近赤外線微生物除去レーザーシステム(NIMELS)
【解決手段】 医療装置と共に使用することを含む、近赤外線微生物除去レーザーシステム(NIMELS)のための方法、システム、及び機器が開示されている。医療装置は、生体内に配置できるものもある。適した医療装置には、カテーテル、ステント、人工関節などが含まれる。NIMELS方法、システム、及び機器は、当該技術で説明されている伝統的な方法に付帯する標的にされる生物学的汚染物質以外の生物学的部分に許容できないリスク及び/又は悪影響(例えば、生存能力の損失、又は熱分解)を及ぼすことなく、生物学的汚染物質を弱めることができる或る波長と線量の近赤外線放射エネルギーを印加することができる。ダイオードレーザーを含むレーザーが、1つ又は複数の光源に用いられる。送出アッセンブリは、ソースによって作り出される光学放射を、患者の組織を含む印加領域に送出するのに用いられる。代表的な実施形態は、850nm−900nm及び/又は905nm−945nmの範囲内の光を適したNIMELS線量で利用している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1つ又は複数の医療装置を包含するか又は部分的に含む標的部位を含め、標的部位における生物学的汚染物質のレベルを選択的に下げるための方法、システム、及び機器に関する。本開示は、治療法も包含しており、より具体的には、光学的放射を使用する方法、装置、及びシステムにも関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、関係する2005年8月3日出願の米国仮特許出願第60/705,630号「近赤外線微生物除去レーザー(NIMEL)システムとそれに基づく装置」の恩典を請求し、その内容全体を参考文献としてここに援用しており、同仮出願は、本出願の譲受人に譲渡されている。本出願は、更に、本出願と共通の譲受人を有する以下の米国仮特許出願、即ち、2005年7月21日出願の米国仮特許出願第60/701,896号「近赤外線微生物除去レーザー(NIMEL)システム」、2005年8月23日出願の米国仮特許出願第60/711,091号「近赤外線微生物除去レーザー(NIMEL)システム」、2006年3月9日出願の米国仮特許出願第60/780,998号「指と足の爪の感染の再発を治療及び予防するための方法と装置」、及び2006年4月4日出願の米国仮特許出願第60/789,090号「生物学的一部分への生物学的封じ込めのためのNIMELS光学エネルギーと線量の均一な照射のための方法と装置」に関係しており、これら出願の全てを参考文献としてここに援用する。
【0003】
幾つかのE.coli種と他の腸球菌は、大部分の抗生物質に対する本来の及び後天性の抵抗力を有しており、ヒトと動物の病気における重大な病院内病原体となることが知られている。Boyceらの「J.Clin.Microbiol, 32(5):1148-53」(1994年)、Donskeyらの「N.Engl.j.Med. 343(26):1925-32」(2000年)、Landmanらの「J.Antimicrob.Chemother. 40(2):161-70」(1997年)。腸球菌によって起こるヒトの感染には、心内膜炎、菌血症、尿管感染、創感染、及び腹腔内感染と骨盤内感染症が含まれる。これらの感染の大多数で、有機体は、患者自身の腸内細菌叢から生じ、拡がって、尿管感染、腹腔内感染、及び手術創感染を引き起こす。重症になると、菌血症が、より遠い部位に種幡されることになる。Whitesideらの「Am.J.Infect.Control 11(4):125-9」(1983年)、Pattersonらの「Medicine(Baltimore)74(4):191-200」(1995年)、Cooperらの「Infect.Dis.Clin.Practice 2:332-9」(1993年)。最近米国では、全国的な院内感染監視調査(NNIS)が、腸球菌を、院内感染の第2から第4の最も一般的な原因に格付けした。腸球菌は、しばしば、入院患者に尿管感染、血流感染、及び創感染を引き起こす。更に、腸球菌は、全てのバクテリア心内膜炎の事例の5−15%を引き起こしている。更に、カテーテルに関係する敗血症、相互感染、又は血液培養汚染の危険を大いに増す抗バンコマイシン腸球菌による皮膚移転増殖の高い流行が報告されている。CDC全国院内感染監視(NNIS)システムの報告「Am.J.Infect.Control 26:522-33」(1998年)、Beezholdらの「Clin.Infect.Dis. 24(4):704-6」(1997年)、Tokarsらの「Infect.Control Hosp.Epidemiol, 20(3):171-5」(1999年)。腸球菌による皮膚又は創の感染として知られている感染実体は、NIMELSレーザーシステムにとって特別な関心事である。腸球菌感染には、腫脹、癰、水疱性膿痂疹、及び鱗様皮膚症候群の様な皮膚の症状を引き起こすことが知られている、身体の殆どの皮膚表面が関わっている。S.aureusも、ブドウ球菌食中毒、腸炎、骨髄炎、毒ショック症候群、心内膜炎、髄膜炎、肺炎、膀胱炎、敗血症、及び手術後の創感染の原因となる。Tomiらの「J.Am.Acad.Dermatol,53(1):67-72」(2005年)、Breuerらの「Br.J.Dermatol,147(1):55-61」(2002年)、Ridgewayらの「J.Bone Joint Surg.Br.87(6):844-50」(2005年)。表皮感染は、患者が病院内又は長期療養所にいる間に罹患する場合もある。限られた人数と抗生物質の広範な使用は、S.aureusの抗生物質耐性菌株を発達させることになる。これらの菌株は、チシリン耐性表皮アウレウス(MRSA)と呼ばれる。MRSAによって引き起こされる感染は、しばしば、広汎な抗生物質に対して耐性のあることが多く、非MRSA微生物によって引き起こされる感染と比べて、非常に高い罹病率及び死亡率、高いコスト、及び長期の入院を伴う。病院内のMRSA感染の危険要因には、手術、事前抗菌治療、集中治療への入場、MRSAコロニーを有する患者又は健康管理従事者への暴露、48時間を越える病院内滞在、及び、皮膚を貫通する内在型カテーテル又は他の医療装置の装填が含まれる。Hidronらの「Clin.Infect.Dis.15;41(2):159-66」(2005年)、Hsuehらの「Int.J.Antimicrob.Agents 26(1):43-49」(2005年)。
【0004】
これらの腸球菌及び葡萄状球菌の感染は、中心の静脈性カテーテルがCVC感染する可能性が大きく、患者に相当な罹病率及び死亡率を引き起こす、Tomiら(上記)。実際、データは、米国では、毎年ICUで、1500万のCVC日(即ち、選択された時間中に、選択された集団の全ての患者によるCVCへの合計暴露日数)が起こっていることを示している、Mermel LA「Ann.Intern 132:391-402」(2000年)。従って、CVCが関係する血流感染の平均率は、ICU CDCでの1,000カテーテル日につき5.3件になり(上記)、言い換えれば、米国では、略80,000件のCVCに関係する血流感染が毎年ICUで起こっている。健康管理施設に起因する感染当たりの経費は、34,508から56,000ドルと推定され、Relloらの「Am.J.Respir.Crit.Care Med.162:1027-30」(2000年)、Dimickらの「Arch.Surg.136:229-34」(2001年)、CVCに関係するBSIの患者に対する手当ての年間経費は、29,600万から23億ドルであるMermel LA「Ann.Intern.Med.133:395」(2000年)。
【0005】
健康管理環境内の真菌感染の重要性は、決して誇張されているわけではない。一例として、カンジダアルビカンス(C.albicans)は、病院内のICUの患者の院内感染に関係する7番目に最も一般的な病原体として知られている。Fridkinらの「Clinics In Chest Medicine, 20:(2)」(1999年)。C.albicansについて治療に関して一般的に受け入れられている治療選択肢は、ポリエン類の抗真菌(アンホテリシン)、イミダゾール類の抗真菌、及びトリアゾールである。これらの治療の多くは、(全身及び器官系統に危険が及ぶので)長期間継続されなければならず、抗微生物耐性真菌病原体が、緊急を要する所以である。これが発生すると、治療の選択肢は、僅かになり限られてくる。
【0006】
一例として、後天性の免疫不全症候群患者には、中でもアゾール治療又は低CD4計数に曝された患者に、アゾール耐性C.albicans感染を発症している患者がいる。Johnsonらの「J.Antimicrob.Chemother, 35:103-114」(1995年)、Maenzaらの「J.Infect.Dis.173:219-225」(1996年)。後天性の免疫不全症候群患者におけるアゾール耐性C.albicansの最近の様相は、他の免疫不全の患者集団における先触れ的な耐性問題を最も的確に示している。
【0007】
これらのデータは、内因性の真菌感染に対し最も危険性の高い患者に真菌予防治療を段階的に強化することが、本来的なアゾール耐性を有するC.krusei、又更にはアゾール耐性を有するのC.glabrata又はC.albicansの様な真菌病原体の頻発を増やすことに繋がるということを示唆している。Maenzaら(上記)、Beezholdらの「Clin.Infect.Dis.24:704-706」(1997年)、Fridkinらの「Clin.Microbiol.Rev.9:499-511」(1996年)、Johnsonらの「J.Antimicrob.Chemother,35:103-114」(1995年)。
【0008】
この不吉な傾向に続いて、1998年の50個の米国医療センターの多センター研究からのデータは、院内患者の血流とは関わり無いC.albicansの10%が、抗真菌剤フルコナゾールに耐性を持っていたことを示している。Pfallerらの「Diagn.Microbiol.Infect.Dis.31:327-332」(1998年)。耐性率は、米国の区域によって、5%から15%であり、アゾール使用量の様な局所的な要因が、アゾール耐性のC.albicans感染の相対的頻度において役割を果たしていることを示唆している。
【0009】
皮膚を冒すカンジダとして知られている感染実体は、特別の関心事である。これらのカンジダ感染は、皮膚に関わっており、身体の殆どの皮膚表面を占めることもある。しかしながら、最もしばしば発症するのは、温かく、湿っており、又は折り畳む領域(例えば、腋の下と股間)である。皮膚を冒すカンジダは、非常に一般的である。Huangらの「Dermatol.Ther.17(6):517-22」(2004年)。カンジダは、おむつかぶれの最も一般的な原因であり、おむつの内側の温暖湿潤状態を利用する。これらの感染を引き起こす最も一般的な真菌は、カンジダアルビカンスである。Gallupらの「J.Drugs Dermatol,4(1):29-34」(2005年)。カンジダ感染は、糖尿病を患っている人及び肥満の人にも極めて一般的である。カンジダは、更に、爪甲真菌症と呼ばれる爪の感染や、口角炎と呼ばれる口部の角回りの感染を引き起こす。
【0010】
従って、記載されている文献は、これらの感染に取り組む画期的で新規な治療の必要性を予告している。
伝統的に、可視光及び近赤外線スペクトル(例えば、波長600nmから1100nm)の半導体ダイオードレーザーは、生物学的システムのメラニンとヘモグロビンに対する選択的吸収曲線を有しているので、医学、歯学、及び獣医学科学の様々な目的に使用されてきた。近赤外線光エネルギーの水中吸収は少ないので、その様な放射は、可視光又は長赤外線波長(例えば、中間赤外線及び遠赤外線)よりも遠くまで生物組織に浸透する。具体的には、近赤外線ダイオードレーザーエネルギーは、生物組織に約4センチメートル浸透することができる。それに対して、長波長の放射エネルギー(例えば、中間赤外線及び遠赤外線放射をそれぞれ生成するEr:YAG及びCO2レーザーの放射エネルギー)は、比較的高い水吸収曲線を有しており、生物組織に、僅か15から75ミクロンまでしか浸透しない(10,000ミクロン=1cm)。従って、近赤外線ダイオードレーザーからの放射を使った場合、中間赤外線波長及び遠赤外線波長を使った場合よりも、熱沈着は生物組織内の遙かに深いところに起こる。従って、深い腫瘍の切除又はレーザー熱生成微生物殺菌のためのレーザー侵入型熱治療の様な癌治療に、より効果がある。
【0011】
可視及び近赤外線ダイオードレーザーを使ってバクテリア細胞を破壊するためには、先行技術では、照射される部位に外因性の発色団が存在すること及び/又は非常に狭い治療窓と治療のための機会を必要とする。正常なヒトの体温は37℃であり、大部分のバクテリアの感染における迅速なバクテリアの成長と一致する。近赤外線ダイオードレーザーによって放射エネルギーが生物学的システムに印加されると、照射された領域の温度は、直ちに上昇し始め、10℃上昇する度に、有害な生物学的相互作用が起こる。45℃で組織は過温症になり、50℃で酵素の活動が減り、細胞が動けなくになり、60℃でプロテインとコラーゲンが変性し、凝固が始まり、80℃で細胞膜が透過性になり、100℃で水と生物学的物質が蒸発する。80℃以上の温度が相当時間続くと(局所的な部位で5から10秒)、健康な細胞が不可逆的に害されることになる。
【0012】
近赤外線レーザーエネルギーによるバクテリアの光熱分解(熱誘発分解)には、先行技術では、哺乳類の細胞を危うくするような相当の温度上昇が必要である。しかしながら、哺乳類の細胞を不可逆的に熱損傷させることなく、バクテリアを熱によって破壊することが望ましい場合も多い。ダイオードレーザーは、先行技術では、可視レーザーエネルギー(400nmから700nm)を使ってバクテリアを破壊するのに用いられてきた。外因性の発色団をバクテリア部位へ印加することが、可視放射による光線力学療法には必要であった。先行技術では、光線力学によるバクテリアの不活性化は、外因性の発色団が原核(微生物)細胞に加えられ、その後、適切な光又はレーザー源によって照射されるときに実現される。外因性の発色団に連結されている可視波長により活性酸素種を生成することによってバクテリアを選択的に破壊する努力を見ると、先行技術の文献では、2つの研究が際立っている(例えば、Gibsonらの「Clin.Infect.Dis.,(16)Suppl 4:S411-3」(1993年)と、Wilsonらの「Oral Microb.Immunol.Jun;8(3):182-7」(1993年)及びWilsonらの「J.Oral.Pathol.Med.Sep;22(8):354-7」(1993年)。
【特許文献1】米国特許第4,755,534号明細書
【特許文献2】米国特許第6,121,314号明細書
【特許文献3】米国特許第4,680,291号明細書
【特許文献4】米国特許第5,681,849号明細書
【特許文献5】米国特許第5,856,355号明細書
【特許文献6】米国特許第6,005,001号明細書
【特許文献7】米国特許第5,633,015号明細書
【特許文献8】米国特許第4,727,064号明細書
【特許文献9】米国特許第5,707,975号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、物哺乳類の細胞への損傷を最小にしながら微生物の成長を抑えるための改良された理学療法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示は、生物学的汚染物質以外の生物学的部分(例えば、哺乳類の組織、細胞、又はプロテイン標本の様な生物化学的実体/標本)に許容できないリスク及び/又は許容できない悪影響を及ぼすこと無く、生物学的汚染物質を選択的に標的とする方法、システム及び機器を提供することである。
【0015】
本開示は、先行技術に記載されている典型的な方法(例えば、生育能力の損失又は熱分解)に関係付けられた、標的とする生物学的汚染物質以外の生物学的部分に許容できないリスク及び/又は許容できない悪影響を及ぼすこと無く、生物学的汚染物質を弱めることができる或る波長及び線量の近赤外線放射エネルギーを印加する方法、システム及び機器を提供する。本開示の方法、システム、及び機器を、以後、時には、略してNIMELS(即ち、近赤外線微生物除去レーザーシステム)と呼ぶ。
【0016】
第1の態様では、本開示は、標的部位を、所望の波長、出力密度レベル、及び/又はエネルギー密度レベルを有する光学的放射で照射することによって、所与の標的部位の中の又は所与の標的部位にある標的とする生物学的汚染物質以外の生物学的部分(例えば、哺乳動物の組織、細胞、又はプロテイン標本の様な或る生物化学標本)に許容できないリスク及び/又は許容できない悪影響を及ぼすこと無く、標的部位の生物学的汚染物質のレベルを下げる方法を提供する。或る実施形態では、その様な印加される光学的放射は、ここに記載されている様に、NIMELS線量で、約850nmから約900nmの波長を有している。代表的な実施形態では、約865nmから約875nmの波長が用いられている。別の実施形態では、その様な印加される放射は、NIMELS線量で約905nmから約945nmの波長を有している。或る実施形態では、その様な印加される光学的放射は、NIMELS線量で約925nmから約935nmの波長を有している。限定するわけではないが、以後例示する代表的な実施形態では、利用されている波長は930nmである。本開示により治療、低減、及び/又は除去される生物学的汚染物質には、例えば、バクテリア、真菌、カビ菌、マイコプラズマ、原生動物、プリオン、寄生生物、ウイルス、及びウイルス病原体の様な微生物が含まれる。以下に述べる代表的な実施形態は、それぞれ870nmと930nmで括られる範囲の波長を採用している。
【0017】
第2の態様では、本開示は、標的部位を(a)約850nmから約900nmの波長を有する光学的放射、及び(b)約905nmから約945nmの波長を有する光学的放射によってNIMELS線量で照射することによって、所与の標的部位の中の又は所与の標的部位にある生物学的汚染物質以外の生物学的部分(例えば、哺乳動物の組織、細胞、又はプロテイン標本の様な或る種の生物化学標本)に許容できないリスク及び/又は許容できない悪影響を及ぼすこと無く、標的部位の生物学的汚染物質のレベルを下げる方法を提供する。この組み合わせ方法に関しては、以後、更に詳しく論じる様に、本開示の実施形態は、約865nmから約875nmの波長を利用する。従って、限定するわけではないが、以後例示する代表的な実施形態では、利用されている波長は870nmである。同様に、考えられる或る実施形態の他の波長範囲に関しては、光学的放射は、約925nmから約935nmの波長を有している。限定するわけではないが、以後例示する代表的な実施形態では、利用されている波長は930nmである。
【0018】
本開示のこの態様による方法では、考えられる波長範囲による照射は、独立して、順次、又は基本的に同時に(全ての技法は、パルス状及び/又は連続波、CW、オペレーションを利用する)行われる。
【0019】
第3の態様では、本開示は、本開示の第1及び第2態様の様な本開示の他の態様による方法を実施するシステムを提供する。その様なシステムは、放射を生成するためのレーザー発振器と、放射線量を計算し制御するための制御器と、放射を、印加区域を通して治療部位に送るための送出アッセンブリ(システム)と、を含むことができる。適した送出アッセンブリ/システムは、中空の導波管、光ファイバー、及び/又は自由空間/ビーム光伝送構成要素を含んでいる。適した自由空間/ビーム光伝送構成要素には、コリメータレンズ及び/又は開口絞りが含まれる。
【0020】
1つの形態では、本システムは、二重波長の近赤外線光源として機能する2つ又はそれ以上の半導体ダイオードレーザーを使用する。2つ又はそれ以上のダイオードレーザーは、代表的な実施形態では、1つのハウジング内に、制御が統一されて配置されている。2つの波長は、約850nmから900nm及び905nmから945nmの2つの範囲の放出を含んでいる。本開示のレーザー発振器は、本開示の範囲に含まれる何れかの1つの範囲で1つの波長(又はピーク値、例えば中心波長)を放出するのに用いられる。或る実施形態では、その様なレーザーは、本開示の第1及び第2の態様に関して更に詳しく説明している様に、実質的に865−875nmと925−935nmの範囲内で放射を放出するのに用いられる。ここに例示しているシステムは、本開示の可能な実施形態、例えば、実質的に870nmと930nmで放射を放出するように考案されたシステムを示すために提供されており、他の波長を作って利用してもよい。
【0021】
本開示によるシステムは、生成したい各個々の波長範囲に適した光源を含んでいる。限定するわけではないが、例えば、適した半導体レーザーダイオードか、可変超短パルスレーザー発振器か、又は(例えば、適した希土類元素で)イオンドープ処理した光ファイバー又はファイバーレーザーを使用してもよい。或る形態では、適した近赤外線レーザーは、チタンドープ処理サファイアを含んでいる。他の型式の固体状態、液体、又は気体ゲイン(活性)媒体を有するレーザー源を含め、他の適したレーザー源を本開示の範囲内で用いることができる。
【0022】
本開示の1つの実施形態によれば、治療システムは、実質的に約850nmから約900nmの第1波長範囲の光学的放射を生成するようになっている光学的放射生成装置と、光学的放射が印加区域を通して送り出されるようにするための送出アッセンブリと、印加区域を通して送られる放射線量を制御するために光学的放射生成装置に作動的に接続されている制御器と、を含んでおり、単位面積当たりの送られる放射の出力密度とエネルギー密度の時間積分値が、所定の閾値以下となるようになっている。更に、本開示のこの実施形態によれば、実質的に約865nmから約875nmの第1波長範囲の光学的放射を生成するように特別に作られている治療システムも考えられる。
【0023】
別の実施形態によれば、治療システムは、実質的に約905nmから約945nmの第2波長範囲の光学的放射を生成するように更に構成されている光放射生成装置を含んでおり、或る実施形態では、先に述べた第1波長範囲は、光放射生成装置によって、同時に又は並行して/連続して作られる。本開示のこの実施形態によれば、実質的に約925nmから約935nmの第1波長範囲の光学的放射を生成するように特別に構成されている治療システムも考えられる。
【0024】
治療システムは、更に、第2波長範囲の(第1波長範囲も利用できる)光学的放射を、印加区域を通して送り出すための送出アッセンブリ(システム)と、光学的放射生成装置を作動的に制御して、放射を、実質的に第1波長範囲か、実質的に第2波長範囲か、又はその何れかの組み合わせかで選択的に生成するための制御器と、を含んでいてもよい。
【0025】
別の実施形態によれば、治療システムの制御器は、放射線量を制御する出力制限器を含んでいる。制御器は、更に、患者のプロファイルを記憶するためのメモリと、オペレーターが入力する情報に基づいて具体的な標的部位に必要な放射線量を計算するための線量計算器を含んでいる。1つの好適な実施形態では、メモリは、更に、具体的な印加に関係付けられた、放射のパターンと放射線量の様な、異なる型式の病気と治療のプロファイルに関する情報を記憶するのにも用いられる。
【0026】
光学的放射は、治療システムから印加部位へ、異なるパターンで送られる。放射は、連続波(CW)、パルス状、又はそれぞれの組み合わせとして生成され、送出される。例えば、単一の波長パターンで、又は複数の波長(例えば、二重波長)パターンで送られる。別の例では、放射の2つの波長が、同じ治療部位に多重送信(光学的に組み合わされる)されるか、又は同時に送信される。限定するわけではないが、偏光ビームスプリッター(結合器)を使用すること、及び/又は適したミラー及び/又はレンズからの焦点合わせされた出力を重ねること、又は他の適した多重/組み合わせ技法を使用することを含めて、適した光学的組み合わせ技法を用いることができる。代わりに、放射を、2つの波長の放射が同じ治療部位に交互に送られる交互パターンで送出してもよい。2つ又はそれ以上のパルスの間隔は、本開示のNIMELS技法により、必要に応じて選択される。各治療は、これらの送信方式の何れかを組み合わせる。送出される光学的放射の強度分布は、必要に応じて選択できる。代表的な実施形態は、上部が平坦な又は実質的に上部が平坦な(例えば、台形などの)強度分布を利用する。ガウス分布の様な他の強度分布を使用してもよい。
【0027】
本開示のこの他の特徴及び利点は、以下の好適な実施形態の詳細な説明に述べられており、一部分は、説明から明らかになるか、又は、本開示の実施によって習得される。本開示のこの様な特徴及び利点は、記載している説明と特許請求の範囲に具体的に指摘されているシステム、方法、及び機器によって理解され実現されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本開示の方法、システム、及び機器をより良く理解するために、添付図面を参考にしながら以下の詳細な説明を参照されたい。
ここで言及している特許、公開出願、及び科学文献は、当業者の知識を確立するものであり、それぞれが具体的に個別に参考文献として援用すると示されているものとして、それら全体を参考文献としてここに援用する。ここに引用している参考文献と本明細書の具体的な教示の間に不一致があれば、後者を優先して解消するものとする。同様に、単語又は句の、技術的な理解の定義と、本明細書で具体的に教示されている定義の間に不一致があれば、後者を優先して解消するものとする。
【0029】
ここで用いている技法的及び科学的用語は、他に定義されていない場合は、本開示に関わる当業者に共通に理解されている意味を有する。ここでは、当業者に既知の様々な方法論及び資料に言及している。微生物学の一般的な原理について記載している基本的な参考書籍には、Jiklikらによる「Zinsser Microbiology」第20版、Appleton and Lange(Prentice Hall)、East Norwalk、コネチカット州(1992年);Greenwoodらによる「Medical Microbiology」第16版、Elsevier Science社、ニューヨーク州(2003年);Sambrookらによる「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York、ニューヨーク州(1989年);及びKaufmanらによる「Handbook of Molecular and Cellular Method in Boilogy in Medicine」CRC Press、Boca Raton、フロリダ州(1995年)が含まれる。薬理学の一般的な原理について記載している基本的な参考書籍には、GoodmanとGilmanによる「Pharmacological Basis of Therapeutics」第10版、McGraw Hill社、New York、ニューヨーク州(2001年)が含まれる。基本的な皮膚病の原理は、Habifらによる「Skin Disease, Diagnosis and Treatment」第1版、Mosby社、St. Louis、ミズーリ州(2001年)に見られる。
【0030】
本開示は、ここに論じる様に、標的の生物学的汚染物質以外の生物学的部分に対するリスクを最小にして、標的の生物学的汚染物質を弱めることができる、或る波長の近赤外線放射エネルギーを或る線量で加える方法、システム、及び機器を提供する。その様な方法と装置/システムは、例えば、当技術に述べられている伝統的な方法に伴う容認できない温度上昇を生じさせず、又はそれに頼らない。
【0031】
近赤外線放射エネルギーは、文献では、操作される細胞の生存能力を保存するのが望まれる様々な用途で生物学的物体を操作及び制御するのに用いられる光学ピンセット(Ashkinらによる「Nature330」769−771頁(1987年))として用いられてきている。多くの人が、近赤外線放射をピンセットとして使用することは、「光学療法」又は単に望ましくない細胞の損傷(例えば、定量化できる生存能力の減少と増殖によって測定される)と関係付けられると報告している(AshkinとDziedzic、Ber Bunsenges Phys.Chem.93:254−260頁(1989年))。細胞の生存能力を妨げないように光学ピンセットを最適化するという努力は、光損傷を起こす作用スペクトルは870nmと930nmで最大になるという発見に繋がった(NeumanらによるBiophy.J.77:2856−2863頁(1999年))。中国のハムスター卵巣(「CHO」)細胞(例えば、LiangらによるBiophy.J.70:1529−1533頁(1996年))の同様のデータは、原核細胞に見られる光損傷の波長依存性が真核細胞にも共有されることを研究者に信じさせることに繋がった(NeumanらによるBiophy.J.77:2856−2863頁(1999年))。従って文献の合意は、870nmと900nmで特定される最大に近いか又はこれと一致する波長を有する近赤外線放射は、原核(例えば、バクテリア)及び真核(例えば、CHO)で細胞の損傷を引き起こすということであった。
【0032】
870及び900の最大に近いか又はそれと一致する放射を使った更に厳密な研究(以後に例示される)は、標的部位(例えば、細胞)への顕著な差別的効果に関係付けられた光学パラメーター(例えば、波長、出力密度、エネルギー密度、及び照射持続時間)の解明に繋がった。その様な線量パラメーターを使えば、近赤外線放射を、標的の生物学的汚染物質に対して、他の生物学的部分には在るとしても境界部分だけに影響を限定しながら、使用することができる。容易に理解頂けるように、その様な発見は多くの有用な実際の用途を持っている。
【0033】
更に具体的には、或る線量パラメーター内では、約905nmから約945nmの範囲にある波長のエネルギーが、所与の標的部位内の標的となる生物学的汚染物質以外の生物学的部分に対する許容できないリスク及び/又は許容できない悪影響無しに、標的部位内の特定の標的となる生物学的汚染物質に特に適していることが分かっている。
【0034】
従って、第1の態様では、本開示は、約905nmから約945nmの波長を有する光学放射によって標的部位を照射することによって、所与の標的部位内の標的となる生物学的汚染物質以外(例えば、哺乳動物の組織、細胞、又はプロテイン標本の様な或る種の生物化学標本)の生物学的部分に対する許容できないリスク及び/又は許容できない悪影響無しに、標的部位内の生物学的汚染物質のレベルを下げる方法を提供する。或る実施形態では、光学放射は、約925nmから約935nmの波長を有する。限定するわけではないが、以後例示する代表的な実施形態では、利用されている波長は930nmである。標的部位には、生体内に配置されている医療装置も含まれ、それについては以下に更に詳しく述べる。
【0035】
約905nmから約945nmの波長を有する光学放射で標的部位を照射することにより得られる効果は、約865nmから約875nmの波長による少なくとも1つの光学放射を或るNIMELS線量で追加照射することによって増大することも分かっている。ここで証明されている様に、組み合わせ照射は、治療標的部位で所望の差別的効果を得るのに必要な合計のエネルギー及び密度を減らすことによって、905nmから945nmの範囲の放射の効果を更に強化する。この発見は、所望の効果を得るのに必要な905nmから930nmの範囲の放射を減らすことになるので特に重要である。結果として、この組み合わせ照射方法は、標的となる生物学的汚染物質以外の生物学的部分への許容できないリスク及び/又は許容できない悪影響を更に最小化するという付加的利点を有する。
【0036】
その様な共同作用は、標的部位が、(a)約850nmから900nmの波長と(b)約905nmから約945nmの波長という2つの波長に曝されたときに発見された。限定するわけではないが、ここに例示している或る代表的な実施形態では、NIMELS線量で、865nmから875nmの範囲の波長による照射が、925nmから935nmの範囲の波長による照射の効果を強化することが分かった。或る実施形態では、標的部位は、λ=870nmとλ=930nmの放射に曝され、付随して必要な合計のエネルギー及び密度は低減された。
【0037】
先に述べたNIMELS波長(例えば、850nmから900nmと、905nmから945nm)は、標的部位を単独で、連続して、及び/又は基本的に同時に照射するのに用いられる。
【0038】
ここで用いる「生物学的汚染物質のレベルを下げる」という表現は、本開示によって治療される標的部位に見られる少なくとも1つの活性生物学的汚染物質のレベルの低下を意味するものである。経験的に、生物学的汚染物質のレベルの低下は、標的部位の生物学的汚染物質の生存能力の低下として定量化できる(例えば、問題の生物学的汚染物質の生存能力及び/又はその成長し及び/又は分割する能力を阻止することによって)。当業者には理解頂けるように、「生物学的汚染物質のレベルの低下」という表現は、あらゆる低下を包含し、100%の低下である必要はない。或る実施形態では、実際に、所与の生物学的汚染物質生存能力は、他の事象を行うことができる(例えば、患者の免疫システムが所与の感染に反応できるようになるか、又は、所与の感染に取り組むため、他の汚染物質治療、例えば全身的な抗生物質治療を行うことができる)程度に部分的に下げられるだけである。或る例では、所与の生物学的汚染物質の、抗菌剤に対する感受性は、本開示による治療後に増していることが分かっている。具体的な実施形態では、MRSA菌株は、本開示による治療の結果として、抗生物質に対してより敏感になることが分かっている(データを示さず)。
【0039】
ここで用いる「生物学的汚染物質」という用語は、標的部位と直接又は間接的に接触すると、標的部位(例えば、患者の感染した組織又は器官)に、或いは、哺乳動物の場合は標的部位付近(例えば、受容体内に移植された細胞、組織、又は器官の場合、或いは、患者に用いられる装置の場合)に、望ましくない及び/又は有害な影響を及ぼす能力のある汚染物質を意味するものである。本開示による生物学的汚染物質は、例えば、当業者には既知で、本発明による標的部位に一般的に見られるような、バクテリア、菌類、カビ菌、マイコプラズマ、原生動物、プリオン、寄生生物、ウイルス、及びウイルス病原体の様な微生物である。当業者には理解頂けるように、本開示の方法及びシステム/装置は、文献(例えば、Joklikら(上記)とGreenwood(上記)参照)で広く知られている様々な生物学的汚染物質と結び付けて用いることができる。以下のリストは、本開示の方法及び装置/システムにより標的となる広範な微生物を示すために提供しているだけであり、本開示の適用範囲を何らも制限するものではない。
