説明

透光性導電膜、その製造方法及びその透光性導電膜を用いた透光性電磁波遮蔽フィルター

【課題】高い導電性と光透過性を有し、かつ、干渉ムラとモアレを低減し、さらには耐候性、カール品質、密着性が良好な透光性導電膜、その製造方法及びその透光性導電膜を用いた透光性電磁波遮蔽フィルターを提供することにある。
【解決手段】透明支持体上に銀塩含有層を有する感光材料を、露光、現像処理することにより金属銀部及び透光性部を形成し、さらに前記金属銀部をメッキ処理することにより導電性を増幅して製造する透光性導電膜の製造方法において、銀塩を含有しバインダー主成分がゼラチンである水系塗布液を透明支持体上に塗設し、セットせずに乾燥固定化して前記銀塩含有層を形成することを特徴とする透光性導電膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路、アンテナ回路、電磁波シールド材、タッチパネル等の用途に用いることができる、透光性導電膜、その製造方法及びその透光性導電膜を用いた透光性電磁波遮蔽フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会が急速に発達し、それに伴って情報関連機器に関する技術、特に情報を表示しするためのディスプレイ装置は急速に進歩し普及してきた。情報関連機器におけるディスプレイ装置は、奥行きを必要とするCRT方式から、奥行きをあまり必要としない液晶方式、プラズマ方式に代表される、いわゆる、フラットパネルディスプレイへと進歩し、テレビ用、パーソナルコンピューター用としては、今や製造される大半を占めるまでに普及している。その他にもフラットパネルディスプレイ装置の薄さを活かして駅や空港等の案内表示用、その他の各種情報関連機器にも用いられている。このような状況の中で、プラズマディスプレイの、自発光方式のためコントラストの視野角依存性がない点、動きの早い映像を映す際の応答遅れが小さい点が注目されている。
【0003】
一方で、情報化社会の発展に伴い、ディスプレイ装置のみならず、その他の電子機器の使用増大のために電磁波障害(EMI)を低減する必要性が高まっている。機器から放出される電磁波は、電子、電気機器の誤動作、障害の原因になるほか、人体に対しても害を与える可能性が指摘されている。このため、電子機器では、電磁波放出の強さを、FCC(米国)、VCCI(日本)等の規格または規格内に抑えることが要求されている。
【0004】
特にプラズマディスプレイパネル(PDP)は、希ガスをプラズマ状態にして紫外線を放射させ、この光線で蛍光体を発光させる。原理的に電磁波を発生するため、例えば、周辺の電子機器への影響や人体への影響が考えられている。特に、人体の健康に及ぼす影響は無視することができないものになっており、人体に照射される電磁界の強度の低減が求められている。このような要求に対して、導電体の電磁波遮蔽性を利用し、なおかつ映像情報の視認性を確保する目的で様々な透光性導電材料が開発されている。例えば、特開平9−53030号、同11−126024号、特開2000−294980号、同2000−357414号、同2000−329934号、同2001−38843号、同2001−47549号、同2001−51610号、同2001−57110号、同2001−60416号公報等に開示されている。
【0005】
これらの透明導電性材料の製造方法としては、銀、銅、ニッケル、インジウム等の導電性金属をスパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、真空蒸着法、湿式塗工法によって透明樹脂フィルム上に金属薄膜を形成させる方法が一般的に用いられているが、これらの従来方法では、工程が複雑になるため、高コストで生産性が悪いという問題があった。
【0006】
また、透光性導電膜に求められる別の性能として、導電性と光透過率がある。導電膜自体の透光性と電磁波遮蔽能、すなわち導電性を高いレベルで両立が必要な場合、微細な金属ラインを格子状に配置した方式(いわゆる導電性メッシュ)を採用している場合が多い。この方式では導電性を高くするにはある程度の幅と厚みを持った金属薄膜微細パターンを作る必要があるが、同時に金属パターンは光を遮断するためパターンの線幅を太くすると透過率が低下する。この両者を満足させるには十分な導電性を持った微細な金属パターンを製造する必要があるため、透明基材に金属薄膜を金属箔の貼合もしくは蒸着により形成した後に、半導体製造等の微細加工に用いられるフォトリソグラフィ法により金属薄膜を微細パターンに加工する手法がとられており、線幅は細く加工することが可能であるが、工程が複雑であり、高コストで生産性が悪く、さらにメッシュ格子の交点部分が太ってしまいその分、透過率をロスするという問題点があった。
【0007】
このような状況を鑑み、近年、透光性導電膜の前駆体として銀塩乳剤層を含有する銀塩写真感光材料を使用する方法が提案されている。例えば特許文献1、2では銀塩写真感光材料を像露光、現像処理した後、金属めっき処理を施すことで透光性導電膜を製造する方法の提案がなされている。また、特許文献3では、感度が異なり、露光時の像形成には実質寄与しない銀塩粒子を含有させることで、メッキ処理を行わなくてもある程度の導電性が得られる方法が提案されている。これらの方法はメッシュの微細化や交点太りの抑制には非常に有効な方法であるが、メッキ工程の効率を上げるため、銀塩乳剤層中の銀/ゼラチンの比を高くし、なおかつ銀の付量を1〜5g/m2とする必要があった。これらの方法で製造された透光性導電膜は、バインダー成分が少ないこと、導電性金属部を付け足していく方式で製造されるため、従来のエッヂング方式と比較すると金属パターンと基材との密着性が悪いという欠点を含んでいた。
【0008】
また、同じく銀塩写真感光材料を使う方法として銀塩拡散転写法を用いる方法も提案されており、例えば特許文献4等がある。この方法は、メッキ工程に入る時にはゼラチンバインダーが取り除かれるため、メッキ液と現像銀との接触がし易く、メッキにも有利な手法でもある。しかし、この方式も非常に薄い触媒核層の上に現像銀、メッキ金属が付着するため、基材と金属パターンの密着性が悪く、取り扱いで不都合を生じる場合もあった。
【0009】
また、前記特許文献1〜4内で銀塩含有層の塗布方法についての詳細な記載はないが、通常の銀塩写真感光材料における銀塩含有層の塗設方法は、重い銀塩粒子を含有する銀塩含有層を乾燥終了まで均一な分散状態で保持するため、塗布直後に一旦膜面を冷却し、ゼラチンをセットさせ、低温の初期乾燥を行う方法で製造されている。セットとは、膜面を冷却することによりゼラチン水溶液をゲル化させることにより流動性を失くし、高い含水状態でも、銀塩粒子、その他の分散状態を保持したまま支持体上に塗膜を形成することを言う。
【0010】
一方で、ゼラチンは、水中で約40℃以上の温度で熱することでゾル状態となり、このゾルを約10℃以下の温度に冷却することでゲル状態となり、これらの相状態が温度によって可逆変化することがよく知られている。ゾル状態とゲル状態間では、ゼラチン分子の状態は異なっており、一般的にゾル状態ではランダムコイル状であるが、冷却すると分子の熱運動エネルギーが低下することにより、らせん構造をとり、ネットワークが形成される結果、最終的に流動性を失い、ゲル化すると言われている。
【0011】
従来の銀塩写真感光材料はこのゲル化する性質を利用して、セット系塗布を行い、重い銀塩粒子を含有する銀塩含有層を乾燥終了まで均一な分散状態で保持していた。
【特許文献1】国際公開第01/51276号パンフレット
【特許文献2】特開2004−221564号公報
【特許文献3】特開2007−47318号広報
【特許文献4】国際公開第04/007810号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、高い導電性と光透過性を有し、かつ、干渉ムラとモアレを低減し、さらには耐候性、カール品質、密着性が良好な透光性導電膜、その製造方法及びその透光性導電膜を用いた透光性電磁波遮蔽フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0014】
1.透明支持体上に銀塩含有層を有する感光材料を、露光、現像処理することにより金属銀部及び透光性部を形成し、さらに前記金属銀部をメッキ処理することにより導電性を増幅して製造する透光性導電膜の製造方法において、銀塩を含有しバインダー主成分がゼラチンである水系塗布液を透明支持体上に塗設し、セットせずに乾燥固定化して前記銀塩含有層を形成することを特徴とする透光性導電膜の製造方法。
【0015】
2.塗設方法が、押出し塗布であることを特徴とする前記1に記載の透光性導電膜の製造方法。
【0016】
3.前記水系塗布液の静的表面張力が、15〜30mN/mであることを特徴とする前記1または2に記載の透光性導電膜の製造方法。
【0017】
4.前記1または2に記載の透光性導電膜の製造方法で製造された透光性導電膜の透光性部(バインダーのみの部分)の乾燥膜厚が、0.05〜0.2μmであることを特徴とする透光性導電膜。
【0018】
5.前記4に記載の透光性導電膜を用いることを特徴とする透光性電磁波遮蔽フィルター。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、高い導電性と光透過性を有し、かつ、干渉ムラとモアレを低減し、さらには耐候性、カール品質、密着性が良好な透光性導電膜、その製造方法及びその透光性導電膜を用いた透光性電磁波遮蔽フィルターを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、高い導電性と光透過性を有し、かつ、モアレを低減した透明導電膜を得るには、これに用いられる感光材料の乳剤層(現像処理後、透明導電膜となる)の膜厚を極めて薄くすることで、非メッシュ部(透光性部)の光透過性を向上し、メッシュ部の高さが低くモアレを低減できることが分かった。導電性に関しては、現像銀の電気抵抗値を低減する必要があり、乳剤層からゼラチン等のバインダーを減らし、銀塩粒子の密度を上げることが有効である。しかしながら、この方法では形成されるメッシュラインの保持性は劣化し、結果として密着性が悪くなる。本発明者らは、さらに検討を行った結果、銀塩含有層をバインダー主成分がゼラチンである水系塗布液で塗設した銀塩含有塗布液をセットせずに乾燥固定化することで、密着性と導電性を両立できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
