説明

透明導電体及びこれを用いた透明導電フィルム

【課題】十分な光線透過率やヘイズ値を確実に実現できる透明導電体及びこれを用いた透明導電フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明は、導電性粒子及びバインダを含有する透明導電体において、導電性粒子の平均粒径が60nm以下であり、導電性粒子の総数のうち、100nm以上の粒径を有する導電性粒子の数の割合が10%以下である、透明導電体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電体及びこれを用いた透明導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル等のパネルスイッチは一般に、互いに対向する一対の透明電極と、これら一対の透明電極間に挟まれたスペーサとから構成される。このようなパネルスイッチにおいては、一方の透明電極を押圧すると、この透明電極が他方の透明電極と接触して通電が起こり、これによって、その接触点の位置が検知される。上記透明電極としては、透明導電フィルムが使用されており、この透明導電フィルムは、導電性粒子がバインダ中に分散された透明導電体を有する。
【0003】
このような透明導電体においては一般に、導電性粒子が分散されている。ところが、各導電性粒子は一般に1次粒子を凝集させてなる2次粒子となっており、透明導電体に光が入射されると、導電性粒子により光の散乱が生じ、これにより、透明導電体の光線透過率及びヘイズ値が低下するという問題がある。従って、十分な光線透過率及びヘイズ値を有する透明導電体が求められている。
【0004】
このような透明導電体として、従来、例えば、導電性粒子の体積含有率を50〜80%とした透明導電体が開示されており、この透明導電体により、光線透過率及びヘイズ値を向上させることが提案されている(下記特許文献1参照)。ここで、導電性粒子としては、平均粒径が30nmのインジウム錫酸化物超微粒子が用いられている。
【特許文献1】特許第3072862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1記載の透明導電膜は、光線透過率やヘイズ値が十分でない場合があり、特にパネルスイッチの用途に使用する膜としては、不適当な場合がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、十分な光線透過率やヘイズ値を確実に実現できる透明導電体及びこれを用いた透明導電フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、導電性粒子の平均粒径のみならず、粒度分布も光線透過率及びヘイズ値を向上させる上で重要であることを見出した。そして、本発明者らは、更に鋭意研究を重ね、導電性粒子の平均粒径が所定値以下であり、且つ導電性粒子の粒径分布において、所定の粒径以上の割合が一定値以下の場合に上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、導電性粒子及びバインダを含有する透明導電体において、導電性粒子の平均粒径が60nm以下であり、導電性粒子の総数のうち、100nm以上の粒径を有する導電性粒子の数の割合が10%以下である、透明導電体である。ここで、本発明における透明導電体は、膜状及び板状のものが含まれ、膜状透明導電体は厚みが50nm〜1mmの範囲のものをいい、板状透明導電体は厚みが1mmを超えるものをいう。
【0009】
この透明導電体によれば、平均粒径が60nm以下となっており、導電性粒子の総数のうち、100nm以上の粒径を有する導電性粒子の数の割合が10%以下となっており、全体的に導電性粒子の粒径が小さく、且つ光散乱の主要因となる100nm以上の粒径を有する導電性粒子の割合が十分に小さくなっている。このため、本発明の透明導電体に光を入射しても、その光の散乱が十分に抑制される。よって、十分な光線透過率及びヘイズ値を確実に実現できる。
【0010】
なお、導電性粒子の平均粒径が60nmを超えると、十分な光線透過率およびヘイズ値を確実に実現できない。また、導電性粒子の総数のうち、100nm以上の粒径を有する導電性粒子の数の割合が10%を超えると、光線透過率及びヘイズ値が著しく低下する。
【0011】
上記透明導電体において、導電性粒子の総数のうち、40〜80nmの導電性粒子の数の割合が、50%以上であることが好ましい。この場合、入射する光散乱がより抑制されるため、透明導電体の光線透過率及びヘイズ値をより向上させることができる。
【0012】
上記透明導電体において、上記導電性粒子の平均粒径が10nm以上であることが好ましい。この場合、導電性粒子が酸素と反応することによる導電性の変化が抑制される。
【0013】
