説明

近赤外線吸収性粘着剤組成物及びプラズマディスプレイパネル用光学フィルム

【課題】高温、高湿下に保持されても、近赤外線吸収機能とネオンカット機能が低下せず、ヘイズが変化しない近赤外線吸収粘着組成物、及び該組成物を含むPDP用光学フィルムを提供する。
【解決手段】(a−1)アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステル82〜96質量部、(a−2)カルボキシル基含有モノマー4〜8質量部、及びこれらと共重合可能なその他のモノマー0〜10質量部を重合してなる、重量平均分子量120万〜150万のアクリル系ポリマー(A)、並びにジイモニウム系色素(B1)を1〜10質量部及びネオンカット色素(D)を0.001質量部以上含む近赤外線吸収性粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線カット機能を有する近赤外線吸収性粘着剤組成物に関する。本発明はまた、プラズマディスプレイから発生する近赤外線を吸収することで、電子機器の誤動作を防ぐ、プラズマディスプレイパネル(PDP)の前面に配置する近赤外線吸収粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
PDPは近赤外線(波長800〜1100nm程度)を発することが知られており、この近赤外線は周辺の電子機器に悪影響を及ぼす恐れがあるため遮断する必要がある。
【0003】
このPDPが発する近赤外線を吸収するために、近赤外線吸収フィルムが使用されていた。近赤外線吸収フィルムは、一般に、電磁波遮断フィルム及び反射防止フィルムとともに前面板に貼り合わされてパネルが形成される。しかし、これらの機能性フィルムを積層するためには別途粘着シートが必要となり、それが原因でパネルのヘイズ値が上昇したり、製造工程が増えるためコストが高くつくという問題があった。
【0004】
そこで、近赤外線吸収色素と粘着剤を含む粘着シートを用いることにより、上記の問題点を解決しようとする試みがなされている(例えば特許文献1〜9等)。しかしながら、いずれの粘着シートも長時間湿熱環境下にさらされると、近赤外線カット機能の低下やヘイズの上昇が認められ、実用的にはほど遠いものであった。これは、粘着剤層に近赤外線吸収色素が析出することによってヘイズが上昇したり、粘着剤ポリマー側鎖の官能基や見反応の架橋剤官能基と近赤外線吸収色素とが反応し、近赤外線吸収色素が劣化したりすることが原因として考えられる。
【特許文献1】特開平9−208918号公報
【特許文献2】特開2001−207142号公報
【特許文献3】特開2003−82302号公報
【特許文献4】特開2005−62506号公報
【特許文献5】特開2005−272588号公報
【特許文献6】特開2006−257223号公報
【特許文献7】特表2006−516357号公報
【特許文献8】特開2007−4098号公報
【特許文献9】特開2007−16198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、長時間、高温、高湿下に保持されても、近赤外線吸収機能およびネオンカット機能の低下がなくヘイズが変化しない近赤外線吸収性粘着組成物、及び該組成物を含むPDP用光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意研究をおこなった結果、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有モノマー、並びに必要に応じ共重合可能な他のモノマーを重合してなる、重量平均分子量120万〜150万のアクリル系ポリマー(A)、ジイモニウム系色素(B1)、並びにネオンカット色素(D)を含む近赤外線吸収性粘着剤組成物であって、該ジイモニウム系色素(B1)の25℃における酢酸エチル1gに対する溶解度が0.6mg以上であり、該アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、該ジイモニウム系色素(B1)を1〜10質量部、及びネオンカット色素を0.001質量部以上添加して得られる近赤外線吸収性粘着剤組成物が、長時間、湿熱環境下に保持した場合でも、近赤外線吸収機能およびネオンカット機能の低下がなく、ヘイズの変化が極めて小さいことを見いだした。かかる知見に基づき、さらに研究を重ねて本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は下記の近赤外線吸収性粘着組成物、及び該組成物を含有するPDP用光学フィルムに関する。
【0008】
項1. (a−1)アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステル82〜96質量部、
(a−2)カルボキシル基含有モノマー4〜8質量部、及び
(a−3)上記(a−1)及び/又は(a−2)と共重合可能なその他のモノマー0〜10質量部(但し、(a−1)〜(a−3)の合計量が100質量部)
を重合してなる、重量平均分子量120万〜150万のアクリル系ポリマー(A)、ジイモニウム系色素(B1)、並びにネオンカット色素(D)を含む近赤外線吸収性粘着剤組成物であって、該ジイモニウム系色素(B1)の25℃における酢酸エチル1gに対する溶解度が0.6mg以上であり、該アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、該ジイモニウム系色素(B1)を1〜10質量部含み、ネオンカット色素(D)を0.001質量部以上含む近赤外線吸収性粘着剤組成物。
【0009】
項2. 前記(a−2)カルボキシル基含有モノマーが、カルボキシル基含有アクリルモノマー及びカルボキシル基含有メタクリルモノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である項1に記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
【0010】
項3. 前記アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、さらに、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤及び金属キレート硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤(C)を0.001〜10質量部含む項1又は2に記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
