加させる金属膜45を形成しても構わない。この金属膜45は、例えば、Au膜であり、コア30の側面30c上に蒸着等によって成膜されている。
このように金属膜45を形成した場合には、コア30の内部に光束Lが導入されると、該光束Lは底面30a側から端面30b側に向かって進み、端面30bから近接場光Rとなって外部に漏れ出す。また、これと同時にコア30の内部に導入された光束Lは、金属膜45にも入射する。金属膜45に光束Lが入射すると、該金属膜45には表面プラズモンが励起される。励起された表面プラズモンは、共鳴効果によって増強されながら金属膜45とコア30との界面を端面30bに向かって伝播する。そして、コア30の端面30bに達した時点で、光強度の強い近接場光Rとなって外部に漏れ出す。特に、金属膜45を伝播した近接場光Rの方が、直接底面30aから端面30bに向かって透過した後に生じた近接場光Rよりも光強度が強いので、ディスクDの加熱により貢献する光となる。
【0097】
上述したように金属膜45を形成することで、近接場光Rの光強度を増加させてディスクDをより効率良く加熱することができるので、書き込みの信頼性をより向上することができる。特に、金属膜45とコア30との界面に近接場光Rを発生させることができるので、各構成品の設計サイズ自体に影響を受けることがない。つまり、コア30の端面30bのサイズをより微細化する等の作りこみを行わなくても、これら物理的な設計に影響されることなく、光強度の強い近接場光Rを発生させることができる。
なお、ここでは金属膜45と磁気シールド層41とを両方同時に形成した場合を例にしたが、金属膜45だけを形成しても構わない。但し、金属膜45と磁気シールド層41とを同時に形成することが好ましい。
【0098】
また、金属膜45を形成する際に、図19及び図20では主磁極31とコア30との間に形成したが、この場合に限られず、図21及び図22に示すように、主磁極31及び補助磁極32がそれぞれ形成された側面30cに挟まれる1つの側面30c上に金属膜45を形成しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
それに加え、この金属膜45はディスクDの移動方向に対して平行となっているので、加熱に貢献する光強度の強い近接場光RをディスクDの移動方向に沿ってライン状に発生させることができる。つまり、ディスクDのトラック方向に沿ってライン状に発生させることができる。具体的には、図23に示すように、コア30の端面30bの幅がW1(W2)であったとしても、金属膜45によって生じた光強度の強いライン状の近接場光RはW3程度の幅となる。従って、記録トラック幅をさらに小さくすることができ、隣接するトラックに記録された情報に影響を与えることなく、所望のトラックに対して情報を正確に記録することができる。
【0099】
また、図21及び図22では、金属膜45をコア30の側面30c上にのみ形成したが、この場合に限られず、図24に示すように、金属膜45を主磁極31及び補助磁極32上を覆うように形成しても構わない。こうすることで、表面プラズモンの伝播によって主磁極31及び補助磁極32のより近傍に近接場光Rを発生させることができる。よって、記録磁界と近接場光Rによる加熱温度のピーク位置とを、よりスポット的に重ね合わせ易くなる。そのため、近接場光Rと記録磁界とをより効率良く協働させることができ、書き込みの信頼性をさらに高めることができる。
【0100】
また、図25に示すように、主磁極31及び補助磁極32がそれぞれ形成された側面30cに挟まれる2つの側面30c上に金属膜45をそれぞれ形成しても構わない。更には、図26に示すように、コア30の周囲を囲むように金属膜45を形成しても構わない。これらの場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
また、金属膜45をコア30の2つの側面30c上に形成した際に、図27に示すように、コア30の周囲を囲むように絶縁層40及び磁気シールド層41を同時に形成しても構わない。この場合には、金属膜45による作用効果と、磁気シールド層41による作用効果とを同時に奏することができる。
【0101】
また、上記実施形態では、光信号コントローラ5をハウジング9内に取り付け、光束導入手段22を構成する光導波路4の基端側から光束Lを入射させることで、コア30に該光束Lを導いた構成を採用したが、この場合に限定されるものではない。
例えば、図28に示すように、光束導入手段22をレンズ36だけで構成し、該レンズ36とジンバル部35との間に光信号コントローラ5を設けても構わない。なお、この場合には、ビーム3に沿って配線等を這わせることで、光信号コントローラ5と制御部8とを電気的に接続すれば良い。この場合であっても、光信号コントローラ5から光束導入手段22に対して光束Lを確実に入射させることができる。特に、光束Lをレンズ36に直接入射できるので、より効率良く近接場光Rを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明に係る近接場光記録素子を有する近接場光ヘッドを備えた情報記録再生装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す近接場光ヘッドの拡大断面図である。