また、本発明は、基体と、基体上に設けられる上記透明導電体とを備える透明導電フィルムである。かかる透明導電フィルムは、上記透明導電体を有するため、光線透過率及びヘイズ値に優れる。したがって、かかる透明導電フィルムは、タッチパネル等の用途に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、十分な光線透過率やヘイズ値を確実に実現できる透明導電体及びこれを用いた透明導電フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明の透明導電フィルムの第1実施形態を示す模式断面図である。図1に示すように、本実施形態の透明導電フィルム10は、基体14と、基体14上に設けられる透明導電体15とを備えている。この透明導電体15は、導電性粒子11及びバインダ12を含有し、導電性粒子11は、隣合う導電性粒子11同士が互いに接触するように、透明導電体15中に充填されている。これにより、透明導電体15の通電が可能となっている。
【0017】
ここで、透明導電体15について更に詳細に説明する。
【0018】
(透明導電体)
上記透明導電体15は通常、導電性粒子11及びバインダ12を含有する。
【0019】
<導電性粒子>
導電性粒子11は、透明導電性酸化物材料から構成される。透明導電性酸化物材料は、透明性及び導電性を有すれば特に限定されないが、かかる透明導電性酸化物材料としては、例えば、酸化インジウム、又は酸化インジウムに、錫、亜鉛、テルル、銀、ガリウム、ジルコニウム、ハフニウム又はマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたものや、酸化錫、又は酸化錫に、アンチモン、亜鉛又はフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたものや、酸化亜鉛、又は酸化亜鉛に、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ホウ素、フッ素、又はマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたもの等が挙げられる。
【0020】
透明導電体15における導電性粒子11の充填率は、10〜70体積%であることが好ましい。充填率が10体積%未満であると、充填率が上記範囲である場合に比べて、透明導電体15の電気的抵抗値が高くなる傾向にあり、充填度が70体積%を超えると、充填率が上記範囲である場合に比べて、膜の機械的強度が低下する傾向にある。
【0021】
上記導電性粒子11の比表面積は10〜50m/gであることが好ましい。比表面積が10m/g未満であると、比表面積が上記範囲である場合に比べて、可視光の光散乱が大きくなる傾向があり、比表面積が50m/gを超えると、比表面積が上記範囲である場合に比べて、透明導電材料2aの安定性が低くなる傾向がある。なお、ここで言う比表面積は、比表面積測定装置(型式:NOVA2000、カンタクローム社製)を用いて、試料を300℃で30分間真空乾燥した後に測定した値をいうものとする。
【0022】
上記導電性粒子11は、60nm以下の平均粒径を有する。ここで、平均粒径とは、透過型電子顕微鏡写真法(TEM法)を用いて測定される値である。すなわち、平均粒径とは、透明導電体15を切断し、その切断面上の150個の導電性粒子11をTEMで観測し、各導電性粒子11について最大粒径Lmaxを測定し(図2参照)、それらを平均することにより算出される値をいう。
【0023】
上記平均粒径が60nmを超えると、平均粒径が上記範囲にある場合と比較して、光散乱が大きくなり、透明導電体11の光線透過率が低下し、ヘイズ値が増加する。また、上記平均粒径は、10nm以上であることが好ましい。平均粒径が10nm未満であると、平均粒径が上記範囲である場合と比べて、透明導電体15の導電性が低下しやすくなる傾向がある。すなわち、本実施形態に係る透明導電体15は導電性粒子11において生じる酸素欠陥によって導電性が発現することとなるが、導電性粒子11の平均粒径が10nm未満では、例えば外部の酸素濃度が高い場合には酸素欠陥が減少し、導電性が低下する虞がある。
【0024】
透明導電体15において、上記導電性粒子11の総数のうち、100nm以上の粒径を有する導電性粒子11の数の割合が10%以下である。この割合が10%を超えると、透明導電体15の光線透過率及びヘイズ値が顕著に低下する。
【0025】
上記導電性粒子の粒径が40〜80nmであることが好ましい。このように粒径の下限を40nmとしたのは、透明導電体の抵抗値の安定性を確保するためであり、一方上限を80nmとしたのは、光学特性(光学透過性、ヘイズ値)が大きく変化する閾値となるためである。
【0026】
上記導電性粒子11の形状は、平均粒径及び最大粒径が上記範囲内であれば、特に限定されない。例えば、球状であっても楕円形状であってもよいし、これらが融着して得られる不定形であってもよい。
【0027】
このように本実施形態の透明導電体15によれば、平均粒径が60nm以下となっており、導電性粒子11の総数のうち、100nm以上の粒径を有する導電性粒子11の数の割合が10%以下となっており、全体的に導電性粒子11の粒径が小さく、且つ光散乱の主要因となる100nm以上の粒径を有する導電性粒子11の割合が十分に小さくなっている。このため、本実施形態の透明導電体15に光を入射しても、その光の散乱が十分に抑制される。よって、十分な光線透過率及びヘイズ値を確実に実現できる。
【0028】
上記導電性粒子11の平均粒径及び粒度分布は、次のようにして調整することができる。すなわち、導電性粒子11の原材料をホモミキサー、ビーズミル、ボールミル、コロイドミル、気流粉砕機、メディアレスミル、超音波分散機等の粉砕機で粉砕させることにより平均粒径及び粒度分布を調整できる。
