説明

透明容器の識別方法

【課題】透明な容器と不透明な容器とを確実に識別することができる透明容器の識別方法を提供する。
【解決手段】背後から照明手段により照明されるスリット板を撮像手段により撮像し、当該撮像データに基づいて撮像手段とスリット板との間に存在する容器が透明か不透明かを識別する透明容器の識別方法において、撮像手段との間に障害物が存在しない状態でスリット板を撮像し、当該撮像データに基づいて特定されるスリット板の複数の開口に対応する部分の中で最大部分の面積と、撮像手段との間に容器が存在する状態でスリット板を撮像し、当該撮像データに基づいて特定されるスリット板の複数の開口に対応する部分の中で最大部分の面積とを比較して、前記撮像手段とスリット板との間に存在する容器が透明か不透明かを識別することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス瓶、ペットボトル、缶、プラスチック容器、紙パック等の容器を回収し、当該回収した容器を選別する際に用いられる透明容器の識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、受光した光の光量に基づいて透明びんであると判断する認識装置が知られている。(特許文献1参照)。
【0003】
図6は、特許文献1に記載された透明びんの認識装置の一例を示す。
特許文献1に記載された透明びんの認識装置103は、ベルトコンベア111の一側方に近接して定光量蛍光灯からなる光源122を、これに対向して他側方に近接して撮像装置であるカラーカメラ113を備えるものである。当該カラーカメラ113は長方形のウインド113aを有するエリアセンサを備え、CCD(Charge Coupled Device)素子を二次元的に整列配置してなる前記エリアセンサが光源122から発せられる光L又はその透過光pを受光する。そして、受光した光の色成分をカラーコーダによりR(赤)、B(青)、G(緑)の原色成分の画像信号に分解し、その画像信号と受光した光の光量の信号とを画像処理装置114に供給する。画像処理装置114は、前記画像信号及び光量の信号により、前記ウインド113a内の画素が何色の光を受光したかを判断し、何色のびんが光源122とカラーカメラ113との間を通過したかを認識する。
【0004】
無色透明のびんが光源122とカラーカメラ113との間を通過する場合、カラーカメラ113は光源122から発光される光Lと同じ色成分で光量のみが一定量低下した透過光pを受光する。そのため、画像処理装置114は、光の色成分はそのままで所定の光量を受光したカラーカメラ113の画素が所定数以上あるときは、無色透明のびんが光源122とカラーカメラ113との間を通過したものと認識する。
【0005】
ところで、上記認識装置103は、透過光pの光量から光源122とカラーカメラ113との間を通過するびんBが透明であると判断するための基準となる光量を予め作業員が設定する必要がある。
ところが、透明びんは、ガラスの厚みが厚いものや薄いもの、形状が四角いものや丸いもの、表面が滑らかなものやザラザラなもの等さまざまであり、それぞれ光の透過量が異なることから、上記認識装置103において全ての透明びんを正確に認識できるように光量の基準値を設定することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−117727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、作業員による光量の基準値等の設定を必要とせず、透明な容器と不透明な容器とを確実に識別することができる透明容器の識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、背後から照明手段により照明されるスリット板を撮像手段により撮像し、当該撮像データに基づいて撮像手段とスリット板との間に存在する容器が透明か不透明かを識別する透明容器の識別方法において、撮像手段との間に障害物が存在しない状態でスリット板を撮像し、当該撮像データに基づいて特定されるスリット板の複数の開口に対応する部分の中で最大部分の面積と、撮像手段との間に容器が存在する状態でスリット板を撮像し、当該撮像データに基づいて特定されるスリット板の複数の開口に対応する部分の中で最大部分の面積とを比較して、前記撮像手段とスリット板との間に存在する容器が透明か不透明かを識別することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明は、撮像手段との間に容器が存在する状態における前記最大部分の面積が、撮像手段との間に障害物が存在しない状態における前記最大部分の面積と比較して大きい場合、前記容器を透明容器であると判定することを特徴とするものである。
