説明

透明ポリイミドフィルムの製造方法

【課題】 耐熱性に優れた光線透過率が高い透明ポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリアミド酸又はポリイミドを有機溶剤に溶解した溶液を連続的に塗工、乾燥して自己支持性フィルムを得て、該自己支持性フィルムの両側端部を複数のピン又はクリップで保持することによりフィルムの幅方向を張設した状態で加熱炉中を搬送しながら焼成する焼成工程を含む波長500nmでの光線透過率が50%以上である透明ポリイミドフィルムの製造方法であって、焼成工程の前半から加熱炉の出口を出てフィルムを引き剥がすまで、フィルム幅を順次小さくするようにフィルムの両側端部固定間距離を設定することを特徴とする透明ポリイミドフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明ポリイミドフィルムの製造方法に関する。この透明ポリイミドフィルムは透明導電性フィルム、太陽電池などの透明性と耐熱性を要求される分野におけるフィルムとして多用されており、この透明ポリイミドフィルムの均質性に優れ、生産性に効果のある製造法方法を提供せんとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムとしては、セロファンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルムなど透明なフィルムが主に包装用途などに使用されているが、これらフィルムの可撓性を生かして広く工業製品に使用される白色フィルムも知られている。
例えば、金属板に貼合せた後容器に成形加工するのに有用な二軸配向白色共重合ポリエステルフィルムとして平均粒径が0.1〜2.5μmの白色顔料を含有し、融点が210〜245℃の範囲にある共重合ポリエステルからなり、フィルムの厚さ方向の結晶配向度が0.2〜0.6の範囲としたポリエステルフィルム(特許文献1参照)や、耐熱性、折れ皺に優れた高隠蔽性の白色積層フィルムとして、ポリイミドとポリエステル、さらにフィルム中の分散径が0.03〜5μmである樹脂及び/又は不活性粒子を主たる構成成分とする層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂からなる層ロを積層した二軸配向フィルムであって、層イを構成する樹脂のTgイが層ロを構成する熱可塑性樹脂のTgロよりも高い白色積層フィルム(特許文献2、参照)などが多数提案されている。
近年、電子部品におけるこれらのフィルム使用が拡大してきているが、前記のフィルム素材では高温製造、高温使用における課題が多い。
【0003】
例えば、照明用反射材、LED実装用プリント配線板などにおいては、主にセラミック基板が用いられ、一部、白色顔料を含有する熱硬化性樹脂をシート状ガラス基材に含浸させたプリプレグと金属箔とを加熱プレス成型して得たリジッド金属張積層板が主に用いられていたが、電子機器は、携帯性などを向上させるために、薄型化・軽量化が進んでいる。それに応じて、使用されるこれらもさらに軽量化、薄型化が求められている。
耐熱性に優れる接着剤あるいは接着性フィルムは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン類との重縮合反応により得られる芳香族ポリイミドあるいは芳香族ポリアミド酸からなる分散液又はフィルムが広く用いられている。しかし、この様な芳香族ポリイミド樹脂は、優れた耐熱性及び機械特性を有するものの、可視光の吸収が大きく淡黄色から赤褐色に着色し、透明性が低下する。
これらの課題を解決するため、透明性、耐熱性及びガスバリア性に優れ、有機EL表示素子や液晶表示素子などの透明電極に好適な透明導電性フィルムの基板フィルムとして、炭素数4〜29の脂肪族テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体と炭素数1〜29の脂肪族及び/又は芳香族ジアミン又はその誘導体とを構成成分とする脂肪族ポリイミド からなるフィルム(特許文献3参照)や、高透明性、高ガラス転移温度、低線熱膨張係数、低誘電率、及び十分な強靱さを併せ持つ、芳香族酸二無水物とトランス1,4−ジアミノシクロヘキサンとから形成されるポリイミドフィルム(特許文献4参照)などが提案されている。
また、ポリイミドフィルムを製造するとき、溶媒の一部が残っている前駆体フィルム(グリーンフィルムともいう)を高温でイミド化する。この場合該前駆体フィルムを搬送しながら加熱して乾燥及び熱処理を行うが、これらの溶媒を少なからず保有しているフィルムは一般的に乾燥されるに従って収縮する。このようなフィルムの搬送・乾燥・熱処理において、フィルムの幅方向の両側端部を多数のピンやクリップで保持することによりフィルムの幅方向を張設した状態で搬送しフィルムを製造する装置として、所謂テンターと呼ばれるフィルム(シート)のテンター式搬送装置(特許文献5参照)やポリイミドフィルムの製造にテンター式搬送装置を使用することも多数知られている(特許文献6参照、特許文献7参照)。
【特許文献1】特開平05−170942号公報
【特許文献2】特開2004−098442号公報
【特許文献3】特開2003−141936号公報
【特許文献4】特開2002−161136号公報
【特許文献5】特公昭39−029211号公報
【特許文献6】特開平09−188763号公報