【0011】
項4. 前記硬化剤(C)がイソシアネート系硬化剤及び金属キレート硬化剤である項1〜3のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
【0012】
項5. 前記アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、ジイモニウム系色素(B1)及びフタロシアニン系色素(B2)を合わせて1〜10質量部を含む項1〜4のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
【0013】
項6. ネオンカット色素(D)がシアニン系色素、スクアリリウム系色素又はインドール化合物系色素である項1〜5のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
【0014】
項7. 前記項1〜6のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物より得られる粘着剤層が基材フィルム上に形成されていることを特徴とする粘着フィルム。
【0015】
項8. 前記項1〜6のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物より得られる粘着剤層が基材フィルム上に形成されていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル用光学フィルム。
【発明の効果】
【0016】
本発明の近赤外線吸収性粘着剤組成物は、長時間、高温、高湿下に保持されても、近赤外線吸収機能とネオンカット機能の低下がなくヘイズが変化しない。そのため、PDP用光学フィルムとして好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
アクリル系ポリマー(A)
本発明の近赤外線吸収性粘着組成物に含まれるアクリル系ポリマー(A)は、(a−1)アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステル82〜96質量部、(a−2)カルボキシル基含有モノマー4〜8質量部、及び(a−3)上記(a−1)及び/又は(a−2)と共重合可能なその他のモノマー0〜10質量部(但し、(a−1)〜(a−3)の合計量が100質量部)を重合してなる、重量平均分子量120万〜150万のポリマーである。
【0018】
上記(a−1)で示されるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルにおけるアクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸のC1〜15の直鎖、分岐鎖又は環状アルキルエステルが挙げられる。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
【0019】
メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸のC1〜15の直鎖、分岐鎖又は環状アルキルエステルが挙げられ、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘプチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
【0020】
中でも、アルキル基の炭素数が4〜8のアクリル酸アルキルエステルを使用すると、得られる粘着剤の粘着力、柔軟性が良好になるため好ましく、特に、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
【0021】
このような(a−1)モノマーは、(a−1)〜(a−3)のモノマーの合計量100質量部中に、82〜96質量部、好ましくは87〜95.9質量部含まれる。
【0022】
上記(a−2)で示されるカルボキシル基含有モノマーとしては、1以上のカルボキシル基を分子内に有する不飽和結合(二重結合)を有する化合物が挙げられる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸β−カルボキシエチル、メタクリル酸β−カルボキシエチル、アクリル酸5−カルボキシペンチル、メタクリル酸5−カルボキシペンチル、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸モノメタクリロイルオキシエチルエステル、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレート、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0023】
中でも(a−1)との共重合性が良好なアクリルモノマー、メタクリルモノマーを使用することが好ましく、さらには得られる粘着剤の透明性のよいアクリル酸、メタクリル酸を使用することが特に好ましい。
【0024】
このような(a−2)モノマーは、(a−1)〜(a−3)のモノマーの合計量100質量部中に、4〜8質量部含まれる。
【0025】
上記使用量でカルボキシル基含有モノマーを共重合することにより、後述する(B)近赤外線吸収色素を安定化し、劣化を抑制し、長時間の湿熱環境下においても、近赤外線カット機能の低下やヘイズの上昇を抑えることができる。
【0026】
