説明

送信品質が改善された反射型半導体光増幅器を基盤とする光加入者網システム

【課題】反射型半導体光増幅器(RSOA)を各加入者の光源に使用する光加入者網において、アップストリーム信号の送信品質を顕著に改善した光加入者網システムを提供する。
【解決手段】本発明は、RSOA(254)を各加入者(250)の光源に使用する光加入者網システムにおいて、ダウンストリーム信号の変調方式にマンチェスターフォーマットを使用することで、各加入者の光源としてRSOAを使用する時に発生する再変調されたアップストリーム信号の品質低下問題を解決して、アップストリーム信号の送信性能とシステムのパワーバジェットを改善する。本発明によれば、パワーバジェットと再変調されたアップストリーム信号の送信性能とが改善された、RSOA(250)を基盤とする波長分割多重方式の受動型光加入者網(WDM PON)システムの具現が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光加入者網システムに関するもので、より詳細には、反射型半導体光増幅器(RSOA)を各加入者の光源に使用する光加入者網で、ダウンストリーム信号をマンチェスターフォーマットで変調することにより、再変調されたアップストリーム信号の送信品質を顕著に改善した光加入者網システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近インターネット使用量の増加に伴って、各種未来型通信サービスの発達による送信容量増大に対する要求が急速に高まっている。このような要求を収容するために、光ファイバーを各加入者まで連結して、超高速広帯域データ送信ができる光加入者網システムに対する研究が活発に進行されている。このような光加入者網では、受動型光加入者網(Passive Optical Network:PON)は、中央基地局(central office)と各加入者(subscriber)との連結網の構成において、光ファイバー(optical fiber)、多重化器、逆多重化器(multiplexer/demultiplexer)、分配器(splitter)、連結器(connector)などの受動型光素子のみを使用する。したがって、加入者網の維持、管理及び補修が容易で、別途の電力供給を必要としないという長所がある。
【0003】
特に、WDM(Wavelength Division Multiplexing)PONは、加入者ごとに固有の波長を使用して送信チャンネルを形成するので、送信容量の増大と、保安性と、拡張性とに有利な長所がある。しかし、加入者ごとにお互いに異なる波長で動作する光源を設置しなければならないので、敷設費用が増加するという短所がある。
【0004】
このような問題点を解決するために、スペクトル分割光源(spectrum−sliced LED)、ASE(Amplified Spontaneous Emission)注入FP−LD(Fabry−Perot Laser−Diode)(以下、「ASE注入FP−LD」と略称する)、RSOA(Reflective Semiconductor Optical Amplifier;反射型半導体光増幅器)などの光源を使用する方式が提案された。その中でスペクトル分割光源の場合は、スペクトル分割時に浪費されるパワーが大きいため、出力パワーが低いという問題点がある。また、ASE注入FP−LD方式の場合は、中央基地局に高価な広帯域光源を追加して設置しなければならない短所がある。それに反して、RSOAを加入者光源に使用する場合には、RSOAで入力されたダウンストリーム信号が増幅、再変調されてアップストリーム信号に使用されるため、出力パワーも充分に大きくて、中央基地局に追加的な広帯域光源を設置する必要もない。そのような理由で、最近RSOAを各加入者の光源に使用するWDM PONに対する研究が活発に進行されている。
【0005】