【0040】
従って、限定するわけではなく例示的な生物学的汚染物質の例には、例えば、大腸菌、腸内菌、バチルス、カンピロバクター、コリネバクテリア、クレブシエラ菌、トレポネーマ、ビブリオ、連鎖球菌、及びブドウ球菌の様なあらゆるバクテリアが含まれる。
【0041】
更に説明すると、考えられる生物学的汚染物質には、例えば、カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカス、各種皮膚糸状菌(例えば、白癬菌、小胞子菌属、及び表皮菌)、コクシジオイデス属、ヒストプラズマ抗体、ブラストミセス属の様な真菌が含まれる。トリパノソーマ及びマラリア性寄生生物の様な寄生生物も、標的となる生物学的汚染物質であり、プラスモジウム種、並びに、カビ菌、マイコプラズマ、プリオン、及びヒトの免疫不全ウイルス及び他のレトロウイルス、ヘルペスウイルス、パルボウイルス、フィロウイルス、circoウィルス、パラミクソウイルス、サイトメガロウイルス、肝炎ウイルス(B型肝炎とC型肝炎を含む)、ポックスウイルス、トーガウイルス、エプスタインバーウイルス、及びパルボウイルスの様なウィルスが含まれる。
【0042】
理解頂けるように、照射される標的部位が生物学的汚染物質に既に感染している必要はない。実際、本開示の方法は、感染前に(例えば、それを予防するために)「予防的に」用いることができる。代表的な実施形態は、カテーテル、人口関節などの医療装置に用いることができる。
【0043】
或る例では、照射は、一時的緩和であると同時に予防である。従って、本開示の方法は、感染の症状を治療又は緩和するために、1つ又は複数の組織を治療上効果的な量の時間だけ照射するのに用いられる。「治療又は緩和する」という表現は、本発明により治療されている各個人の症状を、その様な治療を受けない人の症状と比べて、軽減し、予防し、及び/又は反転させることを意味する。
【0044】
開業医には理解頂けるように、ここに述べている方法は、その後の治療を決めるために、熟練開業医(外科医又は獣医)による継続的な臨床評価と合わせて用いられるべきものである。従って、治療後に、開業医は、標準的な方法論に従って、基礎的な状態の治療における改善について評価することになる。その様な評価は、具体的な一回分の治療用放射線量、照射方式、及び補助的な治療などを増減又は継続させるかどうかを決める際の助けになり情報を提供する。
【0045】
本開示の説明で論じる際の「標的部位」という用語は、生物学的汚染物質によって汚染される可能性のある全ての細胞、組織、器官、物体、又は溶液を指す。従って、標的部位は、哺乳動物に危険を課す生物学的汚染物質に感染しているか、感染する虞のある哺乳動物の細胞、組織、又は器官、例えば(生体内に)移植されている医療装置を取り囲む組織である。或いは、標的部位は、哺乳動物の標的部位付近(例えば、受容体の哺乳動物に移植された細胞、組織、又は器官の場合、或いは、哺乳動物に用いられる装置の場合)に危険を課す生物学的汚染物質に感染しているか、感染する虞のある哺乳動物の細胞、組織、又は器官であってもよい。その様な哺乳動物の中で最も重要な位置を占めるのがヒトであるが、本開示は、それに限定されるものではなく、獣医も使用できる。従って、本開示によれば、「哺乳動物」又は「必要としている哺乳動物」又は「患者」には、ヒト、並びにヒトでない哺乳動物、具体的には、限定するわけではないがネコ、イヌ、及びウマを含む家畜が含まれる。標的部位には、カテーテル、ステント、人工関節などの医療装置も含まれる。
【0046】
当業者には理解頂けるように、本開示は、あらゆる微生物、真菌、及びウイルス感染によって引き起こされるか、それらに関連する様々な病気に関して有用である(一般的には、Harrisonの「Principles of Internal Medicine」第13版、McGraw Hill、ニューヨーク(1994年)参照)。或る実施形態では、本開示による方法とシステムは、既知の抗菌剤組成物の投与により感染を治療する、当該技術で行われている典型的治療方法(例えば、GoodmanとGilman(上記)参照)と並行して用いられる。「抗菌組成物」、「抗菌剤」という用語は、動物又は人間に投与され、微生物感染の増殖を抑える化合物(例えば、抗バクテリア、抗真菌、及び抗ウイルス)とその組み合わせを指す。
【0047】
考えられる広範な用途には、幾つか挙げるとすれば、例えば、様々な皮膚病、足病、小児科、及び全般的な医学が含まれる。
多血症皮膚病の状態は、本開示の方法、装置/システムによって治療することができる(例えば、Habifら(上記)参照)。リストに挙げられている具体的な感染症に束ねようとしなくても、本開示は、例えば、紅色陰癬、腋の下の部分の毛髪糸状菌症、及びあばた状になった表皮剥離を引き起こすコリネバクテリア感染と、膿痂疹、膿瘡、及び毛嚢炎を引きおこするブドウ球菌感染と、膿痂疹及び丹毒を引き起こす連鎖球菌感染を治療するのに用いられる。紅色陰癬は、間擦空間に普通に生じるコリネバクテリアによって引き起こされる表在性の皮膚感染である。膿痂疹は、子どもに一般的な感染であるが、成人も発症する。それは、一般的に、ブドウ球菌アウレウス又は連鎖球菌のどちらかによって引き起こされる。膿瘡は、糖尿病を上手く制御できていない患者の様な衰弱した人に発症し、一般的に、膿痂疹を引き起こすのと同じ有機体によって引き起こされる。毛嚢炎の患者は、毛の根元、具体的には頭皮、背中、脚、及び腕に黄色っぽい膿疱が現れる。フルンケル(furuncles)又はせつ(boils)は、毛嚢炎のもっと激しい形態である。丹毒は、罹患領域に、赤斑、痛み、及び腫れが急に現れる。病気は、β溶血性連鎖球菌によって引き起こされると考えられており、例えば、Truebらの「Pediatr Dermato 1994、11、35-8」(1994年)と、Truboらの「Patient Care 31(6)、78-94」(1997年)と、Chartierらの「Int.J.Dermatol 35、779-81」(1996年)と、Erikssonらの「Clin.Infect.Dis.23、1091-8」(1996年)とを参照されたい。
【0048】
同様に、真菌と酵母菌が皮膚の組織に感染すると、本開示が取り組んでいる様々な状況(皮膚真菌症)を引き起こすが、その中には、例えば、頭部白癬、須毛白癬、股部白癬、手白癬、足白癬、及び爪白癬が含まれる(先に論じた爪甲真菌症参照)(Ansariらの「Lower Extremity Wounds 4(2)、74-87」(2005年)、Zaiasらの「J.Fam.Pract 42、513-8」(1996年))、Draleらの「J.Am.Acad.Dermatol 34(2 Pt 1)、282-6」(1996年)、Grahamらの「J.Am.Acad.Dermatol 34(2 Pt 1)、287-9」(1996年)、Egawaらの「Skin Research and Tech.12、126-132」(2005年)、Hayの「Dermatol Clin.14、113-24」(1996年)参照)。カンジダ症病原体が基になっている感染症は、一般的に、皮膚が折り重なる部分やオムツの領域の様な湿潤な領域に起こる。木の破片又は棘によって引き起こされる皮膚の傷は、スポロトリクム病になる(Kovacsらの「Postgrad Med 98(6)、61-2、68-9、73-5」(1995年)参照)。カンジダ症白体及び白癬菌、表皮糸状菌属、小胞子菌属、Aspargillum、及びマラセジア種は、一般的な感染有機体である(Masri-Fridlingの「Dermatol Clin.14、33-40」(1996年)参照)。
【0049】
HPV(ヒトの乳頭腫ウイルス)も皮膚感染を引き起こし、臨床的には、感染した表面とその相対的な水分次第で、異なる型式のいぼとして現れる。一般的に発症するいぼは、一般的ないぼ、足裏のいぼ、幼児のいぼ、及びコンジロームを含んでいる。いぼに関する標準的な定番の効果的な治療法で、示すようなものは無い(Sterlingの「Practitioner 239、44-7」(1995年))。
【0050】
以下に例示する様に、本開示は、爪甲真菌症、即ち、手又は足の爪甲の病気(例えば、真菌感染)の治療に用いられる。ここで「爪」と言う際には、爪甲(爪の角状の小さな外層、即ち爪の目に見える部分である爪角質層)と、爪床(爪甲の下の表皮が改質された領域であり、爪甲は成長するにつれその上を滑る)と、小皮(爪甲に重なっており、爪の基部を縁取っている組織)と、爪郭(皮膚は、そのフレームを折り重ね、爪を3つの側面で支える)と、半月(爪の基部の白い半月)と、基質(小皮の下の、爪の隠れた部分)と、下爪皮(爪の自由遠位端の下の厚い表皮)及び爪母基と、を含む爪複合体の内の1つ、数個、又は全部を指すことが含まれる。爪は、基質から成長する。爪は、多くが、ケラチン、硬化プロテインから成っている(皮膚と髪にもある)。新しい細胞が基質内で成長すると、古い細胞は押し出され、小さくなり、馴染みのある指爪又は足爪の平たくて固い形態になる。
【0051】
爪の真菌症は、3族の皮膚糸状菌、即ち、白癬菌、小胞子菌属、表皮菌と、イーストカンジダ(その主要なものはC.白体)、及び/又はスコプラリオプシスbrevicaulis、フサリウム種、アスペルギルス種、アルテルナリア属、アクレモニウム属、Scytalidinum dimidiatum(Hendersonula toruloides)、Scytalidinium hyalinumによって引き起こされる。爪甲真菌症は、1つ又はそれ以上の足爪及び/又は手爪に影響を及ぼし、足の親指又は足の小指を冒すことが最も多い。それは、横方向の爪甲真菌症(白色又は黄色の不透明な縞が爪の片側に現れる)、爪下角化症(爪の下で鱗化が起こる)、及び遠位の爪甲剥離症(爪の端部が上向きに上がる)の様な1つ又は幾つかの異なるパターンで現れる。一般的な臨床の所見には、自由端の崩れ(例えば、表在性の白い爪甲真菌症)、爪甲の上部に現れる薄片状の白いまだらとくぼみ(例えば、近位の爪甲真菌症)、半月(半月部)に現れる黄色斑点、及び爪の完全崩壊が含まれる(SehgalとJainの「Inter.J.of Dermatol 44、241-249」(2000年)、Hayの「JEADV 19(Suppl. 1.)、1-7」(2005年)、Warshawらの「Inter.J.of Dermatol 44、785-788」(2005年)、Sigureirssonらの「J.of Dermatol. Treatment 17、38-44」(2006年)、Rodgersらの「Amer.Fam.Phys.(
1207113406093_0.html
参照)」、Lateurの「J.of Cosmet.Dermatol 5、171-177」(2006年))。
【0052】
容易に理解頂けるように、本開示による治療は、爪甲真菌症と体部白癬に関係する多くの既知の臨床事象に取り組む理学療法も提供する。爪甲真菌症に罹患している多くの患者に効果的な治療法が無いことは、患者の生活の質に大きく影響し、心理的にも心理社会的にも憂慮すべき結果に繋がっている(例えば、Elewskiらの「Inter.J.of Dermatol 36、754-756」(1997年))。本開示による治療は、従って、これらの病気が、自体のイメージ及び生活の質全体に関して有している、文献で認識されている強い影響からの、強く必要とされている解放を提供する。
【0053】
文献中の報告も、真菌感染(例えば、爪甲真菌症)は、例えば、急性バクテリア小胞炎の様なバクテリア組織感染のリスク要因であることを立証している(例えば、Roujeauらの「Dermatology 209、301-307」(2004年)参照)。ここで述べている真菌感染の治療は、従って、二次的又は付随する感染を食い止める新しい方法を提供する。
【0054】
糖尿病患者の爪甲真菌症と体部白癬が深刻であれば、感染、特にバクテリア種感染に繋がり、それは、糖尿病患者の二次感染に対する罹り易さと性向を全体として考えれば、生命を脅かす問題になる(例えば、Richの「J.Am.Acad.Dermatol 35、S10-12」(1996年)参照)。ブリットル型糖尿病の患者では、再発性カンジダ症は、カンジダ敗血症になり、最終的に、カンジダ爪周囲炎になり、更に、長期の爪甲真菌症から爪ジストロフィを併発する(例えば、Millikanらの「Int.J.Dermatol 38(2)、13-16」(1999年)参照)。
【0055】
病原体に慢性的に感染している多くの爪は、慢性又は急性の爪周囲炎を患うことが多い(例えば、Rockswellの「American Med.Physic. 63(6)、1113-1116」(2001年)と、Groverらの「Dermatol Surg. 32、393-399」(2006年)参照)。慢性の爪周囲炎は、局所化された、爪周囲部(爪に隣接する表皮)の表皮性の感染である。爪周囲炎感染は、近位側爪郭のシール部と爪甲の間に、器官に侵入するための侵入門となる壊裂が生じたときに発症する。慢性の爪周囲炎は、一般に、非化膿性であり、治療の難しい病気である。慢性の爪周囲炎は、通例、腫れた赤みのある柔らかい湿潤性の爪郭を引き起こし、病気の兆候は6週間以上現れ、長期の爪甲真菌症を伴う。これらの場合に病気を引き起こしている病原体は、通常、カンジダ種である。
【0056】
幾つかの実施形態によれば、本開示の方法及び装置/システムは、薬学的活性化合物及び/又は薬学的活性化合物が入った組成物の投与と組合わせて用いられる。その様な投与は、全身的又は局部的である。全身(例えば、経口的又は非経口的投与)又は局部(例えば、膏薬、クリーム、スプレー、ジェル、ローション、及びペースト)に適した様々なその様な抗真菌性の薬学的活性化合物と組成物は、当技術では既知である(例えば、米国特許第4,755,534号、第6,121,314号、第4,680,291号、第5,681,849号、第5,856,355号、第6,005,001号に記載されているテルビナフィンと、イトラコナゾール(例えば、米国特許第5,633,015号、第4,727,064号、第5,707,975号参照))。
【0057】
以下に示す様に、抗生物質耐性菌は、本開示の方法によって効果的に治療できることが分かっている。更に、本開示の方法は、効果的な治療方法と組み合わせて、それらの代わりに、又はそれに続けて用いて、伝統的な方法を増強するのに用いられることも分かっている。従って、本開示は、抗生物質による治療と組み合わせてもよい。「抗生物質」という用語には、限定するわけではないが、βラクタムペニシリンとセファロスポリン、バンコマイシン、バシトラシン、マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン)、ケトリデス(テリトロマイシン)、リンコサミド(クリンドマイシン)、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、アミノグリコシド系(ゲンタマイシン)、アンホテリシン、セファゾリン、クリンダマイシン、ムピロシン、スルホンアミドとトリメトプリム、リファンピシン、メトロニダゾール、キノロン、ノボビオシン、ポリミキシン、オキサゾリジノン類(例えば、リネゾリド)、グリシルシクリン(例えば、チゲシクリン)、環式リポペプチド(例えば、ダプトマイシン)、pleuromutilins(例えば、retapamulin)とグラミシジンなど及び何らかの塩又はその変異体が含まれる。更に、テトラサイクリンは、限定するわけではないが、免疫サイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、及びミノサイクリンなどを含んでいることも本開示の範囲内にあると理解されたい。更に、アミノグリコシド抗生物質が、限定するわけではないが、ゲンタマイシン、アミカシン、及びネオマイシンなどを含んでいることも本開示の範囲内にあると理解されたい。
【0058】
ここで述べている本方法、装置、及びシステムと結び付けて考えられる微生物感染治療に対する他の既知の方法には、適した医療用品の使用も含まれる。ここで用いる「医療用品」という用語は、ヒト又は動物の皮膚又は内臓の病気の又は傷の部分を覆い、保護し、又は支持するあらゆる物を指す。用品は、限定するわけではないが、ガーゼ、無菌ガーゼ、又は吸収性脱脂綿の様な吸収性用品と、感染の発症を遅らせるか防止するための消毒液を含浸している消毒用品と、当業者には既知の何れかの手段で殺菌され、用品を開いている傷口の上に配置することができないようにすることのない乾燥ガーゼ、乾燥吸収性脱脂綿、又は他の乾燥材を含む乾燥用品と、である。本開示が理解している医療用品には、更に、感染している傷口又は傷に貼り付かない非接着性用品と、身体の感染部への更なる傷又は感染を防ぐための保護用品と、感染部位に当てられる前に湿らされる湿潤用品と、が含まれる。「医療用品」という用語は、更に、中に本開示による抗菌性組成物が溶けている、ビタミンEの様なオイルベースの支持材を含んでいる。例えば、ビタミンEの様なオイルベースは、更なる微生物感染に対するバリヤを形成し、抗菌性組成物を濾過して損傷した組織に滲出させる。
【0059】
或る例では、本開示の方法、装置、及びシステムは、基本的に「微生物の無い」の所与の製品を滅菌/殺菌又は維持するのに用いられる。従って、標的部位は、例えば、医療装置(例えば、カテーテル又はステント)、人工器官装置(例えば、人工関節)の様な物体であってもよい。
【0060】
内在型医療装置上のバイオフィルムは、グラム陽性又はグラム陰性のバクテリア又は真菌の集団を含んでいることもある。医療用装置のバイオフィルム内で遭遇するグラム陽性の有機体は、E.faecalis、S.aureus、S.epidermidis、及びS.viridansである。遭遇するグラム陰性バクテリアは、E.coli、K.pneumoniae、Proteus mirabilis、及びP.aeruginosaである。これらのバクテリアは、一般に、患者又は医療従事者の皮膚、入口が曝される生水、又は患者自身の腰掛の様な環境内の他のソースに由来する。
【0061】
バクテリアバイオフィルムは、細菌が(カテーテルの内側ルーメンの様な)湿った表面に不可逆的に接着するときに成長し、接着を支援する細胞外ポリマーを作り出し、コロニーに構造的基質を提供する。バイオフィルムが形成している表面は、不活性で生きていない材料のことも、生きている組織のこともある。バイオフィルム内の細菌は、成長率と、抗菌治療に抵抗する能力に関してプランクトン(自由に県濁している)バクテリアとは異なる挙動をするので、結果として、大きな医療及び公衆衛生上の問題を生じる。本開示は、プランクトンバクテリアが、医療装置の表面に付着しないようにするので、微生物バイオフィルムの形成を防ぐことができる。
【0062】
汚染した内在型医療装置にバイオフィルムが出来ているか否かを立証する助けとなる変数は多数ある。1つの要因は、露出時間が長く、結果的にバクテリア又は真菌が不可逆的に取り付く場合に、バクテリア又は真菌が、装置の露出表面に付着することである。問題の一例として、尿のカテーテル(管状のラテックス又はシリコン製の装置)は、挿入されていれば、カテーテルの内側又は外側表面にバイオフィルムが容易にできる。一般的にこれらの装置を汚染し、バイオフィルムを作り出す有機体は、S.epidermidis、E.faecalis、E.coli、P. mirabilis、P.aeruginosa、K.pneumoniae、及び他のグラム陰性有機体である。尿のカテーテルが適所に長く留まるほど、これらの有機体がバイオフィルムを発展させる傾向が大きくなり、尿路が感染することになり、大きな医療問題である。
【0063】
先行技術は、カテーテル内にバイオフィルムが生じるのを防ぐ多数の方法を示唆している。従来の方法は、移植中に綿密な無菌技法を使用し、挿入部位には局所的な抗生物質を使用する段階と、カテーテル挿入の持続時間を最小にする段階と、静脈内流体にインラインフィルターを利用する段階と、カテーテルを手術によって移植されたカフに取り付けることによって有機体の流れ込みを防ぐ機械的なバリヤを作る段階と、カテーテルの内側ルーメンに抗菌剤を塗布することを試みる段階と、を含んでいる。しかしながら、先行技術の方法の何れも、望むように効果的には作用しない。
【0064】
従って、本開示による方法、システム、及び機器は、バイオフィルムの形成を防ぐために、例えば、中心静脈カテーテルと無針コネクタ、気管内チューブ、腹膜透析カテーテル、中耳腔換気用チューブ、及び尿カテーテルの様な内在型医療装置と共に用いられる。
【0065】
本開示の実施形態は、更に、生物学的汚染物質(例えば、生物化学的又は調剤用溶液)に感染しているか、又は感染する虞のある生物化学的又は化学的材料を処置するのにも用いられる。哺乳動物に用いられる標本(例えば、免疫グロブリン標本)を作るのに用いられる当技術における殆どの方法は、病原体(即ち、生物学的汚染物質)により作り出されたものに汚染されている結果となる。例えば、単クローン性の免疫グロブリン標本は、3つの一般的な方法の内の1つで作られる。第1の方法は、細胞培養システム内での生成を伴い、第2の方法は、単クローン性の免疫グロブリンを作るための一時的なバイオリアクターとして動物を使用し、第3の方法は、所望の単クローン性の免疫グロブリンの遺伝子を、動物の中へと、単クローン性の免疫グロブリンの連続生成を誘発するようなやり方で動物の流体又は組織の中に挿入して連続して収穫できるようにする(移植遺伝子による生成)段階を伴う。第1方法の関係では、単クローン性の免疫グロブリンを生成する細胞は、培養システムで作られた未検出ウイルスを隠しているかもしれない。残る2つの方法には、単クローン性免疫グロブリン生成細胞の宿主か、又は、単クローン性免疫グロブリン製品自体を製造するバイオリアクターのどちらかとして働く動物の使用が含まれる。明らかに、これらの製品は、感染しているか、又は宿主の動物に匿われている病原体よる汚染の危険に直面する。その様な病原体には、中でも、ウイルス、バクテリア、イースト、カビ菌、マイコプラズマ、及び寄生生物が含まれる。結果的に、単クローン性免疫グロブリン製品内の何れの生物活性汚染物質も、製品が用いられるまで活性化しないことが重要である。これは、製品が直接患者に投与される場合は特に重要である。これは、様々な型式のプラズマが入っており、マイコプラズマ又は他のウイルス汚染物質の影響を受ける様々な単クローン性免疫グロブリン製品にとっても重要である。
【0066】
ヒトと動物に由来する両方の生物学に関わるウイルスの中でも、関心事の最小のウイルスは、パルボウイルスと、僅かに大きいプロテイン被覆肝炎ウイルスの一族に属する。ヒトでは、パルボウイルスB19とA型肝炎、並びにHIV、CMV、B型及びC型肝炎などの様な大きくて頑強性の低いウイルスが、薬剤の関心事である。ブタ由来の製品と組織では、最小の相当するウイルスは、ブタのパルボウイルスである。
【0067】
治療されている標的部位と付与されるエネルギーの間の相互作用は、波長、標的部位の化学的及び物理的特性、ビームの出力密度又は放射照度、連続波(CW)又はパルス状放射の何れが用いられているか、レーザービームのスポットサイズ、曝露時間、エネルギー密度、及びこれらのパラメーターの何れかによるレーザー放射の結果として起こる標的部位の物理的特性の何らかの変化、を含む多数のパラメーターによって決まる。更に、標的部位の物理的特性(例えば、吸収及び散乱係数、散乱異方性、熱伝導性、熱容量、及び機械的強度)も、全体的な効果と結果に影響を与える。
【0068】
「NIMELS線量」という用語は、本開示による問題の波長が、標的部位の生物学的汚染物質のレベルを、生物学的汚染物質以外の生物学的部分(例えば、哺乳動物の細胞、組織、又は器官)に許容できないリスク及び/又は許容できない副作用をもたらすこと無く下げることができる出力密度(W/cm2)とエネルギー密度(J/cm2)値を指す(ここで、1ワット=毎秒1ジュールである)。
【0069】
図1に示している様に(Boulnoisの「Lasers Med.Sci.1、47-66」(1986年)からその一部を複製)、出力密度(放射照度とも呼ばれる)及び/又はエネルギーが低いと、レーザーと組織の相互作用は、純粋に光学(光化学)として説明できるが、出力密度が高いと、光熱相互作用が続いて起こる。以下に例示する或る実施形態では、NIMELS線量パラメーターは、既知の光化学パラメーターと光熱パラメーターの間の(図1参照)、一般に外因性の薬品、染料、及び/又は発色団と組み合わせて光力学治療に伝統的に用いられている領域内にある。
【0070】
図1に示している様に、相互作用に依って、フルエンス、即ち粒子又は照射束と時間の積(又は積分)としもて表すことのできる当技術における医療レーザー印加のエネルギー密度は、通常、1J/cm2から10,000J/cm2(5等級)まで変化し、一方、出力密度(放射照度)は、1x10−3W/cm2から1x1012W/cm2(15等級)まで変化する。出力密度と照射曝露時間の相関関係を見ると、意図する特定のレーザーと組織の相互作用に対して、ほぼ同じエネルギー密度が必要であることが観察される。従って、レーザー曝露持続時間(照射時間)が、レーザーと組織の相互作用の性質と安全性を決める主要なパラメーターである。例えば、生体内での組織の熱蒸発(非切除)を、或る特定の治療に対する選択肢であるレーザーと組織の相互作用として数学的に求めようとすれば(Boulnois1986年に基づいて)、1000J/cm2のエネルギー密度(図1の熱蒸発の網掛け領域内)を作るためには、以下の線量パラメーターの何れも使用できることが分かる。
表1:Boulnois表に基づいて導き出した値の例
【0071】
【表1】
【0072】
この経緯は、組織内の生物学的汚染物質に対するNIMELS相互作用に用いられる適した方法/技法又は基本アルゴリズムを示している。つまり、この数学的な関係は、レーザーと組織の相互作用現象を実現するための相関関係である。この論理は、エネルギー密度、時間、及び出力のパラメーターにNIMELS実験データを挿入したNIMELSエネルギーにより付与される(実験を通して)観察される抗菌現象の線量を計算するための基本として用いられる。
【0073】
照射される標的部位における具体的な相互作用(標的部位の化学的及び物理的特性、連続波(CW)又はパルス状放射の何れが用いられているかということ、レーザービームのスポットサイズ、及び、これらのパラメーターの何れかによるレーザー照射の結果として起こる標的部位の物理的特性、例えば、吸収と錯乱係数、錯乱異方性、熱伝導性、熱容量、及び機械的強度、の何らかの変化)に基づいて、開業医は、出力密度と時間を調整し、所望のエネルギー密度を得ることができる。
【0074】
ここに提供されている例は、生体外治療と生体内治療の両方の関連でその様な関係を示している。従って、爪甲真菌症の治療の関係では、1−4cmの直径を有するスポットサイズでは、出力密度値は、約0.5W/cm2から5W/cm2まで変化させても、十分に「変性」及び「組織の過熱」レベル以下に収まる、安全で、無損傷/低損傷の熱的なレーザーと組織の相互作用の範囲内に留まった。他の適したスポットサイズを用いてもよい。
【0075】
この相関関係では、これらの波長とのNIMELS相互作用に必要な閾値エネルギー密度は、所望のエネルギーが送られる限り、スポットサイズに関係なく維持される。代表的な実施形態では、光エネルギーは、均一な幾何学的分布によって組織に送られる(例えば、平坦な上部又はシルクハット状の経緯)。その様な技法(論理)留意すれば、NIMEL効果を作り出すのに十分な適したNIMEL線量を、生物学的汚染物質のレベルを下げるのに必要で且つ「変性」及び「組織の過熱」のレベル以下に収まる、閾値エネルギー密度に到達するように計算することができる。
【0076】
ここに例示されている、生体内の標的微生物に対するNIMELS線量は、約100から700秒間に亘る200J/cm2−700J/cm2だった。これらの出力値は、光切除又は光熱(レーザー/組織)相互作用に関係する出力値とは程遠い。
【0077】
平行レーザービームの強度分布は、ビームの出力密度によって与えられ、レーザー出力対円形面積(cm2)の割合として定義される。図12Aと図12Cに示している様に、入射ガウスビームパターンの面積が1.77cm2の1.5cmの照射スポットの照明パターンは、1.77cm2の照射面積内に少なくとも6つの異なる出力密度値を作る。これらの変化する出力密度は、スポットの表面積に亘る強度(又は出力の集中度)を、(外側周辺の)1から中心位置の6まで増大させる。本開示の或る実施形態では、伝統的なレーザービームの放出に付帯するこの本来的なエラーを克服するビームパターンが提供されている。図12Bと図12Dは、照射領域内でより一定した出力エネルギー値を得るために、本開示の或る実施形態に用いられている均一なエネルギー分布(先に述べた「上部が平坦」なパターン)を示している。
【0078】
図12Bと図12Dに示している様に、代表的な実施形態では、NIMELSレーザーシステムは、広い領域を均一なパターン(上部が平坦又は2π角段階強度分布)で照らすだけで、このエラーを補正し、エネルギーの三次元の分布パターン内に、組織をスポットの中心部で燃焼させるか又は二次的治療エネルギー密度を周辺に有することによって治療に否定的に干渉することになりかねない「高温スポット」又は「低温スポット」が無いか、又は最小となることを保証する。他の実施形態は、実質的に上部が平坦な、例えば、台形、ガウス分布、又は他の適切な強度分布を利用してもよい。
【0079】
代わりに、NIMELSパラメーターを治療時間(Tn)の関数として、以下の様に計算してもよい:Tn=エネルギー密度/出力密度。
或る実施形態では(例えば、ここに例示されている生体外実験を参照)、Tnは、約50から約300秒であり、別の実施形態では、Tnは、約75から約200秒であり、更に別の実施形態では、Tnは、約100から約150秒である。他の生体内の実施形態では、Tnは、約100から約450秒である。
【0080】
ここに述べている様な上記の関係と上部が平坦な照明幾何学の様な所望の光強度分布を利用すれば、一連の生体内エネルギーパラメーターは、生体内のNIMELS微生物汚染除去治療に効果的であることが実験的に証明されている。これらは、NIMELS治療のための3ワットのレーザーエネルギーである一定のレーザー出力について、以下に示されている。所与の標的部位に対してキーとなるパラメーターは、従って、様々なスポットサイズ及び出力密度におけるNIMELS治療に必要なエネルギー密度であることが示されている。
【0081】
従って、「NIMELS線量」は、本開示による問題の波長が標的部位の生物学的汚染物質のレベルを光学的に下げることができる第1閾値ポイントから、生物学的部分に許容できないリスク又は悪影響(例えば、porationの様な熱による損傷)が検出される直前の値である第2末端ポイントまでの、出力密度及び/又はエネルギー密度の範囲を包含している。当業者には理解頂けるように、或る環境の下では、標的部位(例えば、哺乳動物の細胞、組織、又は器官)への或る種の悪影響及び/又はリスクは、本開示の方法から生じる本来的恩典の観点から許容されることもある。従って、考えられる末端ポイントは、悪影響が相当あり、従って望ましくないポイント(例えば、細胞死、プロテイン変性、DNA損傷、罹患、又は死亡)である。
【0082】
例えば生体内用途の或る実施形態では、ここで考えられている出力密度の範囲は、約0.25から約40W/cm2である。別の実施形態では、出力密度の範囲は、約0.5から約25W/cm2である。
【0083】
更に別の実施形態では、出力密度の範囲は、約0.5から約10W/cm2の値を包含している。ここで例証されている出力密度は、約0.5から約5W/cm2である。1.5から2.5W/cm2の生体内出力密度は、様々なバクテリアに有効であることが示されている。
【0084】
実験データは、生体外(例えば、プレート)に設置された生物学的汚染物質を標的とするときには、生体内(例えば、足爪)の場合よりも、高い出力密度値が一般的に用いられることを示している。
【0085】
或る実施形態(生体外の例を参照)では、ここで考えられているエネルギー密度の範囲は、50J/cm2より大きいが、約25,000J/cm2未満である。別の実施形態では、エネルギー密度の範囲は、約750J/cm2から約7,000J/cm2である。更に別の実施形態では、エネルギー密度の範囲は、生物学的汚染物質が生体外(例えば、プレート)に設置されるか、又は生体内(例えば、足爪又は医療装置の周囲)であるかに依って、約1,500J/cm2から約6,000J/cm2である。
【0086】
或る実施形態(生体内の例を参照)では、エネルギー密度の範囲は、約100J/cm2から約500J/cm2である。更に別の生体内実施形態では、エネルギー密度は、約175J/cm2から約300J/cm2である。更に別の実施形態では、エネルギー密度は、約200J/cm2から約250J/cm2である。或る実施形態では、エネルギー密度は、約300J/cm2から約700J/cm2である。或る他の実施形態では、エネルギー密度は、約300J/cm2から約500J/cm2である。更に別の実施形態では、エネルギー密度は、約300J/cm2から約450J/cm2である。
【0087】
微生物種の各種生体内治療で実験的に試される出力密度は、約100W/cm2から約500W/cm2である。
当業者には理解頂けるように、所与の環境に対してここで考えられている出力密度及びエネルギー密度内で特に適したNIMELS線量値を識別するのは、日常的な実験によって、そして幾つかの目下利用可能なレーザーを使用して広く行われている様に、単に試行錯誤によって行うこともできる。歯周病治療に結び付けて近赤外線エネルギーを使用している開業医(例えば、歯医者)は、各所与の患者に付帯する緊急の事態に基づいて、出力密度とエネルギー密度を日常的に調整する(例えば、パラメーターを、組織の色、組織の構成、及び病原体が侵入している深さの関数として調整する)。一例として、暗色の組織は、近赤外線エネルギーをより効果的に吸収し、従ってこれらの近赤外線エネルギーを組織内で早く熱に変換するので、明るい色の組織における歯周病感染のレーザー治療の方が、暗色の組織よりも、熱安全パラメーターが大きい。従って、開業医が、異なる治療プロトコルに対して複数の異なるNIMELS線量値を識別できる能力が、明らかに必要とされている。
