説明

送受信方法、送受信システム、送信装置、受信装置

【課題】効率的に欠落データの再送制御を行え、また、通信状態やデータ送信処理の終了時期を判断しやすい通信手段、効率的かつ容易にパケットの順序制御を行える通信手段の提供。
【解決手段】送信側は、所定サイズの単位テーブルUTiで構成されるファイル格納テーブル52aを作成し、画像ファイルFを所定の単位サイズに分割して、Number情報Ni等を付して格納し、順次送信する。受信側は、事前に受け取ったファイル情報からファイル格納テーブル52aと同一構成のファイル格納テーブル52bを作成しており、受信データをNumber情報Niに対応する箇所にそれぞれ格納すると共に、受信データのNumber情報Niを表す受信通知RNiを送信側に送信する。送信側は、受信した受信通知RNiに対応する単位テーブルUTiを削除し、残った単位テーブルUTiのデータを再送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを所定の受信装置に送信し、または送信装置によって送信されたデータを受信する技術に関し、特に、データを分割して送信し、または分割して送信されたデータを受信する際の順序制御及び再送制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IP(Internet Protocol)により音声通信を行うVoIP(Voice over Internet Protocol)網を用いた通信が普及している。このVoIP網を利用して通信を行う場合、通常、通信手段として、RTP(Real-time Transport Protocol)及びUDP(User Datagram Protocol)が使用される。このRTPは、データを一定量ずつ一定の間隔で送信するプロトコルである。また、UDPは、データを受信側に一方通行に送信するプロトコルであり、TCP(Transmission Control Protocol)のような再送制御や順序制御を行わないため、パケットの構造もシンプルで、通信が高速に行えるという特徴を持っている。したがって、UDPは、リアルタイム性を重視した、しかもある程度データの欠落等の問題が発生しても影響が少ない音声通信等には適したプロトコルであるといえる。一方で、信頼性を重視したデータ、例えば、データの欠落が許されないJPEGデータを、みなし音声としてVoIP網を介して送信する場合には、UDPよりも上位層でデータの欠落や順序の狂い等に対応しなければならないという問題がある。
【0003】
このような問題に対して、下記特許文献2では、受信側が、RTPに付加されているシーケンスナンバーを参照することで、パケットの連続性を確認し、パケットの欠落が認められる場合には、送信側に再送要求を行い、欠落パケットを受信した時点で、受信・記憶したパケットの順序を再構築する技術を開示している。
【0004】
【特許文献1】特開2000−151680号公報
【特許文献2】特開2004−266504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように受信側が送信側に欠落パケットの再送要求を行う形態では、送信側は、再送要求をされていないシーケンスナンバーのパケットが受信側に届いているか否かの判断をすぐに行えないことや、受信側からの再送要求も欠落する可能性があり、受信側はその場合に再送要求を改めて送信しなければならないことから、送受信を行っている総時間が無駄に長くなり、また、そのための通信費も高価になるという問題が生じていた。また、上述のように欠落パケットを受信する度にパケットの順序を再構築する方法では、欠落パケットが多数発生する場合には、何度もパケット順序の再構築処理が必要となり、効率が悪いという問題が生じていた。そこで、効率的に欠落データの再送制御を行え、また、通信状態やデータ送信処理の終了時期を判断しやすい通信手段が求められていた。また、効率的かつ容易にパケットの順序制御を行える通信手段が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]パケットを用いてデータのやり取りを行うネットワークを介して、送信装置と受信装置との間でデータを送受信する送受信方法であって、
前記送信装置及び前記受信装置の少なくとも一方は、前記データに対応する記憶領域をデータ領域として確保し、前記パケットのサイズ以下に分割した分割データを前記データ領域に格納して、前記分割データの所在を管理しながら前記送受信を行う
送受信方法。
【0008】
かかる送受信方法において、送信装置及び受信装置の少なくとも一方は、分割データをデータ領域に格納して、分割データの所在を管理するので、効率的かつ容易に分割データの送受信を行うことができる。なお、分割データの所在とは、分割データの並び順や、送信すべき、あるいは受信した分割データの有無などをいう。
【0009】
[適用例2]パケットを用いてデータのやり取りを行うネットワークを介して、データの送受信を行う送信装置と受信装置とからなる送受信システムであって、
前記送信装置は、
前記送信するデータを前記パケットのサイズ以下の分割データに分割する送信データ分割手段と、
該分割データを記憶領域に用意された送信データ領域に格納する送信データ格納手段と、
前記送信データ領域に存在する前記分割データを前記受信装置に繰り返し送信するデータ送信手段と、
前記分割データの送信に応じて、該分割データを受信した前記受信装置が返信する、前記受信された分割データを識別する識別情報を受信する識別情報受信手段と、
該受信した識別情報に基づいて、該識別情報に対応した前記分割データを、前記送信データ領域から除外する送信済み分割データ除外手段と
を備え、
前記受信装置は、
前記ネットワークを介して、前記分割データを受け取り、該受け取った分割データを記憶領域に格納する受信データ格納手段と、
少なくとも、前記分割データを受け取るたびに、該分割データを識別する識別情報を、前記送信装置に返信する識別情報返信手段と、
前記分割データを全て受け取ったのち、前記データの受信を完了する受信完了手段と
を備えた
送受信システム。
【0010】
かかる構成の送受信システムにおいて、送信装置は、送信するデータを所定のサイズに分割して、送信データ領域に格納し、送信データ領域に存在する分割データを受信装置に繰り返し送信すると共に、受信装置から識別情報を受信すると、識別情報に対応した分割データを送信データ領域から除外する。一方、受信装置は、分割データを受け取るたびに、受信した分割データを識別する識別情報を送信装置に返信する。したがって、送信装置は識別情報の受信により、受信装置は分割データの受信により、通信相手が正常に通信できていることを確認することができるので、互いの通信状態を確認しながら、信頼性の高い通信を行うことができる。また、送信装置は、受信装置が受信していない可能性のあるデータのみを再送対象として、効率的なデータ送信を行うことができる。さらに、データの再送に際して再送データの再構築が必要なく、効率的な送信データへのアクセスが行える。
【0011】