【0029】
上記粉砕機として、導電性粒子を液体中で粉砕させるビーズミル粉砕機を用いることが好ましい。この場合、得られる導電性粒子の粒度分布の幅をより狭くすることが可能となる。
【0030】
ここで、用いるビーズの直径は、15〜50μmであることが好ましい。この場合、平均粒径がより小さい導電性粒子が得られる。
【0031】
上記粉砕後、導電性粒子に粒径が大きいものが含まれる場合は、遠心分離、電気泳動、濾過等で粒径が大きい導電性粒子を分離することも可能である。
【0032】
例えば、遠心分離を行う場合は、遠心分離機の回転数や時間の調整により、所定の粒径をもつ導電性粒子を分離することができるので、導電性粒子の平均粒径及び粒度分布を制御することができる。また、電気泳動を行う場合は、電流、時間等の調整により、平均粒径及び粒度分布を制御が可能である。濾過を行う場合は、用いるフィルターの孔径の調整により、平均粒径及び粒度分布を制御が可能である。
【0033】
<バインダ>
上記バインダ12は、導電性粒子11を固定できるものであれば特に限定されない。例えば、バインダ12としては、アクリルバインダ、エポキシバインダ、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーンバインダ、フッ素バインダ等が挙げられる。
【0034】
これらの中でも、バインダ12として、アクリルバインダを用いることが好ましい。この場合、他のバインダを用いた場合と比較して、透明導電フィルム10の光線透過率をより向上させることができる。すなわち、アクリルバインダをバインダ12として含む透明導電フィルム10は、透明性をより向上させることができる。また、アクリルバインダは、酸・アルカリに対する耐薬品性に優れるとともに耐スクラッチ性(表面硬度)にも優れる。したがって、アクリルバインダを透明導電体15中に含む透明導電フィルム10は、有機溶剤、界面活性剤等を含む拭き取り剤で拭くことや、対向する透明導電体の表面同士の接触、擦れ等が想定されるタッチパネル等により好適に用いられる。
【0035】
また、上記バインダ12は、ラジカル重合性化合物、イオン重合性化合物、又は熱重合性化合物を重合させて製造される。ここで、ラジカル重合性化合物とは、ラジカルによって重合する有機化合物をいい、イオン重合性化合物とは、カチオンによって重合する有機化合物をいい、熱重合性化合物とは、熱によって重合する有機化合物をいう。これらの有機化合物には、上記バインダ12の原料となる物質を含み、具体的にはバインダ12を形成できるモノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー等を含む。
【0036】
これらの中でもラジカル重合性化合物のモノマー若しくはイオン重合性化合物のモノマーを用いることが好ましい。この場合、重合反応の制御ができ、かつ、短い所要時間で重合させることができるため、工程管理が簡便になる利点がある。また、ラジカル重合性化合物のモノマーを用いることがより好ましい。この場合、イオン重合させた場合と比較して、ラジカル重合性化合物のモノマーに光を照射することにより、瞬時にモノマー同士が重合されるため、透明導電体15の膜厚再現性や寸法精度が得られやすいという利点がある。このようなラジカル重合性化合物のモノマーは、ビニル基やそれらの誘導体を含んでいればよく、具体的には、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、スチレン及びその誘導体が挙げられる。なお、これらは1種類単独であってもよく、2種類以上の混合物であってもよい。
【0037】
透明導電体15の屈折率は、1.5以下であることが好ましい。屈折率が1.5未満であると、屈折率が1.5以上にある場合と比較して、反射率がより低下するため、透明性がより向上する傾向にある。
【0038】
透明導電体15の厚みは、0.1〜5μmであることが好ましい。厚みが0.1μm未満であると、厚みが上記範囲にある場合と比較して、抵抗値が安定しにくくなる傾向にあり、厚みが5μmを超えると、厚みが上記範囲にある場合と比較して、透明性がより低下する傾向にある。
【0039】
透明導電体15のTgは、30℃以上であることが好ましい。Tgが30℃以上であると、上記透明導電体15を長期間使用した場合であっても、透明導電体15の形態性を維持することができる。
【0040】
(基体)
本実施形態の透明導電フィルム10は基体14を備える。基体14は、後述する高エネルギー線及び可視光に対して透明な材料で構成されるものであれば特に限定されない。すなわち基体14は公知の透明フィルムでよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、ノルボルネンフィルム(JSR(株)製、アートンなど)等が挙げられる。樹脂フィルムの他に、基体14として、ガラスを用いることもできる。
【0041】
また、上記基体14は、樹脂のみからなることが好ましい。この場合、基体14が樹脂と、樹脂以外のものとを含む場合と比較して、透明導電体は透明性、屈曲性に優れるものとなる。したがって、例えばタッチパネル等のパネルスイッチに用いた場合には特に有効である。
【0042】
