説明

送信装置

【課題】信号を無線送信する2つのシステムを低コストで併存させることが可能であり、無線信号の伝搬特性が劣化した場合でも、受信装置で取得される情報の品質が劣化することのない信号を無線送信することが可能な送信装置を提供する。
【解決手段】放送システムでは、トンネル22内やトンネル22の近傍で災害が発生していないときには、ディジタルテレビ放送局10−1〜10−mから無線送信された放送信号が中継送信装置14によってトンネル22内に中継送信され、災害が発生したときには、放送信号に代えて監視装置12から送信される信号が中継送信装置14によってトンネル22内に送信される。受信装置18は、車両20に搭載されるか、または車両20に搭乗するユーザに所有され、トンネル22内に無線送信された信号を受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号を増幅して無線送信する送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ放送システム等においては、放送局から無線送信される放送信号が到達可能な放送圏を広げるため、放送信号を受信して中継送信する中継放送装置が用いられる。そこで、車両等の移動体が通過するトンネルに、トンネルの外側で放送信号を受信してトンネル内に中継送信する中継放送装置を設ける計画がある。
【0003】
また、トンネルには、火災、交通事故等に関する災害情報を含む報知信号をトンネル内に無線送信し、移動体に搭載された受信装置に災害情報を取得させる報知システムが設置されることが多い。報知システムには、報知信号を無線送信するための送信装置が設けられる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−244383号公報
【特許文献2】特開2002−26841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、テレビ放送システムの中継放送装置および報知システムの送信装置の両者をトンネルに設けると、製造コストおよび建設コストが増大すると共にシステムを設置する際に多大な労力を要する。
【0006】
また、報知システムについては、トンネル内において火災、交通事故等が発生した場合、スプリンクラーによる放水、車両の渋滞等による障害物の発生により、トンネル内における無線信号の伝搬特性が劣化し、受信装置で取得される情報の品質が劣化するという問題がある。
【0007】
本発明はこのような課題に対してなされたものである。すなわち、信号を無線送信する2つのシステムを低コストで併存させることが可能であり、無線信号の伝搬特性が劣化した場合でも、受信装置で取得される情報の品質が劣化することのない信号を無線送信することが可能な送信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る送信装置は、第1の信号を出力する第1の信号出力部と、前記第1の信号が占有する周波数帯域よりも狭い周波数帯域を占有する第2の信号を出力する第2の信号出力部と、前記第1の信号または前記第2の信号のいずれかを選択して出力する選択部と、前記選択部が出力する信号を増幅する増幅部と、前記増幅部が増幅した信号を無線送信する送信部と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る送信装置においては、前記送信部が無線送信する信号の電力を調整する電力調整部を備え、前記電力調整部は、前記第2の信号の単位周波数帯域幅当たりの電力が前記第1の信号の単位周波数帯域幅当たりの電力よりも大きくなるよう、前記送信部が無線送信する信号の電力を調整する構成とすることが好適である。
【0010】
また、本発明に係る送信装置においては、前記第1の信号出力部は、放送局から送信される無線放送信号を受信する放送受信手段を備え、前記放送受信手段が受信した信号を前記第1の信号として出力し、前記第2の信号出力部は、前記無線放送信号に含まれる情報とは異なる情報を取得する情報取得手段を備え、前記情報取得手段が取得した情報を含む前記第2の信号を出力し、前記選択部は、前記情報取得手段が取得した情報が、前記無線放送信号に含まれる情報よりも送信の優先度が高い場合に、前記第2の信号を選択して出力する構成とすることが好適である。
【0011】
また、本発明に係る送信装置においては、前記送信部は、移動体が通過するトンネルに前記増幅部が出力する信号を無線送信する構成とすることが好適である。
【0012】