[適用例3]パケットを用いてデータのやり取りを行うネットワークを介して、データを受信装置に送信する送信装置であって、前記送信するデータを前記パケットのサイズ以下の分割データに分割する送信データ分割手段と、該分割データを記憶領域に用意された送信データ領域に格納する送信データ格納手段と、前記送信データ領域に存在する前記分割データを、前記受信装置に繰り返し送信するデータ送信手段と、前記分割データの送信に応じて、該分割データを受信した前記受信装置が返信する、前記受信された分割データを識別する識別情報を受信する識別情報受信手段と、該受信した識別情報に基づいて、該識別情報に対応した前記分割データを、前記送信データ領域から除外する送信済み分割データ除外手段とを備えた送信装置。
【0012】
[適用例4]適用例3記載の送信装置であって、データ送信手段は、再送制御を行わないプロトコルを用いて分割データを送信する送信装置。
【0013】
このような構成によれば、一方通行にデータを送信し、再送制御を行わないプロトコル、例えばUDPなどを用いた通信であっても、効率的な再送制御を行うことができる。
【0014】
[適用例5]適用例3または適用例4記載の送信装置であって、データ送信手段は、受信装置から、分割データを全て受け取ったことを表す通知を受け取ったときは、分割データの送信を完了する送信装置。
【0015】
[適用例6]適用例3ないし適用例5のいずれか記載の送信装置であって、識別情報受信手段が識別情報を所定の時間受信しないときは、分割データの送信を打ち切る送信装置。
【0016】
適用例6の構成によれば、識別情報受信手段が識別情報を所定の時間受信しないときは、分割データの送信を打ち切るので、通信途中で通信過程または受信装置に問題が発生した場合であっても、速やかに通信状態を判断して通信が無駄に長くなることを防ぐことができる。
【0017】
[適用例7]適用例3ないし適用例6のいずれか記載の送信装置であって、更に、データの送信に先立って、少なくとも送信するデータの容量に関するデータ情報を送信するデータ情報送信手段を備え、データ送信手段は、分割データを、送信しようとするデータにおける分割データの並びに対応して付与された並び情報と共に、ネットワークを介して受信装置に順次送信する送信装置。
【0018】
[適用例8]適用例3ないし適用例7のいずれか記載の送信装置であって、データ送信手段は、送信しようとする分割データ及び並び情報を受け取る準備が完了したことの通知を前記受信装置から受け取った後に、分割データ及び並び情報を受信装置に送信する送信装置。
【0019】
[適用例9]パケットを用いてデータのやり取りを行うネットワークを介して、データの送受信を行う送信装置と受信装置とからなる送受信システムであって、
前記送信装置は、
前記送信するデータを前記パケットのサイズ以下の分割データに分割する送信データ分割手段と、
前記データの送信に先立って、少なくとも前記送信するデータの容量に関するデータ情報を送信するデータ情報送信手段と、
前記分割データを、前記送信しようとするデータにおける該分割データの並びに対応して付与された並び情報と共に、前記ネットワークを介して前記受信装置に順次送信するデータ送信手段と
を備え、
前記受信装置は、
前記データの受信に先立って、前記送信装置から、前記データ情報を受け取ったとき、少なくとも前記送信するデータの容量に対応した記憶領域を受信データ領域として確保するデータ領域確保手段と、
前記ネットワークを介して、前記分割データを前記並び情報と共に、前記送信装置から順次受け取り、該受け取った分割データを、前記受信データ領域の前記並び情報に対応した位置へ格納する受信データ格納手段と
を備えた
送受信システム。
【0020】
かかる構成の送受信システムにおいて、送信装置は、送信するデータを所定のサイズに分割して、送信データの容量に関するデータ情報を受信装置に事前に送信した上で、分割データを並び情報と共に受信装置に送信する。一方、受信装置は、送信装置から受信したデータ情報に基づいて受信データ領域を確保し、並び情報と共に受け取った分割データを受信データ領域の並び情報に対応した位置へ格納する。よって、何らかの理由により送信パケットの順序が入れ替わって受信された場合であっても、効率的かつ容易にパケットの順序制御を行うことができる。
【0021】
[適用例10]パケットを用いてデータのやり取りを行うネットワークを介して、データを送信装置から受信する受信装置であって、データの受信に先立って、送信装置から、送信されるデータの容量に関するデータ情報を受け取り、容量に対応した記憶領域を受信データ領域として確保するデータ領域確保手段と、送信されるデータをパケットのサイズ以下に分割した分割データを、送信しようとするデータにおける分割データの並びに対応した並び情報と共に、ネットワークを介して、送信装置から順次受け取る分割データ受信手段と、受け取った分割データを受信データ領域の並び情報に対応した位置へ格納する受信データ格納手段とを備えた受信装置。適用例7及び適用例10の構成によれば、適用例9と同様の効果を奏する。
【0022】
[適用例11]適用例10記載の受信装置であって、更に、データ領域確保手段が受信データ領域を確保したとき、分割データ及び並び情報を受け取る準備が完了したとして送信装置に通知する準備完了通知送信手段を備えた受信装置。
【0023】
適用例8及び適用例11の構成によれば、受信装置は、データ情報を受け取り、受信データ領域を確保したときに、分割データ及び並び情報を受け取る準備が完了したことの通知を送信装置に送信する。一方、送信装置は、その通知を受信した後に、分割データ及び並び情報を送信する。よって、送信側が受信側の状態を確認してからデータを送信するので、確実な通信を行うことができる。
【0024】
[適用例12]適用例10または適用例11記載の受信装置であって、更に、少なくとも、分割データを受け取るたびに、分割データを識別する識別情報を、送信装置に返信する識別情報返信手段を備えた受信装置。適用例3及び適用例12の構成によれば、適用例2と同様の効果を奏する。
【0025】
[適用例13]適用例10ないし適用例12のいずれか記載の受信装置であって、更に、分割データを全て受け取った後、データの受信の完了を表す通知を前記送信装置に送信する受信完了通知手段を備えた受信装置。
【0026】
適用例5及び適用例13の構成によれば、送信装置は、送信した分割データに対応する全ての識別情報を受信したときに加え、受信装置が送信した、データの受信の完了を表す通知を受信した場合にも、データの送信を完了できる。したがって、2種類のデータ送信完了の判断基準を持っているので、通信過程においてパケットの欠落が生じても、両者いずれかの判断基準で送信処理の終了時期を速やかに判断することができる。
【0027】
なお、本発明は、データを送信または受信するためのコンピュータプログラムとしても構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施例について説明する。まず、本発明の実施例としての送受信システムの概略構成を図1に示す。図示するように、送信側ネットワークシステム10と受信側ネットワークシステム20は、インターネットINTを介して接続されている。送信側ネットワークシステム10と受信側ネットワークシステム20とは、VoIPにより通信を行う機能を備えており、インターネットINTは、ここではVoIP網として機能する。以下、インターネットINTをVoIP網という。このVoIP網は、インターネットプロトコルにより音声通信を行うインフラ、例えばIP電話網であり、一定量のデータを一定の間隔で転送するRTPと、再送及び順序制御を行わずに、一方通行にデータ転送を行うUDPを用いた通信が行われる。