〔銀塩含有層の塗設〕
本発明に係る銀塩含有層は、透明支持体(以下、単に支持体ともいう)への塗布によって設けることが好ましい。特にロール状に巻かれたプラスチック支持体を連続的に繰り出し、そのウエッブに連続的に塗布、乾燥し、巻き取ることで連続的に銀塩含有層を有する感光材料(透光性導電膜の前駆体)を製造することができ、いわゆるロール・トゥー・ロールで製造することが、製造コストを抑えられることから好ましい。
【0023】
本発明に係る銀塩含有層は、銀塩を含有しゼラチンを主バインダーとする水系塗布液を支持体上に塗設した後、従来の銀塩写真感光材料で用いられる、セットすることなく、支持体上に乾燥、固定化して設けられることが特徴である。
【0024】
ここで言うセットとは、ゼラチン塗膜を冷却することでゲル化させ、銀塩含有層がある程度の含水状態でも支持体上から流れることなく保持できる状態を指す。従来の銀塩写真感光材料では、重い銀塩粒子を多く含んだ厚い乳剤層を均一分散状態で保持、乾燥、固定化するために好ましく用いられてきた技術である。一般的には、塗布直後に塗膜を23℃(室温)以下、さらには生産性を考慮して素早くセットさせるため、好ましくは10℃以下の温度に冷却することで実施されている。しかし、ゼラチン水溶液のゾル−ゲル変化は温度に対して可逆な変化のため、塗布後にセットした塗膜は40℃以上に熱するとゲラチン塗膜がゾル化してしまう。そのため40℃以下の低温で初期の乾燥を行う必要があるが本発明ではその必要はない。
【0025】
本発明では、従来の銀塩写真感光材料とは異なり、セット過程を経ないで乾燥することより、従来方法では課題であった、密着性を大きく改善するに至った。この現象の詳細は、定かではないが、セット状態、すなわちゼラチンがヘリックス構造をとって分子間で相互作用を強く持つ状態で、支持体上に固定化されるより、ゾル状態でランダムコイル状に分子鎖が広がった状態で固定化される方が、支持体との架橋反応が進みやすいことや現像処理や各種処理前後に置いて、分散物の保持性が高くなると考えている。
【0026】
〔銀塩含有層の塗設〕
銀塩含有層の塗設方法については、セット工程を経ずに乾燥するため、また後の導電性増幅処理に必要最低限の銀塩粒子を含有させればよいため、ウエット膜厚で50μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは25μm以下で、なおかつ、前述したように銀換算付量で0.4〜1g/m2の塗膜を均一に塗設できればよいが、このようなウエット膜厚の塗設は押出し塗布で行うことが好ましい。また、塗布ビードを安定化するために、塗布上流側にチャンバーを設けて、塗布の上流側よりも減圧する減圧押出し塗布が、塗膜形成しやすく最も好ましい。
【0027】
〔乾燥条件〕
塗膜の乾燥については、塗膜面が流動しやすいため、特に乾燥初期における膜面近傍での風量をゼロに近くすることで、いわゆる「吹かれムラ」を失くすことが重要である。さらに乾燥を進行さるため、初期の乾燥温度は主溶媒の沸点を超えない範囲(沸点−10℃程度)で高温化することが好ましい。また、乾燥の最終段階では、室温程度の温度(室温+20℃程度)に冷却することで、膜面の急激な冷却によるひび割れを防ぐことができる。このような乾燥条件の取り方は、セット系塗布以外の有機溶剤を主な溶媒とした系の塗布や、水系でも乾燥膜厚が1μm以下の薄膜塗布では一般的に取られている条件であり、膜面の仕上がりを見ながら乾燥条件を調整することで達成できる。
【0028】
〔水系塗布液〕
前述のような塗布を行うに際して、水系塗布液(以下、単に塗布液ともいう)の静的表面張力は、15〜30mN/mにすることが好ましく、15〜25mN/mにすることがさらに好ましく、15〜20mN/mにすることが最も好ましい。静的表面張力が30mN/mより大きいと塗布時のムラが生じやすく、現像銀の分布が不均一になることで、導電性増幅処理のムラの原因になる。また、静的表面張力を15mN/m未満にするには、界面活性剤を多量に添加する必要が生じ、析出、導電性阻害等の悪影響を及ぼすことになる。悪影響を及ぼさない範囲の添加量でかつ所望の静的表面張力を得るには、不飽和炭素結合を有する含フッ素界面活性剤を使用することが好ましい。このような効果が発現されるのは、不飽和炭素結合を有する含フッ素界面活性剤を塗布液に添加すると塗布膜(塗布液膜)のレベリング効果が大きく、均一な塗布膜が得られるものと考えている。
【0029】
不飽和炭素結合を有する含フッ素界面活性剤とは、親水性部はイオン性基(例えば、アニオン、カチオン、ベタイン)、非イオン性基でも構わないが、中でもアニオン性基が塗布液との親和性の点で好ましい。不飽和炭素結合を有する含フッ素界面活性剤を用いることで、乳剤層塗布液の表面張力を15〜30mN/mに設定することが可能となり、薄膜で均一塗布が実現した。
【0030】
本発明に用いられる不飽和炭素結合を有する含フッ素界面活性剤の具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0031】
【化1】

【0032】
これらの化合物は(株)ネオス社より市販されている。
【0033】
本発明に係る乳剤層中に含有される含フッ素界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、乳剤層塗布液の表面張力を15〜30mN/mにする量が好ましい。
【0034】
また、塗布液の粘度は2〜15mPa・sが好ましく、2〜10mPa・sがさらに好ましく、2〜5mPa・sが最も好ましい。粘度が15mPa・sより高いと、本発明のような薄いウエット膜厚の塗布の場合、均一な塗膜を形成しにくく筋が多発してしまう。粘度が2mPa・sより低いとビードの形成が難しくなり、塗布先頭の液付の劣化や、ビードの揺れによる塗布ムラが発生しやすくなる。
【0035】
〔乾燥膜厚〕
本発明においては、前述のように、膜厚を薄くすることで、非メッシュ部(透光性部)の光透過性を向上し、メッシュ部の高さが低くモアレを低減するため、銀塩の塗布銀量は1g/m2以下、かつメッシュ状に金属銀部を形成することにより、得られた透明導電膜の、非メッシュ部の乳剤層の厚みは0.2μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以下である。非メッシュ部の乳剤層の厚みを0.05μm以下にしようとすると、必要な現像銀量が確保できず導電性増幅が困難になってくるか、導電性増幅に必要な現像銀量を確保しようとすると銀塩粒子の保持性が著しく劣化し、処理中の脱落等悪影響が出てくる。従って、非メッシュ部の乳剤層の厚みを0.05〜0.2μmにすることで悪影響がなく、かつ透光性の向上を達成することができる。
【0036】
〔支持体〕
本発明に用いられる支持体は、プラスチックフィルム、プラスチック板、ガラス等適宜最適な材料を選択することができる。可撓性を有し、ロールで取り扱うことができる等、取り扱い性の面ではプラスチックフィルムが優れており、特に好ましく用いられる。プラスチックフィルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
【0037】
透明性、耐熱性、取り扱いやすさ及び価格の点から、上記プラスチックフィルムはPET、PEN、TACであることが好ましい。
【0038】
ディスプレイ用の電磁波遮蔽材では透明性が要求されるため、支持体の透明性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフィルムまたはプラスチック板の全可視光透過率は好ましくは70〜100%であり、より好ましくは80〜100%であり、さらに好ましくは90〜100%である。また、本発明では、色気調節剤として前記プラスチックフィルム及びプラスチック板を本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0039】
本発明の透光性導電膜は、支持体と銀塩含有層との間の易接着層を設けてもよい。
【0040】
この易接着層の膜厚については特に制限はないが、導電性金属によるパターン形成層の膜厚に対して0.2〜2倍の膜厚である態様が好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.5倍の膜厚とする態様である。また、被膜均一性向上の観点から、この易接着層の膜厚は400nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは200nm以下となる態様である。なお、この易接着層は複数の層から構成されていてもよい。
【0041】
この易接着層に好ましく用いられるバインダーとしては、例えばゼラチン、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子のグラフトポリマーあるいは各種ラテックス類やポリマー水溶液等を好ましく用いることができる。水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系ポリマー類、水溶性ポリエステル類等を挙げることができ、ラテックス類としては、アクリル−スチレン系ポリマーラテックス、スチレン−ジオレフィン系ポリマーラテックス、塩化ビニリデン系ポリマーラテックスまたはポリウレタン系ポリマーラテックス等を挙げることができ、中でもエチレン性不飽和モノマーを重合したラテックスが、接着性向上機能を高めやすいという観点から好ましい。