しかし、RSOAを加入者光源に使用する場合、ダウンストリーム信号を増幅、再変調してアップストリーム信号を作り出すRSOAの特徴のために、RSOAに入力されたダウンストリーム信号の特性に依存してアップストリーム信号の送信品質が影響を受けるという問題点が発生する。RSOAに入力されるダウンストリーム信号のパワーが充分に大きくて、RSOAが飽和領域で動作するようになれば、ダウンストリーム信号を増幅、再変調して作られたアップストリーム信号の送信品質が劣化しないが、RSOAに入力されるダウンストリーム信号のパワーが小さい場合には、RSOAが線形領域で動作する関係で、アップストリーム信号の送信品質が急激に劣化し得る。また、ダウンストリーム信号の消光比が大きい場合、再変調されたアップストリーム信号のハイレベル(high−level)信号の雑音特性が悪くなって、アップストリーム信号の送信品質がさらに劣化する。(非特許文献1)。したがって、RSOAを各加入者の光源に使用するWDM PONでは、ダウンストリーム信号によるアップストリーム信号の送信性能劣化を防ぐために、必ずRSOAを飽和領域で動作させなければならず、そのためにはRSOAに入力されるダウンストリーム信号のパワーが充分に大きくなければならず、ダウンストリーム信号の消光比を一定程度以上に増加させることができないという問題点が発生する。
【0006】
このような問題を解決するために、ダウンストリーム信号をFSK(Frequency Shift Keying)変調方式を使用する先行研究があったが、そのためにはダウンストリーム信号生成のためにFSK変調が可能な送信用レーザーが必要であり、受信時にもFSK受信機が必要であるため、経済性が重要な光加入者網に使用するには相応しくない。
【非特許文献1】Wooram Lee,等,‘Bidirectional WDM−PON Based on Gain−Saturated Reflective Semiconductor Optical Amplifier,’IEEE Photonics Technology Letters,2005年11月,第17巻,11番
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の問題点を解決するために本発明は、RSOAを各加入者の光源に使用する光加入者網システムにおいて、ダウンストリーム信号によってアップストリーム信号の送信品質が劣化することを抑制することで、アップストリーム信号送信品質を改善するのみならず、システム全体のパワーバジェット(power budget)も改善することができる光加入者網システムを提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光加入者網システムは、反射型半導体光増幅器(RSOA)を各加入者の光源に使用する光加入者網で、中央基地局(CO)から各加入者端末(ONU)に伝達するダウンストリーム信号の変調方式にマンチェスターフォーマットを使用することを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記光加入者網が波長分割多重方式受動型光加入者網(WDM PON)であることが好ましく、その場合に、前記波長分割多重方式の受動型光加入者網が単向性の構造であっても、双方向性の構造であっても良い。
【0010】
前記波長分割多重方式の受動型光加入者網が単向性の構造の場合、前記波長分割多重方式の受動型光加入者網が、ダウンストリーム信号生成のための光源と、前記光源から出るダウンストリーム信号をマンチェスターフォーマットで直接変調するためのマンチェスター信号生成部と、前記変調されたダウンストリーム信号を波長分割多重化するための第1導波路型回折格子と、前記各加入者端末に送られるアップストリーム信号を波長別逆多重化させる第2導波路型回折格子と、前記波長別逆多重化されたアップストリーム信号を受け入れてそのアップストリーム信号に含まれているマンチェスターフォーマットで変調されたダウンストリーム信号の成分が、限定された帯域幅によって除去されるようにするアップストリーム信号受信機とを含む中央基地局と;ダウンストリーム信号を分配するためのカプラーと、波長別逆多重化のための第3導波路型回折格子と、アップストリーム、ダウンストリーム信号の送信経路を決定するサーキュレーターと、アップストリーム信号生成用第4導波路型回折格子とを含む地域基地局と;ダウンストリーム信号復元のための受信機とアップストリーム信号生成のためのRSOAとをそれぞれが含む複数の加入者端末と;前記中央基地局と地域基地局および前記地域基地局と加入者端末の間を連結する別途のアップストリームおよびダウンストリーム送信用光ファイバーとを具備することが好ましい。
【0011】
ここで、前記マンチェスター信号生成部が、NRZ信号供給部、クロック信号供給部及びXORゲートを具備することがさらに好ましい。