【0029】
送信側ネットワークシステム10は、プリンタMFP1、ターミナルアダプタTA1、VoIPルータRT1が接続されることで構成されている。同様に、受信側ネットワークシステム20は、プリンタMFP2、ターミナルアダプタTA2、VoIPルータRT2が接続されることで構成されている。
【0030】
プリンタMFP1,MFP2は、いわゆる複合機タイプのプリンタであり、スキャナを備えている。ターミナルアダプタTA1,TA2は、RTP及びUDPを用いて、音声の代わりにデータファイルをみなし音声として転送を行う通信端末であり、自身の電話番号とIPアドレスとを有している。VoIPルータRT1,RT2は、ターミナルアダプタTA1,TA2の呼制御の依頼を受けて、VoIP網での呼制御や、音声データの転送処理を行う専用のルータである。
【0031】
なお、本実施例においては、送信側ネットワークシステム10と受信側ネットワークシステム20とは、相手方を特定し、いわゆるPtoP(Peer to Peer)の通信によりデータを転送するVoIP網を介して接続されるものとしたが、同様の通信が可能であれば、パケット通信を行うその他の通信手段により接続されてもよい。
【0032】
また、本実施例においては、プリンタMFP1とターミナルアダプタTA1、プリンタMFP2とターミナルアダプタTA2との接続は、いずれもUSB接続とし、ターミナルアダプタTA1とVoIPルータRT1、ターミナルアダプタTA2とVoIPルータRT2との接続は、いずれも無線LAN接続としたが、他の接続方法であってもよい。
【0033】
また、本実施例においては、プリンタMFP1及びMFP2、ターミナルアダプタTA1及びTA2、VoIPルータRT1及びRT2は、それぞれ分離して構成されているが、これらが一体的に、例えば、プリンタMFP1とターミナルアダプタTA1とが一体的に構成されたり、ターミナルアダプタTA1とVoIPルータRT1とが一体的に構成されたりしてもよい。
【0034】
次に、ターミナルアダプタTA1の内部構成を図2に示す。ターミナルアダプタTA1は、操作パネル30、ROM40、RAM50、EEPROM60、CPU70、LANインターフェース82,WANインターフェース84を備えている。
【0035】
操作パネル30は、送信側ネットワークシステム10のユーザが、ターミナルアダプタTA1を操作するためのユーザインターフェースであり、通信相手であるターミナルアダプタTA2の電話番号を入力するボタンや、電話を掛けるボタン、電話を受けるボタン、電話を切るボタンなどから構成される。
【0036】
ROM40には、後述するファイルの送受信処理を始め、ターミナルアダプタTA1の操作全体に係る制御プログラムが記憶されている。RAM50には、制御プログラムを実行するためのワークエリアのほか、後述するファイルの送受信処理時にファイル格納テーブル52として用いる記憶領域が確保されている。EEPROM60には、後述するファイルの送受信処理において、送信するファイルまたは受信したファイルを保存する記憶領域が確保されている。なお、図2では、送信側ネットワークシステム10のユーザが、プリンタMFP1が備えるスキャナを用いて、写真画像をデジタルデータとして取り込み、画像ファイルFとしてEEPROM60に保存した状態を示している。
【0037】
CPU70は、ROM40に記憶された制御プログラムをRAM50に展開して実行することで、各機能部(図中の71〜78)として機能する。
【0038】
LANインターフェース82は、プリンタMFP1と接続するためのUSBインターフェースからなる。また、WANインターフェース84は、VoIPルータRT1と接続するための無線LANインターフェースからなる。
【0039】
かかる構成のターミナルアダプタTA1及びプリンタMFP1は、プリンタMFP1が備えるスキャナで取り込んだ画像データをターミナルアダプタTA1が送信することで、あるいは、送信された画像データをターミナルアダプタTA1が受信し、プリンタMFP1が印刷することで、ファクシミリとして機能することができる。
【0040】
なお、説明は省略するが、ターミナルアダプタTA2は、ターミナルアダプタTA1と同一の内部構成である。したがって、以後、ターミナルアダプタTA1の内部構成については、各構成部を示す符号の末尾に「a」を付し、ターミナルアダプタTA2の内部構成については「b」を付して、両者を区別する。
【0041】
次に、ターミナルアダプタTA1がVoIP網を介して画像ファイルFをターミナルアダプタTA2へ転送する際の、ターミナルアダプタTA1のファイル送信処理の手順と、ターミナルアダプタTA2のファイル受信処理の手順とを図3及び図4に示す。これらの処理は、送信側ネットワークシステム10のユーザが、プリンタMFP1が備えるスキャナで取り込んだ画像ファイルFを、ターミナルアダプタTA1からVoIP網を介してターミナルアダプタTA2に送信し、受信側ネットワークシステム20のユーザが、ターミナルアダプタTA2に受信された画像ファイルFをプリンタMFP2で印刷するために必要なファイル転送処理である。なお、上記の転送処理は、プリンタMFP1が備えるメモリカードスロットにメモリカードを挿入し、メモリカードに記憶されたデータを送信するものであってもよい。
【0042】
まず、図3及び図4に示す処理の準備として、ターミナルアダプタTA1の電源が入れられると、CPU70aは、呼制御部71aの処理として、ターミナルアダプタTA1の電話番号とIPアドレスとをVoIPルータRT1に登録する。同様に、ターミナルアダプタTA2の電源が入れられると、CPU70bは、ターミナルアダプタTA2の電話番号とIPアドレスとをVoIPルータRT2に登録する。
【0043】
そして、送信側ネットワークシステム10のユーザが、ターミナルアダプタTA1の操作パネル30aを用いて、画像ファイルFの送信先、すなわちターミナルアダプタTA2の電話番号を入力することで、図3及び図4に示すターミナルアダプタTA1におけるファイル送信処理が開始される。この処理が開始されると、まず、ターミナルアダプタTA1は、画像ファイルFの送信先の電話番号を受け付ける(ステップS100)。
【0044】
そして、ユーザ操作により、電話を掛ける操作が行われると、ターミナルアダプタTA1のCPU70aは、呼制御部71aの処理として、受け付けた電話番号に対する接続要求をVoIPルータRT1に対して送信する(ステップS110)。これを受けて、VoIPルータRT1は、電話番号に関連づけられたIPアドレスを有するターミナルアダプタTA2に対して接続要求がなされていることをVoIP網及びVoIPルータRT2を介して、ターミナルアダプタTA2に通知する。
【0045】
一方、受信側であるターミナルアダプタTA2では、上述の接続要求を受信することでファイル受信処理が開始される。ターミナルアダプタTA2のCPU70bは、呼制御部71bの処理として、上述の接続要求を受信すると(ステップS300)、接続要求を許可する旨を、VoIPルータRT2,RT1及びVoIP網を介して、ターミナルアダプタTA1に返信する(ステップS310)。なお、本実施例においては、上述の接続要求の許可は、接続要求を受けて自動的にターミナルアダプタTA1に返信されるものとしたが、例えば、受信側ネットワークシステム20のユーザが、ターミナルアダプタTA2が備える操作パネル30bの電話を受けるボタンを押下することで、返信されるものとするなど、別の態様であってもよい。