また、本発明に係る送信装置においては、前記第1の信号出力部は、複数のディジタル変調信号を含むOFDM変調信号を前記第1の信号として出力し、前記第2の信号出力部は、前記OFDM変調信号に含まれる変調信号の数より少ない数のディジタル変調信号を含む信号を前記第2の信号として出力する構成とすることが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、信号を無線送信する2つのシステムを低コストで併存させることが可能であり、無線信号の伝搬特性が劣化した場合でも、受信装置で取得される情報の品質が劣化することのない信号を無線送信することが可能な送信装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に本発明の実施形態に係る放送システムの構成を示す。放送システムは、ディジタルテレビ放送局10−1〜10−m、監視装置12、中継送信装置14、送信アンテナ16、および受信装置18を備えて構成される。mは中継送信装置14が設置される地域を放送圏とするディジタルテレビ放送局(管轄放送局)の数を表す正の整数である。
【0015】
放送システムは、車両20が走行するトンネル22に適用される。放送システムでは、トンネル22内やトンネル22の近傍で災害が発生していないときには、ディジタルテレビ放送局10−1〜10−mから無線送信された放送信号が中継送信装置14によってトンネル22内に中継送信され、災害が発生したときには、放送信号に代えて監視装置12から送信される信号が中継送信装置14によってトンネル22内に送信される。受信装置18は、車両20に搭載されるか、または車両20に搭乗するユーザに所有され、トンネル22内に無線送信された信号を受信する。
【0016】
ディジタルテレビ放送局10−1〜10−mはトンネル22の外側に設置される。ディジタルテレビ放送局10−1〜10−mは、互いに異なるチャネル周波数帯域を占有する放送信号B1〜Bmを無線送信する。図2(a)に放送信号の構成を、横軸に周波数をとり縦軸に電力をとった周波数スペクトラムによって示す。放送信号は、互いに搬送波周波数が異なるセグメント信号S1〜Sn(nは2以上の整数)を含んで構成される。セグメント信号S1〜Snは、セグメント信号S1〜Snの相互の間で干渉が引き起こされないようそれぞれの搬送波周波数が決定されたOFDM変調信号をなす。1つのセグメント信号が占有する周波数帯域幅は、放送信号が占有する周波数帯域幅のn分の1であり、1つのセグメント信号の電力は、放送信号が占有する電力のn分の1である。
【0017】
セグメント信号S1〜Snのうちの1つであるセグメント信号Si(iは1〜nの整数)に対しては、セグメント信号Siのみによって受信装置18で情報が再生可能となるようなディジタル変調が施される。一方、その他のn−1個のセグメント信号から構成される複合セグメント信号に対しては、当該n−1個のセグメント信号を用いることによって受信装置18で情報が再生可能となるようなディジタル変調が施される。
【0018】
複合セグメント信号を構成するそれぞれのセグメント信号に対しては、単位時間当たりに多量の情報を伝送するのに適したQAM変調方式等の変調方式が適用され、セグメント信号Siに対しては、QAM変調方式等よりも雑音や妨害波信号の影響を受け難いPSK変調方式等の変調方式が採用される。
【0019】
中継送信装置14は、受信アンテナ24、中継部26、報知部28、スイッチ30、電力増幅器32、およびアンテナ接続部34を備えて構成される。受信アンテナ24はトンネル22の外側に設けられ、アンテナ接続部34はトンネル22内またはトンネル22の開口部に設けられる。また、中継部26、報知部28、スイッチ30、および電力増幅器32は、トンネル22の外側または内側のいずれに設けられてもよい。
【0020】
中継部26は、それぞれディジタルテレビ放送局10−1〜10−mから送信された放送信号B1〜Bmを受信アンテナ24を介して受信する。図2(b)は、中継送信装置14が設置される地域における管轄放送局が3局ある例において、中継部26で受信される放送信号B1〜B3を周波数スペクトラムを以て示したものである。放送信号B1〜B3は、それぞれチャネル周波数帯域C1〜C3を占有する。放送信号B1〜B3の相互の間には、ディジタルテレビ放送局による送信電力の違い、伝搬状況の違い等により電力の差異がある。また、図2(b)のアナログ信号AXは、管轄放送局以外のアナログテレビ放送局から送信され受信アンテナ24に到来した、チャネル周波数帯域CXを占有する信号を示している。本実施形態に係る放送システムにおいて、アナログ信号AXは不要な信号として扱われる。
【0021】
図3(a)に中継部26の構成を示す。中継部26は、受信増幅器36、ミキサ38、A/D変換器40、タップ係数フィルタ42、タップ係数取得部44、D/A変換器46、ミキサ48、およびレベル等化器50を備えて構成される。
【0022】