一方、前記波長分割多重方式受動型光加入者網が双方向性の構造の場合、前記波長分割多重方式の受動型光加入者網が、ダウンストリーム信号生成のための光源と、前記光源から出るダウンストリーム信号をマンチェスターフォーマットで直接変調するためのマンチェスター信号生成部と、前記変調されたダウンストリーム信号を波長分割多重化するための第1導波路型回折格子と、アップストリームおよびダウンストリーム送信信号経路区分のためのサーキュレーターと、前記各加入者端末から送られたアップストリーム信号を波長別逆多重化させる第2導波路型回折格子と、前記波長別逆多重化されたアップストリーム信号を受け入れてそのアップストリーム信号に含まれているマンチェスターフォーマットで変調されたダウンストリーム信号の成分が、限定された帯域幅によって除去されるようにするアップストリーム信号受信機とを含む中央基地局と;ダウンストリーム信号に対する波長別逆多重化のための第3導波路型回折格子を含む地域基地局と;ダウンストリーム信号復元のための受信機と、アップストリーム信号生成のためのRSOAと、前記ダウンストリーム信号を前記受信機及びRSOAに分割して伝達するためのカプラーとをそれぞれが含む複数の加入者端末と;前記中央基地局と地域基地局および前記地域基地局と加入者端末間を連結する共通のアップストリームおよびダウンストリーム送信用光ファイバー;を具備することが好ましい。
【0012】
ここで、前記マンチェスター信号生成部が、NRZ信号供給部、クロック信号供給部及びXORゲートを具備することが、さらに好ましい。
前記の発明において、前記アップストリーム信号をNRZ方式で変調しても良く、必要によってはRZ方式で変調しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、RSOAを各加入者の光源に使用する光加入者網システムにおいて、ダウンストリーム信号の変調方式にマンチェスターフォーマットを使用することで、各加入者の光源としてRSOAを使用する時に発生する再変調されたアップストリーム信号の品質低下問題を解決して、アップストリーム信号の送信性能とシステムのパワーバジェットを改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施例を添付した図面を参照して説明する。但し、本実施例は、本発明の権利範囲を限定するものではなく、単に例示のために提示したものである。
図1は、本発明の光加入者網システムで変調に使用されるマンチェスターフォーマット(Manchester format)で変調されたダウンストリーム信号の波形と、それと対比するために従来の変調に使用されたNRZフォーマット(Non−Return to Zero format)で変調されたダウンストリーム信号の波形を示したグラフである。このように二つの信号を対比して示した理由は、以下の実施例でRSOAを基盤とするWDM PONでダウンストリーム信号をNRZフォーマットとマンチェスターフォーマットでそれぞれ変調して、それによるアップストリーム信号の送信品質を分析することにより、本発明の優秀さを立証するためである。
【実施例1】
【0015】
図2は、本発明の実施例1による単向性WDM PONシステムの概略的構成図であり、この単向性WDM PONシステムは、マンチェスター信号をダウンストリーム信号の変調方式に使用してRSOAを各加入者の光源に使用するものである。
【0016】
図2を参照すると、本発明の実施例1による単向性WDM PONシステムは、中央基地局(Central office、以下COとする)200、アップストリーム送信用光ファイバー202、ダウンストリーム送信用光ファイバー204、地域基地局(Remote node)210及び加入者端末(Optical Network Unit、以下ONUとする)250で構成される。アップストリーム、ダウンストリーム送信用光ファイバー202及び204では、単一モード光ファイバー(Single Mode Fiber;SMF)を使用する。中央基地局200は、ダウンストリーム信号生成のための光源で、例えばDFB−LD(Distributed Feedback−Laser Diode)206、多くのチャンネルの光源を波長分割多重化するための第1導波路型回折格子(Arrayed Waveguide Grating,以下AWGとする)209、アップストリーム信号を波長別逆多重化させる第2AWG226、波長別に逆多重化された信号を受け入れるアップストリーム信号受信機228を具備する。また、本発明の最大の特徴は、ダウンストリーム信号生成のための光源から出る光信号をマンチェスターフォーマットで直接変調するためのマンチェスター信号生成部208を追加的に具備することである。マンチェスター信号生成部208は、NRZ信号供給部212、クロック信号供給部214及びXORゲート216からなる。