【0046】
なお、本実施例においては、VoIPルータRT1にターミナルアダプタTA1の電話番号及びIPアドレスを、VoIPルータRT2にターミナルアダプタTA2の電話番号及びIPアドレスを登録し、VoIPルータRT1,RT2が呼制御を行うものとしたが、このような態様に限られるものではない。例えば、SIP(Session Initiation Protocol)を使用して呼制御を行う場合は、呼制御サーバであるSIPサーバに、電話番号及びIPアドレスを登録し、ターミナルアダプタTA1とターミナルアダプタTA2とがSIPサーバを介して通信経路を確立するものとしてもよい。
【0047】
一方、ターミナルアダプタTA1のCPU70aは、上記ステップS110で接続要求を送信した後、呼制御部71aの処理として、接続許可の返信を待機している。そして、接続要求許可を受信すると(ステップS120)、CPU70aは、EEPROM60aに記憶された画像ファイルFを読み出し(ステップS130)、テーブル作成部72aの処理として、RAM50aに、画像ファイルFのファイルサイズに応じたファイル格納テーブル52aを作成する(ステップS140)。そして、データ格納制御部73aの処理として、作成したファイル格納テーブル52aに画像ファイルFを読み込む(ステップS150)。なお、本実施例においては、上記ステップS130において、EEPROM60aに記憶されている全てのファイルが自動的に送信対象として読み出されるものとしたが、ユーザが操作パネル30を用いて送信対象とするファイルを選択できるものとしてもよい。
【0048】
上述のステップS140,S150の処理については、ファイル格納テーブル52aの一例を示す図5を用いて詳述する。ファイル格納テーブル52aは、画像ファイルFを所定の単位サイズに分割して格納するためのテーブルである。例えば、上記の単位サイズを152byteとする場合、画像ファイルFのサイズが15100byteであれば、CPU70aは、上記ステップS140において、図5(a)に示すように、100(15100byte÷152=99余り52)個の単位テーブルUTiから構成されるファイル格納テーブル52aを作成する。なお、この単位テーブルUTiは全て同じサイズであり、例えば、上記の例を用いれば、1〜99個目の分割データSD1〜SD99は152byteであり、100個目の分割データSD100は52byteとなるが、この52byteのデータを格納する単位テーブルUT100も152byteのデータを格納する単位テーブルUT1〜UT99と同一のサイズである。
【0049】
そして、CPU70aは、上記ステップS150において、データ格納制御部73aの処理として、図5(b)に示すように、画像ファイルFを分割した各々の分割データSDiに、ID情報I、Number情報Ni、Length情報Liを付加して、ファイル格納テーブル52aを構成する単位テーブルUTiに格納していく。このように、分割データSDiに他の情報が付加されてファイル格納テーブル52aに格納された各々のデータを、以後「格納データHDi」と称すこととする。
【0050】
この格納データHDiは、図5(b)に示す例では、152byteの単位サイズに分割された画像ファイルFの分割データSDiに、2byteのID情報I、4byteのNumber情報Ni、2byteのLength情報Liが付加されて、合計160byteのデータとして、単位テーブルUTiに格納されている。したがって、単位テーブルUTiのサイズも160byteとしている。
【0051】
上述のID情報Iは、RAM50の当該記憶領域がファイル格納テーブル52aとして用いられる領域であることを識別するための識別子である。Number情報Niは、分割データSDiの並び情報であり、上記の例によれば、例えば、1〜100までの番号となる。Length情報Liは、分割データSDiのデータ長を表しており、上記の例によれば1〜99番目の分割データSD1〜SD99では152、100番目の分割データSD100では52となる。
【0052】
なお、本実施例においては、単位テーブルUTiのサイズは、UDPに対応するために160byteとしたが、このような態様に限られるものではなく、用いる通信手段に応じて変更してもよい。また、画像ファイルFを分割する単位サイズについても、単位テーブルUTiのサイズや、分割データSDiに付加するデータのサイズに応じて変更してもよい。
【0053】
ここで、説明を図3及び図4に戻す。上記ステップS150において、ファイル格納テーブル52aに画像ファイルFを読み込むと、ターミナルアダプタTA1のCPU70aは、データ情報通信制御部75aの処理として、画像ファイルFのファイル情報をターミナルアダプタTA2に送信する(ステップS160)。このファイル情報とは、画像ファイルFの総容量が分かる情報であり、本実施例においては、総容量を示す値(上述の例では15100)としたが、格納データHDiの個数などにより総容量が分かる他の情報であってもよい。なお、ターミナルアダプタTA1とターミナルアダプタTA2は、接続時に、互いが送信するパケットのサイズを確認しているため、画像ファイルFの総容量を知ることで、格納データHDiの個数が分かる。なお、上述のパケットサイズは、ターミナルアダプタTA1及びターミナルアダプタTA2において予め規定してあってもよい。
【0054】
一方、ターミナルアダプタTA2のCPU70bは、上記ステップS310で接続要求許可を送信すると、データ情報通信制御部75bの処理として、ターミナルアダプタTA1が送信するファイル情報を受信したか否かを判断している(ステップS320)。その結果、所定時間内にファイル情報を受信したと判断しなければ(ステップS320:NO)、ファイル受信処理を打ち切る。ファイル情報を受信したと判断すれば(ステップS320:YES)、CPU70bは、受信したファイル情報に基づき、テーブル作成部72bの処理として、RAM50bに、ファイル格納テーブル52bを作成する(ステップS330)。このファイル格納テーブル52bは、上記ステップS140でターミナルアダプタTA1が作成したファイル格納テーブル52aと同一の構成、すなわち、同一サイズかつ同一数の単位テーブルUTiから構成される。なお、ターミナルアダプタTA1とターミナルアダプタTA2は、接続時に、互いが送信するパケットのサイズを確認しているため、ターミナルアダプタTA2は、画像ファイルFの総容量を知ることで、ターミナルアダプタTA1が作成したファイル格納テーブル52aと同一構成のファイル格納テーブル52bを作成することができる。上述のパケットサイズは、ターミナルアダプタTA1及びターミナルアダプタTA2において予め規定してあってもよい。
【0055】
ファイル格納テーブル52bを作成すると、CPU70bは、ターミナルアダプタTA1から格納データHDiを受信可能となったことを示す受信可能通知をターミナルアダプタTA1に送信する(ステップS340)。
【0056】
