説明

逆止弁付き浴室用開きドア

【課題】 浴室ドアに設けられたガラリ部を大きくすることなく、浴室ドアを閉塞するに当たって、重たいと感じさせず操作性の良い浴室用開きドアを提供する。
【解決手段】 浴室に該浴室外側へ向けて開放するように開閉自在に設置した浴室ドア本体1と、該浴室ドア本体1に設けられ浴室内外方向の通気を可能とするガラリ部2と、該ガラリ部2とは別に浴室ドア本体1に設けられ浴室内外方向を連通する開口部3とを設ける。そして、浴室内部Aから浴室外部Bへ空気を通流させると共に浴室外部Bから浴室内部Aへの空気の通流を阻止する逆止弁4を前記開口部3を閉塞するようにして設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室に設置する浴室ドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴室内外の通気を可能とするガラリ部が取付けられた浴室用開きドアが知られている(例えば特許文献1参照)。この浴室用開きドア(以下、浴室ドアという)のガラリ部は、浴室内外の通気や換気ができるようになっているため、浴室ドアを閉塞して浴室が密閉状態となったときに、浴室換気装置等を作動させたとしても、浴室内が負圧状態となるのを回避できるようになっている。
【特許文献1】特開平5−256058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、通常、浴室は湿気が外部に漏出するのを防ぐために気密性を高めた構造となっているので、例えば、浴室ドアを浴室外側(例えば脱衣室側)へ回動させて開放する浴室ドアにあっては、入浴者が浴室を使用するに当たって開放された浴室ドアを閉塞する際に、該浴室ドアが浴室外の空気を浴室内に押し込むこととなり、浴室ドアの閉塞により浴室内が密閉状態となる直前から急に浴室内部の気圧が上昇する。浴室ドアに設けられたガラリ部の浴室内外を連通する通気口は、浴室内外を連通してはいるものの、浴室からの水滴等が脱衣室に漏水するのを防ぐために、断面略S字形状といった複雑な経路としており、また、通気口も小さいため、この浴室ドアを閉塞し密閉状態となる直前の急な気圧の上昇には対応することができず、このとき浴室内は正圧状態となってしまう。そのため、この浴室が密閉される直前には、浴室ドアを閉める力に対する抵抗が生じ、その結果、入浴者は浴室ドアの閉める動作が重たいと感じることとなる。特に、浴室ドアを素早く閉める程この抵抗が大きくなり、より強い操作力が必要となるため、浴室ドアを閉める速度によって操作性に変化が生じてしまうという問題も有している。
【0004】
そこで、浴室ドアに設けられたガラリ部の通気口を大きくすることで、浴室内が正圧状態となるのを回避し、上記問題を解決することが考えられる。しかしながら、上記の問題を解決する程の大きなガラリ部を設けると、冬季等においては入浴者が寒く感じてしまうという問題が生じてしまう。更に、浴室内の湿気が浴室外にある脱衣室等に多く流出してしまう結果、脱衣室等にカビ等を発生させてしまうといった問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、浴室ドアに設けられたガラリ部を大きくすることなく、浴室ドアを閉塞するに当たって、重たいと感じさせず操作性の良い浴室用開きドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明にあっては、浴室に該浴室外側へ向けて開放するように開閉自在に設置した浴室ドア本体1と、該浴室ドア本体1に設けられ浴室内外方向の通気を可能とするガラリ部2と、該ガラリ部2とは別に浴室ドア本体1に設けられ浴室内外方向を連通する開口部3と、該開口部3を閉塞するようにして設けられ浴室内部Aから浴室外部Bへ空気を通流させると共に浴室外部Bから浴室内部Aへの空気の通流を阻止する逆止弁4と、を備えて成ることを特徴とするものである。
【0007】
このように構成したことで、ガラリ部2による通気に加えて開口部3が浴室内の空気を浴室外Bへ通流できるので、浴室用開きドア6を閉塞するに際して、浴室内が正圧状態となるのを回避することができる。要するに、入浴者が浴室用開きドア6を閉めるに当たって、重たいと感じるといったことがなく、また、浴室用開きドア6の閉める速度によって操作性が変化することもない。その上、逆止弁4が備えられた開口部3とは別にガラリ部2が設けてあるので、浴室用開きドア6が閉塞された状態で浴室換気装置等を作動させたとしても、浴室内が負圧状態となることがなく、閉塞された浴室用開きドア6を開放させる際においても、操作力が大きく必要となることがない。
【0008】
また、請求項2に係る発明にあっては、請求項1に係る発明において、前記開口部3に該開口部3を閉塞するようにして設けられ浴室内部Aから浴室外部Bへ空気を通流させると共に浴室外部Bから浴室内部Aへの空気の通流を阻止する複数の逆止弁4を備えて成ることを特徴とするものである。
【0009】
