説明

送信装置、受信装置、通信システム及び通信方法

【課題】受信品質の劣化や処理負荷の増大を防止する。
【解決手段】サーバ50は、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を生成する下位レイヤデータ単位生成部50cと、下位レイヤデータ単位を送信する通信部50aとを備える。移動局10は、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された複数の下位レイヤデータ単位を受信する通信部10aと、受信した下位レイヤデータ単位をシーケンス番号に基づいて合成する合成部10cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置、受信装置、通信システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送信装置が複数の受信装置に共通の回線を用い、マルチメディアコンテンツをマルチキャスト送信又はブロードキャスト送信するMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)と呼ばれるサービスが行われている(例えば、非特許文献1参照)。このとき、受信装置が受信できず、欠落するパケットは受信装置毎に異なってしまう。そのため、MBMSでは、送信装置が全てのマルチメディアコンテンツを複数回送信する繰り返し送信や、送信装置と各受信装置が個別チャネルにより個別に回線を確立し、受信装置毎に欠落したパケットを再送、再受信するPtP repair(Point to Point repair)が行われている。
【0003】
この繰り返し送信やPtP repairはIPレイヤで行われる。IPレイヤにおけるパケットは、IPレイヤよりも下位のRLC(Radio Link Control)レイヤにおける複数のデータ単位に分割される。即ち、上位レイヤパケットは、複数の下位レイヤデータ単位に分割される。
【非特許文献1】3GPP TSG-RAN, “TS25.346 V6.0.0 Introduction of Multimedia broadcast multicast service(MBMS) in Radio access network (RAN)”,2004年3月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の繰り返し送信やPtP repairでは、受信装置は、上位レイヤパケットに含まれる一部の下位レイヤデータ単位を受信できなかった場合であっても、その上位レイヤパケットに属する全ての下位レイヤデータ単位を破棄し、上位レイヤパケットに属する全ての下位レイヤデータ単位を受信し直していた。このとき、前回正しく受信していた下位レイヤデータ単位を、繰り返し送信やPtP repairにおいて再度、正しく受信できる保証はない。そのため、受信品質が劣化してしまう場合があった。受信品質を維持するためには、繰り返し送信やPtP repairにおいて受信に失敗した下位レイヤデータ単位を含む上位レイヤパケットの受信を再度試みる必要があり、受信装置や送信装置の処理負荷を増大させるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、受信品質の劣化や処理負荷の増大を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る送信装置は、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を生成する下位レイヤデータ単位生成部と、下位レイヤデータ単位を送信する通信部とを備えることを特徴とする。従来、受信に失敗した上位レイヤパケットに属する全ての下位レイヤデータ単位を破棄し、その上位レイヤパケットに属する全ての下位レイヤデータ単位を受信し直す必要があったのは、受信装置が、上位レイヤのデータ系列に基づいて生成される上位レイヤパケットを分割した下位レイヤデータ単位と上位レイヤのデータ系列との関係が分からず、上位レイヤのデータ系列を復元するために必要な欠落している下位レイヤデータ単位が判断できないためである。
【0007】
このような送信装置によれば、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を生成し、その下位レイヤデータ単位を送信することができる。そのため、受信装置は、このシーケンス番号を用いることにより、前回正しく受信していた下位レイヤデータ単位と新たに受信した下位レイヤデータ単位を合成し上位レイヤのデータ系列を復元できる。よって、受信品質の劣化や、受信装置や送信装置の処理負荷の増大を防止することができる。
【0008】
下位レイヤデータ単位生成部は、上位レイヤのデータ系列が同一である下位レイヤデータ単位の系列に、同一系列のシーケンス番号を付与することが好ましい。これによれば、受信装置は、同一系列のシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位の系列は、同一の上位レイヤのデータ系列に属すると容易に判断できる。そのため、受信装置の処理負荷をより軽減できる。
【0009】
更に、下位レイヤデータ単位生成部は、上位レイヤのデータ系列の長さに応じて、シーケンス番号の長さを変更することが好ましい。これによれば、下位レイヤデータ単位のシーケンス番号により、上位レイヤのデータ系列におけるシーケンス番号に対応する部分の情報を一意に特定することができる。そのため、受信装置による下位レイヤデータ単位の合成をより容易にすることができ、処理負荷をより軽減できる。
