説明

透明ハードコート層、透明ハードコート材、およびディスプレイ装置

【課題】 反射防止フィルム用に適した、高硬度で透明性が高いハードコート、およびハードコートを基材上に備えたハードコート材、ならびに、このようなハードコートもしくはハードコート材を配置したディスプレイ装置を提供することを課題とする。
【解決手段】架橋した合成樹脂からなるバインダとバインダ中に分散した合成樹脂微粒子からなる透明ハードコート層であって、膜厚が0.5〜30μmであり、合成樹脂微粒子は、コアシェル構造を有し、合成樹脂微粒子は、バインダと合成樹脂微粒子との合計量に対して5〜50質量%であり、上記合成樹脂微粒子とバインダとの屈折率差が0.05未満であり、引掻強度は、200g以上である透明ハードコート層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ディスプレイ装置の前面に配置して、光の反射、汚染、もしくは帯電等の防止に役立つフィルム状、シート状、もしくは板状の透明材を構成するのに適した、ハードコート層およびハードコート材、並びに、これらを配置したディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗装を施して物の表面を保護したり、艶を調整することは、以前から、種々の分野で行なわれてきたが、近年、アクリレート系等の電離放射線硬化性樹脂組成物を用い、特に高硬度な塗膜、通称、ハードコートを施すことがよく行なわれており、家具、厨房機器、電機製品、事務機器、もしくは光学機器等、身の回りで接することの多い物品に適用されている。また、ハードコートを構成するアクリレート等の素材が反応性に富むため、種々の物質を構造の一部に持たせたり、あるいは塗膜の架橋構造中に物理的に閉じ込める等により、高硬度に加えて、種々の機能を、長期間維持することが可能となっている。
【0003】
種々の分野の中でも、ディスプレイ装置は、視聴覚用の各種の装置、コンピュータ端末、携帯用の各種端末機器に使用されていて、普及台数が非常に多く、中でも液晶ディスプレイ装置は、消費電力が少ないことから、特に多用されているものである。液晶ディスプレイ装置のようなディスプレイ装置は、それらが使用される環境や使用のされ方もマチマチであるため、高度の耐久性を必要とし、特にディスプレイ表面が、傷が付いたり、汚染したり、帯電したりすることの無いよう、種々の機能を有した保護材が前面に配置されていることが多い。
【0004】
ところで、これらのディスプレイ装置にハードコートを適用する際には、ディスプレイ装置の機能上、透明性を確保しなければならないが、従来、他の分野で、塗膜の硬度を向上させる目的で使用されているように、シリカやアルミナ等の高硬度で比較的粒径の大きいものを塗膜中に配合して使用すると、配合量の増加に伴なう透明性の低下が避けられなかった。
【0005】
また、ディスプレイ装置に反射防止性を与える際には、透明なハードコート上に金属酸化物等の薄膜を反射防止膜として積層する必要があるが、このような場合、反射防止膜の下地となハードコートの表面は平滑であることが要求される。しかし、表面の平滑化のために、粒径の小さいシリカやアルミナ等を使用すると、充填した効果が乏しく、不充分な硬度の塗膜しか得られなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明においては、凹凸の付与は可能だが、基本的には表面が平滑であり、高硬度で、透明性が高く、必要に応じて、種々の物質を構造の一部に持たせたり、あるいは塗膜の架橋構造中に物理的に閉じ込める等により、種々の機能を持たせることが可能なハードコート、およびハードコートを基材上に備えたハードコート材、ならびに、このようなハードコートもしくはハードコート材を配置したディスプレイ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者の検討により、コアシェル構造を持つ合成樹脂微粒子を使用することにより、高硬度で、透明性が高いハードコートが得られることが見出され、また、このようなハードコートには、種々の物質を構造の一部に持たせたり、あるいは塗膜の架橋構造中に物理的に閉じ込めることができた。
【0008】
第1の発明は、コア部のガラス転移温度が、シェル部のガラス転移温度よりも高いコアシェル構造を有する合成樹脂微粒子が、架橋した合成樹脂からなるバインダ中に分散した分散膜からなることを特徴とする透明ハードコート層に関するものである。第2の発明は、第1の発明において、前記合成樹脂微粒子の平均粒径Xと前記分散膜中における前記合成樹脂微粒子の質量基準の含有割合Y(%)とが、下記式で表される関係を有することを特徴とする透明ハードコート層に関するものである。
