説明

送風ファンと、吸気専用換気扇または排気専用換気扇

【課題】本発明は、吸気専用換気扇または排気専用換気扇のいずれにも採用できる共通の構成をなす送風ファンと、この送風ファンを用いて、コストに影響を与えることなく吸気性能を向上させた吸気専用換気扇または排気性能を保持する排気専用換気扇を提供する。
【解決手段】樹脂製の送風ファンFは、駆動モータMの回転軸Gに回り止め金具20を介して取付けられ、駆動モータの回転軸に嵌め込まれるボス部15と、このボス部の外周部に設けられ回り止め金具が送風ファンの回り止めをなすため掛合する掛合部16と、この掛合部の外周部に設けられ複数枚のファンブレード17を支持するファン支え部18とを備え、ボス部とファン支え部は、軸方向の中心位置が互いに略同一位置に設定されるとともに、この中心位置を境にして、その両側に掛合部が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風ファンと、この送風ファンを用いた吸気専用換気扇または排気専用換気扇に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、居室の断熱性の向上とともに気密性が向上しており、また建築基準法改正にともない換気の重要性が高まっている。しかるに、一般に用いられる換気扇としては、居室内空気を排出する排気専用である。居室への吸気としては、居室に換気口(ガラリ)を備えるか、もしくはドアや襖などの隙間からの取入れに期待しているに過ぎない。
【0003】
そのため、排気と比較して吸気が不十分な傾向にあり、吸気を積極的に行って居室環境を改善することが望まれる。そこで、[特許文献1]に開示されるような、1台の換気扇で吸気運転と排気運転とに切換えられる、吸排気切換式換気扇が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−055214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記[特許文献1]に開示される吸排気切換式換気扇は、引紐を引張ることで、この引紐に連結されるロータリ型の切換えスイッチ装置が、「排気」−「切」−「吸気」−「切」−「排気」−の順に切換り、駆動モータが送風羽根を正転駆動、停止、もしくは逆転駆動、停止して上述の作用をなす。
【0006】
ところで、上記送風羽根は排気用換気扇のものを、そのまま用いている。当然ながら、送風羽根は排気を重視して設計されていて、排気作用時には充分な換気量を得ることができる。したがって、吸気作用時に上記送風羽根を逆転させただけでは、吸気効率が排気効率に比較して著しく劣るという不具合がある。
【0007】
排気専用の換気扇と、吸気専用の換気扇を用いれば、それぞれ十分な排気性能および吸気性能を達成することができる。そのためには、排気専用換気扇と吸気専用換気扇について、全てを別部品で製造しなくてはならず、製造段階における部品点数が多くなるという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情にもとづきなされたものであり、その目的とするところは、吸気専用換気扇または排気専用換気扇のいずれにも採用できる共通の構成をなす送風ファンと、この送風ファンを用いて、コストに影響を与えることなく吸気性能を向上させた吸気専用換気扇または排気性能を保持する排気専用換気扇を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を満足するため本発明の送風ファンは、駆動モータの回転軸に回り止め金具を介して取付けられる樹脂製の送風ファンであり、駆動モータの回転軸に嵌め込まれるボス部と、このボス部の外周に設けられ回り止め金具が送風ファンの回り止めをなすため掛合する掛合部と、この掛合部の外周に設けられ複数枚のファンブレードを支持するファン支え部とを備えていて、ボス部とファン支え部は、軸方向の中心位置が互いに略同一位置に設定されるとともに、この中心位置を境にして両側に掛合部が設けられる。
