説明

透明な組成物、その調製方法、およびそれから得られる物品

ポリエステル単位およびポリカーボネート単位を含む第1のポリエステル-ポリカーボネート、ポリエステル単位およびポリカーボネート単位を含む第2のポリエステル-ポリカーボネート、ならびにエステル交換触媒を含む反応生成物。この反応生成物は、ASTM D 1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して、1.7%未満、特に1.0%未満のヘーズを有する。前記反応生成物を含む熱可塑性組成物およびそれから成形される物品が開示される。反応生成物の生成方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2005年5月20日に出願された米国特許出願第11/134495号の一部継続出願である。
【0002】
本開示は、ポリカーボネート組成物、特にポリエステル-ポリカーボネートとポリカーボネートの組成物、それらの製造方法、および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボネートは、自動車のパーツから電子機器まで、広範な用途の物品および部品の製造において有用である。特に、エレクトロニクス用途、または視覚指向の用途(例えば、ライトカバー、光を通す保護覆い、レンズ、および透明フィルム)において、それらが広く使用されるために、ポリカーボネートに優れた耐候性、衝撃強度、および表面仕上げと光学的透明性の両方をもたせることが望ましい。これらの性質のいくつかは、ポリエステルまたはポリエステル-ポリカーボネートをポリカーボネートと組み合わせることによって得ることができるが、性質の所望の組合せを有する光学的に透明な組成物を得ることは困難であった。
【特許文献1】国際公開WO00/26275号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4154775号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、衝撃強度、耐候性、および/または流動特性に不利な影響を与えることなく、極めて低いヘーズしか有しないポリエステル-ポリカーボネート樹脂組成物が、当技術分野において求められている。さらに、高価でないポリマー原料からのこのような組成物の調製が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様は、
次式を有する芳香族エステル単位、
【0006】
【化1】

【0007】
[上記式中、Tは2価の芳香族基であり、D1は2価の芳香族基である]
と、次式を有するカーボネート単位、
【0008】
【化2】

【0009】
[上記式中、D2基の総数の少なくとも60%が2価の芳香族基であり、その残りは2価の脂肪族基、脂環式基、または芳香族基である]
とを含む第1ポリマー;
次式を有するカーボネート単位、
【0010】
【化3】

【0011】
[上記式中、D2基の総数の少なくとも60%が2価の芳香族基であり、それらの残りは2価の脂肪族基、脂環式基、または芳香族基である]を含む第2ポリマー;および
エステル交換触媒
を含む組合せを溶融ブレンドすることによって得られる反応生成物を含み、この反応生成物は、ASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して1.0%未満のヘーズを有し、かつ、第1および第2ポリマーは、エステル交換触媒なしで同様に溶融ブレンドされた組合せがASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して1.0%を超えるヘーズを有するように選択される。
【0012】
別の実施形態においては、反応生成物の製造方法が、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物を得るのに有効な条件下で前記組合せを溶融ブレンドする工程を含み、この反応生成物は、ASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して1.0%未満のヘーズを有し、かつ、第1および第2ポリマーは、エステル交換触媒なしで同様に溶融ブレンドされた組合せがASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して1.0%を超えるヘーズを有するように選択される。
【0013】
別の実施形態においては、熱可塑性組成物が前記反応生成物を含む。別の実施形態においては、物品が前記熱可塑性組成物を含む。
【0014】
別の実施形態は、
次式を有する芳香族エステル単位、
【0015】
【化4】

【0016】
[上記式中、Tは2価の芳香族基であり、D1は2価の芳香族基である]
と、次式を有するカーボネート単位、
【0017】
【化5】

【0018】
[上記式中、D2基の総数の少なくとも60%が2価の芳香族基であり、その残りは2価の脂肪族基、脂環式基、または芳香族基である]
とを含む第1ポリマー;
次式を有する芳香族エステル単位、
【0019】
【化6】

【0020】
[上記式中、Tは2価の芳香族基であり、D3は2価の芳香族基である]
と、次式を有するカーボネート単位、
【0021】
【化7】

【0022】
[上記式中、D4基の総数の少なくとも60%が2価の芳香族基であり、残りは2価の脂肪族基、脂環式基、または芳香族基である]
とを含む第2ポリマー;および
エステル交換触媒
を含む組合せを溶融ブレンドすることによって得られる反応生成物を含み、
この反応生成物は、ASTM-D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して1.0%未満のヘーズを有し、かつ、第1および第2ポリマーは、エステル交換触媒のない状態で同じように溶融ブレンドされた組合せが、ASTM-D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して、1.0%を超えるヘーズを有するように選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
驚くべきことに、ポリカーボネートとポリエステル-ポリカーボネートとの溶融ブレンド時に少量のエステル交換触媒を用いることにより、ポリエステル-ポリカーボネートとポリカーボネートとの非常に不混和性のブレンドにおける相分離した部分の生成を実質的になくせることを、本発明者らは発見した。今や、優れた物理的性質、特に耐候性を有する光学的に透明な熱可塑性組成物を、ポリカーボネートおよびポリエステル-ポリカーボネートとエステル交換触媒との反応生成物を用いて得ることができる。このような反応生成物は、非常に小さいヘーズ、すなわち、ASTM-D1003-00の方法に従って測定して、1.7%未満、いくつかの場合には、1.0%未満のヘーズを有する。
【0024】
驚くべきことに、第1のポリエステル-ポリカーボネートと第2のポリエステル-ポリカーボネートとの溶融ブレンド時に少量のエステル交換触媒を用いることにより、2つのポリエステル-ポリカーボネートの非常に不混和性のブレンドにおける相分離した部分の生成を実質的になくせることを、本発明者らは発見した。今や、優れた物理的性質、特に耐候性を有する光学的に透明な熱可塑性組成物が、2つのポリエステル-ポリカーボネートとエステル交換触媒との反応生成物を用いて得ることができる。このような反応生成物は、ASTM D1003-00の方法に従って測定して、非常に小さいヘーズ、すなわち、1.7%未満のヘーズを有する。
【0025】
本明細書では、「ポリカーボネート」および「ポリカーボネート樹脂」という用語は、式(1)のカーボネート繰返し構造単位を有する構成物を意味する。
【0026】
【化8】

【0027】
上記式中、R1基の全数の少なくとも約60パーセントが芳香族基であり、その残りは、脂肪族基、脂環式基、または芳香族基である。一実施形態において、各R1は芳香族基、例えば下記式(2)の基である。
【0028】
【化9】

【0029】
上記式中、A1およびA2の各々は、2価の単環式アリール基であり、Y1は、A1をA2から隔てる1または2個の原子を有する架橋基である。例示的な実施形態においては、1個の原子がA2からA1を隔てる。このタイプの基の非限定的例の実例は、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O2)-、-C(O)-、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2-[2.2.1]-ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、およびアダマンチリデンである。架橋基Y1は、メチレン、シクロヘキシリデン、もしくはイソプロピリデンなどの炭化水素基または飽和炭化水素基であってよい。ポリカーボネートの組合せもまた使用できる。本明細書では、「組合せ」は、混合物、ブレンド、アロイなどのすべてを包含する。
【0030】
ポリカーボネートは、式HO-R1-OHを有するジヒドロキシ化合物の界面反応によって製造され、このヒドロキシ化合物には式(3)のジヒドロキシ化合物が含まれる。
【0031】
【化10】

【0032】
上記式中、Y1、A1およびA2は前記の通りである。一般式(4)のビスフェノール化合物も含まれる。
【0033】
【化11】

【0034】
上記式中、RaおよびRbはそれぞれ、ハロゲン原子または1価の炭化水素基を表し、同じであっても異なっていてもよく;pおよびqはそれぞれ独立に、0から4の整数であり;Xaは、アリール基を直接連結する結合、または式(5)の基の1つを含む連結基を表す。
【0035】
【化12】

【0036】
上記式中、RcおよびRdはそれぞれ独立に、水素原子または1価の直鎖状もしくは環状の炭化水素基を表し、Reは2価の炭化水素基である。
【0037】
適切なジヒドロキシ化合物の非限定的例のいくつかの実例には次のもの:レゾルシノール、4-ブロモレゾルシノール、ヒドロキノン、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルメタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、trans-2,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブテン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンチン、(α,α'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-n-プロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-sec-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(5-フェノキシ-4-ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブ
タノン、1,6-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオリド、2,7-ジヒドロキシピレン、6,6'-ジヒドロキシ-3,3,3',3'-テトラメチルスピロ(ビス)インダン("スピロビインダンビスフェノール")、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリド、2,6-ジヒドロキシジベンゾ-p-ジオキシン、2,6-ジヒドロキシチアントレン、2,7-ジヒドロキシフェノキサチン、2,7-ジヒドロキシ-9,10-ジメチルフェナジン、3,6-ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6-ジヒドロキシジベンゾチオフェン、および2,7-ジヒドロキシカルバゾールなど、ならびに、これらのジヒドロキシ化合物の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。
【0038】
式(3)により表すことができるビスフェノール化合物型の具体例には、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下"ビスフェノールA"または"BPA")、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、および1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパンが含まれる。これらのジヒドロキシ化合物の少なくとも1種を含む組合せもまた使用され得る。
【0039】
分岐状ポリカーボネートもまた有用であり、さらには、線状ポリカーボネートと分岐状ポリカーボネートの組合せもまた有用である。分岐状ポリカーボネートは、重合時に分岐剤を加えることによって製造され得る。これらの分岐剤には、ヒドロキシ、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル、およびこれらの官能基の混合から選択される少なくとも3つの官能基を含む多官能性有機化合物が含まれる。具体例には、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、トリメリト酸三塩化物、トリス-p-ヒドロキシフェニルエタン、イサチン-ビス-フェノール、トリス-フェノールTC(1,3,5-トリス((p-ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス-フェノールPA(4(4(1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)-エチル)α,α-ジメチルベンジル)フェノール)、4-クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシル酸、およびベンゾフェノンテトラカルボン酸が含まれる。分岐剤は約0.05〜2.0wt%のレベルで添加され得る。すべてのタイプのポリカーボネート末端基は、このような末端基が熱可塑性組成物の所望の性質に重大な影響を及ぼさない場合は、ポリカーボネート組成物において有用であると考えられる。
【0040】
具体的な実施形態において、ポリカーボネートは、ビスフェノールA(A1およびA2の各々がp-フェニレンであり、Y1がイソプロピリデンである)から誘導される線状ホモポリマーである。これらのポリカーボネートは、クロロホルム中25℃で測定して、約0.3から約1.5デシリットル/グラム(dl/g)、特に、約0.45から約1.0dl/gの固有粘度を有し得る。これらのポリカーボネートは、架橋スチレン-ジビニルベンゼンのカラムを用い、ポリカーボネート標準試料で較正して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定して、約10,000から約200,000、特に約15,000から約100,000、さらに特に約17,000から約50,000の平均重量分子量を有し得る。GPC試料は約1mg/mlの濃度で調製され、約1.5ml/minの流量で溶出される。
【0041】
一実施形態において、ポリカーボネートは、薄い物品の製造に適する流動特性を有する。メルトボリュームフローレート(しばしば、MVRと短縮される)は、指定された温度および荷重で、熱可塑性樹脂がオリフィスを通して押し出される速度を測定する。薄い物品の成形に適するポリカーボネートは、300℃/1.2kgで測定して、1から70グラム/10分(g/10min)、特に、2から30g/10minのMVRを有し得る。全体として所望の流動性を実現するために、異なる流動特性のポリカーボネートの混合物を用いてもよい。ポリカーボネートは、ASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して、10%未満、特に5%以下、さらに特に1.7%以下、さらに特に1.0%以下のヘーズを有する。ポリカーボネートはさらに、ASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して、70%以上、特に80%以上、さらに特に85%以上の光透過率を有し得る。
【0042】
ポリカーボネートは、ポリエステル-ポリカーボネート(コポリエステル-ポリカーボネート、またはポリエステルカーボネートとしても知られている)とブレンドされる。このようなコポリマーは、式(1)のカーボネート鎖繰返し単位以外に、式(6)の繰返し単位をさらに含む。
【0043】
【化13】

【0044】
上記式中、Dは、ジヒドロキシ化合物に由来する2価の基であり、例えば、C2〜10アルキレン基、C6〜20脂環式基、C6〜20芳香族基、またはポリオキシアルキレン基(このアルキレン基は2から約6個の炭素原子、特に、2、3、または4個の炭素原子を含む)であり得る;また、Tは、ジカルボン酸に由来する2価の基であり、例えば、C2〜10アルキレン基、C6〜20脂環式基、C6〜20アルキル芳香族基、またはC6〜20芳香族基であり得る。
【0045】
一実施形態において、DはC2〜6アルキレン基である。別の実施形態において、Dは、式(7)の芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する。
【0046】
【化14】

【0047】
上記式中、各Rfは独立に、ハロゲン原子、C1〜10炭化水素基、またはハロゲン置換C1〜10炭化水素基であり、nは0から4である。このハロゲンは通常臭素である。式(7)によって表すことができる化合物の例には、レゾルシノール、置換レゾルシノール化合物、例えば、5-メチルレゾルシノール、5-エチルレゾルシノール、5-プロピルレゾルシノール、5-ブチルレゾルシノール、5-t-ブチルレゾルシノール、5-フェニルレゾルシノール、5-クミルレゾルシノール、2,4,5,6-テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6-テトラブロモレゾルシノールなど;カテコール;ヒドロキノン;置換ヒドロキノン、例えば、2-メチルヒドロキノン、2-エチルヒドロキノン、2-プロピルヒドロキノン、2-ブチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、2-フェニルヒドロキノン、2-クミルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラ-t-ブチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6-テトラブロモヒドロキノンなど;またはこれらの化合物の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。
【0048】
ポリエステルを製造するために使用され得る芳香族ジカルボン酸の例には、イソフタル酸またはテレフタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4'-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'-ビス安息香酸、およびこれらの酸の少なくとも1種を含む混合物が含まれる。1,4-、1,5-、または2,6-ナフタレンジカルボン酸におけるように、縮合環を含む酸もまた含まれ得る。具体的なジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはこれらの混合物である。具体的なジカルボン酸には、イソフタル酸とテレフタル酸の混合物が含まれ、テレフタル酸とイソフタル酸の重量比は91:9から2:98である。別の具体的な実施形態において、DはC2〜6アルキレン基であり、Tはp-フェニレン、m-フェニレン、ナフタレン、2価の脂環式基、またはこれらの混合物である。この部類のポリエステルには、ポリ(アルキレンテレフタレート)が含まれる。
【0049】
ポリエステル-ポリカーボネートは、上記のカーボネート単位をさらに含む。式(1)のカーボネート単位は、式(7)の芳香族ジヒドロキシ化合物からも誘導することができ、この場合の具体的なカーボネート単位はレゾルシノールカーボネート単位である。本明細書では、「カーボネート単位」という用語は、1つまたは複数の異なるタイプのカーボネート単位を含んでいることが理解されるであろう。こうして、ポリエステル-ポリカーボネートは、2つ以上のタイプのポリカーボネートを含み得る。
【0050】
コポリマーにおけるエステル単位とカーボネート単位の比は、例えば、エステル単位が99から1モルパーセント(モル%)、カーボネート単位が1から99モル%まで、最終構成物の所望の性質に応じて広く変わり得る。一実施形態において、コポリマーは、少なくとも75モル%のエステルブロック、特に、少なくとも約80モル%のエステルブロックを含む。
【0051】
一実施形態において、ポリエステル-ポリカーボネートのポリエステル単位は、2価のイソフタル酸およびテレフタル酸(またはこれらの誘導体)とレゾルシノールとの組合せの反応に由来し、この場合、イソフタレート単位とテレフタレート単位のモル比は、91:9から98:1、特に、85:15から3:97、さらに特に、80:20から5:95、さらに特に、70:30から10:90である。一実施形態において、ポリカーボネート単位は、0:100から99:1のレゾルシノールカーボネート単位とビスフェノールAカーボネート単位とのモル比で、レゾルシノールとビスフェノールAから誘導され、ポリエステル-ポリカーボネートにおける、イソフタレート-テレフタレートの混合ポリエステル単位とポリカーボネート単位とのモル比は、少なくとも75:25、さらに特に少なくとも80:20である。
【0052】
発明がどうしてうまくいくかを説明することは求められていないが、このような仮説は、読者が本発明を理解することをよりよく助けるためには有用であり得る。したがって、次の作業仮説によって、特許請求の範囲は限定されないことが理解されるべきである。分子スケールでは、ポリエステル-ポリカーボネートの透明性もヘーズも、ポリマー鎖内のポリエステル単位の数、ポリエステル単位の平均の大きさ(ポリエステル繰返しサブ単位の数によって定義される)、ポリマー鎖におけるポリエステル単位のランダムもしくは非ランダムな分布、あるいはこれらの要因の1つまたは複数の組合せに関連していると考えられる。コポリマー内でのポリエステル単位の分布がランダムである程、透明度は増し、ヘーズの度合いは少なくなると考えられる。したがって、反応条件、出発物質の相対量、および/または、出発物質のタイプは、ポリエステル単位の分布を、したがってまた、ポリエステル-ポリカーボネートの透明性とヘーズを調節するように選択され得る。ポリエステル-ポリカーボネートにおけるポリエステル単位のランダム分布は、Siclovanらの国際特許出願WO00/26275に記載されているものなどの界面重合時に実現でき、この特許出願においては、比較的少数の繰返し単位(例えば、好ましくは、30から150)を有するヒドロキシ末端ポリエステルブロックが、重合の初期段階に形成され、次いで、重合の後の段階で、芳香族ジヒドロキシ化合物およびホスゲンと共重合されて、20から200の好ましい重合度を有するポリカーボネートブロックを形成する。このように、このような構成物においては、ポリエステル単位からなるブロックの分子量が比較的小さい場合に、ランダムさは増大する。芳香族ジカルボン酸ジクロライドとジヒドロキシ芳香族化合物の化学量論(すなわち、過剰のジヒドロキシ芳香族化合物の使用)、および/または、重合中のチェーンストッパー(chain stopper)の存在、および/または、これらの組合せは、それぞれ、ポリエステルブロックの大きさを制限するのに有用である。エステル合成時の相間移動触媒の濃度(すなわち少量の触媒の使用)、低い反応濃度、または低い温度もまた、ポリエステル単位のブロックの成長を制限するために用いることができる。
【0053】
一実施形態において、本明細書において用いられるポリエステル-ポリカーボネートは、例えば式(8)に示されるレゾルシノールエステル単位を含む耐候性構成物である。(8)のようなイソフタレート-テレフタレートのエステルを紫外線に曝すと、光フリース転位として知られている、光化学的に誘起される転位を起こして、式(9)の2-ヒドロキシベンゾフェノン(これは紫外安定剤として機能する)を生成することが、当技術分野において知られている。レゾルシノールエステル単位を含む構成物は、組成物の表面下でゆっくりと光フリース転位を受けるので、耐候性があり、本明細書に開示されている熱可塑性組成物に使用するのに適する。
【0054】
【化15】