−8.3286Ln(X)+58.68≦Y≦−16.934Ln(X)+118.68第3の発明は、第1または第2の発明において、前記合成樹脂微粒子の前記コア部が架橋しており、かつ前記シェル部が架橋していないか、もしくは前記コア部の方が前記シェル部よりも架橋密度が高いことを特徴とする透明ハードコート層に関するものである。第4の発明は、第1〜第3いずれかの発明において、表面に微細凹凸を有することを特徴とする透明ハードコート層に関するものである。第5の発明は、第1〜第4いずれかの発明において、表面に反射防止膜が積層されていることを特徴とする透明ハードコート層に関するものである。第6の発明は、第1〜第5いずれかの発明において、最表面に防汚層が積層されていることを特徴とする透明ハードコート層に関するものである。第7の発明は、透明基材に、第1〜第6いずれかの発明のハードコート層が積層されていることを特徴とする透明ハードコート材に関するものである。第8の発明は、第1〜第6いずれかの発明の透明ハードコート層、もしくは第7の発明の透明ハードコート材が表示装置の観察側に配置されていることを特徴とするディスプレイ装置に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、硬度を増すための充填剤としてコアシェル構造を有し、コア部とシェル部のガラス転移温度の関係を規定したものを使用するので、高硬度を有しながらも、透明性が高いハードコート層を提供することができる。請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、コアシェル構造を有する微粒子の粒径と配合割合との関係を規定したので、高硬度と透明性とをより満足し得るハードコート層を提供することができる。請求項3の発明によれば、請求項1または請求項2の発明の効果に加え、コア部にみが架橋しているか、もしくはコア部の方がシェル部よりも架橋密度が高いので、内部が硬く、従って塗膜の硬度を向上させると共に、シェル部はコア部よりも柔軟であるため、塗膜の柔軟性が損なわれないハードコート層を提供することができる。請求項4の発明によれば、請求項1〜請求項3いずれかの発明の効果に加え、表面凹凸を有することから、背面からの光が一個所に集中してまぶしく感じられることを緩和し得るハードコート層を提供することができる。請求項5の発明によれば、請求項1〜請求項4いずれかの発明の効果に加え、反射防止膜がハードコート層に充分密着したハードコート層を提供することができる。このような反射防止膜付きのハードコート層は反射防止性と共に、表面の高硬度を発揮することができる。請求項6の発明によれば、請求項1〜請求項5いずれかの発明の効果に加え、最表面に防汚層が積層されているので、表面が汚れ難く、また汚れたとしても、拭き取り等により清浄化がしやすいハードコート層を提供することができる。請求項7の発明によれば、透明基材上に、請求項1〜請求項6いすれかのハードコート層が積層されているので、各々の効果を有し、基材を有するため、種々の用途に適用するのに適したハードコート材を提供することができる。請求項8の発明によれば、請求項1〜請求項6いずれかのハードコート層、もしくは請求項7のハードコート材が液晶表示装置等の表示装置の観察側に配置されているので、配置されたことによる輝度の低下がなく、また配置されたものの表面硬度の高いディスプレイ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図は、いずれも、本発明のハードコート層、ハードコート材、もしくはディスプレイ装置を示すものである。図を引用して、まず、本発明の概要を説明する。
【0011】
本発明のハードコート層1は、図1(a)に示すように、透明な合成樹脂中2に透明な合成樹脂微粒子3が分散した透明な分散膜からなるものであり、また、本発明のハードコート材1’は、図1(b)に示すように、透明基材4上に、上記の透明な合成樹脂中2に透明な合成樹脂微粒子3が分散した透明な分散膜、即ち図1(a)におけるハードコート層1が積層したものである。
【0012】
本発明のハードコート層1、もしくはハードコート材1’は、図2に示すように、合成樹脂中2に合成樹脂微粒子3が分散した分散膜の上面が、凹凸5を有していてもよく、このようにすることにより、ハードコート層1、もしくはハードコート材1’を通してディスプレイ装置を眺める際に、映像光が特定の位置で高輝度に見える、いわゆる「ギラツキ」を緩和することができる。
【0013】
本発明のハードコート層1、もしくはハードコート材1’は、図3に示すように、合成樹脂中2に合成樹脂微粒子3が分散した分散膜の上面に、反射防止膜(図3の例では反射防止膜7aおよび7b)が積層されてもよい。また、本発明のハードコート層1、もしくはハードコート材1’は、図3に示すように、最上面に防汚層8が積層されていてもよく、防汚層8は、必ずしも、反射防止膜上にのみ積層するものではなく、反射防止膜を伴なわず、合成樹脂中2に合成樹脂微粒子3が分散した分散膜、即ちハードコート層の上面に直接に積層されていてもよい。
【0014】
上記のような本発明のハードコート層1、もしくはハードコート材1’は、図4に示すように、液晶パネルの観察側(図4では上側)に配置して、使用することが好ましいものである。もちろん、ハードコート層、もしくはハードコートとして、図2もしくは図3を引用して説明したものを使用してもよい。この例では、液晶パネル11が、その背面に配置された導光板12、光源13、および反射板14により、照明され(「バックライト方式」と言う。)、液晶パネルは、透明ガラス板の内面に透明電極を伴なった前後のガラス板に液晶層が挟まれたものであって、信号に応じて表示された画像を偏光板、およびカラーフィルター等を介して視認するものであるが、観察する際の外光の影響をハードコート層1、もしくはハードコート材1’を配置することにより、回避しようとするものである。液晶パネルの照明方式にはフロントライト方式もあるので、その場合には、導光板の観察側にハードコート層を積層するか、導光板の前にハードコート材を配置するとよい。