【特許文献7】特開2000−290401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、従来の透明ポリイミドフィルムや褐色の高耐熱性芳香族ポリイミドフィルムのテンター式搬送装置を使用しての製造方法では均質な高品質の透明ポリイミドフィルムを得ることができない課題を解決し、種々用途に使用される耐熱性で透明なポリイミドフィルムの製造方法を提供し、この製造方法によって得られる均質な透明ポリイミドフィルムを用いた、薄型化かつ軽量化が容易な耐熱性で透明な導電性フィルムや、太陽電池や液晶など、種々要耐熱性透明ポリイミドフィルム使用製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、ジアミンと芳香族テトラカルボン酸とを反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)又はポリイミドを有機溶剤溶液中に溶解した樹脂溶液を連続的に塗工、乾燥して自己支持性フィルムを得て、該自己支持性フィルムの両端を固定し、加熱炉中を搬送しながら焼成する焼成工程で透明ポリイミドフィルムとする透明ポリイミドフィルムの製造方法を見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の構成になるものである。
1.ジアミンと芳香族テトラカルボン酸とを反応させて得られるポリアミド酸又はポリイミドを有機溶剤に溶解した溶液を連続的に塗工、乾燥して自己支持性フィルムを得て、該自己支持性フィルムの両側端部を複数のピン又はクリップで保持することによりフィルムの幅方向を張設した状態で加熱炉中を搬送しながら焼成する焼成工程を含む波長500nmでの光線透過率が50%以上である透明ポリイミドフィルムの製造方法であって、焼成工程の前半から加熱炉の出口を出てフィルムを引き剥がすまで、フィルム幅を順次小さくするようにフィルムの両側端部固定間距離を設定することを特徴とする透明ポリイミドフィルムの製造方法。
2.ジアミンが4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)である1.の透明ポリイミドフィルムの製造方法。
3.ジアミンがトランス1,4−ジアミノシクロヘキサンである1.の透明ポリイミドフィルムの製造方法。
4.ジアミンがジアミノジフェニルスルホンである1.の透明ポリイミドフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の、ジアミンと芳香族テトラカルボン酸とを反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体ともいう)又はポリイミドを有機溶剤に溶解した溶液を連続的に塗工、乾燥して自己支持性フィルムを得て、該自己支持性フィルムの両側端部を複数のピン又はクリップで保持することによりフィルムの幅方向を張設した状態で加熱炉中を搬送しながら焼成する焼成工程を含む波長500nmでの光線透過率が50%以上である透明ポリイミドフィルムの製造方法であって、焼成工程の前半から加熱炉の出口を出てフィルムを引き剥がすまで、フィルム幅を順次小さくするようにフィルムの両側端部固定間距離を設定することを特徴とする透明ポリイミドフィルムの製造方法であって、特にジアミンが4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、トランス1,4−ジアミノシクロヘキサン、及びジアミノジフェニルスルホンである透明ポリイミドフィルムの製造方法は、焼成工程で受ける熱による変形を予測しその変形に呼応するようにして該焼成工程での幅方向を制御したものであり、得られる透明ポリイミドフィルム面での歪、反りや捩れなどの少ない均質なものであり、当該透明ポリイミドフィルムを使用した製品の生産効率が優れ、その性能において欠点やバラツキのないものとなり、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明におけるポリイミドフィルムとは、ジアミンと芳香族テトラカルボン酸とを反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体ともいう)又はポリイミドを含有した有機溶媒溶液を支持体に流延・乾燥して、ポリイミド前駆体フィルムを得て、該ポリイミド前駆体フィルムを焼成させて得られる透明ポリイミドフィルムであり、波長500nmでの光線透過率が50%以上である透明ポリイミドフィルムであれば特に限定されるものではないが、ジアミンがt−CHDA(トランス1,4−ジアミノシクロヘキサンなどトランスジアミノシクロヘキサンの異性体から選ばれる一種)、MBCA(4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などメチレンビス(シクロヘキシルアミン)の異性体から選ばれる一種)、DDS(3,3’−ジアミノジフェニルスルホンなどジアミノジフェニルスルホンの異性体から選ばれる一種)から選ばれる少なくとも一種を主成分とする透明ポリイミドフィルムが好ましく、これらから選ばれる少なくとも一種のジアミンを全ジアミンの70モル%以上さらに好ましくは85モル%以上使用することが好ましい。
ジアミンの30モル%未満であれば下記に例示されるジアミン類を一種又は二種以上、併用してのポリイミドフィルムであってもよい。
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
【化3】

【0011】
【化4】

【0012】