【0055】
例えば式(10)のようなビスフェノールAエステル単位を含むポリエステル単位もまた、光フリース転位を受けて、式(11)を有する対応する2-ヒドロキシベンゾフェノンを生成する。これにより結果的にUV安定剤が生成し、π-電子共役の度合いの増加が、スペクトルの可視領域においてより多くの透過があるように光吸収をシフトし、観察される黄色を生じさせる。このため、黄変指数(「YI」)を用いて測定した場合に、より強い黄色が、より短い時間内に、熱可塑性組成物に現れ得る。したがって、耐候性ポリエステル-ポリカーボネートおよびそれから得られる物品中に存在するビスフェノールAエステル単位の数をできるだけ少なくすることが望ましい。
【0056】
【化16】

【0057】
耐候性を保つために、耐候性ポリエステル-ポリカーボネートのビスフェノールAエステル結合(10)の数を制限することは、界面重合時にポリカーボネート単位の形成に用いられるジヒドロキシ芳香族化合物と反応できる、ポリエステル単位の反応性末端基(例えば、カルボン酸クロライド末端基)の数を制限することによって達成できる。具体的には、ポリカーボネート単位がビスフェノール-Aの反応生成物である場合、ビスフェノール-Aはポリエステル単位におけるカルボン酸クロライド基と反応してビスフェノール-A-ポリエステル結合を形成し得る。Siclovanらの国際公開WO00/25275に記載されているように、界面重合時に、ポリエステル単位のために、所望のジヒドロキシ芳香族化合物(例えば、レゾルシノール)を過剰に使用すると、ジヒドロキシ末端ポリエステル単位のブロックが得られ、遊離の反応性カルボン酸クロライド末端基は最少になるので、次のポリカーボネート単位の形成時の、望ましくない構造のポリエステル結合(10)の形成が最少化される。
【0058】
本発明において使用される場合、ポリエステル-ポリカーボネートは、1,500から200,000、特に、3000から100,000、さらに特に、5,000から80,000の重量平均分子量(Mw)を有し得る。分子量の測定は、架橋スチレン-ジビニルベンゼンのカラムを用い、ポリカーボネート標準試料で較正して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて実施される。試料は約1mg/mlの濃度で調製され、約18ml/minの流量で溶出される。
【0059】
一実施形態において、ポリエステル-ポリカーボネートは、300℃/1.2kgで測定して、1から70グラム/10分(g/10min)、特に、2から50g/10minのメルトボリュームフローレート(しばしば、MVRと短縮される)を有する。全体として所望の流動性を実現するために、異なる流動特性のポリエステル-ポリカーボネートの混合物を用いてもよい。ポリエステル-ポリカーボネートは、ASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して、10%未満、特に5%以下、さらに特に、1.7%以下、より特に、1.0%以下のヘーズを有する。ポリエステル-ポリカーボネートはさらに、ASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して、70%以上、特に80%以上、さらに特に85%以上の光透過率を有し得る。
【0060】
適切なポリカーボネートおよびポリエステル-ポリカーボネートは、界面重合および溶融重合などの方法によって製造できる。界面重合の反応条件は変わり得るが、例示的な方法は一般に、2価フェノール反応物およびチェーンストッパーを苛性ソーダまたは苛性カリの水溶液に溶かすかまたは分散させる工程、得られた混合物を適切な水に非混和性の溶媒媒体に加える工程、および、制御されたpH条件(例えば、約8から約10)の下で、適切な触媒(例えば、トリエチルアミン、または相間移動触媒)の存在下に、これらの反応物をカーボネート前駆体と接触させる工程を含む。最も広く使用される水に非混和性の溶媒には、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエンなどが含まれる。適切なカーボネート前駆体には、例えば、カルボニルブロマイドまたはカルボニルクロライドなどのカルボニルハライド、あるいは、2価フェノールのビスハロホルメート(例えば、ビスフェノールA、ヒドロキノンなどのビスクロロホルメート)またはグリコールのビスクロロホルメート(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールなどのビスハロホルメート)などのハロホルメートが含まれる。これらのタイプのカーボネート前駆体の少なくとも1種を含む組合せもまた使用され得る。
【0061】
チェーンストッパー(末端封止剤とも呼ばれる)が重合時に含められていてもよい。チェーンストッパーは分子量成長速度を制限し、そうしてポリカーボネートの分子量を制御する。チェーンストッパーは、モノフェノール化合物、モノカルボン酸クロライド、および/またはモノクロロホルメートの少なくとも1種であり得る。
【0062】
例えば、チェーンストッパーとして適切なモノフェノール化合物には、単環式フェノール、例えば、フェノール、C1〜C22アルキル置換フェノール、p-クミルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、ヒドロキシジフェニル;ジフェノールのモノエーテル、例えば、p-メトキシフェノールが含まれる。アルキル置換フェノールには、8から9個の炭素原子を有する分岐鎖アルキル置換基をもつものが含まれる。モノフェノールUV吸収剤は末端封止剤として使用され得る。このような化合物には、4-置換-2-ヒドロキシベンゾフェノンおよびこれらの誘導体、アリールサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエートなどのジフェノールのモノエステル、2-(2-ヒドロキシアリール)-ベンゾトリアゾールおよびこれらの誘導体、2-(2-ヒドロキシアリール)-1,3,5-トリアジンおよびこれらの誘導体などが含まれる。具体的には、モノフェノールチェーンストッパーには、フェノール、p-クミルフェノール、および/またはレゾルシノールモノベンゾエートが含まれる。
【0063】
モノカルボン酸クロライドもまたチェーンストッパーとして適切であり得る。これらには、単環式のモノカルボン酸クロライド、例えば、ベンゾイルクロライド、C1〜C22アルキル置換ベンゾイルクロライド、トルオイルクロライド、ハロゲン置換ベンゾイルクロライド、ブロモベンゾイルクロライド、シンナモイルクロライド、4-ナジミドベンゾイルクロライド、およびこれらの混合物;多環式のモノカルボン酸クロライド、例えば、無水トリメリト酸クロライド、およびナフトイルクロライド;単環および多環のモノカルボン酸クロライドの混合物が含まれる。22個までの炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸クロライドは適切である。脂肪族モノカルボン酸の官能化クロライド(例えば、アクリロイルクロライドおよびメタクリロイルクロライド)もまた適切である。モノクロロホルメート(単環式のモノクロロホルメートが含まれる)、例えば、フェニルクロロホルメート、アルキル置換フェニルクロロホルメート、p-クミルフェニルクロロホルメート、トルエンクロロホルメート、およびこれらの混合物も適切である。
【0064】
ポリエステル-ポリカーボネートは界面重合によって調製され得る。ジカルボン酸自体を用いるよりも、対応する酸ハライド、特に酸ジクロライドおよび酸ジブロマイドなどの、酸の反応性誘導体を用いることが可能であり、時には、好ましくさえある。こうして、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、またはこれらの混合物を用いる代わりに、イソフタロイルジクロライド、テレフタロイルジクロライド、およびこれらの混合物を用いることが可能である。
【0065】
使用され得る相間移動触媒の中には、式(R3)4Q+Xの触媒があり、式中、各R3は同じであるかもしくは異なり、C1〜10アルキル基であり;Qは窒素原子またはリン原子であり;Xはハロゲン原子またはC1〜8アルコキシ基またはC6〜18アリールオキシ基である。適切な相間移動触媒には、例えば、[CH3(CH2)3]4NX、[CH3(CH2)3]4PX、[CH3(CH2)5]4NX、[CH3(CH2)6]4NX、[CH3(CH2)4]4NX、CH3[CH3(CH2)3]3NX、および、CH3[CH3(CH2)2]3NXが含まれ、式中、XはCl-、Br-、C1〜8アルコキシ基またはC6〜18アリールオキシ基である。相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの重量に対して、約0.1から約10wt%であり得る。別の実施形態において、相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの重量に対して、約0.5から約2wt%であり得る。
【0066】
別法として、溶融法をポリカーボネートおよびポリエステル-ポリカーボネートを製造するために用いてもよい。一般に、溶融重合法では、ポリカーボネートは、均一分散体を生成させるためのバンバリー(Banbury)ミキサー、二軸押出機などにおいて、エステル交換触媒の存在下に、(複数の)ジヒドロキシ反応物とジアリールカーボネートエステル(例えば、ジフェニルカーボネート)または活性化カーボネート(例えば、ビス(メチルサリシル)カーボネート(BMSC))を溶融状態において共反応させることによって調製され得る。揮発性の1価フェノールは蒸留によって溶融反応物から留去され、ポリマーは溶融残留物として単離される。
【0067】
仮説に拘束されることは望まないが、本明細書に記載されている反応生成物は、エステル交換触媒の存在の下での、ポリエステル-ポリカーボネートとポリカーボネートとの反応溶融ブレンドである。ポリエステル-ポリカーボネートコポリマーとポリカーボネートポリマー、または、第1ポリエステル-ポリカーボネートコポリマーと第2ポリエステル-ポリカーボネートコポリマーの組合せを溶融させると、それぞれ上記のように、添加試薬または触媒が存在しなければ、ポリエステル-ポリカーボネートは分離した相を形成する、すなわち、ポリエステル-ポリカーボネートの相が周囲のポリカーボネートマトリックスから分離して、相分離した部分を形成することが認められる。相分離部分は、周囲のマトリックスからその部分を分離する明瞭に区別される観察可能な境界を有する、周囲のマトリックス内の部分として定義できる。これらの相分離部分の寸法は様々であるが、一般に、押出方向に長くなっており、押出または射出成形の間の熱可塑性組成物の流れの方向に一致する、連続した長さとして20から200ナノメートルの長手寸法を有し得る。したがって、これらの相分離部分の形成を防ぎ、減らし、緩和し、またはなくするメカニズムがなければ、ポリエステル-ポリカーボネートおよびポリカーボネートの組合せが用いられる場合、特に、ポリエステル-ポリカーボネートが、レゾルシノールのイソフタロイルおよびテレフタロイルエステルに由来するポリエステル単位を含み、ポリエステル-ポリカーボネートコポリマーのポリカーボネート単位に対して25モルパーセントを超えるポリエステル単位を含む場合に、相分離部分が形成することが観察される。
【0068】
実施形態の具体例において、ポリエステル-ポリカーボネートの耐候性ポリエステル単位は、(イソフタレート-テレフタレート)レゾルシノールのポリエステル単位である。ポリカーボネートに非混和性のポリエステルを含有する部分の形成は、透過型電子顕微鏡(TEM)のような適切な分析方法によって観察できる。
【0069】
仮説には拘束されないが、組合せにおけるこれらの相分離部分の存在により、入射光は散乱されると考えられる。相分離部分の大きさの増大、および相分離部分の数の増加は、それぞれが入射光の散乱の増大に関連すると考えられる。したがって、より小さい相分離部分、および相分離部分の数の減少は、入射光の散乱量を減らし得るので、組合せ物の測定可能なヘーズを小さくし、望ましい場合には、光透過率を増大させる。
【0070】
驚くべきことに、少量のエステル交換触媒(再分配触媒としても知られており、鎖の切断反応を触媒することによって、ポリカーボネートの分子量分布を再分配させるために通常使用される)が、ポリエステル-ポリカーボネートとポリカーボネートとの非常に非混和性のブレンド物におけるこれらの相分離部分の形成を実質的になくすことができる。本明細書では、「実質的になくす」という用語は、本明細書に記載されている方法を用いて相分離部分が観察されないように、相分離部分の形成をなくすことを意味する。相分離したポリエステル-ポリカーボネート-含有部分と、周囲のポリカーボネートのマトリックスとの間の相間の境界を横切るカーボネート基の、触媒に誘起される交換が、相間の境界にまたがるポリマー鎖の結合を形成することによって、ポリマーを相溶化させて、実質的にこれらの相分離部分をなくすと考えられる。さらに、これらの相分離部分をなくすことにより、入射光の散乱が非常に少なく、したがってヘーズが小さい熱可塑性組成物が得られると考えられる。
【0071】
適切なエステル交換触媒は非常にたくさんあり、これらには、多様な塩基およびルイス酸が含まれる。いくつかのエステル交換触媒(すなわち、より低分子量の分子種を生成し、エステル交換を効率的に行い、残留モノマーを少なくする触媒)の具体例には、水酸化テトラオルガノホスホニウム、炭酸テトラオルガノホスホニウム、酢酸テトラオルガノホスホニウム、テトラオルガノホスホニウムフェノラート、テトラオルガノホスホニウムビスフェノラート、水酸化テトラアルキルアンモニウム、炭酸テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウムホスファイト、酢酸テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウムフェノラート、テトラアルキルアンモニウムビスフェノラート、およびこれらの1種または複数を含む混合物が含まれる。より特には、エステル交換触媒は、反応条件下で活性触媒化学種が非常に低レベルまで分解する水酸化テトラC1〜C10アルキルホスホニウムであり得る。最も特に、この触媒は水酸化テトラブチルホスホニウム(TBPH)であり得る。
【0072】
エステル交換触媒は、ポリマーブレンドの全重量の0.002%超から0.1%、または、20超から1000ppmの量で存在し得る。一実施形態において、ポリエステル-ポリカーボネートとポリカーボネートのブレンド中に存在するエステル交換触媒の量は、ポリエステル-ポリカーボネートとポリカーボネートの全重量の40から220ppm、特に、50から200ppm、さらに特に、60から180ppmである。別の実施形態において、ポリエステル-ポリカーボネートとポリエステル-ポリカーボネートのブレンド中に存在するエステル交換触媒の量は、2つのポリエステル-ポリカーボネートの全量の40から220ppm、特に、50から200ppm、さらに特に、60から180ppmである。具体的な実施形態において、エステル交換触媒は、水酸化テトラブチルホスホニウム(TBPH)である。エステル交換触媒は、透明な反応生成物を生成するのに十分な量まで、反応を触媒するのに十分な量で存在するが、過剰な触媒は不透明な反応生成物および/または耐候性のない反応生成物を生じ得るので、過剰な量では存在しない。最適な触媒のレベルは、特定の触媒に応じて変わり、試験によって求めることができる。
【0073】
このように、エステル交換触媒の存在下におけるポリエステル-ポリカーボネートコポリマーおよびポリカーボネートポリマーの反応生成物には、前記の通り、相分離領域が実質的に存在しない。この反応生成物は、入射光の散乱度が少なく、したがって、小さいまたは非常に小さい測定可能なヘーズレベルしか有しない。さらに、エステル交換触媒の存在の下での、ポリエステル-ポリカーボネートコポリマーと第2ポリエステル-ポリカーボネートポリマーの反応生成物は、上記のように、実質的に相分離領域がない。この反応生成物は、入射光の散乱度が少なく、したがって、小さいまたは非常に小さい測定可能なヘーズレベルしか有しない。
【0074】
一実施形態において、上記反応生成物は、ASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して、1.7%未満、特に、1.5%以下、さらに特に1%以下のヘーズしか有しない。小さいまたは非常に小さいヘーズを有する反応生成物は、高い光学的透明性および/または優れた表面仕上げを有することができる。本発明において用いられるポリエステル-ポリカーボネートおよびポリカーボネートは、エステル交換触媒のない状態で、ポリエステル-ポリカーボネートとポリカーボネートの組合せが、ASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して、1.7%を超えるヘーズを有するであろうというように選択される。
【0075】
別の実施形態において、前記反応生成物は、ASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して、1.7%未満、特に、1.5%以下、さらに特に1%以下のヘーズしか有しない。小さいまたは非常に小さいヘーズしか有しない反応生成物は、高い光学的透明性および/または優れた表面仕上げを有することができる。本発明において用いられる第1ポリエステル-ポリカーボネートおよび第2ポリエステル-ポリカーボネートは、エステル交換触媒のない状態で、これらの2つのポリエステル-ポリカーボネートの組合せは、ASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して、1.0%を超えるヘーズを有するであろうというように選択される。
【0076】
本明細書において上に記載したように、エステル交換触媒は、ポリエステル-ポリカーボネートのカーボネート単位とポリカーボネートとの間の交換を触媒することができる。一実施形態において、ポリエステル-ポリカーボネートが、レゾルシノール(ヒドロキシ基は1,3位を置換している)を含む式(1)のカーボネート単位を含み、式(4)を含むジヒドロキシ芳香族化合物を含むカーボネート単位(ビスフェノールAカーボネート単位と呼ばれる)もまた存在する場合、レゾルシノール系カーボネート単位は、ビスフェノールAカーボネート単位より速く交換することが、NMR分光法を用いて観察されている。
【0077】
エステル交換触媒の濃度制御は、ポリエステル-ポリカーボネート中に存在し得るレゾルシノールカーボネート単位のモル数に反比例する影響を及ぼすことが認められた。レゾルシノールカーボネート単位とビスフェノールAカーボネート単位の交差変換が、レゾルシノールカーボネート単位と他のレゾルシノールカーボネート単位との交換に対して有利であり、したがって、反応生成物中に存在するレゾルシノールカーボネート単位の正味の減少があると考えられる。レゾルシノールヒドロキシポリマー鎖末端基はまた、加水分解またはエステル交換事象によっても生成され得る。レゾルシノール-OHポリマー鎖末端基は、交換時、ビスフェノール-A-OHポリマー鎖末端基より1.5倍多く生成することが、リン-31(31P)NMRを用いて観察されている。
【0078】
エステル交換触媒により触媒された場合、カーボネート単位の交換が優勢であるが、エステル単位もまた、レゾルシノールカーボネート単位およびビスフェノールAカーボネート単位の両方と交換され得る。式(10)のエステル単位を生成する副反応が、フィルム中に存在するエステル交換触媒の濃度を制御することによって最少化できることが認められた。一実施形態において、ポリエステル-ポリカーボネートとポリカーボネートとの間のカーボネート単位の交換を実施するのに十分高い濃度であり、ポリカーボネートのヒドロキシ芳香族基による、ポリエステルのカルボキシレートエステルのエステル交換により生ずる式(10)のエステル単位の生成を引き起こす副反応を最少化するのに十分なだけ低い、エステル化触媒の量が用いられる。こうして生成される式(10)のエステル単位の許容されるモル数(これにより、反応生成物に許容される耐候性が付与される)は、反応生成物中に存在するエステル単位の全モル数の5%以下、特に、4.5%以下、さらに特に、4%以下である。具体的な実施形態において、ポリカーボネートがビスフェノールAポリカーボネートを含む場合、反応生成物におけるエステル単位の5%以下が、エステル交換により生成するビスフェノールA-エステル単位である。エステル単位の相対的モル数を求める適切な方法には、核磁気共鳴(NMR)分光法、具体的には、プロトン(1H)NMR、炭素(13C)NMRによる方法、またはこれらの方法の組合せが含まれる。
【0079】
ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物、または、ポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物に加えて、本発明の熱可塑性組成物は、このタイプの樹脂組成物に通常組み入れられる様々なポリマーおよび/または添加剤を含み得るが、ただし、これらの添加剤は、反応生成物の望ましい性質の少なくとも1つに、著しくは悪影響を与えないように、好ましく選択されることを条件とする。添加剤の混合物も使用され得る。このような添加剤は、本発明の熱可塑性組成物を製造するために成分を混合している間の適切な時点で混合することができる。特に、エステル交換触媒と反応するので触媒の反応性に影響を与え得る、酸性の官能基を有し得る添加剤は、それが使用される場合、反応後に反応生成物と一緒にされる。こうして、本発明の熱可塑性組成物から添加剤を除くと、所望の性質を有する上記反応生成物が得られる。
【0080】
他の熱可塑性ポリマー、例えばポリエステル、を本発明の熱可塑性組成物に含めてもよい。適切なポリエステルは式(6)の繰返し単位を含み、例えば、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、液晶ポリエステル、およびポリエステルコポリマーであり得る。分岐剤(例えば、3つ以上のヒドロキシル基を有するグリコールまたは3官能もしくは多官能性カルボン酸)が組み入れられた分岐状ポリエステルを用いることも可能である。さらに、組成物の最終用途に応じて、様々な濃度の酸およびヒドロキシ末端基をポリエステルに有することが、望ましいことがある。ポリエステルと、ポリエステル-ポリカーボネート-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物、または、ポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物とのブレンドの使用は、ポリエステルの存在が、反応生成物の望ましい性質(これらに限らないが、例えば、耐候性、ヘーズ、衝撃強度など)の少なくとも1つに悪影響を及ぼさない場合には可能である。
【0081】
望ましい場合、ポリ(アルキレンテレフタレート)を用いることができる。適切なポリ(アルキレンテレフタレート)の具体例は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレンナフタノエート)(PEN)、ポリ(ブチレンナフタノエート)(PBN)、ポリ(プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、およびこれらのポリエステルの少なくとも1種を含む組合せである。やはり想定されているのは、コポリエステルを製造するための脂肪族の二塩基酸および/または脂肪族ポリオールに由来する少量(例えば、約0.5から約10重量パーセント)の単位を含む上記のポリエステルである。ポリエステルは、それが用いられる場合には、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の100重量パーセントに対して、一般に、約0.5から約70重量パーセントの量で存在する。
【0082】
本発明の熱可塑性組成物は、ポリシロキサン-ポリカーボネートのコポリマーをさらに含んでもよい。このコポリマーのポリジオルガノシロキサンブロックは、式(12)のポリジオルガノシロキサン繰返し単位を含む。
【0083】
【化17】