【0015】
ハードコート層1は、ディスプレイ装置の、前面に直接に積層して使用することもできるが、一般的には、ハードコート層1は、透明基材4上に積層して使用することが普通である。透明基材4としては、透明性、平滑性を備え、異物の混入のないものが好ましく、また、加工上および使用上の理由で機械的強度があるものが好ましい。さらに、ハードコート層1やハードコート材1’にディスプレイの熱が伝わって来るような場合には、耐熱性があるものを使用することが好ましい。
【0016】
透明基材4は、ごく一般的には透明な熱可塑性樹脂フィルムであり、好ましいものとしては、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、もしくはポリウレタン等の熱可塑性樹脂フィルムが挙げられる。
【0017】
写真用乳剤を塗布した写真用フィルムの場合に、よく用いられるポリエステルや、透明性が高く光学的に異方性がないので、やはり写真用フィルムによく用いられるセルローストリアセテート等が通常、好ましい。
【0018】
なお、これらの熱可塑性樹脂フィルムはフレキシブルで使いやすいが、取り扱い時も含めて曲げる必要が全くなく、硬いものが望まれるときは、上記の樹脂の板やガラス板等の板状のものも使用できる。厚みとしては、8〜1000μm程度が好ましいが、板状のものの場合には、この範囲を超えてもよい。
【0019】
記の透明基材4には、その上に形成する層との接着性の向上のために、通常、行なわれ得る各種の処理、即ち、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理のほか、アンカー剤もしくはプライマーと呼ばれる塗料の塗布を予め行なって、プライマー層を形成しておいてもよい。
【0020】
ハードコート層1は、用途によっては、熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂、例えば、ポリウレタン樹脂等を合成樹脂成分として構成することができる。さらに一層の効果を望む場合には、電離放射線硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性化合物を含む電離放射線硬化性組成物を電離放射線の照射によって架橋硬化させたもので構成することがより好ましい。
【0021】
電離放射線硬化性組成物は、分子中に重合性不飽和結合または、エポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又はモノマーを適宜に混合したものである。電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを指し、通常、紫外線又は電子線を用いる。
【0022】
電離放射線硬化性組成物中のプレポリマー、オリゴマーの例としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物が挙げられる。
【0023】
電離放射線硬化性組成物中のモノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、アクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジベンジルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル等の不飽和置換の置換アミノアルコールエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート等の化合物、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能性化合物、及び/又は分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物、例えばトリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等が挙げられる。
【0024】
通常、電離放射線硬化性組成物中のモノマーとしては、以上の化合物を必要に応じて、1種若しくは2種以上を混合して用いるが、電離放射線硬化性組成物に通常の塗布適性を与えるために、前記のプレポリマー又はオリゴマーを5重量%以上、前記モノマー及び/又はポリチオール化合物を95重量%以下とするのが好ましい。
【0025】
電離放射線硬化性組成物を塗布し、硬化させたときのフレキシビリティーが要求されるときは、モノマー量を減らすか、官能基の数が1又は2のアクリレートモノマーを使用するとよい。電離放射線硬化性組成物を塗布し、硬化させたときの耐摩耗性、耐熱性、耐溶剤性が要求されるときは、官能基の数が3つ以上のアクリレートモノマーを使う等、電離放射線硬化性組成物の設計が可能である。ここで、官能基が1のものとして、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートが挙げられる。官能基が2のものとして、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートが挙げられる。官能基が3以上のものとして、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクレリート等が挙げられる。