【0010】
さらに、本発明は、撮像手段との間に容器が存在する状態における前記最大部分の面積が、撮像手段との間に障害物が存在しない状態における前記最大部分の面積と比較して小さい又は同じである場合、前記容器を不透明容器であると判定することを特徴とするものである。
【0011】
本発明は、撮像手段がエリアセンサを備え、当該エリアセンサによる撮像データの画素数により前記面積の比較を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の透明容器の識別方法は、撮像手段とスリット板との間に障害物が存在しない状態でスリット板を撮像し、当該撮像データに基づいて特定されるスリット板の複数の開口に対応する部分の中で最大部分の面積と、撮像手段とスリット板との間に容器が存在する状態でスリット板を撮像し、当該撮像データに基づいて特定されるスリット板の複数の開口に対応する部分の中で最大部分の面積との比較に基づいて、前記容器が透明であるか不透明であるかを識別するものであるから、作業員による光量の基準値等の設定を必要とせず、容器の材質、色、厚み、形状及び表面の加工状態等に関わらず透明な容器と不透明な容器とを確実に識別することができる。
【0013】
また、本発明によれば、撮像手段とスリット板との間に存在する容器が透明である場合、スリット板の開口を通過した照明手段の光は当該容器を通過する際に屈折する。
したがって、本発明の透明容器の識別方法は、撮像手段とスリット板との間に容器が存在する状態における前記最大部分の面積が、撮像手段とスリット板との間に障害物が存在しない状態における前記最大部分の面積と比較して大きい場合、当該容器を透明容器であると判定することで確実に透明容器を識別することができる。
【0014】
さらに、本発明によれば、撮像手段とスリット板との間に存在する容器が不透明である場合、スリット板の開口を通過した照明手段の光は当該容器において遮られる。
したがって、本発明の透明容器の識別方法は、撮像手段とスリット板との間に容器が存在する状態における前記最大部分の面積が、撮像手段とスリット板との間に障害物が存在しない状態における前記最大部分の面積と比較して小さい又は同じである場合、当該容器を不透明容器であると判定することで透明容器と不透明容器とを確実に識別することができる。
【0015】
本発明の透明容器の識別方法は、撮像手段がエリアセンサを備え、当該エリアセンサによる撮像データの画素数により面積の比較を行うこととすれば、コンピュータを用いて瞬時に自動的に透明容器を識別することができ、透明容器と不透明容器との選別の自動化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の方法に使用する装置の模式図。
【図2】本発明の方法に使用する装置の模式図。
【図3】スリット板の前面に障害物が存在しない場合の二値化画像の説明図。
【図4】スリット板の前面に透明容器が存在する場合の二値化画像の説明図。
【図5】スリット板の前面に不透明容器が存在する場合の二値化画像の説明図。
【図6】従来の透明びん認識装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は本発明の実施の形態において使用する装置の模式図であって、図1は容器の搬送方向下流側から見た図、図2は図1の模式図を上から見た図をそれぞれ示す。
本実施の形態で使用する識別装置1は、容器2を搬送するコンベア3と、該コンベア3の一側方に配置される蛍光灯4と、コンベア3の他側方であって前記蛍光灯4と対向する位置に配置されるCCDエリアセンサを備えるカメラ5と、蛍光灯4とカメラ5との間であって前記コンベア3上を搬送される容器2よりも蛍光灯4側に位置するスリット板6とを備えるものである。
【0018】
また、上記識別装置1は、前記カメラ5に接続されるコンピュータ7と、該コンピュータ7に接続されるモニタ8を備えるものである。
【0019】
本実施形態で使用する識別装置1は、スリット板6が背後から蛍光灯4により照明される状態において、前記コンベア3を挟んで対向する位置に配置されるカメラ5により前記スリット板6を撮像し、当該撮像データ、即ちカメラ5におけるCCDエリアセンサの各画素出力を前記コンピュータ7に入力して画像処理(二値化処理)し、その結果をモニタ8等に出力するものである。