【0088】
本英文明細書で用いている「a」、「an」、及び「the」という単数形は、内容が明白に他の状況を述べていなければ、それらが言及する用語の複数形も包含しているものとする。例えば、「NIMELS波長」と言う場合、記載されているNIMELS波長の範囲内の任意の波長、並びに、その様な波長の組み合わせも含んでいる。
【0089】
本英文明細書では、具体的に他の状況が示されていなければ、「or(又は)」という単語は、「and/or(及び/又は)」の「包括的な」感覚で用いており、「either/or(何れか/又は)」の「排他的な」感覚ではない。
【0090】
本英文明細書で用いている「about(約)」という用語は、概略、その領域、概ね、又は大凡を意味する。「about(約)」という用語を数字の範囲と結び付けて用いている場合は、言及している数値の上下に限界を延ばすことによって、その範囲を修正している。一般的には、「about(約)」という用語は、ここでは、数値を、言及している値の上下に20%の分散を加えるよう修正するのに用いられている。
【0091】
本英文明細書で用いている「comprise(s)(備える)」と「comprising(備えている)」という用語は、明細書でも、特許請求の範囲でも、開放的な意味を有していると解されたい。つまり、この用語は、「少なくとも〜を有している」又は「少なくとも〜を含んでいる」という語句と同義語であると解されたい。過程又は方法の文脈で用いられる場合、「comprising(備えている)」という用語は、過程/方法が、少なくとも列挙された段階を含んでいるが、追加の段階を含んでいてもよいことを意味している。
【0092】
本開示を実行するに際し、当業者に既知のどの様な適した材料(例えば、レーザー活性媒体、共鳴器構成など)及び/又は方法を利用してもよい。或る種の代表的な材料、方法、及び構成について述べる。以下の説明及び例で言及する材料、試薬などは、特に示されていなければ、市場の供給者から入手可能である。
【0093】
別の態様では、本開示は、治療放射システム(即ち、NIMELSシステム)を提供する。図2は、本開示の1つの好適な実施形態による治療放射治療装置の概略図を示している。治療システム10は、光学放射生成装置12、送出アッセンブリ14、印加アッセンブリ(又は区域)16、及び制御器18を含んでいる。本開示の1つの態様によれば、光学放射生成装置(ソース)は、1つ又は複数の適したレーザーL1とL2を含んでいる。適したレーザーは、干渉性の程度に基づいて選択される。
【0094】
代表的な実施形態では、治療システムは、近赤外線領域で出力を生成するように構成され配置されている少なくとも1つのダイオードレーザーを含んでいる。適したダイオードレーザーは、所望の波長範囲、例えば850nm−900nmと905−945nm、の放射線を生成するために、InxGa1-xAs、GaAs1-xPx、AlxGa1-xAs及び(AlxGa1-x)yIn1-yAsの中から選択される半導体材料を含んでいる(各半導体合金中、xとyは1の分数を示す)。適したダイオードレーザー構成は、クリーブ連結型、分布型フィードバック、分布型ブラッグ反射器、垂直空洞表面放出レーザー(VCSELS)などを含んでいる。
【0095】
引き続き図2を見ると、或る実施形態では、送出アッセンブリ14は、広い領域にエネルギーを均一に分配するために「上部が平坦な」エネルギープロファイルを作ることができる。記載している様に、光学的放射生成装置12は、レーザー発振器L1とL2の様な1つ又はそれ以上のレーザーを含んでいる。代表的な実施形態では、一方のレーザー発振器は、光学放射を、850nmから900nmの第1波長範囲で放出するように作られており、他方のレーザー発振器は、放射を、905nmから945nmの第2波長範囲で放出するように作られている。或る実施形態では、一方のレーザー発振器は、放射を、865nmから875nmの第1波長範囲で放出するように作られており、他方のレーザー発振器28は、放射を、925nmから935nmの第2波長範囲で放出するように作られている。必要に応じて、個々のレーザー発振器の形状又は構成を選択することもでき、選択は、具体的な発振器の形状/構成によって作り出される強度分布に基づいて行われる。
【0096】
引き続き図2を見ると、或る実施形態では、送出アッセンブリ14は、二重波長放射を、発振器26と28から印加領域16へ送出するようになっている細長い可撓性の光ファイバーを含んでいるのが望ましい。更に図16と図17も参照して頂きたい。送出アッセンブリ14は、印加要件に基づいて、異なるフォーマットを有していてもよい(例えば、熱損傷を防ぐ安全機構を含む)。例えば、1つの形態では、送出アッセンブリ14は、最小のサイズで、患者の身体に挿入できるような形状に構成されている。代替形態では、送出アッセンブリ14は、放射を比較的広い領域に印加できる円錐形発散方式で放射を放出するために円錐形に作られている。或る実施形態では、送出アッセンブリ14に中空の導波管が使用されている。印加部位の要件に基づいて、他のサイズ及び形状の送出アッセンブリ14も利用することができる。代表的な実施形態では、送出アッセンブリ14を光学的放射の自由空間又は自由ビーム印加に合わせて構成し、例えば、ここに述べているNIMELS波長で組織を貫く透過を利用することもできる。印加される光学的放射は、例えば、930nm(及び同様の程度870nmまで)で、患者の組織を1cm以上貫くことができる。その様な実施形態は、以下に説明する様に、生体内の医療装置と共に使用するのに特に良く適している。
【0097】
1つの代表的な実施形態では、制御器18は、印加アッセンブリ/領域16を通して送られる放射量を制御するために、レーザー発振器L1とL2に接続されている出力制限器24を含んでおり、単位面積当たりに送られる放射の出力密度の時間積分が、印加部位にある健康な組織に対する損傷を防止するように設定されている所定の閾値を下回るようになっている。制御器18は、患者の治療情報を記憶するためのメモリ26を更に含んでいる。特定の患者の記憶された情報には、限定するわけではないが、放射量(例えば、波長、出力密度、治療時間、皮膚の着色パラメーターなどを含む)と印加部位の情報(例えば、治療部位の種類(病巣、癌など)、サイズ、深さなど)が含まれる。1つの好適な実施形態では、メモリ26は、異なる種類の病気と、具体的な病気の種類に関係付けられた放射パターンと放射量の様な治療プロファイルの情報を記憶するのにも用いられる。制御器18は、更に、印加型式と、医者による制御器への他の印加部位情報入力に基づいて、特定の患者に必要な放射量を計算する線量計算器28を含んでいる。1つの形態では、制御器18は、更に、印加部位を画像化するための画像化システムを含んでいる。画像化システムは、印加部位の画像に基づいて印加部位情報を集め、放射量を計算するために、集められた情報を線量計算器28へ送る。医者は、手動で計算し、画像から集められた情報を制御器18へ入力することもできる。
【0098】
図2に示す様に、制御器は、更に、制御パネル30を含んでおり、医者は、それによって治療システムを手動で制御することができる。また、治療システム10は、WINDOWSTMベースのプラットフォームの様な制御プラットフォームを有するコンピューターによって制御することもできる。光学放射のパルス強度、パルス幅、パルス反復率の様なパラメーターは、コンピューターと制御パネル30の両方を通して制御することができる。
【0099】
図3a−3dは、治療システムから印加部位へ送ることのできる異なるパターンの光学放射を示している。光学放射は、図3aに示している様に、例えば、850nmから900nmの第1波長範囲か、865nmから875nmの範囲か、905nmから945nmの第2波長範囲か、923nmから935nmの範囲の様な、1つの波長範囲のみで送ることができる。第1波長範囲の放射と第2波長範囲の放射は、図3bに示している様に、光学放射生成装置12内に設置されている多重システムによって多重化し、多重形態で印加部位へ送ることもできる。代替形態では、第1波長範囲の放射と第2波長範囲の放射は、多重システムを通すことなく、印加部位に同時に加えることができる。図3cは、光学放射が、例えば、第1波長範囲の第1パルス、第2波長範囲の第2パルス、再び第1波長範囲の第3パルス、及び再び第2波長範囲の第4パルス、のように、中断し交互する方式で送出できることを示している。間隔は、CW(継続波)で、図3cに示している様な1つのパルスでも、2つ以上のパルス(図示せず)でもよい。図3dは、印加部位が2つの波長範囲の内の一方の放射、例えば第1波長範囲によって先ず治療され、次に、他方の波長範囲の放射によって治療される、別のパターンを示している。治療パターンは、印加部位の種類及び他の情報に基づいて、医者によって決められる。
【0100】
観察される現象の原因となる基礎を成すメカニズムに関して、何れの理論によっても拘束されることを欲せず、本開示の何れの態様も何れの理論によっても制限を課する意図なく、本発明の方法及びシステムにより照射される波長は、原核及び真核細胞の細胞内の内因性発色団及び細胞膜の脂質二重層によって吸収されると仮定されている。更に、バクテリアの損傷は、恐らく、有毒の一重酸素及び/又は他の反応性酸素種を介して伝達されると仮定されている。
【0101】
以下の例は、本開示の或る種の好適な実施形態を更に示すものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
例I
NIMELS線量計算
先に詳しく論じた様に、NIMELSパラメーターは、レーザーダイオードの平均的な1つ又は付加的な出力とダイオードの波長(870nmと930nm)を含んでいる。この情報は、標的部位の単数又は複数のレーザービームの面積(cm2)と組み合わせられて、本開示による効果的で安全な照射プロトコルを計算するのに用いられる初期情報セットを提供する。
【0102】
所与のレーザーの出力密度は、標的部位におけるNIMELSの潜在的な効果を測定する。出力密度は、何れかの所与のレーザー出力及びビーム面積の関数であり、以下の式で計算される。
1つの波長では、
【0103】
【数1】
【0104】
二重波長治療では、
【0105】
【数2】
【0106】
ビーム面積は、以下の何れかによって計算される。
3)ビーム面積(cm2)=直径(cm)2x0.7854、又はビーム面積(cm2)=Pix半径(cm)2
特定の出力で或る期間に亘って作動する1つのNIMELSレーザーダイオードシステムによって組織に送出される合計光子エネルギーは、ジュールで測定され、以下の様に計算される。
【0107】
4)合計エネルギー(ジュール)=レーザー出力(ワット)x時間(秒)
両方のNIMELSレーザーダイオードシステム(両方の波長)によって同時に、特定の出力で或る期間に亘って組織に送出される合計光子エネルギーは、ジュールで測定され、以下の様に計算される。
【0108】
5)合計エネルギー(ジュール)=[レーザー(1)出力電力(ワット)x時間(秒)]+[レーザー(2)出力電力(ワット)x時間(秒)]
実際に、最大のNIMELSの有益な反応に対する放射量を正しく測定するために、照射治療領域に亘る合計エネルギーの分布と割当を知ることは、必須ではないが、有用である。合計エネルギー分布は、エネルギー密度(ジュール/cm2)として測定される。下で論じる様に、所与の光の波長では、エネルギー密度は、組織の反応を判断する際の最も重要な因子である。1つのNIMELS波長のエネルギー密度は、以下の様に導き出される。
【0109】
【数3】
【0110】
7)エネルギー密度(ジュール/cm2)=出力密度(W/cm2)x時間(秒)
2つのNIMELS波長が用いられている場合は、エネルギー密度は、以下の様に導き出される。
【0111】
【数4】
【0112】
9)エネルギー密度(ジュール/cm2)=出力密度(1)(W/cm2)x時間(秒)+出力密度(2)(W/cm2)x時間(秒)
特定の放射量に関する治療時間を計算するために、ユーザーは、エネルギー密度(J/cm2)又はエネルギー(J)のどちらか、並びに出力(W)とビーム面積(cm2)を使用し、以下の式のどちらかを使用する。
【0113】
【数5】
【0114】
【数6】
【0115】
この例に例示されている様な線量計算は煩わしいので、治療システムは、更に、全ての調査された治療の可能性と線量を記憶するコンピューターデータベースを含んでいる。制御器内のコンピューター(線量とパラメーターの計算器)は、先に述べた式に基づくアルゴリズムによって事前にプログラムされているので、オペレーターは、誰でも、スクリーン上でデータ及びパラメーターを容易に検索し、必要な追加データ(例えば、スポットサイズ、所望の合計エネルギー、各波長の時間とパルス幅、照射される組織、照射されるバクテリア)を、他の必要な情報と共に入力することができる、従って、良好な治療結果に必要なあらゆる全てのアルゴリズムと計算を、線量及びパラメータ計算器によって作り出し、それによってレーザーを作動させることができる。
【0116】
以下の例は、選択された実験について述べており、ここに述べている波長で、様々な一般的に見られる微生物の生存能力に強い影響を与えるNIMELS方法の性能が示されている。例示されている微生物には、E.coli K-12、多薬耐性E.coli、ブドウ球菌アウレウス、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンス、及びトリコフィトンルブルムが含まれる。
【0117】
要約すると、バクテリア培養体をNIMELSレーザーに曝したところ、バクテリア致死率(処置後の培養プレート上のコロニー形成単位即ちCFUを計数することによって測定した)が、93.7%(多薬耐性E.coli)から100%(他の全てのバクテリアと真菌)であった。
例II
バクテリア方法、生体外のE,COLIを標的とするためのNIMELS治療パラメータ
以下のパラメーターは、熱損傷に関して文献で関係付けられている温度より相当に低い最終的な温度でE.coliに適用される、本開示による方法を示している。
A.E.coli K−12のための実験材料と方法
E.coliK12液体培養体を、Luria Bertani(LB)媒体(25g/L)内で成長させた。プレートには、35mLのLBプレート媒体(25g/L LB、15g/Lの細菌学的寒天)が入っていた。培養体希釈は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を使って行った。全てのプロトコルと操作は、殺菌技法を使って行った。
B.成長動力学
種培養体から複数の50mLのLB培養体を取り出し、接種し、37℃で一晩成長させた。翌朝、最も健康な培養体を選定し、5%を50mLのLBに37℃で接種するのに使用し、O.D.600を、時間を通して監視し、培養体が静止位相になるまで30分から45分毎に測定した。
C.マスター株生産
ログ位相の培養体(O.D.600は約0.75)で開始し、10mLを4℃に置いた。50%グリセロールを10mL加え、20の冷凍小瓶に分別し、液体窒素内で素早く凍らせた。次いで、冷凍小瓶を−80℃で保管した。
D.液体培養体
E.coliK12の液体培養体を、先に述べたように設置した。100μLのアリコートを二次培養から取り外し、続いて、PBSで1対1200に希釈した。この希釈により、確実に、PBS懸濁液内の細胞が静止状態(成長)に達し、重大な増加も無く、比較的安定した数の細胞を、試験のために更に分別できるようにするため、室温で、約2時間、又はO.D.600の更なる増加が観察されなくなるまで培養出来るようになった。
【0118】
K12希釈液が静止状態にあると判定した後、この2mLの懸濁液を、選択したNIMEL実験を所与の線量パラメータで行うために、24ウェルの組織培養プレートの選択されたウェルに分別した。プレートは、使用のための準備が整うまで室温で培養した(約2時間)。
【0119】
レーザー処置に続いて、100μlを各ウェルから取り出し、続いて、1対1000に希釈し、最終的な希釈度は最初のK12培養体の1:12x105になった。各最終希釈液の3x200Lのアリコートを、個別のプレートで3倍に拡げた。次にプレートを、37℃で約16時間培養した。コロニー計数を手動で行い、記録した。各プレートのデジタル写真も撮影した。
【0120】
同様の細胞培養体と運動学プロトコルを、S.aureusとC.albicansの生体外試験による全てのNIMELS照射試験に対して実行した。これにより、例えば、C.albicans ATCC14053液体培養体を、YM媒体(21g/L、Difco)内で37℃で成長させた。標準化した懸濁液を、24ウェル組織培養プレートの選択したウェルにアリコートした。レーザー処置後に、各ウェルから100μLを取り出し、続けて1:1000に希釈し、最終的に、最初の培養体の1:5x105の希釈とした。各最終的希釈液3x100μLを、個別のプレートに拡げた。各プレートを、37℃で約16−20時間培養した。コロニー計数を手動で行い、記録した。各プレートのデジタル写真も取った。
【0121】
T.rubrum ATCC52022液体倍様体を、ペプトンぶどう糖(PD)媒体内で37℃で成長させた。標準化した懸濁液を、24ウェル組織培養プレートの選択したウェルにアリコートした。レーザー処置後に、各ウェルから3x100μLのアリコートを取り出し、個別のプレートに拡げた。各プレートを、37℃で約91時間培養した。66時間及び91時間培養した後、コロニー計数を手動で行い、記録した。比較用のウェルも全て有機体を成長させたが、レーザー処置したウェルは、ここに記載しているように、100%成長しなかった。各プレートのデジタル写真も取った。
【0122】
熱試験を、PBS溶液で室温から開始して実行した。10ワットのNIMELSレーザーエネルギーは、システムの温度が上昇して44℃の臨界閾値に近づく前に、12分間のレージングサイクルで使用するのに利用することができる。
表II:生体外NIMELS線量の時間温度測定
【0123】
【表2】
【0124】
例III
生体外のE.coliを標的としたNIMELSレーザー波長930NMの線量値
実験例は、NIMELSの1つの波長930nmを、哺乳動物組織に安全な熱パラメーター内で、生体外のE.coliに対して定量化可能な抗バクテリア効能に関係付けたことを示している。
【0125】
生体外の実験データは、930nmだけをシステムに送り込むときの合計エネルギーの閾値が5400Jで3056J/cm2のエネルギー密度が25%減時間内で満足されれば、100%の抗バクテリア効能はなお実現されることを示している。
表III:生体外E.coliを標的とした二次的熱NIMELS(λ=930)線量
【0126】
【表3】
【0127】
生体外の実験データは、更に、λ=930nmの1つのエネルギーを使用する処置が、哺乳動物組織に安全な熱パラメーターの範囲内で、生体外のバクテリア種S.aureusに対する抗バクテリア効能を有することを示した。
【0128】
更に、システムに送り込む合計エネルギー5400Jと3056J/cm2のエネルギー密度の閾値がS.aureus及び他のバクテリア種に対して25%減時間内で満足されれば、100%の抗バクテリア効能はなお実現されると考えられる。
表IV:生体外S.aureusを標的とした二次的熱NIMELS(λ=930)線量
【0129】
【表4】
【0130】
生体外の実験データは、更に、λ=930nmのNIMELSの単一波長が、生体外のC.albicansに対して、哺乳動物組織に安全な熱パラメーターの範囲内で、抗真菌効能を有することを示した。
【0131】
更に、システムに送り込む合計エネルギー5400Jと3056J/cm2のエネルギー密度の閾値が25%減時間内で満足されれば、100%の抗バクテリア効能はなお実現されると考えられる。図3も参照されたい。
表V:生体外C.albicansを標的とした二次的熱NIMELS(λ=930)線量
【0132】
【表5】
【0133】
例IV
生体外の870NMのNIMELSレーザー波長の線量値
生体外の実験データは、更に、870nmの波長だけでは、E.coliに対して、7200Jの合計エネルギーと、4074J/cm2のエネルギー密度及び6.660Wcm2の出力密度になるまでは、十分な致死は実現されなかったことを示した。
表VI:E.coli研究−870nmの1つの波長
【0134】
【表6】
【0135】
λ=870nmだけを有する放射を使った同様な結果が、S.aureusに関しても観察された。
例V
NIMELS固有の870NMと930NMの光エネルギーが交互する相乗効果
生体外の実験データは、更に、2つのNIMELS波長(λ=870nmと930nm)が交互する(930nmの前に870nm)場合、それらの間に相加効果があることを示した。第1照射としての870nmのNIMELS波長の存在は、第2の930nmのNIMELS波長の照射の抗バクテリア効能の効果を強化していることが分かっている。
【0136】
生体外の実験データは、この相乗効果(870nm波長を930nm波長に組み合わせる)により、930nmの光エネルギーを減らすことができることを示している。以後に示す様に、光エネルギーは、波長が交互に組み合わせられている場合(930nmの前に870nm)、NIMELSの100%E.coli抗バクテリア効能に必要な合計エネルギーとエネルギー密度の約1/3に減った。
【0137】
生体外の実験データは、更に、等量の870nm光エネルギーが930nmエネルギーの前に20%高い出力密度でシステムに加えられると、この相乗的メカニズムは、930nmの光エネルギー(合計エネルギーとエネルギー密度)を、NIMELSの100%E.coli抗バクテリア効能に必要な合計エネルギー密度の約1/2に減らすことができることを示している。
表VII:交互するNIMELS波長からのE.coliデータ
【0138】
【表7】
【0139】
930nmの光エネルギーの方が、870nmの光エネルギーよりも高速でシステムを加熱するので、この相乗能力は、人間の組織の安全にとって重要であり、治療中に生成する熱の量をできるだけ小さくすることは、哺乳類にとって有用である。
【0140】
更に、NIMELS光エネルギー(870nmと930nm)が、他のバクテリア種に対して上記の方式で交互すれば、100%の抗バクテリア効果は基本的に同じであると考えられる。
【0141】
生体外の実験データは、更に、2つのNIMELS波長(870nmと930nm)が、交互して真菌を照射している(930nmの前に870nm)場合、それらの間には相加効果があることを示している。第1照射としての870nmのNIMELS波長の存在は、第2の930nmのNIMELS波長の照射の抗真菌効能の効果を確かに強化している。
【0142】
生体外の実験データ(下表を参照)は、等量の870nm光エネルギーが、930nmエネルギーの前に、バクテリア種の抗バクテリア効能に必要な出力密度よりも20%高い出力密度でシステムに加えられると、この相乗的メカニズムは、930nmの光エネルギー(合計エネルギーとエネルギー密度)を、NIMELSの100%抗真菌効能に必要な合計エネルギー密度の約1/2に減らすことができることを示している。
表VII:交互するNIMELS波長からのC.albicansデータ
【0143】
【表8】
【0144】
930nmの光エネルギーの方が、870nmの光エネルギーよりも高速でシステムを加熱するので、この相乗効果は、人間の組織の安全にとって重要であり、治療中に生成する熱の量をできるだけ小さくすることは、哺乳類にとって有用である。
【0145】
更に、NIMELS光エネルギー(870nmと930nm)が、他の真菌種に対して上記の方式で交互すれば、100%の抗真菌効果は基本的に同じであると考えられる。
例VI
NIMELS固有の、Λ=870MNとΛ=930NM光エネルギーの間の同時相乗効果
生体外の実験データは、更に、2つのNIMELS波長(870nmと930nm)が同時に用いられる(870nmと930nmが組み合わせられている)場合、それらの間には相加効果があることを示している。870nmのNIMELS波長と930nmのNIMELS波長の同時照射としての存在は、NIMELSシステムの抗バクテリア効能の効果を絶対的に強化している。
【0146】
生体外の実験データ(例えば、以下の表IXとXを参照)は、λ=870nmとλ=930nm(この例では同時に用いられている)を組み合わせることによって、930nmの光エネルギーと密度が、本開示による1つの治療を使用する場合に必要な合計エネルギーとエネルギー密度の約半分だけ効果的に減ることを示した。
表IX:組み合わされたNIMELS波長からのE.coliデータ
【0147】
【表9】
【0148】
表X:組み合わさせられたNIMELS波長からのS.aureusデータ
【0149】
【表10】
【0150】
930nmの光エネルギーの方が、870nmの光エネルギーよりも高速でシステムを加熱するので、この同時相乗能力は、人間の組織の安全にとって重要であり、治療中に生成する熱の量をできるだけ小さくすることは、哺乳類にとって有用である。
【0151】
更に、NIMELS光エネルギー(870nmと930nm)が、他のバクテリア種に対して上記の方式で同時に使用されれば、100%の抗バクテリア効果は基本的に同じであると考えられる。図4と図5を参照されたい。
【0152】
生体外の実験データは、更に、2つのNIMELS波長(870nmと930nm)が同時に真菌に用いられる場合、それらの間には相加効果があることを示している。870nmのNIMELS波長と930nmNIMELS波長の同期照射としての存在は、NIMELSシステムの抗真菌効能の効果を強化していることが分かっている。
【0153】
生体外の実験データ(表Xを参照)は、(930nmの前に870nmの)波長が同時方式に組み合わせられると、この相乗効果(同時照射するために870nm波長を930nm波長に接続する)は、930nmの光エネルギーを、NIMELSの100%C.albicansの抗真菌効能に必要な合計エネルギーとエネルギー密度の約1/2に減らすことができることを示している。
表XI:組み合わせられたNIMELS波長からのカンジダalbicans
【0154】
【表11】
【0155】
この様に、NIMELS波長(λ=870nmと930nm)を、抗バクテリア及び抗真菌の効能を達成するために、交互方式又は同時方式又はその様な方式の何れかの組み合わせで使用して、温度上昇を伴うので最小にするのが望ましいλ=930nmの曝露を減らすこともできる。
【0156】
生体外の実験データは、更に、E.coliをλ=830nmの(制御:比較標準)波長だけで、以下のパラメーター(表XIを参照)で照射する場合、制御830nmレーザーは、λ=930nmの放射であれば100%の抗バクテリア及び抗真菌効能が得られる最小のNIMELS線量と同じパラメーターでは、12分間の照射サイクルでの抗バクテリア効能はゼロであったことを示している。
表XII:E.coli単一波長λ=830nm
【0157】
【表12】
【0158】
生体外の実験データは、更に、安全な熱線量で加えたときには、λ=830nm波長をλ=930nm波長と組み合わせて使用した場合は相加効果が殆ど無いことを示している。第1照射としての830nm制御波長の存在は、第2の930nmのNIMELS波長による相乗的な抗バクテリア効能を作り出すには、870nmNIMELS波長の増強効果に遠く及ばない。
表XIII:代用された830nm制御波長からのE.coliデータ
【0159】
【表13】
【0160】
生体外の実験データは、更に、830nm波長とNIMELSの930nm波長を同時に用いた場合、安全な熱線量で加えたときには、それらによる相加効果が小さいことを示している。実際、生体外の実験データは、870nmが930nmと同時に組み合わせられた場合対市販の830nmでは、100%のE.coli抗バクテリア効能を実現するのに、17%少ない合計エネルギー、17%低いエネルギー密度、及び17%低い出力密度を必要とすることを示している。このことも、NIMELS波長で治療される生体内システムへの熱及び害を実質的に減らす。
表XIV:代用された同時830nm制御波長からのE.coliデータ
【0161】
【表14】
【0162】
バクテリアの致死量
生体外のデータは、更に、生体外のNIMELSレーザーシステムが、E.coliとS.aureusの2,000,000(2x106)コロニー形成ユニット(CFU)が入っているバクテリア溶液に対して有効である(熱許容範囲内)ことを示した。これは、通常、1gmの感染しているヒトの潰瘍組織の試料で見られるのに勝る、2倍の増大である。Brownらは、試験した糖尿病患者の75%の微生物細胞は、全てが、少なくとも100,000CFU/gmであり、患者の37.5%で、微生物細胞の量が、1,000,000(1x106)CFUを上回っていると報告した(Brownらによる「Ostomy Wound Management, 401:47」(2001年10月発行)を参照)。
熱パラメーター
生体外の実験データは、更に、NIMELSレーザーシステムが、人間の組織にとって安全な熱許容範囲内で、100%の抗バクテリア及び抗真菌効能を達成できることを示している。図6を参照されたい。
例VII
NIMELSへの低温の影響
Dewhirstらは、Internat.J.of Hyperthermia, 19(3):267-294で、バクテリアへの低温の影響を報告した。
バクテリア種の冷却
生体外の実験データは、更に、レーザー照射サイクル前に、バクテリアサンプルの開始温度をPBS内で2時間に亘って4℃に実質的に下げることによって、光学的な抗バクテリア効能は、NIMELSレーザーシステムによる目下再現可能な抗バクテリアエネルギーでは、実現されなかったことを示した。
【0163】
バクテリア細胞は「代謝停止状態」にあり、細胞内に活発な代謝が起こらなければ、活性酸素は殆ど又は全く生成されない、というのが最も可能性のある説明である。このデータは、NIMELSが、標的とする微生物の呼吸中枢と細胞膜に影響を与えていることを示している。
【0164】
870nmエネルギーは、酸化的リン酸化を加速させることによってシトクロムに影響を及ぼし、930nmエネルギーは、細胞膜を引き裂いて一量状態の酸素を作り出し、電子移送システムを切り離して、末端のO2分子が減るのを許容しないというのが、仮定の(採用されてはいないが、本発明の範囲を限定するものではない)機構である。
例VIII
トリコフィトンルブルム
表XV:NIMELS T.rubrum 試験交互波長
【0165】
【表15】
【0166】
実験番号1=効果が最小
実験番号2=全プレートで100%致死
表XVI:NIMELS T.rubrum−同時波長
【0167】
【表16】
【0168】
実験番号3、4、5=全プレートで100%致死
表XVII:NIMELS T.rubrum−単一波長
【0169】
【表17】
【0170】
実験番号6、7=全プレートで100%致死
表VII:制御 T.rubrum−830nm/930nm交互
【0171】
【表18】
【0172】
実験番号8=効果無し
実験番号9=100%致死
表XIX:λ=830nmと930nmを使った生体外 T.rubrum の標的化
【0173】
【表19】
【0174】
上記表XVIIに記載されている処置では、100%致死に至った。
例IX
爪甲真菌症治療の評価
この例は、開業医の評価が、具体的な治療の放射線量、照射モードを増減するか継続するかを評価する際に、どれほど支援し、情報を提供するかを示している。図8に示すように、健康な爪甲は、硬くて半透明で、死んだケラチンで構成されている。爪甲は、近位側及び側方の爪郭から成る爪床縁と、爪の自由縁の下の領域である下爪皮に取り囲まれている。図9は、典型的な爪甲真菌症患者の爪の図であり、健康な爪が成長していることによって、治療の有効性が証明されている。開業医は、新たに成長している爪甲の清潔で「感染していない」部分(胚芽基質、上爪皮、及び半月に近い)は、後に続く治療で自動的に照射が不要になることを理解できるであろう。従って、照射スポットは、病原体がまだ居座っている病気領域に優先的に、又はできればそこだけに向けられるべきである。
【0175】
或る例では、爪甲真菌症に感染している爪は、固有の(ジストロフィーの成長のため)「厚い」又は(真菌病原体によって作り出される濃度のため)「着色」した状態になってており(図10参照)、爪甲を貫通して、感染している爪床領域(無菌基質と胚芽基質)及び爪郭半月(上爪皮の下から成長している)まで届かせるのに、長いレーザー照射時間(高エネルギー密度)を要する。図15は、本開示の方法によって治療された典型的な爪甲真菌症患者の爪の外観の時間経過に亘る改善を示す合成写真である。
【0176】
図11に示している様に、慢性の爪周囲炎が併発している患者では、レーザー治療領域の「スポットサイズ」は、病原体に感染している爪複合体領域全てがNIMELSレーザーで確実に治療されるように、感染している爪周囲炎区域を覆って拡張すべきである。
【0177】
或る場合には、爪甲真菌症患者は、病原体に感染している爪の異なる不連続な領域と、爪甲の健康な部分がなお硬くて半透明な完全に清潔な他の領域とを有している(図11を参照)。これは、垂直方向又は水平方向のパターンの場合があり、上爪皮の下から成長している半月に達し、それを越えることもある。これらの場合、開業医は、清潔で「感染していない」爪甲の部分は、自動的に照射が不要になると理解し、従って、スポットサイズとそれに付随するレーザー線量は、健康な爪複合体の何れの部分も損傷させることなく治療が上手く行くように然るべく調整されることになる。更に、「スポットを小さくする」だけでは爪の感染している部分の形状が適切に治療されない場合は、健康な爪の部分を不透明な物質で覆い、レーザーからの照射スポットを大きくすることができる。
例X
レーザーの出力が、両方1.5ワットの870と930が組み合わされて3.0ワットに固定されている、生体内NIMELS治療の相互経過分析
生体内治療のために行われる典型的な分析を示すために、以下の例は、出力3Wのレーザーを使用して、λ=870と930nmでエネルギーを放出している。
表XX:二重波長 λ=870nmと930nm
【0178】
【表20】
【0179】
この情況では、Tn=409(エネルギー密度)/出力密度である。図14は、所与のスポットサイズ(直径1.2−2.2cm)に対して導き出された値を示している。NIMELS治療のための処置時間は、409J/cm2のエネルギー密度を、3.0ワットのレーザー出力時の出力密度で除して導き出された。