【0042】
エチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸エステル類(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、iso−ノニルアクリレート、n−ドデシルアクリレート、t−ブチルアクリレート、フェニルアクリレート、2−ナフチルアクリレート等)、メタクリル酸エステル類(例えば、n−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、iso−ノニルメタクリレート、n−ドデシルメタクリレートメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、クレジルメタクリレート、4−クロロベンジルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等)、ビニルエステル類(例えば、安息香酸ビニル、ピバロイルオキシエチレン等)、アクリルアミド類(例えば、アクリルアミド、メチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、プロピルアクリルアミド、ブチルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、シクロヘキシルアクリルアミド、ベンジルアクリルアミド、ヒドロキシメチルアクリルアミド、メトキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、フェニルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、β−シアノエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(例えば、メタクリルアミド、メチルメタクリルアミド、エチルメタクリルアミド、プロピルメタクリルアミド、ブチルメタクリルアミド、t−ブチルメタクリルアミド、シクロヘキシルメタクリルアミド、ベンジルメタクリルアミド、ヒドロキシメチルメタクリルアミド、メトキシエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、フェニルメタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、ジエチルメタクリルアミド、β−シアノエチルメタクリルアミド等)、スチレン類(例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチレンスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル等)、ジビニルベンゼン、アクリルニトリル、メタアクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、塩化ビニリデン、フェニルビニルケトン等を挙げることができる。これらのモノマーは単独で用いても、2種以上用いてもよい。
【0043】
また、エチレン性不飽和モノマーの少なくとも1種が、エポキシ基を有するモノマーまたは活性メチレン基を有するモノマーであることが好ましく、さらに好ましくはエポキシ基を有するモノマー及び活性メチレン基を有するモノマーを併用することである。エポキシ基を有するモノマーとしては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等を挙げることができ、活性メチレン基を有するエチレン性不飽和モノマーは、例えば、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、2−アセトアセトキシエチルアクリレート、2−アセトアセトアミドエチルメタクリレート等を用いることができる。
【0044】
重合時に使用する水溶性ポリマーとしては、分子構造中に水溶性のアニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基を有する水溶性天然ポリマーや水溶性合成ポリマーのほとんどのものが使用でき、アニオン性基としてはカルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩、リン酸またはその塩、カチオン性基としては第3級アミンまたはアンモニウム塩、ノニオン性基としては、水酸基、アミド基、メトキシ基、アルキレンオキシド基としてはオキシエチレン基、ヘテロ原子環としてピロリドン基等の基が好ましい。水溶性合成ポリマーの中では、アニオン性もしくはノニオン性のものが好ましく、アニオン性のポリマーが特に好ましい。さらに好ましくはスルホン酸塩を有するポリマーが挙げられ、ポリスチレンスルホン酸共重合体、イソプレン−スチレン共重合体のスルホン化物、5−スルホイソフタル酸を共重合成分としたコポリエステルがより好ましい。また、水溶性ポリマーを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0045】
易接着層に用いるラテックスは、乳化重合法で製造することができ、例えば、水を分散媒とし、水に対して10〜50質量%のモノマーとモノマーに対して0.05〜5質量%の重合開始剤、0.1〜20質量%の分散剤を用い、約30〜100℃、好ましくは60〜90℃で3〜8時間攪拌下重合させることによって製造することができる。モノマーの量、重合開始剤量、反応温度、反応時間等の条件は幅広く変更することができる。
【0046】
重合開始剤としては、水溶性過酸化物(例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、水溶性アゾ化合物(例えば、2,2′−アゾビス(2−アミノジプロパン)ハイドロクロライド等)またはこれらのFe2+塩や亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤等を用いることができる。
【0047】
ラテックスの平均粒径は0.02〜0.8μm程度と様々なものを用いることができるが、0.05〜2.0μmのものであればいずれも好ましく使用することができる。
【0048】
〔銀塩含有層〕
本発明の透光性導電膜は、後述する銀塩粒子及びバインダーを含有する銀塩含有層が支持体上に設けられるが、銀塩含有層は、この他に、硬膜剤、硬調化剤、活性剤等を含有することができる。
【0049】
銀塩の含有量は、銀換算で0.4g/m2以上である態様が好ましく、特に好ましくは銀換算で0.5g/m2以上1g/m2未満である態様である。銀塩の含有量が0.4g/m2未満の場合、電磁波遮蔽性能を十分に得ることが困難になりやすい。これは、後述する物理現像または金属めっき処理の触媒となる現像銀核の量が不十分となり、有効な導電性メッシュを形成しにくくなるためと推定される。
【0050】
銀塩含有層のバインダー量は10mg/m2以上0.2g/m2以下の場合が、導電性と被膜物性の両立という観点から特に好ましい態様である。バインダー量が10mg/m2未満の場合、バインダーに対する銀塩の量が相対的に多くなるため、被膜が脆弱になりやすく、十分な被膜強度を維持することが困難となる。また、バインダー量が0.2g/m2より多い場合には、銀塩粒子の粒子間距離が大きくなるため、現像銀ネットワークが形成されにくくなり、有効な導電性メッシュを形成しにくくなるとともに、温度、湿度変化に対する耐久性も不十分となる。
【0051】
〔銀塩粒子〕
本発明に用いられる銀塩は、従来から銀塩写真感光材料として用いられる種々のハロゲン化銀が好ましく用いられる。すなわち銀塩写真感光材料において従来使用されている技術が、本発明においてもそのまま用いることができる。本明細書では特に断らない限り、銀塩とはハロゲン化銀を意味する。
【0052】
銀塩粒子に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素及びヨウ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体とした銀塩が好ましく用いられ、さらにAgClを主体とした銀塩が好ましく用いられる。
【0053】
ここで、「AgClを主体とした銀塩」とは、銀塩組成中に占める塩化物イオンのモル分率が50%以上の銀塩をいう。このAgClを主体とした銀塩粒子は、塩化物イオンのほかに沃化物イオン、臭化物イオンを含有していてもよい。
【0054】
銀塩粒子については、露光、現像処理後に形成されるパターン状金属銀層の画像品質の観点からは、平均粒子サイズは、球相当径で0.1〜1000nmであることが好ましく、0.1〜100nmであることがより好ましく、1〜50nmであることがさらに好ましい。なお、銀塩粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径である。
【0055】
銀塩粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(六角平板状、三角形平板状、四角形平板状等)、八面体状、十四面体状等様々な形状であることができる。
【0056】
本発明に用いられる銀塩粒子は、さらに他の元素を含有していてもよい。例えば、硬調な階調を得るために用いられる金属イオンをドープすることも有用である。特にロジウムイオンやイリジウムイオン等の遷移金属イオンは、金属銀像の生成の際に露光部と未露光部の差が明確に生じやすくなるため好ましく用いられる。ロジウムイオン、イリジウムイオンに代表される遷移金属イオンは、各種の配位子を有する化合物であることもできる。そのような配位子としては、例えば、シアン化物イオンやハロゲンイオン、チオシアナートイオン、ニトロシルイオン、水、水酸化物イオン等を挙げることができる。具体的な化合物の例としては、K3Rh2Br9及びK2IrCl6等が挙げられる。