【0084】
上記式中、各Rは同じであるかまたは異なり、C1〜13の1価の有機基である。例えば、RはC1〜C13アルキル基、C1〜C13アルコキシ基、C2〜C13アルケニル基、C2〜C13アルケニルオキシ基、C3〜C6シクロアルキル基、C3〜C6シクロアルコキシ基、C6〜C14アリール基、C6〜C10アリールオキシ基、C7〜C13アラルキル基、C7〜C13アラルコキシ基、C7〜C13アルカリール(alkaryl)基、または、C7〜C13アルカリールオキシ(alkaryloxy)基であり得る。これらの基は、フッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素、またはこれらの組合せにより、完全に、または部分的にハロゲン化されていてもよい。これらのR基の組合せを、同じコポリマー中で用いてもよい。
【0085】
式(12)のDの値は、本発明の熱可塑性組成物における各成分の種類と相対量、組成物に望まれる性質および同様の考慮に応じて広く変わり得る。一般に、Dは2から1,000、特に、2から500、さらに特に、5から100の平均値を有し得る。一実施形態において、Dは、10から75の平均値を有し、別の実施形態において、Dは40から60の平均値を有する。Dが小さい値(例えば、40未満)である場合、比較的多量のポリカーボネート-ポリシロキサンコポリマーを用いることが望ましいことであり得る。逆に、Dが大きい値(例えば、40を超える)である場合、比較的少量のポリカーボネート-ポリシロキサンコポリマーを用いる必要があり得る。
【0086】
第1および第2の(または、さらに多くの)ポリカーボネート-ポリシロキサンコポリマーの組合せを用いてもよく、この場合、第1コポリマーのDの平均値は、第2コポリマーのDの平均値より小さい。
【0087】
一実施形態において、前記のポリジオルガノシロキサンブロックは、式(13)の繰返し構造単位により与えられる。
【0088】
【化18】

【0089】
上記式中、Dは上で定義された通りであり、各Rは同じであっても異なっていてもよく、上で定義された通りであり、各Arは同じであっても異なっていてもよく、置換または無置換のC6〜C30アリーレン基であり、式中の結合は芳香族部分に直接連結している。式(13)における適切なAr基は、C6〜C30ジヒドロキシ芳香族化合物、例えば、上の式(3)、(4)、または(7)のジヒドロキシ芳香族化合物に由来し得る。これらのジヒドロキシ芳香族化合物の少なくとも1種を含む組合せもまた使用され得る。適切なジヒドロキシ芳香族化合物の具体例は、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、および、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパンである。これらのジヒドロキシ化合物の少なくとも1種を含む組合せもまた使用され得る。
【0090】
このような単位は、式(14)の対応するジヒドロキシ化合物に由来し得る。
【0091】
【化19】

【0092】
上記式中、R、Ar、およびDは、上記の通りである。式(14)の化合物は、相間移動条件下に、ジヒドロキシ芳香族化合物と、例えば、α,ω-ビスアセトキシポリジオルガノシロキサンとの反応によって得ることができる。
【0093】
別の実施形態において、ポリジオルガノシロキサンブロックは、式(15)の単位を含む。
【0094】
【化20】

【0095】
上記式中、RおよびDは上記の通りであり、各R1は独立に、2価のC1〜C30有機基であり、重合したポリシロキサン単位は対応するジヒドロキシ化合物の反応残基である。具体的な実施形態において、ポリジオルガノシロキサンブロックは下記式(16)の繰返し構造単位により与えられる。
【0096】
【化21】

【0097】
上記式中、RおよびDは上で定義された通りである。式(16)における各R2は、2価のC2〜C8脂肪族基である。式(16)における各Mは同じで合っても異なっていてもよく、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C8アルキルチオ、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルコキシ、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルケニルオキシ基、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8シクロアルコキシ、C6〜C10アリール、C6〜C10アリールオキシ、C7〜C12アラルキル、C7〜C12アラルコキシ、C7〜C12アルカリール、C7〜C12アルカリールオキシであってよく、各nは独立に、0、1、2、3、または4である。
【0098】
一実施形態において、Mは、ブロモまたはクロロ、アルキル基(例えば、メチル、エチル、またはプロピル)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、またはプロポキシ)、あるいはアリール基(例えば、フェニル、クロロフェニル、またはトリル)であり;R2はジメチレン、トリメチレンまたはテトラメチレン基であり;Rは、C1〜C8アルキル、ハロアルキル(例えば、トリフルオロプロピル)、シアノアルキル、またはアリール(例えば、フェニル、クロロフェニルもしくはトリル)である。別の実施形態において、Rはメチル、またはメチルおよびトリフルオロプロピルの混合、またはメチルおよびフェニルの混合である。さらに別の実施形態において、Mはメトキシであり、nは1であり、R2は2価のC1〜C3脂肪族基であり、Rはメチルである。
【0099】
式(16)の単位は、下記の対応するジヒドロキシポリジオルガノシロキサン(17)に由来し得る。
【0100】
【化22】

【0101】
上記式中、R、D、M、R2、およびnは上記の通りである。このようなジヒドロキシポリシロキサンは、式(18)のシロキサンヒドリド:
【0102】
【化23】

【0103】
[上記式中、RおよびDは前に定義された通りであり、ZはHである]と、脂肪族不飽和1価フェノール(モノヒドロキシフェノール)との間で白金触媒による付加を実施することによって製造できる。適切な脂肪族不飽和1価フェノールには、例えば、オイゲノール、2-アリルフェノール、4-アリル-2-メチルフェノール、4-アリル-2-フェニルフェノール、4-アリル-2-ブロモフェノール、4-アリル-2-t-ブトキシフェノール、4-フェニル-2-フェニルフェノール、2-メチル-4-プロピルフェノール、2-アリル-4,6-ジメチルフェノール、2-アリル-4-ブロモ-6-メチルフェノール、2-アリル-6-メトキシ-4-メチルフェノールおよび2-アリル-4,6-ジメチルフェノールが含まれる。これらの少なくとも1種を含む混合物もまた使用され得る。ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンはまた、塩基または他の触媒の存在下に、あるいはこれらなしで、ポリシロキサン(18)(この場合、RおよびDは前に定義された通りであり、Zはアセトキシまたは例えばClのようなハロゲンである)と、前記の式(3)、(4)、または(7)のジヒドロキシ芳香族化合物との縮合によっても製造できる。この目的に適する具体的なジヒドロキシ化合物には、以下のものに限らないが、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、および、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパンが含まれる。これらのジヒドロキシ化合物の少なくとも1種を含む組合せもまた使用され得る。
【0104】
ポリシロキサン-ポリカーボネートは、50から99wt%のカーボネート単位と、1から50wt%のジメチルシロキサン単位、またはこれに相当するモル数の他のジオルガノシロキサン単位を含む。この範囲内で、ポリシロキサン-ポリカーボネートのコポリマーは、70から98wt%、特に、75から97wt%のカーボネート単位と、2から30wt%、特に、3から25wt%のジメチルシロキサン単位、またはこれに相当するモル数の他のジオルガノシロキサン単位とを含み得る。
【0105】
ポリシロキサン-ポリカーボネートのコポリマーは、ASTM D1003-00に準拠して測定して、55%以上、特に、60%以上、さらに特に、70%以上の光透過を有し得る。このコポリマーは、ASTM D1003-00に準拠して測定して、30%以下、特に、25%以下、さらに特に、20%以下のヘーズを有し得る。
【0106】
具体的な一実施形態において、上記ポリシロキサン-ポリカーボネートは、ポリシロキサン単位と、ビスフェノールA(A1およびA2の各々はp-フェニレンであり、Y1はイソプロピリデンである)に由来するカーボネート単位とを含む。ポリシロキサン-ポリカーボネートは、上記のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定して、2,000から100,000、特に、5,000から50,000の重量平均分子量を有し得る。
【0107】
一実施形態において、ポリシロキサン-ポリカーボネートは、300℃/1.2kgで測定して、1から35グラム/10分(g/10min)、特に、2から30g/10minのメルトボリュームフローレート(しばしば、MVRと短縮される)を有する。全体として所望の流動性を実現するために、流動性の異なるポリシロキサン-ポリカーボネートの混合物を用いてもよい。
【0108】
ポリシロキサン-ポリカーボネートは、それが使用される場合は、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物、または2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の100重量パーセントに対して、一般に、約0.5から約70重量パーセントの量で存在する。
【0109】
本発明の熱可塑性組成物は、耐衝撃性を増すために、耐衝撃改良剤の特定の組合せを含む耐衝撃改良剤組成物をさらに含み得る。これらの耐衝撃改良剤には、(i)約10℃未満、さらに特に約-10℃未満、または、さらに特に約-40℃から-80℃のTgを有するエラストマー(すなわち、ゴム状)であるポリマー基質、および(ii)このエラストマーポリマー基質にグラフトされた剛性(rigid)ポリマーの上層を含むエラストマー変性グラフトコポリマーが含まれる。知られているように、エラストマー変性グラフトコポリマーは、最初に、エラストマーポリマーを準備し、次いで、このエラストマーの存在下に、剛性相を構成する(1又は複数の)モノマーを重合してグラフトコポリマーを得ることによって製造できる。グラフトは、接木の枝のように、または、エラストマーのコアに対するシェル(shell)のように取り付けられてもよい。このシェルは、コアを単に物理的に包み込んでいても、あるいは、コアに部分的にまたは本質的には完全にグラフトされていてもよい。
【0110】
エラストマー相として使用するのに適する材料には、例えば、共役ジエンゴム;共役ジエンと約50wt%未満の共重合性モノマーとのコポリマー;オレフィンゴム、例えば、エチレンプロピレンコポリマー(EPR)またはエチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM);エチレン-酢酸ビニルゴム;シリコーンゴム;C1〜8アルキル(メタ)アクリレートエラストマー;C1〜8アルキル(メタ)アクリレートと、ブタジエンおよび/またはスチレンとのコポリマーエラストマー;あるいはこれらのエラストマーの少なくとも1種を含む組合せが含まれる。
【0111】
エラストマー相を調製するための適切な共役ジエンモノマーは、下記式(19)のものである。
【0112】
【化24】

【0113】
上記式中、各Xbは独立に、水素、C1〜C5アルキルなどである。使用され得る共役ジエンモノマーの例は、ブタジエン、イソプレン、1,3-ヘプタジエン、メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン、1,3-および2,4-ヘキサジエンなど、さらには、これらの共役ジエンモノマーの少なくとも1種を含む混合物である。典型的な共役ジエンホモポリマーには、ポリブタジエンおよびポリイソプレンが含まれる。
【0114】
共役ジエンゴムのコポリマー(例えば、共役ジエン、および、共役ジエンと共重合する1種または複数のモノマーの水性乳化ラジカル重合によって製造されるもの)もまた用いることができる。共役ジエンとの共重合に適するモノマーには、縮合芳香族環構造を含むモノビニル芳香族モノマー(例えば、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなど)、または下記式(20)のモノマーが含まれる。
【0115】
【化25】

【0116】
上記式中、各Xcは独立に、水素、C1〜C12アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C12アリール、C7〜C12アラルキル、C7〜C12アルカリール、C1〜C12アルコキシ、C3〜C12シクロアルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、クロロ、ブロモ、またはヒドロキシであり、Rは、水素、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロである。使用され得る適切なモノビニル芳香族モノマーには、スチレン、3-メチルスチレン、3,5-ジエチルスチレン、4-n-プロピルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチルビニルトルエン、α-クロロスチレン、α-ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、tetra-クロロスチレンンなど、およびこれらの化合物の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。スチレンおよび/またはα-メチルスチレンは、共役ジエンモノマーと共重合するモノマーとして使用できる。
【0117】
共役ジエンと共重合し得る他のモノマーは、イタコン酸、アクリルアミド、N-置換アクリルアミドまたはメタクリルアミド、無水マレイン酸、マレイミド、N-アルキル-,アリール-,もしくはハロアリール置換のマレイミド、グリシジル(メタ)アクリレート類、および下記一般式(21)のモノマーなどのモノビニルモノマーである。
【0118】
【化26】