また、上記基体14と上記透明導電体15の間に更に中間層を設けても良い。中間層の数には特に制限は無く、必要に応じて設けることが出来る。上記中間層としては、例えば、緩衝層、導電補助層、拡散防止層、紫外線遮蔽層、着色層、偏光層等の機能を有する層が挙げられる。これらの層は樹脂や無機酸化物、または両者の複合体で構成されることが好ましい。
【0043】
本実施形態の透明導電フィルム10は、上記透明導電体15を有するため、十分な光線透過率及びヘイズ値を確実に実現できる。
【0044】
<製造方法>
次に、上述した導電性粒子11として酸化インジウムに錫をドープしたもの(以下、「ITO」という。)を用いた場合について本実施形態に係る透明導電フィルム10の製造方法について説明する。
【0045】
まず、図示しないガラス基板上に基体14を載置し、導電性粒子11及びバインダ12を含有する透明導電体15を形成する。ここで、導電性粒子11の製造方法について説明する。
【0046】
はじめに、塩化インジウム及び塩化錫を、アルカリを用いて中和処理することにより共沈させる(沈殿工程)。このとき副生する塩はデカンテーションや遠心分離法によって除去する。得られた共沈物に対して乾燥を行い、得られた乾燥体に対して雰囲気焼成及び粉砕の処理を行う。こうして導電性粒子が製造される。上記焼成の処理は、酸素欠陥の制御の観点から、窒素雰囲気中、若しくはヘリウム、アルゴン、キセノン等の希ガス雰囲気中にて行うことが好ましい。
【0047】
こうして得られた導電性粒子を水中に分散させて、例えば、ビーズミル粉砕機を用い、平均粒径60nm以下、導電性粒子の総数のうち、100nm以上の粒径を有する導電性粒子の数の割合が10%以下、となるようにする。なお、必要に応じて、導電性粒子を濾過してもよい。そして、得られた導電性粒子11と、バインダ12とを混合し液体中に分散させ、分散液を得る。上記導電性粒子11及びバインダ12を分散させる液体としては、ヘキサン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。このときバインダ12を上記液体に予め溶かしておき、この溶液中に導電性粒子11を混合して分散液を得てもよい。
【0048】
次に、こうして得られた分散液を基体14上に塗布する。この基体14には、透明導電体15を接着させる面側にアンカー層を予め設けておくことも可能である。基体14上に予めアンカー層を設けておくと、基体14上のアンカー層を介して透明導電体15をより強固に固着させることができる。上記アンカー層としては、ポリウレタン等が好適に用いられる。
【0049】
また、上記分散液を塗布後、分散液に対し乾燥工程を施し、未重合の透明導電体を得ることが好ましい。上記塗布方法としては、例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、ノズル法、カーテン法、グラビアロール法、バーコート法、ディップ法、キスコート法、スピンコート法、スクイズ法、スプレー等の方法が挙げられる。
【0050】
そして、上記基体14上に設けられた未重合の透明導電体15を重合させる。このとき未重合の透明導電体15に含まれる成分がラジカル重合性であれば、高エネルギー線を照射することによりラジカル重合性成分が重合され、透明導電体15が形成される。未重合の透明導電体15に含まれる成分がイオン重合性であれば、カチオン重合開始剤を添加することによりイオン重合性成分が重合され、透明導電体15が形成される。また、未重合の透明導電体に含まれる成分が熱重合性であれば、加熱することにより熱重合性成分が重合され、透明導電体15が形成される。なお、上述した高エネルギー線は、ラジカルを発生させるものであれば、紫外線の他、電子線、γ線、X線等であってもよい。
【0051】
こうして透明導電体15が基体14の一面上に形成され、図1に示す透明導電フィルム10が得られる。この透明導電フィルム10は、タッチパネル、光透過スイッチ等のパネルスイッチの用途に好適に用いられる。例えば、上記透明導電フィルム10は、互いに対向する一対の透明電極と、透明電極に挟まれたドットスペーサとを備えるタッチパネルの少なくともいずれか一方の透明電極として用いられる。さらに上記透明導電フィルム10は、上記パネルスイッチ以外にも、ノイズ対策部品や、発熱体、EL用電極、バックライト用電極、LCD、PDP等の用途に好適に用いられる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、本発明の透明導電体の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0053】
図3は、本発明の透明導電フィルムの第2実施形態を示す模式断面図である。図3に示すように本実施形態の透明導電フィルム20は、基体14と透明導電体15との間にバインダ層13を更に備える点で上記第1実施形態の透明導電フィルム10と異なる。また、上記第2実施形態に係るバインダ層13は、上述したバインダ12で構成される。
【0054】
上記バインダ層13の屈折率は、1.5以下であることが好ましい。屈折率が1.5未満であると、屈折率が1.5以上にある場合と比較して、反射率が低下するため、透明性が向上する傾向にある。
【0055】