【0057】
本発明において、銀塩に含有されるロジウム化合物及び/またはイリジウム化合物の含有率は、銀塩の銀のモル数に対して、10-10〜10-2モル/モルAgであることが好ましく、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0058】
本発明では、さらに光センサーとしての感度を向上させるため、銀塩写真乳剤で行われる化学増感を施すこともできる。化学増感としては、例えば、金増感、パラジウム等の貴金属増感、イオウ、セレン、テルル等のカルコゲン増感、還元増感等を利用することができる。
【0059】
本発明で使用できる銀塩乳剤としては、例えば、特開平11−305396号公報、特開2000−321698号公報、特開平13−281815号公報、特開2002−72429号公報の実施例に記載されたカラーネガフィルム用乳剤、特開2002−214731号公報に記載されたカラーリバーサルフィルム用乳剤、特開2002−107865号公報に記載されたカラー印画紙用乳剤等を好適に用いることができる。
【0060】
〔バインダー〕
銀塩含有層においてバインダー(樹脂)は、銀塩粒子を均一に分散させ、かつ銀塩含有層と支持体との密着を補助する目的で用いることができる。本発明に用いるバインダーとしては、ゼラチンが最も好ましい。ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンの他、酸処理ゼラチン、また、フタル化ゼラチンあるいはフェニルカルバモイル化ゼラチン等、各種修飾ゼラチンも含むものである。
【0061】
ゼラチンは一般にFe、Mn、Cu、Zn、Mg、Caの如き2価以上の多価金属イオンを不純物として1000ppmを遥かに超えて含んでいる。本発明で銀塩乳剤層を調製するに用られるゼラチンは、これらの多価金属イオンを500ppm以下になるように精製するのが望ましい。理由は定かではないが、多価金属イオン濃度を低下させることで、補力処理、特にメッキ工程で生じるメッキムラを低減でき、均一性が向上する。結果として導電性が向上すると共に、非メッシュ部(透光性部)の汚れが防止できる。
【0062】
このようなゼラチンはイオン交換等による脱イオンによって得ることができる。例えば、ゼラチン水溶液を加温し、攪拌下にイオン交換樹脂と接触させることによって、前記金属イオンの含有量を低下させることができる。ゼラチン中の金属元素は通常陽イオンとなっていることが多いので、これらはH+型陽イオン交換樹脂の利用により除去することができるが、金属元素の中には陰性の錯塩を形成している場合もあるので、このような場合にはOH-型陰イオン交換樹脂を利用して除去することができる。これらの方法については、日本化学会編「実験化学講座2、基礎技術II」丸善(1956)、151〜202頁、日本化学会編「新実験化学講座1、基本操作1」丸善(1975)、463〜497頁等に詳しく記載されている。イオン交換処理後のゼラチン中のカルシウムイオン等の多価金属イオン含量の定量は、ゼラチン試験法合同審議会制定の写真用ゼラチン試験法(略称バギイ法)、第6版に記載の方法に従って行えばよい。
【0063】
本発明に係る銀塩含有層中に含有されるバインダーの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。銀塩含有層中のバインダーの含有量は、Ag:バインダー体積比で1:5〜5:1であることが好ましく、1:3〜3:1であることがより好ましく、1:2〜2:1であることがさらに好ましい。銀塩含有層中にバインダーをAg:バインダー体積比で1/4以上含有すれば、物理現像及び/またはメッキ処理工程において金属粒子同士が互いに接触しやすく、高い導電性を得ることが可能であるため好ましい。Ag:バインダー体積比で銀が5倍以上では、バインダー不足により銀塩粒子の凝集の発生、塗布性の著しい劣化、乾燥後のひび割れ発生等の問題がり、好ましくない。
【0064】
〔硬膜剤〕
銀塩含有層は硬膜剤によって硬膜されることが好ましい。硬膜剤としては公知のものが使用でき、特開昭61−249045号、同61−245153号公報記載のビニルスルホン型硬膜剤やトリアジン型硬膜剤等を単独または組み合わせて使用することができるが、本発明においては少なくとも1種のトリアジン型硬膜剤を使用することが特に好ましい。
【0065】
本発明で用いられるトリアジン系硬膜剤として、特に制限はないが、下記一般式〔H−I〕または〔H−II〕で表される化合物であることが好ましい。
【0066】
【化2】

【0067】
上記一般式〔H−I〕において、R1は塩素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、−OM(Mは1価の金属原子を表す)、−NR′R″または−NHCOR″′(R′,R″,R″′はそれぞれ水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)の各基を表し、R2は塩素原子を除くR1と同義である。
【0068】
一般式〔H−I〕におけるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基のアルキル基としては、炭素数1〜5の低級アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。Mは、例えば、ナトリウム原子あるいはカリウム原子等である。
【0069】
【化3】

【0070】
上記一般式〔H−II〕において、R3及びR4はそれぞれ塩素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基または−OM(Mは1価の金属原子を表す)を表し、−Q−及び−Q′−は、−O−、−S−または−NH−の連結基を表し、Lはアルキレン基またはアリーレン基を表し、m1及びn1はそれぞれ0または1を表す。
【0071】
一般式〔H−II〕におけるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基のアルキル基としては、炭素数1〜5の低級アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。アルキレン基としては、好ましくは炭素数1〜8のものであり、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ヘキサメチレン基等であり、アリーレン基としては、好ましくは、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、1,4−ナフタレン基、等である。
【0072】
以下、トリアジン系硬膜剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0073】
【化4】

【0074】
【化5】

【0075】
【化6】

【0076】
【化7】

【0077】
好ましい硬膜剤添加量は、同一面側の全バインダー1g当り150mg以上が好ましく、より好ましくは200〜500mgである。
【0078】
〔膨潤率〕
本発明の透光性導電膜に用いられる銀塩含有層を有する感光材料は、硬膜剤により硬膜された乳剤層の膨潤率が100%より大きく145%以下であることが好ましい。硬膜剤により硬膜された乳剤層の膨潤率をこの範囲とすることにより、特に、乳剤層が湿潤した状態となる現像、補力工程後の支持体との密着性が改良されるとともに、乳剤層面側が接触する搬送ローラー等に対し、高い擦り傷耐性を実現することができる。
【0079】
本発明でいう乳剤層の膨潤率(%)とは、下記の方法に準じて測定して求めた値と定義する。
【0080】
膜厚膨潤率(%)={(蒸留水浸漬時の層の膜厚−浸漬前の層の膜厚)/(浸漬前の層の膜厚)}×100
蒸留水浸漬時の層の膜厚とは、透明性導電膜形成用感光材料銀塩写真感光材を25℃の蒸留水に3分間浸漬させた時の層の膜厚を意味する。本発明において、層の膜厚の測定についてはクライオSEM法にて定義される。
【0081】
〔露光〕
本発明の透光性導電膜に用いられる銀塩含有層を有する感光材料においては、後述する現像・補力処理により、導電性パターンを形成するために、露光を行う。露光に用いられる光源としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、電子線、X線等の放射線等が挙げられるが、紫外線または近赤外線を用いることが好ましい。さらに露光には広い波長分布を有する光源を利用してもよく、波長分布の狭い光源を用いてもよい。
【0082】
可視光線は必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば、赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種または2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤色、緑色及び青色に限定されず、黄色、橙色、紫色あるいは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。また、紫外線ランプも好ましく、水銀ランプのg線、水銀ランプのi線等も利用される。
【0083】
また、露光は種々のレーザービームを用いて行うこともできる。例えば、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザーまたは半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組み合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができ、さらにKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2レーザー等も用いることができる。
【0084】