【0026】
電離放射線硬化性組成物を塗布し、硬化させたときのフレキシビリティーや表面硬度等の物性を調整するため、電離放射線硬化性組成物に、電離放射線照射では硬化しない樹脂を添加することもできる。具体的な樹脂の例としては次のものがある。ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂である。中でも、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等の添加がフレキシビリティーの向上の点で好ましい。
【0027】
電離放射線硬化性組成物の塗布後の硬化が紫外線照射により行われるときは、光重合開始剤や光重合促進剤を添加する。光重合開始剤としては、ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独又は混合して用いる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いる。光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化性組成物100重量部に対し、0.1〜10重量部である。
【0028】
電離放射線硬化性組成物には、次のような有機反応性ケイ素化合物を併用してもよい。
【0029】
有機ケイ素化合物の1は、一般式RSi(OR’)で表せるもので、RおよびR’は炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rの添え字mとR’の添え字nとは、各々が、m+n=4の関係を満たす整数である。
【0030】
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
電離放射線硬化性組成物に併用し得る有機ケイ素化合物の2は、シランカップリング剤である。
【0032】
具体的には、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルメトキシシラン・塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノシラン、メチルメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等が挙げられる。
【0033】
電離放射線硬化性組成物に併用し得る有機ケイ素化合物の3は、電離放射線硬化性ケイ素化合物である。具体的には、電離放射線の照射によって反応し架橋する複数の官能基、例えば、重合性二重結合基を有する分子量5,000以下の有機ケイ素化合物が挙げられ、より具体的には、片末端ビニル官能性ポリシラン、両末端ビニル官能性ポリシラン、片末端ビニル官能ポリシロキサン、両末端ビニル官能ポリシロキサン、又はこれらの化合物を反応させたビニル官能性ポリシラン、もしくはビニル官能性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0034】
より具体的には、次のような化合物である。
【0035】
【化1】

【0036】
その他、電離放射線硬化性組成物に併用し得る有機ケイ素化合物としては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン化合物等が挙げられる。
【0037】
本発明において、ハードコート層内に分散される合成樹脂微粒子3は、コア部(芯部)とシェル部(外殻部)との二重構造である、コアシェル構造を有するものであり、合成樹脂微粒子3の径としては、10nm〜700nmのものであることが好ましい。合成樹脂微粒子3の径が10nm未満のものは、配合しても、ハードコート層の硬度を向上させる効果が乏しく、また、700nmを超えるものは、配合することによりハードコート層の透明性を低下させるからである。
【0038】
合成樹脂微粒子3のコア部およびシェル部を構成する合成樹脂としては、基本的には制限は無いが、ハードコート層1がアクリレート系の電離放射線硬化性組成物から構成されることが多いことから、屈折率が、アクリレート系の電離放射線硬化性組成物の硬化物に近いものが好ましく、この観点から、合成樹脂微粒子3のコア部およびシェル部も、アクリル系樹脂、例えば、アクリル酸エステルをモノマーとして重合したもの、もしくはポリスチレン系樹脂、即ち、スチレン誘導体をモノマーとして重合したもの、または、アクリル酸エステルおよびスチレン誘導体をモノマーとして併用して重合したものであることが好ましい。
【0039】
アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、もしくはアクリル酸2−エチルヘキシル等が、また、スチレン誘導体としては、スチレン、ビニルトルエン、もしくはα−メチルスチレン等を用いることができる。勿論、ハードコート層を構成するための電離放射線硬化性組成物を構成し得るモノマーとして列記した前記のものも、原則的に使用が可能である。
【0040】