このように構成したことで、複数の逆止弁4が浴室内に生じる正圧の大きさに応じて必要な個数だけ開放させることができるので、開口部3の開口面積を変化させ、浴室用開きドア6を閉塞するに際して必要な力を、該浴室用開きドア6の閉塞する速度によらず常に一定にすることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、浴室用開きドアを開閉するに当たり、常に一定の力で操作することができるので、入浴者が該浴室用開きドアを閉めたつもりで閉まっていないといった事態をも回避することができる。即ち、浴室用開きドアの操作性を向上させることで、該浴室用開きドアの閉塞が不完全な状態のまま入浴することがなくなる結果、不完全な扉閉塞状態のままに浴槽や洗い場を使用することによって生じる、脱衣室等といった浴室外への蒸気や湯水の漏水・漏出を回避することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について添付図面に基づいて説明する。なお、図1中の矢印Aを浴室内側とし、矢印Bを浴室外側として説明する。
【0012】
本発明の一実施形態に係る浴室は、浴室換気装置(図示せず)が天井に設置された浴室と、浴槽(図示せず)及び洗い場(図示せず)と、浴室に固定され人が出入り可能な浴室開口部を形成する枠体5と、枠体5に設けられ浴室を閉塞自在とする浴室用開きドア6(以下、浴室ドアという)とで構成されており、浴室外には入浴者が脱衣する脱衣室が隣接して設置され、且つ浴室に設けられた枠体5が、該脱衣室と浴室との間に位置するように設置されている。
【0013】
浴室ドア6は、図2に示すように、浴室ドア本体1によって主体が構成され、該浴室ドア本体1は、浴室開口部を形成する枠体5の一方の縦枠5aに設けた枢支部11により回動自在に連結されており、該枢支部11の反対側の端部が脱衣室内に引き込まれる(即ち、浴室外方に向けて押し出して開放する)ようになっている。また、該枢支部11とは反対側の縁辺の前後面には、入浴者が把持して浴室ドアを開閉するための把持部12が配設されている。更に、浴室ドア本体1の下部には、浴室内外方向の通気をするためのガラリ部2が設置されており、該ガラリ部2の上方にガラリ部2とは別に浴室と脱衣室とを連通する開口部3が形成されている。添付図面に示すように、この開口部3には、浴室内部Aから脱衣室B(即ち浴室外部)へ空気を通流させると共に、脱衣室Bから浴室内部Aへの空気の通流を阻止する逆止弁4が、該開口部3を閉塞するように設置されている。
【0014】
この浴室内外方向を連通する開口部3は、正面視略長矩形状に形成されており、開口部3の下部縁辺の一部又は全部(本実施形態では全部)に上方に向けて突起部41が突設されている(図1参照)。図1に示すように、該突起部41は断面においては若干浴室寄りに形成されており、後述するが、逆止弁4の主体を構成する板状の弁蓋42が浴室側Aに回動するのを阻止し、且つこの弁蓋42が垂下できるような位置に突設されている。
【0015】
前記逆止弁4は、板状の弁蓋42と、弁蓋42が浴室側Aに回動するのを阻止し開口部3下縁辺に突設される前述の突起部41と、弁蓋42の上縁に設けられて該弁蓋42を回動自在に軸支する軸支部43と、から構成されており、通常は弁蓋42が自重により下方に垂下した状態となっている。この弁蓋42が垂下した状態では開口部3が略隙間無く閉塞されているが、弁蓋42と開口部3縁辺とは引っ掛り無くスムーズに開閉できるようになっている。
【0016】
また、この逆止弁4は開口部3に対して複数の逆止弁4が設置されている(本実施形態では3箇所)。即ち、各逆止弁4が独立して開閉動作をするようになっている。
【0017】
前記ガラリ部2は、浴室側Aに臨んで開口する浴室内開口21と、脱衣室側Bに臨んで開口する浴室外開口22と、浴室内開口21と浴室外開口22とを連通させた断面S字形状の扉内通路23とで形成されている。該扉内通路23は、浴室内開口21の下縁に連接し浴室内に向けて傾斜を有する浴室内側下片23aと、該浴室内開口21の上縁に設置され浴室外Bほど下方に位置するように傾斜を有する浴室内側上片23bと、浴室外開口22の下縁に連設されて浴室内Aほど下方に位置するように傾斜を有する浴室外側下片23cとを有している。この浴室内側下片23aの傾斜は、該浴室内側下片23aに付着した水滴を浴室内に流下させることができ、また、浴室内側上片23bの傾斜は、該浴室内側上片23bの上面及び下面に付着した水滴を浴室内側下片23aに流下させることができる。また、浴室外側下片23cの傾斜によっても、浴室外側下片23cに付着した水滴を浴室内に戻すことが可能である。このような構成を備えるガラリ部2は、通気口を確保しつつ脱衣室への漏水を防止できるようになっている。
【0018】
このように構成される浴室ドア6を閉じる際には、浴室ドア6に設けられた把持部12を入浴者が片手で把持し、浴室ドア6を引き込んで浴室開口部を閉塞する。このとき、浴室ドア6の回動により生じる空気の移動によって浴室内の気圧が上昇するが、この浴室内の気圧を上昇せしめる増加分の空気の一部はガラリ部2に設けられた浴室内開口21、扉内通路23及び浴室外開口22を通流して浴室外Bに流出する。このガラリ部2から流出できなかった増加分の空気は、ガラリ部2の上部に設けた開口部3を通流して外部に放出される。開口部3には、逆止弁4が設置されているが、該逆止弁4は浴室内Aから浴室外Bへの通流ができるようになっており、浴室内と浴室外との圧力差によって弁蓋42が浴室外B方向に回動し開放することができるようになっている。