【0119】
上記式中、Rは、水素、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロであり、Xcは、シアノ、C1〜C12アルコキシカルボニル、C1〜C12アリールオキシカルボニル、ヒドロキシカルボニルなどである。式(21)のモノマーの例には、アクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、β-クロロアクリロニトリル、α-ブロモアクリロニトリル、アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなど、およびこれらのモノマーの少なくとも1種を含む組合せが含まれる。n-ブチルアクリレート、エチルアクリレート、および2-エチルへキシルアクリレートなどのモノマーは、共役ジエンモノマーと共重合するモノマーとして広く用いられている。これらのモノビニルモノマーおよびモノビニル芳香族モノマーの混合物を用いてもよい。
【0120】
エラストマー相として使用するのに適する、適切な(メタ)アクリレートモノマーは、C1〜C8アルキル(メタ)アクリレート、特に、C4〜6アルキルアクリレート、例えば、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートなど、およびこれらのモノマーの少なくとも1種を含む組合せの、架橋された微粒子状乳化ホモポリマーまたはコポリマーであり得る。C1〜C8アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、任意選択で、15wt%までの式(19)、(20)、または(21)のコモノマーと混合して重合されてもよい。例示的なコモノマーには、以下のものに限らないが、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、フェネチルメタクリレート、N-シクロヘキシルアクリルアミド、ビニルメチルエーテルまたはアクリロニトリル、およびこれらのコモノマーの少なくとも1種を含む混合物が含まれる。任意選択で、5wt%までの多官能架橋性コモノマー、例えば、ジビニルベンゼン、アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば、グリコールビスアクリレート)、アルキレントリオールトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスアクリルアミド類、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルアジペート、クエン酸のトリアリルエステル、リン酸のトリアリルエステルなど、さらには、これらの架橋剤の少なくとも1種を含む組合せが存在してもよい。
【0121】
エラストマー相は、塊状、乳化、懸濁、溶液、または、塊状-懸濁、乳化-塊状、塊状-溶液などの組み合わせ方法、あるいは他の方法によって、連続、半バッチ、バッチプロセスを用いて重合され得る。エラストマー基質の粒径は重要ではない。エマルジョン系重合ゴムラテックスでは、例えば、約0.001から約25マイクロメートル、特に、約0.01から約15マイクロメートル、なお一層特に、約0.1から約8マイクロメートルの平均粒径を用いることができる。塊状重合ゴム基質では、約0.5から約10マイクロメートル、特に、約0.6から約1.5マイクロメートルの粒径が用いられ得る。粒径は、簡単な光透過法またはキャピラリーハイドロダイナミッククロマトグラフィー(CHDF)によって測定できる。エラストマー相は、微粒子状の、中程度に架橋された共役ブタジエンまたはC4〜6アルキルアクリレートゴムであってよく、70%を超えるゲル含量を有することが好ましい。やはり適切であるのは、ブタジエンと、スチレンおよび/またはC4〜6アルキルアクリレートゴムとの混合体である。
【0122】
エラストマー相は、全グラフトコポリマーの約5から約95wt%、さらに特に、エラストマー変性グラフトコポリマーの約20から約90wt%、なお一層特に、約40から約85wt%を占め、残りの部分が剛性グラフト相である。
【0123】
エラストマー変性グラフトコポリマーの剛性相は、モノビニル芳香族モノマーと、任意選択で1種または複数のコモノマーとを含む混合物を、1種または複数のエラストマーポリマー基質の存在の下で、グラフト重合することによって形成され得る。式(20)の前記モノビニル芳香族モノマーを剛性グラフト相に用いることができ、これらには、スチレン、α-メチルスチレン、ハロスチレン(例えば、ジブロモスチレン)、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ブチルスチレン、パラ-ヒドロキシスチレン、メトキシスチレンなど、またはこれらのモノビニル芳香族モノマーの少なくとも1種を含む組合せが含まれる。適切なコモノマーには、例えば、前記のモノビニルモノマーおよび/または一般式(21)のモノマーが含まれる。一実施形態において、Rは水素またはC1〜C2アルキルであり、XcはシアノまたはC1〜C12アルコキシカルボニルである。剛性相に使用するのに適するコモノマーの具体例には、アクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレートなど、およびこれらのコモノマーの少なくとも1種を含む組合せが含まれる。
【0124】
剛性グラフト相におけるモノビニル芳香族モノマーとコモノマーとの相対比は、エラストマー基質のタイプ、(1又は複数の)モノビニル芳香族モノマーのタイプ、(1又は複数の)コモノマーのタイプ、および耐衝撃改良剤の所望の性質に応じて広く変わり得る。剛性相は、一般に、100wt%以下のモノビニル芳香族モノマー、特に、約30から約100wt%、さらに特に、約50から約90wt%のモノビニル芳香族モノマーを含んでいてもよく、残りの部分が(1又は複数の)コモノマーである。
【0125】
存在するエラストマー変性ポリマーの量に応じて、独立したマトリックスまたはグラフトされていない剛性ポリマーもしくはコポリマーの連続相が、エラストマー変性グラフトコポリマーと共に、同時に得られ得る。特に、このような耐衝撃改良剤は、耐衝撃改良剤の全重量に対して、約40から約95wt%のエラストマー変性グラフトコポリマーと、約5から約65wt%のグラフト(コ)ポリマーとを含む。別の実施形態において、このような耐衝撃改良剤は、耐衝撃改良剤の全重量に対して、約50から約85wt%、さらに特に、約75から約85wt%のゴム変性グラフトコポリマーを、約15から約50wt%、さらに特に、約15から約25wt%のグラフト(コ)ポリマーと共に含む。
【0126】
エラストマー変性した耐衝撃改良剤の別の典型的なタイプは、少なくとも1種のシリコーンゴムモノマー、式H2C=C(Rd)C(O)OCH2CH2Re(式中、Rdは、水素またはC1〜C8直鎖状または分岐状炭化水素基であり、Reは、C3〜C16分岐状炭化水素基である)を有する分岐状アクリルゴムモノマー;第1のグラフト連結モノマー;重合性アルケニル含有有機物質;および第2のグラフト連結モノマー、から誘導される構造単位を含む。シリコーンゴムモノマーには、例えば、環状シロキサン、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、(アクリルオキシ)アルコキシシラン、(メルカプトアルキル)アルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、または、アリルアルコキシシラン、具体的には、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/またはテトラエトキシシランが、単独でもしくは組み合わせて含まれ得る。
【0127】
例示的な分岐状アクリルゴムモノマーには、イソオクチルアクリレート、6-メチルオクチルアクリレート、7-メチルオクチルアクリレート、6-メチルヘプチルアクリレートなどが、単独でもしくは組み合わせて含まれる。上記の重合性アルケニル含有有機物質は、例えば、式(20)または(21)のモノマー(例えば、スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、または、分岐のない(メタ)アクリレート(例えば、メチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレートなど))の単独でもしくは組み合わせであり得る。
【0128】
上記の少なくとも1種の第1のグラフト連結モノマーは、単独でもしくは組み合わせで、(アクリルオキシ)アルコキシシラン、(メルカプトアルキル)アルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、または、アリルアルコキシシラン、例えば、(γ-メタクリルオキシプロピル)(ジメトキシ)メチルシランおよび/または(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランであり得る。上記の少なくとも1種の第2のグラフト連結モノマーは、単独でもしくは組み合わせで、少なくとも1つのアリル基を有する、複数のエチレン基を有する不飽和化合物、例えば、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、またはトリアリルイソシアヌレートである。
【0129】
これらのシリコーン-アクリレートの耐衝撃改良剤組成物は乳化重合によって調製することができ、この場合、例えば、少なくとも1種のシリコーンゴムモノマーが、少なくとも1種の第1のグラフト連結モノマーと、ドデシルベンゼンスルホン酸のような界面活性剤の存在下に、約30℃から約110℃の温度で反応させられて、シリコーンゴムラテックスを形成する。別法として、シクロオクタメチルテトラシロキサンのような環状シロキサンと、テトラエトキシオルソシリケートとを、(γ-メタクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシランのような第1のグラフト連結モノマーと反応させて、約100ナノメートルから約2ミクロンの平均粒径を有するシリコーンゴムを得てもよい。次いで、少なくとも1種の分岐状アクリレートゴムモノマーが、シリコーンゴム粒子と共に、過酸化ベンゾイルなどのフリーラジカル生成重合触媒の存在下に、任意選択で架橋モノマー(例えば、アリルメタクリレート)の存在下で重合される。次に、このラテックスは、重合性アルケニル含有有機物質および第2のグラフト連結モノマーと反応させられる。このシリコーン-アクリレートのグラフトゴムハイブリッドのラテックス粒子を、凝集により(凝集剤による処理により)水性相から分離し、乾燥して細かい粉末にし、シリコーン-アクリレートゴム耐衝撃改良剤組成物を形成できる。この方法は一般に、約100ナノメートルから約2マイクロメートルの粒径を有するシリコーン-アクリレート耐衝撃改良剤を製造するために用いることができる。
【0130】
上記のエラストマー変性グラフトコポリマーを製造するための公知の方法には、連続、半バッチ、バッチプロセスを用いる、塊状法、乳化法、懸濁法、溶液法、または、塊状-懸濁、乳化-塊状、塊状-溶液などの組み合わせ法、あるいは他の方法が含まれる。
【0131】
一実施形態において、上記のタイプの耐衝撃改良剤は、C6〜30脂肪酸のアルカリ金属塩(例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなど)、アルカリ金属炭酸塩、アミン(例えば、ドデシルジメチルアミン、ドデシルアミンなど)、およびアミンのアンモニウム塩などの塩基性物質のない状態で、乳化重合法によって調製される。このような物質は、乳化重合において界面活性剤として広く用いられており、ポリカーボネートのエステル交換および/または分解を触媒し得る。代わりに、イオン性のサルフェート、スルホネートまたはホスフェートの界面活性剤が、耐衝撃改良剤を、特に耐衝撃改良剤のエラストマー基質部分を調製するのに使用され得る。適切な界面活性剤には、例えば、C1〜22アルキルまたはC7〜25アルキルアリールスルホネート、C1〜22アルキルまたはC7〜25アルキルアリールサルフェート、C1〜22アルキルまたはC7〜25アルキルアリールホスフェート、置換シリケート、およびこれらの混合物が含まれる。具体的な界面活性剤は、C6〜16、特にC8〜12アルキルサルフェートである。実際には、脂肪酸のアルカリ金属塩、アルカリ金属炭酸塩およびその他の塩基性物質が含まれていなければ、上記の耐衝撃改良剤のどれでも使用できる。
【0132】
このタイプの具体的な耐衝撃改良剤は、界面活性剤として前記のスルホネート、サルフェート、またはホスフェートを用いてブタジエン基質が調製されているMBS耐衝撃改良剤である。この耐衝撃改良剤が約3から約8、ことに、約4から約7のpHを有することもまた好ましい。ABSおよびMBS以外の他のエラストマー変性グラフトコポリマーの例には、これらに限らないが、アクリロニトリル-スチレン-ブチルアクリレート(ASA)、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)、およびアクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレン(AES)が含まれる。耐衝撃改良剤は、それが使用される場合は、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の100重量パーセントに対して、一般に、約0.5から約50重量パーセントの量で存在する。
【0133】
本発明の熱可塑性組成物はフィラーをさらに含み得る。適切なフィラーまたは強化剤には、例えば、シリケートおよびシリカ粉末、例えば、ケイ酸アルミニウム(ムライト)、合成ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ヒューズドシリカ、結晶性シリカグラファイト、天然シリカサンドなど;ホウ素粉末、例えば、窒化ホウ素粉末、ボロンシリケート粉末など;酸化物、例えば、TiO2、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなど;硫酸カルシウム(無水物、二水和物または三水和物として);炭酸カルシウム類、例えば、チョーク、石灰石、大理石、合成沈降炭酸カルシウム類など;タルク、繊維状、球状(nodular)、針状、ラメラ状のタルクなどが含まれる;珪灰石;表面処理珪灰石;ガラス球状体、例えば、中空または中実のガラス球状体、シリケート球状体、セノスフェア、アルミノシリケート(アルモスフィア(armosphere))など;カオリン、硬質カオリン、軟質カオリン、焼成カオリン、当技術分野においてポリマーマトリックス樹脂との相溶を容易にすることが知られている様々なコーティングを備えるカオリンなどが含まれる;単結晶繊維または「ウィスカー」、例えば、炭化ケイ素、アルミナ、炭化ホウ素、鉄、ニッケル、銅など;繊維(連続繊維およびチョップド繊維が含まれる)、例えば、アスベスト、炭素繊維、ガラス繊維(例えば、E、A、C、ECR、R、S、D、またはNEガラス)など;硫化物、例えば、硫化モリブデン、硫化亜鉛など;バリウム化合物、例えば、チタン酸バリウム、バリウムフェライト、硫酸バリウム、重晶石など;金属および金属酸化物、例えば、粒子状または繊維状のアルミニウム、青銅、亜鉛、銅、ニッケルなど;フレーク状フィラー、例えば、ガラスフレーク、フレーク状炭化ケイ素、二ホウ化アルミニウム、アルミニウムフレーク、スチールフレークなど;繊維状フィラー、例えば無機短繊維(例えば、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、および硫酸カルシウム半水和物などの少なくとも1種を含むブレンドから誘導されるもの)など;天然のフィラーおよび強化材、例えば、木材を粉末にすることにより得られる木粉、繊維状産物(例えば、セルロース、綿、サイザル麻、ジュート、デンプン、コルク粉、リグニン、ピーナッツの殻、トウモロコシ、米粒殻)など;有機フィラー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン;繊維に成形できる有機ポリマー(例えば、ポリ(エーテルケトン)、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエステル、ポリエチレン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、ポリ(ビニルアルコール))により成形された強化有機繊維フィラーなど;ならびに、さらなるフィラーおよび強化剤、例えば、マイカ、クレー、長石、煙塵、フィライト、石英、珪岩、パーライト、トリポリ石、珪藻土、カーボンブラックなど、あるいは、これらのフィラーまたは強化剤の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。
【0134】
フィラーおよび強化剤は、導電を容易にするために金属材料の層により被覆されていても、あるいは、ポリマーマトリックス樹脂との接着および分散を向上させるためにシランにより表面処理されていてもよい。さらに、強化フィラーは、モノフィラメントまたはマルチフィラメント繊維の形態で供用されてもよく、また、単独で用いられても、あるいは、例えば、共織り(co-weaving)、またはコア/シース、サイド-バイ-サイド、オレンジ-タイプ、もしくはマトリックスとフィブリルの構造により、または、繊維製造分野の技術者に知られている他の方法によって、他のタイプの繊維と組み合わせて用いられてもよい。適切な共織り構造には、例えば、ガラス繊維-炭素繊維、炭素繊維-芳香族ポリイミド(アラミド)繊維、および、芳香族ポリイミド繊維-ガラス繊維などが含まれる。繊維状フィラーは、例えば、ロービング、織った繊維強化材(例えば、0〜90度ファブリックなど);不織繊維強化材(例えば、連続ストランドマット、チョップドストランドマット、ティッシュ(tissue)、紙およびフェルトなど);または、3次元強化材(例えば、ブレイド(braid))の形態で供給され得る。フィラーは、使用される場合、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の100重量パーセントに対して、一般に、約0から約90重量パーセントの量で存在する。
【0135】
本発明の熱可塑性組成物は酸化防止添加剤をさらに含み得る。適切な酸化防止添加剤には、例えば、有機ホスファイト、例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイトなど;アルキル化モノフェノールもしくはポリフェノール;ポリフェノールのジエンによるアルキル化反応生成物、例えば、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタンなど;パラクレゾールまたはジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物;アルキル化ヒドロキノン;ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル;アルキリデン-ビスフェノール;ベンジル化合物;β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸と1価もしくは多価アルコールのエステル;β-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロピオン酸と1価もしくは多価アルコールのエステル;チオアルキルまたはチオアリール化合物のエステル、例えば、ジステアリルチオプロピオネート、ジラウリルチオプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリトリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートなど;β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸のアミドなど、あるいはこれらの酸化防止剤の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。酸化防止剤は、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の100重量パーセントに対して、一般に、0.0001から1重量パーセントの量で用いられる。
【0136】
本発明の熱可塑性組成物は熱安定剤をさらに含み得る。適切な熱安定剤添加剤には、例えば、有機ホスファイト、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス-(2,6-ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス-(混合モノ-およびジノニルフェニル)ホスファイトなど;ホスホネート、例えば、ジメチルベンゼンホスホネートなど;ホスフェート、例えば、トリメチルホスフェートなど、あるいはこれらの熱安定剤の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。熱安定剤は、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の100重量パーセントに対して、一般に、0.0001から1重量パーセントの量で用いられる。
【0137】
本発明の熱可塑性組成物は光安定剤および/または紫外線(UV)吸収添加剤をさらに含み得る。用いられる場合、適切な光安定剤添加剤には、例えば、ベンゾトリアゾール、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、および、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノンなど、あるいはこれらの光安定剤の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。光安定剤は、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の100重量パーセントに対して、一般に、0.0001から1重量パーセントの量で用いられる。
【0138】
適切なUV吸収添加剤には、例えば、ヒドロキシベンゾフェノン類;ヒドロキシベンゾトリアゾール類;ヒドロキシベンゾトリアジン類;シアノアクリレート類;オキサニリド類;ベンゾオキサジノン類;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノール(CYASORB(商標)5411);2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン(CYASORB(商標)531);2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)-フェノール(CYASORB(商標)1164);2,2'-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)(CYASORB(商標)UV-3638);1,3-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(UVINUL(商標)3030);2,2'-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン);1,3-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン;ナノサイズの無機材料、例えば、酸化チタン、酸化セリウム、および酸化亜鉛、すべて、約100ナノメートル未満の粒径を有する;など、あるいはこれらのUV吸収剤の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。UV吸収剤は、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の100重量パーセントに対して、一般に、0.0001から約1重量パーセントの量で用いられる。
【0139】
可塑剤、滑剤、および/または離型剤の添加剤もまた本発明の熱可塑性組成物に使用され得る。これらのタイプの物質には、かなり重なる部分があり、これらには、例えば、フタル酸エステル、例えば、ジオクチル-4,5-エポキシヘキサヒドロフタレート;トリス-(オクトキシカルボニルエチル)イソシアヌレート;トリステアリン;ジ-、もしくはポリ官能性芳香族ホスフェート、例えば、レゾルシノールテトラフェニルジホスフェート(RDP)、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)ホスフェート、およびビスフェノールAのビス(ジフェニル)ホスフェート;ポリ-α-オレフィン;エポキシ化大豆油;シリコーン、シリコーンオイルが含まれる;エステル、例えば、アルキルステアリルエステルのような脂肪酸エステル(例えばメチルステアレート、ステアリルステアレート、ペンタエリトリトールテトラステアレート)など;メチルステアレートと、親水性および疎水性の非イオン性界面活性剤(ポリエチレングリコールポリマー、ポリプロピレングリコールポリマー、およびこれらのコポリマーが含まれる)との混合物、例えば、適切な溶媒中のメチルステアレートとポリエチレン-ポリプロピレングリコールのコポリマー;ワックス、例えば、蜜蝋、モンタンワックス、パラフィンワックス;などが含まれる。このような物質は、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の100重量パーセントに対して、一般に、0.0001から1重量パーセントの量で用いられる。
【0140】
本発明の熱可塑性組成物は帯電防止剤をさらに含み得る。「帯電防止剤」という用語は、導電性および全体的な物理的性能を向上させるために、ポリマー樹脂内に加工処理できるか、および/または、材料もしくは物品にスプレーできる、モノマー、オリゴマー、またはポリマー物質を表す。モノマーの帯電防止剤の例には、グリセロールモノステアレート、グリセロールジステアレート、グリセロールトリステアレート、エトキシ化アミン、第1級、第2級、および第3級アミン、エトキシ化アルコール、アルキルサルフェート、アルキルアリールサルフェート、アルキルホスフェート、アルキルアミンサルフェート、アルキルスルホン酸塩(例えば、ステアリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど)、第4級アンモニウム塩、第4級アンモニウム樹脂、イミダゾリン誘導体、ソルビタンエステル、エタノールアミド、ベタインなど、あるいはこれらのモノマー帯電防止剤の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。
【0141】
例示的なポリマー帯電防止剤には、特定のポリエステルアミド、ポリエーテル-ポリアミド(ポリエーテルアミド)ブロックコポリマー、ポリエーテルエステルアミドブロックコポリマー、ポリエーテルエステル、または、ポリウレタンなどが含まれ、それぞれ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの、ポリアルキレングリコール部分のポリアルキレンオキシド単位を含んでいる。このようなポリマー帯電防止剤は市販されており、例えば、Pelestat(商標)6321(Sanyo)もしくはPebax(商標)MH1657(Atofina)、Irgastat(商標)P18およびP22(Ciba-Geigy)がある。帯電防止剤として使用され得る他のポリマー物質は、真性導電性ポリマー、例えば、ポリアニリン(Panipolから、PANIPOL(登録商標)EBとして市販されている)、ポリピロールおよびポリチオフェン(Bayerから市販されている)があり、これらは、高温での溶融加工の後でも、これらの固有の導電性のいくらかを保持する。一実施形態において、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、または、これらの任意の組合せを、本発明の組成物を静電気散逸性にするように、化学的帯電防止剤を含むポリマー樹脂に用いることができる。帯電防止剤は、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の100重量パーセントに対して、一般に、0.0001から5重量パーセントの量で用いられる。
【0142】
顔料および/または染料の添加剤などの着色剤もまた、本発明の熱可塑性組成物中に存在し得る。適切な顔料には、例えば、無機顔料、例えば、金属酸化物および混合金属酸化物、例えば、酸化亜鉛、二酸化チタン類、酸化鉄類など;硫化物、例えば、硫化亜鉛類など;アルミン酸塩類;スルホケイ酸類、スルホ硫酸類、スルホクロム酸類のナトリウム塩など;カーボンブラック類;亜鉛フェライト類;ウルトラマリンブルー;Pigment Brown 24;Pigment Red 101;Pigment Yellow 119;有機顔料、例えば、アゾ、ジ-アゾ、キナクリドン類、ペリレン類、ナフタレンテトラカルボン酸類、フラバントロン類、イソインドリノン類、テトラクロロイソインドリノン類、アントラキノン類、アンサンスロン(anthanthrone)類、ジオキサジン類、フタロシアニン類、およびアゾレーキ;Pigment Blue 60、Pigment Red 122、Pigment Red 149、Pigment Red 177、Pigment Red 179、Pigment Red 202、Pigment Violet 29、Pigment Blue 15、Pigment Green 7、Pigment Yellow 147およびPigment Yellow 150、あるいはこれらの顔料の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。顔料は、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の100重量パーセントに対して、一般に、0.01から10重量パーセントの量で用いられる。
【0143】
適切な染料は一般に有機物質であり、これらには、例えば、クマリン染料、例えば、クマリン460(青)クマリン6(緑)、ナイルレッドなど;ランタニド錯体;炭化水素および置換炭化水素染料;多環芳香族炭化水素染料;シンチレーション染料、例えば、オキサゾールまたはオキサジアゾール染料;アリール-もしくはヘテロアリール-置換ポリ(C2-8)オレフィン染料;カルボシアニン染料;インダントロン染料;フタロシアニン染料;オキサジン染料;カルボスチリル染料;ナフタレンテトラカルボン酸染料;ポルフィリン染料;ビス(スチリル)ビフェニル染料;アクリジン染料;アントラキノン染料;シアニン染料;メチン染料;アリールメタン染料;アゾ染料;インジゴイド染料、チオインジゴイド染料;ジアゾニウム染料;ニトロ染料;キノンイミン染料;アミノケトン染料;テトラゾリウム染料;チアゾール染料;ペリレン染料、ペリノン染料;ビス-ベンゾオキサゾリルチオフェン(BBOT);トリアリールメタン染料;キサンテン染料;チオキサンテン染料;ナフタルイミド染料;ラクトン染料;フルオロフォア、例えば、反ストークスシフト染料(これらは、近赤外波長を吸収し、可視波長で発光する)など;発光(luminescent)染料、例えば、7-アミノ-4-メチルクマリン;3-(2'-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン;2-(4-ビフェニルイル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール;2,5-ビス-(4-ビフェニルイル)-オキサゾール;2,2'-ジメチル-p-クオターフェニル;2,2-ジメチル-p-ターフェニル;3,5,3"",5""-テトラ-t-ブチル-p-キンキフェニル;2,5-ジフェニルフラン;2,5-ジフェニルオキサゾール;4,4'-ジフェニルスチルベン;4-ジシアノメチレン-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン;1,1'-ジエチル-2,2'-カルボシアニンアイオダイド;3,3'-ジエチル-4,4',5,5'-ジベンゾチアトリカルボシアニンアイオダイド;7-ジメチルアミノ-1-メチル-4-メトキシ-8-アザキノロン-2;7-ジメチルアミノ-4-メチルキノロン-2;2-(4-(4-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ブタジエニル)-3-エチルベンゾチアゾリウムパークロレート;3-ジエチルアミノ-7-ジエチルイミノフェノキサゾニウム(phenoxazonium)パークロレート;2-(1-ナフチル)-5-フェニルオキサゾール;2,2'-p-フェニレン-ビス(5-フェニルオキサゾール);ローダミン700;ローダミン800;ピレン;クリセン;ルブレン;コロネン、あるいはこれらの染料の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。染料は、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の100重量パーセントに対して、一般に、0.01から10重量パーセントの量で用いられる。
【0144】
本発明の熱可塑性組成物は難燃剤をさらに含み得る。添加され得る適切な難燃剤は、リン、臭素、および/または塩素を含む有機化合物であり得る。臭素を含まず塩素を含まずリンを含む難燃剤、例えば、有機ホスフェート、およびリン-窒素の結合を含む有機化合物は、規制による理由から特定の用途にとって好ましいものであり得る。
【0145】
例示的な有機ホスフェートの1つのタイプは、式(GO)3P=Oの芳香族ホスフェートであり、式中、各Gは独立に、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であるが、ただし、少なくとも1つのGは芳香族基である。G基の2つは一緒になって環状基となっていてもよい(例えばジフェニルペンタエリトリトールジホスフェート、これは、Axelrodの米国特許第4154775号に記載されている)。他の適切な芳香族ホスフェートは、例えば、フェニルビス(ドデシル)ホスフェート、フェニルビス(ネオペンチル)ホスフェート、フェニルビス(3,5,5'-トリメチルへキシル)ホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジ(p-トリル)ホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)p-トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、ビス(ドデシル)p-トリルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2-クロロエチルジフェニルホスフェート、p-トリルビス(2,5,5'-トリメチルヘキシル)ホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどであり得る。特定の芳香族ホスフェートは、各Gが芳香族であるものであり、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、イソプロピル化トリフェニルホスフェートなどである。
【0146】
ジ-、またはポリ官能性の芳香族リン含有化合物、例えば、下の式の化合物もまた有用である。
【0147】
【化27】