合成樹脂微粒子3のコア部およびシェル部は、同じ合成樹脂からなっていても、もしくは互いに異なる合成樹脂からなっていてもよいが、合成樹脂微粒子がハードコート層内に分散されて、ハードコート層の硬度を向上させる目的から、コア部を構成する樹脂の方が、シェル部を構成する樹脂よりも硬度があること、言い換えれば、コア部を構成する樹脂の方が、シェル部を構成する樹脂よりもガラス転移温度が高いことが好ましい。ガラス転移点を高めるには、コア部のみを架橋させるか、もしくはコア部の架橋密度をシェル部の架橋密度よりも高めておくことが好ましい。
【0041】
架橋密度を向上させるには、上記のモノマーに加えて、多官能モノマー、例えば、アクリル酸エステル類(エチレングリコールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、もしくはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等)、またはメタクリル酸エステル類(エチレングリコールジメタクリレート、もしくはペンタエリスリトールテトラメタクリレート等)を用いることができる。勿論、ハードコート層を構成するための電離放射線硬化性組成物を構成し得る2官能以上のモノマーとして列記した前記のものも、ここで、多官能モノマーとして原則的に使用が可能である。
【0042】
合成樹脂微粒子3は、屈折率が1.45〜1.59であるものであれば、好ましく用いることができる。
【0043】
ハードコート層1を構成する主たる合成樹脂の屈折率、および、その中に分散させる微粒子の屈折率と透明性との関係は、合成樹脂の屈折率が微粒子の屈折率より低い場合、両屈折率の差が0.05以上であると、ハードコート層の透明性を低下させる。例えば、主たる合成樹脂の屈折率が1.50で、微粒子の屈折率が1.55であると、透明性が思わしくない。しかし、合成樹脂の屈折率が微粒子の屈折率より高い場合、両屈折率の差が0.9未満であれば、ハードコート層の透明性の低下は実質上、少なく、例えば、主たる合成樹脂の屈折率が1.53で、微粒子の屈折率が1.45であるとき、両屈折率の差は0.08で、先の例におけるよりも差が大きいにもかかわらず、透明性は良好である。なお、ここで言う、透明性の良否は、ヘイズ値で判定し、実用的には、透明基材を伴なう場合、基材のヘイズ値とくらべたときの差が、±0.5であることを指す。
【0044】
ハードコート層1中の合成樹脂微粒子の含有割合Y(%)は、合成樹脂微粒子の径Xが大きい場合には少なくて済み、径Xが小さいときは、多くする必要がある。また、合成樹脂微粒子の径Xを決めたときは、上記の含有割合Y(%)が、ある範囲内であるときに、ハードコート層の硬度を向上させ、かつ、透明性を維持することができ、径Xが小さいときは、含有割合Y(%)の範囲が広いが、径Xが大きくなるに連れ、含有割合(%)の範囲が狭くなる。
【0045】
発明者の検討によれば、上記のような効果が発揮できるのは、含有割合Y(%)が、−8.3286Ln(X)+58.68≦Yであり、かつ、Y≦−16.934Ln(X)+118.68であるとき、配合効果が得られることが判明している。なお、配合効果の判定は、透明性については、ヘイズ値で判定し、実用的には、透明基材を伴なう場合、基材のヘイズ値とくらべたときの差が、±0.5であるものを透明であると判定し、硬度については、曲率半径rが0.1mm≦r≦0.3mm、硬度は200Hv以上の物質からなる圧子を使用しての引っ掻き試験で荷重を180gかけたときに傷が付かないことをもって、高硬度であると判定した。
【0046】
ハードコート層1は、以上のような組成物を用いて、公知のコーティング法により、透明基材フィルム上に塗布し、塗布に用いた組成物に応じた手段により塗膜を硬化させる。組成物として電離放射線硬化性組成物を用いた場合には、その組成により、紫外線もしくは電子線を選択して照射し、塗膜を架橋硬化させる。
【0047】
本発明におけるハードコート層1の厚みは、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは3〜15μmである。ハードコート層1の厚みが薄すぎると、単独で充分な硬度が発揮できない上に、その上に種々の層を形成したときにそれらの層の硬度を維持できなくなり、また厚すぎると、層単独でもフレキシブルさが低下する上、さらに種々の層を積層して反射防止フィルム等としたときに、積層状態全体としてもフレキシブルさが低下し、また、層の形成の際に、硬化に時間がかかる等、生産効率の低下をまねくからである。
【0048】
ハードコート層1の上面は、図2に示すように凹凸5を形成することにより、非観察側(図2では透明基材4側)からのディスプレイの入射光等を散乱させ、ハードコート層1の特定の部分の輝度が高くなって不自然な「ぎらつき」を起こすのを緩和させることができる。
【0049】
凹凸5の形成は、ハードコート層1を形成する際に、凹凸を有する型付け用フィルムで塗膜を被覆したまま固化させるか、形成された塗膜に型付け用ロール等の型付け手段を、必要に応じて加熱しつつ押し付けて行なうか、あるいは、剥離面に凹凸を有する剥離性基材上にハードコート層1を塗布形成した後、剥離する等によって形成することができる。凹凸5の程度は、凹凸の高低差が0.2〜10μm、ピッチが20〜200μm程度がよい。
【0050】
本発明のハードコート層1上には、反射防止膜を積層して、反射防止層もしくは透明基材付きの反射防止材とすることができる。積層する反射防止膜は、蒸着等の気相で形成するものであっても、塗付による液相で形成するものでもよく、いずれの場合にも良好な密着性が得られる。