一方、ターミナルアダプタTA1のCPU70aは、上記ステップS160でファイル情報を送信すると、ターミナルアダプタTA2が送信する受信可能通知を受信したか否かを判断している(ステップS170)。その結果、所定時間内に受信可能通知を受信しなかったと判断すれば(ステップS170:NO)、CPUaは、処理を上記ステップS160に戻し、ファイル情報を再送する。受信可能通知を受信したと判断すれば(ステップS170:YES)、CPU70aは、データ通信制御部74aの処理として、上記ステップS150においてファイル格納テーブル52aに読み込んだ画像ファイルFに関する格納データHDiの全てを順次ターミナルアダプタTA2に送信する(ステップS180)。ここでは、格納データHDiは、格納データHDi(上述の例では160byte)を単位として、RTPヘッダ、UDPヘッダ等が付され、Number情報Niの順に分割して送信される。
【0057】
この処理については、図6(a1)を用いて、具体的に例示する。図6(a1)に示す例では、ファイル格納テーブル52aが5つの単位テーブルUTn(nは1〜5の整数)で構成されており、この単位テーブルUTnに画像ファイルFが、Number情報Nnが付されて分割して格納されている。なお、図中の番号は、Number情報Nnを示しており、四角で囲まれた数字は、単位テーブルUTnに格納された格納データHDnを示している。この場合、上記ステップS180においては、単位テーブルUTnに格納された格納データHDnを格納データHD1→HD2→HD3→HD4→HD5の順で、ターミナルアダプタTA2に送信するのである。
【0058】
一方、ターミナルアダプタTA2のCPU70bは、上記ステップS340で受信可能通知を送信すると、データ通信制御部74bの処理として、ターミナルアダプタTA1から格納データHDiを受信したか否かを判断している(ステップS350)。その結果、受信していなければ(ステップS350:NO)、格納データHDiを受信するまで待機する。
【0059】
そして、格納データHDiを受信すれば(ステップS350:YES)、CPU70bは、データ格納制御部73bの処理として、受信した格納データHDiに含まれるNumber情報Niを参照しながら、上記ステップS330で作成したファイル格納テーブル52bの、Number情報Niに対応する箇所に、受信した格納データHDiを格納する(ステップS360)。
【0060】
このステップS360については、図6(a2)に、上述の図6(a1)で送信された格納データHDnを受信した場合の処理として例示する。この例では、ターミナルアダプタTA1から送信された格納データHD1〜HD5のうち、VoIP網を介した通信過程において、何らかの理由により、格納データHD3が欠落し、さらに、格納データHD2と格納データHD4の到達の順序が入れ替わって、格納データHD1→HD4→HD2→HD5の順にターミナルアダプタTA2に受信されている。このとき、ターミナルアダプタTA2は、受信した格納データHD1,HD4,HD2,HD5を、ファイル格納テーブル52bの単位テーブルUT1,UT4,UT2,UT5に格納データHD1→HD4→HD2→HD5の順で格納する。したがって、結果的に、格納データHD3を格納すべき単位テーブルUT3のみが空白の状態となっている。
【0061】
なお、後述するように、ターミナルアダプタTA1は、自身が送信した格納データHDiをターミナルアダプタTA2が受信できなかったと判断して、格納データHDiを再送する場合があるが、このような再送データを受信した場合に、既に当該再送データがファイル格納テーブル52bに格納されているときには、CPU70bは、受信データを破棄することになる。
【0062】
受信した格納データHDiをファイル格納テーブル52bに格納すると、ターミナルアダプタTA2のCPU70bは、格納データHDiを受信したことをターミナルアダプタTA1に知らせるために、受信通知制御部76bの処理として、受信した格納データHDiが含むNumber情報Niを表す受信通知RNiをターミナルアダプタTA1に送信する(ステップS370)。なお、この受信通知RNiは、上述の受信した格納データHDiを破棄する場合であっても送信される。
【0063】
このステップS370では、例えば、ターミナルアダプタTA2は、上述の図6(a2)に示すように受信ファイルを格納すると、図6(b2)に示すように、受信した格納データHD1,HD4,HD2,HD5に対応するNumber情報Nnを表す受信通知RNnを、RN1→RN4→RN2→RN5の順でターミナルアダプタTA1に送信するのである。なお、図中の丸で囲まれた数字は、受信通知RNnを示している。
【0064】
一方、ターミナルアダプタTA1のCPU70aは、上記ステップS180で格納データHDiを送信すると、受信通知制御部76aの処理として、ターミナルアダプタTA2が上記ステップS370で送信する受信通知RNiを受信したか否かを判断している(ステップS190)。その結果、受信通知RNiを受信したと判断すれば(ステップS190:YES)、CPU70aは、テーブル削除部78aの処理として、受信した受信通知RNiが表すNumber情報Niに対応する、ファイル格納テーブル52aの単位テーブルUTiを削除する(ステップS210)。なお、本実施例において、単位テーブルUTiの削除とは、単位テーブルUTiに格納された格納データHDiを削除することである。これにより単位テーブルUTiに含まれるID情報Iも削除されることとなり、CPUaが当該単位テーブルUTiを単位テーブルとして認識できなくなる。
【0065】
このステップS210については、図6(b1)に、上述の図6(b2)で送信された受信通知RNnを受信した場合の処理として例示する。この例では、ターミナルアダプタTA2から送信された受信通知RNnのうち、VoIP網を介した通信過程において、何らかの理由により、受信通知RN4が欠落し、受信通知RN1→RN2→RN5の順にターミナルアダプタTA1に受信されている。このとき、ターミナルアダプタTA1は、図6(b1)に示すように、受信した受信通知RN1,RN2,RN5を基に、格納データHD1,HD2,HD5をターミナルアダプタTA2が受信したので、これらのデータについては再送の必要がないと判断し、ファイル格納テーブル52aの単位テーブルUT1,UT2,UT5を削除する。これによって、ファイル格納テーブル52aには、受信通知RNnを受信していない格納データHD3,HD4が格納された単位テーブルUT3,UT4のみが残ることとなる。
【0066】
単位テーブルUTiを削除すると、CPU70aは、ターミナルアダプタTA2が送信する、後述する受信完了通知ENDを受信したか否かを判断する(ステップS220)。その結果、受信完了通知ENDを受信していれば(ステップS220:YES)、ターミナルアダプタTA2は画像ファイルFの全ての格納データHDiを受信したということであり、CPU70aは、ファイル送信処理を完了する。
【0067】
一方、受信完了通知ENDを受信していなければ(ステップS220:NO)、CPU70aは、ファイル格納テーブル52aの単位テーブルUTiが存在するか否か、即ち、上記ステップS210において、ファイル格納テーブル52aを構成する全ての単位テーブルUTiが削除されているか否かを判断する(ステップS230)。この判断は、RAM50に、ID情報を有する記憶領域が存在するか否かを判断することで行われる。
【0068】