【0148】
上記式中、各G1は独立に、1から約30個の炭素原子を有する炭化水素であり;各G2は独立に、1から約30個の炭素原子を有する炭化水素または炭化水素オキシ(hydrocarbonoxy)であり;各Xは独立に、臭素または塩素であり;mは0から4であり、nは1から約30である。適切なジ-またはポリ官能性芳香族リン含有化合物の例には、レゾルシノールテトラフェニルジホスフェート(RDP)、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)ホスフェート、およびビスフェノール-Aのビス(ジフェニル)ホスフェート、それぞれ、これらのオリゴマーおよびポリマー相当物などが含まれる。
【0149】
リン-窒素の結合を含む適切な難燃剤の例示的化合物には、ホスホニトリルクロリド、リンエステルアミド、リン酸アミド類、ホスホン酸アミド類、ホスフィン酸アミド類、トリス(アジリジニル)ホスフィンオキシドが含まれる。それが存在する場合には、リン含有難燃剤は、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の100重量パーセントに対して、一般に、0.1から5重量パーセントの量で存在する。
【0150】
ハロゲン化物質、例えば、下記式(22)を有するハロゲン化された化合物および樹脂もまた、難燃剤として用いることができる。
【0151】
【化28】

【0152】
上記式中、Rは、アルキレン、アルキリデンまたは脂環式の連結、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、イソプロピリデン、ブチレン、イソブチレン、アミレン、シクロヘキシレン、シクロペンチリデンなど;あるいは、酸素エーテル、カルボニル、アミン、または硫黄含有結合、例えば、スルフィド、スルホキシド、スルホンなどである。Rはまた、芳香族基、アミノ、エーテル、カルボニル、スルフィド、スルホキシド、スルホンなどの基によって連結された、2つ以上のアルキレンまたはアルキリデン連結基からなっていてもよい。
【0153】
式(22)のArおよびAr'は、それぞれ独立に、フェニレン、ビフェニレン、ターフェニレン、ナフチレンなどの、モノ-またはポリ炭素環式芳香族基である。
【0154】
Yは、有機、無機、または有機金属の基、例えば:ハロゲン、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素;または、一般式OE(式中、EはXと同様の1価の炭化水素基である)のエーテル基;または、Rにより表されるタイプの1価の炭化水素基;または、他の置換基(これらの置換基は、1つのアリール核当たり、少なくとも1個、好ましくは2個のハロゲン原子が存在する場合、本質的に不活性である)、例えば、ニトロ、シアノなどである。
【0155】
存在する場合には、各Xは独立に、1価の炭化水素基、例えば、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、デシルなど);アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、キシリル、トリルなど);アラルキル基(例えば、ベンジル、エチルフェニルなど);脂環式基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなど)である。この1価の炭化水素基は、それ自体、不活性置換基を含んでいてもよい。
【0156】
各dは独立に、1から、ArまたはAr'を含む芳香族環上で置換され置き換えることができる水素の数の最大値に相当する数までである。各eは独立に、0から、R上で置き換えることができる水素の数の最大値に相当する数までである。各a、b、およびcは独立に、0を含むすべての数である。bが0でない場合、aもcも0でなくてよい。そうでなければ、aまたはcのいずれかは0であってもよいが両方共0ではない。bが0である場合、芳香族基は直接の炭素-炭素結合によってつながれている。
【0157】
芳香族基(ArおよびAr')のヒドロキシルおよびY置換基は、芳香族環のオルト、メタまたはパラ位で変わることができ、これらの基は互いに、可能などのような幾何的な関係にあってもよい。
【0158】
上の式に範囲内に含まれるのはビスフェノールであり、次のものが代表的である:2,2-ビス-(3,5-ジクロロフェニル)-プロパン;ビス-(2-クロロフェニル)-メタン;ビス(2,6-ジブロモフェニル)-メタン;1,1-ビス-(4-ヨードフェニル)-エタン;1,2-ビス-(2,6-ジクロロフェニル)-エタン;1,1-ビス-(2-クロロ-4-ヨードフェニル)エタン;1,1-ビス-(2-クロロ-4-メチルフェニル)-エタン;1,1-ビス-(3,5-ジクロロフェニル)-エタン;2,2-ビス-(3-フェニル-4-ブロモフェニル)-エタン;2,6-ビス-(4,6-ジクロロナフチル)-プロパン;2,2-ビス-(2,6-ジクロロフェニル)-ペンタン;2,2-ビス-(3,5-ジブロモフェニル)-ヘキサン;ビス-(4-クロロフェニル)-フェニル-メタン;ビス-(3,5-ジクロロフェニル)-シクロヘキシルメタン;ビス-(3-ニトロ-4-ブロモフェニル)-メタン;ビス-(4-ヒドロキシ-2,6-ジクロロ-3-メトキシフェニル)-メタン;および2,2-ビス-(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン 2,2 ビス-(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン。上記構造式の中には1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジブロモベンゼン、1,3-ジクロロ-4-ヒドロキシベンゼン、および2,2'-ジクロロビフェニル、ポリ臭化1,4-ジフェノキシベンゼン、2,4'-ジブロモビフェニル、および2,4'-ジクロロビフェニルなどのビフェニル、ならびにデカブロモジフェニルオキシドなども含まれる。
【0159】
やはり有用であるのは、オリゴマーおよびポリマーのハロゲン化芳香族化合物、例えば、ビスフェノールAおよびテトラブロモビスフェノールAとカーボネート前駆体(例えば、ホスゲン)とのコポリカーボネートである。金属相乗作用剤、例えば、酸化アンチモン、もまた難燃剤と共に使用され得る。存在する場合には、ハロゲン含有難燃剤は、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の100重量パーセントに対して、一般に、0.1から10重量パーセントの量で存在する。
【0160】
無機難燃剤、例えば、C2〜16アルキルスルホン酸塩、例えば、ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム(Rimar塩)、ペルフルオロオクタンスルホン酸カリウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、およびジフェニルスルホンスルホン酸カリウムなど;アルカリ金属またはアルカリ土類金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよびバリウム)と無機酸錯塩(例えばオキソアニオン)との反応によって生成する塩(例えば炭酸のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩、例えば、Na2CO3、K2CO3、MgCO3、CaCO3、およびBaCO3)、あるいはフルオロ-アニオン錯体との反応によって生成する塩(例えば、Li3AlF6、BaSiF6、KBF4、K3AlF6、KAlF4、K2SiF6、および/またはNa3AlF6)などもまた使用され得る。存在する場合には、無機難燃剤は、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の100重量パーセントに対して、一般に、0.1から5重量パーセントの量で存在する。
【0161】
ドリップ防止剤(anti-drip agent)、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの、フィブリル形成性または非フィブリル形成性フルオロポリマーもまた、本発明の熱可塑性組成物に使用され得る。ドリップ防止剤は、上記の剛性コポリマー(例えば、スチレン-アクリロニトリルのコポリマー(SAN))によってカプセル化されてもよい。SANによってカプセル化されたPTFEはTSANとして知られている。カプセル化されたフルオロポリマーは、フルオロポリマーの存在下に(例えば、水性分散体)、カプセル化するポリマーを重合することによって製造され得る。TSANは組成物中に、より容易に分散し得るという点において、TSANはPTFEを凌ぐかなりの利点をもたらし得る。適切なTSANは、カプセル化フルオロポリマーの全量に対して、例えば、約50wt%のPTFEおよび約50%のSANを含み得る。このSANは、コポリマーの全量に対して、例えば、約75wt%のスチレンおよび約25wt%のアクリロニトリルを含み得る。別法として、フルオロポリマーを、いずれかのやり方で、例えば芳香族ポリカーボネート樹脂またはSANのような第2のポリマーと予備ブレンドして、ドリップ防止剤として使用される塊状物質を形成させてもよい。どちらの方法もカプセル化フルオロポリマーを製造するために用いることができる。ドリップ防止剤は、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の100重量パーセントに対して、一般に、0.1から5重量パーセントの量で用いられる。
【0162】
放射線安定剤、特にγ線安定剤もまた本発明の熱可塑性組成物中に存在していてもよい。適切なγ線安定剤には、ジオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、メソ-2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,4-ヘキサンジオールなど;脂環式アルコール、例えば、1,2-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオールなど;分岐状非環式ジオール、例えば、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール(ピナコール)など、ならびにポリオール、さらには、アルコキシ置換環式もしくは非環式アルカンが含まれる。不飽和部分を有するアルケノールもまた、有用なアルコールの部類であり、その例には、4-メチル-4-ペンテン-2-オール、3-メチル-ペンテン-3-オール、2-メチル-4-ペンテン-2-オール、2,4-ジメチル-4-ペンテン-2-オール、および9-デセン-1-オールが含まれる。適切なアルコールの別の部類は、第3級アルコールであり、これらは少なくとも1つのヒドロキシ置換第3級炭素を有する。これらの例には、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(ヘキシレングリコール)、2-フェニル-2-ブタノール、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、2-フェニル-2-ブタノールなどと、1-ヒドロキシ-1-メチル-シクロヘキサンのような脂環式第3級炭素が含まれる。適切なアルコールの別の部類は、ヒドロキシメチル芳香族化合物であり、これらは、芳香族環の不飽和炭素に結合した飽和炭素にヒドロキシ置換を有する。ヒドロキシ置換飽和炭素は、メチロール基(-CH2OH)であるか、あるいは、それは、(-CR4HOH)または(-CR42OH)(これらの式中、R4は複雑なまたは単純な炭化水素である)の場合にそうであるような、より複雑な炭化水素基の構成要素であってもよい。具体的なヒドロキシメチル芳香族化合物は、ベンズヒドロール、1,3-ベンゼンジメタノール、ベンジルアルコール、4-ベンジルオキシベンジルアルコールおよびベンジルベンジルアルコールであり得る。特定のアルコールは、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(ヘキシレングリコールとしても知られている)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールである。γ線安定剤は、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒の反応生成物、または、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒の反応生成物の全重量に対して、一般的には、0.001から1重量パーセント、さらに特に、0.01から0.5wt%の量で用いられる。
【0163】
本明細書において開示されている熱可塑性組成物は、エステル交換触媒を用いる、ポリエステル-ポリカーボネートおよびポリカーボネートの反応生成物を含む。ポリエステル-ポリカーボネートは、メルトフローおよび延性(ductility)に関する所望の特性が得られるような適切な比率で、ポリカーボネートと混合され得る。エステル交換触媒の量は、ヘーズ、黄色度(イエローインデックス)、ノッチ付き衝撃強度、およびメルトフローを含めて、本発明の熱可塑性組成物の性質をバランスさせるのに適切な量である。
【0164】
一実施形態において、本発明の熱可塑性組成物は、10:90から90:10、特に、15:85から85:15、さらに特に、20:80から80:20の重量比の、ポリエステル-ポリカーボネートとポリカーボネートの反応生成物と、用いられるポリエステル-ポリカーボネートおよびポリカーボネートポリマーの重量に対して、40から220ppm、特に、50から200ppm、さらに特に、60から180ppmのレベルのエステル交換触媒とを含む。別の実施形態において、本発明の熱可塑性組成物は、本質的に、10:90から90:10、特に、15:85から85:15、さらに特に、20:80から80:20の重量比の、ポリエステル-ポリカーボネートとポリカーボネートの反応生成物と、用いられるポリエステル-ポリカーボネートおよびポリカーボネートポリマーの重量に対して、40から220ppm、特に、50から200ppm、さらに特に、60から180ppmのレベルのエステル交換触媒とからなる。別の実施形態において、本発明の熱可塑性組成物は、10:90から90:10、特に、15:85から85:15、さらに特に、20:80から80:20の重量比の、ポリエステル-ポリカーボネートとポリカーボネートの反応生成物と、用いられるポリエステル-ポリカーボネートおよびポリカーボネートポリマーの重量に対して、40から220ppm、特に、50から200ppm、さらに特に、60から180ppmのレベルのエステル交換触媒とからなる。これらの値のすべては、特に断らない限り、他のポリマー、添加剤またはフィラーを除いた、ポリエステル-ポリカーボネート、ポリカーボネート、およびエステル交換触媒を合わせた重量に対するものであり、指定されたすべての成分の重量パーセントを合わせたものは100wt%を超えない。
【0165】
本明細書に開示されている熱可塑性組成物はまた、エステル交換触媒を用いる、第1ポリエステル-ポリカーボネートと第2ポリエステル-ポリカーボネートとの反応生成物を含む。これらのポリエステル-ポリカーボネートは、メルトフローおよび延性に関する所望の特性が得られるような適切な比率で混合され得る。エステル交換触媒の量は、ヘーズ、黄色度、ノッチ付き衝撃強度、およびメルトフローを含めて、本発明の熱可塑性組成物の性質をバランスさせるのに適切なものである。
【0166】
