説明

逆止弁

【課題】 ゴミが絡みづらく、スプリング機能が阻害されず逆止機能低下の少ない逆止弁を提供する。
【解決手段】流路(水の流れ)は入水口20及び出水口21間に形成される。弁本体3内に配置され、流路を遮断する止水コマ17を有する。止水コマ17は流路から隔離設置されたスプリング13で保持される摺動するシャフト18を有しシート14の外に配置されている。流路内に広い隙間を確保しゴミが絡みずらくし、スプリング機能が阻害されないで逆止機能低下が少ない。蓋11は弁機能解除蓋4を有しており、逆止機能を解除してゴミ等の付着による逆止機能低下を防げる。弁機能全体をカートリッジ化することにより新旧交換を容易にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道システムに使用される逆止弁の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水道システムにおいて、例えば、公共水道管網で、本管バルブ操作や本管の破裂、大きな圧力変動(増設ポンプの停止や消火栓からの緊急取水などで配管系の一部に極端な水需要が生じた場合など)によって圧力低下が生じた時に、水道水が逆流することがある。この逆流によって、一度排出された水道水を水道管内に吸引してしまうことがある。逆止弁は、この様な現象を防止するために水道水の流路に設置されるものである。
従来、流体の逆流を防止する逆止弁は、各種使用されているが、多くは、水道配管の途中に挿入して、適宜位置に取付けるように構成されている。逆止弁は、例えば、弁体と弁体を付勢するスプリングを備えたハウジングから構成されており、スプリングが流路中に配置されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭59−37375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
水道システムにおいて、配管施工直後では、配管内に種々なゴミが存在しており、配管洗浄時などでは逆止弁にゴミ等が付着し、種々な障害を起こしていた。このようなゴミは、流路内に配置された逆止弁内部に密集して設置された止水コマ及びスプリング等とそれらを保持するシートとの狭い隙間に絡み付いて障害を大きくして逆止機能低下を招いていた。
また、逆止弁は、経年による水垢の付着などにより逆止機能が劣化する。従って、時折、部品を交換しその逆止機能の劣化を防ぐ必要がある。従来は、弁本体を水道配管から取り外して弁本体ごと交換をしなければならず、その作業は、非常に困難であった。
本発明は、このような事情によりなされたものであり、第1の発明は、止水コマをシートの外側に配置し、広い隙間を確保し、ゴミが絡みづらくし、更に、スプリングを流路から隔離設置し、スプリング機能が阻害されないで逆止機能低下の少ない逆止弁を提供する。第2の発明は、配管洗浄及び初期通水等においてゴミ等の付着による逆止機能低下を防ぐと共に配管洗浄及び初期通水等(二次側給水による耐圧検査を含む)の作業性を高める為に、弁機能を解除する逆止弁を提供する。第3の発明は、弁機能全体を容易に交換可能とすることにより、逆止機能の維持を簡単にする逆止弁を提供する。
【0004】
本発明の逆止弁は、一次側に設けられた入水口及び二次側に設けられた出水口を有し、前記入水口及び出水口間に流路を有し、且つ別開口部を有する弁本体と、前記弁本体内に配置され、前記流路を遮断する止水コマと、前記弁本体内に配置され、前記止水コマを摺動するシャフトと、前記別開口部より挿入配置され、前記止水コマのシート部が接触するシート面を有し、前記シャフトの摺動をガイドするシートと、前記シャフトの前記別開口部側に設けられたスプリングとを具備し、前記止水コマは通水時において、動水圧により前記止水コマの前記シート部が前記シートの前記シート面から離れて通水が可能となり、一次側に負圧等の逆流要因が生じた際には、前記スプリングによって前記止水コマが前記シート面側に引き寄せられて前記シートの前記シート面に前記止水コマの前記シート部が当接し、二次側から一次側への逆流を防止し、前記止水コマは前記シート中心軸長手方向の外側に配置され、前記スプリングは前記流路から隔離設置されていることを特徴としている(請求項1)。
【0005】