【0017】
一方、地域基地局210は、ダウンストリーム信号を分配するためのカプラー(coupler)218、波長別逆多重化のための第3AWG220及びアップストリーム、ダウンストリーム信号の送信経路を決定するサーキュレーター(circulator)222、アップストリーム信号生成用第4AWG224を具備する。加入者端末250は、ダウンストリーム信号復元のための受信機252とアップストリーム信号生成のためのRSOA254を含む。
【0018】
実施例1による本発明のシステムの具体的な動作原理を、以下に示す。中央基地局200に含まれたDFB−LD206をマンチェスターフォーマットで1.25Gb/sの変調速度で直接変調してダウンストリーム信号を生成する。ダウンストリーム信号は、中央基地局200内の第1AWG209を通過した後、中央基地局200と地域基地局210間のダウンストリーム送信用光ファイバー204を介して地域基地局210に送信される。地域基地局210に位置したカプラー218は、ダウンストリーム信号を二つの部分に分割する機能をする。ここで、分割されたダウンストリーム信号の中の一部(a)は、ダウンストリーム信号復元のために第3AWG220を経て加入者端末250のダウンストリーム信号受信機252に入力され、ダウンストリーム信号の中の残り一部(b)は、サーキュレーター222と第4AWG224を通過した後、アップストリーム信号生成のために加入者端末250のRSOA254に入力される。アップストリーム信号は、RSOA254に入力されたダウンストリーム信号を155Mb/sのNRZフォーマットに再変調して生成する。生成されたアップストリーム信号は、地域基地局210の第4AWG224とサーキュレーター222を経た後、再び地域基地局210と中央基地局200間のアップストリーム送信用光ファイバー202を介して中央基地局200に送信された後、中央基地局の第2AWG226によって該当の波長のアップストリーム信号受信機228に伝達される。
【0019】
本実施例1では、アップストリーム信号を生成するにおいてNRZ方式の変調を使用したが、必要に応じてRZ方式の変調を使用することもできる。
図1に図示したように、既存のNRZフォーマットでダウンストリーム信号を変調する場合には、RSOA254に入力されるダウンストリーム信号のパワーが不足して、RSOA254が線形領域で動作するようになり、そのようになれば再変調されたアップストリーム信号の送信品質が低下する。しかし、マンチェスターフォーマットでダウンストリーム信号を変調すると、毎ビット(bit)ごとに信号のレベルが変わるマンチェスター信号の特徴によって、連続した信号レベルがないので低周波信号成分がほとんど存在しない。したがって、再変調されたアップストリーム信号に含まれているマンチェスターフォーマットで変調されたダウンストリーム信号の成分が、アップストリーム信号受信機228の限定された帯域幅によってほとんど除去される。したがって、本発明のシステムで特徴的に採用するマンチェスター信号生成部を採用する場合、NRZフォーマットでダウンストリーム信号を変調する既存方式に比べて、RSOA254によって再変調されたアップストリーム信号の送信性能が改善されるようになる。
【0020】
本発明の優秀性を立証するため、図2で説明した本発明の実施例1のシステムで、DFB−LD206をマンチェスターフォーマットで1.25Gb/sの変調速度で直接変調してダウンストリーム信号を生成したものと、マンチェスター信号生成部208を使用しないでDFB−LD206をNRZフォーマットで1.25Gb/sの変調速度で直接変調してダウンストリーム信号を生成したものとをお互いに比較した。
【0021】