上記(a−3)で示される(a−1)及び/又は(a−2)と共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル等の水酸基含有モノマー;アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−メトキシプロピル、アクリル酸3−メトキシプロピル、アクリル酸2−メトキシブチル、アクリル酸4−メトキシブチル等のアクリル酸アルコキシエステル;メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸2−メトキシプロピル、メタクリル酸3−メトキシプロピル、メタクリル酸2−メトキシブチル、メタクリル酸4−メトキシブチル等のメタクリル酸アルコキシエステル;アクリル酸エチレングリコール、アクリル酸ポリエチレングリコール、アクリル酸プロピレングリコール、アクリル酸ポリプロピレングリコール等のアクリル酸アルキレングリコール;メタクリル酸エチレングリコール、メタクリル酸ポリエチレングリコール、メタクリル酸プロピレングリコール、メタクリル酸ポリプロピレングリコール等のメタクリル酸アルキレングリコール;アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸アリール;メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸アリール;酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸アリル等が挙げられる。
【0027】
このような(a−3)モノマーは、(a−1)〜(a−3)のモノマーの合計量100質量部中に0〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部含まれる。
【0028】
中でも、水酸基含有モノマーは、イソシアネート系硬化剤使用時の架橋点として作用し、得られる粘着剤の粘着物性を好適な範囲に調整することができるため好ましい。特に、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチルが、(a−1)及び/又は(a−2)との共重合性が良好で、硬化剤との反応性が良好であるため好ましい。該水酸基含有モノマーの使用量は、(a−1)〜(a−3)のモノマーの合計量100質量部中に0.1〜2質量部とすることが好ましい。
【0029】
なお、(a−3)モノマーとして、アミノ基、アミド基等の窒素含有官能基を有するモノマーは、ジイモニウム系色素(B)の褪色を促進する作用があるため使用しないことが好ましい。
【0030】
上記(a−1)〜(a−3)を共重合することによって得られるアクリル系ポリマー(A)は、重量平均分子量(Mw)が120万〜150万であることが重要である。分子量が120万より小さいと、ジイモニウム系色素(B1)の耐久性が低下、或は析出したりして、十分な効果が得られない。また、分子量が150万より大きくても、ジイモニウム系色素(B1)やフタロシアニン系色素(B2)の耐久性が悪くなったり析出したりして、十分な近赤外線カット効果が得られない。なお、重量平均分子量は、GPC法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0031】
このようなアクリル系ポリマー(A)は公知の重合方法で得ることができるが、中でも溶液重合法が、分子量の調節が容易であり、また不純物も少なくできるために好ましい。重量平均分子量(Mw)120万〜150万の範囲に調節する好適な条件としては、例えば、溶剤として酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン等を用い、モノマー100質量部に対して重合開始剤0.01〜0.5質量部を添加し、適宜溶剤を追加しながら、窒素雰囲気下、反応温度40〜80℃で、2〜20時間反応させることで得られる。
【0032】
また、本発明において使用されるアクリル系ポリマー(A)のガラス転移温度は0℃以下であり、好ましくは−20℃以下である。ガラス転移温度が0℃より高いと、得られる粘着剤の基材への密着性や、粘着剤層の可撓性が低下し、基材からのハガレや浮きを生じるおそれがある。
【0033】
なお、本発明におけるガラス転移温度は、ホモポリマーのガラス転移温度から、下記のFOXの式(1)によって算出される。
【0034】
1/Tg=Wa/Tga+Wb/Tgb+・・・ (1)
Tg :共重合体のガラス転移温度
Tga,Tgb,・・・:単量体a、単量体b・・・のホモポリマーのガラス転移温度
Wa,Wb・・・ :単量体a、単量体b・・・の重量分率
近赤外線吸収色素(B)
本発明の近赤外線吸収性粘着組成物に含まれる近赤外線吸収色素(B)は、800nm〜1100nmに極大吸収波長を有する色素であればよく、ジイモニウム系色素(B1)、フタロシアニン系色素(B2)が挙げられる。この両者を単独或いは2種以上を組み合わせて使用しても良い。このうち、ジイモニウム系色素(B1)が好ましく、本発明ではジイモニウム系色素(B1)を必須とする。これらの色素は溶媒等への溶解性が高い方が良い。具体的には、常圧(約0.1MPa)下、25℃における酢酸エチル1gに対する溶解度が、0.6mg以上、好ましくは0.8〜300mg、より好ましくは1〜200mgである。ここで、酢酸エチルを基準溶媒としたのは、酢酸エチルの溶解度パラメータ値(SP値)はアクリル系ポリマー(A)のそれと近似するからである。
【0035】
本発明では、ジイモニウム系色素(B1)の含有量は、重量平均分子量120万〜150万のアクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、1〜10質量部であり、好ましくは1.2〜8質量部であり、より好ましくは1.5〜6質量部である。
【0036】
上記の量で使用することにより、ジイモニウム系色素が、アクリル系ポリマーによって安定化され湿熱環境下での透過率の低下やヘイズの上昇を抑えることができる。
【0037】
さらに、ジイモニウム系色素(B1)に加えてフタロシアニン系色素(B2)を併用してもよい。その場合、ジイモニウム系色素(B1)及びフタロシアニン系色素(B2)の合計量が、アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、1〜10質量部であり、好ましくは1.2〜8質量部であり、より好ましくは1.5〜6質量部である。また、ジイモニウム系色素(B1)とフタロシアニン系色素(B2)との含有比(質量比)は、例えば100:1〜1:1、好ましくは20:1〜5:4である。
【0038】
上記の所定の色素を所定量用いるのは、色素の配合量が少ない場合は、粘着剤中に色素が析出したりする場合多く、また、配合量が多いと可視域での透過率が低下するためである。
【0039】
ジイモニウム系色素(B1)としては、一般式(I):
【0040】
【化1】

【0041】