一実施形態において、本発明の熱可塑性組成物は、10:90から90:10、特に、15:85から85:15、さらに特に、20:80から80:20の重量比の第1ポリエステル-ポリカーボネートと第2ポリエステル-ポリカーボネートの反応生成物と、用いられる2つのポリエステル-ポリカーボネートポリマーの重量に対して、40から220ppm、特に、50から200ppm、さらに特に、60から180ppmのレベルのエステル交換触媒とを含む。別の実施形態においては、本発明の熱可塑性組成物は、本質的に、10:90から90:10、特に、15:85から85:15、さらに特に、20:80から80:20の重量比の第1ポリエステル-ポリカーボネートと第2ポリエステル-ポリカーボネートの反応生成物と、用いられる2つポリエステル-ポリカーボネートポリマーの重量に対して、40から220ppm、特に、50から200ppm、さらに特に、60から180ppmのレベルのエステル交換触媒とからなる。別の実施形態において、本発明の熱可塑性組成物は、10:90から90:10、特に、15:85から85:15、さらに特に、20:80から80:20の重量比の、第1ポリエステル-ポリカーボネートと第2ポリエステル-ポリカーボネートの反応生成物と、用いられる2つポリエステル-ポリカーボネートポリマーの重量に対して、40から220ppm、特に、50から200ppm、さらに特に、60から180ppmのレベルのエステル交換触媒とからなる。これらの値の全ては、特に断らない限り、他のポリマー、添加剤またはフィラーを除いた、2つのポリエステル-ポリカーボネートおよびエステル交換触媒を合わせた重量に対するものであり、指定された全ての成分の重量パーセントを合わせたものは100wt%を超えない。
【0167】
典型的な実施形態において、前記反応生成物は、式(23)の繰返しエステル単位:
【0168】
【化29】

【0169】
[上記式中、イソフタレート単位(u)とテレフタレート単位(v)のモル比は、91:9から2:98、さらに特に、85:15から3:97である]と、式(24)および(25)の繰返し可能なポリカーボネート単位:
【0170】
【化30】

【0171】
[ここで、繰返しエステル単位(23)のモル%(r)は、75モル%以上、特に80モル%以上であり、繰返し可能なカーボネート単位(24)のモル%(s)は、1から25モル%、特に、2から20モル%であり、繰返し可能なカーボネート単位(25)のモル%(t)は、25モル%未満、特に、80モル%未満であり、r+s+tは100モル%に等しい]とを含むポリエステル-ポリカーボネート10から90wt%を含む組合せを含む。式(24)および(25)の繰返し可能なカーボネート単位の構造は、カーボネート単位と他のコポリマー単位との結合性をもたらすように修飾されていてもよいことに注意すべきである。前記の組合せはまた、繰返し可能なカーボネート単位(25)を含むポリカーボネート90から10wt%;ならびに、ポリエステル-ポリカーボネートおよびポリカーボネートのポリマーの全量に対して、40から220ppmで存在するエステル交換触媒を含む。この反応生成物は、ASTM D1003-00に準拠して厚さ3.2mmで測定して、1.7%以下、特に1.0%以下のヘーズしか有しない。一実施形態において、本発明の熱可塑性組成物は、上の反応生成物を含む。
【0172】
別の実施形態において、前記反応生成物は、式(23)の繰返しエステル単位:
【0173】
【化31】

【0174】
[上記式中、イソフタレート単位(u)とテレフタレート単位(v)のモル比は、91:9から2:98、さらに特に、85:15から3:97である]と、下記式(24)および(25)の繰返し可能なポリカーボネート単位:
【0175】
【化32】

【0176】
[ここで、繰返しエステル単位(23)のモル%(r)は、75モル%以上、特に80モル%以上であり、繰返し可能なカーボネート単位(24)のモル%(s)は、1から25モル%、特に、2から20モル%であり、繰返し可能なカーボネート単位(25)のモル%(t)は、25モル%未満、特に、20モル%未満であり、r+s+tは100モル%に等しい]とを含む第1ポリエステル-ポリカーボネート10から90wt%を含む組合せを含む。式(24)および(25)の繰返し可能なカーボネート単位の構造は、カーボネート単位と他のコポリマー単位との結合性をもたらすように修飾されていてもよいことに注意すべきである。この組合せはまた、式(23)の繰返しエステル単位と式(24)および(25)の繰返し可能なカーボネート単位とを含む第2のポリエステル-ポリカーボネート90から10wt%を含み、繰返しエステル単位(23)のモル%(r)は、25モル%未満、特に20モル%未満であり、繰返し可能なカーボネート単位(24)のモル%(s)は、1から25モル%、特に2から20モル%であり、また、繰返し可能なカーボネート単位(24)のモル%(t)は、75モル%以上、特に80モル%以上であり、r+s+tは100モル%に等しく;かつ、エステル交換触媒は、2つのポリエステル-ポリカーボネートコポリマーの全重量に対して、40から220ppmで存在する。この反応生成物は、ASTM D1003-00に準拠して厚さ3.2mmで測定して、1.0%以下のヘーズを有する。一実施形態において、熱可塑性組成物は上の反応生成物を含む。
【0177】
本発明の熱可塑性組成物は、当技術分野において一般に利用できる方法によって製造でき、これらの方法では、コポリマーの組合せ(コポリマーの個々の組成を含めて)、具体的な触媒、これらの相対量、および反応条件(例えば、熱入力、分散)は、その方法が均一な組合せ物を生成するように選択される。例えば、一実施形態において、1つの処置のやり方として、最初に、粉末化ポリエステル-ポリカーボネート、粉末化ポリカーボネート、および/または他の任意選択の成分が、Henschel(商標)高速ミキサー内で一緒にされる。他の低剪断法(手による混合が含まれるが、これに限らない)もまた、このブレンド作業を実施するために用いてもよい。次いで、このブレンド物は、ホッパーを通して押出機のスロート(throat)または供給スロートに供給される。別法として、1種または複数の成分は、スロートで、また/あるいは、サイドスタッファー(sidestuffer)または供給ポートを通して下流で、押出機に直接供給することによって、組成物に組み込んでもよい。このような添加剤はまた、所望のポリマー樹脂を用いてマスターバッチ(すなわち、成分ポリマー中の添加剤高濃度物)にコンパウンド化して、押出機に供給してもよい。押出機は一般に、組成物を流動させるのに必要とされる温度より高い温度で運転される。触媒もまた、水溶液として押出機のスロートに落として付随して供給される。触媒は計量ポンプを用いて、または較正した重力供給ドリップによって供給されてもよい。触媒はまた、押出の前にミキサー内で、ポリエステル-ポリカーボネートおよびポリカーボネート(または、ポリエステル-ポリカーボネートまたは2つのポリエステル-ポリカーボネート)の粉末と共にブレンドしてもよい。触媒はまた、水中で50wt%の濃度から1wt%の触媒まで水で稀釈してもよい。押出物は、水浴(通常、低導電率の純粋な脱イオン水で満たされた水浴)で直ちに冷却され、ペレット化される(特に、実施できる範囲で、清浄で微粒子を含まない環境中で)。これらのペレットは、押出物を切断した時に調製された状態で、所望に応じて4分の1インチ以下の長さであってよく、断面が楕円から円まで、様々な形であるものが含まれ得る。このようなペレットは、次の押出、モールディング、成形(shaping)、または賦形(forming)に使用され得る。可能な限り微粉(細かい粒子)の割合が少ないことか望ましいこともまた一般に知られている。
【0178】
他の実施形態には、前記組成物のいずれかを含む物品が含まれる。例えば、前記物品には、フィルム、シート、モールド成形物、膜、またはコンポジットが含まれ、フィルム、シート、モールディング成形物、またはコンポジットは、本発明の組成物を含む少なくとも1つの層を有する。本発明の組成物は、一般的な熱可塑性樹脂加工法、例えば、フィルムおよびシートの押出、射出成形、ガスアシスト射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形などを使用して物品に作製してよい。フィルムおよびシートの押出法には、溶融キャスティング、インフレーションフィルム押出、およびカレンダー加工が含まれ得る。共押出およびラミネーション法は、複合多層フィルムまたはシートを成形するのに用いることができる。単層または多層基材に、耐スクラッチ性、耐紫外線性、美的魅力、滑性、および生体適合性などのさらなる特性を付与するために、単層または多層のコーティングを付けることができる。コーティングは、標準的な塗布技術、例えば、ロール法、スプレー法、ディッピング、ブラッシング(brushing)、またはフローコーティングによって付けることができる。別法として、本発明のフィルムおよびシートは、本発明の組成物の適切な溶剤の溶液または懸濁液を基材、ベルト、またはロール上にキャスティングし、その後、溶媒を除去することによって製造してもよい。
【0179】
延伸フィルムは、インフレーションフィルム押出により、またはキャストフィルムもしくはカレンダー加工フィルムを、熱変形温度近くで、従来の延伸技術を用いて延伸することによって調製できる。例えば、ラジアル延伸パントグラフを多軸同時延伸に用いることができ、x-y方向延伸パントグラフを、平面のx-y方向における同時または逐次延伸に用いることができる。逐次一軸延伸セクションを有する装置(例えば、縦方向に延伸するための速度の異なるロールのセクションと、横方法に延伸するためのテンターフレームセクションとを装備する機械)はまた、一軸および二軸延伸を実施するために使用できる。
【0180】
前記のフィルムおよびシートは、さらに、賦形およびモールディング法(これらに限らないが、熱成形、真空成形、加圧成形、射出成形、および圧縮成形が含まれる)を通じて、成形物品に、熱可塑的に加工され得る。多層成形物品はまた、熱可塑性樹脂を単層もしくは多層のフィルムまたはシート上に、次の様にして射出成形することによって成形できる:(a)例えばスクリーン印刷または転写染料を用いて表面に1つまたは複数の色を任意選択で有する、単層または多層の熱可塑性基材を準備する段階;(b)例えば、基材を3次元形状に成形およびトリミングし、この基材の3次元形状にぴったりと合う表面を有するモールドに基材を合わせることによって、基材をモールドの外形に沿わせる段階;(c)基材の背後のモールドキャビティに熱可塑性樹脂を射出して、(i)1個の永続的に結合した3次元製品を製造する、あるいは(ii)印刷基材から射出樹脂にパターンまたは美的効果を転写し、印刷された基材を取り除いて、モールド成形された樹脂に美的効果を付与する段階。
【0181】
当業者はまた、表面外観を変え、さらなる機能を物品に付与するために、一般的な硬化および表面修飾法(加熱硬化(heat setting)、シボ加工(texturing)、エンボス加工、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理および真空蒸着が含まれるが、これらに限らない)が前記物品にさらに適用され得ることを理解するであろう。
【0182】
本発明の熱可塑性組成物を含む成形、賦形、またはモールド成形された物品もまた提供される。本発明の熱可塑性組成物は、例えば、コンピュータおよび事務機器のハウジング(例えば、モニタのハウジング)、ハンドヘルド電子デバイスのハウジング(例えば、携帯電話のハウジング)、電気コネクター、医療デバイス、膜デバイス、および照明取付け具の部品、装飾品、家庭用器具、屋根、温室、サンルーム、水泳プールエンクロージャなどのような物品に形作るための、様々な手段(例えば、射出成形、押出、回転成形、ブロー成形および熱成形)によって、有用な成形物品にモールド成形できる。本明細書において提供される熱可塑性組成物を用いて製造できる代表的な他の耐候性物品には、航空機、自動車、トラック、軍用運搬手段(自動車、航空機、および水上運搬手段が含まれる)、およびオートバイの内装および外装部品(パネル、クォーターパネル、ロッカーパネル、トリム、フェンダー、ドア、デッキリッド、トランクリッド、フード、ボンネット、ルーフ、バンパー、フェイシア、グリル、ミラーハウジング、ピラーアップリケ、クラッド、ボディサイドモールディング、ホイールカバー、ハブキャップ、ドアハンドル、スポイラー、ウィンドウフレーム、ヘッドライトベゼル、ヘッドライト、テールライト、テールライトハウシング、テールライトベゼル、ナンバープレートエンクロージャ、ルーフラックおよびラニングボードが含まれる);屋外運搬手段およびデバイスのエンクロージャ、ハウジング、パネル、およびパーツ;電気通信デバイスのエンクロージャ:屋外家具;ボートおよびマリン設備(トリム、エンクロージャ、およびハウジングが含まれる);船外機ハウジング;測深機のハウジング、パーソナルウォータークラフト;ジェットスキー;プール;スパー;ホットタブ;ステップ;ステップの覆い;建築用品、例えば、グレージング(glazing)、屋根、窓、床、装飾窓の備品もしくは演出;写真、絵画、ポスターおよび同様のディスプレイ品目の演出ガラスカバー;光学レンズ;眼用レンズ;補整用眼用レンズ;移植眼用レンズ;壁パネル、およびドア;保護グラフィックス;屋外および屋内の標識;現金自動預け払い機(ATM)のエンクロージャ、ハウジング、パネル、およびパーツ;芝および庭用トラクター、芝刈り機、および道具(芝および庭用の道具が含まれる)のエンクロージャ、ハウジング、パネル、およびパーツ;窓およびドアのトリム;スポーツ用品および玩具;スノーモビルのエンクロージャ、ハウジング、パネル、およびパーツ;レクリエーション用運搬手段のパネルおよび部品;運動場の備品;プラスチック-木材の組合せで製造される物品;ゴルフコースマーカー;ユーティリティーピットカバー;コンピュータのハウジング;デスクトップコンピュータのハウジング;ポータブルコンピュータのハウジング;ラップトップコンピュータのハウジング;パームヘルド(palm held)コンピュータのハウジング;モニタのハウジング;プリンタのハウジング;キーボード;FAXマシンのハウジング;コピー機のハウジング;電話機のハウジング;携帯電話のハウジング;ラジオ発信機のハウジング;ラジオ受信機のハウジング;じか付け照明器具;照明装置;ネットワークインターフェイスデバイスのハウジング;トランスフォーマーのハウジング;空調機のハウジング;公共の乗物の被覆材または座席;列車、地下鉄、またはバスの被覆材または座席;計測器のハウジング;アンテナのハウジング;パラボラアンテナの被覆材;コーティングヘルメットおよび個人用保護備品;合成もしくは天然のコーティングテキスタイル;コーティング写真フィルムおよび写真プリント;コーティング印刷物品;コーティング染色物品;コーティング蛍光物品;コーティング発泡物品;などの用途が含まれる。さらなる製造操作、例えば、これらに限らないが、モールディング、インモールド加飾、ペイントオーブン中での焼付け、ラミネーション、および/または熱成形を物品に対して行うことができる。
【0183】
一実施形態において、本発明の熱可塑性組成物(または、それから調製される物品)は、次の望ましい性質の1つまたは複数を示し得る:ASTM D1003-00に準拠して厚さ3.2mmで測定して、少なくとも70%、さらに特に、少なくとも80%のパーセント透過率;ISO1133に準拠して300℃、1.2kgで測定して、1から40、さらに特に2から25cm3/10分のメルトボリュームレート。本発明の熱可塑性組成物は、さらに、ISO179に準拠して、66psiで測定して、110から170℃、さらに特に、120から160℃の熱変形温度(HDT)、および、ASTM D256-04に準拠して23℃で測定して、4から18フット-ポンド/インチ(ft-lb/in)、さらに特に、少なくとも5から16ft-lb/inのノッチ付きアイゾット衝撃強度を有し得る。本発明のポリカーボネート組成物は、さらに、ASTM D256-04に準拠して測定して、30から120%、さらに特に、60から115%の引張伸び(%)を有し得る。さらに、本発明の熱可塑性組成物は、厚さ3.18mmの試験試料でASTM D-1925に準拠して測定して、30以下、特に25以下、さらに特に20以下の黄色度(イエローインデックス:YI)を有する。
【0184】
[実施例]
本発明の熱可塑性組成物が、以下の非限定的実施例によってさらに例示され、これらの実施例では次の成分を用いる。
【0185】
実施例を調製するために用いられているポリマーには、ポリエステル-ポリカーボネートI(PECとしても参照される):
【0186】
【化33】