4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン。3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、
【0013】
3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン。1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、
【0014】
2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン。1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、
【0015】
3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド。2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、
【0016】
4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン。3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、
【0017】
4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル及び上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子特にフッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子と国フッ素原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0018】
本発明で用いられるテトラカルボン酸は好ましくは芳香族テトラカルボン酸無水物である。
芳香族テトラカルボン酸無水物としては、具体的には、以下のものが挙げられるが好ましくは化5のピロメリット酸無水物及び化6の3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物である。ピロメリット酸無水物或は、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物は70モル%以上使用することが好ましくさらに好ましいのは85モル%である。このピロメリット酸無水物、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物以外に下記の芳香族テトラカルボン酸(無水物)や非芳香族テトラカルボン酸を30モル%未満であれば併用してもよい。
【0019】
【化5】

【0020】
【化6】

【0021】
【化7】

【0022】
【化8】

【0023】
【化9】

【0024】
【化10】

【0025】
ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸(二無水物)は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0026】
ジアミン(モノマー)と、テトラカルボン酸(モノマー)とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマー及び生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるような量が挙げられる。
【0027】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌及び/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミンの溶液中に芳香族テトラカルボン酸(無水物)を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の質量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが0.8dl/g以上が好ましく、1.0dl/g以上がより好ましい。
【0028】
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の有機溶媒溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミンに少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
重合反応により得られるポリアミド酸を溶解した液から、ポリイミドフィルムを形成するためには、この液を支持体上に塗布して乾燥するなどにより前駆体フィルム(グリーンフィルム)を得て、次いで、グリーンフィルムを熱処理に供することなどでイミド化反応させる方法が挙げられるが、重合反応により得られるポリアミド酸からイミド化によりポリイミドに一部変化したものを溶解した液であってもよい。
【0029】
ポリアミド酸などを溶解した液を塗布する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の剛性を有していればよく、表面が金属(より好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるステンレス)、プラスチックなどであるドラム又はベルト状回転体などが挙げられる。また、適度な剛性を有する高分子フィルムを利用する方法も好ましい態様である。