で表される部分構造を有する化合物が挙げられる。具体的には、一般式(Ia):
【0042】
【化2】

【0043】
(式中、R〜Rは独立して水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ヒドロキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルコキシ基、又はアシルオキシ基を示し、Xは陰イオンを示す。)で表される化合物が挙げられる。
【0044】
置換基を有してもよいアルキル基のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜20、好ましくは4〜8、より好ましくは4〜6の、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が挙げられる。炭素数が4以上であると有機溶剤に対する溶解性が良好であり、炭素数が8以下であると耐熱性が良好である。該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、3−メチル−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、シクロペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−iso−プロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−iso−プロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル1−iso−プロピルブチル基、2−メチル−1−iso−プロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基等が挙げられる。
【0045】
該アルキル基は、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、スルホ基、又はカルボキシル基等の置換基を有してもよい。
【0046】
置換基を有してもよいアルケニル基のアルケニル基としては、例えば、炭素数2〜20、好ましくは4〜8、より好ましくは4〜6の、直鎖、分岐、又は環状のアルケニル基が挙げられる。該アルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、又はオクテニル基が挙げられる。
【0047】
該アルケニル基は、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、スルホ基、又はカルボキシル基等の置換基を有してもよい。
【0048】
置換基を有してもよいアラルキル基のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、p−クロロベンジル基、p−メチルベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、又は2−ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0049】
該アラルキル基は、芳香環に水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、スルホ基、又はカルボキシル基等の置換基を有してもよい。
【0050】
置換基を有してもよいアリール基のアリール基としては、単環又は2環のアリール基が挙げられ、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0051】
該アリール基は、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、スルホ基、又はカルボキシル基等の置換基を有してもよい。
【0052】
置換基を有してもよいアリールオキシ基のアリールオキシ基としては、単環又は2環のアリールオキシ基が挙げられ、例えばフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0053】
該アリールオキシ基は、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、スルホ基、又はカルボキシル基等の置換基を有してもよい。
【0054】
置換基を有してもよいアルコキシ基のアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜20、好ましくは4〜8、より好ましくは4〜6の、直鎖、分岐、又は環状のアルコキシ基が挙げられる。炭素数が4以上であると有機溶剤に対する溶解性が良好であり、炭素数が8以下であると耐熱性が良好である。該アルコシキ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、3−メチル−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、iso−ペンチルオキシ基、neo−ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、1,2−ジメチルプロピルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1,3−ジメチルブチルオキシ基、1−iso−プロピルプロピルオキシ基、1,2−ジメチルブチルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、1,4−ジメチルペンチルオキシ基、2−メチル−1−iso−プロピルプロピルオキシ基、1−エチル−3−メチルブチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3−メチル1−iso−プロピルブチルオキシ基、2−メチル−1−iso−プロピルオキシ基、1−t−ブチル−2−メチルプロピルオキシ基、n−ノニルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0055】
該アルコキシ基は、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、スルホ基、又はカルボキシル基等の置換基を有してもよい。
【0056】
アシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基等のC2〜10アルカノイルオキシ基;ベンゾイルオキシ基、ナフトイルオキシ基等のアリーロイルオキシ基が挙げられる。
【0057】
で示される陰イオンとしては、例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、硝酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、P−トルエンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、プロピル硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ヘキサフルオリン酸イオン、ベンゼンスルフィン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酢酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、マロン酸イオン、オレイン酸イオン、ステアリン酸イオン、クエン酸イオン、一水素二リン酸イオン、二水素一リン酸イオン、ペンタクロロスズ酸イオン、クロロスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオン、ナフチルスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0058】
これらの陰イオンのうち、過塩素酸イオン、ヨウ素イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオン等が好ましく、特にヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオンが熱安定性に最も優れるため好ましい。
【0059】
ジイモニウム系色素としては、1000nm付近のモル吸光係数εが約0.8×10〜1.0×10であることが好ましい。また、98%以上の純度を有するジイモニウム系色素、又は180℃以上の融点を有するジイモニウム系色素を使用することが好ましい。
【0060】
フタロシアニン系色素(B2)としては、一般式(II):
【0061】
【化3】

【0062】
で表される部分構造を有する化合物であり、800〜1000nmに最大吸収波長を有するものが挙げられる。例えば、特開2001−106658号公報に記載されるフタロシアニン系色素、特開2001−133623号公報に記載される含フッ素フタロシアニン系色素、特開2002−822193号公報に記載される含フッ素フタロシアニン系色素等が挙げられる。具体的には、日本触媒社製、イーエクスカラーIR−10、イーエクスカラーIR−10A、イーエクスカラーIR−14、イーエクスカラーIR−12、イーエクスカラーIR−HA-1などを使用することができる。特に好ましくは含フッ素フタロシアニン系化合物であり、例えばイーエクスカラーIR-12が挙げられる。
【0063】
フタロシアニン系色素の中心金属Mとしては特に制限されるものではなく、無金属(水素)、鉄、銅、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム及びスズ等の金属、当該金属の、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の金属ハロゲン化合物、酸化バナジウム、酸化チタニル及酸化銅等の金属酸化物、酢酸塩等の有機酸金属、ならびにアセチルアセトナート等の錯体化合物及びカルボニル鉄等の金属カルボニル等が挙げられる。これらのうち、好ましくは金属、金属酸化物及び金属ハロゲン化物である。さらに好ましくは酸化バナジウムである。
【0064】
上記フタロシアニン系色素としては、Pcをフタロシアニン核、Phをフェニル基とした場合に、フタロシアニン[CuPc(2,5−C1PhO){2,6−(CHPhO}(PhCHNH)](λmax807nm)、Pc(2,5−ClPhO)(2,6−Br−4−CHPhO){Ph(CH)CHNH}F(λmax835nm)、VOPc(2,5−ClPhO)(2,6−Br−4−CHPhO){PhCHNH}F(λmax840nm)、VOPc(2,5−ClPhO)(2,6−(CHPhO){Ph(CH)CHNH}F(λmax834nm)、VOPc(2,6−ClPhO)(2,6−(CHPhO){Ph(CH)CHNH}F(λmax835nm)、VOPc(4−CNPhO)(2,6−Br−4−CHPhO){Ph(CH)CHNH}F(λmax836nm)、VOPc(4−CNPhO)(2,6−(CHPhO){Ph(CH)CHNH}F(λmax834nm)等がある。また、850〜980nmに最大吸収波長を有するものには、[VOPc(2,5−ClPhO){2,6−(CHPhO}(PhCHNH)](λmax870nm)、[VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}(PhCHNH)](λmax912nm)、VOPc(2,5−ClPhO)(2,6−(CHPhO){(CNCHCHNH}(λmax893nm)等がある。本発明では、該フタロシアニン(I)として、800nmを超え850nm未満と850〜980nmとに最大吸収波長を有する2種のフタロシアニンを用いると、得られる近赤外吸収フィルターの可視光透過率が高くなり、また効率よく近赤外光をカットできる点で有利である。
【0065】
ネオンカット色素(D)
本発明の近赤外線吸収性粘着剤組成物には、ネオンカット色素(D)を含んでいる。プラズマディスプレイは、600nm付近を中心とするいわゆるネオンオレンジ光を発光し、赤色にオレンジ色が混ざり鮮やかな赤色が得られない欠点がある。ネオンカット色素を含有させることにより、上記の問題が解決できる。
【0066】
ネオンカット色素とは、550nm以上620nm以下の波長域に最大吸収を有する色素であり、具体的には、シアニン系、スクアリリウム系、インドール化合物系、アゾメチン系、キサンテン系、オキソノール系、アゾ系、フタロシアニン系、キノン系、アズレニウム系、ピリリウム系、クロコニウム系、ジチオール金属錯体系、ピロメテン系、アザポルフィリン系等が挙げられる。これらの色素は、単独または2種以上を混合して使用することができるが、本発明においては、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、インドール化合物系色素を用いることが好適である。