【0010】
上記目的を満足するため本発明の吸気専用換気扇は、開口部を有する本体枠と、この本体枠の開口部に設けられ一側面から回転軸が突出する駆動モータと、この駆動モータの回転軸に回り止め金具を介して取付けられる上記記載の送風ファンと、本体枠の開口部に装着され送風ファンを包囲するベルマウスが形成される化粧枠とを具備し、上記送風ファンは駆動モータ側から吸気する方向に向けて回転軸に挿入され、回り止め金具は送風ファンの反挿入側に設けられる掛合部に掛合され、駆動モータは送風ファンを所定方向に回転駆動して屋外空気を居室内に吸気する。
【0011】
上記目的を満足するため本発明の排気専用換気扇は、開口部を有する本体枠と、この本体枠の開口部に設けられ一側部から回転軸が突出する駆動モータと、この駆動モータの回転軸に回り止め金具を介して取付けられる上記記載の送風ファンと、本体枠の開口部に装着され送風ファンを包囲するベルマウスが形成される化粧枠とを具備し、上記送風ファンは駆動モータ側に排気する方向に向けて回転軸に挿入され、回り止め金具は送風ファンの反挿入側に設けられる掛合部に掛合され、駆動モータは送風ファンを反所定方向に回転駆動して居室内空気を屋外へ排気する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、共通構造の送風ファンで吸気専用換気扇または排気専用換気扇を得られ、コストに影響を与えることなく、吸気性能の向上化または排気性能を保持するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて説明する。(なお、符号を付していない部品については図示していない。もしくは、図示しても符号を付していない。)
図1(A)および図2(A)は排気専用換気扇KDの斜視図と縦断面図、図1(B)および図3(A)は吸気専用換気扇KSの斜視図と縦断面図である。
【0014】
排気専用換気扇KDと吸気専用換気扇KSは、ともに、本体枠1と、この本体枠1に装着される化粧枠2と、本体枠1に設けられるシャッタ機構3と、本体枠1に支持される駆動モータMと、この駆動モータMに取付け具5を介して取付けられる合成樹脂製の送風ファンFとから構成される。
【0015】
上記本体枠1は合成樹脂材から形成され、居室の壁面に貫通する取付け用孔に嵌め込まれて固定される。居室側と室外側に連通する開口部1aを有し、開口部1a居室側に、居室壁面から居室側に突出する上記化粧枠2が装着される。本体枠1の開口部1a室外側には上記シャッタ機構3が取付けられ、開口部1a室外側を開閉自在としている。
【0016】
上記シャッタ機構3は、本体枠1の幅方向に亘り、かつ幅方向とは直交する方向に所定間隔を存して設けられる3枚の羽根板6から構成されている。各羽根板6は、コネクチングレバー7に回動自在に連結され、コネクチングレバー7と本体枠1との間には引張りコイルばね8が張設される。
【0017】
上記本体枠1にはスイッチ装置9が取付けられていて、このスイッチ装置9から引紐10が垂下している。したがって、使用者は引紐10を容易に掴むことができ、引張り操作をなすことで羽根板6は室外側開口部を開閉し、スイッチ装置9のON−OFF切換えができるようになっている。
【0018】
なお説明すると、常時は引張りコイルばね8の張力によって羽根板6が本体枠1の開口部1a室外側を閉塞する。使用者が引紐10を引張れば、スイッチ装置9がONとなって駆動モータMに通電され送風ファンFを回転駆動する。同時に、コネクチングレバー7は引張りコイルばね8の弾性力に抗して移動し、各羽根板6は本体枠1の開口部1aを一斉開放する。
【0019】
上記化粧枠2は合成樹脂材から形成され、略矩形状の枠部11と、この枠部の軸芯に沿ってベルマウス12が一体成形されている。上記ベルマウス12は、本体枠1の開口部1a居室側に形成され、室外側から居室側に向って漸次直径が大となる断面円弧状に形成される排気用ベルマウス部12Aと、この排気用ベルマウス部12Aの室外側に一体形成される吸気用ベルマウス部12Bからなる。
【0020】