また、本発明の逆止弁は、請求項1に記載の逆止弁において、前記弁本体は、前記別開口部及び当該別開口部を封止する蓋を有し、前記蓋は、蓋中心軸の長手方向一端に蓋開口部を有し、その蓋開口部を封止する弁機能解除蓋を備えており、当該弁機能解除蓋は、一端に開口を有する大径部及び当該大径部の他端に形成された小径部から構成され、前記大径部は前記蓋の前記蓋開口部を嵌合もしくは螺子止し、前記小径部を前記蓋の前記蓋開口部内に嵌合もしくは螺子止した時に、前記小径部が前記シャフトを押し下げて弁機能を解除するように構成されていることを特徴としている(請求項2)。
また、本発明の逆止弁は、請求項1又は請求項2に記載の逆止弁において、前記シート、前記止水コマ、前記シャフト及び当該シャフトを保持する前記スプリングにより一体のカートリッジを構成し、当該カートリッジは前記弁本体の前記別開口部から当該弁本体内に挿入され、配置されていることを特徴としている(請求項3)。
【発明の効果】
【0006】
第1の発明は、止水コマをシートの外側に配置して広い隙間を確保しているので、ゴミが絡みずらく、更に、スプリングを流路から隔離設置した結果、スプリング機能が阻害されないで逆止機能低下の少ない逆止弁が得られる。第2の発明は、配管施工直後において、逆止機能を解除する事により、配管洗浄及び初期通水等におけるゴミ等の付着による逆止機能劣化を防ぐと共に、配管洗浄及び初期通水等(二次側給水による耐圧検査を含む)の作業性を高める。第3の発明は、弁機能全体を容易に交換することにより逆止機能の維持を簡単にする逆止弁を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、実施例を参照して発明の実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、図1乃至図3を参照して実施例1を説明する。
図1は、この実施例の逆止弁の正面断面図、図2は、この実施例の逆止弁の通水状態を説明する正面断面図、図3は、この実施例の逆止弁の逆止状態を説明する正面断面図である。
【0009】
逆止弁25は、一次側に設けられた入水口20及び二次側に設けられた出水口21を有し、入水口20及び出水口21間に矢印(図2参照)に示す流路(水の流れ)を有する弁本体3を有している。弁本体3は、入水口20及び出水口21の他に両口間上部に第3の口である別開口部23(図6参照)を有している。弁本体3内には、流路を遮断する止水コマ17と、止水コマ17を摺動するシャフト18と、弁本体3の別開口部23より挿入配置され、止水コマ17が接触するシート面14sを有し、シャフト18の摺動をガイドするシート14と、シャフト18の別開口部側に設けられたスプリング13とが配置されている。シート14に止水コマ17が接して止水状態になる場合は、シート14の先端凸部に止水コマ17の上面に取付けられたコマパッキン16が当接される。シート14先端凸部の接触部分は、シート面14sといい、コマパッキン16の接触部分は、シート部という。
【0010】
止水コマ17は、通水時において、動水圧により止水コマ17に設けられたコマパッキン16のシート部がシート14先端のシート面14sから離れる。また、一次側に負圧等の逆流要因が生じた際には、スプリング13の保持力によって止水コマ17がシート面14s側に引き寄せられて、シート14先端のシート面14sに止水コマ17に設けられたコマパッキン16のシート部が当接して二次側から一次側への逆流を防止する。スプリングは、別開口部23側に設置されているので、入水口20及び出水口21間に形成される流路からは隔離設置されている。また、止水コマ17は、シート14中心軸長手方向の外側に配置されている。
【0011】
シート14は、別開口部23より弁本体3に挿入配置され、流路シリンダ内面19と接する部分は、Oリングパッキン15により止水されている。シート14の別開口部23側と止水コマ17側との間は、3本の支持体により構成されている。この逆止弁25は、弁機能解除蓋4を備えた蓋11を有している。弁本体3は、入水口20と出水口21のほぼ中間に別開口部23を有し、この別開口部23は、蓋11により封止されている。この別開口部23と蓋11との間にはOリングパッキン12が介在し両者を密着させている。
【0012】
次に、図2及び図3を参照して実施例1の逆止弁の動作について説明する。
図1に示す状態の逆止弁を水道管等に接続する。入水口20から通水すると、流路に沿って水は、止水コマ17を押し、流路に沿って出水口21から出水していく。このとき、止水コマ17は、スプリング13の保持力に抗して動水圧によりシート14から離れる(図2)。