【0010】
又、下位レイヤデータ単位生成部は、上位レイヤのデータ系列の長さに応じて、下位レイヤデータ単位の長さを変更するようにしてもよい。これによれば、下位レイヤデータ単位の長さを調整することで、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を容易に生成することができる。よって、送信装置の処理負荷をより軽減できる。
【0011】
又、下位レイヤデータ単位生成部は、上位レイヤのデータ系列を識別するデータ系列識別領域と、下位レイヤデータ単位の順番を示す順番領域を含むシーケンス番号を付与するようにしてもよい。これによれば、受信装置は、データ系列識別領域に基づいて、同一の上位レイヤのデータ系列に属する下位レイヤデータ単位を容易に判断できる。そのため、受信装置の処理負荷をより軽減できる。
【0012】
更に、下位レイヤデータ単位生成部は、上位レイヤのデータ系列が再送のデータ系列であることを識別するシーケンス番号を付与することが好ましい。これによれば、受信装置は、シーケンス番号に基づいて、受信した下位レイヤデータ単位が再送のデータ系列であることを容易に識別できる。そのため、受信装置の処理負荷をより軽減できる。特に、通信部は、下位レイヤデータ単位をブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信することが好ましい。
【0013】
本発明に係る受信装置は、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を受信する通信部と、受信した下位レイヤデータ単位をシーケンス番号に基づいて合成する合成部とを備えることを特徴とする。
【0014】
このような受信装置によれば、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号を用いることにより、前回正しく受信していた下位レイヤデータ単位と新たに受信した下位レイヤデータ単位を合成し上位レイヤのデータ系列を復元できる。よって、受信品質の劣化や、受信装置や送信装置の処理負荷の増大を防止することができる。
【0015】
更に、通信部は、受信に失敗した下位レイヤデータ単位を再度受信し、合成部は、受信に成功していた下位レイヤデータ単位と再度受信した以前に受信に失敗していた下位レイヤデータ単位を合成することが好ましい。これによれば、受信装置は、一度受信に成功した下位レイヤデータ単位については再度の受信を省略し、受信に失敗し、欠落している下位レイヤデータ単位だけを受信して、上位レイヤのデータ系列を復元できる。よって、受信装置の処理負荷をより軽減できる。又、通信部は、ブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信された下位レイヤデータ単位を受信することが好ましい。
【0016】
本発明に係る通信システムは、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を生成し、その下位レイヤデータ単位を送信する送信装置と、下位レイヤデータ単位を受信し、受信した下位レイヤデータ単位をシーケンス番号に基づいて合成する受信装置とを備えることを特徴とする。送信装置は、下位レイヤデータ単位をブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信することが好ましい。
【0017】
本発明に係る通信方法は、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を生成するステップと、下位レイヤデータ単位を送信するステップとを備えることを特徴とする。特に、通信方法では、下位レイヤデータ単位をブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信することが好ましい。又、他の通信方法は、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を受信するステップと、受信した下位レイヤデータ単位をシーケンス番号に基づいて合成するステップとを備えることを特徴とする。特に、通信方法では、ブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信された下位レイヤデータ単位を受信することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、受信品質の劣化や処理負荷の増大を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔通信システム〕
図1に示すように、通信システム100は、サーバ50と、コアネットワーク40と、無線制御局30と、基地局20と、移動局10とを備える。サーバ50は、コアネットワーク40、無線制御局30、基地局20を介して、移動局10にコンテンツを送信する。例えば、サーバ50は、複数の基地局20がカバーするセル60に存在する複数の移動局10や、1つの基地局20がカバーするセル60に存在する複数の移動局10に、同一のコンテンツをブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信できる。サーバ50は、複数の移動局10に共通の回線を用いて、ブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信できる。このように、通信システム100では、サーバ50がデータ系列であるコンテンツを送信する送信装置となり、移動局10がデータ系列を受信する受信装置となる。