その結果、単位テーブルUTiが存在しなければ(ステップS230:NO)、ターミナルアダプタTA1が送信した格納データHDiに対応する全ての受信通知RNiを受信しているということ、すなわち、ターミナルアダプタTA2が画像ファイルFの全ての格納データHDiを受信したということであり、CPU70aは、ファイル通信処理を完了する。
【0069】
一方、単位テーブルUTiが存在すれば(ステップS230:YES)、ターミナルアダプタTA1は、送信した格納データHDiに対応する全ての受信通知RNiを受信しているわけではないということである。このことは、何らかの理由により、上記ステップS370においてターミナルアダプタTA2が送信した受信通知RNiが、VoIP網を介してターミナルアダプタTA1に送信される過程で欠落したか、あるいは、そもそも、ターミナルアダプタTA1が上記ステップS180において送信した格納データHDiがターミナルアダプタTA2に送信される過程で欠落して、ターミナルアダプタTA2が受信できなかったことを意味する。したがって、ターミナルアダプタTA2が受信できなかった画像ファイルFの格納データHDiが存在する可能性があるため、CPU70aは、処理を上記ステップS180に戻して、格納データHDiを再送する。
【0070】
なお、この再送段階でのステップS180におけるデータ送信は、上記ステップS210において削除されなかったファイル格納テーブル52aの単位テーブルUTiに格納された格納データHDiのみを再送するものである。例えば、上述の図6(b1)のように単位テーブルUT1,UT2,UT5が削除された場合には、図6(c1)に示すように、単位テーブルUT3,UT4に格納された格納データHD3,HD4を再送するのである。
【0071】
このようにターミナルアダプタTA1が再送した格納データHD3,HD4をターミナルアダプタTA2が受信すると、ターミナルアダプタTA2のCPU70bは、データ格納制御部73bの処理として、図6(c2)に示すように、ファイル格納テーブル52bのデータが格納されていない単位テーブルUT3に、格納データHD3を格納するとともに、既に単位テーブルUT4に格納されているにもかかわらず、再度受信した格納データHD4を破棄することとなる(上記ステップS360に該当)。
【0072】
また、説明を上記ステップS190に戻すが、受信通知RNiを受信していないと判断した場合には(ステップS190:NO)、CPU70aは、最後に受信通知RNiを受信してから(一度も受信通知RNiを受信していない場合においては、格納データHDiを送信してから)所定時間を経過しているか否かを判断する(ステップS200)。そして、所定時間を経過していれば(ステップS200:YES)、ターミナルアダプタTA1とターミナルアダプタTA2との通信に何らかの障害が発生している可能性が高いため、ファイル送信処理を打ち切る。所定時間を経過していなければ(ステップS200:NO)、処理を上記ステップS220に進める。
【0073】
一方、ターミナルアダプタTA2では、上記ステップS370において受信通知RNiを送信すると、CPU70bは、画像ファイルFの全ての格納データHDiを受信したか否かを判断する(ステップS380)。この判断は、ファイル格納テーブル52bを構成する全ての単位テーブルUTiに受信した格納データHDiが格納されているか否かを判断することで行われる。例えば、上述の図6(b2)に示した例では、ファイル格納テーブル52bの単位テーブルUT3に格納データHD3が格納されていないので、全ての画像ファイルFを受信していないと判断することとなる。なお、上記ステップS380の受信完了の判断は、上述の態様に限らず、例えば、ターミナルアダプタTA1は、全ての受信通知RNiを受信したと判断したときに、ターミナルアダプタTA2にその旨を通知し、ターミナルアダプタTA2は、その通知を受信することで受信完了を判断するなど種々の態様が考えられる。
【0074】
このように、全ての格納データHDiを受信していなければ(ステップS380:NO)、処理を上記ステップS350に戻し、格納データHDiをさらに受信するまで待機する。一方、全ての格納データHDiを受信していれば(ステップS380:YES)、CPU70bは、受信完了制御部77bの処理として、画像ファイルFの全ての格納データHDiを受信したことを示す受信完了通知ENDをターミナルアダプタTA1に送信する(ステップS390)。例えば、上述の図6(c2)において格納データHD3,HD4を受信した場合では、図6(d2)に示すように、受信した格納データHD3,HD4のNumber情報N3,N4に対応する受信通知RN3,RN4を、ターミナルアダプタTA1に送信し(上記ステップS370に該当)、続けて、ファイル格納テーブル52bの全ての単位テーブルUTnに格納データHDnが格納されたと判断して(上記ステップS380:YESに該当)、受信完了通知ENDをターミナルアダプタTA1に送信するのである。
【0075】
こうしてターミナルアダプタTA2が送信した受信通知RN3,RN4及び受信完了通知ENDをターミナルアダプタTA1が受信すると、ターミナルアダプタTA1のCPU70aは、図6(d1)に示すように、受信した受信通知RN3,RN4から、格納データHD3,HD4をターミナルアダプタTA2が受信したと判断し、ファイル格納テーブル52aの単位テーブルUT3,UT4を削除する(上記ステップS210に該当)。そして、受信完了通知ENDを受信したと判断し、一連のファイル送信処理を完了する(上記ステップS220:YESに該当)。
【0076】
以上の処理により、ターミナルアダプタTA1が送信した全ての格納データHDiがターミナルアダプタTA2のファイル格納テーブル52bに格納されると、ターミナルアダプタTA2のCPU70bは、格納されたデータから画像ファイルFとしてEEPROM70bに保存して(ステップS400)、ファイル受信処理を完了する。
【0077】
このように、画像ファイルFがターミナルアダプタTA1からターミナルアダプタTA2に送信され、保存されたことにより、受信側ネットワークシステム20のユーザは、MPF2を操作して、保存された画像ファイルFを印刷することができる。あるいは、画像ファイルFは、ターミナルアダプタTA2に受信された際に、プリンタMFP2によって、自動的に印刷されるものとしてもよい。
【0078】
かかる構成の送受信システムは、送信側と受信側とが、同一構成のファイル格納テーブル52a,52bをそれぞれ作成する。そして、送信側は、送信する画像ファイルFを分割し、Number情報Niを付して、ファイル格納テーブル52aを構成する各々の単位テーブルUTiに格納データHDiとして格納し、順次送信する。一方、受信側は、格納データHDiの受信順に、Number情報Niを参照して、ファイル格納テーブル52bの、Number情報Niに対応する箇所に、受信した格納データHDiを格納していくので、何らかの理由で格納データHDiの到達順序が入れ替わった場合であっても、効率的かつ容易に、送信データの順序制御を行うことができる。
【0079】
また、かかる構成の送受信システムは、送信側と受信側とが同一構成のファイル格納テーブル52a,52bを用いて送受信を行う際に、受信側が格納データHDiを受信すると、受信した格納データHDiに対応するNumber情報Niを表す受信通知RNiを送信側に返信するため、送信側は受信通知RNiを受信することにより、受信側は、格納データHDiを受信することにより、通信相手が正常に通信できていることをお互いに検知することができる。また、何らかの問題により通信不可の状態になった際にも、そのことを検知することができる。したがって、送信側と受信側が互いの通信状態を確認しながら、信頼性の高い通信を行うことができる。また、送信側は、受信通知RNiに基づき、データ送信処理の終了時期を速やかに判断することができる。