レーザー光源としては、具体的には、紫外半導体、青色半導体レーザー、緑色半導体レーザー、赤色半導体レーザー、近赤外レーザー等が好ましく用いられる。
【0085】
画像状に露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた集光式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、面々接触露光、近接場露光、縮小投影露光、反射投影露光等の露光方式を用いることができる。露光に用いられるレーザーの出力は、銀塩粒子の感度、露光スピード、装置の光学系により異なるが、概ね数十μW〜5W程度である態様が好ましい。
【0086】
〔現像処理〕
本発明の透光性導電膜に用いられる銀塩含有層を有する感光材料は露光した後、現像処理が行われる。現像処理は、発色現像主薬を含有しない、いわゆる黒白現像処理であることが好ましい。
【0087】
現像処理液としては、現像主薬としてハイドロキノン、ハイドロキノンスルホン酸ナトリウム、クロルハイドロキノン等のハイドロキノン類の他に、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン等のピラゾリドン類及びN−メチルパラアミノフェノール硫酸塩等の超加成性現像主薬と併用することができる。また、ハイドロキノンを使用しないでアスコルビン酸やイソアスコルビン酸等レダクトン類化合物を上記超加成性現像主薬と併用することもできる。
【0088】
また、現像処理液には保恒剤として亜硫酸ナトリウム塩や亜硫酸カリウム塩、緩衝剤として炭酸ナトリウム塩や炭酸カリウム塩、現像促進剤としてジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミノプロパンジオール等を適宜使用できる。
【0089】
現像処理で用いられる現像処理液は、画質を向上させる目的で、画質向上剤を含有することができる。画質向上剤としては、例えば、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、5−メチルベンゾトリアゾール等の含窒素へテロ環化合物を挙げることができる。
【0090】
露光後に行われる現像処理は、定着前物理現像を含むこともできる。ここで言う定着前物理現像とは、後述の定着処理を行う前に、露光により潜像を有する銀塩粒子の内部以外から銀イオンを供給し、現像銀を補強するプロセスのことを示す。現像処理液から銀イオンを供給するための具体的な方法としては、例えば予め現像処理液中に硝酸銀等を溶解しておき銀イオンを溶かしておく方法、あるいは現像液中に、チオ硫酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム等のような銀塩溶剤を溶解しておき、現像時に未露光部の銀塩を溶解させ、潜像を有する銀塩粒子の現像を補力する方法等が挙げられる。現像液中に予め銀塩溶剤を溶解しておく処方を用いた方が、未露光部でのカブリ発生による、フィルムの透過率低下を抑制できるため好ましい。
【0091】
現像処理においては、露光された銀塩粒子の現像終了後に、未露光部分の銀塩粒子を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を行う。定着処理は、銀塩粒子を用いた写真フィルムや印画紙等で用いられる定着液処方を用いることができる。定着処理で使用する定着液は、定着剤としてチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム等を使用することができる。定着時の硬膜剤として硫酸アルミウム、硫酸クロミウム等を使用することができる。定着剤の保恒剤としては、現像処理液で述べた亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸等を使用することができ、その他にクエン酸、蓚酸等を使用することができる。
【0092】
続いて行う水洗工程に使用する水洗水には、防黴剤としてN−メチル−イソチアゾール−3−オン、N−メチル−イソチアゾール−5−クロロ−3−オン、N−メチル−イソチアゾール−4,5−ジクロロ−3−オン、2−ニトロ−2−ブロム−3−ヒドロキシプロパノール、2−メチル−4−クロロフェノール、過酸化水素等を使用することができる。
【0093】
〔補力処理〕
本発明の透光性導電膜に用いられる銀塩含有層を有する感光材料は、上述の現像処理によって形成された現像銀同士の接触を補助し、導電性を高めるために補力処理を行うことが好ましい。本発明において補力処理とは、現像処理中、あるいは処理後に、予め感光材料中に含有されていない導電性物質源を外部から供給し、導電性を高める処理のことを指し、具体的な方法としては、例えば物理現像、あるいはめっき処理等を挙げることができる。物理現像は、潜像を有する銀塩乳剤を含有する感光材料を、銀イオンあるいは銀錯イオンと還元剤を含有する処理液に浸漬することで、これを施すことができる。物理現像の現像開始点が潜像核だけでなく、現像銀が物理現像開始点となった場合についても物理現像と定義し、これを好ましく用いることができる。
【0094】
めっき処理には、従来公知の種々のめっき方法を用いることができ、例えば電解めっき及び無電解めっきを単独、あるいは組み合わせて実施することができる。中でも、めっき効率が高く、不要な部分へのめっき付着による透過率の低下が発生しにくい電解めっきを好ましく用いることができる。電解めっきに用いることができる金属としては、例えば銅、ニッケル、コバルト、すず、銀、金、白金、その他各種合金を用いることができるが、めっき処理が比較的容易であり、かつ高い導電性を得やすいという観点から、電解銅めっきを用いることが特に好ましい。
【0095】
本発明におけるメッキ処理時のメッキ速度は、緩やかな条件で行うことができ、さらに5μm/hr以上の高速メッキも可能である。メッキ処理において、メッキ液の安定性を高める観点からは、例えば、EDTA等の配位子等種々の添加剤を用いることができる。
【0096】
なお、補力処理は現像中、現像後定着前、定着処理後のいずれのタイミングにおいても実施可能であるが、フィルムの透明性を高く維持するという観点から、定着処理後に実施することが好ましい。
【0097】
物理現像または金属めっきにより付与された金属量が、感光材料を露光、現像処理することにより得られた現像銀に対して、質量換算で10〜100倍である態様が好ましい。この値は、物理現像または金属めっきを施す前後において、感光材料中に含有される金属を、例えば蛍光X線分析等で定量することによって求めることができる。物理現像または金属めっきにより付与された金属量が、感光材料を露光、現像処理することにより得られた現像銀に対して、質量換算で10倍未満である場合、導電性がやや低下する傾向となりやすく、また、100倍より大きい場合には、導電性パターン部以外の不要な部分への金属析出による透過率の低下が生じやすい傾向となる。
【0098】
なお、物理現像または金属めっきという記載は、物理現像またはめっき処理の少なくとも一方の処理を施すことを意味し、物理現像及び金属めっきの両方を含んでもよいことを意味し、効率よく処理を行うという観点から物理現像及び金属めっきの両方の処理を施すことが好ましい。
【0099】
〔酸化処理〕
本発明の透光性導電膜に用いられる銀塩含有層を有する感光材料は、現像処理あるいは物理現像またはめっき処理後に酸化処理を行うことができる。酸化処理により、不要な金属成分をイオン化して溶解除去することが可能となり、フィルムの透過率をより高めることが可能となる。
【0100】
酸化処理に用いる処理液としては、例えばFe(III)イオンを含む水溶液を用いて処理する方法、あるいは過酸化水素、過硫酸塩、過硼酸塩、過燐酸塩、過炭酸塩、過ハロゲン酸塩、次亜ハロゲン酸塩、ハロゲン酸塩、有機過酸化物等の過酸化物を含む水溶液を用いて処理する方法等、従来公知の酸化剤を含有する処理液を用いることができる。酸化処理は、現像処理終了後から、めっき処理前の間に行われる態様が、短時間処理で効率的に透過率向上を行うことができるため好ましい態様であり、特に好ましくは、物理現像終了後に行う態様である。
【0101】
〔黒化処理〕
本発明の透光性導電膜に用いられる銀塩含有層を有する感光材料は、フィルム表面での外光反射を防止するという観点から、金属めっき処理終了後に黒化処理を施すことが好ましい。このような黒化処理を施した透光性導電膜を、例えばPDP等のディスプレイに用いた場合、外光反射によるコントラストの低下を軽減できるとともに、非使用時の画面の色調を黒く高品位に保つことができ好ましい。黒化処理の方法としては、特に制限はなく、既知の手法を適宜、単独あるいは組み合わせて用いることができる。例えば導電性パターンの最表面が金属銅から成る場合には、亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウムを含んでなる水溶液に浸漬して酸化処理する方法、あるいはピロリン酸銅、ピロリン酸カリウム、アンモニアを含んで成る水溶液に浸漬し、電解めっきを行うことにより、黒化処理する方法、等を好ましく用いることができる。また、導電性パターンの最表層がニッケル−リン合金被膜から成る場合は、塩化銅(II)または硫酸銅(II)、塩化ニッケルまたは硫酸ニッケル、及び塩酸を含有する酸性黒化処理液中に浸漬する方法を好ましく用いることができる。
【0102】
また、上述の方法以外にも、表面を微粗面化する方法によっても黒化処理が可能であるが、高い導電性を維持するという観点からは、表面の微粗面化よりも、酸化による黒化処理の方法が好ましい。
【0103】
〔透光性導電膜の構成〕
本発明では、導電性金属部からなる電磁波遮蔽性のバターンは、前述した露光及び現像処理により形成された金属銀部からなるパターンを、物理現像またはメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させることにより形成することが好ましい。