【図3】図2に示す近接場光ヘッドを、ディスク面側から見た図である。
【図4】図3に示す近接場光ヘッドの近接場光記録素子の斜視図である。
【図5】図4に示す近接場光記録素子の側面図である。
【図6】図4に示す近接場光記録素子の端面側の拡大図である。
【図7】図3に示す近接場光ヘッドのコイルと磁気回路との取付位置関係を示す断面図である。
【図8】図4に示す近接場光記録素子を製造する際の工程図であって、左側が図4に示す平面Aに沿った断面図であって、右側が図4に示す平面Bに沿った断面図である。
【図9】図2に示す近接場光ヘッドによりディスクに記録を行っている最中の状態を示す図であって、コアを中心とした拡大断面図である。
【図10】ディスクに記録を行っている際の近接場光と磁界との関係を示した図である。
【図11】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、底面及び端面が平行四辺形状に形成されたコアを端面側から見た拡大図である。
【図12】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、底面及び端面が台形状に形成されたコアを端面側から見た拡大図である。
【図13】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、4辺のいずれもが平行関係とならないように底面及び端面が四角形状に形成されたコアを端面側から見た拡大図である。
【図14】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、補助磁極の突出部がコアの端面を覆うように形成されている近接場光記録素子の斜視図である。
【図15】図14に示す近接場光記録素子の側面図である。
【図16】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、主磁極上に絶縁層及び磁気シールド層が形成されている近接場光記録素子の斜視図である。
【図17】図16に示す近接場光記録素子の側面図である。
【図18】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、コアの周囲を囲むように絶縁層及び磁気シールド層が形成されている近接場光記録素子の斜視図である。
【図19】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、主磁極上に絶縁層及び磁気シールド層が形成されていると共に、主磁極とコアとの間に金属膜が形成されている近接場光記録素子の斜視図である。
【図20】図19に示す近接場光記録素子の側面図である。
【図21】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、主磁極及び補助磁極が形成されている側面に挟まれた1つの側面上に、金属膜が形成されている近接場光記録素子の斜視図である。
【図22】図21に示す近接場光記録素子の側面図である。
【図23】図21に示す近接場光記録素子によりディスクに記録を行っている際の、近接場光と磁界との関係を示した図である。
【図24】図21に示す近接場光記録素子の変形例を示す図であって、金属膜が主磁極及び補助磁極を覆うように形成されている近接場光記録素子をコアの端面側から見た拡大図である。
【図25】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、主磁極及び補助磁極が形成されている側面に挟まれた2つの側面上に、金属膜が形成されている近接場光記録素子の斜視図である。
【図26】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、コアの周囲を囲むように金属膜が形成されている近接場光記録素子の斜視図である。
【図27】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、主磁極及び補助磁極が形成されている側面に挟まれた2つの側面上に金属膜が形成されていると共に、金属膜及びコアの周囲を囲むように絶縁層及び磁気シールド層が形成されている近接場光記録素子の斜視図である。
【図28】本発明に係る近接場光ヘッドの変形例を示す図であって、レンズとジンバル部との間に光信号コントローラが設けられた近接場光ヘッドの断面図である。
【符号の説明】
【0103】
D ディスク(磁気記録媒体)
D1 ディスク面(磁気記録媒体の表面)
L 光束
R 近接場光
1 情報記録再生装置
2 近接場光ヘッド
3 ビーム
5 光源(光信号コントローラ)
6 アクチュエータ
7 スピンドルモータ(回転駆動部)
8 制御部
20 近接場光記録素子
21 スライダ
22 光束導入手段
23 磁気回路
23a 垂直回路部
24 コイル
30 コア