例XI
レーザーの出力が3.0ワットに固定され、波長が930NMである生体内NIMELS治療の相互経過分析
生体内治療のために行われる典型的な分析を示すために、以下の例は、出力3Wのレーザーを使用して、λ=930nmでエネルギーを放出している。
表XXI:単一波長 λ=930nm
【0180】
【表21】
【0181】
観察された値(上記データ参照)に基づいて、Tn=205(エネルギー密度)/出力密度であることが分かる。従って、所与のスポットサイズパラメータ(直径1.2−2.2cm)の範囲内では、NIMELS治療のための処置時間は、205J/cm2のエネルギー密度を3.0ワットのレーザー出力時の出力密度で除して簡単に導き出される(図13参照)。
【0182】
NIMELS線量計算に関するこの新規のアルゴリズムは、固有のエネルギー送出波長が同時である(λ=870nmと930nmを一体で)か、又は930nm波長だけであるかに基づく抗微生物及び/又は抗真菌現象に対する既知で一定のNIMELS閾値エネルギー密度の定量化に関連している。
【0183】
従って、この(エネルギー密度)定量化の方法が維持され、新規なNIMELS因子の値(Tn)を使って、安全で効果的な線量値に必要な放物線状の相互関係を計算することが、NIMELS抗微生物治療にとって必要である。
【0184】
この一時的で相互的な線量のNIMELS法は、定量化可能な熱的増加、熱増加持続時間、及び組織内の光生物学的事象が、あらゆる不可逆的損傷の閾値以下に維持されている限り、レーザー出力(1Wから5W)の差異に対しても有効である。
例XII
代表的な医療装置と共に用いられるNIMELS治療
先に述べた通り、医療装置領域でNIMELS技術を利用することについて説明するために、具体的に図16−図22に関連付けて述べる以下の例を提供する。従って、説明している実施形態は、代表的な例である。当業者には理解頂けるように、基礎を成すNIMEL方法論を利用して数多くの変更と修正が考えられる。
【0185】
図16は、カテーテル制御器内の患者上に置かれたカテーテル入口の回りに埋め込まれている複数の光ファイバーとして構成されている送出アッセンブリを含むNIMELS光学カテーテル制御器の或る実施形態を示している。図17は、図16の実施形態をシミュレートするように作られた身体モデルを示している。
【0186】
図16と図17は、接続アダプターを示しており、これによってスプレー状の光ファイバーが使い捨ての経皮装置制御器内に埋め込まれ、NIMELSレーザーシステムに遠位方向に接続される。経皮装置の大きさによって変わる多くの異なる変形物において、複数の光ファイバースプレーが円形の(又は他の)重複パターンで埋め込まれており、経皮装置で経皮的な傷に放射することができるようになっている。本発明のこの実施形態によれば、ファイバーは、一端で束ねられ、そこでNIMELSレーザーシステムに接続されており、他端は、拘束されていないので、外向きにフレア状に広がってスプレーを形成しており、経皮装置の制御器帯具内に必要なパターンで埋め込まれるようになっている。
【0187】
図18は、図16と同様のNIMELS光学カテーテル制御器の裏側を示している。図19は、図18による身体モデルの光ファイバーが取り除かれた状態を示している。
図18と図19は、経皮装置制御器を使って、経皮的な傷に放射するための光ファイバーのアレイの照明を示している。アダプターは、一端に光ファイバーの束ねられた端部を担持しており、アダプターを係合させてNIMELSレーザーシステムに接続させるように形成されている。光ファイバーは、NIMELSエネルギーを、経皮装置制御器と経皮装置自体の全体に亘る様々な複数の異なる場所に送ることができる。光ファイバーケーブルは、複数の光ファイバーを含んでおり、各光ファイバーは、個別に経皮装置制御器と経皮装置自体及びその回りの複数の部位の1つで終結している。これは、経皮装置の内側ルーメンを放射するための段付き又はBragg勾配付ファイバーを含んでいてもよい。代わりに、光ファイバーは、経皮装置制御器の領域を均一に照らすことができるように、個別に、装置全体に亘り所望の、例えば均一に間隔を置いた場所で終了していてもよい。
【0188】
図20は、本開示によるNIMELS光学微生物カテーテル制御器の試作的に可能になった側面図である。図21は、図20の試作品の追加図である。
図20と図21は、病原菌で汚染された経皮装置の付属的な処理として用いるため、又は、経皮装置の病原菌汚染及びコロニー形成を防ぐための放射線散布帯具又は光学経皮装置制御器を示している。装置は、代わりに、経皮装置制御器及び/又は経皮装置自体の外側及び内側の光線処理のための可撓性の照明器を含んでいてもよい。照明器は、経皮装置制御器及び/又は経皮装置自体に又はその回りに埋め込まれ又は包まれるように形成されている。別の構成では、経皮的な傷、皮膚及び/又は装置自体が所望の温度以下となるように、照明器が能動的に又は受動的に冷却される。
【0189】
更に、可撓性の帯又はベルトには、経皮装置の適切な位置決めと照明のために装置を所望の身体表面に保持し又は体形に合わせることができるように、経皮装置制御器が設けられていてもよい。光学経皮装置制御器は、脈管及び非脈管の経皮装置の回りに固く巻き付けて、長い時間に亘って(NIMELSエネルギーによって)広い抗微生物環境ができるように設計(例えば、構成と配列)することができる。
【0190】
図22は、本開示によるNIMELS光学微生物カテーテル制御器の別の図である。
先に述べた様に、本開示により用いられる送出アッセンブリは、光ファイバー以外の形態を取ってもよい。例えば、或る種の実施形態では、中空の導波管が送出アッセンブリに用いられている。適用部位の要件に基づいて、他の寸法形状の送出アッセンブリ、例えば図2のアッセンブリ14、も採用することができる。代表的な実施形態では、送出アッセンブリ14を光学的放射の自由空間又は自由ビーム印加に合わせて構成し、例えば、ここに述べているNIMELS波長で組織を貫く透過を利用することもできる。印加される光学的放射は、例えば、930nm(及び同様の程度870nmまで)で、患者の組織を1cm以上まで貫くことができる。その様な実施形態は、以下に説明する様に、生体内の医療装置で使用するのに特に良く適している。適した光線平行化及び/又は開口絞り光学要素を用いてもよい。
【0191】
従って、本開示のNIMELS技法の出願は、限定するわけではないが、PICC部位の様なIVカテーテル、中心静脈(CV)線、動脈カテーテル、末梢カテーテル、透析カテーテル、外側固定器ピン、腹膜透析カテーテル、硬膜外カテーテル、胸腔チューブ、図13に示している胃腸栄養供給管を含む医療装置と共に用いることができる。
例XIII
生体外の安全試験−哺乳動物の細胞
哺乳動物の細胞がNIMELSレーザー治療によって傷付くか否かを判定するために、従来のマウス3T3繊維芽細胞を用いた。標準化した量の繊維芽細胞を含んでいる処置プレートをNIMELSレーザーに曝し、同量の繊維芽細胞を含んでいる制御プレートを、レーザー治療の間、室温に保持した。
【0192】
処置後、細胞は、それらのプレートを37℃の培養器に3時間取り付けた。次に、細胞をプレートから抽出し、形態学と生存能力について試験した。処置した繊維芽細胞内では形態学的変化が観察されたが、処置したプレートも、制御プレートも、生存能力は重大な差を示さなかった。これらの結果は、細胞の損傷(形態学的変化によって示される)は、細胞の生存能力に影響しなかったことを示している。
【0193】
生体外の追加研究を行って、マウス3T3繊維芽細胞組織を、生体外のバクテリアには致命的であると示されているNIMELSレーザー線量に曝したときの、熱及び光の安全性について試験した。繊維芽細胞には500,000CFUのE.coli K-12を接種した。この「感染した」サンプルを、先の研究(上記参照)から確認されている微生物に致命的なレーザー線量で処置した。処置後3時間、これらの繊維芽細胞は、形状及び形態において生存能力があるように見えた。16時間処置後に行った培養では、標準的寒天培地内のバクテリアの成長と哺乳動物成長血清媒体は無かった。
例XIV
生体内の安全性試験−哺乳動物の細胞
生体外の結果に基づいて、Nomir NIMELSレーザーのこれらの波長における動物モデルでの安全性を判定するために、マウスで研究を行った。
【0194】
パイロット線量研究を、NIMELSレーザーを使って、FVB(Friend leukemia ウィルスB株)マウス菌株の背側の皮膚で行った。各4匹のマウスの6つのグループを用いた。これには、レーザー強度、エネルギーレベル、出力密度(PD)、曝露時間、及びスポットサイズの試験が含まれていた。研究日(0日)にマウスを観察し、1日目と2日目も続いて観察を行った。マウスは2日目に犠牲となり、履歴を試験するために、レーザー曝露領域から標本を切り取り、パラフィンに埋め込み、次いでヘマトキシリンとエオシン(H&E)で染色した。
【0195】
本発明により哺乳動物で使用するように上記で考えていたものを遥かに上回るエネルギー(888−3034Jの範囲)、出力密度(2.04−3.82の範囲)レベル、又は曝露時間を用いた場合、全ての動物が死に、深刻な罹患率となり、目に見える皮膚の瘢痕が動物に生じた。
【0196】
34個の試料を顕微鏡で研究した。全て、最初の処置を生き延び、観察期間中も生存していた動物のものである。履歴は、34個中28個の試料が履歴的異常を示さず、その内の6個は比較標準で、22個は、360Jから1776Jのレーザーエネルギーと、1.02から2.72のPDに曝露したものである。
【0197】
6個の試料は明白な履歴を示し、その内の3つは、750Jを遥かに上回るレーザーエネルギー(1332Jから1998Jの範囲)に曝されていた。残りの内は、1つは非常に高い出力密度(PD3.82、444J)に曝されており、1つは極めて長い時間曝されていた(930nm、750Jで4分の曝露)。残りの試料では、曝露因子は、ヒトへの使用に予期される範囲内にあった。
【0198】
履歴変化の強さに慎重に注目した。履歴変化が認められた試料の何れにも、極端な曝露に供された試料でさえも、下にある筋肉層まで又はそれを超えて皮下まで伸びている所見の無かったことは注目に値する。変化は、極めて表面的であり、貫通深さは90ミクロンに満たなかった。顕著な表面の潰瘍は、顕微鏡で注意深く検査した後にのみ認知され、直径は60ミクロン未満、深さは40ミクロン未満であった。従って、全ての変化は軽微で、臨床的結果は殆ど無かった。
【0199】
有害事象との強力な相関関係は、使用したエネルギーレベル(ジュール)に認められ、全ての事象は、Jレベルが増大するにつれて数と強度が増大した。例外があり、750J以下のレーザーエネルギーを用いた場合は、重大で有害な結果は見られなかった。唯1つの動物で、皮膚の瘢痕の形跡が750Jで認められ、レーザー曝露の持続時間を哺乳動物(例えば、ヒト)への使用が期待される通常の時間の2倍に延長したときに生じた。
【0200】
研究は、大多数の動物で、皮膚又は下にある組織への明白な損傷の無かったことを示した。深刻な病的状態は、使用したエネルギーレベル極めて高かった動物に限られていた。全ての深刻で有害な結果の数と強さは、曝露の強さに関係しており、全て、期待されるヒトへの使用を遥かに超える身体的パラメーターを使用したときに起こっていた。
【0201】
広範囲なパラメーターに亘って明白な履歴に関する知見に遭遇したが、使用したエネルギー密度又は出力密度が高いほど、より顕著であった。哺乳動物での使用が期待される範囲内のレベルを使用した場合、知見は、正常であるか、異常であったとしても、極めて軽微であり、顕微鏡で集中的に検査した後でしか確認できなかった。
【0202】
研究は、エネルギーレベル(J)を監視するだけでなく、出力密度(PD)に大きな影響を与える曝露時間及びレーザービームのスポットサイズの適切な制御を維持する必要があることを強調している。
例XV
生体内の安全試験−ヒトの患者
本発明人は、生体外の繊維芽細胞研究に続いて、自分自身に線量滴定を行って、放射された組織を燃焼又は損傷させることなく、ヒトの皮膚組織に送ることのできるエネルギー及び曝露時間の安全な最大レベルを確認した。
【0203】
発明人が使用した方法論は、自分の足の親指に、NIMELSレーザーを、時間の長さと出力の設定を変化させて放射することである。この自己曝露実験の結果について、以下に説明する。
表XXII:組み合わされた波長の線量
【0204】
【表22】
【0205】
表XXIII:λ=930nmでの線量
【0206】
【表23】
【0207】
時間/温度の査定を表にして、これらのレーザーエネルギーがヒトの皮膚組織に及ぼす熱の安全性を確認した(データを示さず)。1回のレーザー処置で、足の親指を870nmと930nmの両方に233秒まで曝露し、同時にレーザー赤外線温度計を使って足爪の表面温度を測定した。上記線量を使い、37.5℃の表面温度で、870nmと930nm両方を組み合わせた出力密度が1.70W/cm2で、痛みが生じ、レーザーがオフになったことを発見した。
【0208】
第2レーザー処置で、足の親指を930nmに142秒まで曝露し、同時に再びレーザー赤外線温度計を使って足爪の表面温度を測定した。36℃の表面温度で、930nm単独で、出力密度が1.70W/cm2で、痛みが生じ、レーザーがオフになったことを発見した。
例XVI
生体内の安全試験−限られた臨床パイロット研究
上記実験に続き、足が爪甲真菌症を患っている患者を治療した。これらの患者は、全て無料のボランテイァであり、署名したインフォームド・コンセントを提供した人である。この限られたパイロット研究の元々の目標は、NIMELSレーザー装置を使って生体外で得たのと同じレベルの真菌汚染除去を生体内で実現することであった。我々は、更に、発明人自身の曝露実験の際に発明人が許容できた最大時間の曝露及び温度の限界を印加するように決めた。
【0209】
高度に制御され監視された環境で、各対象者に3回から5回のレーザー曝露処置を行った。4人の対象者を募って治療を行った。署名入りのインフォームド・コンセントを提供した対象者には、補償されておらず、処置中であっても、何時でも引き揚げることができると通知した。
【0210】
第1対象者の治療に用いた線量は、発明人自身の曝露の際に用いたのと同じであった(上記)。爪の表面の温度パラメーターも、発明人が自身の照射で発見した温度と等価であった。
【0211】
治療した足先は、足白癬と爪床の周りの落屑が相当に減り、真菌の保菌場所として作用していた爪甲の汚染が除去されたことを示した。制御爪を横挽きバーで削ぎ落とし、削り屑を保管して菌媒体上で培養した。治療した爪も全く同じ方法で削り落とし、培養した。
【0212】
爪の削り屑を培養するために、サブローデキストロース寒天培地(2%のデキストロース)媒体を、以下の添加物、即ち、一般的な真菌試験のためのクロラムフェニコール(0.04mg/ml);皮膚糸状菌のために選択されるクロラムフェニコール(0.04mg/ml)とシクロヘキシミド(0.4mg/ml);真菌の成長に負の制御として作用するクロラムフェニコール(0.04mg/ml)とグリセオフルビン(20μg/ml)を添加して準備した。
【0213】
治療#1と治療#2(治療#1の後で3日間行った)に関する9日の菌類の結果は、制御足爪の培地の皮膚糸状菌の成長に関しては、同じで、治療した足爪の培地では成長しなかった。治療した培地では成長は見られなかったが、治療しなかった制御培養培地では、著しい成長が見られた。
【0214】
第1対象者は、120日間追跡し、同じプロトコルの下で4回の治療を施した。図15は、事前治療、治療の60日後、及び治療の80日後と、治療後120日後の足爪を比較している。注目すべきは、健康で感染していない爪甲が爪面積の50%を覆っており、120日後に健康な小皮から成長していたことである。
【0215】
以上、幾つかの実施形態について説明してきたが、当業者には理解頂けるように、本開示の方法、システム、及び装置は、本開示の精神から逸脱すること無く、別の特定の形態でも具現化することができる。従って、本実施形態は、全ての点で、本開示を分かり易くするためものであって、限定を課すものではないと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】出力密度(縦軸)対秒単位での照射時間(横軸)を示す双対数グラフである。主レーザー組織相互作用は、異なるエネルギー密度閾値及びパラメーターの関数として示されている。対角線は、異なるエネルギー密度を表しており、本開示により開発されたエネルギー密度値を示している(MINELSと標示されている円領域を参照)。
【図2】本開示の1つの好適な実施形態によるシステムの概略図を示している。
【図3】図3Aは図2の本発明の治療システムにより生成される異なるパターンの光学放射を示している。図3Bは図2の本発明の治療システムにより生成される異なるパターンの光学放射を示している。図3Cは図2の本発明の治療システムにより生成される異なるパターンの光学放射を示している。図3Dは、図2の本発明の治療システムにより生成される異なるパターンの光学放射を示している。
【図4】異なる合計エネルギー値(ジュール)でのE.coli細胞を標的とした本開示の代表的な方法、装置、及びシステムを使って得た、典型的な生体外効能データ(致死率)のグラフである。
【図5】異なる合計エネルギー値(ジュール)でのE.coli細胞を標的とした本開示の代表的な方法とシステムを使って観察した、典型的な最終サンプル温度(℃)のグラフである。
【図6】異なる合計エネルギー値(ジュール)でのS.aureus細胞を標的とした本開示の代表的な方法とシステムを使って生体外で観察した、典型的な最終サンプル温度(℃)のグラフである。
【図7】本開示の代表的な方法とシステム使って治療標的部位の熱的許容可能温度で観察された、典型的な生体外効能データを示すグラフである。
【図8】爪複合体を表す図であり、爪床(爪母基)、爪甲、及び爪甲周囲を示している。爪床は爪甲の下にあり、中に血管と神経が入っている。爪床の中には、角質化した爪の量の大部分を作り出す胚芽基質と、無菌基質が入っている。この基質は、爪の「根」であり、その最も遠位側の部分は、半月と呼ばれる半月型の構造として、多くの爪に見られる。
【図9】典型的な爪甲真菌症の患者の爪を表す図であり、爪甲、爪床(無菌基質と胚芽基質)、及び爪郭(爪上皮の下から成長している半月)領域を示しており、本開示の実施形態の1つによる初期治療に続く数週間で改善し始めた状態を示している。
【図10】慢性的に感染している爪を示す図であり、慢性の爪周囲炎(例えば、爪と境を接する表皮の表在性感染)に伴う特性的特徴を更に示している。爪周囲炎感染は、近位側爪郭のシール部と爪甲の間に、器官に侵入するための侵入門となる壊裂が生じたときに発症する。慢性の爪周囲炎は、一般に、膨れた赤い、ぴりぴり痛む湿潤性の爪郭を作り出し、病気の徴候は6週間以上現れ、長期間の爪甲真菌症を併発する。
【図11】或る爪甲真菌症の患者の爪を表す図であり、病原体に感染している爪の異なる不連続な領域と、爪甲の健康な部分がまだ堅くて半透明な完全に清潔な他の領域とを示している。
【図12】図12Aは面積1.77cm2の入射ガウスビームパターンを有する1.5cmの照射スポットの照明パターンを示す概略図である。図示の様に、ガウスエネルギー分布パターンでは、1.77cm2の照射領域内に、少なくとも6つの異なる出力密度強度が在る。これらの変化する出力密度は、強度(又は出力の集中度)を、スポットの表面積に亘って(周辺の)1から中心点の6まで増大させる。図12Bは対照的に、本発明の或る実施形態に用いられている、生体内及び生体外のNIMELSレーザーシステムに依る均一なエネルギー分布(「上部が平坦」なパターン)を示している。図12Cは面積1.77cm2の入射ガウスビームパターンを有する1.5cmの照射スポットの照明パターンを示す概略図である。図示の様に、ガウスエネルギー分布パターンでは、1.77cm2の照射領域内に、少なくとも6つの異なる出力密度強度が在る。これらの変化する出力密度は、強度(又は出力の集中度)を、スポットの表面積に亘って(周辺の)1から中心点の6まで増大させる。図12Dは対照的に、本発明の或る実施形態に用いられている、生体内及び生体外のNIMELSレーザーシステムに依る均一なエネルギー分布(「上部が平坦」なパターン)を示している。
【図13】所与のスポットサイズのパラメーター(直径1.2−2.2cm)に関するTn関数を示すグラフであり、治療時間パラメーターは、3.0ワットのレーザー出力電力で、409J/cm2のエネルギー密度÷出力密度によって導き出される。従って、NIMELS(時間)因子=Tn=409/出力密度である。
【図14】所与のスポットサイズのパラメーター(直径1.2−2.2cm)に関するTn関数を示すグラフであり、治療時間パラメーターは、3.0ワットのレーザー出力電力で、205J/cm2のエネルギー密度÷出力密度によって導き出される。従って、NIMELS(時間)因子=Tn=205/出力密度である。
【図15】本開示の方法により治療された典型的な爪甲真菌症の患者の爪の外観の、時間の経過に亘る改善度を示している合成写真である。
【図16】カテーテル制御器内の患者上に置かれたカテーテル入口の回りに埋め込まれている複数の光ファイバーとして構成されている送出アッセンブリを含むNIMELS光学カテーテル制御器の或る実施形態を示している。
【図17】図16の実施形態をシミュレートするように作られた身体モデルを示している。
【図18】図16と同様のNIMELS光学カテーテル制御器の裏側を示している。
【図19】図18による身体モデルの、光ファイバーが取り除かれている状態を示している。
【図20】本開示によるNIMELS光学微生物カテーテル制御器の試作的に可能になった側面図である。
【図21】図20の試作の追加図である。
【図22】本開示によるNIMELS光学微生物カテーテル制御器の別の図である。
【技術分野】
【0001】
本開示は、1つ又は複数の医療装置を包含するか又は部分的に含む標的部位を含め、標的部位における生物学的汚染物質のレベルを選択的に下げるための方法、システム、及び機器に関する。本開示は、治療法も包含しており、より具体的には、光学的放射を使用する方法、装置、及びシステムにも関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、関係する2005年8月3日出願の米国仮特許出願第60/705,630号「近赤外線微生物除去レーザー(NIMEL)システムとそれに基づく装置」の恩典を請求し、その内容全体を参考文献としてここに援用しており、同仮出願は、本出願の譲受人に譲渡されている。本出願は、更に、本出願と共通の譲受人を有する以下の米国仮特許出願、即ち、2005年7月21日出願の米国仮特許出願第60/701,896号「近赤外線微生物除去レーザー(NIMEL)システム」、2005年8月23日出願の米国仮特許出願第60/711,091号「近赤外線微生物除去レーザー(NIMEL)システム」、2006年3月9日出願の米国仮特許出願第60/780,998号「指と足の爪の感染の再発を治療及び予防するための方法と装置」、及び2006年4月4日出願の米国仮特許出願第60/789,090号「生物学的一部分への生物学的封じ込めのためのNIMELS光学エネルギーと線量の均一な照射のための方法と装置」に関係しており、これら出願の全てを参考文献としてここに援用する。
【0003】
幾つかのE.coli種と他の腸球菌は、大部分の抗生物質に対する本来の及び後天性の抵抗力を有しており、ヒトと動物の病気における重大な病院内病原体となることが知られている。Boyceらの「J.Clin.Microbiol, 32(5):1148-53」(1994年)、Donskeyらの「N.Engl.j.Med. 343(26):1925-32」(2000年)、Landmanらの「J.Antimicrob.Chemother. 40(2):161-70」(1997年)。腸球菌によって起こるヒトの感染には、心内膜炎、菌血症、尿管感染、創感染、及び腹腔内感染と骨盤内感染症が含まれる。これらの感染の大多数で、有機体は、患者自身の腸内細菌叢から生じ、拡がって、尿管感染、腹腔内感染、及び手術創感染を引き起こす。重症になると、菌血症が、より遠い部位に種幡されることになる。Whitesideらの「Am.J.Infect.Control 11(4):125-9」(1983年)、Pattersonらの「Medicine(Baltimore)74(4):191-200」(1995年)、Cooperらの「Infect.Dis.Clin.Practice 2:332-9」(1993年)。最近米国では、全国的な院内感染監視調査(NNIS)が、腸球菌を、院内感染の第2から第4の最も一般的な原因に格付けした。腸球菌は、しばしば、入院患者に尿管感染、血流感染、及び創感染を引き起こす。更に、腸球菌は、全てのバクテリア心内膜炎の事例の5−15%を引き起こしている。更に、カテーテルに関係する敗血症、相互感染、又は血液培養汚染の危険を大いに増す抗バンコマイシン腸球菌による皮膚移転増殖の高い流行が報告されている。CDC全国院内感染監視(NNIS)システムの報告「Am.J.Infect.Control 26:522-33」(1998年)、Beezholdらの「Clin.Infect.Dis. 24(4):704-6」(1997年)、Tokarsらの「Infect.Control Hosp.Epidemiol, 20(3):171-5」(1999年)。腸球菌による皮膚又は創の感染として知られている感染実体は、NIMELSレーザーシステムにとって特別な関心事である。腸球菌感染には、腫脹、癰、水疱性膿痂疹、及び鱗様皮膚症候群の様な皮膚の症状を引き起こすことが知られている、身体の殆どの皮膚表面が関わっている。S.aureusも、ブドウ球菌食中毒、腸炎、骨髄炎、毒ショック症候群、心内膜炎、髄膜炎、肺炎、膀胱炎、敗血症、及び手術後の創感染の原因となる。Tomiらの「J.Am.Acad.Dermatol,53(1):67-72」(2005年)、Breuerらの「Br.J.Dermatol,147(1):55-61」(2002年)、Ridgewayらの「J.Bone Joint Surg.Br.87(6):844-50」(2005年)。表皮感染は、患者が病院内又は長期療養所にいる間に罹患する場合もある。限られた人数と抗生物質の広範な使用は、S.aureusの抗生物質耐性菌株を発達させることになる。これらの菌株は、チシリン耐性表皮アウレウス(MRSA)と呼ばれる。MRSAによって引き起こされる感染は、しばしば、広汎な抗生物質に対して耐性のあることが多く、非MRSA微生物によって引き起こされる感染と比べて、非常に高い罹病率及び死亡率、高いコスト、及び長期の入院を伴う。病院内のMRSA感染の危険要因には、手術、事前抗菌治療、集中治療への入場、MRSAコロニーを有する患者又は健康管理従事者への暴露、48時間を越える病院内滞在、及び、皮膚を貫通する内在型カテーテル又は他の医療装置の装填が含まれる。Hidronらの「Clin.Infect.Dis.15;41(2):159-66」(2005年)、Hsuehらの「Int.J.Antimicrob.Agents 26(1):43-49」(2005年)。
【0004】
これらの腸球菌及び葡萄状球菌の感染は、中心の静脈性カテーテルがCVC感染する可能性が大きく、患者に相当な罹病率及び死亡率を引き起こす、Tomiら(上記)。実際、データは、米国では、毎年ICUで、1500万のCVC日(即ち、選択された時間中に、選択された集団の全ての患者によるCVCへの合計暴露日数)が起こっていることを示している、Mermel LA「Ann.Intern 132:391-402」(2000年)。従って、CVCが関係する血流感染の平均率は、ICU CDCでの1,000カテーテル日につき5.3件になり(上記)、言い換えれば、米国では、略80,000件のCVCに関係する血流感染が毎年ICUで起こっている。健康管理施設に起因する感染当たりの経費は、34,508から56,000ドルと推定され、Relloらの「Am.J.Respir.Crit.Care Med.162:1027-30」(2000年)、Dimickらの「Arch.Surg.136:229-34」(2001年)、CVCに関係するBSIの患者に対する手当ての年間経費は、29,600万から23億ドルであるMermel LA「Ann.Intern.Med.133:395」(2000年)。
【0005】
健康管理環境内の真菌感染の重要性は、決して誇張されているわけではない。一例として、カンジダアルビカンス(C.albicans)は、病院内のICUの患者の院内感染に関係する7番目に最も一般的な病原体として知られている。Fridkinらの「Clinics In Chest Medicine, 20:(2)」(1999年)。C.albicansについて治療に関して一般的に受け入れられている治療選択肢は、ポリエン類の抗真菌(アンホテリシン)、イミダゾール類の抗真菌、及びトリアゾールである。これらの治療の多くは、(全身及び器官系統に危険が及ぶので)長期間継続されなければならず、抗微生物耐性真菌病原体が、緊急を要する所以である。これが発生すると、治療の選択肢は、僅かになり限られてくる。
【0006】
一例として、後天性の免疫不全症候群患者には、中でもアゾール治療又は低CD4計数に曝された患者に、アゾール耐性C.albicans感染を発症している患者がいる。Johnsonらの「J.Antimicrob.Chemother, 35:103-114」(1995年)、Maenzaらの「J.Infect.Dis.173:219-225」(1996年)。後天性の免疫不全症候群患者におけるアゾール耐性C.albicansの最近の様相は、他の免疫不全の患者集団における先触れ的な耐性問題を最も的確に示している。
【0007】
これらのデータは、内因性の真菌感染に対し最も危険性の高い患者に真菌予防治療を段階的に強化することが、本来的なアゾール耐性を有するC.krusei、又更にはアゾール耐性を有するのC.glabrata又はC.albicansの様な真菌病原体の頻発を増やすことに繋がるということを示唆している。Maenzaら(上記)、Beezholdらの「Clin.Infect.Dis.24:704-706」(1997年)、Fridkinらの「Clin.Microbiol.Rev.9:499-511」(1996年)、Johnsonらの「J.Antimicrob.Chemother,35:103-114」(1995年)。
【0008】
この不吉な傾向に続いて、1998年の50個の米国医療センターの多センター研究からのデータは、院内患者の血流とは関わり無いC.albicansの10%が、抗真菌剤フルコナゾールに耐性を持っていたことを示している。Pfallerらの「Diagn.Microbiol.Infect.Dis.31:327-332」(1998年)。耐性率は、米国の区域によって、5%から15%であり、アゾール使用量の様な局所的な要因が、アゾール耐性のC.albicans感染の相対的頻度において役割を果たしていることを示唆している。
【0009】
皮膚を冒すカンジダとして知られている感染実体は、特別の関心事である。これらのカンジダ感染は、皮膚に関わっており、身体の殆どの皮膚表面を占めることもある。しかしながら、最もしばしば発症するのは、温かく、湿っており、又は折り畳む領域(例えば、腋の下と股間)である。皮膚を冒すカンジダは、非常に一般的である。Huangらの「Dermatol.Ther.17(6):517-22」(2004年)。カンジダは、おむつかぶれの最も一般的な原因であり、おむつの内側の温暖湿潤状態を利用する。これらの感染を引き起こす最も一般的な真菌は、カンジダアルビカンスである。Gallupらの「J.Drugs Dermatol,4(1):29-34」(2005年)。カンジダ感染は、糖尿病を患っている人及び肥満の人にも極めて一般的である。カンジダは、更に、爪甲真菌症と呼ばれる爪の感染や、口角炎と呼ばれる口部の角回りの感染を引き起こす。
【0010】
従って、記載されている文献は、これらの感染に取り組む画期的で新規な治療の必要性を予告している。
伝統的に、可視光及び近赤外線スペクトル(例えば、波長600nmから1100nm)の半導体ダイオードレーザーは、生物学的システムのメラニンとヘモグロビンに対する選択的吸収曲線を有しているので、医学、歯学、及び獣医学科学の様々な目的に使用されてきた。近赤外線光エネルギーの水中吸収は少ないので、その様な放射は、可視光又は長赤外線波長(例えば、中間赤外線及び遠赤外線)よりも遠くまで生物組織に浸透する。具体的には、近赤外線ダイオードレーザーエネルギーは、生物組織に約4センチメートル浸透することができる。それに対して、長波長の放射エネルギー(例えば、中間赤外線及び遠赤外線放射をそれぞれ生成するEr:YAG及びCO2レーザーの放射エネルギー)は、比較的高い水吸収曲線を有しており、生物組織に、僅か15から75ミクロンまでしか浸透しない(10,000ミクロン=1cm)。従って、近赤外線ダイオードレーザーからの放射を使った場合、中間赤外線波長及び遠赤外線波長を使った場合よりも、熱沈着は生物組織内の遙かに深いところに起こる。従って、深い腫瘍の切除又はレーザー熱生成微生物殺菌のためのレーザー侵入型熱治療の様な癌治療に、より効果がある。
【0011】
可視及び近赤外線ダイオードレーザーを使ってバクテリア細胞を破壊するためには、先行技術では、照射される部位に外因性の発色団が存在すること及び/又は非常に狭い治療窓と治療のための機会を必要とする。正常なヒトの体温は37℃であり、大部分のバクテリアの感染における迅速なバクテリアの成長と一致する。近赤外線ダイオードレーザーによって放射エネルギーが生物学的システムに印加されると、照射された領域の温度は、直ちに上昇し始め、10℃上昇する度に、有害な生物学的相互作用が起こる。45℃で組織は過温症になり、50℃で酵素の活動が減り、細胞が動けなくになり、60℃でプロテインとコラーゲンが変性し、凝固が始まり、80℃で細胞膜が透過性になり、100℃で水と生物学的物質が蒸発する。80℃以上の温度が相当時間続くと(局所的な部位で5から10秒)、健康な細胞が不可逆的に害されることになる。
【0012】