金属支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体表面はフィルムの必要表面凹凸構造に応じて、任意の表面凹凸構造を付与することができ、この支持体上の表面凹凸構造は支持体全面に付与してもよく、部分的に付与してもよく、またドラム又はベルト状回転体支持体に直接付与してもよく、フィルムや金属に付与したものを貼り合わせて使用してもよい。凹凸構造の深さは0.5〜80μmが好ましいが、より好ましくは0.5〜50μm、さらに好ましくは0.5〜40μmである。
支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
【0030】
得られたグリーンフィルムを所定の条件でイミド化することでポリイミドフィルムを得ることができる。
イミド化の具体的な方法としては、従来公知のイミド化反応、イミド化処理を適宜用いることが可能である。
熱イミド化方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒及び脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒及び脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができる。
【0031】
化学閉環法では、ポリアミド酸溶液を、イミド化反応を一部進行させて自己支持性を有する前駆体複合体を形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
【0032】
フィルムの両側端部を保持しかつフィルム幅方向を張設した状態で搬送するフィルム製造するためのテンター式搬送方法において、加熱炉入口でのフィルム両端間距離に対する加熱炉出口から出たフィルム剥離位置でのフィルム両側端部固定間距離の割合は、80〜97%の範囲であり、好ましくは85〜92%である。
フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持は、例えば、多数のピンシートと個々のピンシートに配された多数のピンで構成され、該ピンがフィルム両側端部を突き刺すことでなされる。加熱炉内ではこの複数ピンシートはフィルム両端で互いに並行に走行しているものが好ましい。また、フィルム幅方向における最内側に配列された個々のピンが互いに、フィルム搬送方向で個々のピンシート内においても、他のピンシート間においても、全て等間隔で配されていることが好ましい。ピン間隔が把持フィルムの幅に対して1/10以下であることが好ましく、このことで、フィルム把持の均一性が保たれ易く、ピンを喰い込ませた孔でのフィルムの幅方向又は搬送方向にも孔が拡大することや破断が生じることが抑制され、フィルム全体での歪の低減、フィルム厚み斑の低減が達成し得る。
【0033】
本発明の透明ポリイミドフィルムには白色顔料を添加して白色フィルムとなす方法も好ましい一態様である。ここで用いられる白色顔料は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、硫化亜鉛、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、塩基性モリブデン酸亜鉛、塩基性モリブデン酸カルシウム亜鉛、モリブデンホワイトなどからなる群より選ばれる1種以上のものである。これらの中で、表面に被覆層を形成したルチル型酸化チタンが好ましく、被覆層としては、SiO又はAl処理であり、さらに、被覆層が、SiO又はAl処理した後、ポリオール処理、シロキサン処理してなるものであるルチル型酸化チタンが好ましい。
なお、白色顔料は通常、ポリアミド酸溶液に配合した白色顔料分散液として用いる。配合は、ポリアミド酸の合成、溶解操作の前、合成中、あるいは合成終了後、さらには合成終了後希釈溶媒にて希釈した後のいずれかで行っても良いが、通常、合成終了後に行う。
白色顔料の攪拌分散は適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽にて実施してもよく、ボールミルなどの混合を目的とした装置、又は、公転・自転型の混合装置を用いても行うことができる。
【0034】
本発明で用いる白色顔料の粒径は0.05〜5μm、好ましくは0.1〜1μmである。粒径が0.05μmより小さい場合には、光線反射率が低下し、一方、5μmを超える場合には樹脂組成物層表面の凹凸が目立ち外観不良を起こすなど、機械的性質、特に破断伸びの低下が大きくなるので好ましくない。ポリイミドに対する白色顔料の含有率は、固形分基準で5〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%である。含有率が60質量%を超える場合は、機械的性質、特に破断強度が低下したり、十分な接着強度が得られなくなり好ましくない。また、含有率が5質量%より小さい場合は、十分な反射率と白色度が得られなくなり好ましくない。
本発明の白色ポリイミドフィルムの反射率は、410〜780nmにおいて50%以上であることが好ましい。50%未満では、光の裏抜けが生じるため好ましくない。また、白色ポリイミドフィルムの白色度は50以上であることが好ましい。白色度50未満では、光の吸収が生じ黄色味を帯びてしまうので好ましくない。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。実施例などで得られた白色ポリイミドフィルム、片面フレキシブル銅張り積層板、及び両面フレキシブル銅張り積層板の評価は以下のように行った。また使用した白色顔料の粒径測定は以下のように行った。