30a コアの底面
30b コアの端面
30c コアの側面
31 主磁極
32 補助磁極
32a 突出部
40 絶縁層
41 磁気シールド層
45 金属膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入された光束から近接場光を発生させて一定方向に回転する磁気記録媒体を加熱すると共に、磁気記録媒体に対して垂直方向の記録磁界を与えることで磁化反転を生じさせ、情報を記録させる近接場光記録素子であって、
前記光束が導入される底面と、該底面から所定距離離間した位置に平行に配され、光束が導入されたときに前記近接場光が発せられる端面と、底面及び端面の頂点をそれぞれ結んで形成された4つの側面とを有し、四角錐台状に形成された光透過性のコアと、
前記4つの側面のうち、前記磁気記録媒体の回転方向に並んだ状態で互いに対向する2つの側面上にそれぞれ形成され、両者の間に前記記録磁界を発生させる主磁極及び補助磁極とを備え、
前記補助磁極は、前記コアの端面側において、前記主磁極の一方の側面に近接するように該一方の側面に向けて突出した突出部を備えていることを特徴とする近接場光記録素子。
【請求項2】
請求項1に記載の近接場光記録素子において、
前記主磁極の他方の側面上に形成された絶縁層と、
該絶縁層上に形成された磁気シールド層とを備えていることを特徴とする近接場光記録素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の近接場光記録素子において、
前記絶縁層は、前記コアの側面全ての周囲を囲むように形成され、
前記磁気シールド層は、前記コアの側面全ての周囲を囲んだ前記絶縁層の周囲をさらに囲むように形成されていることを特徴とする近接場光記録素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の近接場光記録素子において、
前記主磁極と前記コアとの間には、前記近接場光の光強度を増加させる金属膜が形成されていることを特徴とする近接場光記録素子。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の近接場光記録素子において、
前記4つの側面のうち、前記主磁極及び前記補助磁極がそれぞれ形成された側面に挟まれる少なくとも1つの側面上には、前記近接場光の光強度を増加させる金属膜が形成されていることを特徴とする近接場光記録素子。
【請求項6】
請求項5に記載の近接場光記録素子において、
前記金属膜は、前記主磁極及び前記補助磁極上にも形成されていることを特徴とする近接場光記録素子。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の近接場光記録素子と、
前記磁気記録媒体の表面から所定距離だけ浮上した状態で配置され、磁気記録媒体の表面に対向する対向面を有するスライダと、
前記底面側から前記コア内に前記光束を導入させる光束導入手段と、
磁性材料から形成され、前記主磁極と前記補助磁極とを接続する磁気回路と、
前記情報に応じて変調された電流が供給され、前記磁気回路を中心として該磁気回路の周囲を巻回するコイルとを備え、
前記コアは、前記スライダの対向面に前記底面が面接触した状態で固定されていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項8】
請求項7に記載の近接場光ヘッドにおいて、
前記磁気回路は、前記スライダの対向面に垂直な方向に沿う垂直回路部を一部に有し、
前記コイルは、前記対向面に沿って広がるように、前記垂直回路部の周囲を螺旋状に巻回した状態で形成されていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の近接場光ヘッドと、
前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に移動可能とされ、該磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態で前記近接場光ヘッドを先端側で支持するビームと、
前記光束導入手段に対して前記光束を入射させる光源と、
前記ビームの基端側を支持すると共に、該ビームを前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に向けて移動させるアクチュエータと、
前記磁気記録媒体を前記一定方向に回転させる回転駆動部と、
前記コイルに前記電流を供給すると共に、前記光源の作動を制御する制御部とを備えていることを特徴とする情報記録再生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公開番号】特開2008−77732(P2008−77732A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254514(P2006−254514)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】