受信増幅器36は、受信アンテナ24を介して受信した信号を増幅してミキサ38に出力する。ミキサ38は、受信増幅器36が出力する信号にローカル信号Lc1を乗算し、中間周波数帯域の信号に変換してA/D変換器40に出力する。
【0023】
図2(c)に、管轄放送局が3局である上述の例において、ミキサ38によって中間周波数帯域の信号に変換された放送信号B1〜B3およびアナログ信号AXの周波数スペクトラムを、それぞれ放送信号BI1〜BI3およびアナログ信号AIXとして破線によって示す。放送信号BI1〜BI3およびアナログ信号AIXは、それぞれ中間周波数帯域におけるチャネル周波数帯域CI1〜CI3およびCIXを占有する。
【0024】
A/D変換器40は、信号をディジタル信号に変換してタップ係数フィルタ42に出力する。
【0025】
タップ係数取得部44は、タップ係数フィルタ42の周波数特性を規定するタップ係数を中継送信装置14の外部から取得し、タップ係数フィルタ42に出力する。タップ係数取得部44は、操作者の数値入力によってタップ係数を取得する構成とすることが好適である。
【0026】
図2(c)の線Chrは、中継部26が図2(b)に示す信号を受信する場合において好適なタップ係数フィルタ42の周波数特性を、放送信号BI1〜BI3およびアナログ信号AIXの周波数スペクトラムに重ねて示したものである。縦軸は電力のほか透過係数を示す。透過係数は0〜1の真数で表され、透過係数が1であることはフィルタ処理による減衰がないことを意味し、透過係数が0に近い程フィルタ処理による減衰が大きいことを意味する。線Chrは、チャネル周波数帯域CI1〜CI3を除く周波数帯域の信号成分を減衰させる周波数特性を示す。
【0027】
タップ係数フィルタ42は、A/D変換器40が出力する信号に対し、タップ係数によって規定される周波数特性に従うフィルタ処理を施しD/A変換器46に出力する。D/A変換器46は、信号をアナログ信号に変換してミキサ48に出力する。
【0028】
ミキサ48は、D/A変換器46が出力する信号にローカル信号Lc2を乗算し、受信アンテナ24で受信された元の信号と同一の周波数の信号に変換してレベル等化器50に出力する。レベル等化器50は、チャネル周波数帯域ごとに異なる電力平均値を均一化し、中継放送信号GB1〜GBmとしてスイッチ30に出力する。レベル等化器50としては、レベル等化器50が出力する信号に基づいて決定されたタップ係数によって特性を規定する、タップ係数フィルタを適用することが好適である。
【0029】
図4(a)に、レベル等化器50が出力する信号の周波数スペクトラムを示す。不要な信号であるアナログ信号AXは、タップ係数フィルタ42によってその値が低減されている。また、レベル等化器50によって中継放送信号GB1〜GBmの電力平均値は均一化されている。
【0030】
中継部26のこのような処理によれば、それぞれディジタルテレビ放送局10−1〜10−mから送信された放送信号B1〜Bmが増幅され、放送信号B1〜Bm以外の不要な周波数成分が低減された後、チャネル周波数帯域ごとの電力平均値が均一化された上でスイッチ30に出力される。
【0031】
また、タップ係数フィルタ42の周波数特性は、タップ係数取得部44が取得するタップ係数を変化させることによって変更することができる。これによって、管轄放送局に割り当てられたチャネル周波数帯域が異なる複数の地域に、同一のハードウエアによって構成された中継部26を適用することができる。
【0032】
監視装置12は、トンネル22内またはトンネル22の近傍において火災、洪水、地震、交通事故等の災害が発生したときは、受信装置18のユーザの安全を確保するための災害情報を含む災害信号を生成し報知部28に出力する。災害情報は、災害の様子、避難経路等を、受信装置18において静止画像、動画像、音声等で再生させるための情報である。また、監視装置12は、災害が発生すると共に、災害が発生した際の動作を促す制御信号SLをスイッチ30および電力増幅器32に出力する。
【0033】
監視装置12としては、温度を検出することにより火災が発生したことを検出する火災センサ、トンネル内に湧き出た水の量を測定することにより洪水が発生したことを検出する洪水センサ、地盤の変動を検出することにより地震が発生したことを検出する地震センサ等によって災害を自動的に検出し、災害信号および制御信号SLを自動的に出力する装置を適用することが好適である。また、テレビカメラ等によって、トンネル内を人為的に監視する監視局を設け、当該監視局に設けられ、災害信号および制御信号SLを報知部28に送信する装置を監視者が操作することによって、災害信号および制御信号SLを報知部28に送信する構成としてもよい。
【0034】
図3(b)に報知部28の構成を示す。報知部28は、変調器52、ミキサ54−1〜54−m、フィルタ56−1〜56−m、および合波器58を備えて構成される。ミキサおよびフィルタは、それぞれ管轄放送局と同じ数mだけ設けられる。