上記吸気用ベルマウス部12Bは、排気用ベルマウス部12Aの室外側先端部に、室外側に向うにしたがって順次径大となる円弧状に形成される。すなわち、吸気用ベルマウス部12Bは排気用ベルマウス部12Aの円筒状部を他の部位よりも肉厚に成型した厚肉部となっていて、開口部1a室外側に位置する。
【0021】
上記化粧枠2は、枠部11を本体枠1のフランジ部に係脱可能に掛合することで開口部1a居室側に着脱可能に装着され、排気用ベルマウス部12Aが送風ファンFを包囲する。上記化粧枠2における排気用ベルマウス部12A外面の上下部位と左右部位の4ヶ所には、位置決めリブ13が突設される。
【0022】
上記各位置決めリブ13の先端面が本体枠1の内面に接していて、それにより排気用ベルマウス部12Aが本体枠1に位置決めされる。そして、上記位置決めリブ13を備えることにより、排気用ベルマウス部12Aと送風ファンFとの中心合せができ、後述するようにベルマウス12に対する送風ファンFの相対的な位置決めができる。
【0023】
排気専用換気扇KDにおいて、スイッチ装置9がONに切換った状態で送風ファンFが時計回り方向に回転駆動され、駆動モータ側に排気する。すなわち、居室内空気は本体枠1の開口部1a居室側から吸込まれ、開口部1a室外側から吹出される排気作用が行われる。このとき、ベルマウス12において排気用ベルマウス部12Aを備えたことにより、居室側突出基部での圧力損失が少なくなって排気性能がよい。
【0024】
また、吸気専用換気扇KSにおいて、スイッチ装置9がONに切換った状態で送風ファンFが反時計回り方向に回転駆動され、駆動モータ側から吸気する。すなわち、屋外空気は本体枠1の開口部1a室外側から吸込まれて、開口部1a居室側から居室内へ吹出される吸気作用が行われる。このとき、ベルマウス12において吸気用ベルマウス部12Bを備えたことにより、先端部での圧力損失が少なくなって吸気性能がよい。
【0025】
排気専用換気扇KDおよび吸気専用換気扇KSともに、使用者が再度引紐10を引張れば、スイッチ装置9がOFFに切換って駆動モータMが断電され、送風ファンFの回転が停止する。同時に、引張りコイルばね8の弾性力が作用してコネクチングレバー7が移動し、各羽根板6は本体枠1の開口部1aを閉塞する。
【0026】
排気専用換気扇KDおよび吸気専用換気扇KSは、本体枠1と、この本体枠1に設けられる化粧枠2およびシャッタ機構3として互いに同一の寸法構造部品が用いられ、双方に共通である。なお、上記駆動モータMとして、回転方向が逆の同一寸法のモータを用いることにより、本体枠1、化粧枠2およびシャッタ機構3とともに同一部品を用いることを可能としている。
【0027】
つぎに、上記駆動モータMと、この駆動モータMに取付け具5を介して取付けられる送風ファンFについて詳述する。
はじめに、送風ファンFから説明する。
図2(B)は排気専用換気扇KDに用いられる送風ファンFの正面図、図2(C)は図2(B)におけるX−X線に沿って送風ファンFを一部切欠し拡大した側面図である。図3(B)は吸気専用換気扇KSに用いられる送風ファンFの正面図、図3(C)は図3(B)におけるXa−Xa線に沿って送風ファンFを一部切欠し拡大した側面図である。
【0028】
上記送風ファンFは合成樹脂材から形成されていて、軸芯に沿って設けられ上記駆動モータMの回転軸Gに嵌め込まれるボス部15と、このボス部15の外周に一体に設けられる後述する掛合部16と、この掛合部16の外周に立て壁部19を介して一体に設けられ複数枚のファンブレード17を支持するファン支え部18とからなる。いわゆるプロペラ型ファンであり、一方の送風方向に対して送風性能が良くなる羽根形状を有している。
【0029】
上記ボス部15は、放射状に設けられる複数のステーを介して二重円筒状に形成されていて、軸方向の中心位置(中心線)Nを境にして左右に略同一の長さ(c≒d)に寸法設定されている。上記ファン支え部18も円筒状に形成されていて、軸方向の中心位置(中心線)Nを境にして左右に略同一の長さ(a≒b)に寸法設定されている。