【0080】
また、かかる構成の送受信システムは、受信側が、受信した格納データHDiのNumber情報Niを表す受信通知RNiを送信側に送信し、送信側が、この受信した受信通知RNiが表すNumber情報Niに対応するファイル格納テーブル52aの単位テーブルUTiを削除し、受信側が受信していない可能性のある、残った単位テーブルUTiに格納された格納データHDiを再送する。したがって、データの再送に際して再送データの再構築が必要なく、効率的な送信データへのアクセスが行えると共に、受信側が受信していない可能性のあるデータのみを再送対象として、効率的なデータ送信を行うことができる。また、送信側は、ファイル格納テーブル52aのデータ格納状態に基づき、データ送信処理の終了時期を速やかに判断することができる。
【0081】
また、かかる構成の送受信システムは、送信側が、送信した格納データHDiに対応する全ての受信通知RNiを受信側から受信することで、データ送信処理の完了時期を判断できることに加え、全ての格納データHDiを受信したことを通知する受信完了通知ENDを受信側から受信することでも、データ送信処理の完了時期を判断できる。したがって、万が一、通信過程において受信通知RNiの一部が欠落しても、あるいは受信完了通知ENDが欠落しても、両者いずれかの方法で送信処理の終了時期を速やかに判断することができる。
【0082】
また、かかる構成の送受信システムは、送信側が受信通知RNiを所定の時間受信しないときは、ファイル格納テーブル52aのデータ格納状態にかかわらず、ファイル送信処理を打ち切るので、通信の途中で通信過程または受信側に問題が発生した場合に、速やかにデータ送信を打ち切り、無駄なデータ送信を避けることができる。
【0083】
また、かかる構成の送受信システムは、受信側がデータ情報を受け取り、ファイル格納テーブル52bを作成したときに、格納データHDiを受け取る準備が完了したことを示す受信可能通知を送信側に送信する。一方、送信側は、受信可能通知を受信した後に、格納データHDiを送信する。よって、送信側が受信側の状態を確認してからデータを送信するので、確実な通信を行うことができる。
【0084】
なお、本実施例においては、ターミナルアダプタTA1は、画像ファイルFの分割データSDiに、ID情報I、Number情報Ni、Length情報Liを付加して、ファイル格納テーブル52aに格納データHDiとして格納し、この格納データHDiを順次、ターミナルアダプタTA2に送信したが、このような態様に限られるものではない。例えば、ファイル格納テーブル52aには分割データSDiのみを格納し、分割データSDiの送信時にNumber情報NiとLength情報Liを付加して送信するものとしてもよい。あるいは、ID情報Iを付加せずに、ファイル格納テーブル52aの位置情報を管理する位置管理テーブルを別途作成し、当該テーブルを用いて、ファイル格納テーブル52aに用いられる領域であることを識別できるようにしてもよい。この場合、ターミナルアダプタTA1は、受信通知RNiを受信するたびに、受信した受信通知RNiに対応する単位テーブルUTiをファイル格納テーブル52aとして認識しなくなるように、位置管理テーブルを更新してもよい。一方、ターミナルアダプタTA2は、分割データSDiのみをファイル格納テーブル52bに格納するようにしてもよい。もとより、ターミナルアダプタTA1は、画像ファイルFを分割してファイル格納テーブル52aに格納する代わりに、画像ファイルFの分割並び情報と各々の分割データSDiの範囲を対応付けた位置管理テーブルを作成し、分割データSDiの送信を行う度に、EEPROM60に保存された画像ファイルFから、送信する分の分割データSDiを位置管理テーブルに基づいて抽出して、送信するようにしてもよい。
【0085】
また、本実施例においては、上記ステップS180において、ターミナルアダプタTA1は、ファイル格納テーブル52aを構成する全ての単位テーブルUTiに格納された格納データHDiを順次送信し、そして、上記ステップS190〜S210を経て、残った単位テーブルUTiについて、再度、上記ステップS180において再送するものとしたが、このような態様に限られるものではない。例えば、上記ステップS180において、所定数の格納データHDiを送信し、それらの送信データに対応する受信通知RNiを全て受信してから、次の所定数の格納データHDiを送信する態様でもよい。
【0086】
また、本実施例においては、上記ステップS150において、分割データSDiにNumber情報Niが付加されて、格納データHDiとしてファイル格納テーブル52aに格納され、さらに、上記ステップS370において、受信した格納データHDiが含むNumber情報Niを表す受信通知RNiをターミナルアダプタTA1に送信するものとしたが、これに限られるものではない。例えば、上記ステップS150において、Number情報Niは必ずしも付加されなくてもよく、このような場合には、受信通知RNiとして、受信した格納データHDiを識別できる他の情報、例えば、添付チェックサムやCRC(Cyclic Redundancy Check)など、を送信してもよい。
【0087】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明の送信装置または受信装置は、実施例に示した画像ファイルFに限らず、動画ファイルなど、種々のデータについても適用することができる。もとより、RTP及びUDPを用いたVoIP網を介した通信に限らず、パケット通信全般に適用することができる。さらに、送信装置/受信装置、送受信/受信/送信方法、受信/送信プログラム、またはプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体等の形態でも実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施例としての送受信システムの概略構成を示す説明図である。
【図2】ターミナルアダプタTA1の内部構成を示す説明図である。
【図3】ターミナルアダプタTA1がVoIP網を介して画像ファイルFをターミナルアダプタTA2へ転送する手順を説明する説明図である。
【図4】ターミナルアダプタTA1がVoIP網を介して画像ファイルFをターミナルアダプタTA2へ転送する手順を説明する説明図である。
【図5】ファイル格納テーブル52aの一例を示す説明図である。
【図6】ターミナルアダプタTA1及びTA2間のデータ通信の再送制御及び順序制御についての説明図である。
【符号の説明】
【0089】
10...送信側ネットワークシステム
20...受信側ネットワークシステム
30...操作パネル
40...ROM
50...RAM
52...ファイル格納テーブル
60...EEPROM
70...CPU
71...呼制御部
72...テーブル作成部
73...データ格納制御部
74...データ通信制御部
75...データ情報通信制御部