【0051】
一般に、反射防止膜を気相で形成する場合、反射防止膜と下地との弾性の差があると、反射防止膜にクラックが生じやすく、単に硬いだけで脆いハードコート層上に反射防止膜を形成すると、反射防止膜の伸縮に対し、ハードコート層が追随せず、クラックが生じることがあり得るが、本発明のハードコート層1においては、合成樹脂微粒子を使用しているので、反射防止膜とハードコート層1との弾性の差を解消することが容易になる利点がある。
【0052】
また、反射防止膜を液相で形成する場合、ハードコート層を構成する合成樹脂成分と、反射防止膜を構成する合成樹脂成分とを同じにするか、もしくは共通成分を互いに持たせることにより、密着性を向上させることが出来る利点がある。
【0053】
反射防止膜は、例えば、いずれもハードコート層1側から、(1)高屈折率層、および低屈折率層が順に積層されたもの、(2)高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、および低屈折率層が順に積層されたもの、もしくは(3)中屈折率層、高屈折率層、および低屈折率層が順に積層されたもの等であるが、これら以外のものであってもよい。図3の例は、上記(1)の高屈折率層、および低屈折率層が積層したものに相当しており、(2)および(3)の例では、反射防止膜は、それぞれ、四層および三層の積層構造となる。
【0054】
上記(1)および(2)における高屈折率層、並びに(3)における中屈折率層は、ZnO、TiO2、CeO2、Sb25、SnO2、酸化インジウム錫、アンチモンドープの酸化インジウム錫、In23、Y23、La23、Al23、HfO2、およびZrO2からなる群より選ばれた素材からなる薄膜、もしくはこれらの素材からなる超微粒子が分散した樹脂膜で構成することができる。
【0055】
上記(1)、(2)、および(3)における低屈折率層は、SiO2からなる薄膜、SiO2ゲル膜、または、フッ素含有の、もしくはフッ素およびケイ素含有の紫外線硬化性樹脂組成物の硬化膜で構成することができる。
【0056】
上記(3)における高屈折率層は、Fe、Ni、Cr、Ti、Hf、Zn、Zr、Mo、およびTaからなる群より選ばれた金属からなる金属薄膜、もしくはこれらの金属からなる超微粒子が分散した樹脂膜で構成することができる。
【0057】
本発明のハードコート層1には、その観察側の最表面に、汚染を防止するための防汚層8を有していてもよく、防汚層8を形成することにより、ハードコート層1の前面にみや汚れが付着するのを防止し、あるいは付着しても除去しやすくするために形成される。具体的には、ハードコート層1の透明性を損なわない範囲で、フッ素系界面活性剤等の界面活性剤、フッ素系樹脂を含む塗料、シリコーンオイル等の剥離剤、もしくはワックス等をごく薄く塗布し、余剰分を拭い除去しておく。防汚層8は、恒久的な層として形成してもよいが、必要の都度、塗布して形成してもよい。防汚層8の厚みとしては、1〜10nm程度が好ましい。
【0058】
本発明のハードコート層は、合成樹脂微粒子に加えて、有機もしくは無機のフィラー(充填剤)を配合することにより、防眩層とすることができる。このように、合成樹脂微粒子以外の粒子が配合される場合には、合成樹脂微粒子はシェル部がバインダとしての機能を有しているので、合成樹脂微粒子が存在することによる、有機もしくは無機のフィラー(充填剤)の配合上の支障は生じない利点がある。
【0059】
(実施例1)
樹脂形成成分としてのDPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、屈折率;1.52)と、アクリル系合成樹脂微粒子(屈折率;1.51、粒径;150nm)とを、両者の合計質量中に占める合成樹脂微粒子の質量の割合が20%になるよう配合し、全体をトルエンで希釈して、固形分が40%になるよう調整して、ハードコート層形成用塗料とした。上記のハードコート層形成用塗料に紫外線開始剤を配合し、厚み188μmの表面が易接着処理が施された高透明度のポリエチレンテレフタレート樹脂(=PET)フィルムの易接着処理面に、グラビアコーティングにより、塗布し、塗付後、紫外線を照射して硬化させ、膜厚が20μmのハードコート層を形成した。
【0060】
形成されたハードコート層上に、スパッタリング法により、TiO2層(厚み;20nm)、SiO2層(厚み;40nm)、TiO2層(厚み;40nm)、およびSiO2層(厚み;100nm)を順に設けて反射防止膜とした。最後に、反射防止膜上に、フッ素系界面活性剤を厚みが5nmになるようコーティングして、防汚層を形成し、反射防止フィルムを得た。
【0061】
(実施例2)
樹脂形成成分として多官能ウレタンアクリレート(屈折率;1.51)と、アクリル系合成樹脂微粒子(屈折率;1.51、粒径;100nm)とを、両者の合計質量中に占める合成樹脂微粒子の質量の割合が30%になるよう配合し、以降は、実施例1と同様に行なって、反射防止フィルムを得た。
【0062】
(実施例3)
樹脂形成成分として多官能シリコン系アクリレートとDPHAとの質量比が1/1の混合物(屈折率;1.50)と、アクリル系合成樹脂微粒子(屈折率;1.51、粒径;70nm)とを、両者の合計質量中に占める合成樹脂微粒子の質量の割合が50%になるよう配合し、以降は、実施例1と同様に行なって、反射防止フィルムを得た。