【0067】
具体例としてはADEKA株式会社、アデカアークルズ TY-100、アデカアークルズ TY-102、アデカアークルズ TY-171が挙げられ、特にアデカアークルズ TY-171が好ましい。またエオシンY(600nm)、フロキシンB(540nm)[赤色104号]、ローズベンガル(550nm) [赤色105号]色素でも良い。
【0068】
ネオンカット色素の含有量は、得られた波長選択吸収フィルターが550nm以上620nm以下の波長領域にシャープな吸収を有し、且つ、最大の吸収波長での透過率が30%以下になるように調整するのが好ましい。前記アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、0.001質量部以上であり、好ましくは0.005〜1質量部であり、より好ましくは0.01〜0.5質量部である。
【0069】
硬化剤(C)
本発明の近赤外線吸収性粘着剤組成物には、さらに硬化剤(C)を含んでいてもよい。硬化剤(C)としては、例えば、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、金属キレート硬化剤等が挙げられる。中でも、イソシアネート系硬化剤が好ましく、特にイソシアネート系硬化剤と金属キレート硬化剤を併用することが好ましい。
【0070】
硬化剤(C)の含有量は、前記アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、0.001〜10質量部であり、好ましくは0.01〜5質量部である。特に、イソシアネート系硬化剤と金属キレート硬化剤を併用する場合、イソシアネート系硬化剤と金属キレート硬化剤との含有比(質量比)は、100:1〜1:1程度、好ましくは50:1〜2:1程度であればよい。
【0071】
イソシアネート系硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物;それらをトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと付加反応させた化合物;これらポリイソシアネート化合物のビュレット型化合物やイソシアヌレート化合物;これらポリイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等と付加反応させたウレタンプレポリマー型の分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物等が挙げられる。
【0072】
中でも、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとを付加反応させた化合物が、反応性が良好であることから好適に使用される。
【0073】
アクリル系ポリマーが水酸基を有する場合には、架橋剤としてイソシアネート系硬化剤を組み合わせることが好ましい。
【0074】
このようなイソシアネート系硬化剤はアクリル系ポリマー100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部使用される。
【0075】
エポキシ系化合物としては、例えば、ビスフェノールAエピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N'−ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
【0076】
中でも、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンが反応性が良好であるため好適に使用される。
【0077】
このようなエポキシ系硬化剤はアクリル系ポリマー100質量部に対して0.001〜2質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部使用される。
【0078】
金属キレート硬化剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属にアセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が配位した化合物等が挙げられる。
【0079】
中でも、アルミニウムにアセチルアセトン、アセト酢酸エチルが配意した化合物がジイモニウム系色素の劣化を抑制する作用があることから好適に使用される。
【0080】
このような金属キレート硬化剤はアクリル系ポリマー100質量部に対して0.001〜2質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部使用される。
【0081】
硬化剤(C)は上記化合物の1種以上を使用することが好ましく、中でもイソシアネート系硬化剤と金属キレート硬化剤を併用して用いることが、硬化時間を短縮し、粘着剤層の硬化中のジイモニウム化合物の劣化を抑制しながら、好ましい粘着物性が得られることから好ましい。
【0082】
本発明の近赤外線吸収性粘着剤組成物には、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、最大吸収波長が300〜800nmの範囲にある色調補正色素、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤、又は紫外線吸収剤等を含有していてもよい。
【0083】
上記のアクリル系ポリマー(A)、ジイモニウム系化合物(B1)を含む近赤外線吸収色素(B)、ネオンカット色素(D)、必要に応じ硬化剤(C)は、公知の方法により混合分散して近赤外線吸収性粘着剤組成物を得る。混合分散方法については特に限定しないが、ディゾルバー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、サンドミル、アトライター、ホモジナイザー、ボールミル等の分散機を使用することが好ましい。
【0084】
本発明における近赤外線吸収性粘着フィルムは、例えば近赤外線吸収性粘着剤組成物を有機溶剤に溶解または分散せしめた液(以下、塗工液という。)を、剥離性の基材、または支持フィルム上に塗工し、乾燥させることにより形成できる。
【0085】