【0187】
[上記式中、ポリエステル単位rの異性体組成は50モル%のイソフタレート-レゾルシノール、および50モル%のテレフタレート-レゾルシノールであり、使用した構成物のポリエステル単位r、レゾルシノール-カーボネート単位s、およびビスフェノールAカーボネート単位tのモル%、またはr:s:tはそれぞれ、51:15:34および81:11:8である];および、ビスフェノールAカーボネート単位に基づくポリカーボネートII:
【0188】
【化34】

【0189】
[重量平均分子量は、架橋スチレン-ジビニルベンゼンのカラムセット、溶離液としての塩化メチレン中に約0.1重量%の試料濃度、および内部フローマーカーとしてトルエンを用い、1.5ml/minの流量で、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定して、29.9kg/molまたは23.3kg/molのいずれかである]
が含まれる。本明細書で用いたエステル交換触媒は、20または40重量パーセント(wt%)の、水酸化テトラブチルホスホニウム(TBPH)、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム(DEDMAH)、水酸化ナトリウム、またはステアリン酸ナトリウムのいずれかの水溶液であり、特に断らない限り、ポリマー成分(I)および(II)の重量に対して、添加濃度は80または160ppmであった。
【0190】
指示される場合以外、すべての熱可塑性組成物は、Werner & Pfleidererの同方向回転二軸押出機(長さ/直径(L/D)の比=30/1、真空ポートがダイ面近くに配置されている)でコンパウンド化する。二軸押出機は、ポリマー組成物の混合を良好にするのに十分な分配および分散混合エレメントを有していた。次に、組成物を、ISO294に準拠してHuskyまたはBOY射出成形機でモールド成形する。組成物は、285から330℃の温度でコンパウンド化し、モールド成形するが、この方法はこれらの温度に限定されないことを、当業者は理解するであろう。
【0191】
熱可塑性組成物は次の性質について試験する:ヘーズ(%)は、ASTM D1003-00に準拠して、厚さ3.2または1.6ミリメートルのモールド成形プレートで、Gardner Haze Gurad Dualを用いて求めた。ノッチ付きアイゾット衝撃強度および%延性は、ISO180に準拠して、厚さ4および3.12ミリメートルのテストバーで、様々な温度で(23℃でのNI試験についてのASTM D256-04を参照されたい)求め、フィート-ポンド/インチで得た値に0.534J/cm/ft-lb/inを掛けることによってジュール/センチメートル(J/cm)に変換した。メルトボリュームレート(本明細書では、メルトフローレートとも呼ぶ)MVRは、ISO1133に準拠して、1.2キログラムの荷重を用いて、300℃で、6および18分間について試験した(ASTM 1238-04も参照されたい)。熱変形温度(HDT)は、ISO179に準拠して、66psiで、8分の1インチ(3.12mm)のバーで求めた。実験室スケールの試料についての黄色度(YI)は、ASTM D1925-70に準拠して求めた。
【0192】
(実施例1)
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(2500g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(2500g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(1.0gの40wt%水溶液、触媒は80ppmとなる)。
【0193】
(実施例2)
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(2500g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(2500g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(1.0gの40wt%水溶液、触媒はIおよびIIに対して80ppmとなる);(D)ホスファイト安定剤(5.0g)、(E)二酸化チタン(500g)。
【0194】
(実施例3)
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(2500g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(2500g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(1.0gの40wt%水溶液、触媒は80ppmとなる);(D)ホスファイト安定剤(1.5g)。
【0195】
(実施例4)
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(2500g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(2500g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(2.0gの40wt%水溶液、触媒は160ppmとなる)。
【0196】
(実施例5)
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(2500g);(B)II、Mw=21.8kg/mol(2500g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(1.0gの40wt%水溶液、触媒は80ppmとなる)。
【0197】
(実施例6)
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(2000g);(B)I、r:s:tがほぼ81:11:8である(500g);(C)II、Mw=29.9kg/mol(2500g);(D)水酸化テトラブチルホスホニウム(2.0gの40wt%水溶液、触媒は160ppmとなる)。
【0198】
(実施例7)
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(1250g);(B)I、r:s:tがほぼ81:11:8である(1250g);(C)II、Mw=29.9kg/mol(2500g);(D)水酸化テトラブチルホスホニウム(2.0gの40wt%水溶液、触媒は160ppmとなる)。
【0199】
(実施例8)
次の配合をブレンドし、一軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(2500g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(2500g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(2.0gの40wt%水溶液、触媒は160ppmとなる)。
【0200】
比較例1
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(2500g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(2500g)。
【0201】
比較例2
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(2500g);(B)II、Mw=21.8kg/mol(2500g)。
【0202】
比較例3
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(2500g);(B)II、Mw=21.8kg/mol(2500g);(C)ステアリン酸ナトリウム(1.0g、ステアリン酸ナトリウム触媒は200ppmとなる)。
【0203】
比較例4
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(2500g);(B)II、Mw=21.8kg/mol(2500g);(C)水酸化ナトリウム(1.0g、触媒は200ppmとなる)。
【0204】
比較例5
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(1000g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(1000g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(0.1gの40wt%水溶液、触媒は20ppmとなる)。
【0205】
比較例6
次の配合をブレンドし、一軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(1000g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(1000g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(0.4gの40wt%水溶液、触媒は80ppmとなる)。
【0206】
比較例7
次の配合をブレンドし、一軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(2500g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(2500g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(1.0gの40wt%水溶液、触媒は80ppmとなる)。
【0207】
比較例8
次の配合をブレンドし、一軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(2500g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(2500g);(C)水酸化ジエチルジメチルアンモニウム(4.0gの20wt%水溶液、触媒は160ppmとなる)。
【0208】
比較例9
次の配合をブレンドし、一軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である
(2500g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(2500g);(C)水酸化ジエチルジメチルアンモニウム(2.0gの20wt%水溶液、触媒は80ppmとなる)。
【0209】
比較例10
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ51:15:34である(2500g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(2500g);(C)水酸化ジエチルジメチルアンモニウム(4.0gの20wt%水溶液、触媒は160ppmとなる)。
【0210】
実施例1、3、6、7および比較例1、5、6の特性。表1は、IおよびIIのブレンドおよびコポリマーについての光学的および機械的データを示している。ヘーズのデータから、エステル交換触媒の添加が、不混和性のポリマー材料であるIおよびIIを、1%以下のヘーズ値で混和性にすることが分かる。エステル交換触媒の使用により、メルトフローレート(MVR)は33〜48%増大し、300℃で長時間加熱した後の粘度の安定性が著しく低下する。エステル交換触媒の使用により、熱変形温度(HDT)は影響を受けていないが、ノッチ付きアイゾット衝撃は8〜28%だけやや低下している。
【0211】
【表1】

【0212】
実施例5および比較例2〜4の特性。IIの重量平均分子量(Mw)を変え、異なる塩基性エステル交換触媒を用いた、ポリマーIおよびIIの熱可塑性組成物を製造した。結果は表2に示されている。塩基性エステル交換触媒の添加(実施例5、比較例3および4)は、2つの不混和性ポリマー相の相溶性の増加により、触媒のないブレンド(比較例2)に対して、ポリマーブレンドのヘーズを減少させた。しかし、比較例3および4においては、用いられた触媒の高い反応性のために、黄色度(YI)およびメルトフローが増加した。これらの物理的性質はまた、分子量の低下によって悪影響を受けた。比較して、実施例5は、比較的低いYIおよび小さい%ヘーズを示し、同時に、良好な熱性能、溶融安定性および衝撃強度を保っていることを示した。
【0213】
【表2】

【0214】
触媒のタイプおよび押出機の構造(一軸または二軸)の影響。二軸および一軸押出装置の両方を用いて、IおよびIIのブレンドの調製における、非ホスホニウム再分配触媒である水酸化ジエチルジメチルアンモニウム(DEDMAH)を、水酸化テトラブチルホスホニウム(TBPH)と比較した。結果は表3に示されている。
【0215】
【表3】

【0216】
比較例10のデータは、エステル交換触媒としてのDEDMAHの使用は、二軸押出機を用いると、透明なコポリマー(ヘーズ=1.7)を与えることを示している。実施例8におけるTBPH触媒の同様の添加量では、ずっと効率の劣る一軸押出機を用いて1.1%のさらに低いヘーズ値が得られている。熱的特性および衝撃特性は似ている。
【0217】
TBPHとDEDMAHの反応性の違いは、実施例8および比較例7〜9(これらの各々は一軸押出機を用いて押し出した)で調製した熱可塑性組成物についてのデータにおいて際立っている。160ppmの触媒添加での、実施例8のTBPH触媒による混合物のヘーズ値は、比較例8のDEDMAH触媒による混合物でのヘーズ値(76.6%であり、ほとんど不透明な材料)と比べて1.1%であった。これは、DEDMAHの低い活性を示しており、DEDMAHは、一軸押出機を用いて行われる効率の悪い混合と結合した場合に、同量添加のTBPH触媒と比較して、熱可塑性組成物の微細構造に違いをもたらす。
【0218】
押出機のタイプ(一軸または二軸スクリュー)と、TBPHおよびDEDMAHの反応性との間の関係は、さらに、実施例1、4、および8と、比較例1、8、および10において調製した熱可塑性組成物のデータにおいて際立っている。実施例8および比較例8はそれぞれ、一軸押出機を用いて押し出したが、その他は二軸押出機を用いて押し出した。表4は、これらの熱可塑性組成物についての反応条件と、光学的および構造的情報とをまとめている。
【0219】
【表4】

【0220】
160ppmの触媒添加量でDEDMAHを用いる二軸押出(比較例10)は、同様の触媒添加量で、TBPHにより得られた所望のヘーズ値をほぼ実現している。同一の触媒添加量でのTBPHおよびDEDMAHの一軸押出試料(それぞれ、実施例8および比較例8)は、ヘーズにおけるかなりの相違を示している。したがって、DEDMAHは、両方の混合条件の下で、所望の性能が得られるわけでは得られない。
【0221】
より多い触媒添加量(160ppm)、より効率的な触媒(TBPH)およびより効率的な混合(二軸押出)が相俟ってより高い%BPE-PEを与える実施例4を除いて、一般に、Iのレゾルシノールエステル単位(比r:s:tのr)の3%未満が、副反応で、IIのビスフェノールカーボネート単位と交換して、式(10)のBPA-PE単位を形成することを、ビスフェノールAエステル単位のパーセンテージ(表4における%BPA-PE)が示すことを、核磁気共鳴分光法(1Hおよび13CNMR)のデータは示している。%BPA-PEは、二軸押出機を用い、同じ触媒添加量で、DEDMAH(比較例10)の代わりにTBPHを用いる場合(実施例4)に0.4%だけ増加するが、TBPHはDEDMAHでの1.7%に比べて0.9%のより低いヘーズ値をもたらす。さらに、単一の触媒添加量では、より効率的な混合方法である二軸押出(実施例4)は、一軸押出(実施例8)より、比較的高レベルのBPA-PEをもたらす。
【0222】
さらに、触媒濃度の増加は、ポリエステル-ポリカーボネートIのレゾルシノールカーボネート基(比r:s:tの繰返し単位s)の相対量に逆の影響を及ぼす。31Pおよび13CのNMRデータは、一般に、BPAカーボネート結合に比べて、レゾルシノールカーボネート結合での反応性の1.5倍の増加を示した。これから、ポリマー鎖のレゾルシノールOH末端基の優先的な生成をもたらした。
【0223】
TEM分析。TBPH触媒を用いて調製した熱可塑性組成物、および触媒なしで調製した熱可塑性組成物の透過顕微鏡(TEM)撮像を、押し出した材料のモルホロジー的特徴を比較するために実施した。TEM観察の試料は、Leica UCTウルトラミクロトームで試料を切断し、断片化し、観察面を出すことによって調製した。100nmの切片の最終の標本作製は、室温で、Leica UCTで実施した。これら切片をRuO4溶液で2分間染色した。この試料を、66,000倍の倍率で観察した。
【0224】
図1は、TBPH触媒なしのIとIIのブレンド(比較例1による)のTEM画像を示しており、図2は、TBPHを加えたブレンド(実施例1による)のTEM画像を示している。TEM画像は、射出成形した板から取った試料から得た。各図に、白い1枚の紙の上に黒色のマーカーで書いた語「opaque」(図1)または「clear」(図2)に被せた射出成形板を示す写真を挿入してある。
【0225】
図1のTEM画像は、画像における明部および暗部として存在する異なる相を示しており、明るい色の相はポリエステル-ポリカーボネートIであり、暗い色の相はポリカーボネートIIである。ポリエステル-ポリカーボネートの相は押出方向に沿って引き伸ばされている。図1に挿入した写真では、比較例1による射出成形板の背後の1枚の紙の上に書かれた語「opaque」は、ほとんど見ることができず、IおよびIIのブレンドの大きなヘーズおよび少ない光透過率を示していて、非相溶系の目に見える証しである。図2に示したTEM画像は、見た目に均一であり、別個の相の生成を示すと思われる識別できる差異がない。図2に挿入した写真では、実施例1による射出成形板の下の書かれた語「clear」は、写真で容易に見え、IおよびIIのコポリマーの高度の混和性および透明性を示している。このように、IとIIの単なるブレンドは、Iがエステル含量>25モル%を有する場合、ポリエステル組織(regime)とポリカーボネート組織との間の相分離のために、比較的不透明な材料を生ずる。しかし、TBPHの添加により、反応が押出機内で起こり、触媒を添加しなければ不混和性の2つの相の間の相溶化が起こる。
【0226】
本発明の熱可塑性組成物は、次の非限定的なさらなる実施例によって例示され、これらの実施例は次の成分を用いる。
【0227】
実施例の調製に用いられているポリマーには、ポリエステル-ポリカーボネートI(PECとしても参照される):
【0228】
【化35】