【0020】
サーバ50は、通信部50aと、送信バッファ50bと、下位レイヤデータ単位生成部50cと、上位レイヤパケット生成部50dと、コンテンツデータベース50eとを備える。コンテンツデータベース50eは、サーバ50が送信するデータ系列であるコンテンツを保持する。例えば、コンテンツデータベース50eは、マルチメディアコンテンツを保持する。
【0021】
上位レイヤパケット生成部50dは、上位レイヤパケットを生成する。通信システム100は、例えば図2に示すプロトコルスタックを用いることができる。プロトコルスタックは、下位から順に、物理レイヤ、MAC(Medium Access Control)レイヤ、RLC(Radio Link Control)レイヤ、IP(Internet Protocol)レイヤで構成される。
【0022】
上位レイヤパケット生成部50dは、コンテンツデータベース50eからデータ系列(コンテンツ)を取得する。上位レイヤパケット生成部50dは、データ系列を含む1つ又は複数の上位レイヤパケットを生成する。上位レイヤパケット生成部50dは、上位レイヤパケットとしてIPパケットを生成する。上位レイヤパケット生成部50dは、生成した上位レイヤパケットを下位レイヤデータ単位生成部50cに入力する。
【0023】
下位レイヤデータ単位生成部50cは、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を生成する。下位レイヤデータ単位には、下位レイヤのプロトコルに応じて、下位レイヤパケット、フレーム、データユニット、誤り訂正符号単位、トランスポートブロック等がある。下位レイヤデータ単位生成部50cは、下位レイヤデータ単位としてRLC−PDU(Radio Link Control−protocol Data Unit)を生成する。
【0024】
下位レイヤデータ単位生成部50cは、上位レイヤパケット生成部50cから上位レイヤパケットを取得する。下位レイヤデータ単位生成部50cは、1つ又は複数の上位レイヤパケットから構成される上位レイヤのデータ系列を複数の下位レイヤデータ単位に分割する。例えば、下位レイヤデータ単位生成部50cは、上位レイヤのデータ系列の長さが1500バイト、下位レイヤデータ単位の長さが50バイトの場合、1つのデータ系列を30個の下位レイヤデータ単位に分割できる。下位レイヤデータ単位生成部50cは、分割した複数の下位レイヤデータ単位にシーケンス番号を付与する。下位レイヤデータ単位生成部50cは、生成した複数の下位レイヤデータ単位を含む上位レイヤパケットを、送信バッファ50bに格納する。
【0025】
送信バッファ50bは、上位レイヤパケット(IPパケット)を保持する。通信部50aは、下位レイヤデータ単位(RLC−PDU)を送信する。通信部50aは、送信バッファ50bから上位レイヤパケット(IPパケット)を取得し、移動局10に対して送信する。このように通信部50aは、下位レイヤデータ単位(RLC−PDU)を、複数の下位レイヤデータ単位を含む上位レイヤパケットとして送信する。通信部50aは、コアネットワーク40、無線制御局30、基地局20を介して、複数の移動局10に、データ系列(コンテンツ)を構成する複数の下位レイヤデータ単位をブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信する。
【0026】
更に、通信部50aは、データ系列(コンテンツ)を複数回送信する繰り返し送信や、通信部50aと各移動局10との間に個別チャネルを確立し、移動局10毎に受信に失敗した上位レイヤパケットを再送するPtP repair(Point to Point repair)を行う。通信部50aは、繰り返し送信やPtP repairにおいて、上位レイヤパケット(IPパケット)を送信する。データ系列(コンテンツ)は、上位レイヤ(IPレイヤ)から順に下位レイヤ(物理レイヤ)にマッピングされ、送信される。
【0027】
移動局10は、通信部10aと、バッファ10bと、合成部10cと、出力部10dとを備える。通信部10aは、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を受信する。例えば、通信部10aは、サーバ50がブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信する上位レイヤパケット(IPパケット)を受信する。このように通信部10aは、下位レイヤデータ単位(RLC−PDU)を、複数の下位レイヤデータ単位を含む上位レイヤパケットとして受信する。通信部10aは、受信した上位レイヤパケットをバッファ10bに格納する。バッファ10bは、通信部10aが受信した上位レイヤパケット(IPレイヤ)を保持する。
【0028】
通信部10aは、受信に失敗した上位レイヤパケットを、繰り返し送信やPtP repairにより再度受信する。このとき、通信部10aは、正しく受信できた下位レイヤデータ単位の再度の受信を省略し、受信に失敗した下位レイヤデータ単位だけを再度受信することが好ましい。通信部10aは、シーケンス番号により受信に失敗した下位レイヤデータ単位を判断し、そのシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を再度受信する。通信部10aは、再度受信した下位レイヤデータ単位を合成部10cに入力する。