近赤外線レーザーエネルギーによるバクテリアの光熱分解(熱誘発分解)には、先行技術では、哺乳類の細胞を危うくするような相当の温度上昇が必要である。しかしながら、哺乳類の細胞を不可逆的に熱損傷させることなく、バクテリアを熱によって破壊することが望ましい場合も多い。ダイオードレーザーは、先行技術では、可視レーザーエネルギー(400nmから700nm)を使ってバクテリアを破壊するのに用いられてきた。外因性の発色団をバクテリア部位へ印加することが、可視放射による光線力学療法には必要であった。先行技術では、光線力学によるバクテリアの不活性化は、外因性の発色団が原核(微生物)細胞に加えられ、その後、適切な光又はレーザー源によって照射されるときに実現される。外因性の発色団に連結されている可視波長により活性酸素種を生成することによってバクテリアを選択的に破壊する努力を見ると、先行技術の文献では、2つの研究が際立っている(例えば、Gibsonらの「Clin.Infect.Dis.,(16)Suppl 4:S411-3」(1993年)と、Wilsonらの「Oral Microb.Immunol.Jun;8(3):182-7」(1993年)及びWilsonらの「J.Oral.Pathol.Med.Sep;22(8):354-7」(1993年)。
【特許文献1】米国特許第4,755,534号明細書
【特許文献2】米国特許第6,121,314号明細書
【特許文献3】米国特許第4,680,291号明細書
【特許文献4】米国特許第5,681,849号明細書
【特許文献5】米国特許第5,856,355号明細書
【特許文献6】米国特許第6,005,001号明細書
【特許文献7】米国特許第5,633,015号明細書
【特許文献8】米国特許第4,727,064号明細書
【特許文献9】米国特許第5,707,975号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、物哺乳類の細胞への損傷を最小にしながら微生物の成長を抑えるための改良された理学療法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示は、生物学的汚染物質以外の生物学的部分(例えば、哺乳類の組織、細胞、又はプロテイン標本の様な生物化学的実体/標本)に許容できないリスク及び/又は許容できない悪影響を及ぼすこと無く、生物学的汚染物質を選択的に標的とする方法、システム及び機器を提供することである。
【0015】
本開示は、先行技術に記載されている典型的な方法(例えば、生育能力の損失又は熱分解)に関係付けられた、標的とする生物学的汚染物質以外の生物学的部分に許容できないリスク及び/又は許容できない悪影響を及ぼすこと無く、生物学的汚染物質を弱めることができる或る波長及び線量の近赤外線放射エネルギーを印加する方法、システム及び機器を提供する。本開示の方法、システム、及び機器を、以後、時には、略してNIMELS(即ち、近赤外線微生物除去レーザーシステム)と呼ぶ。
【0016】
第1の態様では、本開示は、標的部位を、所望の波長、出力密度レベル、及び/又はエネルギー密度レベルを有する光学的放射で照射することによって、所与の標的部位の中の又は所与の標的部位にある標的とする生物学的汚染物質以外の生物学的部分(例えば、哺乳動物の組織、細胞、又はプロテイン標本の様な或る生物化学標本)に許容できないリスク及び/又は許容できない悪影響を及ぼすこと無く、標的部位の生物学的汚染物質のレベルを下げる方法を提供する。或る実施形態では、その様な印加される光学的放射は、ここに記載されている様に、NIMELS線量で、約850nmから約900nmの波長を有している。代表的な実施形態では、約865nmから約875nmの波長が用いられている。別の実施形態では、その様な印加される放射は、NIMELS線量で約905nmから約945nmの波長を有している。或る実施形態では、その様な印加される光学的放射は、NIMELS線量で約925nmから約935nmの波長を有している。限定するわけではないが、以後例示する代表的な実施形態では、利用されている波長は930nmである。本開示により治療、低減、及び/又は除去される生物学的汚染物質には、例えば、バクテリア、真菌、カビ菌、マイコプラズマ、原生動物、プリオン、寄生生物、ウイルス、及びウイルス病原体の様な微生物が含まれる。以下に述べる代表的な実施形態は、それぞれ870nmと930nmで括られる範囲の波長を採用している。
【0017】
第2の態様では、本開示は、標的部位を(a)約850nmから約900nmの波長を有する光学的放射、及び(b)約905nmから約945nmの波長を有する光学的放射によってNIMELS線量で照射することによって、所与の標的部位の中の又は所与の標的部位にある生物学的汚染物質以外の生物学的部分(例えば、哺乳動物の組織、細胞、又はプロテイン標本の様な或る種の生物化学標本)に許容できないリスク及び/又は許容できない悪影響を及ぼすこと無く、標的部位の生物学的汚染物質のレベルを下げる方法を提供する。この組み合わせ方法に関しては、以後、更に詳しく論じる様に、本開示の実施形態は、約865nmから約875nmの波長を利用する。従って、限定するわけではないが、以後例示する代表的な実施形態では、利用されている波長は870nmである。同様に、考えられる或る実施形態の他の波長範囲に関しては、光学的放射は、約925nmから約935nmの波長を有している。限定するわけではないが、以後例示する代表的な実施形態では、利用されている波長は930nmである。
【0018】
本開示のこの態様による方法では、考えられる波長範囲による照射は、独立して、順次、又は基本的に同時に(全ての技法は、パルス状及び/又は連続波、CW、オペレーションを利用する)行われる。
【0019】
第3の態様では、本開示は、本開示の第1及び第2態様の様な本開示の他の態様による方法を実施するシステムを提供する。その様なシステムは、放射を生成するためのレーザー発振器と、放射線量を計算し制御するための制御器と、放射を、印加区域を通して治療部位に送るための送出アッセンブリ(システム)と、を含むことができる。適した送出アッセンブリ/システムは、中空の導波管、光ファイバー、及び/又は自由空間/ビーム光伝送構成要素を含んでいる。適した自由空間/ビーム光伝送構成要素には、コリメータレンズ及び/又は開口絞りが含まれる。
【0020】
1つの形態では、本システムは、二重波長の近赤外線光源として機能する2つ又はそれ以上の半導体ダイオードレーザーを使用する。2つ又はそれ以上のダイオードレーザーは、代表的な実施形態では、1つのハウジング内に、制御が統一されて配置されている。2つの波長は、約850nmから900nm及び905nmから945nmの2つの範囲の放出を含んでいる。本開示のレーザー発振器は、本開示の範囲に含まれる何れかの1つの範囲で1つの波長(又はピーク値、例えば中心波長)を放出するのに用いられる。或る実施形態では、その様なレーザーは、本開示の第1及び第2の態様に関して更に詳しく説明している様に、実質的に865−875nmと925−935nmの範囲内で放射を放出するのに用いられる。ここに例示しているシステムは、本開示の可能な実施形態、例えば、実質的に870nmと930nmで放射を放出するように考案されたシステムを示すために提供されており、他の波長を作って利用してもよい。
【0021】
本開示によるシステムは、生成したい各個々の波長範囲に適した光源を含んでいる。限定するわけではないが、例えば、適した半導体レーザーダイオードか、可変超短パルスレーザー発振器か、又は(例えば、適した希土類元素で)イオンドープ処理した光ファイバー又はファイバーレーザーを使用してもよい。或る形態では、適した近赤外線レーザーは、チタンドープ処理サファイアを含んでいる。他の型式の固体状態、液体、又は気体ゲイン(活性)媒体を有するレーザー源を含め、他の適したレーザー源を本開示の範囲内で用いることができる。
【0022】
本開示の1つの実施形態によれば、治療システムは、実質的に約850nmから約900nmの第1波長範囲の光学的放射を生成するようになっている光学的放射生成装置と、光学的放射が印加区域を通して送り出されるようにするための送出アッセンブリと、印加区域を通して送られる放射線量を制御するために光学的放射生成装置に作動的に接続されている制御器と、を含んでおり、単位面積当たりの送られる放射の出力密度とエネルギー密度の時間積分値が、所定の閾値以下となるようになっている。更に、本開示のこの実施形態によれば、実質的に約865nmから約875nmの第1波長範囲の光学的放射を生成するように特別に作られている治療システムも考えられる。
【0023】
別の実施形態によれば、治療システムは、実質的に約905nmから約945nmの第2波長範囲の光学的放射を生成するように更に構成されている光放射生成装置を含んでおり、或る実施形態では、先に述べた第1波長範囲は、光放射生成装置によって、同時に又は並行して/連続して作られる。本開示のこの実施形態によれば、実質的に約925nmから約935nmの第1波長範囲の光学的放射を生成するように特別に構成されている治療システムも考えられる。
【0024】
治療システムは、更に、第2波長範囲の(第1波長範囲も利用できる)光学的放射を、印加区域を通して送り出すための送出アッセンブリ(システム)と、光学的放射生成装置を作動的に制御して、放射を、実質的に第1波長範囲か、実質的に第2波長範囲か、又はその何れかの組み合わせかで選択的に生成するための制御器と、を含んでいてもよい。
【0025】
別の実施形態によれば、治療システムの制御器は、放射線量を制御する出力制限器を含んでいる。制御器は、更に、患者のプロファイルを記憶するためのメモリと、オペレーターが入力する情報に基づいて具体的な標的部位に必要な放射線量を計算するための線量計算器を含んでいる。1つの好適な実施形態では、メモリは、更に、具体的な印加に関係付けられた、放射のパターンと放射線量の様な、異なる型式の病気と治療のプロファイルに関する情報を記憶するのにも用いられる。
【0026】
光学的放射は、治療システムから印加部位へ、異なるパターンで送られる。放射は、連続波(CW)、パルス状、又はそれぞれの組み合わせとして生成され、送出される。例えば、単一の波長パターンで、又は複数の波長(例えば、二重波長)パターンで送られる。別の例では、放射の2つの波長が、同じ治療部位に多重送信(光学的に組み合わされる)されるか、又は同時に送信される。限定するわけではないが、偏光ビームスプリッター(結合器)を使用すること、及び/又は適したミラー及び/又はレンズからの焦点合わせされた出力を重ねること、又は他の適した多重/組み合わせ技法を使用することを含めて、適した光学的組み合わせ技法を用いることができる。代わりに、放射を、2つの波長の放射が同じ治療部位に交互に送られる交互パターンで送出してもよい。2つ又はそれ以上のパルスの間隔は、本開示のNIMELS技法により、必要に応じて選択される。各治療は、これらの送信方式の何れかを組み合わせる。送出される光学的放射の強度分布は、必要に応じて選択できる。代表的な実施形態は、上部が平坦な又は実質的に上部が平坦な(例えば、台形などの)強度分布を利用する。ガウス分布の様な他の強度分布を使用してもよい。
【0027】
本開示のこの他の特徴及び利点は、以下の好適な実施形態の詳細な説明に述べられており、一部分は、説明から明らかになるか、又は、本開示の実施によって習得される。本開示のこの様な特徴及び利点は、記載している説明と特許請求の範囲に具体的に指摘されているシステム、方法、及び機器によって理解され実現されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本開示の方法、システム、及び機器をより良く理解するために、添付図面を参考にしながら以下の詳細な説明を参照されたい。
ここで言及している特許、公開出願、及び科学文献は、当業者の知識を確立するものであり、それぞれが具体的に個別に参考文献として援用すると示されているものとして、それら全体を参考文献としてここに援用する。ここに引用している参考文献と本明細書の具体的な教示の間に不一致があれば、後者を優先して解消するものとする。同様に、単語又は句の、技術的な理解の定義と、本明細書で具体的に教示されている定義の間に不一致があれば、後者を優先して解消するものとする。
【0029】
ここで用いている技法的及び科学的用語は、他に定義されていない場合は、本開示に関わる当業者に共通に理解されている意味を有する。ここでは、当業者に既知の様々な方法論及び資料に言及している。微生物学の一般的な原理について記載している基本的な参考書籍には、Jiklikらによる「Zinsser Microbiology」第20版、Appleton and Lange(Prentice Hall)、East Norwalk、コネチカット州(1992年);Greenwoodらによる「Medical Microbiology」第16版、Elsevier Science社、ニューヨーク州(2003年);Sambrookらによる「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York、ニューヨーク州(1989年);及びKaufmanらによる「Handbook of Molecular and Cellular Method in Boilogy in Medicine」CRC Press、Boca Raton、フロリダ州(1995年)が含まれる。薬理学の一般的な原理について記載している基本的な参考書籍には、GoodmanとGilmanによる「Pharmacological Basis of Therapeutics」第10版、McGraw Hill社、New York、ニューヨーク州(2001年)が含まれる。基本的な皮膚病の原理は、Habifらによる「Skin Disease, Diagnosis and Treatment」第1版、Mosby社、St. Louis、ミズーリ州(2001年)に見られる。
【0030】
本開示は、ここに論じる様に、標的の生物学的汚染物質以外の生物学的部分に対するリスクを最小にして、標的の生物学的汚染物質を弱めることができる、或る波長の近赤外線放射エネルギーを或る線量で加える方法、システム、及び機器を提供する。その様な方法と装置/システムは、例えば、当技術に述べられている伝統的な方法に伴う容認できない温度上昇を生じさせず、又はそれに頼らない。
【0031】
近赤外線放射エネルギーは、文献では、操作される細胞の生存能力を保存するのが望まれる様々な用途で生物学的物体を操作及び制御するのに用いられる光学ピンセット(Ashkinらによる「Nature330」769−771頁(1987年))として用いられてきている。多くの人が、近赤外線放射をピンセットとして使用することは、「光学療法」又は単に望ましくない細胞の損傷(例えば、定量化できる生存能力の減少と増殖によって測定される)と関係付けられると報告している(AshkinとDziedzic、Ber Bunsenges Phys.Chem.93:254−260頁(1989年))。細胞の生存能力を妨げないように光学ピンセットを最適化するという努力は、光損傷を起こす作用スペクトルは870nmと930nmで最大になるという発見に繋がった(NeumanらによるBiophy.J.77:2856−2863頁(1999年))。中国のハムスター卵巣(「CHO」)細胞(例えば、LiangらによるBiophy.J.70:1529−1533頁(1996年))の同様のデータは、原核細胞に見られる光損傷の波長依存性が真核細胞にも共有されることを研究者に信じさせることに繋がった(NeumanらによるBiophy.J.77:2856−2863頁(1999年))。従って文献の合意は、870nmと900nmで特定される最大に近いか又はこれと一致する波長を有する近赤外線放射は、原核(例えば、バクテリア)及び真核(例えば、CHO)で細胞の損傷を引き起こすということであった。
【0032】
870及び900の最大に近いか又はそれと一致する放射を使った更に厳密な研究(以後に例示される)は、標的部位(例えば、細胞)への顕著な差別的効果に関係付けられた光学パラメーター(例えば、波長、出力密度、エネルギー密度、及び照射持続時間)の解明に繋がった。その様な線量パラメーターを使えば、近赤外線放射を、標的の生物学的汚染物質に対して、他の生物学的部分には在るとしても境界部分だけに影響を限定しながら、使用することができる。容易に理解頂けるように、その様な発見は多くの有用な実際の用途を持っている。
【0033】
更に具体的には、或る線量パラメーター内では、約905nmから約945nmの範囲にある波長のエネルギーが、所与の標的部位内の標的となる生物学的汚染物質以外の生物学的部分に対する許容できないリスク及び/又は許容できない悪影響無しに、標的部位内の特定の標的となる生物学的汚染物質に特に適していることが分かっている。
【0034】
従って、第1の態様では、本開示は、約905nmから約945nmの波長を有する光学放射によって標的部位を照射することによって、所与の標的部位内の標的となる生物学的汚染物質以外(例えば、哺乳動物の組織、細胞、又はプロテイン標本の様な或る種の生物化学標本)の生物学的部分に対する許容できないリスク及び/又は許容できない悪影響無しに、標的部位内の生物学的汚染物質のレベルを下げる方法を提供する。或る実施形態では、光学放射は、約925nmから約935nmの波長を有する。限定するわけではないが、以後例示する代表的な実施形態では、利用されている波長は930nmである。標的部位には、生体内に配置されている医療装置も含まれ、それについては以下に更に詳しく述べる。
【0035】
約905nmから約945nmの波長を有する光学放射で標的部位を照射することにより得られる効果は、約865nmから約875nmの波長による少なくとも1つの光学放射を或るNIMELS線量で追加照射することによって増大することも分かっている。ここで証明されている様に、組み合わせ照射は、治療標的部位で所望の差別的効果を得るのに必要な合計のエネルギー及び密度を減らすことによって、905nmから945nmの範囲の放射の効果を更に強化する。この発見は、所望の効果を得るのに必要な905nmから930nmの範囲の放射を減らすことになるので特に重要である。結果として、この組み合わせ照射方法は、標的となる生物学的汚染物質以外の生物学的部分への許容できないリスク及び/又は許容できない悪影響を更に最小化するという付加的利点を有する。
【0036】
その様な共同作用は、標的部位が、(a)約850nmから900nmの波長と(b)約905nmから約945nmの波長という2つの波長に曝されたときに発見された。限定するわけではないが、ここに例示している或る代表的な実施形態では、NIMELS線量で、865nmから875nmの範囲の波長による照射が、925nmから935nmの範囲の波長による照射の効果を強化することが分かった。或る実施形態では、標的部位は、λ=870nmとλ=930nmの放射に曝され、付随して必要な合計のエネルギー及び密度は低減された。
【0037】
先に述べたNIMELS波長(例えば、850nmから900nmと、905nmから945nm)は、標的部位を単独で、連続して、及び/又は基本的に同時に照射するのに用いられる。
【0038】
ここで用いる「生物学的汚染物質のレベルを下げる」という表現は、本開示によって治療される標的部位に見られる少なくとも1つの活性生物学的汚染物質のレベルの低下を意味するものである。経験的に、生物学的汚染物質のレベルの低下は、標的部位の生物学的汚染物質の生存能力の低下として定量化できる(例えば、問題の生物学的汚染物質の生存能力及び/又はその成長し及び/又は分割する能力を阻止することによって)。当業者には理解頂けるように、「生物学的汚染物質のレベルの低下」という表現は、あらゆる低下を包含し、100%の低下である必要はない。或る実施形態では、実際に、所与の生物学的汚染物質生存能力は、他の事象を行うことができる(例えば、患者の免疫システムが所与の感染に反応できるようになるか、又は、所与の感染に取り組むため、他の汚染物質治療、例えば全身的な抗生物質治療を行うことができる)程度に部分的に下げられるだけである。或る例では、所与の生物学的汚染物質の、抗菌剤に対する感受性は、本開示による治療後に増していることが分かっている。具体的な実施形態では、MRSA菌株は、本開示による治療の結果として、抗生物質に対してより敏感になることが分かっている(データを示さず)。
【0039】
ここで用いる「生物学的汚染物質」という用語は、標的部位と直接又は間接的に接触すると、標的部位(例えば、患者の感染した組織又は器官)に、或いは、哺乳動物の場合は標的部位付近(例えば、受容体内に移植された細胞、組織、又は器官の場合、或いは、患者に用いられる装置の場合)に、望ましくない及び/又は有害な影響を及ぼす能力のある汚染物質を意味するものである。本開示による生物学的汚染物質は、例えば、当業者には既知で、本発明による標的部位に一般的に見られるような、バクテリア、菌類、カビ菌、マイコプラズマ、原生動物、プリオン、寄生生物、ウイルス、及びウイルス病原体の様な微生物である。当業者には理解頂けるように、本開示の方法及びシステム/装置は、文献(例えば、Joklikら(上記)とGreenwood(上記)参照)で広く知られている様々な生物学的汚染物質と結び付けて用いることができる。以下のリストは、本開示の方法及び装置/システムにより標的となる広範な微生物を示すために提供しているだけであり、本開示の適用範囲を何らも制限するものではない。
【0040】
従って、限定するわけではなく例示的な生物学的汚染物質の例には、例えば、大腸菌、腸内菌、バチルス、カンピロバクター、コリネバクテリア、クレブシエラ菌、トレポネーマ、ビブリオ、連鎖球菌、及びブドウ球菌の様なあらゆるバクテリアが含まれる。
【0041】
更に説明すると、考えられる生物学的汚染物質には、例えば、カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカス、各種皮膚糸状菌(例えば、白癬菌、小胞子菌属、及び表皮菌)、コクシジオイデス属、ヒストプラズマ抗体、ブラストミセス属の様な真菌が含まれる。トリパノソーマ及びマラリア性寄生生物の様な寄生生物も、標的となる生物学的汚染物質であり、プラスモジウム種、並びに、カビ菌、マイコプラズマ、プリオン、及びヒトの免疫不全ウイルス及び他のレトロウイルス、ヘルペスウイルス、パルボウイルス、フィロウイルス、circoウィルス、パラミクソウイルス、サイトメガロウイルス、肝炎ウイルス(B型肝炎とC型肝炎を含む)、ポックスウイルス、トーガウイルス、エプスタインバーウイルス、及びパルボウイルスの様なウィルスが含まれる。
【0042】
理解頂けるように、照射される標的部位が生物学的汚染物質に既に感染している必要はない。実際、本開示の方法は、感染前に(例えば、それを予防するために)「予防的に」用いることができる。代表的な実施形態は、カテーテル、人口関節などの医療装置に用いることができる。
【0043】
或る例では、照射は、一時的緩和であると同時に予防である。従って、本開示の方法は、感染の症状を治療又は緩和するために、1つ又は複数の組織を治療上効果的な量の時間だけ照射するのに用いられる。「治療又は緩和する」という表現は、本発明により治療されている各個人の症状を、その様な治療を受けない人の症状と比べて、軽減し、予防し、及び/又は反転させることを意味する。
【0044】
開業医には理解頂けるように、ここに述べている方法は、その後の治療を決めるために、熟練開業医(外科医又は獣医)による継続的な臨床評価と合わせて用いられるべきものである。従って、治療後に、開業医は、標準的な方法論に従って、基礎的な状態の治療における改善について評価することになる。その様な評価は、具体的な一回分の治療用放射線量、照射方式、及び補助的な治療などを増減又は継続させるかどうかを決める際の助けになり情報を提供する。
【0045】
本開示の説明で論じる際の「標的部位」という用語は、生物学的汚染物質によって汚染される可能性のある全ての細胞、組織、器官、物体、又は溶液を指す。従って、標的部位は、哺乳動物に危険を課す生物学的汚染物質に感染しているか、感染する虞のある哺乳動物の細胞、組織、又は器官、例えば(生体内に)移植されている医療装置を取り囲む組織である。或いは、標的部位は、哺乳動物の標的部位付近(例えば、受容体の哺乳動物に移植された細胞、組織、又は器官の場合、或いは、哺乳動物に用いられる装置の場合)に危険を課す生物学的汚染物質に感染しているか、感染する虞のある哺乳動物の細胞、組織、又は器官であってもよい。その様な哺乳動物の中で最も重要な位置を占めるのがヒトであるが、本開示は、それに限定されるものではなく、獣医も使用できる。従って、本開示によれば、「哺乳動物」又は「必要としている哺乳動物」又は「患者」には、ヒト、並びにヒトでない哺乳動物、具体的には、限定するわけではないがネコ、イヌ、及びウマを含む家畜が含まれる。標的部位には、カテーテル、ステント、人工関節などの医療装置も含まれる。
【0046】
当業者には理解頂けるように、本開示は、あらゆる微生物、真菌、及びウイルス感染によって引き起こされるか、それらに関連する様々な病気に関して有用である(一般的には、Harrisonの「Principles of Internal Medicine」第13版、McGraw Hill、ニューヨーク(1994年)参照)。或る実施形態では、本開示による方法とシステムは、既知の抗菌剤組成物の投与により感染を治療する、当該技術で行われている典型的治療方法(例えば、GoodmanとGilman(上記)参照)と並行して用いられる。「抗菌組成物」、「抗菌剤」という用語は、動物又は人間に投与され、微生物感染の増殖を抑える化合物(例えば、抗バクテリア、抗真菌、及び抗ウイルス)とその組み合わせを指す。
【0047】
考えられる広範な用途には、幾つか挙げるとすれば、例えば、様々な皮膚病、足病、小児科、及び全般的な医学が含まれる。
多血症皮膚病の状態は、本開示の方法、装置/システムによって治療することができる(例えば、Habifら(上記)参照)。リストに挙げられている具体的な感染症に束ねようとしなくても、本開示は、例えば、紅色陰癬、腋の下の部分の毛髪糸状菌症、及びあばた状になった表皮剥離を引き起こすコリネバクテリア感染と、膿痂疹、膿瘡、及び毛嚢炎を引きおこするブドウ球菌感染と、膿痂疹及び丹毒を引き起こす連鎖球菌感染を治療するのに用いられる。紅色陰癬は、間擦空間に普通に生じるコリネバクテリアによって引き起こされる表在性の皮膚感染である。膿痂疹は、子どもに一般的な感染であるが、成人も発症する。それは、一般的に、ブドウ球菌アウレウス又は連鎖球菌のどちらかによって引き起こされる。膿瘡は、糖尿病を上手く制御できていない患者の様な衰弱した人に発症し、一般的に、膿痂疹を引き起こすのと同じ有機体によって引き起こされる。毛嚢炎の患者は、毛の根元、具体的には頭皮、背中、脚、及び腕に黄色っぽい膿疱が現れる。フルンケル(furuncles)又はせつ(boils)は、毛嚢炎のもっと激しい形態である。丹毒は、罹患領域に、赤斑、痛み、及び腫れが急に現れる。病気は、β溶血性連鎖球菌によって引き起こされると考えられており、例えば、Truebらの「Pediatr Dermato 1994、11、35-8」(1994年)と、Truboらの「Patient Care 31(6)、78-94」(1997年)と、Chartierらの「Int.J.Dermatol 35、779-81」(1996年)と、Erikssonらの「Clin.Infect.Dis.23、1091-8」(1996年)とを参照されたい。
【0048】
同様に、真菌と酵母菌が皮膚の組織に感染すると、本開示が取り組んでいる様々な状況(皮膚真菌症)を引き起こすが、その中には、例えば、頭部白癬、須毛白癬、股部白癬、手白癬、足白癬、及び爪白癬が含まれる(先に論じた爪甲真菌症参照)(Ansariらの「Lower Extremity Wounds 4(2)、74-87」(2005年)、Zaiasらの「J.Fam.Pract 42、513-8」(1996年))、Draleらの「J.Am.Acad.Dermatol 34(2 Pt 1)、282-6」(1996年)、Grahamらの「J.Am.Acad.Dermatol 34(2 Pt 1)、287-9」(1996年)、Egawaらの「Skin Research and Tech.12、126-132」(2005年)、Hayの「Dermatol Clin.14、113-24」(1996年)参照)。カンジダ症病原体が基になっている感染症は、一般的に、皮膚が折り重なる部分やオムツの領域の様な湿潤な領域に起こる。木の破片又は棘によって引き起こされる皮膚の傷は、スポロトリクム病になる(Kovacsらの「Postgrad Med 98(6)、61-2、68-9、73-5」(1995年)参照)。カンジダ症白体及び白癬菌、表皮糸状菌属、小胞子菌属、Aspargillum、及びマラセジア種は、一般的な感染有機体である(Masri-Fridlingの「Dermatol Clin.14、33-40」(1996年)参照)。
【0049】
HPV(ヒトの乳頭腫ウイルス)も皮膚感染を引き起こし、臨床的には、感染した表面とその相対的な水分次第で、異なる型式のいぼとして現れる。一般的に発症するいぼは、一般的ないぼ、足裏のいぼ、幼児のいぼ、及びコンジロームを含んでいる。いぼに関する標準的な定番の効果的な治療法で、示すようなものは無い(Sterlingの「Practitioner 239、44-7」(1995年))。
【0050】
以下に例示する様に、本開示は、爪甲真菌症、即ち、手又は足の爪甲の病気(例えば、真菌感染)の治療に用いられる。ここで「爪」と言う際には、爪甲(爪の角状の小さな外層、即ち爪の目に見える部分である爪角質層)と、爪床(爪甲の下の表皮が改質された領域であり、爪甲は成長するにつれその上を滑る)と、小皮(爪甲に重なっており、爪の基部を縁取っている組織)と、爪郭(皮膚は、そのフレームを折り重ね、爪を3つの側面で支える)と、半月(爪の基部の白い半月)と、基質(小皮の下の、爪の隠れた部分)と、下爪皮(爪の自由遠位端の下の厚い表皮)及び爪母基と、を含む爪複合体の内の1つ、数個、又は全部を指すことが含まれる。爪は、基質から成長する。爪は、多くが、ケラチン、硬化プロテインから成っている(皮膚と髪にもある)。新しい細胞が基質内で成長すると、古い細胞は押し出され、小さくなり、馴染みのある指爪又は足爪の平たくて固い形態になる。
【0051】
爪の真菌症は、3族の皮膚糸状菌、即ち、白癬菌、小胞子菌属、表皮菌と、イーストカンジダ(その主要なものはC.白体)、及び/又はスコプラリオプシスbrevicaulis、フサリウム種、アスペルギルス種、アルテルナリア属、アクレモニウム属、Scytalidinum dimidiatum(Hendersonula toruloides)、Scytalidinium hyalinumによって引き起こされる。爪甲真菌症は、1つ又はそれ以上の足爪及び/又は手爪に影響を及ぼし、足の親指又は足の小指を冒すことが最も多い。それは、横方向の爪甲真菌症(白色又は黄色の不透明な縞が爪の片側に現れる)、爪下角化症(爪の下で鱗化が起こる)、及び遠位の爪甲剥離症(爪の端部が上向きに上がる)の様な1つ又は幾つかの異なるパターンで現れる。一般的な臨床の所見には、自由端の崩れ(例えば、表在性の白い爪甲真菌症)、爪甲の上部に現れる薄片状の白いまだらとくぼみ(例えば、近位の爪甲真菌症)、半月(半月部)に現れる黄色斑点、及び爪の完全崩壊が含まれる(SehgalとJainの「Inter.J.of Dermatol 44、241-249」(2000年)、Hayの「JEADV 19(Suppl. 1.)、1-7」(2005年)、Warshawらの「Inter.J.of Dermatol 44、785-788」(2005年)、Sigureirssonらの「J.of Dermatol. Treatment 17、38-44」(2006年)、Rodgersらの「Amer.Fam.Phys.(
1207113406093_0.html
参照)」、Lateurの「J.of Cosmet.Dermatol 5、171-177」(2006年))。
【0052】
容易に理解頂けるように、本開示による治療は、爪甲真菌症と体部白癬に関係する多くの既知の臨床事象に取り組む理学療法も提供する。爪甲真菌症に罹患している多くの患者に効果的な治療法が無いことは、患者の生活の質に大きく影響し、心理的にも心理社会的にも憂慮すべき結果に繋がっている(例えば、Elewskiらの「Inter.J.of Dermatol 36、754-756」(1997年))。本開示による治療は、従って、これらの病気が、自体のイメージ及び生活の質全体に関して有している、文献で認識されている強い影響からの、強く必要とされている解放を提供する。
【0053】
文献中の報告も、真菌感染(例えば、爪甲真菌症)は、例えば、急性バクテリア小胞炎の様なバクテリア組織感染のリスク要因であることを立証している(例えば、Roujeauらの「Dermatology 209、301-307」(2004年)参照)。ここで述べている真菌感染の治療は、従って、二次的又は付随する感染を食い止める新しい方法を提供する。
【0054】
糖尿病患者の爪甲真菌症と体部白癬が深刻であれば、感染、特にバクテリア種感染に繋がり、それは、糖尿病患者の二次感染に対する罹り易さと性向を全体として考えれば、生命を脅かす問題になる(例えば、Richの「J.Am.Acad.Dermatol 35、S10-12」(1996年)参照)。ブリットル型糖尿病の患者では、再発性カンジダ症は、カンジダ敗血症になり、最終的に、カンジダ爪周囲炎になり、更に、長期の爪甲真菌症から爪ジストロフィを併発する(例えば、Millikanらの「Int.J.Dermatol 38(2)、13-16」(1999年)参照)。
【0055】
病原体に慢性的に感染している多くの爪は、慢性又は急性の爪周囲炎を患うことが多い(例えば、Rockswellの「American Med.Physic. 63(6)、1113-1116」(2001年)と、Groverらの「Dermatol Surg. 32、393-399」(2006年)参照)。慢性の爪周囲炎は、局所化された、爪周囲部(爪に隣接する表皮)の表皮性の感染である。爪周囲炎感染は、近位側爪郭のシール部と爪甲の間に、器官に侵入するための侵入門となる壊裂が生じたときに発症する。慢性の爪周囲炎は、一般に、非化膿性であり、治療の難しい病気である。慢性の爪周囲炎は、通例、腫れた赤みのある柔らかい湿潤性の爪郭を引き起こし、病気の兆候は6週間以上現れ、長期の爪甲真菌症を伴う。これらの場合に病気を引き起こしている病原体は、通常、カンジダ種である。
【0056】