上記バインダ層13の厚みは、0.1〜5μmであることが好ましい。厚みが0.1μm未満であると、厚みが上記範囲にある場合と比較して、電気的抵抗値が安定しにくくなる傾向にあり、厚みが5μmを超えると、厚みが上記範囲にある場合と比較して、透明性が低下する傾向にある。
【0056】
<製造方法>
次に、本実施形態に係る透明導電フィルム20の製造方法について説明する。
【0057】
まず、図示しないガラス基板上に導電性粒子11を載置する。このとき、基板上には、導電性粒子11を基板上に固定するためのアンカー層を予め設けておくことが好ましい。予めアンカー層を設けておくと、導電性粒子11を基板上にしっかりと固定させることができる。上記導電性粒子11の載置を容易に行うことができる。上記アンカー層としては、例えばポリウレタン等が好適に用いられる。
【0058】
また、基板上に導電性粒子11を固定するためには、導電性粒子11を基板側に向かって圧縮して圧縮層を形成することが好ましい。この場合、アンカー層を形成することなく導電性粒子11を基板に接着することができ有用である。この圧縮はシートプレス、ロールプレス等により行うことができる。なお、この場合も、基板上に予めアンカー層を設けておくことが好ましい。この場合、導電性粒子11をよりしっかりと固定させることが可能である。上記基板としては、例えば、ガラスのほか、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムや各種プラスチック基体等が用いられる。
【0059】
こうして圧縮層を形成した後、透明導電体15及びバインダ層13を形成する。バインダ12は、後述する高エネルギー線によって硬化しうるものが用いられる。なお、バインダ12の粘度が高く加工困難である場合や、バインダ12が固体である場合等は、バインダ12を液体中に分散させることにより、分散液とする。上記バインダ12を分散させる液体としては、ヘキサン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。このときバインダ12を上記液体に溶かして用いてもよい。なお、このバインダ12には、フィラーや架橋剤を添加してもよい。
【0060】
上記バインダ12、若しくはバインダ12の分散液は、上記圧縮層の一面上に塗布される。そうするとバインダ12の一部が圧縮層に浸透することとなる。なお、上記液体を用いた場合は塗布後、分散液に対し乾燥工程を施すことが好ましい。また、上記分散液の塗布は、例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、ノズル法、カーテン法、グラビアロール法、バーコート法、ディップ法、キスコート法、スピンコート法、スクイズ法、スプレー等の方法で塗布することができる。
【0061】
次に、上記バインダ12上に、基体14を貼り付ける。なお、この基体14には、バインダ12との接着面にアンカー層を予め設けておくことも可能である。基体14上に予めアンカー層を設けておくと、アンカー層を経てバインダ12を基体14上により強固に固着させることができる。上記アンカー層としては、ポリウレタン等が好適に用いられる。
【0062】
次に、上記バインダ12上に設けられた基体14上から、高エネルギー線を照射して上記バインダ12と、圧縮層に浸透したバインダ12の一部とを硬化させ、透明導電体15とバインダ層13とする。なお、上記バインダ12と、圧縮層に浸透したバインダ12の一部として熱可塑性バインダを用いた場合には、加熱により硬化させる。また、上述した高エネルギー線は、例えば紫外線のほか、電子線、γ線、X線等であってもよい。
【0063】
そして、上記透明導電体15から基板を剥離することにより、透明導電体15、及びバインダ層13が基体14の一面上に形成される。こうして図3に示す透明導電フィルム20が得られる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0065】
第1及び第2実施形態の透明導電体15には、以下の任意成分を含有させてもよい。
【0066】
<任意成分>
(フッ素コート剤)
上記透明導電体15には、フッ素化合物を含むフッ素コート剤を含有させてもよく、透明導電体15の表面10aをフッ素コート剤で被覆させてもよい。
【0067】
この場合、上記フッ素コート剤がフッ素化合物を含むため、大気と透明導電体15との屈折率の差が小さくなる。また、透明導電体15間で摩擦が生じても、透明導電体15の表面が削れることを防止することができる。更に、これに伴って削れた透明導電体の再付着も防止でき、電気的抵抗値の変動を抑制することができる透明導電体15を得ることができる。
【0068】
上記フッ素化合物としては、特に限定されず、分子内にフッ素原子が1つ以上含まれるものであればよい。具体的には、パーフルオロポリエーテル及びその誘導体、2−パーフルオロデシルエタノール等の含フッ素アルコール類、パーフルオロオクタノイルフロライド等の含フッ素酸ハロゲン化物、パーフルオロデカン酸等の含フッ素酸、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート等の含フッ素アクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルメタクリレート等の含フッ素メタクリレート、パーフルオロ(2,5,8,11−テトラメチル−3,6,9,12−テトラオキサペンタデカノイル)フロライド、パーフルオロポリオキセタン及びその誘導体、3−パーフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン、ジ−ヘプタデカトリフルオロデシルジシラザン、ヘプタデカトリフルオロデシルトリメトキシシラン、1H,1H−ヘプタデカフルオロノニルアミン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0069】