【0030】
上記送風ファンFにおけるボス部15とファン支え部18の軸方向の中心位置Nは、排気専用換気扇KDと吸気専用換気扇KSのいずれにおいても互いに同一位置に設定されることになり、この中心位置Nに沿って上記立て壁部19の基端部が設けられる。すなわち、立て壁部19基端部の厚み方向の真中位置が上記中心位置Nとなる。
【0031】
再び図2(A)、図3(A)に示すように、送風ファンFを駆動モータMの回転軸Gに取付け、駆動モータMを本体枠1に取付けるとともに、この本体枠1に化粧枠2を取付けて、排気専用換気扇KDもしくは吸気専用換気扇KSとして組立てた状態で、ベルマウス12の位置決めリブ13から送風ファンボス部15とファン支え部18の中心位置Nまでの距離Lが、互いに同一となるように設定されている。
【0032】
すなわち、排気専用換気扇KDの送風ファンFと、吸気専用換気扇KSの送風ファンFは互いに同一の部品であり、駆動モータMの回転軸Gに対する取付け方向が互いに逆になることを前提として、各換気扇KD、換気扇KSのいずれにおいても、送風ファンFのベルマウス12に対する相対位置がほぼ同じになる。
【0033】
上記駆動モータMは、図4(A)(B)に示すように構成される。図4(A)は図4(B)の丸印部分を拡大した図、図4(B)は駆動モータMの全体斜視図である。
駆動モータMは、全体的に円柱状に形成される。軸方向の中間部には略矩形状のフランジ部32が径方向に突設され、このフランジ部32の角部には取付け用孔iが設けられる。駆動モータMのフランジ部32を本体枠1の取付け用板に密着し、上記取付け用孔iに取付け用固定具を挿入して、駆動モータMは本体枠1に取付け固定される。
【0034】
駆動モータMの一側部は凹陥状に形成され、軸芯に沿ってモータボス部33が設けられる。上記モータボス部33の端面から、先端部を除いて単純な丸棒状に形成される回転軸Gが突出している。この回転軸Gのモータボス部33端面から僅かな距離の部位に凹溝が設けられ、いわゆるCリングもしくはEリングである、位置決め用リング34が嵌め込まれる。
【0035】
回転軸Gの丸棒部分先端は、逃げ部を介して丸棒直径よりも小さい径の上記ねじ部30が設けられている。上記ねじ部30の周面一部は軸方向に沿って平坦状に切欠加工されていて、ねじ部30の断面は略D字状をなしている。上記ねじ部30は、排気専用換気扇KDに用いられる駆動モータMと、吸気専用換気扇KSに用いられる駆動モータMとで、互いに逆方向にねじ加工されている。
【0036】
具体的には、排気専用換気扇KDの送風ファンFが時計回り方向に回転駆動されるので、上記ねじ部30は送風ファンFの回転とは逆方向である左ねじ加工がなされている。また、吸気専用換気扇KSの送風ファンFが反時計回り方向に回転駆動されるので、上記ねじ部30は送風ファンFの回転方向とは逆方向である右ねじ加工がなされている。
【0037】
再び図2(C)、図3(C)に示すように、上記取付け具5は、回り止め金具20と押え摘み蓋25とから構成される。上記回り止め金具20は送風ファンFの掛合部16に掛合し、実際の送風時において送風ファンFの回り止めをなす。押え摘み蓋25は駆動モータMの回転軸Gに設けられるねじ部30に螺合し、回り止め金具20とともに送風ファンFを回転軸Gに固定する。
【0038】
さらに、上記送風ファンFに設けられる掛合部16と、上記回り止め金具20および押え摘み蓋25について詳述する。
図5(A)は送風ファンFの掛合部16に回り止め金具20を対向する斜視図、図5(B)は送風ファンFの掛合部16に回り止め金具20を取付けた状態の斜視図である。
【0039】
上記掛合部16は、上記ボス部15の外周で、かつ径方向に軸芯を介した対称位置に一対設けられている。いずれの掛合部16も、送風ファンFを軸芯側から見て(すなわち正面視)、水平な底面壁21と、この底面壁21の両側部に沿って垂直に設けられる側面壁22とで、略U字状に形成される凹部である。
【0040】