図3aは、実施例1によるRSOAを基盤とする単向性WDM PONシステムでマンチェスター信号生成部208を使用せずに、変調方式がNRZフォーマットであり、変調速度が1.25Gb/sであるダウンストリーム信号を使用した場合、RSOA254に入力されたダウンストリーム信号を155Mb/sのNRZ信号に再変調して生成されたアップストリーム信号の送信性能を測定したグラフである。ダウンストリーム信号の消光比が大きい場合、アップストリーム信号の性能が急激に劣化するので、ダウンストリーム信号の消光比を充分に下げて実験を遂行した。ここで、消光比が低くなるほどダウンストリーム信号受信機の受信感度が低下してダウンストリーム信号の送信性能が悪化する(図6参照)。消光比が充分に低いダウンストリーム信号をRSOA254に入力した場合、RSOA254に入力されるダウンストリーム信号のパワーが充分に大きくて、RSOA254が飽和領域で動作すればアップストリーム信号の送信性能は低下しない。しかし、ダウンストリーム信号の消光比を下げたにもかかわらず、RSOA254に入力されるダウンストリーム信号のパワーが小さくてRSOA254が線形領域で動作するようになれば、RSOA254に入力されるダウンストリーム信号のパワーが低くなるほどアップストリーム信号の性能が急激に低下することが分かる。
【0022】
図3bは、実施例1によるRSOA基盤の単向性WDM PONシステムでマンチェスター信号生成部208を使用して、変調方式がマンチェスターフォーマットであり、変調速度が1.25Gb/sであるダウンストリーム信号を使用した場合、RSOA254によって155Mb/sのNRZ信号に再変調されたアップストリーム信号の送信性能を測定したグラフである。マンチェスター信号は既存のNRZ信号と異なり、ダウンストリーム信号の消光比によって再変調されたアップストリーム信号の送信性能が影響を受けないことが特徴である。したがって、充分に大きい消光比を有するダウンストリーム信号を使用してダウンストリーム信号の送信性能を改善する場合にも、アップストリーム信号の送信性能が低下しないことが特徴である。また、マンチェスター信号をダウンストリーム信号に使用する場合、RSOA254に入力されるダウンストリーム信号のパワーを顕著に低減しても、再変調されたアップストリーム信号の送信性能がほぼ一定であることが特徴である。
【0023】
すなわち、本発明の実施例1のようにマンチェスター信号を適用したRSOA基盤のWDM PONシステムを使用すれば、既存のNRZ信号を使用したRSOA基盤のWDM PONシステムと比較した時、ダウンストリーム信号の消光比を充分に大きくすることでダウンストリーム信号の送信性能を改善することができ、また充分に大きいダウンストリーム信号にもRSOA入力パワーの大きさに関係なく、アップストリーム信号の送信性能をほぼ一定にして、RSOAを基盤とするWDM PONシステムの性能が顕著に改善する効果を得ることができる。
【0024】
図4は、実施例1によるRSOAを基盤とする単向性WDM PONシステムのアップストリーム信号送信性能が、既存のNRZ信号を使用するRSOAを基盤とするWDM PONシステムの場合に比べて改善する理由を説明するために、NRZ及びマンチェスターフォーマットで変調されたダウンストリーム信号の電気的スペクトルを測定したものである。図4を参照すると、マンチェスター信号の場合、毎ビット(bit)ごとに信号のレベルが変わるという特性によって、低周波成分がほとんど存在しないということが分かる。したがって、再変調されたアップストリーム信号に含まれているマンチェスター信号の成分は、アップストリーム信号受信機の限定された帯域幅によって大部分が除去されるということが特徴である。
【0025】
図5は、前述のように、マンチェスター方式で変調されたダウンストリーム信号の成分が、再変調されたアップストリーム信号に含まれていた後、アップストリーム信号受信機の限定された帯域幅によって除去される効果を検証するために、NRZ及びマンチェスター方式で変調されたダウンストリーム信号をRSOAに再変調して生成されたアップストリーム信号のアイダイアグラム(eye diagram)を測定したものである。アップストリーム信号受信機を通過する前に測定されたアップストリーム信号のアイダイアグラムをよく見ると、変調方式によってお互いに異なるダウンストリーム信号の消光比を使用した関係で、ダウンストリーム信号をNRZフォーマットで変調した場合に測定されたアップストリーム信号の性能がより優秀であるように見える。しかし、アップストリーム受信機を通過した後に測定されたアイダイアグラムをよく見ると、前述の理由によって、ダウンストリーム信号をマンチェスターフォーマットで変調することで、アップストリーム信号の送信品質が顕著に改善されることを確認することができる。