(1)ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
(2)フィルム厚さ
フィルムの厚さは、マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン(商品名)1254D)を用いて測定した。
【0036】
(3)ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度
乾燥後のフィルムを長手方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)にそれぞれ長さ100mm、幅10mmの短冊状に切り出して試験片とし、引張試験機(島津製作所製オートグラフ(商品名)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmで測定し、引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度を求めた。
(4)光線透過率
東京電色製の分光白色度光度計ERP−80WXを用い、光線をフィルムに照射して、500nmにおける透過率を測定し透明性の指標とした。
【0037】
(実施例1)
(ポリアミド酸の重合)
反応容器中にトランス1,4−ジアミノシクロヘキサン1140質量部を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド34000質量部に溶解した後、撹拌しながら3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の粉末2646質量部とピロメリット酸二無水物218質量部を徐々に加えた。形成された塩溶液をオイルバスにて150℃で5分間激しく撹拌しながら加熱したところ、塩の一部が溶解し始めたので、反応容器をオイルバスからはずして室温で数時間撹拌することにより、透明で粘稠なポリアミド酸溶液(A)を得た。
(ポリイミドフィルムの製膜)
得られたポリアミド酸溶液(A)を、支持体としての厚さ188μm、幅800mmのポリエステルフィルム(コスモシャイン(商品名)A4100(東洋紡績株式会社製))の滑剤を含まない面に幅740mmとなるようにコーティングし、乾燥工程として3つの熱風式乾燥ゾーンにて雰囲気温度で80℃×5分、80℃×5分、80℃×5分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となった前駆体フィルムを支持体から剥離しポリイミド前駆体フィルムを得た。
フィルムの両側端部を多数のピンで保持し、かつフィルム幅方向を張設した状態で搬送する、フィルム製造するためのテンター式搬送方法で、得られたポリイミド前駆体フィルムを、加熱炉中を搬送しながら焼成する連続式加熱炉に次の加熱炉設定条件で通すことで、品位良好な透明ポリイミドフィルムを得た。
フィルム両端間距離としては、加熱炉入口を680mmに、そしてフィルム破れやフィルム剥れのないよう搬送方向へ順次狭め、加熱炉を出てピンからフィルム剥離する位置を625mmに設定した。また、加熱炉温度としては、200℃にて3分間、300℃にて7分間熱処理した後、5分間かけて室温まで冷却した。
得られたフィルムの性能などを表1に示す。
【0038】
(実施例2)
(ポリアミド酸の重合−2)
反応容器に4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)2100質量部を入れ、N−メチル−2−ピロリドン28600質量部に溶解した後、窒素気流下、撹拌しながらピロメリット酸二無水物の粉末2180質量部を徐々に加え、35℃で8時間反応させることにより、透明で粘稠なポリアミド酸溶液(B)を得た。
(ポリイミドフィルムの製膜)
得られたポリアミド酸溶液(B)を、支持体としての厚さ188μm、幅800mmのポリエステルフィルム(コスモシャインA4100(東洋紡績株式会社製))の滑剤を含まない面に幅740mmとなるようにコーティングし、乾燥工程として3つの熱風式乾燥ゾーンにて雰囲気温度で80℃×5分、80℃×5分、80℃×5分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリイミド前駆体を支持体から剥離し、ポリイミド前駆体フィルムを得た。
得られたポリイミド前駆体フィルムを、実施例1と同様の加熱炉設定条件で、品位良好な透明ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの性能などを表1に示す。
【0039】
(実施例3)
(ポリアミド酸の重合)
反応容器に3,3’DDS(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン)4966質量部を入れ、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)32551質量部に溶解した後、容器を水冷して、撹拌しながら3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の粉末5884質量部を徐々に加えた。水冷したまま、8時間攪拌を続けることにより、透明で粘稠なポリアミド酸溶液(C)を得た。
(ポリイミドフィルムの製膜)