【0020】
図3は、スリット板6とカメラ5との間に障害物が存在しない場合、即ちスリット板6の前面を容器が通過しない場合の説明図であって、(a)はカメラ5から見えるスリット板6を、(b)はスリット板6をカメラ5で撮像したデータをコンピュータ7で二値化処理しモニタ8に出力した画像を示す。
スリット板6は、図3(a)に示すように格子状のものであり複数の開口9が形成されている。そして、その二値化画像は、図3(b)に示すようにスリット板6の格子に対応する部分10が黒く、開口9に対応する部分11が白く表示されている。なお、前記二値化画像は、スリット板6の格子に対応する部分10を白く、開口9に対応する部分11を黒く表示させるものであってもよい。
【0021】
図4は、スリット板6とカメラ5との間に透明容器21が存在する場合、即ちスリット板6の前面を透明容器21が通過する場合の説明図であって、(a)はカメラ5から見えるスリット板6と透明容器21の位置関係を、(b)はスリット板6を透明容器21を間に介してカメラ5で撮像したデータの二値化画像を示す。なお、図4(b)に示す白い破線は、画像中の透明容器21の位置を示すものであって実際に表示されるものではない。
図4(a)に示すように透明容器21を間に介してスリット板6を撮像した場合、スリット板6の複数の開口9を通過した蛍光灯4の光は透明容器21を透過する際に屈折する。そのため、カメラ5による撮像データの二値化画像は、図4(b)に示すようにスリット板6の格子に対応する部分(黒い部分)10が歪み、前記複数の開口9に対応する部分(白い部分)11が繋がったり変形したりして、当該複数の開口9に対応する部分11の中で最大部分の面積が、図3(b)に示すスリット板6の複数の開口9に対応する部分11の中の最大部分の面積に比べ増加する。
【0022】
一方、図5は、スリット板6とカメラ5との間に不透明容器22が存在する場合、即ちスリット板26の前面を不透明容器22が通過する場合の説明図であって、(a)はカメラ5から見えるスリット板6と不透明容器22の位置関係を、(b)はスリット板6を不透明容器22を間に介してカメラ5で撮像したデータの二値化画像を示す。なお、図5(b)に示す白い破線は、画像中の不透明容器22の位置を示すものであって実際に表示されるものではない。
図5(a)に示すように、不透明容器22を間に介してスリット板6を撮像した場合、スリット板6の複数の開口9を通過した蛍光灯4の光は不透明容器22によって遮られる。そのため、カメラ5による撮像データの二値化画像は、図5(b)に示すようにスリット板6の複数の開口9に対応する部分(白い部分)11の中で最大部分の面積が、図3(b)に示すスリット板6の複数の開口9に対応する部分11の中の最大部分の面積に比べ減少する。
【0023】
本発明の実施の形態による方法は、透明な容器と不透明な容器との識別を自動的に行うことができる。
まず、図3のようにスリット板6とカメラ5との間に障害物がない状態において、カメラ5により前記スリット板6を撮像し、当該カメラ5におけるCCDエリアセンサの各画素出力をコンピュータ7に入力して二値化処理を行う。そして、コンピュータ7は、その二値化データを利用して明るい画素の塊(明るい画素で構成される区域)、即ちスリット板6の複数の開口9に対応する部分11を探索し、その中で最大の塊の画素数を前記複数の開口9に対応する部分11の中で面積が最大部分であるとして記憶する。
【0024】
次に、容器2を間に介してスリット板6をカメラ5で撮像した場合において、上記と同様に、コンピュータ7は、カメラ5におけるCCDエリアセンサの各画素出力の二値化データを利用して明るい画素の塊を探索し、その中で最大の塊の画素数をスリット板6の複数の開口9に対応する部分11の中で面積が最大部分であるとして前記記憶した画素数と比較する。
【0025】
比較の結果、当該画素数が前記記憶した画素数よりも多い場合、コンピュータ7は、図4を例として説明したとおり、スリット板6の複数の開口9を通過した蛍光灯4の光が容器2を透過する際に屈折した結果、当該複数の開口9に対応する部分11の中で最大部分の面積が増加したものとして前記容器2を透明容器21と判断する。
【0026】
一方、当該画素数が前記記憶した画素数よりも少ない又は同じである場合、コンピュータ7は、図5を例として説明したとおり、スリット板6の複数の開口9を通過した蛍光灯4の光が容器2によって遮られた結果、当該複数の開口9に対応する部分11の中で最大部分の面積が減少又は変化しないものとして前記容器2を不透明容器22と判断する。