【0035】
変調器52は、放送信号B1〜Bmのそれぞれに含まれるセグメント信号Siに施されている変調方式と同一の変調方式の変調を施してミキサ54−1〜54−mに出力する。ミキサ54−1〜54−mには、それぞれ互いに周波数が異なるローカル信号L1〜Lmが入力される。
【0036】
ミキサ54−j(jは1〜mの整数)は、変調器52が出力する信号にローカル信号Ljを乗算し、放送信号Bjに含まれるセグメント信号Siの周波数と同一の周波数の信号に変換し、セグメント災害信号Wjとしてフィルタ56−jに出力する。
【0037】
フィルタ56−jは、セグメント災害信号Wj以外の不要な信号を低減して合波器58に出力する。合波器58は、それぞれミキサ54−1〜54−mが出力するセグメント災害信号W1〜Wmを加算してスイッチ30に出力する
【0038】
図4(b)に、管轄放送局が3局である上述の例におけるセグメント災害信号W1〜W3の周波数スペクトラムを示す。セグメント信号W1〜W3は、それぞれ中継放送信号GB1〜GB3に含まれるセグメント信号Siが占有する周波数と同一の周波数帯域を占有する。
【0039】
スイッチ30は、制御信号SLが出力されていないときは、中継部26が出力する信号を選択して電力増幅器32に出力し、制御信号SLが出力されているときには、報知部28が出力する信号を選択して電力増幅器32に出力する。
【0040】
電力増幅器32は、制御信号SLが出力されていないときは、所定の第1の利得を以て信号を増幅してアンテナ接続部34に出力し、制御信号SLが出力されているときには、第1の利得とは異なる所定の第2の利得を以て信号を増幅してアンテナ接続部34に出力する。
【0041】
第1の利得および第2の利得は、電力増幅器32が出力する信号の電力が最大値に達した飽和状態となることのないよう設定される。電力効率を高めるためには、第1の利得および第2の利得を、電力増幅器32を飽和状態に至らしめることのない最大の値である最大限利得に設定することが好適である。
【0042】
送信アンテナ16はアンテナ接続部34に接続される。送信アンテナ16としては、漏洩同軸ケーブルアンテナ、漏洩導波管アンテナ等の漏洩導波路アンテナを適用することが好適であるが、モノポールアンテナ、ダイポールアンテナその他の一般的なアンテナを適用してもよい。漏洩導波路アンテナを適用した場合、送信アンテナ16は、トンネル22の延伸方向と送信アンテナ16の延伸方向とが一致するようトンネル22内に設けられる。送信アンテナ16は、電力増幅器32から出力された信号をトンネル22内に送信する。
【0043】
受信装置18は、送信アンテナ16から送信される信号のうち、選択したチャネル周波数帯域を占有する信号のみを受信する。受信装置18は、受信した信号がセグメント信号S1〜Snを含む場合には、複合セグメント信号によって、静止画像、動画像、音声等を再生する。一方、受信した信号がセグメント信号Siのみを含む場合には、セグメント信号Siのみによって、静止画像、動画像、音声等を再生する。また、受信装置18は、常にセグメント信号Siのみによって、静止画像、動画像、音声等を再生するものであってもよい。
【0044】
本実施形態に係る中継送信装置14においては、中継部26が出力する中継放送信号GB1〜GBmと報知部28が出力するセグメント災害信号W1〜Wmは、共通の電力増幅器32によって増幅され、共通の送信アンテナ16によって送信される。これによって、製造コストおよび建設コストを低減すると共に放送システムを設置する際に要される労力を軽減することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る中継送信装置14によれば、トンネル22内またはトンネル22の近傍において災害が発生したときは、中継放送信号GB1〜GBmに代えて、セグメント災害信号W1〜Wmが優先度の高い信号としてトンネル22内に送信される。
【0046】
セグメント災害信号W1〜Wmのそれぞれが占有する周波数帯域幅は、中継放送信号GB1〜GBmのそれぞれが占有する周波数帯域幅のn分の1である。
【0047】
一般に、信号の電力は、当該信号が占有する周波数帯域幅と、当該信号の単位周波数帯域幅当たりの電力として定義される周波数電力密度との積で表される。したがって、第1の利得および第2の利得をそれぞれについての最大限利得に設定し、中継放送信号GB1〜GBmおよびセグメント災害信号W1〜Wmの両者を同一の総電力で出力するものとすれば、電力増幅器32は、セグメント災害信号W1〜Wmのそれぞれの周波数電力密度を、中継放送信号GB1〜GBmのそれぞれの周波数電力密度のn倍として送信アンテナ16に出力することができる。
【0048】