【0104】
金属銀は、本発明においては、透明性を高めるために露光部に形成させることが好ましい。
【0105】
前記金属銀部に、物理現像及び/またはメッキ処理により担持させる導電性金属粒子としては、上述した銀のほか、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、コバルト、スズ、ステンレス、タングステン、クロム、チタン、パラジウム、白金、マンガン、亜鉛、ロジウム等の金属、またはこれらを組み合わせた合金の粒子を挙げることができる。導電性、価格等から、銅、アルミニウムまたはニッケルの粒子が好ましい。また、磁場シールド性を付与する場合、常磁性金属粒子を用いることが好ましい。
【0106】
上記導電性金属部において、コントラストを高め、かつ導電性金属部が経時的に酸化され退色するのを防止する観点から、導電性金属部に含まれる導電性金属粒子は銅粒子であることが好ましく、その表面が黒化処理されたものであることがさらに好ましい。黒化処理は、プリント配線板分野で行われている方法を用いて行うことができる。例えば、亜塩素酸ナトリウム(31g/l)、水酸化ナトリウム(15g/l)、リン酸三ナトリウム(12g/l)の水溶液中で、95℃で2分間処理することにより黒化処理を行うことができる。
【0107】
上記導電性金属部は、該導電性金属部に含まれる金属の全質量に対して、銀を50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがさらに好ましい。銀を50質量%以上含有すれば、物理現像及び/またはメッキ処理に要する時間を短縮し、生産性を向上させ、かつ低コストとすることができる。
【0108】
さらに、導電性金属部を形成する導電性金属粒子として銅及びパラジウムが用いられる場合、銀、銅及びパラジウムの合計の質量が導電性金属部に含まれる金属の全質量に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0109】
本発明における導電性金属部は、導電性金属粒子を担持するため良好な導電性が得られる。このため、導電性金属部の表面抵抗率は、10Ω/□以下であることが好ましく、1Ω/□以下であることがより好ましく、0.5Ω/□以下であることが最も好ましい。
【0110】
透光性電磁波遮蔽フィルターの用途において、上記導電性金属部の線幅は20μm以下、線間隔は50μm以上であることが好ましい。また、導電性金属部は、アース接続等の目的においては、線幅は20μmより広い部分を有していてもよい。また画像を目立たせなくする観点からは、導電性金属部の線幅は18μm未満であることが好ましく、15μm未満であることがより好ましく、14μm未満であることがさらに好ましく、10μm未満であることがさらにより好ましく、7μm未満であることが最も好ましい。
【0111】
〔光透過率〕
本発明の透光性導電膜は、可視光域による平均透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0112】
本発明において、可視光域の平均透過率とは、400〜700nmまでの可視光領域の透過率を、少なくとも5nm毎に測定して求めた可視光域の各透過率を積算し、その平均値として求めたものと定義する。測定においては、測定アパチャーを、前述のメッシュパターンより十分大きくとっておく必要があり、少なくともメッシュの格子面積よ100倍以上大きな面積で測定して求める。
【0113】
〔銀塩含有層以外の機能性層〕
本発明の透光性導電膜を、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)用の光学フィルタと組み合わせて使う場合には、銀塩含有層の下に近赤外吸収染料を含む層である近赤外線吸収層を設けることも好ましい。場合によっては近赤外線吸収層を支持体に対して、銀塩含有層のある側の反対側に設けることもできるし、銀塩含有層側と反対側の両方に設けてもよい。銀塩含有層と支持体との間に近赤外線吸収層を設けること、あるいは、銀塩含有層からみて支持体の反対側に近赤外線吸収層を設けることができるが、支持体の一方側にすると同時に塗布ができるので前者の方が好ましい。
【0114】
近赤外線吸収染料の具体例としては、ポリメチン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、金属錯体系、アミニウム系、イモニウム系、ジイモニウム系、アンスラキノン系、ジチオール金属錯体系、ナフトキノン系、インドールフェノール系、アゾ系、トリアリルメタン系の化合物等が挙げられる。PDP用光学フィルタで近赤外線吸収能が要求されるのは、主として熱線吸収や電子機器のノイズ防止である。このためには、最大吸収波長が750〜1100nmである近赤外線吸収能を有する色素が好ましく、金属錯体系、アミニウム系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ジイモニウム系、スクワリウム化合物系が特に好ましい。
【0115】
近赤外線吸収染料としては、ジイモニウム化合物は、IRG−022、IRG−040(以上、日本化薬株式会社製商品名)、ニッケルジチオール錯体化合物は、SIR−128、SIR−130、SIR−132、SIR−159、SIR−152、SIR−162(以上、三井化学株式会社製商品名)、フタロシアニン系化合物は、IR−10,IR−12(以上、日本触媒株式会社商品名)等の市販品を利用することができる。
【0116】
上記近赤外線吸収染料は、メタノール、エタノール及びイソプロパノール等のアルコール溶剤、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルブチルケトン等のケトン溶媒、ジメチルスルホオキサイド、ジメチルホルムアミド、ジメチルエーテル、トルエン等有機溶解して使用するか、後述する微粒子化機械で平均粒子径0.01〜10μmの微粒子にして塗布することが好ましく、添加量としては光学濃度が、極大波長で0.05〜3.0濃度の範囲で使用するのが好ましい。
【0117】
なお、近赤外線吸収能を有する色素を、色調補正層に含有させる場合、上記の色素のうちいずれか1種類を含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよい。
【0118】
本発明の透光性電磁波遮蔽フィルターを、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)用の光学フィルターと組み合わせて使う場合には、PDPに用いられるネオンガスの輝線発光による色再現性の低下を防ぐために、595nm付近の光を吸収する色素を含有する態様が好ましい。このような特定波長を吸収する色素としては、具体的には例えば、アゾ系、縮合アゾ系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、インジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、キナクリドン系、メチン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ピロール系、チオインジゴ系、金属錯体系等の周知の有機顔料及び有機染料、無機顔料が挙げられる。これらの中でも、耐候性が良好であることから、フタロシアニン系、アンスラキノン系色素が特に好ましく用いられる。
【0119】
透光性導電膜を、ディスプレイ画面の保護等を目的として用いる場合には、反射防止層を設けることが好ましい。反射防止層としては、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法等で単層あるいは多層に薄膜積層させる方法、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に薄膜積層させる方法等を用いることができる。
【0120】
前記透光性導電膜において、導電性パターンを有する層に対して支持体を挟んだ反対側に反射防止層を形成する場合には、最初に反射防止層を形成した後に、プロテクトフィルムを貼り合わせ、その後導電性パターン層を形成する態様が好ましい。導電性パターンを先に形成した後に反射防止層を形成する場合、反射防止層と支持体の接着性を向上させるために行うプラズマ処理やコロナ処理の効率が低下しやすい傾向にあるため、反射防止層を最初に形成する態様が好ましい。また、反射防止層を先に形成した場合、該層が現像及びめっき処理等により劣化することを防止するという観点から、予めプロテクトフィルムを貼り合わせた後、導電性パターン層を形成する態様が好ましい。
【0121】
プロテクトフィルムは、一般に市販されているプロテクトフィルムを用いることができるが、導電性パターン形成のための感光性銀塩乳剤層を塗工しやすくするという観点から、フィルムの厚さは10〜100μmが好ましく、特に好ましくは20〜60μmである。10μm未満の場合、フィルムの剛性が著しく低下するためプロテクトフィルムの貼合せの作業効率が低下しやすく、また100μmより厚い場合、フィルムの巻き取り時に巻き取り皺等の故障が発生しやすくなるためである。
【0122】
プロテクトフィルムに用いられる粘着剤の種類には特に制限はないが、反射防止フィルムを変質させることなく、また剥離時に反射防止フィルムにダメージを与えないものが好ましく用いられる。このような観点から、アクリル系、またはシリコン系の粘着剤が好ましく用いられる。また、その粘着力としては、0.08〜0.6N/25mmであるものが好ましく用いられる。
【0123】
〔粘着剤〕
本発明の透光性導電膜を透明基材に貼り付けるために、使用可能な粘着剤としては、透明性が高く、適切な接着力を有していれば特に制限はないが、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコン系粘着剤等を好ましく用いることができる。中でも透明性、接着性及び耐熱性に優れている点からアクリル系粘着剤を介して透明基材に貼り合わせて用いる態様が好ましく用いられる。