【0026】
図6は、NRZ及びマンチェスターフォーマットを利用して1.25Gb/sの変調速度で変調されたダウンストリーム信号のダウンストリーム信号消光比の変化による受信感度を示したグラフである。図6を参照すると、二つの場合すべてに対して消光比が低くなるほどダウンストリーム信号受信機の受信感度が低下してダウンストリーム信号の送信性能が悪化することが分かる。
【実施例2】
【0027】
図7は、本発明の実施例2による双方向性WDM PONシステムの概略的な構成図であり、この双方向性WDM PONシステムは、マンチェスター信号をダウンストリーム信号の変調方式に使用して、RSOAを各加入者の光源に使用するものである。図7における図2と同じ構成要素には同じ参照番号を使用し、それらに対する重複的な説明は省略する。実施例2を実施例1と比較すると、基本的な構成要素である中央基地局、地域基地局、加入者端末を有する点は共通的であるが、実施例1では中央基地局と地域基地局、地域基地局と加入者端末の間を連結するアップストリーム、ダウンストリーム送信用光ファイバーを別々に使用している。一方、実施例2ではアップストリーム、ダウンストリーム信号送信用に一本の光ファイバーが使用されるという点でお互いに異なる。アップストリーム、ダウンストリーム信号送信用に一本の光ファイバーを使用するため、実施例2の中央基地局700にはアップストリーム、ダウンストリーム送信信号の送信経路を決定するサーキュレーター702が備えられる。実施例2でもダウンストリーム信号の光源をマンチェスターフォーマットで直接変調するためのマンチェスター信号生成部208を追加的に具備するという点は、実施例1と同じである。また、地域基地局710は、波長別逆多重化のために一つのAWG720のみを具備する。加入者端末750は、ダウンストリーム信号分割のためのカプラー751、ダウンストリーム信号復元のための受信機252及びアップストリーム信号生成のためのRSOA254を具備する。
【0028】
このような構成の実施例2のシステムの動作を下記に示す。まず、マンチェスター信号生成部208によってマンチェスターフォーマットでDFB−LD206を1.25Gb/sの変調速度で直接変調してダウンストリーム信号を生成する。ダウンストリーム信号は、波長分割多重化のためのAWG209とアップストリームおよびダウンストリーム送信信号経路を区分するためのサーキュレーター702とを通過した後、光ファイバー704を介して地域基地局710に送信される。地域基地局710に送信されたダウンストリーム信号は、地域基地局のAWG720によって逆多重化されて各加入者端末750に入力される。各加入者端末750に入力されたダウンストリーム信号は、カプラー751によって二つに分割された後、一部はダウンストリーム信号復元のためのダウンストリーム信号受信機252に入力されて、残りはアップストリーム信号生成のためにRSOA254に入力される。RSOA254に入力されたダウンストリーム信号を155Mb/sのNRZフォーマットで再変調して生成したアップストリーム信号は、地域基地局710のAWG720、光ファイバー704及び中央基地局700のサーキュレーター702及びAWG226を経て、アップストリーム信号受信機228に伝達される。以上のように実施例2について説明したが、実施例1と実施例2との差は、アップストリームおよびダウンストリーム送信用光ファイバーを別々に使用するのかしないのかであるから、ダウンストリーム信号の光源をマンチェスターフォーマットで直接変調してアップストリーム信号の送信品質を向上させる点には差異がない。
【0029】
本実施例2でも、アップストリーム信号を生成するためにNRZ方式の変調を使用したが、必要に応じて、RZ方式の変調を使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
上述したような本発明は、NRZフォーマットで変調されたダウンストリーム信号を使用する既存のRSOAを基盤とする光加入者網システムと比較して、ダウンストリーム信号の消光比を大きくしてダウンストリーム信号の送信性能を改善するのみならず、RSOAに入力されるダウンストリーム信号のパワーを充分に下げても、RSOAによって再変調されたアップストリーム信号の送信性能が低下しないため、システム全体のパワーバジェット(power budget)も改善することができ、本発明によれば、パワーバジェットと再変調されたアップストリーム信号の送信性能が改善されたRSOAを基盤とする波長分割多重方式の受動型光加入者網(Wavelength Division Multiplexing Passive Optical Network;WDM PON)システムの具現が可能である。