底面壁21と対向して上面壁23が設けられているが、この上面壁23の立て壁部19からの突出量は底面壁21と側面壁22の立て壁部19からの突出量よりも短く形成される。すなわち、回り止め金具20を掛合部16に掛合する際に、回り止め金具20の掛合部16への掛合位置を確認し易いように配慮されている。
【0041】
上記回り止め金具20は、軸芯部に形成される垂直片部20aと、この垂直片部20aの上下端縁に沿って、それぞれが水平方向に折曲される水平片部20bとからなり、側面視で略コ字状に折曲形成される。上記垂直片部20aの一部(両側部)は、上記送風ファンボス部15を構成する外側ボスの内径と同一の曲率半径の円弧状に形成される。
【0042】
上記垂直片部20aの円弧状部分を除く上下部の幅寸法は、上記掛合部16における底面壁21の幅寸法と略同一に形成される。垂直片部20aの軸芯位置にD形孔31が設けられていて、このD形孔31は駆動モータ回転軸Gの先端に形成されるねじ部30の断面形状と同一の形状寸法をなす。
【0043】
上記回り止め金具20の一対の水平片部20b相互間隔は、一対の上記掛合部16相互の底面壁21間隔よりもある程度、大に形成されている。そして、水平片部20bの垂直片部20aとの折曲側である基端部の幅寸法が、掛合部16の両側面壁22間隔よりも僅かに大に形成され、かつ基端部から先端は幅方向に先細り状に形成される。
【0044】
図5(A)に示すように、回り止め金具20の水平片部20b相互を送風ファンFの掛合部16相互に対向させ、図5(B)に示すように、回り止め金具20を掛合部16に押し込む。水平片部20bの先端が幅方向に先細り状であり、水平片部20bの掛合部16に対する挿入は容易である。
【0045】
上述したように、水平片部20b基端部の幅寸法が掛合部両側面壁22間隔よりも僅かに大に形成されているので、この先端が挿入したあとは強制的に水平片部20bを掛合部16に挿入する。回り止め金具20の垂直片部20aがボス部15端面に当接したところで、それ以上の挿入が規制される。
【0046】
結局、図5(B)に示すように、回り止め金具20における水平片部20bの幅方向両側端縁が、送風ファン掛合部16の両側面壁22相互間に圧入状態で嵌め込まれる。したがって、回り止め金具20は送風ファン掛合部16に確実に取付けられ、強い力で引き抜かない限り、その状態は変らない。
【0047】
再び図2(C)および図3(C)に示すように、上記送風ファンFは立て壁部19を境にして軸方向の左右両側に同一形状のボス部15が形成されている。なお説明すると、上述したようにボス部15は立て壁部19の厚み方向の中心位置Nを基準として軸方向の左右両側に、略同一寸法だけ突設される。
【0048】
上記掛合部16も、立て壁部19を挟んで左右両側に同一寸法形状のものが設けられる。したがって、駆動モータMの回転軸Gに送風ファンボス部15を取付けた状態で、排気専用換気扇KDと吸気専用換気扇KSのいずれも、掛合部16自体は同一形状構造のものが回転軸G先端とともに露出することになる。
【0049】
上記押え摘み蓋25は合成樹脂材から形成され、軸方向に短い略皿状をなす。この周面は僅かにテーパ状をなすとともに、指を引っ掛け易いように複数の凹部26が設けられる。押え摘み蓋25の基端部直径は、送風ファンFのファン支え部18直径と同一寸法に形成され、駆動モータ回転軸Gに取付けられた状態で美観が確保される。
【0050】
押え摘み蓋25の軸芯部に沿いねじ用ボス27が、組立てた状態で手前側になる一端面は埋設され、他端面は開口するようにインサート成形されている。ねじ用ボス27は金属材で形成されて円筒状をなし、内径部には上記駆動モータ回転軸Gの先端に設けられるねじ部30と同一径で同一形状(ねじ加工)のねじ孔28が設けられる。
【0051】
すなわち、排気専用換気扇KDに用いられる駆動モータMの回転軸Gにおいてねじ部30が左ねじ加工されているので、排気専用の押え摘み蓋ねじ用ボス27のねじ孔28は左ねじ孔加工が施されている。吸気専用換気扇KSに用いられる駆動モータMの回転軸Gにおいてねじ部30が右ねじ加工されているので、吸気専用の押え摘み蓋ねじ用ボス部27のねじ孔28には右ねじ孔加工が施されている。