【0124】
アクリル系粘着剤とは、アクリル酸系アルキルエステルを主成分として、これに極性単量体成分を共重合させて得られる粘着剤であり、極性単量体成分の共重合割合は、アクリル酸系アルキルエステル成分100質量部当たり、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15質量部、さらに好ましくは1〜10質量部程度が好ましい。
【0125】
アクリル酸系アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシルまたは(メタ)アクリル酸ドデシル等の、アルキル基の炭素数が1〜12程度であるアクリル酸アルキルエステルあるいはメタアクリル酸アルキルエステルが好ましく用いられる。これらは2種以上併用しても構わない。
【0126】
極性単量体としては、硬化剤との反応活性基を有する化合物が用いられ、その種類について特に限定はないが、一般には水酸基やカルボキシル基を有するものが好ましく、例えばアクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等のカルボキシル基含有アクリル酸系単量体が挙げられ、具体的な化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシルプロピル等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−t−ブチルアミノエチルアクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体の如きアクリル酸系の極性単量体またはマレイン酸等が好ましく用いられる。これらは必要に応じ、2種以上併用してもよい。
【0127】
〔硬化剤〕
接着に際しては、粘着剤成分の分子内架橋、あるいは分子間架橋を行うために、硬化剤を用いることが好ましい。硬化剤は粘着剤モノマーの種類に応じて適宜選択して用いられるが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物等の脂肪族ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパン付加物等の芳香族ジイソシアネートの如きポリイソシアネート化合物、ブチルエーテル化スチロールメラミン、トリメチロールメラミンの如きメラミン化合物、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン等のジアミン化合物、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン等のエポキシ系化合物、尿素樹脂系化合物、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、酢酸銅等の金属塩等が用いられる。アクリル系粘着剤がエポキシ系の硬化剤を含有する態様は特に好ましく用いられる。エポキシ系硬化剤は、一般に、アクリル系粘着剤のカルボキシル基との反応性が高く、同じくカルボキシル基を有するゼラチンを含む透光性導電膜と粘着剤の結合をより強固とすることが可能になると考えられ、高温・高湿環境において、長期間保管した場合においてもフィルムの密着性が低下しにくくなり、また現像銀の変色を低減させることが可能になる。変色の程度が低減する機構は明確ではないが、密着性の向上効果により、外気の影響が軽減されるためと推察される。
【0128】
硬化剤の配合量は、通例アクリル樹脂100質量部当たり0.001〜10質量部、好ましくは0.005〜5質量部、さらに好ましくは0.01〜3質量部程度である。
【実施例】
【0129】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0130】
実施例
《感光材料の作製》
〔支持体の作製〕
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール65質量部に、エステル交換触媒として酢酸マグネシウム水和物0.05質量部を添加し、常法に従ってエステル交換を行った。得られた生成物に、三酸化アンチモン0.05質量部、リン酸トリメチルエステル0.03質量部を添加した。次いで、徐々に昇温、減圧し、280℃、66.6Paで重合を行い、固有粘度0.70のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を得た。
【0131】
次に、このPET樹脂をペレット化したものを、150℃で8時間真空乾燥した後、285℃でTダイから層状に溶融押し出し、30℃の冷却ドラム上で静電印加しながら密着させ、冷却固化させ、未延伸フィルムを得た。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、80℃で縦方向に3.3倍延伸した。引き続き、テンター式横延伸機を用いて、第一延伸ゾーン90℃で総横延伸倍率の50%延伸し、さらに第二延伸ゾーン100℃で総横延伸倍率3.3倍になるように延伸した。次いで、70℃2秒間、前熱処理し、さらに第一固定ゾーン150℃で5秒間熱固定し、第二固定ゾーン220℃で15秒間熱固定した。次いで160℃で横(幅手)方向に5%弛緩処理し、テンターを出た後に、駆動ロールの周速差を利用して、140℃で縦(長手)方向に弛緩処理を行い、室温まで60秒かけて冷却し、フィルムをクリップから解放、スリットし、巻き取り、厚さ100μmの二軸延伸PETフィルム(F0)を得た。この二軸延伸PETフィルムのTgは78℃であった。
【0132】
さらに、この二軸延伸PETフィルムを、懸垂式熱弛緩装置を用いて、温度:180℃、搬送張力:230kPa、時間:15秒の条件で弛緩熱処理し、室温まで10℃/minで冷却してから巻き取った。
【0133】
(下引き済み支持体)
100μmの上記二軸延伸PETフィルムの両面に12W・min/m2のコロナ放電処理を施し、片方の面に下記下引き塗布液B−1を乾燥膜厚0.1μmになるように塗布し、その上に12W・min/m2のコロナ放電処理を施し、下記下引き塗布液B−2を乾燥膜厚0.06μmになるように塗布した。さらに、反対側の面に下記下引き塗布液B−3を乾燥膜厚0.1μmになるように塗布し、その上に12W・min/m2のコロナ放電処理を施し、下引き塗布液B−2を乾燥膜厚0.06μmになるように塗布した。その後、120℃で1.5分の熱処理を実施し、下引き済み支持体を得た。
【0134】
〈下引き塗布液B−1〉
スチレン20質量部、グリシジルメタクリレート40質量部、ブチルアクリレート40質量部の共重合体ラテックス液(固形分質量30%) 50g
SnO2ゾル(A) 440g
化合物(UL−1) 0.2g
水で仕上げる 1000ml
〈下引き塗布液B−2〉
ゼラチン 10g
化合物(UL−1) 0.2g
化合物(UL−2) 0.2g
シリカ粒子(平均粒径3μm) 0.1g
硬膜剤(UL−3) 1g
水で仕上げる 1000ml
〈下引き塗布液B−3〉
スチレン20質量部、グリシジルメタクリレート40質量部、ブチルアクリレート40質量部の共重合体ラテックス液(固形分質量30%) 50g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレン尿素) 0.05g
化合物(UL−1) 0.2g
水で仕上げる 1000ml
SnO2ゾル(A)の合成例
SnCl4・5H2O 65gを蒸留水2000mlに溶解して均一溶液とし、次いでこれを煮沸し沈澱物を得た。生成した沈澱物をデカンテーションにより取り出し、蒸留水にて何度も水洗する。沈澱を水洗した蒸留水中に硝酸銀を滴下し、塩素イオンの反応がないことを確認後、洗浄した沈澱物に蒸留水を添加し全量を2000mlとする。これに30%アンモニア水40mlを加え加温することにより、均一なゾルを得た。さらに、アンモニア水を添加しながらSnO2の固型分濃度が8.3質量%になるまで加熱濃縮し、SnO2ゾル(A)を得た。
【0135】
〔感光材料の作製〕
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
反応容器内で下記溶液Aを34℃に保ち、特開昭62−160128号公報記載の混合撹拌装置を用いて高速に撹拌しながら、硝酸(濃度6%)を用いてpHを2.95に調整した。引き続き、ダブルジェット法を用いて下記溶液Bと下記溶液Cを一定の流量で8分6秒間かけて添加した。添加終了後に、炭酸ナトリウム(濃度5%)を用いてpHを5.90に調整し、続いて下記溶液Dと溶液Eを添加した。
【0136】
(溶液A)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 18.7g
塩化ナトリウム 0.31g
下記溶液I 1.59ml
純水 1246ml
(溶液B)
硝酸銀 169.9g
硝酸(濃度6%) 5.89ml
純水にて317.1mlに仕上げる
(溶液C)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 5.66g
塩化ナトリウム 58.8g
臭化カリウム 13.3g
下記溶液I 0.85ml
下記溶液II 2.72ml
純水にて317.1mlに仕上げる
(溶液D)
2−メチル−4ヒドロキシ−1,3,3a,7−テトラアザインデン 0.56g
純水 112.1ml
(溶液E)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 3.96g
下記溶液I 0.40ml
純水 128.5ml
(溶液I)
界面活性剤:ポリイソプロピレンポリエチレンオキシジコハク酸エステルナトリウム塩の10%メタノール溶液
(溶液II)
六塩化ロジウム錯体の10%水溶液