幾つかの実施形態によれば、本開示の方法及び装置/システムは、薬学的活性化合物及び/又は薬学的活性化合物が入った組成物の投与と組合わせて用いられる。その様な投与は、全身的又は局部的である。全身(例えば、経口的又は非経口的投与)又は局部(例えば、膏薬、クリーム、スプレー、ジェル、ローション、及びペースト)に適した様々なその様な抗真菌性の薬学的活性化合物と組成物は、当技術では既知である(例えば、米国特許第4,755,534号、第6,121,314号、第4,680,291号、第5,681,849号、第5,856,355号、第6,005,001号に記載されているテルビナフィンと、イトラコナゾール(例えば、米国特許第5,633,015号、第4,727,064号、第5,707,975号参照))。
【0057】
以下に示す様に、抗生物質耐性菌は、本開示の方法によって効果的に治療できることが分かっている。更に、本開示の方法は、効果的な治療方法と組み合わせて、それらの代わりに、又はそれに続けて用いて、伝統的な方法を増強するのに用いられることも分かっている。従って、本開示は、抗生物質による治療と組み合わせてもよい。「抗生物質」という用語には、限定するわけではないが、βラクタムペニシリンとセファロスポリン、バンコマイシン、バシトラシン、マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン)、ケトリデス(テリトロマイシン)、リンコサミド(クリンドマイシン)、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、アミノグリコシド系(ゲンタマイシン)、アンホテリシン、セファゾリン、クリンダマイシン、ムピロシン、スルホンアミドとトリメトプリム、リファンピシン、メトロニダゾール、キノロン、ノボビオシン、ポリミキシン、オキサゾリジノン類(例えば、リネゾリド)、グリシルシクリン(例えば、チゲシクリン)、環式リポペプチド(例えば、ダプトマイシン)、pleuromutilins(例えば、retapamulin)とグラミシジンなど及び何らかの塩又はその変異体が含まれる。更に、テトラサイクリンは、限定するわけではないが、免疫サイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、及びミノサイクリンなどを含んでいることも本開示の範囲内にあると理解されたい。更に、アミノグリコシド抗生物質が、限定するわけではないが、ゲンタマイシン、アミカシン、及びネオマイシンなどを含んでいることも本開示の範囲内にあると理解されたい。
【0058】
ここで述べている本方法、装置、及びシステムと結び付けて考えられる微生物感染治療に対する他の既知の方法には、適した医療用品の使用も含まれる。ここで用いる「医療用品」という用語は、ヒト又は動物の皮膚又は内臓の病気の又は傷の部分を覆い、保護し、又は支持するあらゆる物を指す。用品は、限定するわけではないが、ガーゼ、無菌ガーゼ、又は吸収性脱脂綿の様な吸収性用品と、感染の発症を遅らせるか防止するための消毒液を含浸している消毒用品と、当業者には既知の何れかの手段で殺菌され、用品を開いている傷口の上に配置することができないようにすることのない乾燥ガーゼ、乾燥吸収性脱脂綿、又は他の乾燥材を含む乾燥用品と、である。本開示が理解している医療用品には、更に、感染している傷口又は傷に貼り付かない非接着性用品と、身体の感染部への更なる傷又は感染を防ぐための保護用品と、感染部位に当てられる前に湿らされる湿潤用品と、が含まれる。「医療用品」という用語は、更に、中に本開示による抗菌性組成物が溶けている、ビタミンEの様なオイルベースの支持材を含んでいる。例えば、ビタミンEの様なオイルベースは、更なる微生物感染に対するバリヤを形成し、抗菌性組成物を濾過して損傷した組織に滲出させる。
【0059】
或る例では、本開示の方法、装置、及びシステムは、基本的に「微生物の無い」の所与の製品を滅菌/殺菌又は維持するのに用いられる。従って、標的部位は、例えば、医療装置(例えば、カテーテル又はステント)、人工器官装置(例えば、人工関節)の様な物体であってもよい。
【0060】
内在型医療装置上のバイオフィルムは、グラム陽性又はグラム陰性のバクテリア又は真菌の集団を含んでいることもある。医療用装置のバイオフィルム内で遭遇するグラム陽性の有機体は、E.faecalis、S.aureus、S.epidermidis、及びS.viridansである。遭遇するグラム陰性バクテリアは、E.coli、K.pneumoniae、Proteus mirabilis、及びP.aeruginosaである。これらのバクテリアは、一般に、患者又は医療従事者の皮膚、入口が曝される生水、又は患者自身の腰掛の様な環境内の他のソースに由来する。
【0061】
バクテリアバイオフィルムは、細菌が(カテーテルの内側ルーメンの様な)湿った表面に不可逆的に接着するときに成長し、接着を支援する細胞外ポリマーを作り出し、コロニーに構造的基質を提供する。バイオフィルムが形成している表面は、不活性で生きていない材料のことも、生きている組織のこともある。バイオフィルム内の細菌は、成長率と、抗菌治療に抵抗する能力に関してプランクトン(自由に県濁している)バクテリアとは異なる挙動をするので、結果として、大きな医療及び公衆衛生上の問題を生じる。本開示は、プランクトンバクテリアが、医療装置の表面に付着しないようにするので、微生物バイオフィルムの形成を防ぐことができる。
【0062】
汚染した内在型医療装置にバイオフィルムが出来ているか否かを立証する助けとなる変数は多数ある。1つの要因は、露出時間が長く、結果的にバクテリア又は真菌が不可逆的に取り付く場合に、バクテリア又は真菌が、装置の露出表面に付着することである。問題の一例として、尿のカテーテル(管状のラテックス又はシリコン製の装置)は、挿入されていれば、カテーテルの内側又は外側表面にバイオフィルムが容易にできる。一般的にこれらの装置を汚染し、バイオフィルムを作り出す有機体は、S.epidermidis、E.faecalis、E.coli、P. mirabilis、P.aeruginosa、K.pneumoniae、及び他のグラム陰性有機体である。尿のカテーテルが適所に長く留まるほど、これらの有機体がバイオフィルムを発展させる傾向が大きくなり、尿路が感染することになり、大きな医療問題である。
【0063】
先行技術は、カテーテル内にバイオフィルムが生じるのを防ぐ多数の方法を示唆している。従来の方法は、移植中に綿密な無菌技法を使用し、挿入部位には局所的な抗生物質を使用する段階と、カテーテル挿入の持続時間を最小にする段階と、静脈内流体にインラインフィルターを利用する段階と、カテーテルを手術によって移植されたカフに取り付けることによって有機体の流れ込みを防ぐ機械的なバリヤを作る段階と、カテーテルの内側ルーメンに抗菌剤を塗布することを試みる段階と、を含んでいる。しかしながら、先行技術の方法の何れも、望むように効果的には作用しない。
【0064】
従って、本開示による方法、システム、及び機器は、バイオフィルムの形成を防ぐために、例えば、中心静脈カテーテルと無針コネクタ、気管内チューブ、腹膜透析カテーテル、中耳腔換気用チューブ、及び尿カテーテルの様な内在型医療装置と共に用いられる。
【0065】
本開示の実施形態は、更に、生物学的汚染物質(例えば、生物化学的又は調剤用溶液)に感染しているか、又は感染する虞のある生物化学的又は化学的材料を処置するのにも用いられる。哺乳動物に用いられる標本(例えば、免疫グロブリン標本)を作るのに用いられる当技術における殆どの方法は、病原体(即ち、生物学的汚染物質)により作り出されたものに汚染されている結果となる。例えば、単クローン性の免疫グロブリン標本は、3つの一般的な方法の内の1つで作られる。第1の方法は、細胞培養システム内での生成を伴い、第2の方法は、単クローン性の免疫グロブリンを作るための一時的なバイオリアクターとして動物を使用し、第3の方法は、所望の単クローン性の免疫グロブリンの遺伝子を、動物の中へと、単クローン性の免疫グロブリンの連続生成を誘発するようなやり方で動物の流体又は組織の中に挿入して連続して収穫できるようにする(移植遺伝子による生成)段階を伴う。第1方法の関係では、単クローン性の免疫グロブリンを生成する細胞は、培養システムで作られた未検出ウイルスを隠しているかもしれない。残る2つの方法には、単クローン性免疫グロブリン生成細胞の宿主か、又は、単クローン性免疫グロブリン製品自体を製造するバイオリアクターのどちらかとして働く動物の使用が含まれる。明らかに、これらの製品は、感染しているか、又は宿主の動物に匿われている病原体よる汚染の危険に直面する。その様な病原体には、中でも、ウイルス、バクテリア、イースト、カビ菌、マイコプラズマ、及び寄生生物が含まれる。結果的に、単クローン性免疫グロブリン製品内の何れの生物活性汚染物質も、製品が用いられるまで活性化しないことが重要である。これは、製品が直接患者に投与される場合は特に重要である。これは、様々な型式のプラズマが入っており、マイコプラズマ又は他のウイルス汚染物質の影響を受ける様々な単クローン性免疫グロブリン製品にとっても重要である。
【0066】
ヒトと動物に由来する両方の生物学に関わるウイルスの中でも、関心事の最小のウイルスは、パルボウイルスと、僅かに大きいプロテイン被覆肝炎ウイルスの一族に属する。ヒトでは、パルボウイルスB19とA型肝炎、並びにHIV、CMV、B型及びC型肝炎などの様な大きくて頑強性の低いウイルスが、薬剤の関心事である。ブタ由来の製品と組織では、最小の相当するウイルスは、ブタのパルボウイルスである。
【0067】
治療されている標的部位と付与されるエネルギーの間の相互作用は、波長、標的部位の化学的及び物理的特性、ビームの出力密度又は放射照度、連続波(CW)又はパルス状放射の何れが用いられているか、レーザービームのスポットサイズ、曝露時間、エネルギー密度、及びこれらのパラメーターの何れかによるレーザー放射の結果として起こる標的部位の物理的特性の何らかの変化、を含む多数のパラメーターによって決まる。更に、標的部位の物理的特性(例えば、吸収及び散乱係数、散乱異方性、熱伝導性、熱容量、及び機械的強度)も、全体的な効果と結果に影響を与える。
【0068】
「NIMELS線量」という用語は、本開示による問題の波長が、標的部位の生物学的汚染物質のレベルを、生物学的汚染物質以外の生物学的部分(例えば、哺乳動物の細胞、組織、又は器官)に許容できないリスク及び/又は許容できない副作用をもたらすこと無く下げることができる出力密度(W/cm2)とエネルギー密度(J/cm2)値を指す(ここで、1ワット=毎秒1ジュールである)。
【0069】
図1に示している様に(Boulnoisの「Lasers Med.Sci.1、47-66」(1986年)からその一部を複製)、出力密度(放射照度とも呼ばれる)及び/又はエネルギーが低いと、レーザーと組織の相互作用は、純粋に光学(光化学)として説明できるが、出力密度が高いと、光熱相互作用が続いて起こる。以下に例示する或る実施形態では、NIMELS線量パラメーターは、既知の光化学パラメーターと光熱パラメーターの間の(図1参照)、一般に外因性の薬品、染料、及び/又は発色団と組み合わせて光力学治療に伝統的に用いられている領域内にある。
【0070】
図1に示している様に、相互作用に依って、フルエンス、即ち粒子又は照射束と時間の積(又は積分)としもて表すことのできる当技術における医療レーザー印加のエネルギー密度は、通常、1J/cm2から10,000J/cm2(5等級)まで変化し、一方、出力密度(放射照度)は、1x10−3W/cm2から1x1012W/cm2(15等級)まで変化する。出力密度と照射曝露時間の相関関係を見ると、意図する特定のレーザーと組織の相互作用に対して、ほぼ同じエネルギー密度が必要であることが観察される。従って、レーザー曝露持続時間(照射時間)が、レーザーと組織の相互作用の性質と安全性を決める主要なパラメーターである。例えば、生体内での組織の熱蒸発(非切除)を、或る特定の治療に対する選択肢であるレーザーと組織の相互作用として数学的に求めようとすれば(Boulnois1986年に基づいて)、1000J/cm2のエネルギー密度(図1の熱蒸発の網掛け領域内)を作るためには、以下の線量パラメーターの何れも使用できることが分かる。
表1:Boulnois表に基づいて導き出した値の例
【0071】
【表1】
【0072】
この経緯は、組織内の生物学的汚染物質に対するNIMELS相互作用に用いられる適した方法/技法又は基本アルゴリズムを示している。つまり、この数学的な関係は、レーザーと組織の相互作用現象を実現するための相関関係である。この論理は、エネルギー密度、時間、及び出力のパラメーターにNIMELS実験データを挿入したNIMELSエネルギーにより付与される(実験を通して)観察される抗菌現象の線量を計算するための基本として用いられる。
【0073】
照射される標的部位における具体的な相互作用(標的部位の化学的及び物理的特性、連続波(CW)又はパルス状放射の何れが用いられているかということ、レーザービームのスポットサイズ、及び、これらのパラメーターの何れかによるレーザー照射の結果として起こる標的部位の物理的特性、例えば、吸収と錯乱係数、錯乱異方性、熱伝導性、熱容量、及び機械的強度、の何らかの変化)に基づいて、開業医は、出力密度と時間を調整し、所望のエネルギー密度を得ることができる。
【0074】
ここに提供されている例は、生体外治療と生体内治療の両方の関連でその様な関係を示している。従って、爪甲真菌症の治療の関係では、1−4cmの直径を有するスポットサイズでは、出力密度値は、約0.5W/cm2から5W/cm2まで変化させても、十分に「変性」及び「組織の過熱」レベル以下に収まる、安全で、無損傷/低損傷の熱的なレーザーと組織の相互作用の範囲内に留まった。他の適したスポットサイズを用いてもよい。
【0075】
この相関関係では、これらの波長とのNIMELS相互作用に必要な閾値エネルギー密度は、所望のエネルギーが送られる限り、スポットサイズに関係なく維持される。代表的な実施形態では、光エネルギーは、均一な幾何学的分布によって組織に送られる(例えば、平坦な上部又はシルクハット状の経緯)。その様な技法(論理)留意すれば、NIMEL効果を作り出すのに十分な適したNIMEL線量を、生物学的汚染物質のレベルを下げるのに必要で且つ「変性」及び「組織の過熱」のレベル以下に収まる、閾値エネルギー密度に到達するように計算することができる。
【0076】
ここに例示されている、生体内の標的微生物に対するNIMELS線量は、約100から700秒間に亘る200J/cm2−700J/cm2だった。これらの出力値は、光切除又は光熱(レーザー/組織)相互作用に関係する出力値とは程遠い。
【0077】
平行レーザービームの強度分布は、ビームの出力密度によって与えられ、レーザー出力対円形面積(cm2)の割合として定義される。図12Aと図12Cに示している様に、入射ガウスビームパターンの面積が1.77cm2の1.5cmの照射スポットの照明パターンは、1.77cm2の照射面積内に少なくとも6つの異なる出力密度値を作る。これらの変化する出力密度は、スポットの表面積に亘る強度(又は出力の集中度)を、(外側周辺の)1から中心位置の6まで増大させる。本開示の或る実施形態では、伝統的なレーザービームの放出に付帯するこの本来的なエラーを克服するビームパターンが提供されている。図12Bと図12Dは、照射領域内でより一定した出力エネルギー値を得るために、本開示の或る実施形態に用いられている均一なエネルギー分布(先に述べた「上部が平坦」なパターン)を示している。
【0078】
図12Bと図12Dに示している様に、代表的な実施形態では、NIMELSレーザーシステムは、広い領域を均一なパターン(上部が平坦又は2π角段階強度分布)で照らすだけで、このエラーを補正し、エネルギーの三次元の分布パターン内に、組織をスポットの中心部で燃焼させるか又は二次的治療エネルギー密度を周辺に有することによって治療に否定的に干渉することになりかねない「高温スポット」又は「低温スポット」が無いか、又は最小となることを保証する。他の実施形態は、実質的に上部が平坦な、例えば、台形、ガウス分布、又は他の適切な強度分布を利用してもよい。
【0079】
代わりに、NIMELSパラメーターを治療時間(Tn)の関数として、以下の様に計算してもよい:Tn=エネルギー密度/出力密度。
或る実施形態では(例えば、ここに例示されている生体外実験を参照)、Tnは、約50から約300秒であり、別の実施形態では、Tnは、約75から約200秒であり、更に別の実施形態では、Tnは、約100から約150秒である。他の生体内の実施形態では、Tnは、約100から約450秒である。
【0080】
ここに述べている様な上記の関係と上部が平坦な照明幾何学の様な所望の光強度分布を利用すれば、一連の生体内エネルギーパラメーターは、生体内のNIMELS微生物汚染除去治療に効果的であることが実験的に証明されている。これらは、NIMELS治療のための3ワットのレーザーエネルギーである一定のレーザー出力について、以下に示されている。所与の標的部位に対してキーとなるパラメーターは、従って、様々なスポットサイズ及び出力密度におけるNIMELS治療に必要なエネルギー密度であることが示されている。
【0081】
従って、「NIMELS線量」は、本開示による問題の波長が標的部位の生物学的汚染物質のレベルを光学的に下げることができる第1閾値ポイントから、生物学的部分に許容できないリスク又は悪影響(例えば、porationの様な熱による損傷)が検出される直前の値である第2末端ポイントまでの、出力密度及び/又はエネルギー密度の範囲を包含している。当業者には理解頂けるように、或る環境の下では、標的部位(例えば、哺乳動物の細胞、組織、又は器官)への或る種の悪影響及び/又はリスクは、本開示の方法から生じる本来的恩典の観点から許容されることもある。従って、考えられる末端ポイントは、悪影響が相当あり、従って望ましくないポイント(例えば、細胞死、プロテイン変性、DNA損傷、罹患、又は死亡)である。
【0082】
例えば生体内用途の或る実施形態では、ここで考えられている出力密度の範囲は、約0.25から約40W/cm2である。別の実施形態では、出力密度の範囲は、約0.5から約25W/cm2である。
【0083】
更に別の実施形態では、出力密度の範囲は、約0.5から約10W/cm2の値を包含している。ここで例証されている出力密度は、約0.5から約5W/cm2である。1.5から2.5W/cm2の生体内出力密度は、様々なバクテリアに有効であることが示されている。
【0084】
実験データは、生体外(例えば、プレート)に設置された生物学的汚染物質を標的とするときには、生体内(例えば、足爪)の場合よりも、高い出力密度値が一般的に用いられることを示している。
【0085】
或る実施形態(生体外の例を参照)では、ここで考えられているエネルギー密度の範囲は、50J/cm2より大きいが、約25,000J/cm2未満である。別の実施形態では、エネルギー密度の範囲は、約750J/cm2から約7,000J/cm2である。更に別の実施形態では、エネルギー密度の範囲は、生物学的汚染物質が生体外(例えば、プレート)に設置されるか、又は生体内(例えば、足爪又は医療装置の周囲)であるかに依って、約1,500J/cm2から約6,000J/cm2である。
【0086】
或る実施形態(生体内の例を参照)では、エネルギー密度の範囲は、約100J/cm2から約500J/cm2である。更に別の生体内実施形態では、エネルギー密度は、約175J/cm2から約300J/cm2である。更に別の実施形態では、エネルギー密度は、約200J/cm2から約250J/cm2である。或る実施形態では、エネルギー密度は、約300J/cm2から約700J/cm2である。或る他の実施形態では、エネルギー密度は、約300J/cm2から約500J/cm2である。更に別の実施形態では、エネルギー密度は、約300J/cm2から約450J/cm2である。
【0087】
微生物種の各種生体内治療で実験的に試される出力密度は、約100W/cm2から約500W/cm2である。
当業者には理解頂けるように、所与の環境に対してここで考えられている出力密度及びエネルギー密度内で特に適したNIMELS線量値を識別するのは、日常的な実験によって、そして幾つかの目下利用可能なレーザーを使用して広く行われている様に、単に試行錯誤によって行うこともできる。歯周病治療に結び付けて近赤外線エネルギーを使用している開業医(例えば、歯医者)は、各所与の患者に付帯する緊急の事態に基づいて、出力密度とエネルギー密度を日常的に調整する(例えば、パラメーターを、組織の色、組織の構成、及び病原体が侵入している深さの関数として調整する)。一例として、暗色の組織は、近赤外線エネルギーをより効果的に吸収し、従ってこれらの近赤外線エネルギーを組織内で早く熱に変換するので、明るい色の組織における歯周病感染のレーザー治療の方が、暗色の組織よりも、熱安全パラメーターが大きい。従って、開業医が、異なる治療プロトコルに対して複数の異なるNIMELS線量値を識別できる能力が、明らかに必要とされている。
【0088】
本英文明細書で用いている「a」、「an」、及び「the」という単数形は、内容が明白に他の状況を述べていなければ、それらが言及する用語の複数形も包含しているものとする。例えば、「NIMELS波長」と言う場合、記載されているNIMELS波長の範囲内の任意の波長、並びに、その様な波長の組み合わせも含んでいる。
【0089】
本英文明細書では、具体的に他の状況が示されていなければ、「or(又は)」という単語は、「and/or(及び/又は)」の「包括的な」感覚で用いており、「either/or(何れか/又は)」の「排他的な」感覚ではない。
【0090】
本英文明細書で用いている「about(約)」という用語は、概略、その領域、概ね、又は大凡を意味する。「about(約)」という用語を数字の範囲と結び付けて用いている場合は、言及している数値の上下に限界を延ばすことによって、その範囲を修正している。一般的には、「about(約)」という用語は、ここでは、数値を、言及している値の上下に20%の分散を加えるよう修正するのに用いられている。
【0091】
本英文明細書で用いている「comprise(s)(備える)」と「comprising(備えている)」という用語は、明細書でも、特許請求の範囲でも、開放的な意味を有していると解されたい。つまり、この用語は、「少なくとも〜を有している」又は「少なくとも〜を含んでいる」という語句と同義語であると解されたい。過程又は方法の文脈で用いられる場合、「comprising(備えている)」という用語は、過程/方法が、少なくとも列挙された段階を含んでいるが、追加の段階を含んでいてもよいことを意味している。
【0092】
本開示を実行するに際し、当業者に既知のどの様な適した材料(例えば、レーザー活性媒体、共鳴器構成など)及び/又は方法を利用してもよい。或る種の代表的な材料、方法、及び構成について述べる。以下の説明及び例で言及する材料、試薬などは、特に示されていなければ、市場の供給者から入手可能である。
【0093】
別の態様では、本開示は、治療放射システム(即ち、NIMELSシステム)を提供する。図2は、本開示の1つの好適な実施形態による治療放射治療装置の概略図を示している。治療システム10は、光学放射生成装置12、送出アッセンブリ14、印加アッセンブリ(又は区域)16、及び制御器18を含んでいる。本開示の1つの態様によれば、光学放射生成装置(ソース)は、1つ又は複数の適したレーザーL1とL2を含んでいる。適したレーザーは、干渉性の程度に基づいて選択される。
【0094】
代表的な実施形態では、治療システムは、近赤外線領域で出力を生成するように構成され配置されている少なくとも1つのダイオードレーザーを含んでいる。適したダイオードレーザーは、所望の波長範囲、例えば850nm−900nmと905−945nm、の放射線を生成するために、InxGa1-xAs、GaAs1-xPx、AlxGa1-xAs及び(AlxGa1-x)yIn1-yAsの中から選択される半導体材料を含んでいる(各半導体合金中、xとyは1の分数を示す)。適したダイオードレーザー構成は、クリーブ連結型、分布型フィードバック、分布型ブラッグ反射器、垂直空洞表面放出レーザー(VCSELS)などを含んでいる。
【0095】
引き続き図2を見ると、或る実施形態では、送出アッセンブリ14は、広い領域にエネルギーを均一に分配するために「上部が平坦な」エネルギープロファイルを作ることができる。記載している様に、光学的放射生成装置12は、レーザー発振器L1とL2の様な1つ又はそれ以上のレーザーを含んでいる。代表的な実施形態では、一方のレーザー発振器は、光学放射を、850nmから900nmの第1波長範囲で放出するように作られており、他方のレーザー発振器は、放射を、905nmから945nmの第2波長範囲で放出するように作られている。或る実施形態では、一方のレーザー発振器は、放射を、865nmから875nmの第1波長範囲で放出するように作られており、他方のレーザー発振器28は、放射を、925nmから935nmの第2波長範囲で放出するように作られている。必要に応じて、個々のレーザー発振器の形状又は構成を選択することもでき、選択は、具体的な発振器の形状/構成によって作り出される強度分布に基づいて行われる。
【0096】
引き続き図2を見ると、或る実施形態では、送出アッセンブリ14は、二重波長放射を、発振器26と28から印加領域16へ送出するようになっている細長い可撓性の光ファイバーを含んでいるのが望ましい。更に図16と図17も参照して頂きたい。送出アッセンブリ14は、印加要件に基づいて、異なるフォーマットを有していてもよい(例えば、熱損傷を防ぐ安全機構を含む)。例えば、1つの形態では、送出アッセンブリ14は、最小のサイズで、患者の身体に挿入できるような形状に構成されている。代替形態では、送出アッセンブリ14は、放射を比較的広い領域に印加できる円錐形発散方式で放射を放出するために円錐形に作られている。或る実施形態では、送出アッセンブリ14に中空の導波管が使用されている。印加部位の要件に基づいて、他のサイズ及び形状の送出アッセンブリ14も利用することができる。代表的な実施形態では、送出アッセンブリ14を光学的放射の自由空間又は自由ビーム印加に合わせて構成し、例えば、ここに述べているNIMELS波長で組織を貫く透過を利用することもできる。印加される光学的放射は、例えば、930nm(及び同様の程度870nmまで)で、患者の組織を1cm以上貫くことができる。その様な実施形態は、以下に説明する様に、生体内の医療装置と共に使用するのに特に良く適している。
【0097】
1つの代表的な実施形態では、制御器18は、印加アッセンブリ/領域16を通して送られる放射量を制御するために、レーザー発振器L1とL2に接続されている出力制限器24を含んでおり、単位面積当たりに送られる放射の出力密度の時間積分が、印加部位にある健康な組織に対する損傷を防止するように設定されている所定の閾値を下回るようになっている。制御器18は、患者の治療情報を記憶するためのメモリ26を更に含んでいる。特定の患者の記憶された情報には、限定するわけではないが、放射量(例えば、波長、出力密度、治療時間、皮膚の着色パラメーターなどを含む)と印加部位の情報(例えば、治療部位の種類(病巣、癌など)、サイズ、深さなど)が含まれる。1つの好適な実施形態では、メモリ26は、異なる種類の病気と、具体的な病気の種類に関係付けられた放射パターンと放射量の様な治療プロファイルの情報を記憶するのにも用いられる。制御器18は、更に、印加型式と、医者による制御器への他の印加部位情報入力に基づいて、特定の患者に必要な放射量を計算する線量計算器28を含んでいる。1つの形態では、制御器18は、更に、印加部位を画像化するための画像化システムを含んでいる。画像化システムは、印加部位の画像に基づいて印加部位情報を集め、放射量を計算するために、集められた情報を線量計算器28へ送る。医者は、手動で計算し、画像から集められた情報を制御器18へ入力することもできる。
【0098】
図2に示す様に、制御器は、更に、制御パネル30を含んでおり、医者は、それによって治療システムを手動で制御することができる。また、治療システム10は、WINDOWSTMベースのプラットフォームの様な制御プラットフォームを有するコンピューターによって制御することもできる。光学放射のパルス強度、パルス幅、パルス反復率の様なパラメーターは、コンピューターと制御パネル30の両方を通して制御することができる。
【0099】
図3a−3dは、治療システムから印加部位へ送ることのできる異なるパターンの光学放射を示している。光学放射は、図3aに示している様に、例えば、850nmから900nmの第1波長範囲か、865nmから875nmの範囲か、905nmから945nmの第2波長範囲か、923nmから935nmの範囲の様な、1つの波長範囲のみで送ることができる。第1波長範囲の放射と第2波長範囲の放射は、図3bに示している様に、光学放射生成装置12内に設置されている多重システムによって多重化し、多重形態で印加部位へ送ることもできる。代替形態では、第1波長範囲の放射と第2波長範囲の放射は、多重システムを通すことなく、印加部位に同時に加えることができる。図3cは、光学放射が、例えば、第1波長範囲の第1パルス、第2波長範囲の第2パルス、再び第1波長範囲の第3パルス、及び再び第2波長範囲の第4パルス、のように、中断し交互する方式で送出できることを示している。間隔は、CW(継続波)で、図3cに示している様な1つのパルスでも、2つ以上のパルス(図示せず)でもよい。図3dは、印加部位が2つの波長範囲の内の一方の放射、例えば第1波長範囲によって先ず治療され、次に、他方の波長範囲の放射によって治療される、別のパターンを示している。治療パターンは、印加部位の種類及び他の情報に基づいて、医者によって決められる。
【0100】
観察される現象の原因となる基礎を成すメカニズムに関して、何れの理論によっても拘束されることを欲せず、本開示の何れの態様も何れの理論によっても制限を課する意図なく、本発明の方法及びシステムにより照射される波長は、原核及び真核細胞の細胞内の内因性発色団及び細胞膜の脂質二重層によって吸収されると仮定されている。更に、バクテリアの損傷は、恐らく、有毒の一重酸素及び/又は他の反応性酸素種を介して伝達されると仮定されている。
【0101】
以下の例は、本開示の或る種の好適な実施形態を更に示すものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
例I
NIMELS線量計算
先に詳しく論じた様に、NIMELSパラメーターは、レーザーダイオードの平均的な1つ又は付加的な出力とダイオードの波長(870nmと930nm)を含んでいる。この情報は、標的部位の単数又は複数のレーザービームの面積(cm2)と組み合わせられて、本開示による効果的で安全な照射プロトコルを計算するのに用いられる初期情報セットを提供する。
【0102】
所与のレーザーの出力密度は、標的部位におけるNIMELSの潜在的な効果を測定する。出力密度は、何れかの所与のレーザー出力及びビーム面積の関数であり、以下の式で計算される。
1つの波長では、
【0103】
【数1】
【0104】
二重波長治療では、
【0105】
【数2】
【0106】
ビーム面積は、以下の何れかによって計算される。
3)ビーム面積(cm2)=直径(cm)2x0.7854、又はビーム面積(cm2)=Pix半径(cm)2
特定の出力で或る期間に亘って作動する1つのNIMELSレーザーダイオードシステムによって組織に送出される合計光子エネルギーは、ジュールで測定され、以下の様に計算される。
【0107】
4)合計エネルギー(ジュール)=レーザー出力(ワット)x時間(秒)
両方のNIMELSレーザーダイオードシステム(両方の波長)によって同時に、特定の出力で或る期間に亘って組織に送出される合計光子エネルギーは、ジュールで測定され、以下の様に計算される。
【0108】
5)合計エネルギー(ジュール)=[レーザー(1)出力電力(ワット)x時間(秒)]+[レーザー(2)出力電力(ワット)x時間(秒)]
実際に、最大のNIMELSの有益な反応に対する放射量を正しく測定するために、照射治療領域に亘る合計エネルギーの分布と割当を知ることは、必須ではないが、有用である。合計エネルギー分布は、エネルギー密度(ジュール/cm2)として測定される。下で論じる様に、所与の光の波長では、エネルギー密度は、組織の反応を判断する際の最も重要な因子である。1つのNIMELS波長のエネルギー密度は、以下の様に導き出される。
【0109】
【数3】
【0110】
7)エネルギー密度(ジュール/cm2)=出力密度(W/cm2)x時間(秒)
2つのNIMELS波長が用いられている場合は、エネルギー密度は、以下の様に導き出される。
【0111】
【数4】
【0112】
9)エネルギー密度(ジュール/cm2)=出力密度(1)(W/cm2)x時間(秒)+出力密度(2)(W/cm2)x時間(秒)
特定の放射量に関する治療時間を計算するために、ユーザーは、エネルギー密度(J/cm2)又はエネルギー(J)のどちらか、並びに出力(W)とビーム面積(cm2)を使用し、以下の式のどちらかを使用する。
【0113】
【数5】
【0114】
【数6】
【0115】
この例に例示されている様な線量計算は煩わしいので、治療システムは、更に、全ての調査された治療の可能性と線量を記憶するコンピューターデータベースを含んでいる。制御器内のコンピューター(線量とパラメーターの計算器)は、先に述べた式に基づくアルゴリズムによって事前にプログラムされているので、オペレーターは、誰でも、スクリーン上でデータ及びパラメーターを容易に検索し、必要な追加データ(例えば、スポットサイズ、所望の合計エネルギー、各波長の時間とパルス幅、照射される組織、照射されるバクテリア)を、他の必要な情報と共に入力することができる、従って、良好な治療結果に必要なあらゆる全てのアルゴリズムと計算を、線量及びパラメータ計算器によって作り出し、それによってレーザーを作動させることができる。
【0116】
以下の例は、選択された実験について述べており、ここに述べている波長で、様々な一般的に見られる微生物の生存能力に強い影響を与えるNIMELS方法の性能が示されている。例示されている微生物には、E.coli K-12、多薬耐性E.coli、ブドウ球菌アウレウス、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンス、及びトリコフィトンルブルムが含まれる。
【0117】