【0029】
合成部10cは、受信した下位レイヤデータ単位(RLC−PDU)をシーケンス番号に基づいて合成する。合成部10cは、受信に成功していた下位レイヤデータ単位と再度受信した以前受信に失敗した下位レイヤデータ単位を合成することが好ましい。移動局10では、下位レイヤデータ単位の一部が欠落した上位レイヤパケットを破棄せずに、バッファ10bが保持する。合成部10cは、受信に失敗し、再度受信した下位レイヤデータ単位を通信部10aから取得する。合成部10cは、バッファ10bが保持する一部が欠落した上位レイヤパケットと、再度受信した下位レイヤデータ単位と合成することにより、上位レイヤパケットを復元し、上位レイヤのデータ系列(コンテンツ)を復元する。合成部10cは、復元した上位レイヤのデータ系列(コンテンツ)を出力部10dに出力する。
【0030】
これによれば、移動局10は、一度受信に成功した下位レイヤデータ単位については再度の受信を省略し、受信に失敗し、欠落している下位レイヤデータ単位だけを受信して、上位レイヤのデータ系列を復元できる。よって、移動局10の処理負荷をより軽減できる。
【0031】
このようにして、サーバ50は、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を生成し、下位レイヤデータ単位を送信する送信装置として機能する。又。移動局10は、下位レイヤデータ単位を受信し、該受信した下位レイヤデータ単位をシーケンス番号に基づいて合成する受信装置として機能する。
【0032】
次に、シーケンス番号が付与された下位レイヤパケットの生成について、図3〜図7を用いてより詳細に説明する。図3〜図5では、上位レイヤパケットとしてIPパケットを用い、下位レイヤデータ単位としてRLC−PDUを用いる。データ系列(コンテンツ)は2つのIPパケット1,2により送信される。更に、IPパケット1,2は、2回繰り返して送信される。各IPパケット1,2はそれぞれ、X個のRLC−PDUに分割される。即ち、IPパケット1は、RLC−PDU11,12〜1Xに、IPパケット2は、RLC−PDU21,22〜2Xに分割される。1つのIPパケット1,2に含まれるRLC−PDU11〜1X,21〜2Xには順番に、1からXまでのPDU番号が付与される。
【0033】
ここで、図3に示すように、シーケンス番号の最大値が、上位レイヤのデータ系列を識別するために必要な値よりも小さい場合、上位レイヤのデータ系列は同一であるにも関わらず、異なるシーケンス番号がRLC−PDUに付与されてしまう。図3の場合、2つのIPパケット1,2により構成される上位レイヤのデータ系列を識別するために必要なRLC−PDUのシーケンス番号の最大値は2×Xであるが、実際のシーケンス番号の最大値はX+1となっている。そのため、最初の送信時のIPパケット1におけるPDU番号1のRLC−PDU11のシーケンス番号は1であるが、繰り返し送信時のIPパケット1におけるPDU番号1のRLC−PDU11のシーケンス番号はXである。この結果、移動局10は、前回正しく受信できなかったRLC−PDUを繰り返し送信時に正しく受信できたとしても、RLC−PDUと上位レイヤのデータ系列との関係を判断することができない。
【0034】
そこで、サーバ50の下位レイヤデータ単位生成部50cは、以下に示す第1方法から第4方法のいずれかの方法により、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与されたRLC−PDUを生成する。
【0035】
(第1方法)
図4に示すように、下位レイヤデータ単位生成部50cは、上位レイヤのデータ系列が同一である下位レイヤデータ単位の系列に、同一系列のシーケンス番号を付与する。具体的には、下位レイヤデータ単位生成部50cは、2つのIPパケット1,2により構成される上位レイヤのデータ系列を構成するRLC−PDU11〜1X,21〜2Xに、最初の送信時と繰り返し送信時とで同一系列のシーケンス番号1〜X,X+1〜X−1を付与する。
【0036】
下位レイヤデータ単位生成部50cは、このように、下位レイヤデータ単位の系列に、最初の送信時と繰り返し送信やPtP repairによる再送時とで同一系列のシーケンス番号を付与することにより、上位レイヤのデータ系列が繰り返し送信やPtP repairによる再送のデータ系列であることも識別できる。
【0037】
これによれば、移動局10は、同一系列のシーケンス番号1〜X−1が付与された下位レイヤデータ単位の系列、RLC−PDU11〜2Xは、同一の上位レイヤのデータ系列に属すると容易に判断できる。又、移動局10は、シーケンス番号に基づいて、受信した下位レイヤデータ単位(RLC−PDU)が再送のデータ系列であることも容易に識別できる。そのため、移動局10の処理負荷をより軽減できる。
【0038】
(第2方法)
図5に示すように、下位レイヤデータ単位生成部50cは、上位レイヤのデータ系列の長さに応じてシーケンス番号の長さを変更し、シーケンス番号を下位レイヤデータ単位に付与する。図4では、シーケンス番号の最大値はX+1である。この場合、下位レイヤデータ単位のシーケンス番号により、上位レイヤのデータ系列におけるシーケンス番号に対応する部分の情報を一意に特定することはできない。例えば、IPパケット1に含まれるRLC−PDU11とIPパケット2に含まれるRLC−PDU22の両方にシーケンス番号1が付与されている。RLC−PDU11とRLC−PDU22は、同一のシーケンス番号であるが、その部分の上位レイヤのデータ系列における情報は異なっている。