上記フッ素化合物の分子量は、200〜20000であることが好ましい。分子量が200未満であると、分子量が上記範囲にある場合と比較して潤滑性が低下する傾向にあり、分子量が20000を超えると、分子量が上記範囲にある場合と比較して電気的抵抗値が上昇する傾向にある。
【0070】
上記フッ素化合物の配合量は、透明導電体15及びフッ素化合物の合計100質量部に対して、5〜70質量部であることが好ましい。配合量が5質量部未満であると、配合量が上記範囲である場合と比較して、フッ素化合物の添加効果が得られにくい傾向にあり、配合量が70質量部を超えると、配合量が上記範囲である場合と比較して、抵抗値が大きく上昇する傾向にある。
【0071】
(導電性化合物)
上記透明導電体15には、導電性化合物を含有させてもよい。導電性化合物は、具体的には、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレン、ポリシラン、ポリフルオレン及びポリアニリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性高分子で構成されるか、又は活性炭、アセチレンブラックやケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、低温焼成炭素、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素及びカーボンナノチューブからなる群より選ばれる少なくとも1種の炭素材料で構成されることが好ましい。
【0072】
導電性化合物が上記導電性高分子又は炭素材料であると、これら材料による電気的な補償をより確実なものとすることができる。すなわち、導電性粒子同士の間隔が広がっても、抵抗値の変化を防止できる。よって、この場合、高湿環境下等であっても透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができる。また、上記導電性化合物は、バインダとの化学的な反応性に乏しく、透明導電体15の耐久性を向上させることができる。
【0073】
上記導電性高分子は、ポリチオフェンであることが好ましい。この場合、光線透過率及び導電性に特に優れた透明導電体15を形成することが可能となる。
【0074】
また、上記炭素材料は、カーボンナノチューブであることが好ましい。カーボンナノチューブは一般にアスピクト比が大きいため、導電性粒子同士を電気的に接触させることができるという利点がある。
【0075】
上記導電性化合物の配合量は、導電性粒子11及び導電性化合物の合計100質量部に対して、2〜10質量部であることが好ましい。配合量が2質量部未満であると、配合量が上記範囲である場合と比較して、電気的な補償が十分に得られない傾向にあり、配合量が10質量部を超えると、配合量が上記範囲である場合と比較して、光線透過率が低下する傾向にある。
【0076】
また、導電性化合物のコロイド形状は直径が5nm〜50nmであることが好ましい。コロイドの大きさが5nm以下であると、コロイド形状が上記範囲である場合と比較して、透明導電体の機械的強度が低下する傾向があり、コロイド形状が50nmを超えると、コロイド形状が上記範囲である場合と比較して、光線透過性が低下する傾向がある。
【0077】
(フィラー)
上記透明導電体15には、フィラーを含有させてもよい。そうすると、柔らかいバインダ12をバインダ層13に用いた場合、バインダ層13の形態を維持することが可能となる。
【0078】
上記フィラーとしては、特に限定されないが、アラミド、ポリスチレンビーズ、アクリルビーズのような有機フィラー、シリカ、硝子、アルミナ、ジルコニア、チタニア、ITO、酸化錫、酸化亜鉛等のような無機フィラー等を用いることができる。
【0079】
この中でも、シリカ、硝子、ITO、酸化錫、酸化亜鉛等の無機フィラーを用いることが好ましい。上記無機フィラーを用いると、本実施形態の透明導電体は、高い透明性を有する。
【0080】
また、上記無機フィラーの中でも、ITO、酸化錫、酸化亜鉛を用いることが更に好ましい。この場合、当該無機フィラー自体が導電性を示すため、得られる透明導電体の電気的な補償を更に確実なものとすることができる。すなわち、透明導電体にクラック等が生じ、導電性粒子間の接触が失われた場合であっても、上記無機フィラーを通じて導電することが可能となる。したがって、上記透明導電体の電気的抵抗値が上昇することを抑制することができる。また、上記導電性無機フィラーは導電性を向上させる目的で一種または多種の元素をドープすることもできる。
【0081】