ポリアミド酸溶液(C)を、支持体としての厚さ188μm、幅800mmのポリエステルフィルム(コスモシャイン(商品名)A4100(東洋紡績株式会社製))の滑剤を含まない面に幅740mmとなるようにコーティングし、乾燥工程として3つの熱風式乾燥ゾーンにて雰囲気温度で80℃×5分、80℃×5分、80℃×5分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となった前駆体フィルムを支持体から剥離しポリイミド前駆体フィルムを得た。
得られたポリイミド前駆体フィルムを、実施例1と同様の加熱炉設定条件で、品位良好な透明ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの性能などを表1に示す。
【0040】
(比較例)
ポリアミド酸溶液(A)を使用して得られたポリイミド前駆体フィルムの両端部を多数のピンで保持しかつフィルム幅方向を張設した状態で搬送する、フィルム製造するためのテンター式搬送方法で、フィルム両端間距離を加熱炉入口で680mmに設定し、搬送方向へ狭めてから広げ、加熱炉を出たフィルム剥離位置でのフィルム両端間距離を700mmに設定した以外は、実施例1と同様にして透明ポリイミドフィルムを製造したが、フィルム破断が発生し、フィルムを得ることができなかった。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の、ジアミンと芳香族テトラカルボン酸とを反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)又はポリイミドを有機溶剤に溶解した樹脂溶液を連続的に塗工、乾燥して自己支持性フィルムを得て、該自己支持性フィルムの両側端部を多数のピンやクリップで保持することによりフィルムの幅方向を張設した状態で搬送しフィルムを製造するテンター式搬送方法で、加熱炉中を搬送しながら焼成する焼成工程でポリイミドフィルムとする、波長500nmでの光線透過率が50%以上である透明ポリイミドフィルムの製造方法であって、焼成工程の前半から加熱炉の出口を出てフィルムを引き剥がすまで、フィルム幅を順次小さくするように固定側端間距離を設定する透明ポリイミドフィルムの製造方法であって、特にジアミンが4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、トランス1,4−ジアミノシクロヘキサン、及びジアミノジフェニルスルホンである透明ポリイミドフィルムの製造方法は、焼成工程で受ける熱による変形を予測しその変形に呼応するようにして該焼成工程での幅方向を制御したものであり、得られる透明ポリイミドフィルム面での歪、反りや捩れなどの少ない均質なものであり、当該透明ポリイミドフィルムを使用した製品の生産効率が優れ、その性能において欠点やバラツキのないものとなり、工業的に極めて有用である。えられた透明ポリイミドフィルムは耐熱性と透明性を要求される透明導電性フィルム、太陽電池、液晶板、フレキシブルプリント配線板、表示機器などの保護板など多数の工業製品や電気製品などの家庭用品に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】両側端部を保持することによりフィルムの幅方向を張設した状態で加熱炉中を搬送しながら焼成する工程の概略図
【図2】テンター式フィルム処理機におけるピン刺し部の概略を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
1.フィルム
2.フィルム端部把持具
2−1.ピン
2−2.ピンシート
3.加熱炉
4.ピン刺し部
5.ピンシート駆動チェーン
6.冷却機
7.ブラシロール
8.押さえロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミンと芳香族テトラカルボン酸とを反応させて得られるポリアミド酸又はポリイミドを有機溶剤に溶解した溶液を連続的に塗工、乾燥して自己支持性フィルムを得て、該自己支持性フィルムの両側端部を複数のピン又はクリップで保持することによりフィルムの幅方向を張設した状態で加熱炉中を搬送しながら焼成する焼成工程を含む波長500nmでの光線透過率が50%以上である透明ポリイミドフィルムの製造方法であって、焼成工程の前半から加熱炉の出口を出てフィルムを引き剥がすまで、フィルム幅を順次小さくするようにフィルムの両側端部固定間距離を設定することを特徴とする透明ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項2】
ジアミンが4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)である請求項1記載の透明ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
ジアミンがトランス1,4−ジアミノシクロヘキサンである請求項1記載の透明ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項4】
ジアミンがジアミノジフェニルスルホンである請求項1記載の透明ポリイミドフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−230018(P2008−230018A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72043(P2007−72043)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】