一般に、無線信号は、周波数電力密度が大きい程伝搬特性が良好となる。また、セグメント災害信号W1〜Wmに対しては、複合セグメント信号に含まれるセグメント信号に対して適用される変調方式に比して雑音や妨害波信号の影響を受け難い変調方式が採用される。これによって、トンネル22内において火災、洪水、落盤、交通事故等が発生し、スプリンクラーによる放水、落盤、車両の渋滞等による障害物が発生したとしても、受信装置18は、セグメント災害信号を受信することにより、放送信号に含まれる情報よりも優先度の高い災害情報を確実に再生することができる。一方、災害が発生していないときには、受信装置18は、中継放送信号を受信し複合セグメント信号を取得することにより単位時間に多量の情報を取得し、高品質な情報を再生することができる。また、中継部26の処理により、放送信号以外の不要な周波数成分が低減された後、チャネル周波数帯域ごとの電力平均値が均一化された上で中継放送信号が送信される。これによって、受信装置18においては、不要な信号が受信されることがなく、管轄放送局から送信される放送信号のいずれに対しても同等の品質で放送を再生することができる。
【0049】
なお、上記では、監視装置12が電力増幅器32に制御信号SLを出力し、電力増幅器32が制御信号SLに従って利得を変化させる構成について説明した。このような構成の他、電力増幅器32としてその利得が固定されたものを適用し、電力増幅器32が飽和状態となることを回避するよう、タップ係数フィルタ42に出力するタップ係数の値を設定する構成としてもよい。この場合、電力増幅器32は、その利得がセグメント災害信号W1〜Wmに対する最大限利得となるように設計されていることが好ましい。
【0050】
また、上記では、報知部28の構成として、1つの災害信号を1つの変調器52によって変調し、m個のミキサ54−1〜54−mによってセグメント災害信号W1〜Wmを出力するものについて説明した。中継送信装置14では、報知部28に代えて、図5に示す報知部28Aを適用することも可能である。報知部28Aは、変調器52−1〜52−m、ミキサ54−1〜54−m、フィルタ56−1〜56−m、および合波器58を備えて構成される。報知部28Aは、変調器52−1〜52−mをそれぞれミキサ54−1〜54−mに前置した点が報知部28と異なる。報知部28と同一の構成部については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
中継送信装置14に報知部28Aを適用した場合、監視装置12からは、ディジタルテレビ放送局10−1〜10−mのそれぞれに対応付けられた互いに異なる災害情報を含む災害信号D1〜Dmがそれぞれ変調器52−1〜52−mに出力される。
【0052】
変調器52−1〜52−mは、それぞれ災害信号D1〜Dmに対し、セグメント信号Siに施されている変調方式と同一の変調方式の変調を施し、それぞれミキサ54−1〜54−mに出力する。
【0053】
このような構成によれば、ディジタルテレビ放送局10−1〜10−mのそれぞれに仕向けられた災害情報を、それぞれディジタルテレビ放送局10−1〜10−mが送信する放送信号B1〜Bmに含まれるセグメント信号Siと同一の周波数で、それぞれセグメント災害信号W1〜Wmによってトンネル22内に送信することができる。これによって、受信装置18では、仕向けられるディジタルテレビ放送局によって異なる災害情報のうち任意のものを選択して取得することができる。
【0054】
本実施形態に係る中継送信装置14は、タップ係数フィルタ42の特性を、複合セグメント信号の値を低減してセグメント信号Siを抽出する特性に設定することで、放送信号に含まれるセグメント信号Siを専ら中継送信する構成とすることができる。タップ係数フィルタ42の特性の変更は、タップ係数取得部44に取得させるタップ係数を変化させることによって行う。この場合、中継部26が出力する信号が占有する周波数帯域幅に応じて、中継部26が出力する信号の電力をタップ係数を変化させることで調整し、電力増幅器32が飽和状態となることを回避することが好ましい。
【0055】
中継送信装置14がセグメント信号Siを専ら中継送信する構成によれば、中継送信装置14を介さずにトンネル22の開口部付近に直接到来する放送信号に含まれる複合セグメント信号と、中継送信装置14を介して送信アンテナ16から送信されトンネル22の開口部付近に漏洩した信号との間の干渉を回避することができる。このような効果は、放送信号の強度が比較的弱い地域に本実施形態に係る放送システムを適用する場合に有効である。
【0056】