【0019】
更に詳述すると、浴室ドア6の閉塞に伴い増加した空気のうち、ガラリ部2から流出しなかった分が逆止弁4の弁蓋42を押して外部に流出するのであるが、該逆止弁4は複数箇所に取付けられているため、その増加分の圧力に応じて作動することが可能となっている。
【0020】
本実施形態においては、一つの逆止弁4を構成する弁蓋42が小さく形成されているため、微弱な力によっても浴室外B方向に回動することができるようになっており、浴室ドア6をゆっくり閉じた場合に生じる僅かな増加分の空気であっても外部に放出することができるようになっている。一方、浴室ドア6を勢いよく閉じた場合には、浴室ドア6により浴室内に多くの空気が送り込まれて大きく昇圧するため、複数の逆止弁4の弁蓋42が同時に開放し、該増加分の空気はすべて外部に流出することができる。要するに、瞬間的な気圧の上昇にも対応することができると共に、昇圧の大小に係わらずに浴室内の気圧が一定に保たれる。その結果、浴室ドア6を勢いよく閉じた場合やゆっくり閉じた場合のいずれの場合であっても、浴室ドア6の閉塞する速度に係わらず常に一定の力で浴室ドア6を操作できる上に、閉塞時の浴室が密閉される瞬間に生じる抵抗を発生させずに浴室ドア6を閉じることができる。
【0021】
浴室ドア6が閉塞されている状態において浴室内の浴室換気装置を作動した場合、逆止弁4は浴室外Bから浴室内Aへの空気の流れを阻止するが、浴室ドア6の下部に設けられたガラリ部2によって、浴室外Bから浴室内Aに空気を流入させることが可能なので、浴室内の気圧を一定に保つことが可能となる。そのため、浴室換気装置の換気効率を低下させることがない上に、浴室内が負圧状態とはならないため、閉塞された浴室ドア6を開けるに当たっても、いつも一定の操作力で開放させることができる。
【0022】
また、通常の状態では逆止弁4は浴室ドア6の開口部3を閉塞しているため、入浴者が洗い場を使用しているとき等に、脱衣室からの冷たい外気が大量に流入することが無い。即ち、浴室内の温度が急に下降したり、また、冷たい外気が入浴者の身体に直接当たったりすることがないため、入浴者が不快に感じることを回避することができる。また、浴室を使用することによって飛散する水滴も、該開口部3を通して浴室内から漏水することも無い。
【0023】
更に、上記の構成の浴室ドア6であれば、例えば高層マンションの高層階において、浴室に設置された窓が開放された状態で突風が吹き込んで浴室内が正圧状態となって生ずる、天井点検口がずれて落下する等の危険も回避することができるという利点をも有する。
【0024】
以上、浴室ドア6の一例として浴室ドア本体1の一側部が枢支され、且つ他端部が浴室外方に向けて弧状に移動する浴室ドア6に基づいて本発明を説明したが、浴室ドア6は浴室内に引き込むようにして開放する浴室ドア6であっても本発明を適用することができる。また、逆止弁4の構成や、ガラリ部2の構成は本実施形態のものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態の要部側断面図である。
【図2】同上の脱衣室側から見た正面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 浴室ドア本体
2 ガラリ部
21 浴室内開口
22 浴室外開口
23 扉内通路
23a 浴室内側下片
23b 浴室内側上片
23c 浴室外側下片
3 開口部
4 逆止弁
41 突起部
42 弁蓋
43 軸支部
6 浴室用開きドア(浴室ドア)
A 浴室内側
B 浴室外側(脱衣室側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室に該浴室外側へ向けて開放するように開閉自在に設置した浴室ドア本体と、該浴室ドア本体に設けられ浴室内外方向の通気を可能とするガラリ部と、該ガラリ部とは別に浴室ドア本体に設けられ浴室内外方向を連通する開口部と、該開口部を閉塞するようにして設けられ浴室内部から浴室外部へ空気を通流させると共に浴室外部から浴室内部への空気の通流を阻止する逆止弁と、を備えて成ることを特徴とする逆止弁付き浴室用開きドア。
【請求項2】
前記開口部に該開口部を閉塞するようにして設けられ浴室内部から浴室外部へ空気を通流させると共に浴室外部から浴室内部への空気の通流を阻止する複数の逆止弁を備えて成ることを特徴とする請求項1記載の逆止弁付き浴室用開きドア。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−31525(P2010−31525A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194136(P2008−194136)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(505154956)パナソニック電工バス&ライフ株式会社 (306)
【Fターム(参考)】