【0063】
(実施例4)
樹脂形成成分として多官能エポキシ系アクリレート(屈折率;1.53)と、アクリル系合成樹脂微粒子(屈折率;1.51、粒径;450nm)とを、両者の合計質量中に占める合成樹脂微粒子の質量の割合が50%になるよう配合し、以降は、実施例1と同様に行なって、反射防止フィルムを得た。
【0064】
(実施例5)
樹脂形成成分としてDPHAと、高屈折率粒子であるZrO2(屈折率;1.76)の30%分散液との、質量比;DPHA/ZrO230%分散液=66/34の混合液(屈折率;1.60)と、スチレン−アクリル系合成樹脂微粒子(屈折率;1.59、粒径;600nm)とを、両者の合計質量中に占める合成樹脂微粒子の質量の割合が5%になるよう配合し、以降は、実施例1と同様に行なって、ハードコート層を形成した。ハードコート層上には、スパッタリング法により、TiO2層(厚み;120nm)、SiO2層(厚み;100nm)を順に設けて反射防止膜とし、さらに、反射防止膜上に、フッ素系界面活性剤を厚みが5nmになるようコーティングして、防汚層を形成し、反射防止フィルムを得た。
【0065】
この実施例5におけるハードコート層は、層中の微粒子とバインダーとの屈折率の差がほとんど無いので、高度に透明であり、光学的用途に使用するのに適している。また、ハードコート層の屈折率が高いので、反射防止膜としては、二層を積層するだけで、450nm〜650nmの範囲の光に対し、平均反射率が1%未満の優れた反射防止性が得られている。
【0066】
(実施例6)
樹脂形成成分としてDPHAと、高屈折率粒子であるTiO2(屈折率;1.90)の30%分散液との、質量比;DPHA/TiO230%分散液=66/34の混合液(屈折率;1.65)と、スチレン−アクリル系合成樹脂微粒子(屈折率;1.59、粒径;20nm)とを、両者の合計質量中に占める合成樹脂微粒子の質量の割合が50%になるよう配合し、以降は、実施例1と同様に行なって、ハードコート層を形成し、以降は、実施例5におけるのと同様にして、反射防止膜および防汚層を形成し、反射防止フィルムを得た。この実施例6におけるハードコート層は屈折率が高いので、反射防止膜としては、実施例5で得られたものと同様、二層を積層するだけで、450nm〜650nmの範囲の光に対し、平均反射率が1%未満の優れた反射防止性が得られている。
【0067】
(実施例7)
DPHAと、アクリル系合成樹脂微粒子(屈折率;1.51、粒径;130nm)とを、両者の合計質量中に占める合成樹脂微粒子の質量の割合が40%になるよう配合し、以降は、実施例1と同様に行なって、グラビアコーティングにより、膜厚が20μmになるよう塗布し、塗付後の塗膜上に、マット加工が施されたPETフィルムのマット面を重ねて密着させ、PETフィルムを通して紫外線を照射して塗膜を硬化させた後、PETフィルムを剥離して、表面に微細な凹凸を有するハードコート層を形成した。形成されたハードコート層上に、実施例1におけるのと同様にして、反射防止膜、および防汚層を形成し、反射防止フィルムを得た。
【0068】
(比較例1)
固形分としてはDPHAのみを使用し、アクリル系合成樹脂微粒子を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、ハードコート層、反射防止膜、および防汚層を順次形成して反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムは、カールが激しく測定不能であり、ハードコート層の硬度はあるものの、クラックが入りやすく、また引っ掻き硬度も劣るものであった。
【0069】
(比較例2)
固形分として、DPHA/HDDA=8/2の質量比のものを用い、やはり、アクリル系合成樹脂微粒子を配合せず、その他は実施例1と同様にして、反射防止フィルムを得た。なお、HDDAは、1、6−ヘキサンジオールジアクリレートを指す。 得られた反射防止フィルムは、カールに関しては、比較例のものよりは改善されたが、カールの測定値は70mmと大きく、また、比較例1で得られたものより柔軟性が増したものの、クラックが発生し、引っ掻き硬度もやや劣るものであった。
【0070】
(比較例3)
DPHAと、アクリル系合成樹脂微粒子(屈折率;1.51、粒径;250nm)とを、両者の合計質量中に占める合成樹脂微粒子の質量の割合が50%になるよう配合し、以降は、実施例1と同様に行なって、反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムは、カールの測定値は20mmと良好であったが、アクリル系合成樹脂微粒子が過剰であるため、引っ掻き硬度がかなり劣るものであった。
【0071】
(比較例4)
実施例3で用いたのと同じ多官能シリコン系アクリレート/DPHA=1/1の混合物(屈折率;1.50)と、スチレン−アクリル系合成樹脂微粒子(屈折率;1.59、粒径;150nm)とを、両者の合計質量中に占める合成樹脂微粒子の質量の割合が30%になるよう配合し、以降は、実施例1と同様に行なって、反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムは、ハードコート層における、マトリックス樹脂と合成樹脂微粒子との屈折率の差が大きいため、PETフィルムとハードコート層との積層状態において、ヘイズ値がPETフィルム単独のヘイズ値を0.7上回るものであって、透明度が良好とは言えないものであった。