【0229】
[上記式中、ポリエステル単位rの異性体組成は50モル%のイソフタレート-レゾルシノール、および50モル%のテレフタレート-レゾルシノールであり、使用した構成物のポリエステル単位r、レゾルシノール-カーボネート単位s、およびビスフェノールAカーボネート単位tのモル%、またはr:s:tはそれぞれ、81:11:8および19:75:6である];および、ビスフェノールAカーボネート単位に基づくポリカーボネートII:
【0230】
【化36】

【0231】
[重量平均分子量は、架橋スチレン-ジビニルベンゼンのカラムセット、溶離液としての塩化メチレン中約0.1重量%の試料濃度、および内部フローマーカーとしてトルエンを用い、1.5ml/minの流量で、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定して、29.9kg/molである]
が含まれる。本実施例で用いたエステル交換触媒は、10または40重量パーセント(wt%)の水酸化テトラブチルホスホニウム(TBPH)の水溶液であり、特に断らない限り、ポリマー成分(I)および(II)の重量に対して、添加濃度は80または160ppmである。
【0232】
いくつかの場合において、ビスフェノールA-アリレート(arylate)ブロックに基づく、新たなポリカーボネート繰返し単位IIIが、エステル交換時に形成された。
【0233】
【化37】

【0234】
上記式中、xは、ポリカーボネート中のビスフェノールA-アリレートの単位のモル%である。理論には拘束されないが、構造IIIは、構造IおよびIIの非混和相を相溶化する助けになり得ると考えられる。
【0235】
特に指示される場合を除き、すべての熱可塑性組成物は、Werner & Pflidererの同方向回転二軸押出機(長さ/直径(L/D)の比=30/1、真空ポートがダイ面近くに配置されている)でコンパウンド化される。二軸押出機は、ポリマー組成物の間の混合を良好にするのに十分な分配および分散混合エレメントを有していた。次いで、組成物は、ISO294に準拠して、HuskyまたはBOY射出成形機でモールド成形される。組成物は、285から330℃の温度でコンパウンド化され、モールド成形されるが、この方法はこれらの温度に限定されないことを、当業者は理解するであろう。
【0236】
熱可塑性組成物を次の性質について試験する:ヘーズ(%)は、ASTM D1003-00に準拠して、厚さ3.2ミリメートルの成形板で、Gretag MacBeth装置を使用して測定した。メルトボリュームレート(本明細書では、メルトフローレートとも呼ばれる)MVRは、ASTM 1238-04に準拠して、1.2キログラムの荷重を用いて、300℃で、6および18分間にて試験した。
【0237】
(実施例9)
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ81:11:8である(2000g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(2000g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(0.8gの40wt%水溶液、触媒は80ppmとなる)。
【0238】
(実施例10)
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ81:11:8である(2000g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(2000g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(1.6gの40wt%水溶液、触媒は160ppmとなる)。
【0239】
(実施例11)
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ81:11:8である(3000g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(1000g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(0.8gの40wt%水溶液、触媒は80ppmとなる)。
【0240】
(実施例12)
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ81:11:8である(3000g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(1000g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(1.6gの40wt%水溶液、触媒は160ppmとなる)。
【0241】
(実施例13)
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ81:11:8である(1000g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(3000g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(0.8gの40wt%水溶液、触媒は80ppmとなる)。
【0242】
(実施例14)
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ81:11:8である(1000g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(3000g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(1.6gの40wt%水溶液、触媒は160ppmとなる)。
【0243】
(実施例15)
次の配合をブレンドし、二軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ81:11:8である(1000g);(B)I、r:s:tがほぼ19:75:6である(1000g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(1.6gの10wt%水溶液、触媒は80ppmとなる)。
【0244】
(実施例16)
次の配合をブレンドし、一軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ81:11:8である(2000g);(B)I、r:s:tがほぼ19:75:6である(1000g);(C)水酸化テトラブチルホスホニウム(1.6gの10wt%水溶液、触媒は80ppmとなる)。
【0245】
比較例11
次の配合をブレンドし、一軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ81:11:8である(2000g);(B)II、Mw=29.9kg/mol(2000g)。
【0246】
比較例12
次の配合をブレンドし、一軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ81:11:8である(1000g);(B)I、r:s:tがほぼ19:75:6である(1000g)。
【0247】
比較例13
次の配合をブレンドし、一軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ81:11:8である(4000g);(B)I、r:s:tがほぼ19:75:6である(1000g)。
【0248】
比較例14
次の配合をブレンドし、一軸押出機で押し出した:(A)I、r:s:tがほぼ81:11:8である(1000g);(B)I、r:s:tがほぼ19:75:6である(4000g)。
【0249】
実施例9から14および比較例11の性質。表5は、IおよびIIのブレンドとコポリマーの光学的および機械的データを示している(ここで、Iのエステル基のレベルは非常に高い(80%を超える))。ヘーズのデータから、有効量のエステル交換触媒の添加が、非混和性のポリマー材料であるIおよびIIを、1%未満のヘーズ値で混和性にすることが分かる。非常に高レベルのエステル基を有するブレンドでは、低レベル(80ppm)のエステル交換触媒は、非混和性のコポリマーを混和性にするのに十分ではなく、このために、ポリエステルとポリカーボネートの相分離があり、ブレンドは不透明であった。より多量(160ppm)の添加により、押出機内での反応が起こり、通常は非混和性の材料を相溶化して、ブレンドを透明にした。エステル交換触媒の使用は、メルトフローレート(MVR)をかなり増大させるが、材料の溶融安定性には悪影響を及ぼしていない。
【0250】
【表5】

【0251】
実施例15および16と比較例12から14の性質。ポリエステル基(r)の量を変えた、式Iの2つのポリエステル-ポリカーボネートポリマーの熱可塑性組成物を製造した。高ポリエステルポリマーI(81モル%のポリエステル)および低ポリエステルポリマーI(19モル%のポリエステル)の2つを用いた。結果は表6に示されている。比較的少量のエステル交換触媒(80ppm)の添加により、2つの非混和性ポリマー相の相溶性が増すために、ポリマーブレンドのヘーズは、触媒添加なしのブレンドに比べて、1%未満のレベルまでかなり低下した。これは、触媒を失活させるための追加の失活剤を添加しないで達成された。実施例15および16では、ヘーズは非常に似ていて、どちらも非常に良好であるので、押出機のタイプ(二軸スクリュー対一軸スクリュー)は、ほとんど相違を生じないようであった。
【0252】
【表6】

【0253】
TEM分析。TBPH触媒を用いて調製した熱可塑性組成物、および触媒なしで調製した熱可塑性組成物の透過型電子顕微鏡(TEM)撮像を、押し出した材料のモルホロジー的特徴を比較するために実施した。TEM観察の試料は、Leica UCTウルトラミクロトームで試料を切断し、断片化し、観察面を出すことによって調製した。100nmの切片の最終の標本作製は、室温で、Leica UCTで実施した。この切片をRuO4溶液で2分間染色した。この試料を、66,000倍の倍率で観察した。
【0254】
図3は、TBPH触媒を含む、式Iの2つのポリエステル-ポリカーボネートのブレンド(実施例16による)のTEM画像を示しており、図4および5は、TBPH触媒を加えないブレンド(比較例13および14による)のTEM画像を示している。これらのTEM画像は、射出成形板から取った試料で得た。
【0255】
図4および5のTEM画像は、画像における明部および暗部として存在する異なる相を示しており、明るい色の相は分散したポリエステル相であり、暗い色の相はポリカーボネートマトリックスである。図3に示すTEM画像は、見た目に均一であり、別個の相の生成を示すと思われる識別できる差異がない。こうして、異なるポリエステル含量を有する式Iの2つのポリマー(第1ポリマーはエステル含量>70モル%を有し、第2ポリマーはエステル含量<20モル%を有する)の単なるブレンドは、ポリエステル組織とポリカーボネート組織の間の相分離のために、比較的不透明な材料を生じる。しかし、TBPHの添加により、反応が押出機内で起こり、TBPHを添加しなければ非混和性の2つの相の間の相溶化が起こる。
【0256】
単数形の「1つ」、および「この」は、文脈が明確にそうでないことを指示するのでなければ、複数の指示対象を含む。同じ特性を挙げるか、または同じ成分の量を表すすべての範囲の端点は、独立に組み合わせることができ、挙げられている端点を含む。すべての参照文献は参照を通じて本明細書に援用する。さらに、本明細書においては、「第1」「第2」などの用語は、如何なる順序、量、または重要度を示すものでなく、1つの要素を他から区別するために用いられている。
【0257】
「任意選択の」または「任意選択で」は、続いて記載される事象または状況が起こることも、起こらないこともあること、あるいは、続いて定義される要素または成分が存在することも、しないこともあること、ならびに、その記述が、事象が起こる場合、およびそれが起こらない場合を含むことを意味する。
【0258】
典型的な実施形態は、例示のために記載されており、これらの記載は本発明における範囲の限定であると考えられるべきではない。したがって、様々な変形形態、適応、および代替が、当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく思い浮かぶであろう。
【図面の簡単な説明】
【0259】
【図1】エステル交換触媒が存在しない場合のポリエステル-ポリカーボネート-ポリカーボネート組成物の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図2】エステル交換触媒が存在する場合のポリエステル-ポリカーボネート-ポリカーボネート組成物のTEM画像である。
【図3】エステル交換触媒が存在する場合のポリエステル-ポリカーボネート-ポリエステル-ポリカーボネート組成物の別の実施形態のTEM画像である。
【図4】エステル交換触媒が存在しない場合のポリエステル-ポリカーボネート-ポリエステル-ポリカーボネート組成物の別の実施形態のTEM画像である。
【図5】エステル交換触媒が存在しない場合のポリエステル-ポリカーボネート-ポリエステル-ポリカーボネート組成物の別の実施形態のTEM画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の芳香族エステル単位、
【化1】

[前記式中、Tは2価の芳香族基であり、D1は2価の芳香族基である]
と、次式のカーボネート単位、
【化2】

[前記式中、D2基の総数の少なくとも60%が2価の芳香族基であり、その残りは2価の脂肪族基、脂環式基、または芳香族基である]
とを含む第1ポリマー;および
次式を有する芳香族エステル単位、
【化3】

[前記式中、Tは2価の芳香族基であり、D3は2価の芳香族基である]
と、次式を有するカーボネート単位、
【化4】

[前記式中、D4基の総数の少なくとも60%が2価の芳香族基であり、その残りは2価の脂肪族基、脂環式基、または芳香族基である]
とを含む第2ポリマー;および
エステル交換触媒
を含む組合せを溶融ブレンドすることによって得られる反応生成物であって、
ASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して1.0%未満のヘーズを有し;かつ、前記第1および第2ポリマーが、前記エステル交換触媒なしで同様に溶融ブレンドされた組合せがASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して1.0%を超えるヘーズを有するように選択される反応生成物。
【請求項2】
前記第1ポリエステル-ポリカーボネートが、75モル%以上の芳香族エステル単位、および25モル%未満のカーボネート単位を含み、かつ、前記第2ポリエステル-ポリカーボネートが、25モル%未満の芳香族エステル単位、および75モル%以上のカーボネート単位を含む、請求項1に記載の反応生成物。
【請求項3】
前記第1ポリエステル-ポリカーボネートが、80モル%以上の芳香族エステル単位、および20モル%未満のカーボネート単位を含み、かつ、前記第2ポリエステル-ポリカーボネートが、20モル%未満の芳香族エステル単位、および80モル%以上のカーボネート単位を含む、請求項1に記載の反応生成物。
【請求項4】
前記第1ポリマーおよび第2ポリマーがそれぞれ第2カーボネート単位をさらに含み、前記第2カーボネート単位がレゾルシノールカーボネート単位である、請求項1に記載の反応生成物。
【請求項5】
Tがイソフタル酸およびテレフタル酸の混合物の残基であり、かつD1およびD3の各々が独立にレゾルシノールである、請求項1に記載の反応生成物。
【請求項6】
前記エステル交換触媒が、水酸化テトラC1〜C6アルキルホスホニウム、C1〜C6アルキルホスホニウムフェノキシド、またはこれらの触媒の1種または複数を含む組合せである、請求項1に記載の反応生成物。
【請求項7】
66,000倍の倍率で透過型電子顕微鏡を用いて評価して、相分離部分が認められない、請求項1に記載の反応生成物。
【請求項8】
次式の芳香族エステル単位、
【化5】

[前記式中、Tは2価の芳香族基であり、D1は2価の芳香族基である]
と、次式のカーボネート単位、
【化6】

[前記式中、D2基の総数の少なくとも60%が2価の芳香族基であり、その残りは2価の脂肪族基、脂環式基、または芳香族基である]
とを含む第1ポリマー;および
次式を有する芳香族エステル単位、
【化7】

[前記式中、Tは2価の芳香族基であり、D3は2価の芳香族基である]
と、次式を有するカーボネート単位、
【化8】

[前記式中、D4基の総数の少なくとも60%が2価の芳香族基であり、その残りは2価の脂肪族基、脂環式基、または芳香族基である]
とを含む第2ポリマー;および
エステル交換触媒
を含む組合せを溶融ブレンドすることを含む反応生成物の形成方法であって、
前記反応生成物が、ASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して1.0%未満のヘーズを有し;かつ、前記第1および第2ポリマーが、前記エステル交換触媒なしで同様に溶融ブレンドされた組合せがASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して1.0%を超えるヘーズを有するように選択される反応生成物の形成方法。
【請求項9】
前記第1ポリエステル-ポリカーボネートが、75モル%以上の芳香族エステル単位、および25モル%未満のカーボネート単位を含み、かつ、前記第2ポリエステル-ポリカーボネートが、25モル%未満の芳香族エステル単位、および75モル%以上のカーボネート単位を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記エステル交換触媒が40から220ppmの量で存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の反応生成物により形成される熱可塑性組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の熱可塑性組成物を含む物品。
【請求項13】
次式の芳香族エステル単位、
【化9】

[前記式中、Tは2価の芳香族基であり、D1は2価の芳香族基である]
と、次式のカーボネート単位、
【化10】

[前記式中、D2基の総数の少なくとも60%が2価の芳香族基であり、その残りは2価の脂肪族基、脂環式基、または芳香族基である]
とを含む第1ポリマー;および
次式を有する芳香族エステル単位、
【化11】

[前記式中、Tは2価の芳香族基であり、D3は2価の芳香族基である]
と、次式を有するカーボネート単位、
【化12】

[前記式中、D4基の総数の少なくとも60%が2価の芳香族基であり、その残りは2価の脂肪族基、脂環式基、または芳香族基である]
とを含む第2ポリマー;および
エステル交換触媒
を含む組合せを溶融ブレンドすることによって得られる反応生成物であって、
ASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して1.0%未満のヘーズを有し、かつ、前記第1および第2ポリマーが、前記エステル交換触媒なしで同様に溶融ブレンドされた組合せがASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して1.0%を超えるヘーズを有するように選択される反応生成物を含む熱可塑性組成物。
【請求項14】
追加のポリマー、耐衝撃改良剤、フィラー、強化剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、γ線安定剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、難燃剤、ドリップ防止剤、およびこれらの添加剤の1種または複数を含む組合せからなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項13に記載の熱可塑性組成物。
【請求項15】
前記の追加のポリマーが、ポリエステル、ポリシロキサン-ポリカーボネート、またはこれらのポリマーの1種または複数を含む組合せを含む、請求項14に記載の熱可塑性組成物。
【請求項16】
添加剤を除く前記反応生成物が、ASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで1.0%未満のヘーズを有する、請求項13に記載の熱可塑性組成物。
【請求項17】
前記第1ポリエステル-ポリカーボネートが、75モル%以上の芳香族エステル単位、および25モル%未満のカーボネート単位を含み、かつ、前記第2ポリエステル-ポリカーボネートが、25モル%未満の芳香族エステル単位、および75モル%以上のカーボネート単位を含む、請求項13に記載の熱可塑性組成物。
【請求項18】
前記第1ポリエステル-ポリカーボネートが、80モル%以上の芳香族エステル単位、および20モル%未満のカーボネート単位を含み、かつ、前記第2ポリエステル-ポリカーボネートが、20モル%未満の芳香族エステル単位、および80モル%以上のカーボネート単位を含む、請求項17に記載の反応生成物。
【請求項19】
請求項13に記載の熱可塑性組成物を含む物品。
【請求項20】
次式のエステル単位、
【化13】

[前記式中、エステル単位は、91:9から2:98の重量比を有する、テレフタレートとイソフタレートの混合物を含み、rのモルパーセントは75モル%以上であり、sのモル%は1から25モル%であり、tのモル%は25モル%未満であり、r+s+tの合計は100モル%に等しい]を含む第1ポリエステル-ポリカーボネートコポリマー;および
次式のエステル単位、
【化14】

[前記式中、エステル単位は、91:9から2:98の重量比を有する、テレフタレートとイソフタレートの混合物を含み、rのモルパーセントは25モル%未満であり、sのモル%は1から25モル%であり、tのモル%は75モル%以上であり、r+s+tの合計は100モル%に等しい]を含む第2ポリエステル-ポリカーボネートコポリマー;および
40から220ppmのエステル交換触媒
を含む組合せの反応生成物であって、
ASTM D1003-00に従って厚さ3.2mmで測定して、1.0%未満のヘーズを有する反応生成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−540802(P2008−540802A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512328(P2008−512328)
【出願日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/017229
【国際公開番号】WO2006/127231
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【復代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
【Fターム(参考)】