【0039】
そこで、下位レイヤデータ単位生成部50cは、上位レイヤのデータ系列の長さに応じて、シーケンス番号の長さを変更し、同じデータ系列に含まれる各RLC−PDUには異なるシーケンス番号を付与する。具体的には、下位レイヤデータ単位生成部50cは、シーケンス番号の最大値がデータ系列を構成するRLC−PDUの数以上となるように、シーケンス番号の長さを変更する。
【0040】
図5の場合、上位レイヤのデータ系列を構成するRLC―PDUの数が2×Xであるため、下位レイヤデータ単位生成部50cは、シーケンス番号の最大値が2×X以上となるようにシーケンス番号の長さを変更する。シーケンス番号の長さをnビットとした場合、シーケンス番号の最大値は2で表される。よって、下位レイヤデータ単位生成部50cは、2≧2×Xを満たすシーケンス番号の長さnを求める。このようにして、下位レイヤデータ単位生成部50cは、シーケンス番号の長さを拡張する。
【0041】
そして、下位レイヤデータ単位生成部50cは、拡張したシーケンス番号の長さに基づいてシーケンス番号を生成し、RLC―PDUに付与する。具体的には、下位レイヤデータ単位生成部50cは、図5に示すように、2つのIPパケット1,2により構成される上位レイヤのデータ系列を構成するRLC−PDU11〜1X,21〜2Xに、シーケンス番号1〜X,X+1〜2×Xを付与する。
【0042】
このようにシーケンス番号を拡張した場合、下位レイヤデータ単位生成部50cは、図6に示す拡張したシーケンス番号を設定したRLC−PDUを生成できる。下位レイヤデータ単位生成部50cは、通常のシーケンス番号を示す領域の後に拡張ビットE(Extension bit)を設定する。拡張ビットEが設定された場合、次の所定ビットまでがシーケンス番号の領域に拡張される。そして、下位レイヤデータ単位生成部50cは、次の拡張ビットEを設定しないことで、シーケンス番号の領域の拡張を終了し、以降はデータを設定することができる。
【0043】
これによれば、下位レイヤデータ単位のシーケンス番号により、上位レイヤのデータ系列におけるシーケンス番号に対応する部分の情報を一意に特定することができる。例えば、図5では、データ系列を構成するIPパケット1,2に含まれるRLC−PDU11にのみ、シーケンス番号1が付与されている。よって、シーケンス番号1により、上位レイヤのデータ系列のシーケンス番号1に対応する部分の情報を一意に特定できる。そのため、移動局10による下位レイヤデータ単位の合成をより容易にすることができ、処理負荷をより軽減できる。
【0044】
(第3方法)
下位レイヤデータ単位生成部50cは、上位レイヤのデータ系列の長さに応じて、下位レイヤデータ単位の長さを変更し、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を生成する。図3に示したように、上位レイヤのデータ系列を構成するRLC−PDUの数がシーケンス番号の最大値よりも多い場合に、上位レイヤのデータ系列は同一であるにも関わらず、異なるシーケンス番号がRLC−PDUに付与されてしまう。
【0045】
そこで、下位レイヤデータ単位生成部50cは、上位レイヤのデータ系列をシーケンス番号の最大値以下の数の下位レイヤデータ単位に分割する。下位レイヤデータ単位生成部50cは、上位レイヤのデータ系列の長さとシーケンス番号の長さに基づいて、下位レイヤデータ単位の長さを変更する。具体的には、下位レイヤデータ単位生成部50cは、上位レイヤのデータ系列の長さを、シーケンス番号の長さによって定まるシーケンス番号の最大値により除算し、下位レイヤデータ単位の長さを決定する。
【0046】
例えば、上位レイヤのデータ系列の長さが1600バイト、シーケンス番号の長さが5ビットであり、シーケンス番号の最大値が32の場合、1600バイト/32バイト=50バイトとなる。よって、下位レイヤデータ単位生成部50cは、RLC−PDUの長さを50バイト以上と決定する。そして、下位レイヤデータ単位生成部50cは、決定した下位レイヤデータ単位(RLC−PDU)の長さで上位レイヤのデータ系列を分割し、シーケンス番号を付与することにより、下位レイヤデータ単位(RLC−PDU)を生成する。
【0047】
これによれば、サーバ50は、下位レイヤデータ単位の長さを調整することで、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位(RLC−PDU)を容易に生成することができる。よって、サーバ50の処理負荷をより軽減できる。
【0048】
(第4方法)
下位レイヤデータ単位生成部50cは、上位レイヤのデータ系列を識別するデータ系列識別領域と、下位レイヤデータ単位の順番を示す順番領域を含むシーケンス番号を付与する。具体的には、下位レイヤデータ単位生成部50cは、図7に示すように、データ系列識別領域3aと順番領域3bの2つの領域を含むシーケンス番号3を設定した下位レイヤデータ単位(RLC−PDU)を生成する。例えば、シーケンス番号3は、その上位ビットをデータ系列識別領域3aに用い、下位ビットを順番領域3bに用いることができる。
【0049】