【0052】
つぎに、排気専用換気扇KDの組立てについて説明すると、予め、送風ファン掛合部16に回り止め金具20を取付ける。
図6(A)は送風ファン掛合部16に回り止め金具20を対向する斜視図、図6(B)は送風ファンFに回り止め金具20を取付けた状態を示す斜視図である。
【0053】
図6(A)に示すように、送風ファンFの前後方向(回転方向)の向きを正しく確認する。すなわち、送風ファンFをフィンモータM側へ排気した時に送風性能が高くなる方向にする。手前側に回り止め金具20を持ち、この水平片部20bを露出している送風ファン掛合部16に対向する。そして、図6(B)に示すように、送風ファン掛合部16に回り止め金具20を取付ける。
【0054】
繰り返して説明するに、排気専用換気扇KDであることを確認し、送風ファンFの前後方向の向きを確認したならば、必ず送風ファンFの手前側に回り止め金具20を持ち、向側の掛合部16へ押し込んで取付ける。送風ファンFと回り止め金具20は排気専用と吸気専用にかかわらず共通の部品であるので、取付け方向を間違えはならない。
【0055】
つぎに、送風ファンFと回り止め金具20を駆動モータMの回転軸Gに挿入する。図6(B)に示すように、回り止め金具20が手前側にある状態のままで、送風ファンボス部15を駆動モータ回転軸Gの先端(手前)側に対向する。そして、送風ファンFのボス部15を回転軸Gに差し込み、図2(C)に示すようにボス部15の挿入側端面を回転軸Gに取付けられる位置決め用リング34に当接させる。
【0056】
このとき誤って、送風ファンFを前後逆にして回り止め金具20を回転軸G先端に向け、回り止め金具20側から回転軸Gに挿入することが考えられる。回り止め金具20のD形孔31は回転軸ねじ部30を挿通できるが、回転軸Gの丸棒部分にかかった位置で形状の相違から挿入を止められる。したがって、送風ファンFの駆動モータ回転軸Gに対する取付け方向を誤ることがない。
【0057】
送風ファンボス部15を駆動モータ回転軸Gの所定部位まで嵌め込んだ状態で、ボス部15の反差し込み側端面に取付けられる回り止め金具20は回転軸Gのねじ部30と対向する位置にある。回り止め金具20のD形孔31は、同一断面形状の回転軸ねじ部30に挿入され、このねじ部30の先端部は回り止め金具20から突出する。
【0058】
つぎに、回り止め金具20から突出する回転軸ねじ部30に、押え摘み蓋25を取付ける。回転軸ねじ部30と、押え摘み蓋25のねじ用ボス27に設けられるねじ孔28が、同一向きのねじ(左ねじ)でないと取付けができないので、排気専用換気扇KD用としての押え摘み蓋25の選択を誤ることがない。
【0059】
回転軸G先端のねじ部30に押え摘み蓋25がねじ込まれ、押え摘み蓋25で回り止め金具20と送風ファンFを回転軸Gに取付けられる位置決め用リング34に押付けることで、送風ファンFは駆動モータ回転軸Gに取付け固定される。このようにして排気専用換気扇KDが組立てられ、先に図1(A)で説明したようにして作用する。
【0060】
つぎに、吸気専用換気扇KSの組立てについて説明すると、予め、送風ファン掛合部16に回り止め金具20を取付ける。
図7(A)は送風ファン掛合部16に回り止め金具20を対向する斜視図、図7(B)は送風ファンFに回り止め金具20を取付けた状態を示す斜視図である。
【0061】
図7(A)に示すように、送風ファンFの前後方向(回転方向)の向きを正しく確認する。すなわち、送風ファンFをフィンモータM側から吸気した時に送風性能が高くなる方向にして、手前側に回り止め金具20を持ち、水平片部20bを送風ファン掛合部16に対向する。そして、図7(B)に示すように、送風ファン掛合部16に、上述したように回り止め金具20を取付ける。
【0062】
このように吸気専用換気扇KSであることを確認し、送風ファンFの前後方向の向きを確認したならば、必ず送風ファンFの手前側に回り止め金具20を持ち、向側の掛合部16へ押し込んで取付ける。