上記操作終了後に、常法に従い40℃にてフロキュレーション法を用いて脱塩及び水洗処理を施し、下記溶液Fと防バイ剤を加えて60℃でよく分散し、40℃にてpHを5.90に調整して、最終的に臭化銀を10モル%含む平均粒子径0.09μm、変動係数10%の塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。
【0137】
(溶液F)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 17.2g
純水 139.8ml
上記ハロゲン化銀乳剤に対し、チオ硫酸ナトリウムをハロゲン化銀1モル当たり20mg用い、60℃にて50分間化学増感を行い、化学増感終了後に4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン(TAI)をハロゲン化銀1モル当たり500mg、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モル当たり150mg添加して、ハロゲン化銀乳剤EM−1を得た。このハロゲン化銀乳剤EM−1のハロゲン化銀粒子とゼラチンの体積比(ハロゲン化銀粒子/ゼラチン)は0.65であった。
【0138】
染料(F−1)を20mg/m2となるように添加し、表1に記載のバインダー濃度、Ag/ゼラチン体積比になるようにゼラチンと純水をゼラチン水溶液として添加し、さらに表1の静的表面張力になるように界面活性剤(S−1)を添加した。最後にゼラチン1g当たり200mgの硬膜剤を添加して乳剤層塗布液を作製した。
【0139】
こうして得られた塗布液を減圧押し出し塗布により表1記載の塗布条件で上記下引き済み支持体のB−1の面上に塗布した後、50℃、24時間のエージング処理を実施して感光材料1〜6を作製した。なお、感光材料1〜4は銀塩含有層塗布液を支持体上に塗布後、セットせずに乾燥、固定化したが、感光材料5、6は銀塩含有層塗布液を支持体上に塗布、セットした後、乾燥、固定化た。
【0140】
【化8】

【0141】
【表1】

【0142】
〔感光材料の処理〕
(露光)
得られた感光材料をA4サイズに断裁し、メッシュ状のフォトマスク(ピッチ/線幅=300μm/5μm)を介してUV露光器で露光した。
【0143】
(化学現像)
露光した感光材料を、下記現像液(DEV−1)を用いて25℃で60秒間現像処理を行った後、下記定着液(FIX−1)を用いて25℃で120秒間の定着処理を行った。
【0144】
〈DEV−1〉
純水 500ml
メトール 2g
無水亜硫酸ナトリウム 80g
ハイドロキノン 4g
ホウ砂 4g
チオ硫酸ナトリウム 10g
臭化カリウム 0.5g
水を加えて全量を1リットルとする
(FIX−1)
純水 750ml
チオ硫酸ナトリウム 250g
無水亜硫酸ナトリウム 15g
氷酢酸 15ml
カリミョウバン 15g
水を加えて全量を1リットルとする
(物理現像)
次に、下記物理現像液(PDEV−1)を用いて25℃で10分間物理現像を行った後、水洗、乾燥処理を行った。
【0145】
〈PDEV−1〉
下記A液、B液を処理の直前に混合する。
【0146】
(A液)
純水 400ml
クエン酸 10g
リン酸水素2ナトリウム 1g
アンモニア水(28%水溶液) 1.2ml
ハイドロキノン 3g
(B液)
純水 10ml
硝酸銀 0.4g
(水洗処理及び乾燥処理)
水洗処理は、水道水で10分間洗い流した。また乾燥処理は、乾燥風(50℃)を用いてドライ状態になるまで乾燥した。
【0147】
〔電解銅メッキ〕
さらに、引き続き、下記メッキ液(PL−1)を用いて6A、25℃で2分間電解メッキを施して、感光材料1〜6からそれぞれ、導電性金属部が現像銀及び銅からなる透明性導電膜1〜6を作製した。
【0148】
〈PL−1〉
純水 1000ml
硫酸銅 200g
硫酸 50g
得られた、透明性導電膜の導電性金属部は露光パターンに応じたメッシュパターンを呈しており、いずれの試料においても線幅10μm、ピッチ幅290μmであった。また透光性部の開口率は約93%であった。
【0149】
《透光性導電膜の評価》
以上により作製した、透光性導電膜1〜6を以下の方法で評価した。その結果を表2に示す。
【0150】
(可視光透過率、ヘーズ)
日立製作所製分光光度計U−4000型を用いて、可視光領域(360〜700nm)における透過率(積分値)とヘーズ(透過光における散乱光の割合)を測定した。透過率(%)が高く、ヘーズ(%)が小さいほど、曇りがなく透明度が高いことを示す。
【0151】
(表面抵抗)
抵抗率計(ロレスタGP(MCP−T610型):(株)ダイヤインスツルメンツ社製)を用いて四端子測定した。なお、プローブにはEPSタイプのプローブを用いた。
【0152】
(塗布性)
銀塩含有層を塗布、乾燥した段階で表面ののムラの有無を目視で調べ、下記基準で評価した。
【0153】
○:ムラが認められない
△:ムラが若干認められる
×:ムラがかなり認められる
××:ムラが多い
(密着性)
JIS−K5400のクロスカット密着試験方法に従って行った。メッキ処理後の試料についてクロス状のカット線を引き、日東電工(株)製のセロハンテープNo.29を貼り付けて、テープをはがし、膜の剥離状態を調べた。膜残存率をFとし、クロスカットしたマス目の数をn、テープ剥離後に膜がまだ付着しているマス目の数をn1としたとき、F=n1/n×100(%)を計算し、以下の基準で評価した。
【0154】
◎:F≧90%
○:89%≧F≧85%
△:84%≧F≧80%
×:79%≧F
(耐熱試験)
90℃に設定した恒温槽内にサンプルを水平に置いて、1週間放置した後の膜面の状態を倍率200倍の光学顕微鏡で観察し、以下の基準で評価した。
【0155】
◎:変化なし
○:非常に軽微であるが若干の変化が観測される。実用上問題ない
△:膜面の一部ではあるが、ひび割れ等の重大な変化が観測される。実用化のためにはさらに詳細な評価必要
×:膜面前面に、ひび割れ等の重大な変化が観測される。実用不可なレベル
(カール)
23℃20%RH環境と23℃80%RH環境におけるカール度(曲率直径の逆数、1/m)を測定し、それぞれの環境下で測定したカール度の差異ΔRを計算し、以下の基準で評価した。
【0156】
◎:ΔR≦5
○:6≦ΔR≦10
△:11≦ΔR≦20
×:21≦ΔR
以上の各評価を総合的に見た結果、以下の基準で総合評価した。
【0157】
◎:透光性導電膜としての基本性能、物性共に非常に優れており、実用上全く問題ない
○:透光性導電膜としての基本性能、物性共に優れており、実用上問題ない
△:物性上、非常に軽微な欠点はあるが、透光性導電膜としての基本性能は優れている
×:透光性導電膜としての基本性能上及び/または物性上の致命的欠点がある
【0158】
【表2】

【0159】
表より、セット乾燥で試料作製したNo.5、6透光性導電膜は、いずれも密着性が悪く、セット乾燥では導電ラインの保持性が著しく劣化することが分かる。さらにNo.6はゼラチンの付量が多いことから、透過率の低下、ヘーズの上昇に加え、耐熱試験後に膜面にひび割れを生じた。さらに、ゼラチンが収縮することでカールの湿度変化が大きく、粘着加工等の後工程に影響が出る可能性がある。
【0160】
No.1は本発明の好ましい範囲より若干ゼラチン量が多いことからヘーズが高めであるが、No.5と比較して密着性が格段に向上し、透光性導電膜として実用上問題ないレベルに仕上がっている。さらにNo.4、No.2とゼラチンが少なくなるにつれてカールの湿度変化が小さくなり、密着性も向上していくことが分かる。ゼラチン膜厚が薄くなるに従って、ゼラチンの吸脱湿による歪み応力が減少し、さらには乾燥時に、ゼラチン鎖がより広がった状態で固定化されているためと考えている。
【0161】
No.2、3と静的表面張力が高くなるにつれて塗布性が劣化していくことが分かる。静的表面張力は、15〜30mN/mが好ましい。
【0162】
以上から明らかなように、本発明の透光性導電膜は、透明性(高い可視光透過率と低いヘーズ)に優れ、かつ高い導電性が可能であり、さらには導電ラインの密着性や熱耐性に優れ、カールの湿度変化も小さいことから、高温環境下でも性能劣化がなく取り扱い性に優れている。
【0163】
また、微細な導電パターンを必要とするPDP用電磁波遮蔽フィルム、周波数選択性電磁波遮蔽フィルムとした場合も、目的に応じた高い電磁波遮蔽能を持つ透光性の電磁波遮蔽フィルターの作製が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に銀塩含有層を有する感光材料を、露光、現像処理することにより金属銀部及び透光性部を形成し、さらに前記金属銀部をメッキ処理することにより導電性を増幅して製造する透光性導電膜の製造方法において、銀塩を含有しバインダー主成分がゼラチンである水系塗布液を透明支持体上に塗設し、セットせずに乾燥固定化して前記銀塩含有層を形成することを特徴とする透光性導電膜の製造方法。
【請求項2】
塗設方法が、押出し塗布であることを特徴とする請求項1に記載の透光性導電膜の製造方法。
【請求項3】
前記水系塗布液の静的表面張力が、15〜30mN/mであることを特徴とする請求項1または2に記載の透光性導電膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の透光性導電膜の製造方法で製造された透光性導電膜の透光性部(バインダーのみの部分)の乾燥膜厚が、0.05〜0.2μmであることを特徴とする透光性導電膜。
【請求項5】
請求項4に記載の透光性導電膜を用いることを特徴とする透光性電磁波遮蔽フィルター。

【公開番号】特開2009−59998(P2009−59998A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227502(P2007−227502)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】