データ系列識別領域3aには、例えば、上位レイヤのデータ系列を識別する識別子を設定できる。上位レイヤのデータ系列を識別する識別子としては、データ系列毎に付与した識別子や、繰り返し送信やPtP Repairによる再送のデータ系列であることを示す識別子を用いることができる。データ系列毎に付与した識別子によれば、その識別子から直接上位レイヤのデータ系列を識別できる。再送のデータ系列であることを示す識別子によれば、データ系列が以前に送信されたデータ系列と同一であると判断することにより、上位レイヤのデータ系列を識別することができる。
【0050】
順番領域3bには、下位レイヤデータ単位の順番を示す値を設定できる。順番を示す値は、最初の送信時と繰り返し送信やPtP repairによる再送時とで同一にできる。又、順番を示す値の先頭に、上位レイヤのデータ系列のスタートを示す値を付加すれば、続く値は最初の送信時と再送時とで同一にする必要はない。
【0051】
これによれば、移動局10は、データ系列識別領域3aに基づいて、同一の上位レイヤのデータ系列に属する下位レイヤデータ単位を容易に判断できる。そのため、受信装置の処理負荷をより軽減できる。又、データ系列識別領域3aに再送のデータ系列であることを示す識別子が設定されている場合には、移動局10は、再送を示す識別子に基づいて、受信した下位レイヤデータ単位(RLC−PDU)が再送のデータ系列であることも容易に識別できる。そのため、移動局10の処理負荷をより軽減できる。
【0052】
〔通信方法〕
次に、図1に示した通信システム100を用いた通信方法について説明する。図8にサーバ50の動作手順を示す。サーバ50は、データ系列(コンテンツ)からIPパケットを生成する(S101)。サーバ50は、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与されたRLC−PDUを上記第1方法〜第3方法のいずれかにより生成する(S102)。サーバ50は、生成した複数のRLC−PDUを含むIPパケットを、移動局10にブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信する(S103)。サーバ50は、ステップ(S103)で送信したIPパケットについて、繰り返し送信又はPtP repairを行う(S104)。
【0053】
図9に移動局10の動作手順を示す。移動局10は、サーバ50からブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信される上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与されたRLC−PDUを含むIPパケットを受信する(S201)。移動局10は、受信したIPパケットをバッファ10bに格納する。移動局10は、全てのRLC−PDUを受信できなかったIPパケットも破棄せずにバッファ10bに格納する(S202)。
【0054】
次に、移動局10は、サーバ50が繰り返し送信又はPtP repairにより送信するIPパケットの中から、受信に失敗したRLC−PDUだけを再度受信する(S203)。移動局10は、ステップ(S201)において受信に成功していたRLC−PDUと、ステップ(S203)において再度受信したRLC−PDUとを、シーケンス番号に基づいて合成し、上位レイヤのデータ系列を復元する(S204)。
【0055】
〔効果〕
このような通信システム100、サーバ50、移動局10及び通信方法によれば、サーバ50は、上位レイヤのデータ系列(コンテンツ)を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位(RLC−PDU)を生成し、その下位レイヤデータ単位(RLC−PDU)を送信することができる。そのため、移動局10は、このシーケンス番号を用いることにより、前回正しく受信していた下位レイヤデータ単位(RLC−PDU)と新たに受信した下位レイヤデータ単位(RLC−PDU)を合成し上位レイヤのデータ系列を復元できる。よって、受信品質の劣化や、移動局10やサーバ50の処理負荷の増大を防止することができる。
【0056】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、下位レイヤデータ単位生成部50cは、上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を生成できれば、その生成方法は上記第1方法〜第4方法に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るプロトコルスタックを示す図である。
【図3】シーケンス番号の付与例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る第1方法を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る第2方法を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る第2方法におけるRLC−PDUを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る第4方法を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るサーバの動作手順を示すフロー図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る移動局の動作手順を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0058】