また、上述の実施形態においては、n−1個のセグメント信号を複合信号の1単位とし、残りのセグメント信号Siを信号の1単位とした。このような構成の他、nを3以上の整数とし、n−k個(kはnより小さい2以上の整数、ただし、n−k>kであることが好ましい。)のセグメント信号を複合信号の1単位とし、残りのk個のセグメント信号を上述のセグメント信号Siの代わりの信号の一単位とする構成も可能である。タップ係数フィルタ42およびフィルタ56−1〜56−mの周波数特性は、放送信号の構成に適合したものを適用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】放送システムの構成を示す図である。
【図2】放送信号の構成、中継部26で受信される放送信号B1〜B3の周波数スペクトラム、中間周波数帯域の信号に変換された放送信号B1〜B3およびアナログ信号AXの周波数スペクトラム、ならびにタップ係数フィルタ42の周波数特性を示す図である。
【図3】中継部26の構成、および報知部28の構成を示す図である。
【図4】レベル等化器50が出力する信号の周波数スペクトラム、およびセグメント災害信号W1〜Wmの周波数スペクトラムを示す図である。
【図5】ディジタルテレビ放送局10−1〜10−mのそれぞれに仕向けられた災害情報をそれぞれセグメント災害信号W1〜Wmによって送信する場合における報知部28Aの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
10−1〜10−m ディジタルテレビ放送局、12 監視装置、14 中継送信装置、16 送信アンテナ、18 受信装置、20 車両、22 トンネル、24 受信アンテナ、26 中継部、28,28A 報知部、30 スイッチ、32 電力増幅器、34 アンテナ接続部、36 受信増幅器、38,48,54−1〜54−m ミキサ、40 A/D変換器、42 タップ係数フィルタ、44 タップ係数取得部、46 D/A変換器、50 レベル等化器、52,52−1〜52−m 変調器、56−1〜56−m フィルタ、58 合波器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の信号を出力する第1の信号出力部と、
前記第1の信号が占有する周波数帯域よりも狭い周波数帯域を占有する第2の信号を出力する第2の信号出力部と、
前記第1の信号または前記第2の信号のいずれかを選択して出力する選択部と、
前記選択部が出力する信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部が増幅した信号を無線送信する送信部と、
を含むことを特徴とする送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送信装置であって、
前記送信部が無線送信する信号の電力を調整する電力調整部を備え、
前記電力調整部は、
前記第2の信号の単位周波数帯域幅当たりの電力が前記第1の信号の単位周波数帯域幅当たりの電力よりも大きくなるよう、前記送信部が無線送信する信号の電力を調整することを特徴とする送信装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の送信装置であって、
前記第1の信号出力部は、
放送局から送信される無線放送信号を受信する放送受信手段を備え、
前記放送受信手段が受信した信号を前記第1の信号として出力し、
前記第2の信号出力部は、
前記無線放送信号に含まれる情報とは異なる情報を取得する情報取得手段を備え、
前記情報取得手段が取得した情報を含む前記第2の信号を出力し、
前記選択部は、
前記情報取得手段が取得した情報が、前記無線放送信号に含まれる情報よりも送信の優先度が高い場合に、前記第2の信号を選択して出力することを特徴とする送信装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の送信装置であって、
前記送信部は、移動体が通過するトンネルに前記増幅部が出力する信号を無線送信することを特徴とする送信装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の送信装置であって、
前記第1の信号出力部は、複数のディジタル変調信号を含むOFDM変調信号を前記第1の信号として出力し、
前記第2の信号出力部は、前記OFDM変調信号に含まれる変調信号の数より少ない数のディジタル変調信号を含む信号を前記第2の信号として出力することを特徴とする送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−295160(P2007−295160A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118970(P2006−118970)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】