要約すると、バクテリア培養体をNIMELSレーザーに曝したところ、バクテリア致死率(処置後の培養プレート上のコロニー形成単位即ちCFUを計数することによって測定した)が、93.7%(多薬耐性E.coli)から100%(他の全てのバクテリアと真菌)であった。
例II
バクテリア方法、生体外のE,COLIを標的とするためのNIMELS治療パラメータ
以下のパラメーターは、熱損傷に関して文献で関係付けられている温度より相当に低い最終的な温度でE.coliに適用される、本開示による方法を示している。
A.E.coli K−12のための実験材料と方法
E.coliK12液体培養体を、Luria Bertani(LB)媒体(25g/L)内で成長させた。プレートには、35mLのLBプレート媒体(25g/L LB、15g/Lの細菌学的寒天)が入っていた。培養体希釈は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を使って行った。全てのプロトコルと操作は、殺菌技法を使って行った。
B.成長動力学
種培養体から複数の50mLのLB培養体を取り出し、接種し、37℃で一晩成長させた。翌朝、最も健康な培養体を選定し、5%を50mLのLBに37℃で接種するのに使用し、O.D.600を、時間を通して監視し、培養体が静止位相になるまで30分から45分毎に測定した。
C.マスター株生産
ログ位相の培養体(O.D.600は約0.75)で開始し、10mLを4℃に置いた。50%グリセロールを10mL加え、20の冷凍小瓶に分別し、液体窒素内で素早く凍らせた。次いで、冷凍小瓶を−80℃で保管した。
D.液体培養体
E.coliK12の液体培養体を、先に述べたように設置した。100μLのアリコートを二次培養から取り外し、続いて、PBSで1対1200に希釈した。この希釈により、確実に、PBS懸濁液内の細胞が静止状態(成長)に達し、重大な増加も無く、比較的安定した数の細胞を、試験のために更に分別できるようにするため、室温で、約2時間、又はO.D.600の更なる増加が観察されなくなるまで培養出来るようになった。
【0118】
K12希釈液が静止状態にあると判定した後、この2mLの懸濁液を、選択したNIMEL実験を所与の線量パラメータで行うために、24ウェルの組織培養プレートの選択されたウェルに分別した。プレートは、使用のための準備が整うまで室温で培養した(約2時間)。
【0119】
レーザー処置に続いて、100μlを各ウェルから取り出し、続いて、1対1000に希釈し、最終的な希釈度は最初のK12培養体の1:12x105になった。各最終希釈液の3x200Lのアリコートを、個別のプレートで3倍に拡げた。次にプレートを、37℃で約16時間培養した。コロニー計数を手動で行い、記録した。各プレートのデジタル写真も撮影した。
【0120】
同様の細胞培養体と運動学プロトコルを、S.aureusとC.albicansの生体外試験による全てのNIMELS照射試験に対して実行した。これにより、例えば、C.albicans ATCC14053液体培養体を、YM媒体(21g/L、Difco)内で37℃で成長させた。標準化した懸濁液を、24ウェル組織培養プレートの選択したウェルにアリコートした。レーザー処置後に、各ウェルから100μLを取り出し、続けて1:1000に希釈し、最終的に、最初の培養体の1:5x105の希釈とした。各最終的希釈液3x100μLを、個別のプレートに拡げた。各プレートを、37℃で約16−20時間培養した。コロニー計数を手動で行い、記録した。各プレートのデジタル写真も取った。
【0121】
T.rubrum ATCC52022液体倍様体を、ペプトンぶどう糖(PD)媒体内で37℃で成長させた。標準化した懸濁液を、24ウェル組織培養プレートの選択したウェルにアリコートした。レーザー処置後に、各ウェルから3x100μLのアリコートを取り出し、個別のプレートに拡げた。各プレートを、37℃で約91時間培養した。66時間及び91時間培養した後、コロニー計数を手動で行い、記録した。比較用のウェルも全て有機体を成長させたが、レーザー処置したウェルは、ここに記載しているように、100%成長しなかった。各プレートのデジタル写真も取った。
【0122】
熱試験を、PBS溶液で室温から開始して実行した。10ワットのNIMELSレーザーエネルギーは、システムの温度が上昇して44℃の臨界閾値に近づく前に、12分間のレージングサイクルで使用するのに利用することができる。
表II:生体外NIMELS線量の時間温度測定
【0123】
【表2】
【0124】
例III
生体外のE.coliを標的としたNIMELSレーザー波長930NMの線量値
実験例は、NIMELSの1つの波長930nmを、哺乳動物組織に安全な熱パラメーター内で、生体外のE.coliに対して定量化可能な抗バクテリア効能に関係付けたことを示している。
【0125】
生体外の実験データは、930nmだけをシステムに送り込むときの合計エネルギーの閾値が5400Jで3056J/cm2のエネルギー密度が25%減時間内で満足されれば、100%の抗バクテリア効能はなお実現されることを示している。
表III:生体外E.coliを標的とした二次的熱NIMELS(λ=930)線量
【0126】
【表3】
【0127】
生体外の実験データは、更に、λ=930nmの1つのエネルギーを使用する処置が、哺乳動物組織に安全な熱パラメーターの範囲内で、生体外のバクテリア種S.aureusに対する抗バクテリア効能を有することを示した。
【0128】
更に、システムに送り込む合計エネルギー5400Jと3056J/cm2のエネルギー密度の閾値がS.aureus及び他のバクテリア種に対して25%減時間内で満足されれば、100%の抗バクテリア効能はなお実現されると考えられる。
表IV:生体外S.aureusを標的とした二次的熱NIMELS(λ=930)線量
【0129】
【表4】
【0130】
生体外の実験データは、更に、λ=930nmのNIMELSの単一波長が、生体外のC.albicansに対して、哺乳動物組織に安全な熱パラメーターの範囲内で、抗真菌効能を有することを示した。
【0131】
更に、システムに送り込む合計エネルギー5400Jと3056J/cm2のエネルギー密度の閾値が25%減時間内で満足されれば、100%の抗バクテリア効能はなお実現されると考えられる。図3も参照されたい。
表V:生体外C.albicansを標的とした二次的熱NIMELS(λ=930)線量
【0132】
【表5】
【0133】
例IV
生体外の870NMのNIMELSレーザー波長の線量値
生体外の実験データは、更に、870nmの波長だけでは、E.coliに対して、7200Jの合計エネルギーと、4074J/cm2のエネルギー密度及び6.660Wcm2の出力密度になるまでは、十分な致死は実現されなかったことを示した。
表VI:E.coli研究−870nmの1つの波長
【0134】
【表6】
【0135】
λ=870nmだけを有する放射を使った同様な結果が、S.aureusに関しても観察された。
例V
NIMELS固有の870NMと930NMの光エネルギーが交互する相乗効果
生体外の実験データは、更に、2つのNIMELS波長(λ=870nmと930nm)が交互する(930nmの前に870nm)場合、それらの間に相加効果があることを示した。第1照射としての870nmのNIMELS波長の存在は、第2の930nmのNIMELS波長の照射の抗バクテリア効能の効果を強化していることが分かっている。
【0136】
生体外の実験データは、この相乗効果(870nm波長を930nm波長に組み合わせる)により、930nmの光エネルギーを減らすことができることを示している。以後に示す様に、光エネルギーは、波長が交互に組み合わせられている場合(930nmの前に870nm)、NIMELSの100%E.coli抗バクテリア効能に必要な合計エネルギーとエネルギー密度の約1/3に減った。
【0137】
生体外の実験データは、更に、等量の870nm光エネルギーが930nmエネルギーの前に20%高い出力密度でシステムに加えられると、この相乗的メカニズムは、930nmの光エネルギー(合計エネルギーとエネルギー密度)を、NIMELSの100%E.coli抗バクテリア効能に必要な合計エネルギー密度の約1/2に減らすことができることを示している。
表VII:交互するNIMELS波長からのE.coliデータ
【0138】
【表7】
【0139】
930nmの光エネルギーの方が、870nmの光エネルギーよりも高速でシステムを加熱するので、この相乗能力は、人間の組織の安全にとって重要であり、治療中に生成する熱の量をできるだけ小さくすることは、哺乳類にとって有用である。
【0140】
更に、NIMELS光エネルギー(870nmと930nm)が、他のバクテリア種に対して上記の方式で交互すれば、100%の抗バクテリア効果は基本的に同じであると考えられる。
【0141】
生体外の実験データは、更に、2つのNIMELS波長(870nmと930nm)が、交互して真菌を照射している(930nmの前に870nm)場合、それらの間には相加効果があることを示している。第1照射としての870nmのNIMELS波長の存在は、第2の930nmのNIMELS波長の照射の抗真菌効能の効果を確かに強化している。
【0142】
生体外の実験データ(下表を参照)は、等量の870nm光エネルギーが、930nmエネルギーの前に、バクテリア種の抗バクテリア効能に必要な出力密度よりも20%高い出力密度でシステムに加えられると、この相乗的メカニズムは、930nmの光エネルギー(合計エネルギーとエネルギー密度)を、NIMELSの100%抗真菌効能に必要な合計エネルギー密度の約1/2に減らすことができることを示している。
表VII:交互するNIMELS波長からのC.albicansデータ
【0143】
【表8】
【0144】
930nmの光エネルギーの方が、870nmの光エネルギーよりも高速でシステムを加熱するので、この相乗効果は、人間の組織の安全にとって重要であり、治療中に生成する熱の量をできるだけ小さくすることは、哺乳類にとって有用である。
【0145】
更に、NIMELS光エネルギー(870nmと930nm)が、他の真菌種に対して上記の方式で交互すれば、100%の抗真菌効果は基本的に同じであると考えられる。
例VI
NIMELS固有の、Λ=870MNとΛ=930NM光エネルギーの間の同時相乗効果
生体外の実験データは、更に、2つのNIMELS波長(870nmと930nm)が同時に用いられる(870nmと930nmが組み合わせられている)場合、それらの間には相加効果があることを示している。870nmのNIMELS波長と930nmのNIMELS波長の同時照射としての存在は、NIMELSシステムの抗バクテリア効能の効果を絶対的に強化している。
【0146】
生体外の実験データ(例えば、以下の表IXとXを参照)は、λ=870nmとλ=930nm(この例では同時に用いられている)を組み合わせることによって、930nmの光エネルギーと密度が、本開示による1つの治療を使用する場合に必要な合計エネルギーとエネルギー密度の約半分だけ効果的に減ることを示した。
表IX:組み合わされたNIMELS波長からのE.coliデータ
【0147】
【表9】
【0148】
表X:組み合わさせられたNIMELS波長からのS.aureusデータ
【0149】
【表10】
【0150】
930nmの光エネルギーの方が、870nmの光エネルギーよりも高速でシステムを加熱するので、この同時相乗能力は、人間の組織の安全にとって重要であり、治療中に生成する熱の量をできるだけ小さくすることは、哺乳類にとって有用である。
【0151】
更に、NIMELS光エネルギー(870nmと930nm)が、他のバクテリア種に対して上記の方式で同時に使用されれば、100%の抗バクテリア効果は基本的に同じであると考えられる。図4と図5を参照されたい。
【0152】
生体外の実験データは、更に、2つのNIMELS波長(870nmと930nm)が同時に真菌に用いられる場合、それらの間には相加効果があることを示している。870nmのNIMELS波長と930nmNIMELS波長の同期照射としての存在は、NIMELSシステムの抗真菌効能の効果を強化していることが分かっている。
【0153】
生体外の実験データ(表Xを参照)は、(930nmの前に870nmの)波長が同時方式に組み合わせられると、この相乗効果(同時照射するために870nm波長を930nm波長に接続する)は、930nmの光エネルギーを、NIMELSの100%C.albicansの抗真菌効能に必要な合計エネルギーとエネルギー密度の約1/2に減らすことができることを示している。
表XI:組み合わせられたNIMELS波長からのカンジダalbicans
【0154】
【表11】
【0155】
この様に、NIMELS波長(λ=870nmと930nm)を、抗バクテリア及び抗真菌の効能を達成するために、交互方式又は同時方式又はその様な方式の何れかの組み合わせで使用して、温度上昇を伴うので最小にするのが望ましいλ=930nmの曝露を減らすこともできる。
【0156】
生体外の実験データは、更に、E.coliをλ=830nmの(制御:比較標準)波長だけで、以下のパラメーター(表XIを参照)で照射する場合、制御830nmレーザーは、λ=930nmの放射であれば100%の抗バクテリア及び抗真菌効能が得られる最小のNIMELS線量と同じパラメーターでは、12分間の照射サイクルでの抗バクテリア効能はゼロであったことを示している。
表XII:E.coli単一波長λ=830nm
【0157】
【表12】
【0158】
生体外の実験データは、更に、安全な熱線量で加えたときには、λ=830nm波長をλ=930nm波長と組み合わせて使用した場合は相加効果が殆ど無いことを示している。第1照射としての830nm制御波長の存在は、第2の930nmのNIMELS波長による相乗的な抗バクテリア効能を作り出すには、870nmNIMELS波長の増強効果に遠く及ばない。
表XIII:代用された830nm制御波長からのE.coliデータ
【0159】
【表13】
【0160】
生体外の実験データは、更に、830nm波長とNIMELSの930nm波長を同時に用いた場合、安全な熱線量で加えたときには、それらによる相加効果が小さいことを示している。実際、生体外の実験データは、870nmが930nmと同時に組み合わせられた場合対市販の830nmでは、100%のE.coli抗バクテリア効能を実現するのに、17%少ない合計エネルギー、17%低いエネルギー密度、及び17%低い出力密度を必要とすることを示している。このことも、NIMELS波長で治療される生体内システムへの熱及び害を実質的に減らす。
表XIV:代用された同時830nm制御波長からのE.coliデータ
【0161】
【表14】
【0162】
バクテリアの致死量
生体外のデータは、更に、生体外のNIMELSレーザーシステムが、E.coliとS.aureusの2,000,000(2x106)コロニー形成ユニット(CFU)が入っているバクテリア溶液に対して有効である(熱許容範囲内)ことを示した。これは、通常、1gmの感染しているヒトの潰瘍組織の試料で見られるのに勝る、2倍の増大である。Brownらは、試験した糖尿病患者の75%の微生物細胞は、全てが、少なくとも100,000CFU/gmであり、患者の37.5%で、微生物細胞の量が、1,000,000(1x106)CFUを上回っていると報告した(Brownらによる「Ostomy Wound Management, 401:47」(2001年10月発行)を参照)。
熱パラメーター
生体外の実験データは、更に、NIMELSレーザーシステムが、人間の組織にとって安全な熱許容範囲内で、100%の抗バクテリア及び抗真菌効能を達成できることを示している。図6を参照されたい。
例VII
NIMELSへの低温の影響
Dewhirstらは、Internat.J.of Hyperthermia, 19(3):267-294で、バクテリアへの低温の影響を報告した。
バクテリア種の冷却
生体外の実験データは、更に、レーザー照射サイクル前に、バクテリアサンプルの開始温度をPBS内で2時間に亘って4℃に実質的に下げることによって、光学的な抗バクテリア効能は、NIMELSレーザーシステムによる目下再現可能な抗バクテリアエネルギーでは、実現されなかったことを示した。
【0163】
バクテリア細胞は「代謝停止状態」にあり、細胞内に活発な代謝が起こらなければ、活性酸素は殆ど又は全く生成されない、というのが最も可能性のある説明である。このデータは、NIMELSが、標的とする微生物の呼吸中枢と細胞膜に影響を与えていることを示している。
【0164】
870nmエネルギーは、酸化的リン酸化を加速させることによってシトクロムに影響を及ぼし、930nmエネルギーは、細胞膜を引き裂いて一量状態の酸素を作り出し、電子移送システムを切り離して、末端のO2分子が減るのを許容しないというのが、仮定の(採用されてはいないが、本発明の範囲を限定するものではない)機構である。
例VIII
トリコフィトンルブルム
表XV:NIMELS T.rubrum 試験交互波長
【0165】
【表15】
【0166】
実験番号1=効果が最小
実験番号2=全プレートで100%致死
表XVI:NIMELS T.rubrum−同時波長
【0167】
【表16】
【0168】
実験番号3、4、5=全プレートで100%致死
表XVII:NIMELS T.rubrum−単一波長
【0169】
【表17】
【0170】
実験番号6、7=全プレートで100%致死
表VII:制御 T.rubrum−830nm/930nm交互
【0171】
【表18】
【0172】
実験番号8=効果無し
実験番号9=100%致死
表XIX:λ=830nmと930nmを使った生体外 T.rubrum の標的化
【0173】
【表19】
【0174】
上記表XVIIに記載されている処置では、100%致死に至った。
例IX
爪甲真菌症治療の評価
この例は、開業医の評価が、具体的な治療の放射線量、照射モードを増減するか継続するかを評価する際に、どれほど支援し、情報を提供するかを示している。図8に示すように、健康な爪甲は、硬くて半透明で、死んだケラチンで構成されている。爪甲は、近位側及び側方の爪郭から成る爪床縁と、爪の自由縁の下の領域である下爪皮に取り囲まれている。図9は、典型的な爪甲真菌症患者の爪の図であり、健康な爪が成長していることによって、治療の有効性が証明されている。開業医は、新たに成長している爪甲の清潔で「感染していない」部分(胚芽基質、上爪皮、及び半月に近い)は、後に続く治療で自動的に照射が不要になることを理解できるであろう。従って、照射スポットは、病原体がまだ居座っている病気領域に優先的に、又はできればそこだけに向けられるべきである。
【0175】
或る例では、爪甲真菌症に感染している爪は、固有の(ジストロフィーの成長のため)「厚い」又は(真菌病原体によって作り出される濃度のため)「着色」した状態になってており(図10参照)、爪甲を貫通して、感染している爪床領域(無菌基質と胚芽基質)及び爪郭半月(上爪皮の下から成長している)まで届かせるのに、長いレーザー照射時間(高エネルギー密度)を要する。図15は、本開示の方法によって治療された典型的な爪甲真菌症患者の爪の外観の時間経過に亘る改善を示す合成写真である。
【0176】
図11に示している様に、慢性の爪周囲炎が併発している患者では、レーザー治療領域の「スポットサイズ」は、病原体に感染している爪複合体領域全てがNIMELSレーザーで確実に治療されるように、感染している爪周囲炎区域を覆って拡張すべきである。
【0177】
或る場合には、爪甲真菌症患者は、病原体に感染している爪の異なる不連続な領域と、爪甲の健康な部分がなお硬くて半透明な完全に清潔な他の領域とを有している(図11を参照)。これは、垂直方向又は水平方向のパターンの場合があり、上爪皮の下から成長している半月に達し、それを越えることもある。これらの場合、開業医は、清潔で「感染していない」爪甲の部分は、自動的に照射が不要になると理解し、従って、スポットサイズとそれに付随するレーザー線量は、健康な爪複合体の何れの部分も損傷させることなく治療が上手く行くように然るべく調整されることになる。更に、「スポットを小さくする」だけでは爪の感染している部分の形状が適切に治療されない場合は、健康な爪の部分を不透明な物質で覆い、レーザーからの照射スポットを大きくすることができる。
例X
レーザーの出力が、両方1.5ワットの870と930が組み合わされて3.0ワットに固定されている、生体内NIMELS治療の相互経過分析
生体内治療のために行われる典型的な分析を示すために、以下の例は、出力3Wのレーザーを使用して、λ=870と930nmでエネルギーを放出している。
表XX:二重波長 λ=870nmと930nm
【0178】
【表20】
【0179】
この情況では、Tn=409(エネルギー密度)/出力密度である。図14は、所与のスポットサイズ(直径1.2−2.2cm)に対して導き出された値を示している。NIMELS治療のための処置時間は、409J/cm2のエネルギー密度を、3.0ワットのレーザー出力時の出力密度で除して導き出された。
例XI
レーザーの出力が3.0ワットに固定され、波長が930NMである生体内NIMELS治療の相互経過分析
生体内治療のために行われる典型的な分析を示すために、以下の例は、出力3Wのレーザーを使用して、λ=930nmでエネルギーを放出している。
表XXI:単一波長 λ=930nm
【0180】
【表21】
【0181】
観察された値(上記データ参照)に基づいて、Tn=205(エネルギー密度)/出力密度であることが分かる。従って、所与のスポットサイズパラメータ(直径1.2−2.2cm)の範囲内では、NIMELS治療のための処置時間は、205J/cm2のエネルギー密度を3.0ワットのレーザー出力時の出力密度で除して簡単に導き出される(図13参照)。
【0182】
NIMELS線量計算に関するこの新規のアルゴリズムは、固有のエネルギー送出波長が同時である(λ=870nmと930nmを一体で)か、又は930nm波長だけであるかに基づく抗微生物及び/又は抗真菌現象に対する既知で一定のNIMELS閾値エネルギー密度の定量化に関連している。
【0183】
従って、この(エネルギー密度)定量化の方法が維持され、新規なNIMELS因子の値(Tn)を使って、安全で効果的な線量値に必要な放物線状の相互関係を計算することが、NIMELS抗微生物治療にとって必要である。
【0184】
この一時的で相互的な線量のNIMELS法は、定量化可能な熱的増加、熱増加持続時間、及び組織内の光生物学的事象が、あらゆる不可逆的損傷の閾値以下に維持されている限り、レーザー出力(1Wから5W)の差異に対しても有効である。
例XII
代表的な医療装置と共に用いられるNIMELS治療
先に述べた通り、医療装置領域でNIMELS技術を利用することについて説明するために、具体的に図16−図22に関連付けて述べる以下の例を提供する。従って、説明している実施形態は、代表的な例である。当業者には理解頂けるように、基礎を成すNIMEL方法論を利用して数多くの変更と修正が考えられる。
【0185】
図16は、カテーテル制御器内の患者上に置かれたカテーテル入口の回りに埋め込まれている複数の光ファイバーとして構成されている送出アッセンブリを含むNIMELS光学カテーテル制御器の或る実施形態を示している。図17は、図16の実施形態をシミュレートするように作られた身体モデルを示している。
【0186】
図16と図17は、接続アダプターを示しており、これによってスプレー状の光ファイバーが使い捨ての経皮装置制御器内に埋め込まれ、NIMELSレーザーシステムに遠位方向に接続される。経皮装置の大きさによって変わる多くの異なる変形物において、複数の光ファイバースプレーが円形の(又は他の)重複パターンで埋め込まれており、経皮装置で経皮的な傷に放射することができるようになっている。本発明のこの実施形態によれば、ファイバーは、一端で束ねられ、そこでNIMELSレーザーシステムに接続されており、他端は、拘束されていないので、外向きにフレア状に広がってスプレーを形成しており、経皮装置の制御器帯具内に必要なパターンで埋め込まれるようになっている。
【0187】
図18は、図16と同様のNIMELS光学カテーテル制御器の裏側を示している。図19は、図18による身体モデルの光ファイバーが取り除かれた状態を示している。
図18と図19は、経皮装置制御器を使って、経皮的な傷に放射するための光ファイバーのアレイの照明を示している。アダプターは、一端に光ファイバーの束ねられた端部を担持しており、アダプターを係合させてNIMELSレーザーシステムに接続させるように形成されている。光ファイバーは、NIMELSエネルギーを、経皮装置制御器と経皮装置自体の全体に亘る様々な複数の異なる場所に送ることができる。光ファイバーケーブルは、複数の光ファイバーを含んでおり、各光ファイバーは、個別に経皮装置制御器と経皮装置自体及びその回りの複数の部位の1つで終結している。これは、経皮装置の内側ルーメンを放射するための段付き又はBragg勾配付ファイバーを含んでいてもよい。代わりに、光ファイバーは、経皮装置制御器の領域を均一に照らすことができるように、個別に、装置全体に亘り所望の、例えば均一に間隔を置いた場所で終了していてもよい。
【0188】
図20は、本開示によるNIMELS光学微生物カテーテル制御器の試作的に可能になった側面図である。図21は、図20の試作品の追加図である。
図20と図21は、病原菌で汚染された経皮装置の付属的な処理として用いるため、又は、経皮装置の病原菌汚染及びコロニー形成を防ぐための放射線散布帯具又は光学経皮装置制御器を示している。装置は、代わりに、経皮装置制御器及び/又は経皮装置自体の外側及び内側の光線処理のための可撓性の照明器を含んでいてもよい。照明器は、経皮装置制御器及び/又は経皮装置自体に又はその回りに埋め込まれ又は包まれるように形成されている。別の構成では、経皮的な傷、皮膚及び/又は装置自体が所望の温度以下となるように、照明器が能動的に又は受動的に冷却される。
【0189】
更に、可撓性の帯又はベルトには、経皮装置の適切な位置決めと照明のために装置を所望の身体表面に保持し又は体形に合わせることができるように、経皮装置制御器が設けられていてもよい。光学経皮装置制御器は、脈管及び非脈管の経皮装置の回りに固く巻き付けて、長い時間に亘って(NIMELSエネルギーによって)広い抗微生物環境ができるように設計(例えば、構成と配列)することができる。
【0190】
図22は、本開示によるNIMELS光学微生物カテーテル制御器の別の図である。
先に述べた様に、本開示により用いられる送出アッセンブリは、光ファイバー以外の形態を取ってもよい。例えば、或る種の実施形態では、中空の導波管が送出アッセンブリに用いられている。適用部位の要件に基づいて、他の寸法形状の送出アッセンブリ、例えば図2のアッセンブリ14、も採用することができる。代表的な実施形態では、送出アッセンブリ14を光学的放射の自由空間又は自由ビーム印加に合わせて構成し、例えば、ここに述べているNIMELS波長で組織を貫く透過を利用することもできる。印加される光学的放射は、例えば、930nm(及び同様の程度870nmまで)で、患者の組織を1cm以上まで貫くことができる。その様な実施形態は、以下に説明する様に、生体内の医療装置で使用するのに特に良く適している。適した光線平行化及び/又は開口絞り光学要素を用いてもよい。
【0191】
従って、本開示のNIMELS技法の出願は、限定するわけではないが、PICC部位の様なIVカテーテル、中心静脈(CV)線、動脈カテーテル、末梢カテーテル、透析カテーテル、外側固定器ピン、腹膜透析カテーテル、硬膜外カテーテル、胸腔チューブ、図13に示している胃腸栄養供給管を含む医療装置と共に用いることができる。
例XIII
生体外の安全試験−哺乳動物の細胞
哺乳動物の細胞がNIMELSレーザー治療によって傷付くか否かを判定するために、従来のマウス3T3繊維芽細胞を用いた。標準化した量の繊維芽細胞を含んでいる処置プレートをNIMELSレーザーに曝し、同量の繊維芽細胞を含んでいる制御プレートを、レーザー治療の間、室温に保持した。
【0192】
処置後、細胞は、それらのプレートを37℃の培養器に3時間取り付けた。次に、細胞をプレートから抽出し、形態学と生存能力について試験した。処置した繊維芽細胞内では形態学的変化が観察されたが、処置したプレートも、制御プレートも、生存能力は重大な差を示さなかった。これらの結果は、細胞の損傷(形態学的変化によって示される)は、細胞の生存能力に影響しなかったことを示している。
【0193】
生体外の追加研究を行って、マウス3T3繊維芽細胞組織を、生体外のバクテリアには致命的であると示されているNIMELSレーザー線量に曝したときの、熱及び光の安全性について試験した。繊維芽細胞には500,000CFUのE.coli K-12を接種した。この「感染した」サンプルを、先の研究(上記参照)から確認されている微生物に致命的なレーザー線量で処置した。処置後3時間、これらの繊維芽細胞は、形状及び形態において生存能力があるように見えた。16時間処置後に行った培養では、標準的寒天培地内のバクテリアの成長と哺乳動物成長血清媒体は無かった。
例XIV
生体内の安全性試験−哺乳動物の細胞
生体外の結果に基づいて、Nomir NIMELSレーザーのこれらの波長における動物モデルでの安全性を判定するために、マウスで研究を行った。
【0194】
パイロット線量研究を、NIMELSレーザーを使って、FVB(Friend leukemia ウィルスB株)マウス菌株の背側の皮膚で行った。各4匹のマウスの6つのグループを用いた。これには、レーザー強度、エネルギーレベル、出力密度(PD)、曝露時間、及びスポットサイズの試験が含まれていた。研究日(0日)にマウスを観察し、1日目と2日目も続いて観察を行った。マウスは2日目に犠牲となり、履歴を試験するために、レーザー曝露領域から標本を切り取り、パラフィンに埋め込み、次いでヘマトキシリンとエオシン(H&E)で染色した。
【0195】
本発明により哺乳動物で使用するように上記で考えていたものを遥かに上回るエネルギー(888−3034Jの範囲)、出力密度(2.04−3.82の範囲)レベル、又は曝露時間を用いた場合、全ての動物が死に、深刻な罹患率となり、目に見える皮膚の瘢痕が動物に生じた。
【0196】
34個の試料を顕微鏡で研究した。全て、最初の処置を生き延び、観察期間中も生存していた動物のものである。履歴は、34個中28個の試料が履歴的異常を示さず、その内の6個は比較標準で、22個は、360Jから1776Jのレーザーエネルギーと、1.02から2.72のPDに曝露したものである。
【0197】
6個の試料は明白な履歴を示し、その内の3つは、750Jを遥かに上回るレーザーエネルギー(1332Jから1998Jの範囲)に曝されていた。残りの内は、1つは非常に高い出力密度(PD3.82、444J)に曝されており、1つは極めて長い時間曝されていた(930nm、750Jで4分の曝露)。残りの試料では、曝露因子は、ヒトへの使用に予期される範囲内にあった。
【0198】
履歴変化の強さに慎重に注目した。履歴変化が認められた試料の何れにも、極端な曝露に供された試料でさえも、下にある筋肉層まで又はそれを超えて皮下まで伸びている所見の無かったことは注目に値する。変化は、極めて表面的であり、貫通深さは90ミクロンに満たなかった。顕著な表面の潰瘍は、顕微鏡で注意深く検査した後にのみ認知され、直径は60ミクロン未満、深さは40ミクロン未満であった。従って、全ての変化は軽微で、臨床的結果は殆ど無かった。
【0199】
有害事象との強力な相関関係は、使用したエネルギーレベル(ジュール)に認められ、全ての事象は、Jレベルが増大するにつれて数と強度が増大した。例外があり、750J以下のレーザーエネルギーを用いた場合は、重大で有害な結果は見られなかった。唯1つの動物で、皮膚の瘢痕の形跡が750Jで認められ、レーザー曝露の持続時間を哺乳動物(例えば、ヒト)への使用が期待される通常の時間の2倍に延長したときに生じた。
【0200】
研究は、大多数の動物で、皮膚又は下にある組織への明白な損傷の無かったことを示した。深刻な病的状態は、使用したエネルギーレベル極めて高かった動物に限られていた。全ての深刻で有害な結果の数と強さは、曝露の強さに関係しており、全て、期待されるヒトへの使用を遥かに超える身体的パラメーターを使用したときに起こっていた。
【0201】
広範囲なパラメーターに亘って明白な履歴に関する知見に遭遇したが、使用したエネルギー密度又は出力密度が高いほど、より顕著であった。哺乳動物での使用が期待される範囲内のレベルを使用した場合、知見は、正常であるか、異常であったとしても、極めて軽微であり、顕微鏡で集中的に検査した後でしか確認できなかった。
【0202】
研究は、エネルギーレベル(J)を監視するだけでなく、出力密度(PD)に大きな影響を与える曝露時間及びレーザービームのスポットサイズの適切な制御を維持する必要があることを強調している。
例XV
生体内の安全試験−ヒトの患者
本発明人は、生体外の繊維芽細胞研究に続いて、自分自身に線量滴定を行って、放射された組織を燃焼又は損傷させることなく、ヒトの皮膚組織に送ることのできるエネルギー及び曝露時間の安全な最大レベルを確認した。
【0203】
発明人が使用した方法論は、自分の足の親指に、NIMELSレーザーを、時間の長さと出力の設定を変化させて放射することである。この自己曝露実験の結果について、以下に説明する。
表XXII:組み合わされた波長の線量
【0204】
【表22】
【0205】
表XXIII:λ=930nmでの線量
【0206】
【表23】
【0207】
時間/温度の査定を表にして、これらのレーザーエネルギーがヒトの皮膚組織に及ぼす熱の安全性を確認した(データを示さず)。1回のレーザー処置で、足の親指を870nmと930nmの両方に233秒まで曝露し、同時にレーザー赤外線温度計を使って足爪の表面温度を測定した。上記線量を使い、37.5℃の表面温度で、870nmと930nm両方を組み合わせた出力密度が1.70W/cm2で、痛みが生じ、レーザーがオフになったことを発見した。
【0208】
第2レーザー処置で、足の親指を930nmに142秒まで曝露し、同時に再びレーザー赤外線温度計を使って足爪の表面温度を測定した。36℃の表面温度で、930nm単独で、出力密度が1.70W/cm2で、痛みが生じ、レーザーがオフになったことを発見した。
例XVI
生体内の安全試験−限られた臨床パイロット研究