上記フィラーの配合量は、バインダ12、導電性粒子11及びフィラーの合計100質量部に対して、0.1〜70質量部であることが好ましい。配合量が0.1質量部未満であると、配合量が上記範囲である場合と比較して、形態保持効果が得られにくい傾向にあり、配合量が70質量部を超えると、配合量が上記範囲である場合と比較して、光学特性の低下を招く傾向にある。
【0082】
また、フィラーの粒径は5〜100nmであることが好ましい。粒径が5nm以下であると、粒径が上記範囲である場合と比較して、バインダ層13に均一にフィラーを分散させることが困難となる傾向にあり、粒径が100nmを超えると、粒径が上記範囲である場合と比較して、光学特性が低下する傾向にある。
【0083】
なお、導電導電体15には、必要に応じて添加剤を更に含有していてもよい。添加剤としては、上述のフッ素コート剤、導電性化合物の他に、表面処理剤、架橋剤、光重合開始剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤、可塑剤等が挙げられる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
(導電性粒子の作製)
塩化インジウム四水和物(関東化学社製)19.9g及び塩化第二錫(関東化学社製)2.6gを水980gに溶解した水溶液と、アンモニア水(関東化学社製)を水で10倍に希釈したものとを調製しながら混合し、白色の沈殿物(共沈物)を生成させた。
【0086】
生成した沈殿物を含む液体を遠心分離機で固液分離し固形物を得た。これを更に水1000gに投入し、ホモジナイザーで分散して、遠心分離機で固液分離を行なった。分散及び固液分離を5回繰り返したのち、固形物を乾燥し、窒素雰囲気中、600℃で1時間加熱して、ITO粉(導電性粒子)を得た。
【0087】
(実施例1)
片面にポリウレタンが塗布された10cm×30cm角のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材、帝人株式会社製、厚さ100μm)のウレタン未塗布面の一端をガラス基板上に両面粘着テープを用いて貼り付け、ガラス基板上に基材を固定した。
【0088】
次に得られたITO粉(平均粒径30nm)690質量部と、エタノール(関東化学株式会社製)2310質量部とを混合してミキサーで攪拌し第1の混合液とした。この第1の混合液をビーズミル粉砕機(寿工業株式会社製)に投入した。そして、100μmのビーズを用いて、180分間粉砕処理を行い、ITO粉を粉砕した。得られた第1の混合液中のITO粉の粒度分布は、測定機器:Microtrac UPAを用いて測定した。その結果、平均粒径はD50=60nmであった。また、最大粒子径はD100=100nmであった。すなわち、100nm以上の粒径を有するITO粉の割合は0.15%であった。
【0089】
この第1の混合液を上記基体にバーコート法で塗布し、乾燥後、第1の混合液が塗布された基材をガラス基板から剥し、基材の第1の混合液の塗布面にPETフィルム(帝人株式会社製、厚さ50μm)を重ね併せ、150mm幅のロールプレス機にてロール圧力10MPa、送り出し速度5m/minで圧力を加えた。そして、上記PETフィルムを剥がして、基材上にITO粉膜を形成した。なお、得られたITOの膜厚は1μmであった。
【0090】
一方、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:A−BPE−20)20質量部と、ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:14G)35質量部と、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:702A)25質量部と、ウレタン変性アクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:UA−512)10質量部と、アクリルポリマー(平均分子量約5万、1分子当たりアクリロイル基を平均50基、トリエトキシシランを平均25基含有)10重量部と、光重合開始剤(ラムバーティ社製、ESACURE ONE)1質量部とをメチルエチルケトン(関東化学株式会社製、MEK)50質量部中で混合させ、第2の混合液を得た。
【0091】
そして、この第2の混合液をバーコート法により硬化後の膜厚が3μmとなるように、ITO膜上に塗布した。さらにこれを常温減圧下で5分放置後、大気下で上記第2の混合液の塗布面とPETフィルム(基体)とを貼り合わせ、基体側から光硬化を行った。このときの条件は光源に高圧水銀灯を用い、300nm〜390nmの波長域での積算照射量は4.0J/cmであった。
【0092】
そして、基材を分離することにより、透明導電フィルムを得た。
【0093】
(実施例2)
実施例1で用いたITO粉を、30μmのビーズを用いて、180分間粉砕処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして、透明導電フィルムを得た。このとき、平均粒径はD50=43nmであった。また、最大粒子径はD100=80nmであった。すなわち、100nm以上の粒径を有するITO粉の割合は0%であった。
【0094】
(実施例3)