76...受信通知制御部
77...受信完了制御部
78...テーブル削除部
82...LAN用ネットワークインターフェース
84...WAN用ネットワークインターフェース
MFP1,MFP2...プリンタ
TA1,TA2...ターミナルアダプタ
RT1,RT2...VoIPルータ
F...画像ファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケットを用いてデータのやり取りを行うネットワークを介して、送信装置と受信装置との間でデータを送受信する送受信方法であって、
前記送信装置及び前記受信装置の少なくとも一方は、前記データに対応する記憶領域をデータ領域として確保し、前記パケットのサイズ以下に分割した分割データを前記データ領域に格納して、前記分割データの所在を管理しながら前記送受信を行う
送受信方法。
【請求項2】
パケットを用いてデータのやり取りを行うネットワークを介して、データの送受信を行う送信装置と受信装置とからなる送受信システムであって、
前記送信装置は、
前記送信するデータを前記パケットのサイズ以下の分割データに分割する送信データ分割手段と、
該分割データを記憶領域に用意された送信データ領域に格納する送信データ格納手段と、
前記送信データ領域に存在する前記分割データを前記受信装置に繰り返し送信するデータ送信手段と、
前記分割データの送信に応じて、該分割データを受信した前記受信装置が返信する、前記受信された分割データを識別する識別情報を受信する識別情報受信手段と、
該受信した識別情報に基づいて、該識別情報に対応した前記分割データを、前記送信データ領域から除外する送信済み分割データ除外手段と
を備え、
前記受信装置は、
前記ネットワークを介して、前記分割データを受け取り、該受け取った分割データを記憶領域に格納する受信データ格納手段と、
少なくとも、前記分割データを受け取るたびに、該分割データを識別する識別情報を、前記送信装置に返信する識別情報返信手段と、
前記分割データを全て受け取ったのち、前記データの受信を完了する受信完了手段と
を備えた
送受信システム。
【請求項3】
パケットを用いてデータのやり取りを行うネットワークを介して、データを受信装置に送信する送信装置であって、
前記送信するデータを前記パケットのサイズ以下の分割データに分割する送信データ分割手段と、
該分割データを記憶領域に用意された送信データ領域に格納する送信データ格納手段と、
前記送信データ領域に存在する前記分割データを、前記受信装置に繰り返し送信するデータ送信手段と、
前記分割データの送信に応じて、該分割データを受信した前記受信装置が返信する、前記受信された分割データを識別する識別情報を受信する識別情報受信手段と、
該受信した識別情報に基づいて、該識別情報に対応した前記分割データを、前記送信データ領域から除外する送信済み分割データ除外手段と
を備えた送信装置。
【請求項4】
請求項3記載の送信装置であって、
前記データ送信手段は、再送制御を行わないプロトコルを用いて前記分割データを送信する
送信装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4記載の送信装置であって、
前記データ送信手段は、前記受信装置から、前記分割データを全て受け取ったことを表す通知を受け取ったときは、前記分割データの送信を完了する
送信装置。
【請求項6】
請求項3ないし請求項5のいずれか記載の送信装置であって、
前記識別情報受信手段が前記識別情報を所定の時間受信しないときは、前記分割データの送信を打ち切る
送信装置。
【請求項7】
請求項3ないし請求項6のいずれか記載の送信装置であって、
更に、前記データの送信に先立って、少なくとも前記送信するデータの容量に関するデータ情報を送信するデータ情報送信手段を備え、
前記データ送信手段は、前記分割データを、前記送信しようとするデータにおける該分割データの並びに対応して付与された並び情報と共に、前記ネットワークを介して前記受信装置に順次送信する
送信装置。
【請求項8】
請求項3ないし請求項7のいずれか記載の送信装置であって、
前記データ送信手段は、前記送信しようとする分割データ及び並び情報を受け取る準備が完了したことの通知を前記受信装置から受け取った後に、前記分割データ及び前記並び情報を前記受信装置に送信する
送信装置。
【請求項9】
パケットを用いてデータのやり取りを行うネットワークを介して、データの送受信を行う送信装置と受信装置とからなる送受信システムであって、
前記送信装置は、
前記送信するデータを前記パケットのサイズ以下の分割データに分割する送信データ分割手段と、
前記データの送信に先立って、少なくとも前記送信するデータの容量に関するデータ情報を送信するデータ情報送信手段と、
前記分割データを、前記送信しようとするデータにおける該分割データの並びに対応して付与された並び情報と共に、前記ネットワークを介して前記受信装置に順次送信するデータ送信手段と
を備え、
前記受信装置は、
前記データの受信に先立って、前記送信装置から、前記データ情報を受け取ったとき、少なくとも前記送信するデータの容量に対応した記憶領域を受信データ領域として確保するデータ領域確保手段と、
前記ネットワークを介して、前記分割データを前記並び情報と共に、前記送信装置から順次受け取り、該受け取った分割データを、前記受信データ領域の前記並び情報に対応した位置へ格納する受信データ格納手段と
を備えた
送受信システム。
【請求項10】
パケットを用いてデータのやり取りを行うネットワークを介して、データを送信装置から受信する受信装置であって、
前記データの受信に先立って、前記送信装置から、送信されるデータの容量に関するデータ情報を受け取り、該容量に対応した記憶領域を受信データ領域として確保するデータ領域確保手段と、
前記送信されるデータを前記パケットのサイズ以下に分割した分割データを、前記送信しようとするデータにおける該分割データの並びに対応した並び情報と共に、前記ネットワークを介して、前記送信装置から順次受け取る分割データ受信手段と、
該受け取った分割データを前記受信データ領域の前記並び情報に対応した位置へ格納する受信データ格納手段と
を備えた受信装置。
【請求項11】
請求項10記載の受信装置であって、
更に、前記データ領域確保手段が前記受信データ領域を確保したとき、前記分割データ及び前記並び情報を受け取る準備が完了したとして前記送信装置に通知する準備完了通知送信手段を備えた
受信装置。
【請求項12】
請求項10または請求項11記載の受信装置であって、
更に、少なくとも、前記分割データを受け取るたびに、該分割データを識別する識別情報を、前記送信装置に返信する識別情報返信手段を備えた
受信装置。
【請求項13】
請求項10ないし請求項12のいずれか記載の受信装置であって、
更に、前記分割データを全て受け取った後、前記データの受信の完了を表す通知を前記送信装置に送信する受信完了通知手段を備えた
受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−228268(P2008−228268A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278267(P2007−278267)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】