前記有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン系、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコール等のアルコール系、ヘキサン等の炭化水素系、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0086】
近赤外線吸収性粘着フィルムは、上記の近赤外線吸収性粘着剤組成物を基材上に塗工する方法としては、ドクターブレード、バーコーター、グラビアーコーター、コンマコーター、リバースコーター、スプレー法等の公知の塗工方法が挙げられる。
【0087】
基材としては、フィルム状又はシート状のプラスチックフィルムやガラス板が挙げられる。透明性、コスト、取り扱いやすさという点で、プラスチックフィルムが好ましい。具体的には、ポリエステル系、アクリル系、トリアセチルセルロース系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリオレフィン系、ポリシクロオレフィン系が挙げられるが、ポリエステルフィルムが好ましい。
【0088】
塗工液を、離型性を付与した基材上に塗布する。粘着層の厚みについては特に限定しないが、5μm〜50μm、好ましくは10μm〜40μm、より好ましくは20μm〜30μmが良い。それらを更に、離型性付与した基材を気泡の発生しない状態で貼り合わせる。
【0089】
このように、剥離性の基材または支持フィルム上に、本発明における近赤外線吸収層を設けた後、該近赤外線吸収層上に、さらに、離型フィルムを貼付しておくことが、作業性の点で好ましい。離型フィルムとしては、上述した剥離性の基材と同様のものが使用できる。
【0090】
本発明の光学フィルムは、近赤外線吸収層以外の、任意の機能性層を1層以上有していてもよい。機能性層としては、例えば、紫外線による色素の劣化を防ぎ耐光性を改善するための紫外線吸収層、画像の視認性を向上させるための反射防止層、PDPなどの表示装置から発せられる電磁波をカットするための電磁波遮蔽層、耐擦傷性機能を与えるハードコート層もしくは自己修復性を有する層、又は最表面の汚れを防止するための防汚層、それぞれの層を積層させるための粘着もしくは接着層等が挙げられる。
【0091】
機能性層は、例えば、剥離性の基材上に、近赤外線吸収層を形成する前に予め該剥離性の基材上に設けてもよく、剥離性の基材上に近赤外線吸収層を形成した後、該近赤外線吸収層上に設けてもよく、近赤外線吸収層が形成された剥離性の基材を剥がし、露出させた近赤外線吸収層上に設けてもよい。また、支持フィルム上に、近赤外線吸収層を形成する前に予め該支持フィルム上に設けてもよい。また、支持フィルム自体に機能性層としての機能を持たせてもよい。
【0092】
本発明の光学フィルムは、例えば離型フィルムを剥がして露出させた近赤外線吸収層を、高い剛性を有する透明基板(以下、透明基板という。)に貼着して用いることができる。透明基板の材料としては、ガラス、透明で高剛性の高分子材料から適宜選択して使用することができるが、好ましくはガラス、強化もしくは半強化ガラス、ポリカーボネート、又はポリアクリレートなどが挙げられる。
【0093】
光学フィルムが透明基板に貼着されたものを光学フィルタとして使用すると、PDPなどの表示装置の保護板としての機能も発揮できる。
【0094】
本発明の光学フィルム、又は該光学フィルムを透明基板上に貼着したものは、PDP、プラズマアドレスリキッドクリスタル(PALC)ディスプレイパネル、フィールドエミッションディスプレイ(FED)パネルなどの平面型表示装置及び陰極管表示装置(CRT)などの表示装置用の光学フィルタとして用いることができる。
【実施例】
【0095】
以下、比較例と共に実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、表中に示す各数値の単位は「質量部」である。
<分子量の測定>
アクリルポリマーの重量平均分子量(Mw)は、標準ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。
【0096】
測定条件:
装置:HLC−8120(東ソー(株)製)
カラム:G7000HXL(東ソー(株)製)
GMHXL(東ソー(株)製)
G2500HXL(東ソー(株)製)
サンプル濃度:1.5mg/ml(テトラヒドロフランで希釈)
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
<耐久性試験>(表3及び表4)
近赤外線吸収粘着フィルムの各試験片について、初期、80℃/90%の環境下1000時間放置後(評価A)、及び85℃環境下で1000時間放置後(評価B)における全光透過率(%)、ヘイズ(%)、透過率(850nm、950nm、590nm)を測定した。また、80℃/90%の環境下1000時間放置後(評価A)、及び85℃環境下で1000時間放置後(評価B)のそれぞれにおける外観評価も行った。
<全光線透過率及びヘイズ値>
日本電飾製NDH−2000を使用して、JIS−K−6782の方法に従って全光線透過率及びヘイズ値を測定した。
<850nm、950nm、590nmの透過率>
分光光度計(日立U−3410)を用いて、300nm〜1500nmの透過率を測定し850nm,950nm,590nmの各透過率を測定した。
<外観評価>
試験片の色目の変化、層間の浮き等の外観変化を目視で確認した。評価の方法は下記の通り。
【0097】
○:色目の変化や、粘着剤層の浮き、ハガレは確認できなかった。
【0098】
×:色目の変化や色素の析出が見られた。
[製造例1]
n-ブチルアクリレート(BA)93.8質量部、アクリル酸(AA)6質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)0.2質量部、酢酸エチル150質量部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部を反応容器に入れ、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、撹拌下に窒素雰囲気中で、この反応容器を60℃に昇温させ、4時間反応させた後、酢酸エチル50質量部を添加し、さらに60℃で6時間反応させた。反応後、メチルエチルケトン200質量部を添加、希釈し、アクリルポリマーA溶液(重量平均分子量120万、ガラス転移温度−48℃)を得た。