次に、逆止機能が作動した状態を説明する(図3)。一次側に負圧等の逆流要因が生じた際には、スプリング13の保持力によって止水コマ17がシート面14s側に引き寄せられて、シート14先端のシート面14sに止水コマ17に設けられたコマパッキン16のシート部が当接して二次側から一次側への逆流を防止する。
この実施例は、止水コマをシートの外側に配置して広い隙間を確保しているので、ゴミが絡みづらく、更に、スプリングを流路から隔離設置した結果、スプリング機能が阻害されないで逆止機能低下の少ない逆止弁が得られる。
【実施例2】
【0013】
次に、図4及び図5を参照して実施例2を説明する。
図4は、この実施例の逆止弁の逆止機能の解除を説明する正面断面図、図5は、この実施例の逆止機能の解除方法を説明する斜視図である。
図5(a)に示すように、弁機能解除蓋4は、一端に開口を有する大径部42及び大径部42の他端に形成された小径部41から構成されている。大径部42は、嵌合もしくは螺子止(この実施例では螺子止である)し、蓋11の開口部を封止することができる。小径部41は、蓋11の開口部に挿入(螺子込み・螺子止)することによって、蓋11を封止することができる。
【0014】
例えば、配管施工直後に逆止機能を解除してから配管洗浄及び初期通水等(二次側給水による耐圧検査を含む)を行う。その際に、逆止機能を解除することにより、ゴミ等の付着による逆止機能低下を防げると共に、配管洗浄及び初期通水等(二次側給水による耐圧検査を含む)の作業性を高めることができる。図1に示すように、弁機能解除蓋4の大径部42で蓋11を封止した場合、この逆止弁は、逆止機能を有しており、図4に示すように弁機能解除蓋4の小径部41により蓋11を封止した場合は、逆止機能が解除される。図5(a)に示すように、蓋11から弁機能解除蓋4を外してから、弁機能解除蓋4の小径部41を蓋11の開口部に挿入(螺子込み・螺子止)する。
【0015】
この様に、弁機能解除蓋4の小径部41を蓋11の開口部に挿入すると、内部に挿入された小径部41に押されて、弁機能解除ステム7は押される。押された弁機能解除ステム7は、シャフト18を押して止水コマ17をシート14から離して流路を開く。
この時、弁機構解除蓋4の小径部41を蓋11の開口部に挿入する際に、螺子込み後、螺子止すると逆止機能の解除状態を保持でき、二次側給水による耐圧検査など時間を要する初期通水等の作業性を高められる。
この実施例では、配管施工直後に逆止機能を解除する事により、配管洗浄及び初期通水等(二次側給水による耐圧検査を含む)において、ゴミ等の付着による逆止機能低下を防げると共に、配管洗浄及び初期通水等(二次側給水による耐圧検査を含む)の作業性が高められる。
【実施例3】
【0016】
次に、図6を参照して実施例3を説明する。
図6は、この実施例のカートリッジの交換方法を説明する斜視図である。この実施例ではシート14、止水コマ17、シャフト18及びシャフト18を保持するスプリング13を主たる部品としてカートリッジを構成する。
このカートリッジの新旧を取り替えるには、まず、蓋11の六角部22を工具で挟み、蓋11を緩める。弁本体3の別開口部23から蓋11を取り外すとサポートリング8を介して蓋11と一体となった古いカートリッジを弁本体3から抜き出せる。抜き出した後に、サポートリング8を外して、蓋11から古いカートリッジを取り外す(図6(a))。その後、新しいカートリッジをサポートリング8を用いて蓋11に取付けて、蓋11と新しいカートリッジを一体化する。蓋11と一体化した新しいカートリッジを弁本体3の別開口部23へ挿入し、六角部22を工具で挟み、蓋11を締めて取付ける(図6(b))。
この実施例では弁機能全体をカートリッジ化して交換可能とすることにより、逆止機能の維持を簡単にすることが可能になる。
また、蓋11とカートリッジを一体化しない別実施例(図示しない。)でのカートリッジの新旧を取り替えるには、まず、蓋11の六角部22を工具で挟み、蓋11を緩める。弁本体3の別開口部23から蓋11を取り外し、サポートリング8を取り外し、最後に古いカートリッジを取り外す。その後、新しいカートリッジ、サポートリング8及び蓋11をこの順に弁本体3に別開口部23から挿入し、六角部22を工具で挟み、蓋11を締めて取付ける。
【0017】
次に、図7を参照しながら本発明の逆止弁の通水・逆流防止動作を説明する。図7は、本発明の逆止弁を配設した水道システムの配置図である。