【0072】
(比較例5)
樹脂形成成分としてDPHAと、固形分30%コロイダルシリカ(MEK分散液、屈折率;1.45)を、後者が両者の合計質量の70%になるよう配合し、固形分38%のインキとし、以降は、実施例1と同様に行なって、ハードコート層を形成した後、実施例1におけるのと同様にして、反射防止膜および防汚層を形成し、反射防止フィルムを得た。使用したコロイダルシリカは、配合量を増加させるとカールが小さくなる傾向があるものの、得られた反射防止フィルムは、カールの測定値が65mmと大きく、また、引っ掻き強度も劣るものであった。
【0073】
以上の実施例1〜7、および比較例1〜5で得られた反射防止フィルムについて、透明性、カール、引っ掻き強度を評価した結果を「表1」に示す。透明性は目視にて判断したものである。カールは、反射防止フィルムを15cm×20cmのサイズとして基準となる平面上においた時に、基準面からの、反射防止フィルムの最も高い部分の高さをもって、「カール」の値とした。引っ掻き強度は、曲率半径Xが、0.1mm≦X≦0.3mm、硬度Yが、200Hv≦Yである金属製圧子に荷重をかけて、防汚層上から引っ掻いて求めるもので、ただし、同じ荷重で5本の引っ掻き線を形成し、常温で1日放置した後に、CRT画面を明るい黄緑色の表示状態として、反射防止フィルムを貼付け、5本の引っ掻き線のうち、3本が傷なしと判定される荷重値を引っ掻き強度とした。
【0074】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のハードコート層、およびハードコート材の図である。
【図2】表面に凹凸を有するハードコート材の図である。
【図3】表面反射防止膜および防汚層を有するハードコート材の図である。
【図4】ディスプレイ装置に適用した様子を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1 透明ハードコート層
2 合成樹脂
3 合成樹脂微粒子
4 透明基材
7 反射防止膜
8 防汚層
10 液晶ディスプレイ装置
11 液晶パネル
12 導光板
14 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋した合成樹脂からなるバインダとバインダ中に分散した合成樹脂微粒子からなる透明ハードコート層であって、
膜厚が0.5〜30μmであり、
合成樹脂微粒子は、コアシェル構造を有し、
合成樹脂微粒子は、バインダと合成樹脂微粒子との合計量に対して5〜50質量%であり、
合成樹脂の屈折率が合成樹脂微粒子の屈折率より低く、上記合成樹脂微粒子とバインダとの屈折率差が0.05未満であり、
引掻強度は、200g以上である
ことを特徴とする透明ハードコート層。
【請求項2】
架橋した合成樹脂からなるバインダとバインダ中に分散した合成樹脂微粒子からなる透明ハードコート層であって、
膜厚が0.5〜30μmであり、
合成樹脂微粒子は、コアシェル構造を有し、
合成樹脂微粒子は、バインダと合成樹脂微粒子との合計量に対して5〜50質量%であり、
バインダの屈折率が合成樹脂微粒子の屈折率よりも高く、
引掻強度は、200g以上である
ことを特徴とする透明ハードコート層。
【請求項3】
前記合成樹脂微粒子の前記コア部が架橋しており、かつ前記シェル部が架橋していないか、もしくは前記コア部の方が前記シェル部よりも架橋密度が高いことを特徴とする請求項1又は2記載の透明ハードコート層。
【請求項4】
表面に微細凹凸を有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の透明ハードコート層。
【請求項5】
表面に反射防止膜が積層されていることを特徴とする請求項1〜請求項4いずれか記載の透明ハードコート層。
【請求項6】
最表面に防汚層が積層されていることを特徴とする請求項1〜請求項5いずれか記載の透明ハードコート層。
【請求項7】
合成樹脂微粒子の径は、10nm〜700nmである請求項請求項1〜請求項6いずれか記載の透明ハードコート層。
【請求項8】
透明基材に、請求項1〜請求項7いずれか記載のハードコート層が積層されていることを特徴とする透明ハードコート材。
【請求項9】
請求項1〜請求項7いずれか記載の透明ハードコート層、もしくは請求項8記載の透明ハードコート材が表示装置の観察側に配置されていることを特徴とするディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−156648(P2008−156648A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334133(P2007−334133)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【分割の表示】特願2001−385337(P2001−385337)の分割
【原出願日】平成13年12月19日(2001.12.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】