【0099】
[製造例2〜6][比較製造例7〜10]
表1のように変更した以外は、製造例1と同様にして、アクリルポリマーB〜J溶液を得た。
【0100】
【表1】

【0101】
[実施例1]
アクリル系ポリマーA溶液の固形分100質量部に対して、芳香族ジイモニウム化合物(日本化薬製IRG022)2.5質量部、ネオンカット色素(ADEKA製TY171)を0.05質量部、イソシアネート系硬化剤L−45(綜研化学製)0.2質量部、金属キレート硬化剤M−12AT(綜研化学製)0.05質量部を添加して粘着剤組成物を調製した。それにメチルエチルケトン(MEK)を添加して、ホモジナイザーに投入して10000rpm、10分間攪拌をし、固形分濃度10%の粘着組成物を得た。
【0102】
調製した粘着剤組成物を剥離性基材S−71(帝人株式会社製)上に、乾燥後の厚みが20μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、65℃の乾燥機で3分間乾燥した。乾燥後、粘着剤層側に剥離性基材A−31(帝人株式会社製)を貼り合わせ、23℃で7日間熟成させ、近赤外線吸収性粘着シート(トランスファーシート)を得た。その結果を表2に示す。
[実施例2〜6][比較例1〜4]
表2のように変更した以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収粘着シートを得た。
[実施例7]
ジイモニウム系色素2.5質量部とフタロシアニン系色素(日本触媒IR-12)0.75質量部を加えること以外は、実施例1と同様にして近赤外線吸収性粘着シートを得た。
[比較例5]
ジイモニウム系色素0.8質量部とした以外は、実施例1と同様に実施した。
[比較例6]
25℃における酢酸エチル1gに対する溶解度が0.5mgのジイモニウム系色素を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
【0103】
【表2】

【0104】
[試験例1]
上記実施例1〜7、及び比較例1〜6で得られた粘着シートの剥離性基材A−31(帝人株式会社製)を剥がし、スライドガラス上に貼着させ、もう一方の剥離性基材S−71(帝人株式会社製)を剥がしそれぞれ試験片を作成した。この試験片について上記した耐久性試験を行った。その結果を表3及び表4に示す。
【0105】
【表3】

【0106】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a−1)アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステル82〜96質量部、
(a−2)カルボキシル基含有モノマー4〜8質量部、及び
(a−3)上記(a−1)及び/又は(a−2)と共重合可能なその他のモノマー0〜10質量部(但し、(a−1)〜(a−3)の合計量が100質量部)
を重合してなる、重量平均分子量120万〜150万のアクリル系ポリマー(A)、ジイモニウム系色素(B1)、並びにネオンカット色素(D)を含む近赤外線吸収性粘着剤組成物であって、該ジイモニウム系色素(B1)の25℃における酢酸エチル1gに対する溶解度が0.6mg以上であり、該アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、該ジイモニウム系色素(B1)を1〜10質量部含み、ネオンカット色素(D)を0.001質量部以上含む近赤外線吸収性粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(a−2)カルボキシル基含有モノマーが、カルボキシル基含有アクリルモノマー及びカルボキシル基含有メタクリルモノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
【請求項3】
前記アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、さらに、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤及び金属キレート硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤(C)を0.001〜10質量部含む請求項1又は2に記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
【請求項4】
前記硬化剤(C)がイソシアネート系硬化剤及び金属キレート硬化剤である請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
【請求項5】
前記アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、ジイモニウム系色素(B1)及びフタロシアニン系色素(B2)を合わせて1〜10質量部を含む請求項1〜4のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
【請求項6】
ネオンカット色素(D)がシアニン系色素、スクアリリウム系色素又はインドール化合物系色素である請求項1〜5のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物より得られる粘着剤層が基材フィルム上に形成されていることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項8】
前記請求項1〜6のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物より得られる粘着剤層が基材フィルム上に形成されていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル用光学フィルム。

【公開番号】特開2008−231325(P2008−231325A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75594(P2007−75594)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】