【0027】
上記識別方法によれば、透明容器に不透明なラベルが貼られている場合であっても、スリット板6の複数の開口9を通過した蛍光灯4の光はラベル以外の部分において屈折するため不透明容器と誤認識することはない。
【0028】
上記実施の形態では、CCDエリアセンサの各画素出力を二値化処理し、その二値化データを利用して明るい画素の塊の中で最大の塊の画素数をスリット板6の複数の開口9に対応する部分11の中で面積が最大部分であると判断するものとしたが、それ以外の方法によって前記面積の最大部分を判断してもよい。
【0029】
上記実施の形態は、光の屈折現象を利用して透明容器を識別するものであるので、瓶、ペットボトル、プラスチック容器など材質によらず、透明な容器であれば確実に識別することが可能である。
【0030】
なお、上記実施の形態で使用する識別装置において、カメラ5はCCDエリアセンサを備えるものであったが、二値化画像を得られるものであれば、それ以外のどのような撮像手段であってもよい。
【0031】
また、上記実施の形態で使用する識別装置は、蛍光灯4を光源として備えるものであったが、それ以外の照明、例えばLEDやハロゲン等を光源としてもよい。
【0032】
さらに、上記実施の形態で使用する識別装置において、スリット板6は図3(a)に示す格子状のものとしたが、これに限ることなく、例えば横長の開口を上下に複数備えるものや、縦長の開口を左右に複数備えるものであってもよい。
【0033】
本発明は、上記実施の形態に限らず発明の範囲を逸脱しない限りにおいてその構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の透明容器の識別方法は、材質によらず透明な容器と不透明な容器を確実に識別できるものであり非常に利用性の高いものである。
【符号の説明】
【0035】
1 識別装置
2 容器
3 コンベア
4 蛍光灯
5 カメラ
6 スリット板
7 コンピュータ
8 モニタ
9 開口
10 スリット板6の格子に対応する部分
11 スリット板6の開口に対応する部分
21 透明容器
22 不透明容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背後から照明手段により照明されるスリット板を撮像手段により撮像し、当該撮像データに基づいて撮像手段とスリット板との間に存在する容器が透明か不透明かを識別する透明容器の識別方法において、
撮像手段との間に障害物が存在しない状態でスリット板を撮像し、当該撮像データに基づいて特定されるスリット板の複数の開口に対応する部分の中で最大部分の面積と、撮像手段との間に容器が存在する状態でスリット板を撮像し、当該撮像データに基づいて特定されるスリット板の複数の開口に対応する部分の中で最大部分の面積とを比較して、前記撮像手段とスリット板との間に存在する容器が透明か不透明かを識別することを特徴とする透明容器の識別方法。
【請求項2】
前記撮像手段との間に容器が存在する状態における前記最大部分の面積が、前記撮像手段との間に障害物が存在しない状態における前記最大部分の面積と比較して広い場合、当該容器を透明容器であると判定することを特徴とする請求項1記載の透明容器の識別方法。
【請求項3】
前記撮像手段との間に容器が存在する状態における前記最大部分の面積が、前記撮像手段との間に障害物が存在しない状態における前記最大部分の面積と比較して狭い又は同じである場合、当該容器を不透明容器であると判定することを特徴とする請求項1又は2記載の透明容器の識別方法。
【請求項4】
前記撮像手段はエリアセンサを備え、当該エリアセンサによる撮像データの画素数により前記面積の比較を行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載の透明容器の識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−167642(P2011−167642A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34226(P2010−34226)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(506212916)特定非営利活動法人広島循環型社会推進機構 (12)
【Fターム(参考)】