つぎに、送風ファンFと回り止め金具20を駆動モータMの回転軸Gに挿入する。図7(B)に示すように回り止め金具20が手前側にある状態のままで、送風ファンボス部15を駆動モータ回転軸Gの先端(手前)側に対向する。
【0063】
そして、送風ファンFを向側へ移動してボス部15を回転軸Gに差し込み、図3(C)に示すようにボス部15の挿入側端面を回転軸Gに取付けられる位置決め用リング34に当接させる。このため、排気専用換気扇KDの場合と同様に、送風ファンFの駆動モータ回転軸Gに対する取付け方向を誤ることがない。
【0064】
送風ファンボス部15を駆動モータ回転軸Gの所定部位まで嵌め込んだ状態で、ボス部15の反差し込み側端面に取付けられる回り止め金具20は回転軸Gのねじ部30と対向する位置にある。回り止め金具20のD形孔31は、同一断面形状の回転軸ねじ部30に嵌め込まれ、このねじ部30の先端部は回り止め金具20から突出する。
【0065】
つぎに、回り止め金具20から突出する回転軸ねじ部30に、押え摘み蓋25を取付ける。回転軸ねじ部30と、押え摘み蓋25のねじ用ボス27に設けられるねじ孔28が、同一向きのねじ(右ねじ)でないと取付けができないので、吸気専用換気扇KS用としての押え摘み蓋25の選択を誤ることがない。
【0066】
回転軸G先端のねじ部30に押え摘み蓋25がねじ込まれ、押え摘み蓋25で回り止め金具20と送風ファンFを回転軸Gに取付けられる位置決め用リング34に押付けることで、送風ファンFは駆動モータ回転軸Gに取付け固定される。このようにして吸気専用換気扇KSが構成され、先に図1(B)で説明したようにして作用する。
【0067】
以上説明した吸気専用換気扇KSおよび排気専用換気扇KDにおいて、本体枠1と化粧枠2は共通部品で、本体枠1に対する化粧枠2の組立て構成も、吸気専用と排気専用のいずれにおいても全く同一である。
上記駆動モータMおよび取付け具5は、吸気専用と排気専用では共通の寸法形状をなしているが、駆動モータMの回転軸Gに設けられるねじ部30と、このねじ部30に螺合する取付け具5に設けられるねじ孔28は、吸気専用と排気専用で互いに逆ねじ加工された部品が用いられる。
【0068】
上記送風ファンFは、吸気専用と排気専用のいずれにも用いられる共通部品で、吸気効率および排気効率を両立するよう設計製作されている。なお、送風ファンFの駆動モータ回転軸Gに対する取付け方向は、吸気専用と排気専用で互いに逆である。
このように吸気専用換気扇KSと排気専用換気扇KDは、構成部品の多くを共通として、部品費の低減化を図れる。駆動モータ回転軸Gと取付け具5に対するねじ加工は互いに逆ねじ加工となるが、特に大きな加工上の差がないので、加工工数の増大を避けられる。送風ファンFは、駆動モータ回転軸Gに対する取付け方向を互いに逆にする必要があるが、特に大きな違いでないから、作業性を損なわない。
【0069】
上記送風ファンFを構成するボス部15とファン支え部18は、いずれも軸方向の中心位置Nが互いに略同一位置に設定され、この中心位置Nを境にして両側に掛合部16が設けられるから、送風ファンFの構成が簡素化して、部品費の増大を抑制する。
送風ファンFにおけるボス部15とファン支え部18の軸方向の中心位置Nは、いずれもベルマウス12に対する相対位置が変らないように設定されるから、排気効率と吸気効率の差がほとんど無く、排気効率を保持して吸気効率の向上を得られる。
【0070】
上記送風ファンFに設けられる掛合部16は、両面に設けられているため、送風ファンFの駆動モータMに対する取付け方向に係らず、回り止め金具20の掛合が可能である。上記取付け金具5は、吸気専用と排気専用の別にかかわらず、駆動モータ回転軸Gの先端(手前)側から送風ファンFを回転軸Gに取付け固定するようになっているから、取付け金具5の送風ファンFに対する作業が容易であり、作業性を損なわない。
【0071】