100 通信システム
10 移動局
10a 通信部
10b バッファ
10c 合成部
10d 出力部
20 基地局
30 無線制御局
40 コアネットワーク
50 サーバ
50a 通信部
50b 送信バッファ
50c 下位レイヤデータ単位生成部
50d 上位レイヤパケット生成部
50e コンテンツデータベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を生成する下位レイヤデータ単位生成部と、
前記下位レイヤデータ単位を送信する通信部と
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記下位レイヤデータ単位生成部は、前記上位レイヤのデータ系列が同一である前記下位レイヤデータ単位の系列に、同一系列の前記シーケンス番号を付与することを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記下位レイヤデータ単位生成部は、前記上位レイヤのデータ系列の長さに応じて、前記シーケンス番号の長さを変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記下位レイヤデータ単位生成部は、前記上位レイヤのデータ系列の長さに応じて、前記下位レイヤデータ単位の長さを変更することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項5】
前記下位レイヤデータ単位生成部は、前記上位レイヤのデータ系列を識別するデータ系列識別領域と、前記下位レイヤデータ単位の順番を示す順番領域を含む前記シーケンス番号を付与することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項6】
前記下位レイヤデータ単位生成部は、前記上位レイヤのデータ系列が再送のデータ系列であることを識別する前記シーケンス番号を付与することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項7】
前記通信部は、前記下位レイヤデータ単位をブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項8】
上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された複数の下位レイヤデータ単位を受信する通信部と、
前記受信した下位レイヤデータ単位を前記シーケンス番号に基づいて合成する合成部と
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項9】
前記通信部は、受信に失敗した下位レイヤデータ単位を再度受信し、
前記合成部は、受信に成功していた下位レイヤデータ単位と前記再度受信した受信に失敗していた下位レイヤデータ単位を合成することを特徴とする請求項8に記載の受信装置。
【請求項10】
前記通信部は、ブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信された前記下位レイヤデータ単位を受信することを特徴とする請求項8又は9に記載の受信装置。
【請求項11】
上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を生成し、該下位レイヤデータ単位を送信する送信装置と、
前記下位レイヤデータ単位を受信し、該受信した下位レイヤデータ単位を前記シーケンス番号に基づいて合成する受信装置と
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項12】
前記送信装置は、前記下位レイヤデータ単位をブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信することを特徴とする請求項11に記載の通信システム。
【請求項13】
上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を生成するステップと、
該下位レイヤデータ単位を送信するステップと
を備えることを特徴とする通信方法。
【請求項14】
前記下位レイヤデータ単位をブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信することを特徴とする請求項13に記載の通信方法。
【請求項15】
上位レイヤのデータ系列を識別するシーケンス番号が付与された下位レイヤデータ単位を受信するステップと、
該受信した下位レイヤデータ単位を前記シーケンス番号に基づいて合成するステップと
を備えることを特徴とする通信方法。
【請求項16】
ブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信された前記下位レイヤデータ単位を受信することを特徴とする請求項15に記載の通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−5786(P2006−5786A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181668(P2004−181668)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】