上記実験に続き、足が爪甲真菌症を患っている患者を治療した。これらの患者は、全て無料のボランテイァであり、署名したインフォームド・コンセントを提供した人である。この限られたパイロット研究の元々の目標は、NIMELSレーザー装置を使って生体外で得たのと同じレベルの真菌汚染除去を生体内で実現することであった。我々は、更に、発明人自身の曝露実験の際に発明人が許容できた最大時間の曝露及び温度の限界を印加するように決めた。
【0209】
高度に制御され監視された環境で、各対象者に3回から5回のレーザー曝露処置を行った。4人の対象者を募って治療を行った。署名入りのインフォームド・コンセントを提供した対象者には、補償されておらず、処置中であっても、何時でも引き揚げることができると通知した。
【0210】
第1対象者の治療に用いた線量は、発明人自身の曝露の際に用いたのと同じであった(上記)。爪の表面の温度パラメーターも、発明人が自身の照射で発見した温度と等価であった。
【0211】
治療した足先は、足白癬と爪床の周りの落屑が相当に減り、真菌の保菌場所として作用していた爪甲の汚染が除去されたことを示した。制御爪を横挽きバーで削ぎ落とし、削り屑を保管して菌媒体上で培養した。治療した爪も全く同じ方法で削り落とし、培養した。
【0212】
爪の削り屑を培養するために、サブローデキストロース寒天培地(2%のデキストロース)媒体を、以下の添加物、即ち、一般的な真菌試験のためのクロラムフェニコール(0.04mg/ml);皮膚糸状菌のために選択されるクロラムフェニコール(0.04mg/ml)とシクロヘキシミド(0.4mg/ml);真菌の成長に負の制御として作用するクロラムフェニコール(0.04mg/ml)とグリセオフルビン(20μg/ml)を添加して準備した。
【0213】
治療#1と治療#2(治療#1の後で3日間行った)に関する9日の菌類の結果は、制御足爪の培地の皮膚糸状菌の成長に関しては、同じで、治療した足爪の培地では成長しなかった。治療した培地では成長は見られなかったが、治療しなかった制御培養培地では、著しい成長が見られた。
【0214】
第1対象者は、120日間追跡し、同じプロトコルの下で4回の治療を施した。図15は、事前治療、治療の60日後、及び治療の80日後と、治療後120日後の足爪を比較している。注目すべきは、健康で感染していない爪甲が爪面積の50%を覆っており、120日後に健康な小皮から成長していたことである。
【0215】
以上、幾つかの実施形態について説明してきたが、当業者には理解頂けるように、本開示の方法、システム、及び装置は、本開示の精神から逸脱すること無く、別の特定の形態でも具現化することができる。従って、本実施形態は、全ての点で、本開示を分かり易くするためものであって、限定を課すものではないと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】出力密度(縦軸)対秒単位での照射時間(横軸)を示す双対数グラフである。主レーザー組織相互作用は、異なるエネルギー密度閾値及びパラメーターの関数として示されている。対角線は、異なるエネルギー密度を表しており、本開示により開発されたエネルギー密度値を示している(MINELSと標示されている円領域を参照)。
【図2】本開示の1つの好適な実施形態によるシステムの概略図を示している。
【図3】図3Aは図2の本発明の治療システムにより生成される異なるパターンの光学放射を示している。図3Bは図2の本発明の治療システムにより生成される異なるパターンの光学放射を示している。図3Cは図2の本発明の治療システムにより生成される異なるパターンの光学放射を示している。図3Dは、図2の本発明の治療システムにより生成される異なるパターンの光学放射を示している。
【図4】異なる合計エネルギー値(ジュール)でのE.coli細胞を標的とした本開示の代表的な方法、装置、及びシステムを使って得た、典型的な生体外効能データ(致死率)のグラフである。
【図5】異なる合計エネルギー値(ジュール)でのE.coli細胞を標的とした本開示の代表的な方法とシステムを使って観察した、典型的な最終サンプル温度(℃)のグラフである。
【図6】異なる合計エネルギー値(ジュール)でのS.aureus細胞を標的とした本開示の代表的な方法とシステムを使って生体外で観察した、典型的な最終サンプル温度(℃)のグラフである。
【図7】本開示の代表的な方法とシステム使って治療標的部位の熱的許容可能温度で観察された、典型的な生体外効能データを示すグラフである。
【図8】爪複合体を表す図であり、爪床(爪母基)、爪甲、及び爪甲周囲を示している。爪床は爪甲の下にあり、中に血管と神経が入っている。爪床の中には、角質化した爪の量の大部分を作り出す胚芽基質と、無菌基質が入っている。この基質は、爪の「根」であり、その最も遠位側の部分は、半月と呼ばれる半月型の構造として、多くの爪に見られる。
【図9】典型的な爪甲真菌症の患者の爪を表す図であり、爪甲、爪床(無菌基質と胚芽基質)、及び爪郭(爪上皮の下から成長している半月)領域を示しており、本開示の実施形態の1つによる初期治療に続く数週間で改善し始めた状態を示している。
【図10】慢性的に感染している爪を示す図であり、慢性の爪周囲炎(例えば、爪と境を接する表皮の表在性感染)に伴う特性的特徴を更に示している。爪周囲炎感染は、近位側爪郭のシール部と爪甲の間に、器官に侵入するための侵入門となる壊裂が生じたときに発症する。慢性の爪周囲炎は、一般に、膨れた赤い、ぴりぴり痛む湿潤性の爪郭を作り出し、病気の徴候は6週間以上現れ、長期間の爪甲真菌症を併発する。
【図11】或る爪甲真菌症の患者の爪を表す図であり、病原体に感染している爪の異なる不連続な領域と、爪甲の健康な部分がまだ堅くて半透明な完全に清潔な他の領域とを示している。
【図12】図12Aは面積1.77cm2の入射ガウスビームパターンを有する1.5cmの照射スポットの照明パターンを示す概略図である。図示の様に、ガウスエネルギー分布パターンでは、1.77cm2の照射領域内に、少なくとも6つの異なる出力密度強度が在る。これらの変化する出力密度は、強度(又は出力の集中度)を、スポットの表面積に亘って(周辺の)1から中心点の6まで増大させる。図12Bは対照的に、本発明の或る実施形態に用いられている、生体内及び生体外のNIMELSレーザーシステムに依る均一なエネルギー分布(「上部が平坦」なパターン)を示している。図12Cは面積1.77cm2の入射ガウスビームパターンを有する1.5cmの照射スポットの照明パターンを示す概略図である。図示の様に、ガウスエネルギー分布パターンでは、1.77cm2の照射領域内に、少なくとも6つの異なる出力密度強度が在る。これらの変化する出力密度は、強度(又は出力の集中度)を、スポットの表面積に亘って(周辺の)1から中心点の6まで増大させる。図12Dは対照的に、本発明の或る実施形態に用いられている、生体内及び生体外のNIMELSレーザーシステムに依る均一なエネルギー分布(「上部が平坦」なパターン)を示している。
【図13】所与のスポットサイズのパラメーター(直径1.2−2.2cm)に関するTn関数を示すグラフであり、治療時間パラメーターは、3.0ワットのレーザー出力電力で、409J/cm2のエネルギー密度÷出力密度によって導き出される。従って、NIMELS(時間)因子=Tn=409/出力密度である。
【図14】所与のスポットサイズのパラメーター(直径1.2−2.2cm)に関するTn関数を示すグラフであり、治療時間パラメーターは、3.0ワットのレーザー出力電力で、205J/cm2のエネルギー密度÷出力密度によって導き出される。従って、NIMELS(時間)因子=Tn=205/出力密度である。
【図15】本開示の方法により治療された典型的な爪甲真菌症の患者の爪の外観の、時間の経過に亘る改善度を示している合成写真である。
【図16】カテーテル制御器内の患者上に置かれたカテーテル入口の回りに埋め込まれている複数の光ファイバーとして構成されている送出アッセンブリを含むNIMELS光学カテーテル制御器の或る実施形態を示している。
【図17】図16の実施形態をシミュレートするように作られた身体モデルを示している。
【図18】図16と同様のNIMELS光学カテーテル制御器の裏側を示している。
【図19】図18による身体モデルの、光ファイバーが取り除かれている状態を示している。
【図20】本開示によるNIMELS光学微生物カテーテル制御器の試作的に可能になった側面図である。
【図21】図20の試作の追加図である。
【図22】本開示によるNIMELS光学微生物カテーテル制御器の別の図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的部分へ許容できない悪影響を及ぼすこと無く、標的部位の生物学的汚染物質のレベルを下げる方法において、前記標的部位を、約905nmから約945nmの波長を有する光学的放射によってNIMELS線量で照射する段階を有する方法。
【請求項2】
生物学的部分へ許容できない悪影響を及ぼすこと無く、標的部位の生物学的汚染物質のレベルを下げる方法において、前記標的部位を、約925nmから約935nmの波長を有する光学的放射によってNIMELS線量で照射する段階を有する方法。
【請求項3】
生物学的部分へ悪影響を及ぼすこと無く、標的部位の生物学的汚染物質のレベルを下げる方法において、
(a)前記標的部位を、約850nmから約900nmの波長を有する光学的放射によってNIMELS線量で照射する段階と、
(b)前記標的部位を、約905nmから約950nmの波長を有する第2光学的放射によって照射する段階と、を有する方法。
【請求項4】
生物学的部分へ悪影響を及ぼすこと無く、標的部位の生物学的汚染物質のレベルを下げる方法において、
(a)前記標的部位を、約865nmから約875nmの波長を有する光学的放射によってNIMELS線量で照射する段階と、
(b)前記標的部位を、約925nmから約935nmの波長を有する第2光学的放射によって照射する段階と、を有する方法。
【請求項5】
前記生物学的汚染物質は、バクテリア、真菌、カビ菌、マイコプラズマ、原生動物、プリオン、寄生生物、ウイルス、及びウイルスから成るグループから選択される、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的汚染物質は、白癬菌、小胞子菌属、表皮菌、カンジダ、スコプラリオプシス・ブレビカウリス(Scopulariopsis brevicaulis)、フサリウム種、アスペルギルス種、アルテルナリア属、アクレモニウム属、サイタリディナム・ディミディアタム(Scytalidinum dimidiatum)、サイタリディニウム・ハイアリナム(Scytalidinium hyalinum)から成るグループから選択される、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的汚染物質は白癬菌である、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記生物学的汚染物質はE.coliである、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項9】
前記生物学的汚染物質は葡萄状球菌である、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項10】
前記生物学的汚染物質はカンジダである、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項11】
前記段階(a)と(b)は独立して実行される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項12】
前記段階(a)と(b)は順次実行される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項13】
前記段階(a)と(b)は基本的に同時に実行される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項14】
前記光学的放射は、約50から約300秒の時間(Tn)提供される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
前記光学的放射は、約75から約200秒の時間(Tn)提供される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項16】
前記光学的放射は、約100から約150秒の時間(Tn)提供される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項17】
前記光学的放射は、約100から約450秒の時間(Tn)提供される、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項18】
前記NIMELS線量は、約100J/cm2から約500J/cm2のエネルギー密度を提供する、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項19】
前記NIMELS線量は、約175J/cm2から約300J/cm2のエネルギー密度を提供する、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項20】
前記NIMELS線量は、約200J/cm2から約250J/cm2のエネルギー密度を提供する、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項21】
前記NIMELS線量は、約300J/cm2から約700J/cm2のエネルギー密度を提供する、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項22】
前記NIMELS線量は、約300J/cm2から約500J/cm2のエネルギー密度を提供する、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項23】
前記NIMELS線量は、約300J/cm2から約450J/cm2のエネルギー密度を提供する、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項24】
前記標的部位は、医療装置を含んでいる、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項25】
1つ又は複数の光ファイバーによって、前記標的部位に前記光学的放射を送る段階を更に含んでいる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
中空の導波管によって、前記標的部位に前記光学的放射を送る段階を更に含んでいる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
自由ビーム伝送によって、前記標的部位に前記光学的放射を送る段階を更に含んでいる、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
システムにおいて、
実質的に約850nmから約900nmの第1波長範囲か、約905nmから約950nmの第2波長範囲か、又は両方の波長範囲を有する光学的放射を生成するように構成され配置されている光学的放射生成装置と、
前記光学的放射が印加領域に送られるようにするための送出アッセンブリと、
前記印加領域に送られる前記放射の線量を制御するために前記光学的放射生成装置に作動的に接続されている制御器であって、面積当りの前記送られる放射の出力密度の時間積分は、NIMELS線量の所定の閾値より低い、制御器と、を備えているシステム。
【請求項29】
前記光学的放射源は、前記第1波長範囲、前記第2波長範囲、又は両方の範囲で前記放射を生成するように構成され配置されている少なくとも1つのレーザーを含んでいる、請求項28に記載の治療システム。
【請求項30】
前記少なくとも1つのレーザーは、近赤外線領域で出力を生成するように構成され配置されているダイオードレーザーを含んでいる、請求項29に記載の治療システム。
【請求項31】
前記ダイオードレーザーは、前記第1波長範囲、前記第2波長範囲、又は両方の範囲で放射を生成するために、InxGa1-xAs、GaAs1-xPx、AlxGa1-xAs、及び(AlxGa1-x)yIn1-yAsで構成されているグループから選択される半導体材料を含んでいる、請求項29に記載の治療システム。
【請求項32】
前記光学的放射は、所望の干渉度を有している、請求項28に記載の治療システム。
【請求項33】
前記制御器は、前記放射を放射パルスの連続となるように制御できるように構成され配置されている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項34】
前記制御器は、更に、前記放射パルスの強度を制御できるように構成され配置されている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項35】
前記制御器は、更に、前記放射パルスの時間的な幅を制御できるように構成され配置されている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項36】
前記制御器は、更に、前記放射パルスの繰り返し率を制御できるようになっている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項37】
前記制御器は、更に、前記放射パルスの強度を制御できるように構成されている、請求項36に記載の治療システム。
【請求項38】
前記制御器は、更に、前記放射パルスの時間的な幅を制御できるように構成され配置されている、請求項36に記載の治療システム。
【請求項39】
前記制御器は、前記光学的放射生成装置を制御し、所定量の放射を、前記印加表面によって治療部位へ送るようにプログラムされている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項40】
前記制御器は、治療部位の解剖学的データに基づいて、前記治療部位の治療に必要な量を計算するように事前にプログラムされている線量計算器を備えている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項41】
前記線量計算器は、更に、前記治療部位を画像化し、前記治療部位の前記解剖学的データを作成するための画像化システムを備えている、請求項40に記載の治療システム。
【請求項42】
前記治療部位は、外傷であり、前記解剖学的データは、前記外傷の大きさ、型式、及び深さを含んでいる、請求項40に記載の治療システム。
【請求項43】
前記光学的放射は、前記光学的放射が入射する治療部位の、患者の組織内(生体内)に反応性酸素を生成するように選択されている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項44】
前記送出アッセンブリは、前記光学的放射生成装置から放射を受け取り、前記放射を、患者の組織内(生体内)に配置されている医療装置に送るように構成され配置されている1つ又は複数の光ファイバーを備えている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項45】
前記1つ又は複数の光ファイバーは、患者の組織の、前記医療装置の光伝送範囲内の或る場所に挿入されるように構成され配置されている端部を有する複数の光ファイバーを含んでおり、前記放射は、前記医療装置を取り囲んでいる前記組織にNIMELS線量で送られる、請求項44に記載の治療システム。
【請求項46】
前記医療装置はステントである、請求項44に記載の治療システム。
【請求項47】
前記医療装置は人工関節である、請求項44に記載の治療システム。
【請求項48】
前記医療装置はカテーテルである、請求項44に記載の治療システム。
【請求項49】
前記医療装置は、IVカテーテル、中央静脈線、動脈カテーテル、末梢カテーテル、透析カテーテル、外側固定器ピン、腹膜透析カテーテル、硬膜外カテーテル、胸腔チューブ及び胃腸栄養供給管から成るグループから選択される、請求項44に記載の治療システム。
【請求項50】
前記送出アッセンブリは、カテーテル内に配置されている光ファイバーを備えており、前記治療システムは、前記カテーテルが患者の組織内に配置されているときに、前記カテーテルのルーメン上のバイオフィルムを抑制又は防止するように構成され配置されている、請求項44に記載の治療システム。
【請求項51】
前記送出アッセンブリは、中空の導波管を含んでいる、請求項28に記載の治療システム。
【請求項52】
前記送出アッセンブリは、自由ビーム光学システムを備えている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項53】
前記送出アッセンブリは、前記光学的放射生成装置から光学的放射を受け取り、前記光学的放射を前記印加領域へ送るための、1つ又は複数のコリメーターレンズを備えている、請求項52に記載の治療システム。
【請求項1】
生物学的部分へ許容できない悪影響を及ぼすこと無く、標的部位の生物学的汚染物質のレベルを下げる方法において、前記標的部位を、約905nmから約945nmの波長を有する光学的放射によってNIMELS線量で照射する段階を有する方法。
【請求項2】
生物学的部分へ許容できない悪影響を及ぼすこと無く、標的部位の生物学的汚染物質のレベルを下げる方法において、前記標的部位を、約925nmから約935nmの波長を有する光学的放射によってNIMELS線量で照射する段階を有する方法。
【請求項3】
生物学的部分へ悪影響を及ぼすこと無く、標的部位の生物学的汚染物質のレベルを下げる方法において、
(a)前記標的部位を、約850nmから約900nmの波長を有する光学的放射によってNIMELS線量で照射する段階と、
(b)前記標的部位を、約905nmから約950nmの波長を有する第2光学的放射によって照射する段階と、を有する方法。
【請求項4】
生物学的部分へ悪影響を及ぼすこと無く、標的部位の生物学的汚染物質のレベルを下げる方法において、
(a)前記標的部位を、約865nmから約875nmの波長を有する光学的放射によってNIMELS線量で照射する段階と、
(b)前記標的部位を、約925nmから約935nmの波長を有する第2光学的放射によって照射する段階と、を有する方法。
【請求項5】
前記生物学的汚染物質は、バクテリア、真菌、カビ菌、マイコプラズマ、原生動物、プリオン、寄生生物、ウイルス、及びウイルスから成るグループから選択される、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的汚染物質は、白癬菌、小胞子菌属、表皮菌、カンジダ、スコプラリオプシス・ブレビカウリス(Scopulariopsis brevicaulis)、フサリウム種、アスペルギルス種、アルテルナリア属、アクレモニウム属、サイタリディナム・ディミディアタム(Scytalidinum dimidiatum)、サイタリディニウム・ハイアリナム(Scytalidinium hyalinum)から成るグループから選択される、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的汚染物質は白癬菌である、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記生物学的汚染物質はE.coliである、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項9】
前記生物学的汚染物質は葡萄状球菌である、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項10】
前記生物学的汚染物質はカンジダである、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項11】
前記段階(a)と(b)は独立して実行される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項12】
前記段階(a)と(b)は順次実行される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項13】
前記段階(a)と(b)は基本的に同時に実行される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項14】
前記光学的放射は、約50から約300秒の時間(Tn)提供される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
前記光学的放射は、約75から約200秒の時間(Tn)提供される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項16】
前記光学的放射は、約100から約150秒の時間(Tn)提供される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項17】
前記光学的放射は、約100から約450秒の時間(Tn)提供される、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項18】
前記NIMELS線量は、約100J/cm2から約500J/cm2のエネルギー密度を提供する、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項19】
前記NIMELS線量は、約175J/cm2から約300J/cm2のエネルギー密度を提供する、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項20】
前記NIMELS線量は、約200J/cm2から約250J/cm2のエネルギー密度を提供する、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項21】
前記NIMELS線量は、約300J/cm2から約700J/cm2のエネルギー密度を提供する、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項22】
前記NIMELS線量は、約300J/cm2から約500J/cm2のエネルギー密度を提供する、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項23】
前記NIMELS線量は、約300J/cm2から約450J/cm2のエネルギー密度を提供する、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項24】
前記標的部位は、医療装置を含んでいる、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項25】
1つ又は複数の光ファイバーによって、前記標的部位に前記光学的放射を送る段階を更に含んでいる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
中空の導波管によって、前記標的部位に前記光学的放射を送る段階を更に含んでいる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
自由ビーム伝送によって、前記標的部位に前記光学的放射を送る段階を更に含んでいる、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
システムにおいて、
実質的に約850nmから約900nmの第1波長範囲か、約905nmから約950nmの第2波長範囲か、又は両方の波長範囲を有する光学的放射を生成するように構成され配置されている光学的放射生成装置と、
前記光学的放射が印加領域に送られるようにするための送出アッセンブリと、
前記印加領域に送られる前記放射の線量を制御するために前記光学的放射生成装置に作動的に接続されている制御器であって、面積当りの前記送られる放射の出力密度の時間積分は、NIMELS線量の所定の閾値より低い、制御器と、を備えているシステム。
【請求項29】
前記光学的放射源は、前記第1波長範囲、前記第2波長範囲、又は両方の範囲で前記放射を生成するように構成され配置されている少なくとも1つのレーザーを含んでいる、請求項28に記載の治療システム。
【請求項30】
前記少なくとも1つのレーザーは、近赤外線領域で出力を生成するように構成され配置されているダイオードレーザーを含んでいる、請求項29に記載の治療システム。
【請求項31】
前記ダイオードレーザーは、前記第1波長範囲、前記第2波長範囲、又は両方の範囲で放射を生成するために、InxGa1-xAs、GaAs1-xPx、AlxGa1-xAs、及び(AlxGa1-x)yIn1-yAsで構成されているグループから選択される半導体材料を含んでいる、請求項29に記載の治療システム。
【請求項32】
前記光学的放射は、所望の干渉度を有している、請求項28に記載の治療システム。
【請求項33】
前記制御器は、前記放射を放射パルスの連続となるように制御できるように構成され配置されている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項34】
前記制御器は、更に、前記放射パルスの強度を制御できるように構成され配置されている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項35】
前記制御器は、更に、前記放射パルスの時間的な幅を制御できるように構成され配置されている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項36】
前記制御器は、更に、前記放射パルスの繰り返し率を制御できるようになっている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項37】
前記制御器は、更に、前記放射パルスの強度を制御できるように構成されている、請求項36に記載の治療システム。
【請求項38】
前記制御器は、更に、前記放射パルスの時間的な幅を制御できるように構成され配置されている、請求項36に記載の治療システム。
【請求項39】
前記制御器は、前記光学的放射生成装置を制御し、所定量の放射を、前記印加表面によって治療部位へ送るようにプログラムされている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項40】
前記制御器は、治療部位の解剖学的データに基づいて、前記治療部位の治療に必要な量を計算するように事前にプログラムされている線量計算器を備えている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項41】
前記線量計算器は、更に、前記治療部位を画像化し、前記治療部位の前記解剖学的データを作成するための画像化システムを備えている、請求項40に記載の治療システム。
【請求項42】
前記治療部位は、外傷であり、前記解剖学的データは、前記外傷の大きさ、型式、及び深さを含んでいる、請求項40に記載の治療システム。
【請求項43】
前記光学的放射は、前記光学的放射が入射する治療部位の、患者の組織内(生体内)に反応性酸素を生成するように選択されている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項44】
前記送出アッセンブリは、前記光学的放射生成装置から放射を受け取り、前記放射を、患者の組織内(生体内)に配置されている医療装置に送るように構成され配置されている1つ又は複数の光ファイバーを備えている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項45】
前記1つ又は複数の光ファイバーは、患者の組織の、前記医療装置の光伝送範囲内の或る場所に挿入されるように構成され配置されている端部を有する複数の光ファイバーを含んでおり、前記放射は、前記医療装置を取り囲んでいる前記組織にNIMELS線量で送られる、請求項44に記載の治療システム。
【請求項46】
前記医療装置はステントである、請求項44に記載の治療システム。
【請求項47】
前記医療装置は人工関節である、請求項44に記載の治療システム。
【請求項48】
前記医療装置はカテーテルである、請求項44に記載の治療システム。
【請求項49】
前記医療装置は、IVカテーテル、中央静脈線、動脈カテーテル、末梢カテーテル、透析カテーテル、外側固定器ピン、腹膜透析カテーテル、硬膜外カテーテル、胸腔チューブ及び胃腸栄養供給管から成るグループから選択される、請求項44に記載の治療システム。
【請求項50】
前記送出アッセンブリは、カテーテル内に配置されている光ファイバーを備えており、前記治療システムは、前記カテーテルが患者の組織内に配置されているときに、前記カテーテルのルーメン上のバイオフィルムを抑制又は防止するように構成され配置されている、請求項44に記載の治療システム。
【請求項51】
前記送出アッセンブリは、中空の導波管を含んでいる、請求項28に記載の治療システム。
【請求項52】
前記送出アッセンブリは、自由ビーム光学システムを備えている、請求項28に記載の治療システム。
【請求項53】
前記送出アッセンブリは、前記光学的放射生成装置から光学的放射を受け取り、前記光学的放射を前記印加領域へ送るための、1つ又は複数のコリメーターレンズを備えている、請求項52に記載の治療システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2009−502439(P2009−502439A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525224(P2008−525224)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/030434
【国際公開番号】WO2007/019305
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(507184579)ノミール・メディカル・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/030434
【国際公開番号】WO2007/019305
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(507184579)ノミール・メディカル・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】
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