実施例1で用いたITO粉を、50μmのビーズを用いて、120分間粉砕処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして、透明導電フィルムを得た。このとき、平均粒径はD50=58nmであった。また、最大粒子径はD100=96nmであった。すなわち、100nm以上の粒径を有するITO粉の割合は0%であった。
【0095】
(実施例4)
実施例1で用いたITO粉を、50μmのビーズを用いて、180分間粉砕処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして、透明導電フィルムを得た。このとき、平均粒径はD50=45nmであった。また、最大粒子径はD100=96nmであった。すなわち、100nm以上の粒径を有するITO粉の割合は0%であった。
【0096】
(比較例1)
実施例1で用いたITO粉を、50μmのビーズを用いて、60分間粉砕処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして、透明導電フィルムを得た。このとき、平均粒径はD50=65nmであった。また、最大粒子径はD100=120nmであった。すなわち、100nm以上の粒径を有するITO粉の割合は2.15%であった。
【0097】
(比較例2)
実施例1で用いたITO粉を、30μmのビーズを用いて、90分間粉砕処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして、透明導電フィルムを得た。このとき、平均粒径はD50=52nmであった。また、最大粒子径はD110=80nmであった。すなわち、100nm以上の粒径を有するITO粉の割合は1.55%であった。
【0098】
(比較例3)
実施例1で用いたITO粉を、100μmのビーズを用いて、120分間粉砕処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして、透明導電フィルムを得た。このとき、平均粒径はD50=70nmであった。また、最大粒子径はD100=100nmであった。すなわち、100nm以上の粒径を有するITO粉の割合は0.24%であった。
【0099】
[評価方法]
(光学特性)
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた透明導電フィルムを50mm角に切り取り、ITO面の予め定められた測定点につき、濁度計(日本電色工業製NDH2000)で全光線透過率及びヘイズ値を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0100】
(電気特性)
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた透明導電フィルムについて、以下のようにして電気抵抗の評価を行った。すなわち、上記のようにして得られた透明導電フィルムを50mm角に切り取り、ITO面の予め定められた測定点につき、四端子四探針式表面抵抗測定器(三菱化学社製MCP−T600)で表面電気抵抗値を測定した。得られた結果を、表1に示す。
【表1】



【0101】
表1から明らかなように、実施例1〜4は、比較例1〜3と比べて全光線透過率及びヘイズ値に優れることがわかった。以上の結果より、本発明の透明導電体によれば、光線透過率及びヘイズ値に優れた透明導電体及び透明導電フィルムを提供することができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1は、本発明の透明導電フィルムの第1実施形態を示す模式断面図である。
【図2】図2は、導電性粒子の粒径を説明するための図である。
【図3】図3は、本発明の透明導電フィルムの第2実施形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0103】
10,20・・・透明導電フィルム、10a・・・表面、11・・・導電性粒子、12・・・バインダ、13・・・バインダ層、14・・・基体、15・・・透明導電体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子及びバインダを含有する透明導電体において、
前記導電性粒子の平均粒径が60nm以下であり、
前記導電性粒子の総数のうち、100nm以上の粒径を有する導電性粒子の数の割合が10%以下である、透明導電体。
【請求項2】
前記導電性粒子の総数のうち、40〜80nmの導電性粒子の数の割合が、50%以上である、請求項1記載の透明導電体。
【請求項3】
前記平均粒径が10nm以上である、請求項1又は2に記載の透明導電体。
【請求項4】
基体と、前記基体上に設けられる透明導電体と、を備え、前記透明導電体が請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明導電体である、透明導電フィルム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−66711(P2007−66711A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251478(P2005−251478)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】