なお、実施の形態の説明において、先に排気専用換気扇KDについて説明し、後から吸気専用換気扇KSについて説明したが、これについては特別の意図がない。また、本発明は上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。そして、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明における実施の形態に係る、排気専用換気扇と吸気専用換気扇の斜視図。
【図2】同実施の形態に係る、排気専用換気扇の断面図と、送風ファンの正面図および駆動モータと送風ファン一部の切欠した側面図。
【図3】同実施の形態に係る、吸気専用換気扇の断面図と、送風ファンの正面図および駆動モータと送風ファン一部の切欠した側面図。
【図4】同実施の形態に係る、駆動モータの回転軸一部の拡大した斜視図と、駆動モータの外観斜視図。
【図5】同実施の形態に係る、送風ファン掛合部に対する回り止め金具の取付けを説明する斜視図。
【図6】同実施の形態に係る、排気専用換気扇の送風ファンに対する回り止め金具の取付けを説明する斜視図。
【図7】同実施の形態に係る、吸気専用換気扇の送風ファンに対する回り止め金具の取付けを説明する斜視図。
【符号の説明】
【0073】
M…駆動モータ、G…回転軸、20…回り止め金具、F…送風ファン、15…ボス部、16…掛合部、17…ファンブレード、18…ファン支え部、1a…開口部、1…本体枠、12…ベルマウス、2…化粧枠、KS…吸気専用換気扇、KD…排気専用換気扇。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータの回転軸に回り止め金具を介して取付けられる樹脂製の送風ファンにおいて、
上記駆動モータの回転軸に嵌め込まれるボス部と、このボス部の外周に設けられ上記回り止め金具が送風ファンの回り止めをなすため掛合する掛合部と、この掛合部の外周に設けられ複数枚のファンブレードを支持するファン支え部とを備え、
上記ボス部とファン支え部は、軸方向の中心位置が互いに略同一位置に設定されるとともに、この中心位置を境にして両側に上記掛合部が設けられることを特徴とする送風ファン。
【請求項2】
開口部を有する本体枠と、
この本体枠の開口部に設けられ、一側面から回転軸が突出する駆動モータと、
この駆動モータの回転軸に回り止め金具を介して取付けられる上記請求項1記載の送風ファンと、
上記本体枠の開口部に装着され、上記送風ファンを包囲するベルマウスが形成される化粧枠とを具備し、
上記送風ファンは、上記駆動モータ側から吸気する方向に向けて回転軸に挿入され、
上記回り止め金具は、送風ファンの反挿入側に設けられる上記掛合部に掛合され、
上記駆動モータは送風ファンを所定方向に回転駆動して、屋外空気を居室内に吸気することを特徴とする吸気専用換気扇。
【請求項3】
開口部を有する本体枠と、
この本体枠の開口部に設けられ、一側部から回転軸が突出する駆動モータと、
この駆動モータの回転軸に回り止め金具を介して取付けられる上記請求項1記載の送風ファンと、
上記本体枠の開口部に装着され、上記送風ファンを包囲するベルマウスが形成される化粧枠とを具備し、
上記送風ファンは、上記駆動モータ側に排気する方向に向けて回転軸に挿入され、
上記回り止め金具は、送風ファンの反挿入側に設けられる上記掛合部に掛合され、
上記駆動モータは送風ファンを反所定方向に回転駆動して、居室内空気を屋外へ排気することを特徴とする排気専用換気扇。
【請求項4】
上記送風ファンにおけるボス部とファン支え部の軸方向中心位置と、上記ベルマウスの基準位置との距離は、互いに同一であることを特徴とする請求項2および請求項3のいずれかに記載の吸気専用換気扇または排気専用換気扇。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−202579(P2008−202579A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42419(P2007−42419)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(505461072)東芝キヤリア株式会社 (477)
【Fターム(参考)】