水道システムにおいて、逆止弁25より水道本管P側(一次側)には、メータMと止水栓24が配設されている。すなわち、地中には一次側から順に止水栓24、メータM及び逆止弁25が配設されている。通水時、前記逆止弁25より一次側の水圧(水流)により、図1に示す止水コマ17は、押されて通水状態となる。そして一次側の水道水は、前記逆止弁25より蛇口26側(ニ次側)に供給される。水道本管P側(一次側)に負圧等の逆流要因が生じた際には、止水コマ17がスプリング13によりシート面14s側に引き寄せられて、止水コマ17がシート14先端のシート面14sに当接して二次側から一次側への逆流を防止する(図3参照)。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の逆止弁の正面断面図。
【図2】実施例1の逆止弁の通水状態を説明する正面断面図。
【図3】実施例1の逆止弁の逆止状態を説明する正面断面図。
【図4】実施例2の逆止弁の逆止機能の解除を説明する正面断面図。
【図5】実施例2の逆止機能の解除方法を説明する斜視図。
【図6】実施例3のカートリッジの交換方法を説明する斜視図。
【図7】本発明の逆止弁を配設した水道システムの配置図。
【符号の説明】
【0019】
3・・・弁本体 4・・・弁機能解除蓋 6、13・・・スプリング
7・・・弁機能解除ステム 8・・・サポートリング
9、10、12、15・・・Oリングパッキン 11・・・蓋
14・・・シート 16・・・コマパッキン
17・・・止水コマ 18・・・シャフト 19・・・シリンダ内面
20・・・入水口 21・・・出水口 22・・・蓋の六角部
23・・・別開口部 24・・・止水栓
25・・・逆止弁 26・・・蛇口 41・・・弁機能解除蓋の小径部
42・・・弁機能解除蓋の大径部 14s・・・シート面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側に設けられた入水口及び二次側に設けられた出水口を有し、前記入水口及び出水口間に流路を有し、且つ別開口部を有する弁本体と、前記弁本体内に配置され、前記流路を遮断する止水コマと、前記弁本体内に配置され、前記止水コマを摺動するシャフトと、前記別開口部より挿入配置され、前記止水コマのシート部が接触するシート面を有し、前記シャフトの摺動をガイドするシートと、前記シャフトの前記別開口部側に設けられたスプリングとを具備し、前記止水コマは通水時において、動水圧により前記止水コマの前記シート部が前記シートの前記シート面から離れて通水が可能となり、一次側に負圧等の逆流要因が生じた際には、前記スプリングによって前記止水コマが前記シート面側に引き寄せられて前記シートの前記シート面に前記止水コマの前記シート部が当接し、二次側から一次側への逆流を防止し、前記止水コマは前記シート中心軸長手方向の外側に配置され、前記スプリングは前記流路から隔離設置されていることを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
前記弁本体は、前記別開口部及び当該別開口部を封止する蓋を有し、前記蓋は、蓋中心軸の長手方向一端に蓋開口部を有し、その蓋開口部を封止する弁機能解除蓋を備えており、当該弁機能解除蓋は、一端に開口を有する大径部及び当該大径部の他端に形成された小径部から構成され、前記大径部は前記蓋の前記蓋開口部を嵌合もしくは螺子止し、前記小径部を前記蓋の前記蓋開口部内に嵌合もしくは螺子止した時に、前記小径部が前記シャフトを押し下げて弁機能を解除するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
前記シート、前記止水コマ、前記シャフト及び当該シャフトを保持する前記スプリングにより一体のカートリッジを構成し、当該カートリッジは前記弁本体の前記別開口部から当該弁本体内に挿入され、配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−95829(P2008−95829A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278376(P2006−278376)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000150095)株式会社竹村製作所 (16)
【Fターム(参考)】