【0031】
本発明は、前記実施例だけに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で当業者による多様な変形が可能であることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の光加入者網システムで変調に使用するマンチェスターフォーマット(Manchester format)で変調されたダウンストリーム信号の波形と、それと対比するために従来の変調に使用されたNRZフォーマット(Non−Return to Zero format)で変調されたダウンストリーム信号の波形を示したグラフ。
【図2】本発明の実施例1による単向性WDM PONシステムの概略的構成図。
【図3a】実施例1による、反射型半導体光増幅器(Reflective Semiconductor Optical Amplifier;RSOA)を基盤とする単向性WDM PONシステムにおいて、マンチェスター信号生成部を使用せずにダウンストリーム信号変調方式がNRZフォーマットであるダウンストリーム信号を使用した場合、RSOAに入力されたダウンストリーム信号をNRZ信号に再変調して生成されたアップストリーム信号の送信性能を測定したグラフ。
【図3b】実施例1によるRSOAを基盤とする単向性WDM PONシステムにおいて、マンチェスター信号生成部を使用してダウンストリーム信号変調方式がマンチェスターフォーマットであるダウンストリーム信号を使用した場合、RSOAによってNRZ信号に再変調されたアップストリーム信号の送信性能を測定したグラフ。
【図4】実施例1によるRSOA基盤の単向性WDM PONシステムのアップストリーム信号送信性能が、既存のNRZ信号を使用するRSOA基盤のWDM PONシステムの場合と比べて改善する理由を説明するために、NRZ及びマンチェスターフォーマットで変調されたダウンストリーム信号の電気的スペクトルを測定したグラフ。
【図5】マンチェスター方式で変調されたダウンストリーム信号の成分が、再変調されたアップストリーム信号に含まれていたが、アップストリーム信号受信機の限定された帯域幅によって除去される効果を検証するために、NRZ及びマンチェスター方式で変調されたダウンストリーム信号をRSOAで再変調して生成されたアップストリーム信号のアイ・ダイヤグラム(eye diagram)を測定した図。
【図6】NRZ及びマンチェスターフォーマットで1.25Gb/sの変調速度で変調されたダウンストリーム信号のダウンストリーム信号の消光比変化による受信感度を示したグラフ。
【図7】本発明の実施例2による双方向WDM PONシステムの概略的構成図。
【符号の説明】
【0033】
200:中央基地局、202:アップストリーム送信用光ファイバー、204:ダウントリーム送信用光ファイバー、208:マンチェスター信号生成部、209:第1導波路型回折格子、226:第2導波路型回折格子、228:アップストリーム信号受信機、210:地域基地局、212:NRZ信号供給部、214:クロック信号供給部、216:XORゲート、218:カプラー、220:第3導波路型回折格子、222:サーキュレーター、224:第4導波路型回折格子、250:加入者端末、252:受信機、254:ROSA、704:光ファイバー、750:加入者端末、751:カプラ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射型半導体光増幅器(RSOA)を各加入者の光源に使用する光加入者網において、中央基地局(CO)から各加入者端末(ONU)に伝達するダウンストリーム信号の変調方式にマンチェスターフォーマットを使用する、光加入者網システム。
【請求項2】
前記光加入者網が、波長分割多重方式の受動型光加入者網(WDM PON)であることを特徴とする、請求項1に記載の光加入者網システム。
【請求項3】
前記波長分割多重方式の受動型光加入者網が、単向性の構造であることを特徴とする、請求項2に記載の光加入者網システム。
【請求項4】
前記波長分割多重方式の受動型光加入者網が、ダウンストリーム信号生成のための光源と、該光源から出るダウンストリーム信号をマンチェスターフォーマットで直接変調するためのマンチェスター信号生成部と、前記変調されたダウンストリーム信号を波長分割多重化するための第1導波路型回折格子と、前記各加入者端末から送られるアップストリーム信号を波長別逆多重化する第2導波路型回折格子と、前記波長別逆多重化されたアップストリーム信号を受け入れてそのアップストリーム信号に含まれているマンチェスターフォーマットで変調されたダウンストリーム信号の成分が限定された帯域幅によって除去されるようにするアップストリーム信号受信機とを含む中央基地局と;
ダウンストリーム信号を分配するためのカプラーと、波長別逆多重化のための第3導波路型回折格子と、アップストリームおよびダウンストリーム信号の送信経路を決定するサーキュレーターと、アップストリーム信号生成用第4導波路型回折格子とを含む地域基地局と;
ダウンストリーム信号復元のための受信機とアップストリーム信号生成のためのRSOAとを各々が含む複数の加入者端末と;
前記中央基地局と地域基地局および前記地域基地局と加入者端末間を連結する別途のアップストリームおよびダウンストリーム送信用光ファイバーと;
を具備することを特徴とする、請求項3に記載の光加入者網システム。
【請求項5】
前記マンチェスター信号生成部が、NRZ信号供給部、クロック信号供給部及びXORゲートを具備することを特徴とする、請求項4に記載の光加入者網システム。
【請求項6】
前記波長分割多重方式の受動型光加入者網が、双方向性の構造であることを特徴とする、請求項2に記載の光加入者網システム。
【請求項7】
前記波長分割多重方式の受動型光加入者網が、ダウンストリーム信号生成のための光源と、前記光源から出るダウンストリーム信号をマンチェスターフォーマットで直接変調するためのマンチェスター信号生成部と、前記変調されたダウンストリーム信号を波長分割多重化するための第1導波路型回折格子と、アップストリームおよびダウンストリーム送信信号経路を区分するためのサーキュレーターと、前記各加入者端末から送られるアップストリーム信号を波長別逆多重化させる第2導波路型回折格子と、前記波長別逆多重化されたアップストリーム信号を受け入れてそのアップストリーム信号に含まれているマンチェスターフォーマットで変調されたダウンストリーム信号の成分が、限定された帯域幅によって除去されるようにするアップストリーム信号受信機とを含む中央基地局と;
ダウンストリーム信号に対する波長別逆多重化のための第3導波路型回折格子を含む地域基地局と;
ダウンストリーム信号復元のための受信機と、アップストリーム信号生成のためのRSOAと、前記ダウンストリーム信号を前記受信機及びRSOAに分割して伝達するためのカプラーとを各々が含む複数の加入者端末と;
前記中央基地局と地域基地局および該地域基地局と加入者端末間を連結する共通のアップストリームおよびダウンストリーム送信用光ファイバーと;
を具備することを特徴とする、請求項6に記載の光加入者網システム。
【請求項8】
前記マンチェスター信号生成部が、NRZ信号供給部、クロック信号供給部及びXORゲートを具備することを特徴とする、請求項7に記載の光加入者網システム。
【請求項9】
前記アップストリーム信号が、NRZ方式で変調されることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の光加入者網システム。
【請求項10】
前記アップストリーム信号が、RZ方式で変調されることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の光加入者網システム。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−193659(P2008−193659A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276311(P2007−276311)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(596071752)コリア アドバンスト インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (60)
【Fターム(参考)】